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951 日本建築学会技術報告集 第 24 巻 第 58 号,951-956,2018 年 10 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 24, No.58, 951-956, Oct., 2018 DOI https://doi.org/10.3130/aijt.24.951 上部構造と免震層の等価周期比 を用いた免震建物の応答予測式 RESPONSE PREDICTION FORMULA FOR BASE-ISOLATED BUILDING BY USING PERIOD RATIO BETWEEN SUPERSTRUCTURE AND SEISMIC ISOLATION LAYER 付 慧鑫ーーーー *1 佐藤大樹ーーーー *2 北村春幸ーーーー *3 松田頼征ーーーー *4 宮川和明ーーーー *5 植木卓也ーーーー *6 村上行夫ーーーー *6 キーワード: 免震建物,上部構造周期,等価変形,予測曲線 Keywords: Base-isolated building, Superstructure period, Equivalent deformation, Prediction curve Huixin FUーーーーーーーーー *1 Daiki SATOーーーーーーー *2 Haruyuki KITAMURA*3 Yoriyuki MATSUDAーー *4 Kazuaki MIYAGAWAーー *5 Takuya UEKIーーーーーー *6 Yukio MURAKAMIーーー *6 Since 1995, seismic isolation structures have been applied effectively to buildings whose superstructure is characterized to have a long fundamental period such as steel-framed and high-rise buildings. However, for logistics warehouses which are designed to be long span and a high floor height to create a large internal space, there is a possibility that such buildings will not deform as expected. This study proposes a response prediction formula for base-isolated building by using period ratio between the superstructure and the seismic isolation layer. *1 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻 大学院生 (〒 278-8510 千葉県野田市山崎 2641) *2 東京工業大学未来産業技術研究所 准教授・博士(工学) *3 東京理科大学 副学長・博士(工学) *4 東京理科大学理工学部建築学科 助教・博士(工学) *5 JFEシビル㈱ 博士(工学)  *6 JFE スチール㈱ *1 Graduate Student, Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science *2 Assoc. Prof., FIRST, Tokyo Inst. of Technology, Dr. Eng. *3 Vice President, Tokyo Univ. of Science, Dr. Eng. *4 Assist. Prof., Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science, Dr. Eng. *5 JFE Civil Engineering & Construction Corp., Dr. Eng. *6 JFE Steel Corp. 1.はじめに 1995 年以降,免震建物が増加し,鉄骨造建物や超高層建物にも免 震構造が適用されるようになり,上部構造の 1 次固有周期が長い免 震建物も設計されるようになってきた 1) 。また,インターネット通販 市場の拡大と 2011 年東北地方太平洋沖地震の影響で,物流倉庫に免 震構造を採用する事例が増えてきた。物流倉庫では,内部空間を広く 確保したいという要求から,スパンが長く,階高が高く設計されてい る。そのような建物に免震構造を採用する場合,上部構造の周期と免 震周期の差が小さくなるため,免震効果が十分に発揮されない可能 性がある。免震層の最大応答について,応答スペクトルを用いた新た な予測方法が提案され,精度改善の検証が行われた 2), 3) 。一方で,こ れまでの検討では,基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期が長い 免震建物は上部構造のせん断力係数が大きくなり,上部構造でもエ ネルギーを吸収することを確認した 4) 。これに伴い,上部構造の変形 の増大を引き起こすことも考えられる。笠井らは,上部構造・免震層 のバランス,免震層の剛性と減衰,による免震効果の変化について, 等価線形化手法を用いて,上部構造の柔性を考慮した免震応答の仕 組みを示すとともに,免震性能曲線も提案している 5) 本報では,エネルギーの釣合に基づいて免震建物を設計する際,上 部構造の周期について,設計クライテリアを満足するための適切な 範囲を把握できる手法を提案することを目的とする。具体的には,免 震層の等価周期と基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期の比率を 用いた,免震建物の上部構造の変形予測式を提案する。検討では, 基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期,アイソレータのみの周期, 免震層に設置された履歴ダンパーの降伏せん断力係数および入力地 震動をパラメータとする。さらに,免震層の変形と上部構造の層間 変形角を設計クライテリア内に収めるための適切な上部構造の周期 について,本予測式を用いた設計例を示す。 2.解析条件および入力地震動の概要 2.1 解析モデルの概要 本報では,長辺方向 11.2 m スパン,短辺方向 10.4 m スパン,平面 67.2 m × 41.6 m の整形な形状を持つ 4 階建ての鉄骨造物流倉庫を対 象とする。階高は 1 ~ 3 階が 7.5 m4 階が 6.6 m である。基準階伏図 と検討対象とする長辺方向の軸組図を図 1 に示す。床の固定荷重と 地震用積載荷重の合計は 10.8 kN/m 2 とする。柱部材は□-400×400× 22 ~ 28,梁部材は長辺方向に H-700×300×14×22,短辺方向に H- 700×250×14×28 を採用している。免震層は天然ゴム系積層ゴムと 履歴ダンパーで構成される。図 2 に,免震層の配置例を示す。積層ゴ ムは外柱下に 800 mm,中柱下に 1000 mm をそれぞれ,20 基,15 基,ダンパーを 16 基配置する。基礎固定時でのラーメン架構の 1 固有周期は 3.0 s である。本報では,基礎固定時での上部構造の 1 固有周期 T u を調節するために,15 通りの全面に弾性ブレースを配 置する。解析にあたっては,上部構造とアイソレータは弾性,ダンパ ーは完全弾塑性型の復元力特性とする。履歴ダンパーの降伏変形 s δ y 3 cm である。減衰定数は上部構造の 1 次固有周期 T u に対して h = 2 %となる初期剛性比例型の減衰を上部構造のみに与え,免震層は 無減衰とする。

