地域再生人材創出拠点の形成 事後評価 「先進・実践結合型it産 … ·...

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1 地域再生人材創出拠点の形成 事後評価 「先進・実践結合型IT産業人材養成」 機関名:琉球大学 代表者名:平 啓介 連携自治体:那覇市 実施期間:平成 18 年度~平成 22 年度

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1

地域再生人材創出拠点の形成 事後評価

「先進・実践結合型IT産業人材養成」

機関名:琉球大学

代表者名:平 啓介

連携自治体:那覇市

実施期間:平成 18 年度~平成 22 年度

2

目次

Ⅰ.計画の概要 ...................................................................... 1

Ⅱ.成果の概要 ...................................................................... 4

1.目標に対する達成度 ............................................................ 4

2.人材養成手法の妥当性 .......................................................... 5

3.実施体制・自治体等との連携 .................................................... 5

4.人材養成ユニットの有効性 ...................................................... 5

5.継続性・発展性の見通し ........................................................ 5

6.採択時コメントへの対応 ........................................................ 6

7.中間評価への対応 .............................................................. 6

Ⅲ.所要経費 ........................................................................ 8

Ⅳ.成果の詳細 ...................................................................... 9

1.目標に対する達成度 ............................................................ 9

(1)養成人数の目標と実績 ...................................................... 9

(2)養成人数以外の拠点形成に係る目標と実績 .................................... 9

2.人材養成手法の妥当性 ......................................................... 14

(1)地域のニーズ ............................................................. 14

(2)人材養成の手法・方法と実施結果 ........................................... 15

(3)被養成者の到達度認定の仕組みと実施結果 ................................... 25

(4)人材養成システムの改善状況(被養成者の評価等の反映) ..................... 26

3.実施体制・自治体等との連携 ................................................... 30

(1)実施体制 ................................................................. 30

(2)自治体等との連携状況 ..................................................... 31

4.人材養成ユニットの有効性 ..................................................... 31

(1)養成修了人材が地域で活躍する仕組み ....................................... 31

(2)波及効果 ................................................................. 33

(3)情報発信の状況 ........................................................... 34

5.成果の発表状況 ............................................................... 35

(1)養成された人材による成果 ................................................. 35

(2)人材養成ユニットに関する成果 ............................................. 36

6.中間評価への対応 ............................................................. 36

(1) 総合評価 .................................................................. 36

(2) 今後の進め方 .............................................................. 37

(3) 個別評価①進捗状況 ........................................................ 37

3

(4) 個別評価②拠点形成手法の妥当性 ............................................ 38

(5) 個別評価③拠点形成の有効性 ................................................ 38

(7) 実施期間終了後の継続性 .................................................... 39

Ⅴ.人材養成ユニットの継続性・発展性 ............................................... 40

1.実施機関の取組としての継続性 ................................................. 40

2.自治体や地元からの支援による発展性 ........................................... 40

1

Ⅰ.計画の概要

■プログラム名:地域再生人材創出拠点の形成(事後評価)

■課題名:先進・実践結合型 IT 産業人材養成

■機関名:琉球大学

■代表者名(役職):平 啓介 (産学官連携推進機構長) 平成 22 年 4 月~平成 23 年 3 月

宜保 清一(産学官連携推進機構長) 平成 21 年 4 月~平成 22 年 3 月

平 啓介 (産学官連携推進機構長) 平成 20 年 4 月~平成 21 年 3 月

平 啓介 (地域共同研究センター長) 平成 19 年 10 月~平成 20 年 3 月

照屋 輝一(地域共同研究センター長) 平成 18 年 7 月~平成 19 年 9 月

■連携自治体:那覇市

■実施期間:5年間

■実施経費:総額 231.0 百万円(間接経費込み)

1.課題概要

(1)地域再生人材創出構想・概要

①.地域の現状と地域再生に向けた取組状況

沖縄県は IT産業を重点産業と位置付け、積極的に振興発展を図り、今日までに 100社、9,000人

の雇用を創出してきた。那覇市は、県に呼応し、IT 産業の集積・発展に取り組み、人口集積、空港

近接等の優位性を活かし、多数のコールセンターを誘致してきた。他方、今後の発展を期待するソ

フトウェア開発やネットワーク構築の分野では人材不足が言われ続けており、特に高度な技術者の

養成・確保が大きな課題となっている。

琉球大学は沖縄地域における総合大学として多様な人材を養成・輩出してきた。また、工学部情

報工学科では「産学連携による学生の即戦力化プログラム」など、産学官が連携したプロジェクトへ

の取り組み、沖縄県の IT 産業振興を担う(NPO)フロム沖縄やオープンソースの活性化を目指す

(NPO)OSPI への参画など IT 産業の振興に資する活動を行っている。

②.地域再生人材創出構想

ソフトウェア開発や iDC・IX 構築等における、①システム開発、②ネットワーク構築、③プロジェクト

マネジメントの各分野で、IT 産業全体を牽引する最上級の IT 産業人材養成を行う。このため、教員

の有する先進的な知識知見の習得と、これを活用し企業現場で抱えている課題解決に向けた実践

が肝要である。教員による先進的な研究シーズの講義(2 ヶ月)の後、企業から持ち込まれた課題に

ついて検討、プロトタイプとなるシステム開発やネットワーク構築等の OJT(2 ヶ月)を行う。OJT 等で

作成された成果物はオープンソースとして公開し、地域の IT産業の知財として活用する。企業にとっ

ては、人材養成に加え、プロトタイプが獲得できるメリット、教員にとっても新たな研究テーマを見出

す契機ともなる。教員に加え、県内外の民間企業の技術者等を非常勤講師として採用し、魅力的な

カリキュラムを提供する。県外講師等と県内企業とのマッチングも期待できる。本事業による人材養

成人数(累計)としては 50 人(3 年目)、90 人(5 年目)を目標とする。また、地域共同研究センター及

び(NPO)フロム沖縄等が中核となり、養成した IT 産業人材によるネットワークを構築し、地域の IT 産

2

業振興に向けて新技術の情報交換や業務的な連携を図る。

沖縄県の重点産業である IT 産業の集積発展には高度な IT 産業人材が不可欠であり、本事業の

実施状況を踏まえ、県内企業はじめ、国・県・那覇市とも連携し、事業継続の方策について検討す

る。

③.自治体との連携・地域再生の観点

那覇市は IT産業の集積・発展に積極的に取り組んできた。その結果、多数のコールセンターが立

地する等、大きな成果を挙げている。また、ベンチャー企業の発掘育成を目的として設立した「那覇

市 IT 創造館」は沖縄におけるインキュベーション施設の成功事例となりつつある。このような流れを

一層加速することで、IT 産業の集積・発展を中心にした地域再生計画の策定に向け取り組みを始め

ている。那覇市には(NPO)フロム沖縄、(NPO)OSPI、(社)沖縄県情報産業協会などの団体が存在し

ている。琉球大学の情報工学科や地域共同研究センターはこれら組織団体の設立運営等に積極

的に参画してきた。この中で、IT 業界として必要性が高い人材として、①システム開発人材、②ネット

ワーク構築人材、③プロジェクトマネジメント人材、④サービス産業人材が挙げられている(提案では

①~③を対象とした。)

本事業実施により、那覇市のIT産業における恒常的な下請け構造から脱却し、沖縄型オフショア

開発の実現に大きく貢献する。那覇市の成功事例が沖縄県全域へ波及することが期待できる。

(2)実施体制

図 1 実施体制

課 題 の 実 施 体 制

検討 実施 評価

琉球大学・地域共同研究センター

カリキュラム整理

テキスト作成

e-learningコンテンツ作成

(NPO)FROM 沖縄

・告知/受け入れ

地域企業技術者

大学院生等

那覇市役所

・産業振興施策

県内IT産業界

オフショア開発モデル

新たなビジネス提案 など

既存中小企業

誘致企業

ベンチャー企業

琉球大学工学部

・告知/受け入れ

琉大情報工学科カリキュラム作成支援

・講師派遣

業界ニーズの取りまとめ

カリキュラム作成の支援

事業内容の検討

県内IT関連企業

県外マーケット

(NPO)FROM沖縄

(NPO)OSPI

事業結果の評価

講師派遣の支援

IT産業人材養成ユニット

3

(3)実施内容

図 2 実施内容

2.先進・実践が結合したIT産業人材養成

課 題 の 実 施 内 容

目指す方向 → 沖縄のIT産業を牽引する高度な人材を養成 ※

先進的な研究シーズ 現場の課題先進・実践

結合型

人材養成の場

業新たな研究テーマ 高度な人材・プロトタイプ

3.実施方法

① 集合教育による講義 (2ヶ月)② 実務形式での研修教育(2ヶ月) パターン1:実践的システム開発 (企業ニーズ解決型)

パターン2:先進技術に係わるシステム開発 (教員シーズ応用型)

1.基本的な考え方

① 「学」と「産」を本格的に混在② 研究シーズと企業ニーズを融合、新事業の可能性を追求③ ユニークな人材養成の場の形成、上級技術者へのキャリアパス短縮④ 沖縄におけるIT産業の知財を蓄積

※例えば、(独)IPAのITスキル標準レベル5(社内において当該職種/専門分野に関わるテクノロジやメソドロジ、ビジネスをリードするレベル)以上の人材。

2.採択時コメント

本提案は、沖縄のIT産業を牽引することのできる、システム開発、ネットワーク構築、プロジェクトマネジ

メントの各分野で大学の研究シーズ(先進部分)と企業の事業ニーズ(実践部分)を結合したIT産業人材

を養成することを目的としており、地域の特徴を活かし、課題の趣旨を踏まえた優れたものである。

沖縄地域でのIT産業人材の育成は、現状および今後の沖縄の地域特殊性を考慮すると、地域経済

の発展へと波及効果が大きく重要と判断される。養成された人材の雇用の点でも、自治体(那覇市)との

連携が密接であることが評価できる。

養成人材像、カリキュラムについては地元業界のニーズを採り入れて体系化されており、適切と判断さ

れる。期間終了後についても、地域共同研究センターを中心とする継続的な人材養成が計画されており、

妥当と判断される。地元の人材を活用するなどして、講師陣を充実することが望まれる。

また、沖縄への流入人口が増加しているという現状をうまく捉え、優秀な人材が沖縄に集まるような養

成モデルを構築し、カリキュラム等に反映することが期待される。さらに、沖縄地域の経済的自立発展の

ために、養成修了後の人材が地域に腰を落ち着けて先導的役割を果たして行けるよう十分サポートされ

ることが期待される。

4

Ⅱ.成果の概要

1.目標に対する達成度

(1)養成目標人数に対する実績

養成人数は目標 90 人に対して実績 129 人を達成し、目標比 143%を達成した。

(2)被養成者の資質向上

①.研修時の被養成者の知識・スキルレベル

ITSSレベルチェックで「高度 IT 人材」(レベル4.0以上)に位置付けられる者は22名、「ミドルレベ

ル」(レベル3.0以上)に位置付けられる者は49名であった。

うち、1 名は「企業内のハイエンドプレーヤー」(レベル 5.0 以上)に到達している。

(詳細については 9p Ⅳ.成果の詳細 (2)養成人数以外の拠点形成に係る目標と実績を参照。)

②.実践技能の習得

座学講義による知識の習得に加え、OJT 実習として実践形式の演習による技能の習得を図った。

OJT実習の一つであるPBL演習では、既存の教材を活用したが地域の実情とのかい離があること

が課題となった。このため、当初計画に追加する形で、地域に合ったPBLにあった教材を開発し、

効果的に演習を実施した。

③.資格の取得

被養成者が研修期間中あるいは研修修了後に取得した資格は述べ31件であった。

④.キャリアパスの短縮

修了生およびその上司(管理職)を対象としたアンケート調査では、管理職の 95%および修了生

の 86%が、研修で得た知識や技能は通常業務の1~3年の経験に相当すると評価された。

(3)地域再生への貢献

①.被養成者の所属企業に対する貢献

被養成者のモチベーションが高まることで、組織全体のモチベーションも波及的に向上し、次に生

産性の向上により、組織力の向上へと結びついた。

②.技術者コミュニティの形成

研修修了生を中心に、本人材養成事務局メンバー等関係者による技術者コミュニティとして

「APITT クラブ」を組織し情報交換や交流等の活動を継続している。

③.人材養成の仕組みの確立

地域の企業に所属している技術者、本人材養成修了者を講師として登用し「地域の人材は地域

が育てる」ための仕組みが定着した。本人材養成を修了し講師を担当した人材は 14 人に上った。

④.産学官連携の推進

平成 18 年度は 1 件の共同研究開発提案、平成 21 年度前期から、産学連携型の「研究型 OJT

専修コース」を開講し、第 6 期、第 9 期にそれぞれ 1 件づつのテーマによる研修を実施した。

(4)実施機関の継続性

本事業で蓄積した「カリキュラム」「講師」「研修運営ノウハウ」を活用し、引き続き、平成 24 年度より

「新APITT」として事業を継続する。

(詳細については 40p Ⅴ.人材養成ユニットの継続性・発展性を参照。)

