残胃の形態から見た幽門側胃切除後 のroux stasis syndrome ...roux...

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残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 残胃の形態か見た幽門側胃切除後 Roux stasis syndrome Roux stasis syndrome の検討 の検討 の検討 の検討 の検討 の検討 の検討 の検討 増井俊彦 増井俊彦 1 1 、久保田豊成 、久保田豊成 1 1 、中西保貴 、中西保貴 1 1 、青木恵子 、青木恵子 2 2 、杉本真一 、杉本真一 3 3 高村通生 高村通生 3 3 、武田啓志 、武田啓志 3 3 、橋本幸直 、橋本幸直 3 3 、徳家敦夫 、徳家敦夫 3 3 1)京都大学医学部附属病院 1)京都大学医学部附属病院 外科 外科 2)京都市立病院 2)京都市立病院 外科3)島根県立中央病院 外科3)島根県立中央病院 外科 外科

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Page 1: 残胃の形態から見た幽門側胃切除後 のRoux stasis syndrome ...Roux stasisと器質的原因の有無 Roux stasis は器質的狭窄がないにもかかわらず摂 食が不可能となった状態である。

残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後残胃の形態から見た幽門側胃切除後ののののののののRoux stasis syndromeRoux stasis syndromeの検討の検討の検討の検討の検討の検討の検討の検討

増井俊彦増井俊彦11、久保田豊成、久保田豊成1 1 、中西保貴、中西保貴1 1 、青木恵子、青木恵子2 2 、杉本真一、杉本真一3 3 、、高村通生高村通生3 3 、武田啓志、武田啓志3 3 、橋本幸直、橋本幸直3 3 、徳家敦夫、徳家敦夫3 3

1)京都大学医学部附属病院1)京都大学医学部附属病院 外科外科

2)京都市立病院2)京都市立病院 外科3)島根県立中央病院外科3)島根県立中央病院 外科外科

Page 2: 残胃の形態から見た幽門側胃切除後 のRoux stasis syndrome ...Roux stasisと器質的原因の有無 Roux stasis は器質的狭窄がないにもかかわらず摂 食が不可能となった状態である。

Roux stasisRoux stasisと器質的原因の有無と器質的原因の有無と器質的原因の有無と器質的原因の有無と器質的原因の有無と器質的原因の有無と器質的原因の有無と器質的原因の有無

�� Roux stasisRoux stasisは器質的狭窄がないにもかかわらず摂は器質的狭窄がないにもかかわらず摂食が不可能となった状態である。食が不可能となった状態である。

�� 内視鏡上狭窄所見が指摘できなかったにもかかわらず、強内視鏡上狭窄所見が指摘できなかったにもかかわらず、強い屈曲のために摂食の開始が遅れたい屈曲のために摂食の開始が遅れたRoux stasisRoux stasisの症例をの症例を経験した。経験した。

平成24年度京都大学外科冬季研究会

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背景背景背景背景背景背景背景背景

�� 幽門側胃切除後の再建において幽門側胃切除後の再建においてRouxRoux--en Yen Y法によ法による再建はる再建はBillrothBillroth--11法や法や22法に比べて1)残胃炎や逆法に比べて1)残胃炎や逆

流性食道炎、2)残胃癌、3)縫合不全、の発生率の流性食道炎、2)残胃癌、3)縫合不全、の発生率の低さが有利な点とされている。低さが有利な点とされている。

�� 一方、一方、Roux stasis syndromeRoux stasis syndromeとよばれる特有の胃とよばれる特有の胃内容鬱滞が認められ、内容鬱滞が認められ、1010%から%から6767%まで様々な報%まで様々な報

告がある。告がある。

�� 原因として、挙上空腸の神経障害、血流障害などが原因として、挙上空腸の神経障害、血流障害などが推定されているが、これまでに吻合部形態から検討推定されているが、これまでに吻合部形態から検討

した報告は見られない。した報告は見られない。

平成24年度京都大学外科冬季研究会

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�� 今回我々は、術後透視による形態から吻合今回我々は、術後透視による形態から吻合時の胃空腸吻合方向を想定し時の胃空腸吻合方向を想定しRoux stasisRoux stasisのの頻度を検討した。頻度を検討した。

目的目的目的目的目的目的目的目的

平成24年度京都大学外科冬季研究会

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対象対象対象対象対象対象対象対象

�� 20072007年年1111月から月から20102010年年1010月までの月までの33年間に当年間に当院において胃癌に対して幽門側胃切除術を施院において胃癌に対して幽門側胃切除術を施行し、行し、RouxRoux--en Yen Y法にて再建された法にて再建された101101症例症例

�� 腫瘍の位置、腫瘍の深達度、手術時間、出血腫瘍の位置、腫瘍の深達度、手術時間、出血量、結腸前・後再建、術後量、結腸前・後再建、術後44日目の胃透視にお日目の胃透視における吻合方向ける吻合方向

検討項目検討項目検討項目検討項目検討項目検討項目検討項目検討項目

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Roux stasisRoux stasisの定義の定義の定義の定義の定義の定義の定義の定義�� Roux stasisRoux stasisの定義は、腹痛、腹満感により術後の定義は、腹痛、腹満感により術後77日以上日以上