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951

日本建築学会技術報告集 第 24 巻 第 58 号,951-956,2018 年 10 月AIJ J. Technol. Des. Vol. 24, No.58, 951-956, Oct., 2018

DOI https://doi.org/10.3130/aijt.24.951

上部構造と免震層の等価周期比を用いた免震建物の応答予測式

RESPONSE PREDICTION FORMULA FOR BASE-ISOLATED BUILDING BY USING PERIOD RATIO BETWEEN SUPERSTRUCTURE AND SEISMIC ISOLATION LAYER

付 慧鑫ー ーーーー * 1 佐藤大樹ー ーーーー* 2北村春幸ー ーーーー * 3 松田頼征ー ーーーー* 4宮川和明ー ーーーー * 5 植木卓也ー ーーーー* 6村上行夫ー ーーーー* 6

キーワード:免震建物,上部構造周期,等価変形,予測曲線

Keywords:Base-isolated building, Superstructure period, Equivalent deformation, Prediction curve

Huixin FUーーーーーーーーーー * 1 Daiki SATOーーーーーーーー * 2Haruyuki KITAMURAー ー * 3 Yoriyuki MATSUDAーーー * 4Kazuaki MIYAGAWAーーー * 5 Takuya UEKIーーーーーーー * 6Yukio MURAKAMIー ーーー * 6

Since 1995, seismic isolation structures have been applied effectively to buildings whose superstructure is characterized to have a long fundamental period such as steel-framed and high-rise buildings. However, for logistics warehouses which are designed to be longspan and a high floor height to create a large internal space, there is a possibility that such buildings will not deform as expected. This study proposes a response prediction formula for base-isolated building by using period ratio between the superstructure and the seismic isolation layer.

*1 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻 大学院生(〒 278-8510 千葉県野田市山崎 2641)

*2 東京工業大学未来産業技術研究所 准教授・博士(工学)*3 東京理科大学 副学長・博士(工学)*4 東京理科大学理工学部建築学科 助教・博士(工学)*5 JFE シビル㈱ 博士(工学) *6 JFE スチール㈱

*1 Graduate Student, Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science

*2 Assoc. Prof., FIRST, Tokyo Inst. of Technology, Dr. Eng.*3 Vice President, Tokyo Univ. of Science, Dr. Eng.*4 Assist. Prof., Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science, Dr. Eng.*5 JFE Civil Engineering & Construction Corp., Dr. Eng.*6 JFE Steel Corp.

上部構造と免震層の等価周期比を用いた免震建物の応答予測式

RESPONSE PREDICTION FORMULAFOR BASE-ISOLATED BUILDING BYUSING PERIOD RATIO BETWEEN SUPERSTRUCTURE AND SEISMICISOLATION LAYER

付 慧鑫 *1 佐藤大樹 *2北村春幸 *3 松田頼征 *4宮川和明 *5 植木卓也 *6村上行夫 *6

キーワード: 免震建物,上部構造周期, 等価変形,予測曲線

Keywords: Base-isolated building, Superstructure Period,Equivalent Deformation, Prediction Curve

Huixin FU *1 Daiki SATO *2 Haruyuki KITAMURA *3 Yoriyuki MATSUDA *4 Kazuaki MIYAGAWA *5 Takuya UEKI *6Yukio MURAKAMI *6

Since 1995, seismic isolation structures have been applied effectively to buildingswhose superstructure is characterized to have a long fundamental period such as steel-framed and high-rise buildings. However, for logistics warehouses which are designedtobe long spananda high floorheight tocreatea large internal space, there isa possibilitythat such buildings will not deform as expected. This study proposes a responseprediction formula for base-isolated building by using period ratio between thesuperstructure and the seismic isolation layer.