5

2.人材養成手法の妥当性

(1)地域ニーズへの立脚

本人材養成では、沖縄県のリーディング産業のひとつである IT 産業の振興発展に寄与し、地域

の活性化を図るため、今後発展が期待されるソフトウェア開発やネットワーク構築に関わる高度な技

術者を養成することを目標として事業を実施した。

(2)外部検討機関の設置

事業全体の方針や内容等を検討・評価する機関として検討委員会を設置し合計 19 回開催した。

また検討委員会の配下にカリキュラム委員会を設置し合計 31 回開催した。検討委員会及びカリキュ

ラム委員会によるチェック機能を持つことで、カリキュラム策定から募集、選考に至る人材養成手法の

構築と改善を図った。

(3)カリキュラム設計と改善活動

カリキュラム内容については、県内企業ニーズを把握し素案を作成し、これをカリキュラム委員会

及び検討委員会にて検討・承認を得て確定した。研修終了後に講義アンケートや企業ヒアリングを

実施することにより課題の抽出を行い、次期カリキュラムの素案を作成し、カリキュラム委員会で検討

を行う改善活動(PDCA サイクル)を構築した。

当初計画では想定できなかった地域のニーズの変化に対応し「システム開発コースに組み込み

分野を追加」「システム開発コースの業務系における上流工程へのシフト」等を行った。

3.実施体制・自治体等との連携

(1)実施体制

本人材養成の実施体制については、機構長の配下に事業運営事務局、検討委員会及びカリキュ

ラム委員会を設置・運営した。

(2)自治体等との連携

連携自治体である那覇市は、検討委員会・カリキュラム委員会の委員としての参画とともに、地域

のエントリー人材育成事業において連携関係を構築した。沖縄県は、検討委員会・カリキュラム委員

会の委員としての参画とともに、本人材養成に必要な機材等の無償提供などの支援を受けた。

那覇市における地域再生人材育成構想の枠組み超え、産学官が連携した「沖縄中南圏域産業

振興活性化協議会」設立し、地域における IT産業人材養成拠点の形成に向けた活動を行って

いる。(詳細については 31p Ⅳ.成果の詳細 3.実施体制・自治体等との連携を参照。)

4.人材養成ユニットの有効性

(1)養成修了人材が地域で活躍する仕組み

本人材養成では、養成修了人材が地域で活躍する仕組みとして、企業内貢献と共に地域の人材

養成への貢献の二つを構築した。

(2)波及効果

本人材育成を実施する事により「講義アーカイブの蓄積」「コミュニティの形成」「産学連携の必要

性の認識」「他の人材養成事業への協力」の4点の波及効果があった。

5.継続性・発展性の見通し

平成23年度より「新 APITT」として開講する。

6

(詳細は 40p Ⅴ.人材養成ユニットの継続性・発展性を参照。)

6.採択時コメントへの対応

(1)地元人材の活用による講師陣の充実について

第 1 期開始時の 23 名から第 9 期までには 33 名に増員した。通算では全登用講師 93 名中県内

講師は 68 名(73%)となっており、そのうち 14 名が修了生から講師として登用された者である。

(2)優秀な人材が沖縄に集まるような養成モデルの構築や、カリキュラム等への反映について

企業誘致等により沖縄県外から立地した企業から 4 社、被養成者 16 人の参加があった。講師に

おいては、誘致企業 2 社から 3 名を登用した。那覇市における企業誘致にあたっては、本人材養成

を中心とした人材養成の拠点形成により人材の集積があることに対する評価が高く、企業誘致を促

進する一因となった。

(3)養成修了後の人材が地域に腰を落ち着けて先導的役割を果たして行けるためのサポートについて

本人材養成では技術的な教育の他に、技術者としてのキャリアの認識向上や職務に対する

モチベーション向上などのサポートも行った結果、研修修了後に昇進した例、新規案件や大

型案件の担当となる例など職場における修了生の評価が高まったことにより、定着率は 129

名中 119名(92%)となった。

7.中間評価への対応

(1)機関が実施した取組において評価できる事項

中間評価の総合評価では「機関が実施した取組において評価できる事項」として、以下の 3 点が

挙げられている。

①.地元沖縄におけるIT人材の高度化体系に組み込まれており、人材養成人数も目標を大きく上

回っており、拠点形成は所期の計画に沿って順調に進捗していると評価できる。

②.今後、アジアとの連携が構想に上がっているなど、発展性・継続性が期待できる取組である。

③.養成修了者が講師として戻ってくる仕組みなど、継続性のための仕組み作りも評価できる。

(2)対応事項

これらの、評価された項目を一層向上するため取り組みを進め、以下の 5 点を達成した。

①.沖縄県や那覇市、沖縄中南圏域産業活性化協議会や業界コミュニティとの連携した多様な人

材育成体系を構築した。

②.人材養成人数は計画 90 名に対し、実績 129 名を養成し、目標比 143%を達成した。

③.第5期にてベトナム人研修員3名受入、第 9 期には JICA との連携による公開講座を実施した。

④.アジアとの連携については、引き続き沖縄県の「アジアIT人材育成センター」「アジアOJTセンタ

ー」等の国際的なIT人材育成の拠点形成や JICA 沖縄との連携による事業の展開を図る。

⑤.「地域の人材は地域が育てる」のコンセプトの下、14 人の修了生が講師となって活躍した。

(3)機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

また、「機関が実施した取組で今後改善を期待する事項」として、「受講者の到達レベルを上げる

更なる努力」が望まれている。これに対しての取り組みについては、以下の結果を得た。

①.被養成者全体での ITSS レベルは、レベル 3 未満の被養成者は研修前の 90 名(80%)から研修

後には 77 名(61%)へと減少した。レベル 3 以上の被養成者は研修前の 23 名(20%)から研修後

には 49 名(39%)へと増加し、うちレベル 4.0 以上の者 2 名を養成した。

7

②.また、被養成者のレベル向上に向けて第 5 期からコミュニケーション力(コミュニケーションマネジ

メント)や数学力向上(統計)のためのカリキュラムを改善すると共に、被養成者に講義レポートの

作成を義務付け、受講した講義を再度整理することにより知識と技能の一層の定着を図った。

③.研修修了後の ITSS レベルの向上を把握するため、研修修了後企業に戻り業務を行いながら研

鑽に努めているプロジェクトマネジメントコースの修了生を対象とした事後評価を実施した。そのう

ちビジネス貢献度は「ミドルレベル」(レベル 3.0~3.9)が 24 人、「高度 IT 人材」(レベル 4.0 以上)

が 7人であった。うち 1人はレベル 5.4に到達し、「企業内のハイエンドプレーヤー」と評価できる。

また、プロフェッショナル貢献度は「ミドルレベル」(レベル 3.0~3.9)が 18 人、「高度 IT 人材」と定

義される 4.0 以上が 13 人となった。

8

Ⅲ.所要経費 (単位:百万円)

補助対象経費

(20年度までは委託費) 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 備考

1.人件費 9.9 20.8 21.3 19.2 28.0

(1)業務担当職員

および非常勤講師

9.9 14.0 13.6 12.4 20.9

業務担当職員

(3名) (3名) (3名) (3名) (4名)

非常勤講師※1 - 3.4 4.7 5.0 5.3

(21名) (44名) (60名) (61名) (59名)

(2)補助者 - 1.4 1.6 1.8 1.8

(1名) (1名) (1名) (1名)

(3)社会保険料等

事業主負担分

- 2.0 1.4

2.設備備品費 0.1 0.0 0.0 2.8 0.0

(デジタルカメラ等) (オシロスコープ等) ※2

3.消耗品等 5.8 1.4 0.4 2.2 0.4

4.旅費

(1)国内旅費 3.2 4.7 3.3 3.2 3.9

5.その他

(1)諸謝金 2.6 0.6 0.7 1.0 0.8

(2)印刷製本費 0.1 0.3 0.5 0.6 0.8

(3)借損料(会議開催費) 1.9 5.4 5.4 3.5 0.3

(4)雑役務費 8.9 1.7 2.5 3.7 3.0

(5)消費税相当額 0.6 1.0 1.1

6.間接経費 9.9 10.8 10.6 10.9 11.2

計 43.0 46.7 45.8 47.1 48.4 総計231.0

(内、自己資金) (-) (-) (-) (0) (0) (0)

補助対象外経費 - - - 0 0.0 総計 0

※1. 平成18年度の非常勤講師人件費(21 名)は諸謝金に含まれる。

※2. 平成 18 年度:講義撮影のため。 平成 21 年度:システム開発(組込系)分野およびネットワーク構築

分野の講義用機材購入。

9

Ⅳ.成果の詳細

1.目標に対する達成度

(1)養成人数の目標と実績

養成人数は目標 90 人に対して実績 129 人を達成し、目標比 143%となった。

各期ごとの養成人数は以下の通り。

表 1 各期後の内訳

コース/期

H18 H19 H20 H21 H22 合計

1期 2期 3期 4期 5期 6期 7期 8期 9期

システム開発(業務系) 3人 3人 3人 4人 3人 6人 5人 2人 3人 32人

システム開発(組込系) 0人 0人 0人 0人 0人 4人 2人 3人 2人 11人

ネットワーク構築 6人 2人 4人 4人 7人 6人 3人 0人 4人 36人

プロジェクトマネジメント 3人 5人 2人 12人 6人 5人 5人 2人 8人 48人

研究型OJT専修 0人 0人 0人 0人 0人 1人 0人 0人 1人 2人

合計 12人 10人 9人 20人 16人 22人 15人 7人 18人 129人

(2)養成人数以外の拠点形成に係る目標と実績

①.被養成者の資質向上

本人材養成では、研修による知識とスキルの習得効果を測るための客観的な評価基準として、

IT スキル標準(以下 ITSS とする)によるレベルチェック及び各種の資格取得に拠った。

ITSSとは、独立行政法人情報処理推進機構の定める各種IT関連サービスの提供に必要とされ

る能力を明確化・体系化した指標であり、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓

練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするものである。IT サービスの分野を、「コンサ

ルタント」「プロジェクトマネジメント」「IT スペシャリスト」「アプリケーションスペシャリスト」「ソフトウェ

アデベロップメント」等の 11分野に大別し、それぞれの専門分野ごとに達成度指標、指標ごとに必

要とされるスキル、熟達度(レベル)を 7 段階で定義している。レベルの定義は以下の通り。

表 2 ITSSレベルの概要

概要

7 プロフェッショナルとし てスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロ ジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。世界で通用するプレーヤとして認められます。

6 プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。国内のハイエンドプレーヤとして認められます。

5 プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内においてテクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。企業内のハイエンドプレーヤとして認められます。

4 プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。ハイレベルのプレーヤとして認められます。

3 要求された作業を全て独力で遂行します。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有します。

2 上位者の指導の下に、要求された作業を担当します。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識・技能を有する。

1 情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有します。

※システム開発(組込系)では、組込み開発分野において同様に体系化された指標である組込み

スキル標準(以下 ETSS とする)を適用した。

ア.研修時の知識およびスキルレベルの向上(ITSS レベルチェック)

10

被養成者全体での ITSS レベルを見ると、ITSS レベル 3 未満の被養成者は研修前の 90 名

(80%)から研修後には 77 名(61%)へと減少するとともに、レベル 3 以上の被養成者は研修前の

23名(20%)から研修後には 49名(39%)へと増加し、うちレベル 4.0以上の者も 2名現れている。

図 3 研修時の ITSS レベルチェック

0

27名(21%)

35名(31%)

50名(40%)

55名(49%)

47名(37%)

23名(20%)

2名(2%)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

研修後

研修前

1.0~1.9(最低限の基礎知識) 2.0~2.9(指導の下で遂行) 3.0~3.9(独力で遂行) 4.0以上(ハイレベルプレイヤー)ITSSレベル

イ.修了後の知識およびスキルレベルの向上(ITSS レベルチェック)

研修修了後の ITSS レベルの向上を把握するため、、企業に戻り業務を行いながら研鑽に努め

ている第1期から第8期までのプロジェクトマネジメントコース修了生に対し、自己評価形式で調査

を実施した。本調査では、ITSSスキル標準V3 2008における達成度指標に基づき、独自に問題の

作成と評価を行った。達成度指標は IT分野における経験や実績に基づく実務能力を客観的に評

価するものとして定義されたものであり、所属する企業に対するビジネスへの成果を評価するビジ

ネス貢献と、修了生自身が保有する専門性について社会的な活動を評価するプロフェッショナル

貢献の 2 つの貢献に焦点を当てている。下表にレベルチェックの結果を示す。

図 4 ビジネス貢献・プロフェッショナル貢献の ITSSレベルチェック結果(修了生 n=31)