の固形物摂取不可、あるいは再絶食を要した症例、かつの固形物摂取不可、あるいは再絶食を要した症例、かつ

内視鏡的に狭窄を認めないもの、とした。内視鏡的に狭窄を認めないもの、とした。

�� さらに、術後絶食期間および再絶食期間にて以下のグさらに、術後絶食期間および再絶食期間にて以下のグレードに分類した。レードに分類した。

Roux stasis grade

固形物摂取開始時期

再絶食期間 嘔吐 全身状態術後補助化学療法の延期の必要性

mild POD7-POD10 3日以内 +- 良好 なし

moderate POD11-POD17 4日~9日 +おおむね

良好なし

severe POD18以降 10日以上 + 不良 あり

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残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類残胃吻合部形態の分類�� 全例端端吻合、手縫い全例端端吻合、手縫い(Gambee(Gambee一層一層))で胃空腸吻合を施行。で胃空腸吻合を施行。

�� POD4時の造影時に脊椎から想定された垂直線に対する造影POD4時の造影時に脊椎から想定された垂直線に対する造影剤流出角度で以下の三形態に分類剤流出角度で以下の三形態に分類

30°以上 -30°以上

18% 62% 4%

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StasisStasis発生症例における造影例発生症例における造影例発生症例における造影例発生症例における造影例発生症例における造影例発生症例における造影例発生症例における造影例発生症例における造影例

�� POD4POD4 �� stasisstasis改善時改善時

Type I

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Roux stasisRoux stasisとの関連因子との関連因子との関連因子との関連因子との関連因子との関連因子との関連因子との関連因子stasis stasisなし stasisあり 計 p

Number 84 17 101 n.a.

性別 男性 55 14 69

女性 29 3 32 0.2543

年齢 平均 70.2 67.4 69.7 0.2894

手術時間(min) mean 269.9 269.2 269.8 0.7199

出血量(g) mean 387.5 369.3 384.6 0.8154

腫瘍深達度 m/sm 40 10 50

mp< 43 8 51 0.7566

腫瘍部位 A 37 12 49

M 47 5 52 0.0458

再建方法 antecolic 50 13 63

retrocolic 34 4 38 0.2734

Type I 18 11 29

II 62 6 68

III 4 0 4 0.0014

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重症度との相関重症度との相関重症度との相関重症度との相関重症度との相関重症度との相関重症度との相関重症度との相関

stasisなし mild mod. severe 計 p

Number 84 3 5 9 101 n.a.

腫瘍部位 A 37 1 4 7 49

M 47 2 1 2 52 0.1107

Type I 18 1 4 6 29

II 62 2 1 3 68

III 4 0 0 0 4 0.0187

�� TypeType IIにて有意ににて有意にRoux stasis syndromeRoux stasis syndromeのの重症度が高い。重症度が高い。

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吻合方向と吻合方向と吻合方向と吻合方向と吻合方向と吻合方向と吻合方向と吻合方向とRoux stasisRoux stasis

stasisなし stasisあり 計 p

Type I 18 11 29

II+III 66 6 72 0.0003

�� 透視上、造影剤が透視上、造影剤が3030°°以上十二指腸方向へ流れる以上十二指腸方向へ流れるものは有意にものは有意にRoux stasisRoux stasisをきたしやすい。をきたしやすい。

TypeI TypeII or III

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Roux stasisRoux stasisRoux stasisRoux stasisRoux stasisRoux stasisRoux stasisRoux stasis症例症例症例症例症例症例症例症例Type grade 年齢

stasis発生POD(日)

回復POD(日) stasis期間(日)

Ⅰ mild 66 14 16 2

Ⅰ moderate 53 13 20 7

Ⅰ moderate 66 21 30 9

Ⅰ moderate 76 11 20 9

Ⅰ moderate 80 13 18 5

Ⅰ severe 46 11 25 14

Ⅰ severe 82 8 25 17

Ⅰ severe 74 7 18 11

Ⅰ severe 69 8 25 17

Ⅰ severe 53 13 66 53

Ⅰ severe 76 9 21 12

Ⅱ mild 83 15 18 3

Ⅱ mild 53 14 18 4

Ⅱ moderate 70 11 17 6

Ⅱ severe 71 13 27 14

Ⅱ severe 66 11 24 13

Ⅱ severe 62 8 22 14

平均 11.8日 24.1日 12.4日

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結果結果結果結果結果結果結果結果

�� Roux stasisRoux stasisと腫瘍の深達度、手術時間、出と腫瘍の深達度、手術時間、出血量とは関連が認められなかった。血量とは関連が認められなかった。

�� 腫瘍が前庭部にある症例に腫瘍が前庭部にある症例にstasisstasisが多く認が多く認められた。められた。

�� TypeII, TypeIIITypeII, TypeIII症例と比較して症例と比較してTypeITypeI症例は症例は有意に有意にRoux stasisRoux stasisが高頻度で、重症例が多が高頻度で、重症例が多く認められた。く認められた。

�� Roux stasisRoux stasisは術後平均は術後平均1212日目で発生、約日目で発生、約22週間で改善していた。週間で改善していた。

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結語結語結語結語結語結語結語結語

�� Roux stasisRoux stasisは食事摂取量とのバランス、挙は食事摂取量とのバランス、挙

上空腸の蠕動不良といった要因に加えて、吻上空腸の蠕動不良といった要因に加えて、吻合方向の設定が関係していることが示唆され合方向の設定が関係していることが示唆された。た。

�� 少なくとも垂直方向から右方向に少なくとも垂直方向から右方向に3030°°以上屈以上屈曲することを防止することで曲することを防止することでRoux stasisRoux stasis症例症例

が減少する可能性がある。が減少する可能性がある。

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