1.はじめに

1995 年以降,免震建物が増加し,鉄骨造建物や超高層建物にも免

震構造が適用されるようになり,上部構造の 1 次固有周期が長い免

震建物も設計されるようになってきた 1)。また,インターネット通販

市場の拡大と 2011 年東北地方太平洋沖地震の影響で,物流倉庫に免

震構造を採用する事例が増えてきた。物流倉庫では,内部空間を広く

確保したいという要求から,スパンが長く,階高が高く設計されてい

る。そのような建物に免震構造を採用する場合,上部構造の周期と免

震周期の差が小さくなるため,免震効果が十分に発揮されない可能

性がある。免震層の最大応答について,応答スペクトルを用いた新た

な予測方法が提案され,精度改善の検証が行われた 2), 3)。一方で,こ

れまでの検討では,基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期が長い

免震建物は上部構造のせん断力係数が大きくなり,上部構造でもエ

ネルギーを吸収することを確認した 4)。これに伴い,上部構造の変形

の増大を引き起こすことも考えられる。笠井らは,上部構造・免震層

のバランス,免震層の剛性と減衰,による免震効果の変化について,

等価線形化手法を用いて,上部構造の柔性を考慮した免震応答の仕

組みを示すとともに,免震性能曲線も提案している 5)。

本報では,エネルギーの釣合に基づいて免震建物を設計する際,上

部構造の周期について,設計クライテリアを満足するための適切な

範囲を把握できる手法を提案することを目的とする。具体的には,免

震層の等価周期と基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期の比率を

用いた,免震建物の上部構造の変形予測式を提案する。検討では,

基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期,アイソレータのみの周期,

免震層に設置された履歴ダンパーの降伏せん断力係数および入力地

震動をパラメータとする。さらに,免震層の変形と上部構造の層間

変形角を設計クライテリア内に収めるための適切な上部構造の周期

について,本予測式を用いた設計例を示す。

2.解析条件および入力地震動の概要

2.1 解析モデルの概要

本報では,長辺方向 11.2 m スパン,短辺方向 10.4 m スパン,平面

67.2 m × 41.6 m の整形な形状を持つ 4 階建ての鉄骨造物流倉庫を対

象とする。階高は 1 ~ 3 階が 7.5 m,4 階が 6.6 m である。基準階伏図

と検討対象とする長辺方向の軸組図を図 1 に示す。床の固定荷重と

地震用積載荷重の合計は 10.8 kN/m2 とする。柱部材は□-400×400×

22 ~ 28,梁部材は長辺方向に H-700×300×14×22,短辺方向に H-

700×250×14×28 を採用している。免震層は天然ゴム系積層ゴムと

履歴ダンパーで構成される。図 2 に,免震層の配置例を示す。積層ゴ

ムは外柱下に 800 mm,中柱下に 1000 mm をそれぞれ,20 基,15

基,ダンパーを 16 基配置する。基礎固定時でのラーメン架構の 1 次

固有周期は 3.0 s である。本報では,基礎固定時での上部構造の 1 次

固有周期 Tu を調節するために,1,5 通りの全面に弾性ブレースを配

置する。解析にあたっては,上部構造とアイソレータは弾性,ダンパ

ーは完全弾塑性型の復元力特性とする。履歴ダンパーの降伏変形 sδy

は 3 cm である。減衰定数は上部構造の 1 次固有周期 Tu に対して h =

2 %となる初期剛性比例型の減衰を上部構造のみに与え,免震層は

無減衰とする。

*1 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻 大学院生

(〒278-8510 千葉県野田市山崎 2641)

*1 Graduate Student, Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science

*2 東京工業大学未来産業技術研究所 准教授・博士(工学) *2 Assoc. Prof., FIRST, Tokyo Inst. of Technology, Dr.Eng.*3 東京理科大学理工学部建築学科 教授・博士(工学) *3 Prof., Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science, Dr.Eng.*4 東京理科大学理工学部建築学科 助教・博士(工学) *4 Assist. Prof., Dept. of Architecture, Tokyo Univ. of Science, Dr.Eng.*5 JFE シビル株式会社 博士(工学) *5 JFE Civil Engineering & Construction Corp., Dr.Eng.*6 JFE スチール株式会社 *6 JFE Steel Corp.

952

解析パラメータとして,弾性ブレースの断面を変えることによっ

て,基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期 Tuを 0.8 s ~ 2.6 s に変動

させる。また,上部構造剛体時のアイソレータのみの周期 Tf を 4 s,

6 s に,免震層に設置される履歴ダンパーの降伏せん断力係数 αs を

0.010 ~ 0.050 の範囲で変動させる(表 1)。

2.2 入力地震動の概要

入力地震動は,HACHINOHE(1968)EW 成分と JMA KOBE(1995)

NS成分を位相特性に用い,コーナー周期以降で擬似速度応答スペク

トル pSv (h = 5 %)が 80 cm/s で一定となる告示波の入力レベルを 0.5

倍,1.0 倍,1.5 倍した地震動とする。それぞれ,ART HACHI 40,

ART HACHI 80,ART HACHI 120,ART KOBE 40,ART KOBE 80,

ART KOBE 120 と呼ぶ。図 3 に,擬似速度応答スペクトル pSv (h = 5 %)