ビジネス貢献は、①担当するプロジェクト内での「責任性」、②プロジェクトの難易度を表す「複

雑性」、③プロジェクトの規模を表す「サイズ」の 3 要素から評価される。レベルチェックの結果は、

ITSSで定める「ミドルレベル」(レベル 3.0~3.9)に到達した者が 24人(77%)、「高度 IT人材」と定

義されるレベル 4.0 以上に到達した者が 7 人(23%)となっており、そのうち 1 人はレベル 5.4 に到

達し「企業内のハイエンドプレーヤー」と評価できる。

修了生が関わっている業務の規模については、「要員数がピーク時 10 人未満または年間契約

金額 1 億円未満」の回答が 31 人中 18 人と最も多く(58%)、「要員数がピーク時 10 人以上 50 人

未満または年間契約金額 1 億円以上 5 億円未満」の回答が 31 人中 5 人(16%)となっており、修

11

了生の ITSS レベルを継続的に向上させるには、職場においてもさらにレベルの高い案件へ挑戦

できることが必要であると考えられる。プロフェッショナル貢献は、①保有する専門分野でのリーダ

ーシップ、②技術継承、③人材育成の実績で評価される。レベルチェックの結果は、ITSS で定め

る「ミドルレベル」(レベル 3.0~3.9)に到達した者が 18人(58%)、「高度 IT人材」と定義される 4.0

以上に到達した者が 13 人(42%)となっている。プロフェッショナル貢献の評価では、保有する専

門分野について人材育成の実績についても評価の対象としており、本調査に回答した 31 人中 16

人(52%)が人材育成の実績があると回答している。

ウ.実践技能の習得

本人材養成では、座学講義による知識の習得だけではなく、OJT 実習として実践形式の演習

による技能の習得を図っている。OJT 実習としては PBL(Project Based Learning)教材を使った

PBL 演習コース、大学教員の研究シーズを活用し共同で研究開発する先進研究シーズ活用コー

ス、企業が実際に抱えている案件について検討する企業持ち込みコースがあり、被養成者はその

うちの 1 つを選択し、履修する。特に PBL 演習コースでは、既存の PBL 教材を参考に改良を加え

たものや、地元企業が実際に受注した案件をベースにした独自の PBL 教材を使用することで、よ

り地元企業のニーズにあった実践的な演習となっている。企業持ち込みコースの実施も 2 件あり、

実務と直接リンクした実践型の演習となっている。

エ.資格の取得

つぎに、被養成者が研修期間中あるいは研修修了後に取得した資格を下表に示す。

本人材養成では、業界コミュニティとの連携の下、被養成者および養成修了者を対象に資格取

得に向けた勉強会を開催するなど、被養成者の資質向上のフォローアップを行っている。

表 3 被養成者の取得資格一覧

資格 取得者数

CCNA(Cisco 技術者認定) 4

CERTIFY WORD 文書処理技能検定試験 1 級 1

C 言語プログラミング能力認定試験 1

IT コーディネータ 1

MCP(マイクロソフト認定プロフェッショナル) 70-290 1

Oracle SCM silver 1

PMC(プロジェクトマネジメントコーディネーター) 3

PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル) 1

PMS(プロジェクトマネジメントスペシャリスト) 4

QLogic Fibre Channel Specialist 1

公文書管理検定(実務者編) 1

情報処理技術者試験:ソフトウェア開発技術者 1

情報処理技術者試験:基本情報技術者 8

情報処理技術者試験:応用情報技術者 2

情報処理技術者試験:情報セキュリティスぺシャリスト 1

合計 31

オ.キャリアパスの短縮

修了生およびその上司(管理職)を対象としたアンケート調査では、「研修で得た知識や技能を、

通常の業務を通して獲得するには何年程度かかると思うか?」との問に管理職の 95%および修了

生の 86%が、「4 ヶ月の研修が1~3年の業務経験に相当する」と回答しており、4 ヶ月の研修が 1

12

年から 3 年のキャリアパス短縮に相当していることがわかる。

図 5 キャリアパスの短縮(修了生 n=74、管理職 n=56)

20

16

20

22

24

15

1

0

6

2

0

0

1

1

0

0

0

0

1

0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

修了生

管理職

1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年

②.地域再生への貢献

ア.被養成者の所属企業に対する貢献

養成修了者の所属企業への貢献について、管理職から最も多い回答は組織力向上への貢献

である。このうち、「同僚や部下への好影響」「チームの技術力の向上」「職場研修の講師を担当す

る」などの効果があがっている。被養成者のモチベーションが高まることで、組織全体のモチベー

ションも波及的に向上し、次に「品質の向上、改善」「後期短縮や残業の減」「開発コストの削減」な

ど生産性の向上がこれに続く。被養成者のほとんどは開発部門の担当であるため、知識や技能の

向上が生産性にそのまま反映されることがわかる。

図 6 研修後の業務貢献(管理職へのアンケート)(管理職 n=54)

0

0

0

2

3

2

3

3

0

0

8

5

2

11

0

1

9

7

8

13

13

14

19

20

14

20

33

26

0 5 10 15 20 25 30 35 40

その他

大型または高度な案件の担当

新規案件の担当

職場での研修担当

顧客との折衝・交渉力の向上

社外人脈の構築

自分が担当している顧客の満足度の向上

コミュニケーション能力の向上

開発コストの削減

工期短縮や残業の減

やる気、積極性の向上

同僚や部下への好影響

品質の向上、改善

知識や技術の向上

回答数(件)

非常に貢献している 貢献している

イ.技術者コミュニティの形成

技術者コミュニティの形成については、企業へのフォローアップヒアリングの際にも有用性があ

るとの認識が大半であった。本人材養成では、研修修了生を中心に、本人材養成事務局メンバ

等関係者による技術者コミュニティとして「APITTクラブ」を組織している。APITTクラブの活動内容

としては、メーリングリストを活用し、情報交換などを行っている。また、プロジェクト管理の研究を推

13

進し、事例発表、研究発表を行うことを目的とした「沖縄 P2M 研究会」の発足に本事業の研究員

や養成修了者が参画・協力し、その後も事務局として継続している。

被養成者に対するアンケートでは、89%が「APITT クラブ」が有用と回答しており、(被養成者に

対するアンケート 回答数 19 名)、その活動に多くの期待が寄せられている。

ウ.人材養成の仕組みの確立

地域全体がレベルアップしていくためには、地域が連携・協力して人材を育成していく仕組み

づくりを行う必要がある。そのため本人材養成は、地域の企業に所属している講師を中心にした

構成となっている。また平成 19 年度からは本人材養成修了者を講師として迎えて後進の養成を

行うほか、本人材養成修了者が自社内での新人研修の担当になるなど、「地域の人材は地域が

育てる」ための仕組みが定着した。これにより、本人材養成を修了し、講師を担当した人材は14人

に上った。

表 4 本人材養成で育成した講師(修了生)

期・分野 人数(人)

第 1 期 プロジェクトマネジメント 2

第 2 期 プロジェクトマネジメント 2

第 2 期 ネットワーク構築 1

第 3 期 ネットワーク構築 2

第 4 期 ネットワーク構築 1

第 5 期 プロジェクトマネジメント 2

第 6 期 プロジェクトマネジメント 1

第 7 期 プロジェクトマネジメント 1

第 8 期 プロジェクトマネジメント 1

第 8 期 システム開発(組込系) 1

合計 14

エ.産学官連携の推進

本事業のコンセプトのひとつに、研究シーズと企業ニーズを融合した産学官連携による新事業

の可能性の追求がある。被養成者を派遣した企業に対し、自社における産学官連携の必要性に

ついてのアンケート調査では、95%の企業が必要性を感じており、今後の産学官連携の推進の

可能性が期待できる。平成 18 年度は 1 件の共同研究開発提案を行った。また、平成 21 年度前

期から、企業ニーズに対し大学のシーズを活用して問題解決と被養成者の技術レベルの向上を

目指す産学連携型の「研究型OJT専修コース」を開講し、第 6期(平成 21年度前期)、第 9期(平

成 22 年度後期)にそれぞれ 1 件づつのテーマによる研修を実施した。

(3)客観的な情勢の変化等(社会ニーズの変化等)への対応

①.システム開発(組込系)コースの開講

内閣府 沖縄総合事務局が平成 20 年度に実施した「沖縄の組込みソフトウェア産業の振興に向

けた実態に関する調査」では、沖縄県内の組込みソフトウェア開発の従事数は、平成 20 年時点では

257 人で前年の 193 人から約 1.3 倍で増加しており、業界では 3 年後には約 2.4 倍の 629 人、5 年

後には約 4 倍の 1,037 人への増員を見込んでいる。これを踏まえ、第 6 期(平成21年度前期)より今

14

後沖縄県内でも需要が期待される組込システム開発に特化した「システム開発(組込系)」コースを

開講した。

図 7 沖縄県内における組込みソフトウェアの従事者数の現状(平成 20 年時点)と将来展望

34 43109

18498135

282

433

61

79

238

420

193

257

629

1,037

0

200

400

600

800

1,000

1,200

前年 現在 3年後 5年後

従事者数

(人

システムテスト組込みソフト開発組込みシステム設計

出典:沖縄総合事務局 「平成20年 沖縄の組込みソフトウェア産業の振興に向けた実態に関する調査」報告書

②.システム開発(業務系)コースの上流工程への重点化

沖縄県が平成 21年度に実施した「沖縄県における高度 IT人材育成に関する調査」では、沖縄県

内のいソフトウェア開発企業が主に関与している工程は基本設計、詳細設計から実装、単体テスト、

結合テスト、運用保守が多い。これに対し、5 年後に関与したいと回答している工程には、研究開発、

企画・コンサルティング、基本設計など上流工程が多く、各企業が本県の情報通信産業において長

年の課題となっている下請構造からの脱却を目指し、上流工程を志向していることがうかがえる。

これを踏まえ、システム開発(業務系)では、、第8期以降は開発言語の講義を廃止し、提案・見積、

要件定義、開発管理など上流工程に特化することで、自社開発へとつながるシステム開発技術の習

得に重点を置いた。

図 8 現在関与している工程と 5 年後の展望

研究開発企画・

コンサル

企画・コンサル

基本設計

基本設計

詳細設計

詳細設計

実装

実装単体テスト

結合テスト

運用保守

運用保守

研究開発

単体テスト

結合テスト

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

5年後

現在

出典:沖縄県「平成22年 沖縄県における高度 IT 人材育成に関する調査」報告書

2.人材養成手法の妥当性

(1)地域のニーズ

沖縄県は IT産業を重点産業と位置付け、積極的に振興発展を図り、今日までに 100社、9,000人の

雇用を創出してきた。那覇市は、県に呼応し、IT 産業の集積・発展に取り組み、人口集積、空港近接

等の優位性を活かし、多数のコールセンターを誘致してきた。他方、今後の発展を期待するソフトウェ

ア開発やネットワーク構築の分野では人材不足が言われ続けており、特に高度な技術者の養成・確保

が大きな課題となっている。

15

(2)人材養成の手法・方法と実施結果

本人材養成では、沖縄県のリーディング産業のひとつである IT 産業の振興発展に寄与し、地域の

活性化を図るため、今後発展が期待されるソフトウェア開発やネットワーク構築に関わる高度な技術者

を養成することを目標とし、活動している。

そのため、事業全体の方針や内容等を検討・評価する機関として検討委員会を設置した。検討委員

会は、本学教員や関連自治体からの代表、民間企業の代表者で構成しており、これらの外部有識者

によるチェック機能を持つことで、カリキュラム策定から募集、選考に至る人材養成手法の構築と改善を

図り、より地域のニーズを反映したものとなっている。本人材養成の取組みごとの実施状況を下表に示

す。

表 5 実施状況

実施期間 取組名

平成18年8月2日 平成18年度 第1回 検討委員会 開催

平成18年8月11日 平成18年度 第1回 カリキュラム委員会 開催

平成18年9月8日 平成18年度 第2回 カリキュラム委員会 開催

平成18年9月29日 平成18年度 第2回 検討委員会 開催

平成18年10月5日 第1期(平成18年度後期)被養成者公募説明会・シンポジウム 開催

平成18年10月5日~

平成18年10月18日

第1期(平成18年度後期)被養成者募集

平成18年10月20日 平成18年度 第3回 カリキュラム委員会 開催

平成18年10月24日 平成18年度 第3回 検討委員会 開催

平成18年11月1日 第1期(平成18年度後期)研修 開講

平成18年12月14日 平成18年度 第4回 検討委員会・平成18年度 第4回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成19年2月28日 第1期(平成18年度後期)研修 修了式

平成19年3月9日 平成18年度 第5回 検討委員会・平成18年度 第5回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成19年3月19日~

平成19年4月13日

第2期(平成19年度前期)被養成者募集

平成19年4月3日 平成18年度 事業成果報告会および第2期(平成19年度前期)被養成者公募

説明会 開催

平成19年4月19日 平成19年度 第1回 カリキュラム委員会 開催

平成19年4月26日 平成19年度 第1回 検討委員会 開催

平成19年6月1日 第2期(平成19年度前期)研修 開講

平成19年7月30日 平成19年度 第2回 カリキュラム委員会 開催

平成19年8月13日 第3期(平成19年度後期)被養成者公募説明会・講演会 開催

平成19年8月13日~

平成19年8月31日

第3期(平成19年度後期)被養成者募集

平成19年9月26日 平成19年度 第2回 検討委員会 開催

平成19年9月28日 第2期(平成19年度前期)研修 修了式

平成19年11月1日 第3期(平成19年度後期)研修 開講

平成20年1月29日 平成19年度 第3回 検討委員会・平成19年度 第3回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成20年2月12日~

平成20年3月21日

第4期(平成20年度前期)被養成者募集

平成20年2月29日 第3期(平成19年度後期)研修 修了式

16

実施期間 取組名

平成20年3月6日 平成19年度 事業成果報告会および第4期(平成20年度前期)被養成者公募

説明会 開催

平成20年3月17日 平成19年度 第4回 検討委員会 開催

平成20年4月16日 平成20年度 第1回 検討委員会 開催

平成20年6月2日 第4期(平成20年度前期)研修 開講

平成20年6月12日 平成20年度 第1回 カリキュラム委員会 開催

平成20年7月25日 平成20年度 第2回 カリキュラム委員会 開催

平成20年8月1日 平成20年度 第3回 カリキュラム委員会 開催

平成20年8月4日~

平成20年8月29日

第5期(平成20年度後期)被養成者募集

平成20年8月12日 第5期(平成20年度後期)被養成者公募説明会 開催

平成20年9月26日 平成20年度 第2回 検討委員会 開催

平成20年9月30日 第4期(平成20年度前期)研修 修了式

平成20年11月4日 第5期(平成20年度後期)研修 開講

平成20年12月8日 シンポジウム「沖縄県内の IT 業界におけるプロジェクトマネージャー(PM)の

育成フォーラム」開催

平成21年2月4日 平成20年度 第3回 検討委員会 開催

平成21年2月23日 平成20年度 第4回 カリキュラム委員会 開催

平成21年2月25日 平成20年度 第5回 カリキュラム委員会 開催

平成21年2月27日 第5期(平成20年度後期)研修 修了式

平成21年3月2日~

平成21年3月31日

第6期(平成21年度前期)被養成者募集

平成21年3月3日 平成20年度 第6回 カリキュラム委員会 開催

平成21年3月5日 平成20年度 事業成果報告会および第6期(平成21年度前期)被養成者公募

説明会・講演会 開催

平成21年3月27日 平成20年度 第4回 検討委員会・平成20年度 第7回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成21年4月22日 平成21年度 第1回 検討委員会 開催

平成21年6月4日 第6期(平成21年度前期)研修 開講

平成21年7月8日 平成21年度 第1回 カリキュラム委員会 開催

平成21年7月22日 平成21年度 第2回 カリキュラム委員会 開催

平成21年7月30日 平成21年度 第3回 カリキュラム委員会 開催

平成21年8月3日 第7期(平成21年度後期)被養成者公募説明会・講演会 開催

平成21年8月3日~

平成21年8月31日 第7期(平成21年度後期)被養成者募集

平成21年8月7日 平成21年度 第4回 カリキュラム委員会 開催

平成21年8月28日 平成21年度 第5回 カリキュラム委員会 開催

平成21年9月25日 平成21年度 第2回 検討委員会・平成21年度 第6回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成21年9月30日 第6期(平成21年度前期)研修 修了式

平成21年11月2日 第7期(平成21年度後期)研修 開講

平成21年12月8日 平成21年度 第7回 カリキュラム委員会 開催

平成21年12月15日 平成21年度 第8回 カリキュラム委員会 開催

平成22年1月29日 平成21年度 第9回 カリキュラム委員会 開催

平成22年2月15日 平成21年度 第10回 カリキュラム委員会 開催

平成22年2月26日 第7期(平成21年度後期)研修 修了式

平成22年3月1日~ 第8期(平成22年度前期)被養成者募集

17

実施期間 取組名

平成22年3月31日

平成22年3月8日 平成21年度 事業成果報告会および第8期(平成22年度前期)被養成者公募

説明会・講演会 開催

平成22年3月16日 平成21年度 第3回 検討委員会・平成21年度 第11回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成22年4月28日 平成22年度 第1回 検討委員会 開催

平成22年5月27日 平成22年度 第1回 カリキュラム委員会 開催

平成22年6月1日 第8期(平成22年度前期)研修 開講

平成22年8月2日 第9期(平成22年度後期)被養成者公募説明会 開催

平成22年8月2日~

平成22年8月31日

第9期(平成22年度後期)被養成者募集

平成22年9月9日 平成22年度 第2回 カリキュラム委員会 開催

平成22年9月29日 平成22年度 第2回 検討委員会・平成22年度 第3回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成22年9月30日 第8期(平成22年度前期)研修 修了式

平成22年11月1日 第9期(平成22年度後期)研修 開講

平成22年12月20日 平成22年度 第4回 カリキュラム委員会 開催

平成23年2月24日 平成22年度 第3回 検討委員会・平成22年度 第5回 カリキュラム委員会

合同委員会 開催

平成23年2月28日 第9期(平成22年度後期)研修 修了式

平成23年3月11日 事業成果報告会「APITT 事業5年の実績と今後の展開」~地域の人材は地域

が育てる~ 開催

①.募集・選考方法について

本人材養成における被養成者の募集・選考方法を下表に示す。

表 6 被養成者の募集・選考方法

期 募集 書類選考 面接・テスト 最終選考 備考(改善点等)

1 期 ・18.10.5~10.18

・シンポジウム開催

カリキュラム

委員会 なし 検討委員会

検討委員会よりテスト、面接の実施

についてアドバイス

2 期 ・19.3.19~4.13

・講演会開催

カリキュラム

委員会

カリキュラム委員

会+事務局 検討委員会

書類審査、テスト、面接の評価方法

を改善

3 期 ・19.8.13~8.31

・講演会開催 事務局 事務局 検討委員会

1 期、2 期のノウハウをもとに事前審

査は事務局にて対応

4 期 ・20.2.12~3.21

・講演会開催 事務局

事務局

IT スキルチェック 検討委員会 IT スキルチェックの導入

5 期

・20.8.4~20.8.29

・講演会開催 事務局 事務局

IT スキルチェック 検討委員会

募集要項の郵送を開始した。

書類選考、面接、筆記(ITSS)、最終

選考の標準スタイルの確立

6 期 ・21.3.2~21.3.31

・講演会開催 事務局

事務局

IT スキルチェック 検討委員会

募集要項で最適な受講対象者を可

視化

7 期 ・21.8.3~21.8.31

・講演会開催 事務局

事務局

IT スキルチェック 検討委員会

8 期 ・22.3.1~22.3.31

・講演会開催 事務局

事務局

IT スキルチェック 検討委員会

9 期 ・22.8.2~22.8.31

・講演会開催 事務局

事務局

IT スキルチェック 検討委員会 募集にあたり上司ヒアリングを実施

18

第 1 期(平成 18 年度後期)は、平成 18 年 10 月 5 日に研修の公募説明会およびシンポジウムを

開催し、10月 5日から 10月 18 日まで募集を行った。選考については、カリキュラム委員会にて予備

選考を行い、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。22 名の応募があり選考の

結果、12名を選抜した。第1期被養成者の選考過程において、検討委員会より、書類のみの選考で

はなく、筆記試験および面接も実施するようアドバイスがあった。

第 2 期研修(平成 19 年度前期)は、平成 19 年 3 月 19 日から 4 月 13 日まで募集を行い、4 月 3

日には公募説明会および講演会を開催した。選考については、第 1期被養成者選考時の検討委員

会からの指導を受け、カリキュラム委員会にて書類審査を行った後に面接・筆記試験を実施し、その

結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。10 名の応募があり、選考の結果 10 名を選

抜した。

第 3 期研修(平成 19 年度後期)は、平成 19 年 8 月 13 日に公募説明会および講演会を開催し、

8 月 13 日から 8 月 31 日まで募集を行った。選考については、第 1 期、第 2 期被養成者選考時のノ

ウハウの蓄積を活かし、事務局にて書類審査・面接・筆記試験を実施し、その結果をもとに検討委員

会にて審議し合否判定を行った。10名の応募があり選考の結果10名を選抜した。ただし、研修直前

に 1 名が業務の都合上研修への参加が困難となり辞退したため、研修参加者は 9 名であった。

第 4 期研修(平成 20 年前期)は、平成 20 年 2 月 12 日から 3 月 21 日まで募集を行い、3 月 6 日

には公募説明会および講演会を開催した。選考については、事務局にて書類審査を行った後、面

接・筆記試験を実施し、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。21 名の応募が

あり選考の結果 21 名を選抜した。第 2 期、第 3 期研修の筆記試験は、事務局が独自で試験問題を

作成していたが、より客観的な指標とするため、第 4 期被養成者の選考からは ITSS スキルチェックを

導入している。

第 5 期研修(平成 20 年後期)では、平成 20 年 8 月 4 日から 8 月 29 日まで募集を行い、8 月 12

日には公募説明会および講演会を開催した。選考については、事務局にて書類審査を行った後、

面接・筆記試験を実施し、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。19 名の応募

があり、選考の結果 19 名を選抜した。今期では、第 4 期の選考方法に基づく書類選考、面接、筆記

(ITSS レベルチェック)、検討委員会による最終選考のスタイルが確立された。

第 6 期研修(平成 21 年前期)では、平成 21 年 3 月 2 日から 3 月 31 日まで募集を行い、3 月 5

日には公募説明会および講演会を開催した。選考については、事務局にて書類審査を行った後、

面接・筆記試験を実施し、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。28 名の応募

があったが、直前に 1 名が業務の都合上研修への参加が困難となり辞退したため、選考の結果 27

名を選抜した。募集にあたっては、募集要項で最適な受講対象者の経験年数とキャリアについて図

表に表し、改善を図った。

第 7 期研修(平成 21 年後期)では、平成 21 年 8 月 3 日から 8 月 31 日まで募集を行い、8 月 3

日には公募説明会および講演会を開催した。選考については、事務局にて書類審査を行った後、

面接・筆記試験を実施し、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。17 名の応募

があり、選考の結果 17 名を選抜した。

第 8 期研修では、平成 22 年 3 月 1 日から 3 月 31 日まで募集を行い、3 月 8 日には公募説明会

および講演会を開催した。選考については、事務局にて書類審査を行った後、面接・筆記試験を実

施し、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。8 名の応募があり、選考の結果 8

19

名を選抜した。その後、研修開始前に 1 名の追加応募があり、聴講生として受け入れた。

第 9 期研修では、平成 22 年 8 月 2 日から 8 月 31 日まで募集を行い、8 月 2 日には公募説明会

および講演会を開催した。選考については、事務局にて書類審査を行った後、面接・筆記試験を実

施し、その結果をもとに検討委員会にて審議し合否判定を行った。16 名の応募があり、選考の結果

16 名を選抜した。その後、那覇市の「IT アドミッション・オフィス・推進プロジェクト」から 2 名の聴講生

を受け入れた。

このように、第 1 期研修の被養成者選考の内容をふまえ、第 2 期研修の選考では面接・筆記試験

を導入し、第 1期・第 2期のノウハウをふまえ第 3期研修の選考では事務局にて予備選考を行った。

第 4 期研修の選考ではそれまで独自に作成していた筆記試験に ITSS スキルチェックを用い、客

観的な評価基準を導入した。第 5 期には書類選考と面接、筆記試験(ITSS チェック)を事務局が行

い、検討委員会が最終選考を行う本人材養成における選考の方法を確立した。

また、第 6 期以降は、受講に最適な経験度やスキルレベルなどを可視化し、より研修に最適な人

材層へのアプローチを図った。さらに第 9 期には募集にあたり上司ヒアリングを行い、企業側から研

修への要望などを早期に聴取する方法を確立した。

以上により本人材養成に対する企業の関心と理解を促し募集を円滑に進める体制が整うと共に、

選考方法を確立することができた。

②.カリキュラムの整備状況

ア.カリキュラムの整備

本人材養成では、沖縄のリーディング産業のひとつである情報通信産業の発展のため、平成

18年度は「システム開発」「ネットワーク構築」「プロジェクトマネジメント」の 3分野からスタートした。

その後、地域のニーズを踏まえ、第 6 期から「システム開発(業務系)」、「システム開発(組込

系)」「ネットワーク構築」、「プロジェクトマネジメント」、「研究型 OJT 専修」の 5 分野へと発展した。

被養成者は上記 5 分野のうちから 1 つを選択し、専攻した分野についての知識・技能の習得を

図る。「システム開発(業務系)」、「システム開発(組込系)」「ネットワーク構築」、「プロジェクトマネ

ジメント」の 4 分野の座学講義については、なるべく日程が重複しないように設定し、専攻した分野

以外の講義を受講することも可能としている。

カリキュラムの基本的なコンセプトとしては、前半の 3 ヶ月で琉球大学の講師による先進的な研

究シーズと企業講師による実務・実践的な座学講義を行い、後半の1ヶ月で OJT 実習として具体

的な実務を想定した実践形式の演習を行うこととした。

イ.座学講義

座学講義では、第 9 期までにシステム開発(業務系)分野で先進技術シーズ講座を 3 講座、実

践型講座を 11講座整備し、システム開発(組込系)分野では先進技術シーズ講座を 2講座、実践

型講座を 8 講座整備した。

ネットワーク構築分野で先進技術シーズ講座を 2 講座、実践型講座を 8 講座、プロジェクトマネ

ジメント分野で先進技術シーズ講座を 1 講座、実践型講座を 12 講座整備した。座学講義の一覧

を以下に示す。

20

表 7 先進技術シーズ講座

分野 科目名 内容

システム開発

(業務系)