とエネルギースペクトル VE (h = 10 %)を示す。

3.等価周期比 Teq /Tuと等価変形倍率δueq /δ0の定義

本報では,まず,免震層アイソレータのみの周期 Tf,履歴ダンパー

の降伏せん断力係数 αs および入力地震動を変化させたときの免震等

価周期 Teq をそれぞれ求める。その後,基礎固定時での上部構造の 1

次固有周期 Tu に対する免震等価周期 Teq の比(以降,等価周期比と呼

ぶ)に着目し,等価周期比 Teq /Tu が上部構造の変形に与える影響につ

いて予測式を提案する。図 4 に示すように,Keqを免震層が最大変形

時における等価剛性とし,式(1)で表す。免震等価周期 Teq は免震等価

剛性 Keq に基づく周期であり,式(2)で表される。

sys

feq kkKmax

(1) , eq

eq KMT 2 (2)

ここで,kf:アイソレータ群の剛性,ks:履歴ダンパー群の初期剛性,

sδy:履歴ダンパーの降伏変形,δmax:免震層の最大変形,M:上部構

造の総質量である。

図 5 には,質点系に基づいた上部構造と免震層の変形の定義を示

す。上部構造の等価変形 δueq は,式(3)に示すように,上部構造の 1 階

と中間階における最大変位の差とする。なお,中間階は上部構造高さ

の半分に最も近い階と定義する。

1M xxueq (3)

ここで,xM:上部構造の中間階の最大変位,x1:免震建物における上

部構造 1 階の最大変位である。

本報では,上部構造の等価変形 δueq とダンパーが存在せずアイソレ

ータが無減衰の場合の免震層の最大変形 δ0(詳細を 4.2 節で示す)と

の比 δueq /δ0 を等価変形倍率と呼ぶ。次章では δueq /δ0 の予測式の導出

を行い,その妥当性の検討を行う。

4.等価変形倍率δueq /δ0の予測式の提案

等価変形倍率 δueq /δ0 は式(4)のように表すことができる。

0

max

max0

uequeq (4)

本章では,δueq /δmaxの予測方法と予測精度について検討を行い,エネ

ルギーの釣合に基づいた等価変形倍率 δueq /δ0 の予測式を提案する。

その後,予測式から得られた等価変形倍率 δueq /δ0 の予測値と時刻歴

応答解析の結果を用い,予測式の検証を行う。

4.1 δueq /δmaxの予測方法および検証

δueq /δmaxは時刻歴応答解析時の免震層最大変形に対する上部構造の

等価変形の比であり,上部構造の増幅を表す。

上部構造 1 層目の最大せん断力係数と免震層の最大せん断力係数

が等しいと仮定する。免震層の最大せん断力を用い,上部構造の 1 層

目に伝わる最大せん断力 Qu1 は式(5)と表せる。なお,式(5)の検証を

付録 1 に示す。

max1 QMM

Q uu (5)

ここで,Mu:1 層より上層の総質量,Qmax:免震層の最大層せん断力

である。

上部構造

固有周期 Tu 0.8, 1.0, 1.2, 1.4,

1.6, 1.8, 2.6 秒

免震層

アイソレータ

のみの周期 Tf

4.0 秒

6.0 秒

ダンパーの降伏

せん断力係数 αs

0.010, 0.015, 0.020,

0.030, 0.040, 0.050, δueq

δmax (x1)

履歴ダンパー

800 mm

図 3 解析用入力地震動

ART HACHI 80 ART KOBE 80

1000 mm

図 2 免震層の配置例 A C D GB

1

2

3

5

11.2 m×6=67.2 mE F

4

表 1 解析パラメータ一覧

ART HACHI 40 ART KOBE 40

(a) 擬似速度スペクトル

(h = 5 %)

(b) エネルギースペクトル

(h = 10 %)

図 4 免震等価剛性 図 5 質点系に基づいた変形

上部構造

免震層

Qmax

Qy

δmaxδ

Q

sδy

Keq

ART KOBE 120 ART HACHI 120

A C D GB

1

2

3

5

11.2 m×6=67.2 mE F

4

10.4

4=41

.6 m

(a) 基準階伏図

(b) 弾性ブレース配置構面軸組図

図 1 伏図と軸組図

弾性ブレース

11.2 m×6=67.2 m

7.5

3 +

6.6

m =

29.

1 m

R

4

3

2

1

A C D GB E F

953

上部構造の等価変形 δueq は式(6)で表される。免震層の最大変形 δmax

は図 4 に示すように,免震等価剛性 Keq を用いて表現できる(式(7))。

なお,式(6)の検証を付録 2 に示す。

ueq

uueq K

Q 1 (6) , eqK

Qmaxmax (7)

また, Kueq は基礎固定時の上部構造の等価剛性であり,式(8)より求

める。それと同様に,免震等価剛性 Keq は式(9)と表せる。

2

24

u

uueq T

MK (8) , 2

24

eqeq

TMK (9)

式(5) ~ 式(7)より,δueq /δmaxは次式で表せる。

ueq

equueq

KK

MM

max

(10)

式(8)と式(9)を式(10)に代入すると,δueq /δmaxは次式に示すように,等

価周期比 Teq /Tu の-2 乗で表されることが分かる。

2

max u

equeq

TT

(11)