UML 設計 UML 設計の基本と要点

UML 設計技法(講義と演習)

システムデザイン

デザインの原則

ヒューマン・インタフェースにおけるメタファの種類

インタフェース・メタファの効用と限界

デザインの複雑さ

ユーザ中心のデザイン

ユーザ意図の推論と知的インタフェース

ソフトウェア信頼性

ソフトウェアの品質管理概念

ソフトウェアの信頼性についての計測・評価技術

品質設計の応用

システム開発

(組込系)

ロボットシステム概論

ロボット概論および,基礎技術

ロボット開発事例から学ぶロボット要素技術

robocode を用いたロボット演習

組込みソフトウエア開発技

術者のためのハードウエア

設計技術

①半導体集積回路概論(講義)

②VHDL によるディジタル回路設計基礎(講義)

③小規模システムアーキテクチャ(講義)

①小規模システム設計実習(講義または実習)

②C 言語による組み込み小規模システム構築・デバッ

グ実習(講義または実習)

ネットワーク

構築

仮想化技術の応用 仮想化技術の概要、Xen のインストール

仮想マシンの作成、仮想化技術の応用

無線ネットワーク

メッシュネットワークの概要、無線 LAN について

MAC 層と CSMA/CA について

メッシュネットワークのルーティングプロトコル(AODV)に

ついて、メッシュネットワークルータ(MRI502)について

メッシュネットワーク監視ソフト(MeshVista)について

プロジェクト

マネジメント リスク予測・分析演習

プロジェクトに係るリスクについて数学的な予測と分析・

評価の手法

表 8 実践型講座

システム開発(業務系)分野

科目名 内容

情報通信産業論 世界における情報通信産業(技術、ビジネス)の趨勢

日本における情報通信産業の現状

要求分析

(RFP 作成・読解)

FPの作成、システム開発における要求分析の要点

RFPの読解

見積技法 システム開発における見積手法

システム開発見積の要点

提案技法 システム開発における提案手法

提案のポイント(講義と演習)

要件定義

目標設定から要件定義までの基本的な作業の流れと具体的な手法

現状分析の演習

課題設定と要件定義の演習

開発プロセス 失敗プロジェクトの原因分析

主要な開発プロセスモデルの歴史と概要

21

科目名 内容

反復型開発とアジャイル開発詳説

UML(統一モデリング言語)とは

ユースケース作成演習

ユースケースによる見積演習

外部設計(設計手法)

システム構築における設計作業の基本的な流れと具体的な手法

データ構造設計、機能設計の演習

UI 設計とプロセス設計の演習

内部設計(DB 設計)

PostgreSQL のインストール、SQL 言語の習得、PostgreSQL のバックアッ

プ・リストア、データベース設計指針、Clay の利用方法、データベース設計

演習

ソフトウェア構成・変更管理

ソフトウェア構成管理について(講義)

Subversion のインストール・使用方法(演習)

Redmine のインストール・管理手法(講義・演習)

Subversion と Redmine を連携させた変更管理技法(実習)

テスト技法

テストの基礎知識(テストの目的と重要性、テストの一般原則)

ソフトウェアの品質特性、ソフトウェアライフサイクルを通じてのテスト

テスト技法の分類と選択、レビューとテスト、ブラックボックステスト、ホワイト

ボックステスト

テストのマネジメント、テスト支援ツールの種類と活用

事例研究・演習

システム運用・保守

システム運用時のプログラム変更管理

突発障害等への対応方法

運用保守を念頭に置いた設計方法

システム開発(組込系)分野

科目名 内容

組込みシステム開発概論

組込みシステム開発について

マイクロコンピュータの仕組みについて

組込みソフトウェアについて

マイコンボードを使った開発環境の紹介

組込みC言語

C 言語文法の概略説明。変数とデータ型、演算子、制御文、標準関数、修飾

子(const、volatile)、

配列、文字列

マイコン開発環境の説明、メモリマップ(ROM,RAM,I/O 等)

ポインタ、構造体、共用体、ビットフィールド、プリプロセッサの解説

設計技法Ⅰ

モデリングの実装と基本

UML 設計の基本

UML モデリングツールの習得

モデルの作成

プログラム言語による実装

組込みシステムのトレーサビリティと設計

組込みシステムにおける機能と制御の分離

AS IS モデル:コードからのモデルの導出

TO BE モデル:求めるべきモデルの探求

ルールによる実装:モデルからコードへの変換

設計技法Ⅱ

組込みシステムにおける要求、設計、実装、テストのトレーサビリティを維持す

る手法

リバースモデリングを通じた UML の活用

テスト技法 ソフトウェアテストの基礎知識

22

科目名 内容

開発工程に対応したテストの準備と実施

テスト項目表、障害票の作成

回帰テストの実施

テスト管理ツール、障害管理ツールの紹介

組込み Linux

評価ボード(Armadillo500FX)による組込み Linux

リアルタイム OS 基礎

Linux、組込み Linux 基礎

デバイスドライバ概要、開発・導入実習

組込み Linux アプリケーション概要、開発・導入実習

Android プログラミングⅠ

Android 基本概念の解説

開発・実行環境の構築

Android アプリケーション開発 (基礎編)

Android プログラミングⅡ

非モバイル機器(Armadillo500FX)による Android プログラミング

Android アプリケーション開発 (実践編)

Android プラットフォームとデバッグ環境の構築

デバイスを利用したアプリケーション開発

Web サービスを利用したアプリケーション開発

ネットワーク構築分野

科目名 内容

ネットワーク設計要素 ネットワークアーキテクチャ、L2/L3スイッチについて

ネットワーク設計の4つのプロセスについて

ネットワーク設計

LAN の設計方法(LAN 導入手順、企画フェーズ、基本設計フェーズ、詳細設

計フェーズ、物理・論理設計図)

WAN の概要、通信事業者サービス、WAN の設計方法

ネットワークサーバ

DNS サーバ、Web サーバ、メールサーバの動作理解と設定。

リモート接続サーバの動作理解と設定。

Linux 予備知識、Cent OS インストール、DNS サーバ、Web サーバ、他

SMTP/POP サーバ、リモート接続、

NW セキュリティⅠ

ファイアウォール、スイッチによるセキュリティ対策方法。

情報セキュリティ概要、情報セキュリティマネージメント概要、リスク分析

不正アクセス手法、コンピュータ・ウィルスの概要、情報セキュリティ対策

近年の脅威のトレンド及び対策方法

NW セキュリティⅡ スパムの現実、不正アクセス手法の概要、情報セキュリティ対策

スパム対策製品の基本操作、設定確認、IPS 装置の基本操作・設定・確認

セキュアネットワーク

内部ネットワークからの脅威に対するセキュリティ概要、内部ネットワークのア

クセス監視、ネットワーク認証概要、IEEE802.1X、各ベンダー独自の認証、認

証スイッチ APRESIA の基本操作・設定・確認、RADIUS サーバの設定・確認、

認証スイッチ APRESIA 導入事例

NW システム運用・保守

一般的な保守サービス・運用サービスの理解

業務に併せた保守サービス・運用サービスの選択方針の作成

保守サービス・運用サービス提供に対する展開

保守サービス・運用サービスに対する管理方法

ネットワーク機器演習

Cisco IOS の理解、L2、L3スイッチの基本設定、確認

ルーティングプロトコルの理解、実装

各種サーバの動作の理解、基本設定、確認

セキュアネットワークの理解、基本設定、確認

プロジェクトマネジメント分野

23

科目名 内容

プロジェクトマネジメント プロジェクトマネージャーの役割、プロジェクトの定義

プロジェクトマネジメントの概要

目標マネジメントⅠ プロジェクトのライフサイクルおよびスコープマネジメント

目標マネジメントⅡ タイムマネジメント、コストマネジメント

アーンドバリューマネジメント

目標マネジメントⅢ

品質マネジメント

報告・変更・課題管理

引き渡し管理

リスクマネジメント プロジェクトにおけるリスクの認識と対応策

リスクの特定、対策およびリスクマネジメントの評価

組織・関係性・コミュニケー

ションマネジメント

組織マネジメント、関係性マネジメント、コミュニケーションマネジメントの基本

と現場での応用

資源マネジメント

プロジェクトの6資源(人的、物的、金融、情報、知的、基盤)の適切な確保と

運用

開発プロジェクト現場における資源マネジメントの実際と事例研究

情報マネジメント プロジェクトにおける情報の利用手段と留意点

開発プロジェクトにおける情報マネジメントの知識と実際、IT活用のあり方

ファイナンス・戦略

マネジメント

プロジェクト戦略マネジメントは企業戦略とプロジェクトとの関連性

プロジェクト環境整備とプロジェクトガバナンス

プロジェクト資金調達と財務管理

システムズマネジメント プロジェクト上の問題点(課題)の解決

システムズアプローチの応用、プロジェクトの概念整理

プログラム・バリュー

マネジメント

プログラムマネジメントによる事業戦略

プロジェクトの「資産価値」、「イノベーション価値」、「調和価値」の把捉とフィ

ードバックによる価値循環

アプリケーション演習 Microsoft Project を使ったプロジェクト管理の手法

ウ.OJT 実習

OJT 実習としては PBL(Project Based Learning)教材を利用した PBL 演習、大学教員の研究シ

ーズを活用し共同で研究開発する先進研究シーズ活用コース、企業から持ち込まれた課題につ

いて検討する企業持込コースの 3 コースがあり、被養成者はそのうちの1つを選択し実施すること

とした。研修実施後は、講義アンケートや企業ヒアリング等の結果をふまえ、次期研修での課題を

洗い出し、より効果的なカリキュラムとなるよう、随時改善活動を実施している。これにより、PBL 演

習では第 5 期および第 8 期、第 9 期に演習教材の開発を行い、より実践的なシステム開発および

沖縄県内の企業ニーズに近いテーマに改善した。先進研究シーズコース、企業持込コースでは、

第 6 期および第 9 期に修了生を対象とした「研究型 OJT 専修コース」へと発展して開講することが

できた。

24

③.講義・実習教材の整備状況

ア.教材整備の方針

本人材養成では、講義に使用する教材については、基本的に各講師にて独自に作成を行って

おり、パワーポイント等の講義資料については、原則公開を前提とし、本人材養成でのみ使用す

るのではなく、広く地域の人材養成で活用していく方針である。

また、本人材養成では、各講義の開始前、終了後に講義理解度についての確認を行うとともに、

講義アンケートを行っており、被養成者からのコメントについては、講師にフィードバックし、次期

研修での講義内容への反映を図ることとしている。教材も研修同様、大きく分けると座学講義と

OJT(実践)実習に分けられる。

イ.座学教材

座学講義については、本学の教員による先進的な研究シーズについての講義である「先進技

術講座」と民間企業から招聘した講師による実務・実践的な講義である「実践型講座」、IT 業界を

牽引する人材としての共通理解を深める「共通講座」を実施している。

第 1 期(平成 18 年度後期)研修では、企業ヒアリング等をふまえ、講義内容についての検討・

作成を行い、先進技術講座として 6 講座、実践型講座として 17 講座、共通講座として 3 講座を実

施した。

第 2 期(平成 19 年度前期)研修では、第 1 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術講座として 7講座、実践型講座

として 16 講座、共通講座として 6 講座を実施した。

第 3 期(平成 19 年度後期)研修では、第 2 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

講義内容の見直し・検討を行い、先進技術講座として 8 講座、実践型講座として 20 講座、共通講

座として 7 講座を実施した。

第 4 期(平成 20 年度前期)研修では、第 3 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術シーズ講座 9 講義、実践型講

座 21 講義、共通講座 7 講義を実施した。

第 5 期(平成 20 年度後期)研修では、第 4 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術シーズ講座 7 講義、実践型講

座 23 講義、共通講座 6 講義を実施した。

第 6 期(平成 21 年度前期)研修では、第 5 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術シーズ講座 7 講義、実践型講

座 27 講義、共通講座 8 講義を実施した。

第 7 期(平成 21 年度後期)研修では、第 6 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術シーズ講座 8 講義、実践型講

座 31 講義、共通講座 7 講義を実施した。

第 8 期(平成 22 年度前期)研修では、第 7 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術シーズ講座 6 講義、実践型講

座 29 講義を実施した。

25

第 9 期(平成 22 年度後期)研修では、第 8 期の実施結果および講義アンケート結果をふまえ、

カリキュラム内容および講義内容の見直し・検討を行い、先進技術シーズ講座 8 講義、実践型講

座 28 講義を実施した。

ウ.OJT 教材

OJT(実践)実習については、PBL 教材を利用した PBL 演習コース、大学教員の研究シーズを

活用し共同で研究開発する先進研究シーズ活用コース、企業から持ち込まれた課題について検

討する企業持ち込みコースの 3 コースがあり、そのうちの 1 つを被養成者が選択し実施することに

なっている。

PBL 演習コースでは、第 4 期までシステム開発、ネットワーク構築、プロジェクトマネジメントの各

分野が個別(一部合同)に演習していたが、第 5 期に演習テーマおよび教材を整備したことにより、

3 分野合同の演習を実現し、より実際の開発現場に近い形へと整備した。さらに、第 8 期と第 9 期

には再度演習テーマと教材を整備し、沖縄県の地域ニーズにマッチする内容に更新した。

企業持ち込みコースについては、企業が課題としている Web 開発のフレームワークの作成や、

企業が実際に受注したネットワークシステムの構築案件についての検討を実施しており、実務と直

結した実践型の演習となっている。第 6 期には企業持ち込み型の開発案件により「研究型 OJT 専

修コース」の開講へとつながった。

先進研究シーズ活用コースでは、GIS を活用した開発(第 4 期)、GIS を活用した開発およびア

ルゴリズムの研究を活用した開発(第 5 期)の事例があり、上述の「企業持ち込みコース」と合わせ

て第 6 期の「研究型 OJT 専修コース」の開講へと結びついている。

エ.講義のデジタルアーカイブ化と E-ラーニングシステムの構築

また、本人材養成では、これまでの講義はすべてビデオ録画しており、アーカイブとして蓄積す

ると共に E-ラーニングシステムの構築を進めている。現在は業務の都合等により講義を欠席した

被養成者や復習を希望する被養成者に対し、講義ビデオの配信や資料の提供を行っている。

以上の整備された教材やデジタルアーカイブは、事業終了後冊子にまとめて地域におけるオ

ープンソース的な資産として整備した。これらの教材は今後の継続事業の中でも使用する予定で

ある。

(3)被養成者の到達度認定の仕組みと実施結果

①.修了要件

本人材養成における研修では、専攻分野科目および共通必修科目の講義出席日数が2/3以上

あること(ただし OJT 実習は出席日数に含めない)、OJT 実習を 1 つ以上完了すること、研修終了時

の IT スキル標準チェックで 2.5 以上を達成することもしくはレベル 2.5 以上と同等レベルであることが

認められること、研修報告書を提出することの 4 条件を充たした者に対し、修了証を交付する。

本人材養成では、講義ごとに講義開始前、講義終了後に小テストを実施し、養成対象者の理解

度の確認を行い、理解度が一定の基準に達していない被養成者に対しては、追試等によるフォロー

を行っている。また、研修終了時には民間企業が提供している IT スキル標準チェック(ITSS)を実施

し、養成対象者が目標とするレベルに達しているかについての客観的な判断を行っている。

26

②.養成修了者数とそのレベル

本人材養成における養成修了者数を下表に示す。

表 9 養成修了者数

研修実施年度

(期)

平成

18年度

平成

19年度

平成

20年度

平成

21年度

平成

22年度

1期 2期 3期 4期 5期 6期 7期 8期 9期

単年度 計画 10 10 10 10 10 10 10 10 10

実績 12 10 9 20 16 22 15 7 18

累計 計画 10 20 30 40 50 60 70 80 90

実績 12 22 31 51 67 89 104 111 129

これまで第 1 期から第 9 期までの計 129 名に対し研修を実施した。129 名全員が上記要件をすべ

て充たし、研修を修了している。

表 10 研修修了後の ITSS レベルチェック結果

期 平均値 最高値

第1期(平成18年度後期) 2.8 3.7

第2期(平成19年度前期) 2.7 4.4

第3期(平成19年度後期) 2.7 3.6

第4期(平成20年度前期) 2.6 3.4

第5期(平成20年度後期) 3.0 4.2

第6期(平成21年度前期) 2.4 3.5

第7期(平成21年度後期) 2.6 3.5

第8期(平成22年度前期) 2.3 3.2

第9期(平成22年度後期) 2.7 3.5

(4)人材養成システムの改善状況(被養成者の評価等の反映)

①.カリキュラム改善のための PDCA サイクル

カリキュラム内容については、本人材養成の事務局が企業への個別訪問や産業団体の会議等に

出席した上で企業ニーズを把握し素案を作成し、これをカリキュラム委員会にて検討し、検討委員会

にて承認を得て確定、研修を実施した。また、研修終了後に講義アンケートや企業ヒアリングを実施

することにより課題の抽出を行い、次期カリキュラムの素案を作成し、カリキュラム委員会で検討を行

う改善活動(PDCA サイクル)を構築した。

カリキュラム内容のレベルは独立行政法人情報処理推進機構が定めた IT スキル標準(ITSS)を参

考に、最終的にはレベル 3〜4の人材の養成を目標とし、初年度である平成 18年度および 2年目の

平成 19 年度では研修修了後の到達レベルを 2.5 以上とした。

また、その後も継続的にカリキュラムの改善を継続し、第 9 期にてシステム開発(業務系)、システ

ム開発(組込系)、ネットワーク構築、プロジェクトマネジメントの 4分野および PBL演習でのカリキュラ

ムが完成した。本人材養成におけるカリキュラム改善についての流れを下図に示す。

27

図 9 カリキュラム構築改善のための PDCA

②.アンケートの実施

本人材養成では、すべての講義において、講義終了後アンケートを実施しており、アンケートに寄

せられたコメント・要望等については、講師にフィードバックするとともに、次期研修での検討課題とし

ている。アンケートで寄せられた要望については、次期研修のカリキュラム作成の際に検討し、反映

することで、継続的な改善活動を行った。講義アンケート以外にも、養成修了者やその管理職、その

ほかの企業へのヒアリング調査を行い、講義内容と企業ニーズとの間にずれがないか整合性を図っ

た。研修終了後の修了生からの改善要望は以下のとおりである。

・ソフトウェア開発のマネジメントを学んだが、中小零細企業の小規模開発には活かし辛いと感じ

た。

・ネットワーク系、プログラミング系の講習は、就業時間中に長時間拘束されるため、参加しにくい

ので、マネージメント同様、夜間に実施できないでしょうか。

・ネットワーク分野の研修ではそれぞれの専門家の方の講義が受けられ、有意義に感じました。研

究型コースでは、専門家の方の指導が受けられなかったのが残念でした。

・沖縄 IT 人材の弱点であるマネジメント力、交渉力、上流工程スキルを伸ばす人材育成プログラ

ムがあると良い。

・研修生の質によるかもしれないが、基礎的な講義が多かったように思える。もう少し中・上級の講

座もあってよかった。

・広く浅くではなく、特定の先端技術に特化し、モデルケース開発を行うなどがあってもよかった。

・非常に良い講義内容、PBL を備えた良いプログラムなので、もう少し宣伝を行い周知してもよい

かと思います。

・変化に対応していくには『基本』が一番大事だと思います。『基本』を学べる内容も充実させてほ

しい。

・横の繋がりが増える、強くなるようなイベントを仕掛けていってほしいです。

修了生からの事業継続に関する要望は以下のとおりである。

カリキュラム素案作成

委員会にて検討

カリキュラム作成

研修実施

Plan Do Check Act

企業ヒアリング

講義アンケート

改善点の抽出

企業ニーズをもとに事務局で作成

外部有識者からのコメント

先進技術講座:9講座

実践型講座:20講座

OJT実習:3コース

受講者の評価 企業ニーズ把握

次期研修での課題

より効果的なカリキュラムを構築

28

・APITT、ITOP 等、安価でレベルの高い教育が受けられる環境があり恵まれている。しかし、受講

者が少なく、もったいないと感じる事もある為、広く周知していく事も必要かと思う。これらの教育

事業は、今後も継続してほしい。

・APITT で経験した内容はこれまで受講した研修にはない経験だったので、これからも続けてほし

い。

・APITT の事業も今年度で終了との事ですが、今後、同じように集中して受講できるような講座が

別の形でも開催できるとよいと思います。

・APITT は 5 年事業で終了しますが、県や国の補助でこのような高度な人材育成の場を、今後も

提供して頂きたい。

・スキル向上、業務に対する考え方・社会人としての考え方が幅広くなったと思います。沖縄の人

材育成の場として今後も事業を継続してほしい。

・沖縄 IT 人材育成の場所として今後も継続してほしい。

・沖縄の IT 人材の技術力を底上げするために、今後も APITT のような機会を設けていただきた

い。

・業務だけでは取得が困難なスキルを身に付けられる“場”というものを、今後も拡大すべきだと考

えています。

・県内 IT 人材を育成する一機関としての APITT の継続こそが、IT 業界の競争力向上に繋がると

思います。是非継続を!