免震構造設計指針 6)において,上部構造の応答増幅は上部構造と免

震層の剛性比に依存すると示されている。式(11)はそれと同義である。

6 種類の地震動を入力した際の,等価周期比 Teq /Tu と δueq /δmax の関

係を図 6 に示す。同図より,等価周期比 Teq /Tu の減少に従い,δueq /δmax

が大きくなることが分かる。図中破線は最小二乗法から求めた近似

曲線 7)である。δueq /δmaxは等価周期比 Teq /Tu の概ね-2 乗に比例し,式

(11)と良い対応を示すことが確認できる。また,等価周期比 Teq /Tu が

1.0 の場合,上部構造の等価変形 δueq は免震層の最大変形 δmax と概ね

等しい(δueq /δmax = 1)ことが確認できる。図中の近似曲線と式(11)の

違いは,上部構造 1 層目と免震層の最大せん断力係数が等しいと仮

定しているためと考えられる。

δueq /δmaxについて,時刻歴応答解析結果(解析値)と式(11)より得

られた予測値の関係を図 7 に示す。ここでは,式(11)の妥当性の検証

が目的であるため,式(11)中の Teq を算出する際の免震層の最大変形

δmax は時刻歴応答解析の結果を用いる。同図より,δueq /δmax の予測値

はばらつきが小さく,解析値と良い対応が見られる。

4.2 δmax/δ0の予測方法

δmax /δ0 と免震層ダンパーの降伏せん断力係数比 αs /α0 の関係につい

て,秋山らは次式を提案している 8), 9)。

1442

01

01

00

max ssf nn (12)

20Ef VT (13) ,

gTV

f

E20 (14)

ここで,δ0:ダンパーが存在せずアイソレータが無減衰時の免震層の

最大変形(式(13)),αf:アイソレータのせん断力係数,α0:ダンパー

が存在せずアイソレータが無減衰時の免震層のせん断力係数(式

(14)),n1:等価繰り返し数,VE:入力エネルギーの速度換算値である。

式(12)は上部構造を剛体として,入力エネルギーの全てが免震層で

吸収されると仮定しているため,本報で対象としている免震建物の

ように,上部構造でもエネルギーを吸収する場合は,免震層の最大変

形 δmaxが安全側の評価となる。

4.3 予測式の検証

式(11)と式(12)を式(4)に代入すると,等価変形倍率 δueq /δ0 の予測式

は式(15)で表される。

1442

01

01

2

0

ss

u

equeq nnTT

(15)

等価周期比 Teq /Tu が 1.0 の場合,式(15)は式(12)と一致する。つまり,

4.1 節で述べたように,Teq /Tu が 1.0 の場合,上部構造の等価変形 δueq

は免震層の最大変形 δmaxと等しくなるため,δueq /δ0 = δmax /δ0 となる。

表 2 には,それぞれの入力地震動について,基礎固定時での上部

構造の 1 次固有周期 Tu,アイソレータのみの周期 Tf および履歴ダン

パーの降伏せん断力係数 αs を変化させた場合の n1 の平均値を示す。

表 2 の値を用い,式(15)から求めた等価変形倍率 δueq /δ0 の予測値と時

刻歴応答解析による解析値との比較を図 8 に示す。なお,ダンパー

が存在しない場合の免震層の層せん断力係数 α0(式(14))を計算する

際には,n1 と同様にそれぞれの入力地震動について,解析から得られ

た VE の平均値を用いた。

ART

HACHI 40 ART

HACHI 80 ART

HACHI 120 ART

KOBE 40 ART

KOBE 80 ART

KOBE 120

平均値 3.3 6.4 8.0 0.9 1.7 2.2

図 7 δueq /δmax の解析値と予測値の比較 図 8 等価変形倍率 δueq /δ0 の解析値と予測値の比較

図 6 Teq /Tu と δueq /δmaxの関係 表 2 各入力地震動の n1

0 2 4 6 8Teq /Tu0

0.5

1

1.5

2

2.5δueq /δmax

近似曲線: ART HACHI 40

ART HACHI 80

ART HACHI 120

ART KOBE 40

ART KOBE 80

ART KOBE 120

ART HACHI 40

ART HACHI 80

ART HACHI 120

ART KOBE 40

ART KOBE 80

ART KOBE 120

ART HACHI 40

ART HACHI 80

ART HACHI 120

ART KOBE 40

ART KOBE 80

ART KOBE 120

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5解析値 δueq /δ0

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

予測

値δ u

eq/δ

0

954

同図より,等価変形倍率 δueq /δ0 の予測値は解析値に対して多少ば

らつくことが確認できる。図 7 より式(11)から求めた δueq /δmax の予測

値は解析値と良い対応が確認できたため,このばらつきは,エネルギ

ーの釣合式(式(12))の等価繰り返し数 n1 によるばらつきと考えられ

る。全体的には,等価変形倍率 δueq /δ0 の予測値と解析値は概ね対応

ができていると言える。なお,上部構造のエネルギー吸収率が入力エ

ネルギーに対して 20 %以下,等価周期比 1.5 以上の範囲で本予測式

(式(15))を用いることを推奨する。ただし,この適用範囲について

は更なる検討が必要であることを追記する。

5.予測曲線と設計例

本章では,等価周期比 Teq /Tu と免震層履歴ダンパーの降伏せん断力

係数比 αs /α0 を変数とした,等価変形倍率 δueq /δ0 の予測曲線を作成す

る。その後,予測曲線を用い,基礎固定時での上部構造の 1 次固有

周期 Tu に関する設計例を示す。なお,入力地震動は ART HACHI 80

とし,表 2 より整数を取り,等価繰り返し数 n1 = 6 とする。

5.1 等価周期比に基づく上部構造変形の予測曲線

式(15)に基づき,履歴ダンパーの降伏せん断力係数比 αs /α0を横軸,

等価周期比 Teq /Tu を変数とした予測曲線を図 9 に示す。同図の実線

は履歴ダンパーの降伏せん断力係数比 αs /α0 とアイソレータのせん断

力係数比 αf /α0 の関係(左の縦軸),破線はそれぞれの等価周期比 Teq/Tu

における,αs /α0 と等価変形倍率 δueq /δ0 の関係(右の縦軸)を表して

いる。ここで,α1 /α0 は免震層の全せん断力係数比であり,次式を満

たすことから,図 9 に凹の曲線で表される。

0001 /// sf (16)

図 9 の実線に着目すると,4.1 節で述べたように,上部構造を剛体

とした場合のアイソレータのせん断力係数比 αf /α0 は,免震層無減衰

時の変形に対する免震層の最大変形の比 δmax/δ0 と等しい(式(12))。

その関係を用いて,履歴ダンパーの降伏せん断力係数比 αs/α0 の変化

に従う免震層最大変形 δmax/δ0 の変化を把握し,免震層変形が設計ク

ライテリアを満足するかが判断できる。

図 9 の破線に着目すると,履歴ダンパーの降伏せん断力係数比 αs/α0

の増大に従い,等価変形倍率 δueq /δ0が小さくなることが確認できる。

また,等価変形倍率 δueq /δ0 は,等価周期比 Teq /Tu の増大に従って小さ

くなることが確認できる。

本予測曲線を用いることによって,アイソレータのみの周期 Tf ,

入力地震動の VE に関わらず,ある履歴ダンパーの降伏せん断力係数

比 αs/α0 に対して,上部構造の等価変形 δueq と免震層の最大変形 δmax

の関係を把握し,等価変形倍率が設計クライテリアを満たすための

等価周期比 Teq /Tu の範囲を読み取れる。

5.2 予測曲線を用いた設計例

本設計例は,入力地震動,免震層変形および上部構造の層間変形角

のクライテリアを設定し,等価変形倍率の予測曲線を用いて,条件を

満たすための基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期 Tu の範囲を求

める手法である。設計フローを図 10 に示す。

本節では,2.1 節と同じモデルを用いる。免震層直上の階を除いた

上部構造の質量 Mu = 14,354 ton,建物の総質量 M = 20,303 ton,1 階

から中間階までの高さ Hueq = 1500 cm である。

STEP 1:入力地震動を設定する

ART HACHI 80 を想定して,VE = 180 cm/s,n1 = 6 と設定する。

STEP 2:設計クライテリアを設定する

レベル 2 地震動である ART HACHI 80 に対する免震建物の設計ク

ライテリアを,免震層変形 δmax (C) = 40 cm,上部構造の層間変形角

Rueq(C)= (δueq /Hueq) = 1/300 とする。

STEP 3:免震層の最大変形を確認する

n1 = 6 のとき,免震層の全せん断力係数比(α1 /α0)とダンパーの降

伏せん断力係数比(αs /α0)の関係は図 11 の実線で示される。図 11 よ

り,α1 /α0 の極小値における αs /α0 は 0.14,αf /α0 は 0.15 であることが

分かる。免震層アイソレータのみの周期 Tf を 6 s と仮定すると,ダン

パーが存在せずアイソレータが無減衰の場合の免震層の最大変形 δ0

は,式(13)を用いて 172 cm となる(式(17))。

cm1722

618020

fE TV

(17)

式(12)の関係と図 11 から得られた αf /α0(式(18))を用いて,免震層の

最大変形の予測値 δmax (P)は 25.5 cm となり(式(19)),免震クライテリ

ア(40 cm)以内に収まることが確認できる。

15.00

max

0

f (18)

cm40cm5.2517215.000

max(P)max

(19)

なお免震層の最大変形の予測値 δmax (P)が免震クライテリア δmax (C)を

超える場合,免震層アイソレータのみの周期 Tf を短くし,STEP 3 に

S = STEP P = Predicted value C = Criteria

図 10 設計フロー

OK

S2:δmax (C) ,Rueq (C)の設定

S1:VE ,n1 の設定

Tf の仮定

S6:δueq /δ0 (C)の算出S3:δmax (P) < δmax (C)

S4:αsの算出

S5:Teq の算出

S7:S6 を満足する

Teq /Tu の範囲

S8:Tu の範囲を

算出する

NG

図 9 上部構造変形の予測曲線(n1 = 6)