・今期で事業終了とは残念です。

・今後の沖縄の産業のためにも、このような研修をもっと広く、多くの方に受講頂ければと思います。

その為、APITT が修了してしまうことは非常に残念です。

・今後も APITT をぜひ続けてください。また機会がありましたら是非参加したいです。

・今後タイミングが良ければ後輩を APITT に参加させたいので、今後も引続き継続して欲しいで

す。

・今年度でなくなってしまうのは、非常に残念である。継続して欲しい。

・座学と実技のバランスが良く、他の一夜漬け的な研修では得ることの出来ない実践力が身につく

と感じている。今後もそのスタイルを継続して欲しい。

③.企業からの事業継続要望

被養成者を派遣している企業からの事業継続要望は、全体の約 3 割が何らかの改善が必要なこ

とを指摘しているものの、9 割を超える企業が事業の継続を要望している。アンケートの結果を以下

に示す。

29

図 10 事業継続の要望

被養成者派遣企業の管理職へのアンケート n=35

是非、継続してもらいたい46%

継続した方がよいと思う34%

改善を行い継続する方が望ましい

17%

継続の必要はない3% その他

0%

管理職からの事業継続についてのコメントを以下に示す。

・APITT の講義の内容についても興味深い内容の講義が行われています。また、県内の IT 業界

の各社のベースが高まっていることと人材交流が高まってきていることを感じています。

・これから APITT に参加させたい中堅社員(業務経験 5 年以上)となる候補者が出てくるため。

・やや高度な内容をまとめて、スキルアップさせることができるため

・やる気のある社員が多く、可能な限り、勉強の場を与えたい。

・カリキュラムが充実している。

・沖縄県内での研修が少なく、研修等を活用した人材育成環境において首都圏との格差がある為

・沖縄県内での情報技術習得の機会が少ないため、

・高いレベルの講義と実業務に準じた内容の講義が受講でき、しかも無料なので。

・座学+実習により実践的な知識が短期間で身につく。また、専門的な講座を無料で受講できる

為。

・私自身が参加したいから。

・受講者本人の知識が目にみえて向上した。

・新人を育成していくにはいい研修だった事と県内では受講が難しいPMの講習が受講できる事。

・人材育成のために長期間の研修は社内的には難しく、APITT の研修は大いに役立っている。

・専門職種毎の必要 IT 技術を体系的に集中して学べる手段は他になし。

・当社は技術部門の規模が小さい為、社内リリースを活用した研修への注力がなかなか取れない

現状がある。

・既に若干の経験や知識が有った方も、全く無かった方も本研修を通して再認識して貰えたと思

います。

・県内で、無償で体系的に研修出来る機関がない。

・個人での学習は難しいので、こういう研修の機会があることで集中して学習させることができる。

・今後も技術革新が続く以上教育は継続する必要がある。

・実働メンバー対象につき、期間・時間帯など考慮・改善頂いた上で継続してもらいたい。

・社内教育はどうしても OJT 主体となり基礎を学ぶ場として、期待しているため。

30

・人材育成に加えて、県内企業の意識の向上に役立っており、他に代わるものがいまのところない

と思われる。

・先端・実践技術について学ぶことができ、エントリー教育(専修学校教育)に活用していくことがで

きるから。

・先端技術の共用の場であってほしい。

・短期間での技能・知識の習得や、社外人脈の構築に有効であると思う。

・中堅 SE の教育の場として活用したい。

・必要なスキルとは認識していても中々、知識や技術を向上される機会がありません。今回のよう

に長期に渡って学ぶ機会があれば実践を通して学ぶことができ、一企業だけでなく県内の人材

育成に有効な手段だと思われます。

3.実施体制・自治体等との連携

(1)実施体制

本人材養成の実施体制としては、琉球大学地域共同研究センター長(平成 20 年 4 月より産学官連

携推進機構に改組)が統括を担当し、センター長の配下に事業運営事務局と検討委員会を配置する。

事業運営事務局は予算案の作成や研修カリキュラム案の作成、講義準備・講義運営等を行う事業執

行機関である。検討委員会は本人材養成の方針や内容等を検討し、実施結果についての評価を行う

意志決定機関である。本人材養成の実施体制を下図に示す。

図 11 実施体制図

検討委員会は琉球大学教員と地域の民間企業の代表、連携自治体・関係機関の代表からなる。ま

た検討委員会の配下にカリキュラム委員会を設置し、カリキュラム内容についての具体的な検討を行う

こととした。カリキュラム委員会での検討内容については、検討委員会で報告し、最終的な意志決定を

行うこととしている。カリキュラム委員会は琉球大学教員と地域の民間企業の代表、連携自治体・関係

機関の代表からなっている。外部有識者によるチェック機関が存在することで、より地域のニーズを反

映した研修内容を構築できる仕組みを確立している。本人材養成実施期間中の検討委員会とカリキュ

ラム委員会の開催回数を下表に示す。

31

表 11 検討委員会・カリキュラム委員会の開催回数

年度 検討委員会 カリキュラム委員会

18年度 5回 5回

19年度 4回 3回

20年度 4回 7回

21年度 3回 11回

22年度 3回 5回

合計 19回 31回

(2)自治体等との連携状況

本人材養成における連携自治体である那覇市は、厚生労働省の「地域雇用創造推進事業」を活用

した「沖縄 IT 産業のニーズに対応する「ゴール(就職先)の見える」人材養成事業」を実施し、求職者を

対象とした人材養成事業を行っている。当該事業はエントリー層を対象とした事業となっているため、

同事業を修了した後、より高度な技術の習得を希望する受講者については、本人材養成を活用できる

よう連携をとっている。また、第 9 期には、那覇市の「IT 産業の多様なニーズに対応する人材育成事

業」との連携により、聴講生(研修修了時に修了生同等として認定)2 名を受け入れている。

沖縄県は、本人材養成の検討委員会・カリキュラム委員会の委員として参画するとともに、本人材養

成に欠かすことのできないネットワーク機器を無償で提供した。また、沖縄県の補助事業である「情報

産業核人材養成支援事業」にて「IT プロフェッショナル人材育成講座」(ITOP)を実施している沖縄 IT

人材育成協議会とは、本人材養成終了後を見据えた連携についての検討を行っている。さらに、沖縄

県の実施する「アジアIT人材育成センター」「アジア OJT センター」等、沖縄における産学官が連携し

たIT人材育成の拠点形成に向けて検討している。

また、平成 22 年 12 月には企業立地促進法に基づき、那覇市をはじめとした沖縄県中南圏域の11

市町村及び沖縄県と本学等が参画し、産学官が連携した「沖縄中南圏域産業振興活性化協議会」

(事務局 株式会社沖縄 TLO 琉球大学技術移転機関)を設立した。同協議会では「情報通信関連産

業」「観光リゾート産業」「地域資源活用型産業」「国際物流関連産業」を重点産業分野として設定して

いる。平成 23年 1月には同協議会内に「IT産業人材育成ワークグループ」を設立し、雇用対策を活用

したエントリー人材の育成を行っている。

以上、那覇市、沖縄県、沖縄中南圏域産業振興活性化協議会と連携した、地域における IT 産業人

材養成拠点の形成に向けた活動を開始している。

4.人材養成ユニットの有効性

(1)養成修了人材が地域で活躍する仕組み

①.養成修了者の活躍の仕組み

本人材養成では、養成修了人材が地域で活躍する仕組みとして、企業内貢献と共に地域の人材

養成への貢献の二つを構築した。

32

企業内貢献については、研修の実施により、養成修了者の資質(知識と技能)が向上することによ

り、「同僚や部下への好影響」「チームの技術力の向上」など組織力の向上に貢献している。また、

「品質の向上、改善」「後期短縮や残業の減」「開発コストの削減」など生産性の向上に貢献している。

これにより「新規案件の獲得」など企業の業績向上につながった。

地域の人材養成への貢献については、養成修了者は、研修で習得した知識と技術により社内の

エキスパート的な存在となり、人材教育を担当するなど、本人材養成の成果を社内に還元し、社内

の人材育成に貢献した。これらの社内講師や修了時の成績優秀者(合計 14 人)を本人材養成の講

師として登用し、地域における人材養成に貢献した。これにより、企業の壁を超え「地域の人材は地

域が育てる」ための仕組みが定着した。養成修了者の活躍の流れを下図に示す。

図 12 養成修了者の活躍の流れ

個人 企業 地域

企業の業績向上

人材養成に対する

企業の認識向上

個人の資質向上

所属企業への貢献

波及効果①.講義アーカイブの蓄積

波及効果②.E-ラーニングの構築

波及効果③.コミュニティの形成

波及効果④.産学連携の認識向上

関係機関との連携

情報の提供・交換

業界を牽引する人材(プレイヤー)として活躍

研修の実施

地域への経済還元

地域の競争力の向上

地域における人材養成

システムの構築

修了者が講師として養成事業に参画

職場リーダーとして後進の育成に寄与

②.企業への貢献

企業への貢献は、修了生の上司(管理職)より、「キャリアパスの短縮」「個人と組織のモチベーショ

ン向上」「生産性の向上」として評価された。

「キャリアパス短縮」では4ヶ月間の集中研修が1年から3年の職場経験に相当するとの評価を管

理職の 95%および修了生の 86%から得た。(詳細は 9P Ⅳ.成果の詳細 1.目標に対する達成

度を参照)

「個人と組織のモチベーション向上」は修了生の知識と技術が高まることによる「個人のモチベー

ション向上」が同僚やチームメンバーのモチベーション向上に波及し、その結果として品質の向上や

開発コストの削減など「生産性の向上」へ結びついていることが修了生の上司へのアンケートから明

らかとなった。以上の修了生による企業への貢献が継続されることにより、「新規案件への対応力」と

して企業の業績が向上し、結果地域への経済還元に寄与と地域の競争力が向上に貢献するサイク

ルが下図に示すとおり生まれていると言える。

33

図 13 被養成者の業務貢献へのステップアップ

研修後

1年後

2年後

APITT 参加企業へのヒアリング、アンケート等による

「生産性の向上」工期短縮、バグ減少、残業軽減などコスト削減面で効果が現れる。

「新規案件への対応力向上」技術力を持ったメンバー(チーム)として新規案件へ対応できる。

「職場意識の向上」チーム、グループ全体のモチベーションが連鎖的に向上する。

「個人の知識と技術の向上」研修員の知識と技術が向上し、業務へのモチベーションが向上する。

③.人材養成に対する地域の期待

また、人材養成に対する企業の認識が向上することで、企業内での人材養成が活発化し、地域に

おける人材養成システムの構築が促進する。本人材養成では、養成修了者を講師として積極的に

起用している。これは、講師となることで修了者のさらなるレベル向上を図ることができるとともに、「地

域の人材は地域で育てる」という、地域活性化のための人材養成システムの土台を構築していくもの

である。沖縄県における、本事業を含めた人材養成事業への認識を下図に示す。全体の約 8 割が

成果を上げていると評価しており、地域の人材養成に対する期待とさらなる需要が高まっていると言

える。

図 14 地域における人材養成事業の成果への感想

被養成者派遣企業の管理職及び関連機関へのアンケート n=26

(2)波及効果

波及効果として は、「講義アーカイブの

蓄積」「コミュニティの形成」「産学連携の必要性の認識」があげられる。

①.講義アーカイブの蓄積

本人材養成の講義アーカイブの蓄積として、座学講義はすべてビデオに収録するとともに、原則

として使用したテキストはオープンソースとして公開している。本人材養成終了後は、講義資料はテ

キスト集として製本し、座学講義の状況は DVD に記録し、今後の地域の人材養成のための効果的

なツールとして活用できるよう整備を進めた。

34

②.コミュニティの形成

コミュニティの形成としては、養成修了者を中心に組織した「APITT クラブ」を立ち上げ、メーリング

リスト(登録者数 170 名、平成 20 年度送信実績 47 通、平成 21 年度 49 通、平成 22 年度 42 通 1

ヶ月平均 3.8 通送信)を活用した本人材養成の講義内容についての情報や最新技術に関するイベ

ントの開催等の告知、自主ゼミの開催、また、研修開催期間中は各コース毎に被養成者や修了生、

講師、業界関係者による懇親会を毎回を行った。養成修了者の管理職へのヒアリング調査の際にも、

コミュニティの重要性・必要性は認識されており、APITT クラブへの期待は高いものがあった。今後

は養成修了者だけでなく、一般にも門戸を広げ、地域の拠点となるようなコミュニティづくりの推進を

図る。

③.産学連携の必要性の認識

本人材養成事業実施中のアンケートでは、管理職の 95%が産学連携の必要性を感じており、本

人材養成の認知浸透と産学連携に対する地域企業の意識向上がうかがえた。本人材養成では、第

6 期より研究型 OJT 専修コースを開講し、企業現場の技術的な課題や、新製品開発の共同研究を

実施しており、今後の産学共同研究体制の基盤を整備することができた。

④.他の人材養成事業への波及

那覇市の「IT 産業の多様なニーズに対応する人材育成事業」では、本人材養成のカリキュラム等

を参考とし、地域の人材養成に活用している。

また、平成 23 年 2 月には JICA 沖縄センターと共同で公開講座を実施し、JICA 沖縄の海外から

の研修員に本人材養成の講義を提供した。

(3)情報発信の状況

本人材養成ではホームページを開設し、本人材養成の概要や募集要項の掲示、講義案内の掲載

等を行なっている。(http://www.iicc.u-ryukyu.ac.jp)

養成修了者を中心に組織している「APITT クラブ」のメンバや協力関係にある「沖縄 IT 人材養成協

議会」の会員に対し、メーリングリストを通じ、被養成者の募集案内や講義内容について情報を発信し

ている。また、学内の機関誌「地域共同研究センターニュース」には定期的に本人材養成の活動状況

についての報告を掲載している。第 3期(平成 19年度後期)に公開講座として実施した「プロジェクトマ

ネジメント情報システム」ではマイクロソフト株式会社から講師を招いた。講義後、マイクロソフト社ホー

ムページ上で本人材養成についての紹介が掲載された。

(http://www.microsoft.com/japan/mscorp/mic/report/071204APITT_pm.mspx)