拡大

(1.0)

(1.5)

(2.0)

(2.5)

(3.0)

955

って免震層の最大変形を再検討する。

STEP 4:免震層履歴ダンパーの降伏せん断力係数を算出する

ダンパーが存在しない場合の免震層の層せん断力係数 α0 は式(14)

を用いて式(20)のように求められる。

19.0980618022

0 gTV

f

E (20)

α1/α0 の極小値における αs /α0 は 0.14(図 11)であるため,免震層履歴

ダンパーの降伏せん断力係数 αsは 0.027 となる(式(21))。

027.019.014.000

ss (21)

STEP 5:免震等価周期を算出する

免震層には天然ゴム系積層ゴムアイソレータと履歴ダンパーを配

置する。天然ゴム系積層ゴムは弾性でモデル化する。アイソレータ群

の剛性 kf は式(22)より求められる。

kN/m222656

20303442

2

2

2

ff T

Mk (22)

履歴ダンパーは完全弾塑性型の復元力特性を持つ部材を使用する。

また,降伏変形 sδy が 3 cm となるものを採用する。履歴ダンパー群の

初期剛性 ksは式(23)より求められる。

kN/m17907203.0

8.920303027.0

ys

ss

Mgk (23)

アイソレータ群の剛性 kf,履歴ダンパー群の初期剛性 ks,履歴ダン

パーの降伏変形 sδy および免震層の最大変形 δmax = 25.5 cm を式(1)に

代入すると,免震等価剛性 Keq は式(24)で求められる。

kN/m43332

1790725.25

322265

maxs

ysfeq kkK

(24)

よって,免震層の変形 δmax が 25.5 cm における免震等価周期は式(2)

を用いて式(25)のように求められる。

s3.4433322030322

eqeq K

MT (25)

STEP 6:等価変形倍率の設計クライテリアを算出する

上部構造における層間変形角の設計クライテリア Rueq (C),上部構造

の等価高さ Hueq および式(17)の免震層無減衰時の最大変形 δ0 より,

等価変形倍率 δueq /δ0 の設計クライテリアは式(26)で求められる。

029.0172

1500300/1

00

uequequeq HR (26)

STEP 7:等価周期比の範囲を読み取る

図 11 に,等価変形倍率の設計クライテリアを一点鎖線で表す。同

図より,等価変形倍率を設計クライテリア以下とするための等価周

期比 Teq /Tu の範囲は,αs /α0 = 0.14 に対しておおよそ 2.5 以上であるこ

とが確認できる。なお,図中〇と△については次節で説明する。

STEP 8:基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期を算出する

式(25)の免震等価周期 Teq と等価周期比 Teq /Tu の範囲より,基礎固

定時での上部構造の 1 次固有周期の範囲は次式から算出できる。

s7.15.23.4

5.2eq

u

TT (27)

5.3 時刻歴応答解析による検証と比較

免震層アイソレータのみの周期 Tf = 6.0 s,履歴ダンパーの降伏せん

断力係数 αs = 0.027,基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期 Tu = 1.7s

のモデルを用い,VE = 180 cm/s の ART HACHI を入力地震動とし,時

刻歴応答解析を行った結果を図 11 に示す(図中〇)。比較のために,

Tu = 3.0 s での結果も併記する(図中△)。同図より,基礎固定時での

上部構造の 1 次固有周期 Tu を 1.7 s にすることによって,等価変形

倍率 δueq /δ0 は設計クライテリアを満たすことが分かる。一方,Tu = 3.0s

の場合の等価変形倍率 δueq /δ0 は設計クライテリアを満たさないこと

が確認できる。

各層の最大応答変位と上部構造の最大層間変形角の高さ方向分布

を図 12 に示す。同図より,基礎固定時での上部構造の 1 次固有周期

Tu が 3.0 s と 1.7 s のモデルのいずれも,免震層の最大変形は予測値

に近いことが確認できる。一方で,基礎固定時での上部構造の 1 次

固有周期 Tu を 3.0 s から 1.7 s にすることによって,上部構造の最大

層間変形角は 1/102 から 1/308 に低減させることができた。以上の結

果から,本手法により求めた基礎固定時での上部構造の 1 次固有周

図 11 予測曲線における予測結果(n1 = 6)

等価変形倍率の予測曲線

等価変形倍率の設計クライテリア Tu = 3.0 s(解析結果)

Tu = 1.7 s(解析結果)

Tu = 3.0 s Tu = 1.7 s

(b) 最大層間変形角 R (a) 最大応答変位 x

図 12 高さ方向分布

(1.0)

(1.5)

(2.0)

(2.5)

(3.0)