また、各期における被養成者公募説明会時の講演会や特別公開講座、シンポジウム、最終報告会

は以下のとおり開催した。

35

表 12 講演会、特別公開講座、シンポジウム、最終報告会実施状況

イベント・期日 内容

第 6 期公募説明会

平成 21 年 3 月 5 日

「ソフト会社における生き残りのための人材戦略」

~需要創出型ビジネスへの転換に向けて~

第 7 期公募説明会

平成 21 年 8 月 3 日

「企業におけるプロジェクトマネジメントの確立と人材育成」

第 8 期公募説明会

平成22年3月8日

「日本におけるオフショア活用の状況」

第 9 期公募説明会

平成 22 年 8 月 2 日

「勝ち残りのための企業連携」~提案型ビジネスの基盤構築と実践~

シンポジウム

平成 20 年 12 月 8 日

「沖縄県内の IT 業界におけるプロジェクトマネージャー(PM)の育成フォー

ラム」

特別公開講座

平成 22 年 1 月 31 日

「失敗しない業務改善を実現するIT化の肝」

特別公開講座

平成 22 年 8 月 29 日

「下請でもプロジェクトを引っ張れる!」

~脱!「仰せのままに」のための要件定義的セールス手法~

特別公開講座

平成 23 年 2 月 19 日

環境変化における日本の情報通信産業の概観

Overview of Japanese IT Industry in the changing environment

事業成果報告会

平成23年3月11日

事業成果報告会「APITT 事業5年の実績と今後の展開」

~地域の人材は地域が育てる~

5.成果の発表状況

(1)養成された人材による成果

【成果発表等】

特になし

【地域再生に貢献し得る成果】

第 5 期の修了生(プロジェクトマネジメントコース 比嘉良行)が平成23年7月より中国山東大学

の非常勤講師として採用され、中国と沖縄の IT 産業人材養成やオフショア開発などのビジネス連

携へと発展することが期待できる。

第 6期の研究型OJTでは「仮想環境を利用した高可用な開発環境構築」(研修員:宮城 望、指

導教員:情報工学科 名嘉村 盛和、宮里 智樹)のテーマにより、企業内で不用となった老朽 PC

を仮想化技術によりシステム開発時のテスト環境として再活用する研究と試作を行い、企業現場に

おける技術の高度化と開発コストの軽減に寄与する技術の研究を行った。

第 9 期の研究型 OJT では「図面の画像認識技術を使用した業務システムの開発」(研修員:池

間 直、指導教官 機械システム工学科 大城 尚紀)のテーマの下で、画像解析技術により配管

図の原図から電子データを生成し、ガス配管現場での作図を容易にするシステム(商品名:軟式ガ

スシステム 株式会社ソフトファクトリー)を研究と構築を行い、県内企業における産学連携による新

サービスの開発がスタートしている。

【特許等出願】

特になし

36

(2)人材養成ユニットに関する成果

【成果発表等】(5 件)

表 13 成果発表状況

平成 20 年 3 月 11 日 「高度 ICT人材養成のための PBL研究フォーラム」にて PBL事例について

発表。

平成 20 年 12 月 17 日 「沖縄 P2M 研究会」(沖縄県内の技術者コミュニティ)にて本人材養成の取

組状況「APITT の人財育成」を発表。

平成 22 年 7 月 21 日 「沖縄 P2M 研究会」(沖縄県内の技術者コミュニティ)にて本人材養成の取

組状況「APITT から見る PM 育成の課題」を発表。

平成 21 年 12 月 12 日 「関西ネットワークシステム」(関西地区の産学官連携ネットワーク)にて本人

材養成の取組状況「琉球大学のIT人材育成」を発表。

平成 23 年 2 月 26 日 「関西ネットワークシステム」(関西地区の産学官連携ネットワーク)にて本人

材養成の取組状況「琉球大学のIT人材育成」を発表。

6.中間評価への対応

(1) 総合評価

評点 中間評価コメント

B

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・地元沖縄におけるIT人材の高度化体系に組み込まれており、人材養成人数も目標を大きく

上回っており、拠点形成は所期の計画に沿って順調に進捗していると評価できる。

・今後、アジアとの連携が構想に上がっているなど、発展性・継続性が期待できる取組である。

・養成修了者が講師として戻ってくる仕組みなど、継続性のための仕組み作りも評価できる。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・一方で、受講者の到達レベルを上げる更なる努力が望まれる。

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・沖縄県や那覇市、沖縄中南圏域産業活性化協議会や業界コミュニティとの連携した多様な人材育成

体系を構築している。

・人材養成人数は計画 90 名に対し、実績 129 名を養成し、目標比 143%を達成した。

・第5期においてベトナム人研修員3名受入、第 9 期には JICA との連携による公開講座を実施した。

・アジアとの連携については、引き続き沖縄県の「アジアIT人材育成センター」「アジア OJT センター」

等の国際的なIT人材育成の拠点形成や JICA 沖縄との連携による事業の展開を図る。

・「地域の人材は地域が育てる」のコンセプトの下、14 人の修了生が講師となって活躍している。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・被養成者全体での ITSS レベルは、レベル 3 未満の被養成者は研修前の 90 名(80%)から研修後に

は 77名(61%)へと減少した。レベル 3以上の被養成者は研修前の 23名(20%)から研修後には 49

名(39%)へと増加し、うちレベル 4.0 以上の者 2 名を養成した。

・また、被養成者のレベル向上に向けて第 5 期からコミュニケーション力(コミュニケーションマネジメン

ト)や数学力向上(統計)のためのカリキュラムを改善すると共に、被養成者に講義レポートの作成を

義務付け、受講した講義を再度整理することにより知識と技能の一層の定着を図った。

・研修修了後の ITSS レベルの向上を把握するため、研修修了後企業に戻り業務を行いながら研鑽に

努めているプロジェクトマネジメントコースの修了生を対象とした事後評価を実施した。そのうちビジ

37

ネス貢献度は「ミドルレベル」(レベル 3.0~3.9)が 24人、「高度 IT 人材」と定義されるレベル 4.0が 7

人であった。うち 1 人はレベル 5.4 に到達し、「企業内のハイエンドプレーヤー」と評価できる。また、

プロフェッショナル貢献度は「ミドルレベル」(レベル 3.0~3.9)が 18 人、「高度 IT 人材」と定義される

4.0 以上が 13 人となった。

(2) 今後の進め方

評点 中間評価コメント

B

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・計画の発展が沖縄県におけるIT産業の底上げに大きく貢献することが期待される。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・現状の計画は継続させるべきであるが、地域再生の成果を生むためにはアジアとの連携な

ど産業戦略を加味して進めることが望まれる。

・また、最上級のIT産業人材の養成を行う目的であるが、ITSSのチェック結果や講師のコメン

トを見ると、養成のレベルはまだ高いとは言えないので、更なる向上を図ることが望まれる。

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・本人材養成事業の成果を活かし、沖縄県が実施する「IT プロフェッショナル人材育成講座」(ITOP)

の後継事業の検討や沖縄中南圏域産業振興活性化協議会の「IT 産業人材育成ワークグループ」

を基盤とした取り組みにより、地域における IT 産業人材養成拠点の形成に向けた活動を行ってい

る。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・沖縄県内ではアジアと連携した受託開発(オフショアモデル)から、アジア地域の日系企業をマーケ

ットとした企画開発(海外進出モデル)への取り組みが始まっており、JICA 沖縄や沖縄県の「アジア

IT 人材育成センター」「アジア OJT センター」と連携に向けて、人材養成プログラムの構築を検討し

ている。

・養成レベルの向上については、総合評価 2)を参照。

(3) 個別評価①進捗状況

評点 中間評価コメント

b

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・養成人数目標を達成しており、拠点形成も順調に進捗していると判断でき、所期の計画通り

に進捗していると評価する。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・引き続き、養成レベルの改善の努力を期待する。

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・拠点形成においては APITT クラブの運営や沖縄 P2M 研究会への参画など技術者コミュニティ形成

により、「地域の人材は地域で育てる」仕組みを構築できた。

・その他は 総合評価 1)を参照。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・総合評価 2)を参照。

38

(4) 個別評価②拠点形成手法の妥当性

評点 中間評価コメント

b

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

研修プログラムが1~3年の実経験に相当するという企業からの評価もあり、人材養成の手

段・手法など拠点形成手法については妥当であると評価できる。講師もIT関係の民間企業か

ら多く招聘されており、研修プログラムも産学官で検討され、実践的なものとなっている。養成

修了者を講師に登用するなど、継続可能性まで踏まえた取組を行っている点も評価できる。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

ただし、受講者の数学的素養やコミュニケーション能力の向上など、現実に即し目標に近づく

ためのプログラムとカリキュラムの検討が望まれる。

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・公募説明会の開催による企業の認識向上への取組み、コミュニティへの参画と運営支援、ならびに上

司訪問など地域企業に密着した活動の展開を行った。

・第 5期から被養成者のレベル向上に向けてコミュニケーション力(コミュニケーションマネジメント)や数

学力向上(統計)のためのカリキュラム改善を実施した。

・その他は総合評価 1)を参照。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・総合評価 2)を参照。

(5) 個別評価③拠点形成の有効性

評点 中間評価コメント

b

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

沖縄の中小のIT企業の人材を再教育するという点では、一定の役割を果たしている。養成

修了者の地域への定着率も高く、修了者を中心とした技術者コミュニティが組織されつつあ

り、拠点形成の有効性については妥当であると評価できる。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・修了生の定着率は 92%に達し、コミュニティへの積極的な参加により地域における技術者コミュニティ

形成と維持にも貢献している。

・その他は総合評価 1)を参照。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・今後も引き続きコミュニティの継続運営と拡充と共に、沖縄県との連携および沖縄中南圏域産業活性

化協議会の活性化を図る。

39

(6) 個別評価④実施体制の妥当性

評点 中間評価コメント

b

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

県や市との連携も良好であり、産学官から成る検討委員会、カリキュラム委員会など組織的

機能は発揮されており実施体制は妥当であると評価できる

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

今後、受講者間のコミュニケーションのみならず、講師間、大学・連携組織、企業とのコミュニ

ケーションを密にすることで目標達成への条件作りに取り組むことを期待する。

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・産学官各界による委員会の形成と運営、業界コミュニティを媒体とした業界関係者との関係構築を行っ

た。

・また、各期における PDCA サイクルによるカリキュラム改善および民間企業講師の発掘を行うと共に、

企業(管理職)へのアンケートやヒアリングによる企業ニーズのカリキュラムへの反映を進めた。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・沖縄中南圏域産業活性化協議会を産学官連携の場として活用し、大学や自治体および企業とのコミ

ュニケーションの活性化に向けて取り組んでいる。

(7) 実施期間終了後の継続性

評点 中間評価コメント

b

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

業界団体の人材養成ITOP、アジアOJTセンターとの連携など新たな枠組みが検討されて

おり、継続性・発展性の確保は期待できる。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

アジアとの展開については、コールセンター中心から新たに展開し、アジア地域における拠点

性を確保し地域集積を進めて行くために、プログラムの方向性・戦略性が更に望まれる。

中間評価コメントに対応するために実施した施策

1) 機関が実施した取組において評価できる事項

・総合評価 1)を参照。

2) 機関が実施した取組で今後改善を期待する事項

・今後の進め方 2)を参照。

40

Ⅴ.人材養成ユニットの継続性・発展性

1.実施機関の取組としての継続性

本事業で蓄積した「カリキュラム」「講師」「研修運営ノウハウ」を活用し、平成 24 年度より引き続き「新A

PITT」として事業を継続する。

このため、本学では、産学官連携推進機構の准教授 1 名を統括とし、情報工学科特命助教 1 名(本人

材養成の研究員から平成 22年度より採用)、コーディネータ 1名(本人材養成の研究員から平成 23年度

より産学官連携推進機構の非常勤講師として採用。株式会社沖縄 TLO社員。)の 3名による実施体制を

構築した。本体制の下、本人材養成で構築したカリキュラムや運営ノウハウを活用すると共に、引き続き

情報工学科の教員や民間企業の講師の協力を得て、以下の 3 分野の研修を実施する。

ネットワーク構築分野では、本人材養成で構築したカリキュラムを基本編(日中 5 日コース)と応用編

(日中 5 日コース)に分け、各 2 回の計 4 回の研修を実施する。

プロジェクトマネジメント分野では、これまで研修に協力を得た非営利活動法人および地域の業界コミ

ュニティとのタイアップによるプロジェクトマネージャー育成研修(夜間 1 ヶ月コース)を 2 回実施する。この

研修では、本人材養成で対応できなかった、資格試験の受験資格の獲得すると共に沖縄県内において

資格試験を開催することも目的としている。

システム開発(業務系)分野では、株式会社沖縄 TLO(琉球大学内の技術移転機関)との連携により、

外部資金を獲得し、本人材養成のカリキュラムを活用すると共に、さらに実践的なシステム開発上流工程

の研修(夜間 2 ヶ月コース)を 2 回実施する。

なお、事業の予算規模は年間で 900 万円程度を見込んでいる。

2.自治体や地元からの支援による発展性

沖縄県では、補助事業として実施している「IT プロフェッショナル人材育成講座」(ITOP)が平成 23 年

度で終了となるため本人材養成事業の成果を取り入れた新事業の立ち上げについて検討している。また、

「アジアIT人材育成センター」「アジア OJT センター」等の国際的なIT人材育成の拠点形成に向けて取り

組んでおり、これらと連携した IT 人材養成の拠点形成を目指す。

また、那覇市等の11市町村、沖縄県および本学等が参画する沖縄中南圏域産業振興活性化協議会

の「IT 産業人材育成ワークグループ」では、雇用対策事業を活用してエントリー人材の育成を行ってい

る。

以上、本学や自治体の取組みを基盤として、沖縄における「IT 産業人材養成拠点」の形成に取り組ん

でいる。