956

期 Tu を用いることで,免震層最大変形も,上部構造の最大層間変形

角も設計クライテリアを満たしていることが確認できた。なお,基礎

固定時での上部構造の 1 次固有周期 Tu が 3.0 s と 1.7 s 時における上

部構造のエネルギー吸収率は,それぞれ 17 %,8 %である。

6.まとめ

本報では,天然ゴム系積層ゴムアイソレータと履歴ダンパーで構

成される免震層を持つ免震建物を対象とし,免震等価周期 Teq と基礎

固定時での上部構造の 1 次固有周期 Tu との比に着目し,等価周期比

Teq /Tu が免震建物の変形に与える影響について予測式を提案した。ま

た,本予測式に基づく予測曲線を用いることで,免震層の変形と上部

構造の層間変形角の設計クライテリアに満足できる基礎固定時での

上部構造の 1 次固有周期を求める設計方法を示した。

エネルギーの釣合に基づき免震構造を設計する場合,本設計方法

を使用することによって,時刻歴応答解析をせずに上部構造の変形

を予測できる。また,予測曲線から,任意の αs /α0 に対して,上部構

造の変形と免震層の最大変形の関係を読み取り,変形倍率が設計ク

ライテリアを満たすための等価周期比の範囲を把握できる。

なお,本手法を用いることで,上部構造の 1 次固有周期 Tu を先に

決定した後に,免震層と上部構造の変形を設計クライテリアに満足

できるような履歴ダンパーの降伏せん断力係数 αs の範囲を確認する

ことができる。この方法については文献 10)に詳しく設計例とともに

示しているので,合せてそちらも参照していただきたい。

謝辞

本報告は,JFE スチール株式会社,JFE シビル株式会社,東京工業

大学佐藤研究室,東京理科大学北村研究室の共同研究の成果の一部

をまとめたものです。ここに記して,感謝の意を示します。

参考文献

1) 田中佑治,福和伸夫,飛田潤,護雅史:国内免震建物のデータベース構築

と現状分析,日本建築学会技術報告集,第 17 巻,第 35 号,pp.79-84,2011.2

2) 渡邉信也,山崎久雄,高山峯夫,笠井和彦:応答スペクトルを用いた免震

層の最大応答予測法の新しい試み その 2 応答予測値の検証,日本建築

学会大会学術講演梗概集(東海),pp.455-456,2012.9

3) 渡邉信也,山崎久雄,高山峯夫,笠井和彦:応答スペクトルを用いた免震

層の最大応答予測法 その 2 応答予測式と応答予測曲線,日本建築学会

大会学術講演梗概集(北海道),pp.801-802,2013.8

4) 付慧鑫,宮川和明,佐藤大樹,佐藤利昭,北村春幸,植木卓也,村上行夫:

屋上階の質量・剛性が小さい免震鉄骨造物流倉庫を用いた各種設計用層せ

ん断力係数分布の考察,日本建築学会技術報告集,第 23 巻,第 53 号,pp.59-

64,2017.2

5) 笠井和彦,シムアンパン・サラン,松田和浩:免震建物の上部構造周期を

考慮した免震性能曲線の提案,日本建築学会構造系論文集,第 81 巻,第

720 号,pp.239-249,2016.2

6) 日本建築学会:免震構造設計指針,第 2 版,pp.99-110,1993.12

7) 付慧鑫,松田頼征,北村春幸,佐藤大樹,宮川和明,植木卓也,村上行夫,

戸張涼太,久保田航平:免震等価周期と上部構造周期の比を用いた上部構

造における等価変形の予測式の提案,日本建築学会大会学術講演梗概集(中

国),pp.1033-1034,2017.7

8) 秋山宏:エネルギーの釣合に基づく建築物の耐震設計,1999.10

9) 北村春幸:性能設計のための建築振動解析入門,第二版,2009.4

10) 付慧鑫,佐藤大樹,北村春幸,松田頼征,宮川和明,植木卓也,村上行夫:

免震建物の変形の予測式を用いた設計例,日本建築学会関東支部研究報告

集,pp.577-580,2018.3

付録 1:上部構造 1 層目の最大せん断力 Qu1に関する検証

上部構造 1 層目の最大せん断力 Qu1 について,式(5)を検証する。2.2 節で述

べた 6 種類の地震動を入力した際の,上部構造 1 層目の最大せん断力 Qu1 の時

刻歴応答解析値と予測値の関係を付図 1 に示す。同図より,式(5)から得られた

予測値は解析値と良い対応関係が見られ,ばらつきが小さいことが確認できる。

以上より,上部構造 1 層目の最大せん断力 Qu1 を式(5)から算出することは妥当

であると考えられる。

付録 2:上部構造の等価変形 δueqに関する検証

上部構造の等価変形 δueq について,式(6)を検証する。2.2 節で述べた 6 種類

の地震動を入力した際の,上部構造の等価変形 δueq の時刻歴応答解析値(式(3))

と予測値(式(6))の関係を付図 2 に示す。同図より,式(6)から得られた予測値

は解析値よりやや大きい結果となってことが確認できるが,上部構造の等価変

形 δueq を安全側に評価できるという点で,式(6)が妥当であると判断した。

付図 2 δueq の解析値と予測値の比較

付図 1 Qu1 の解析値と予測値の比較

ART HACHI 40

ART HACHI 80

ART HACHI 120

ART KOBE 40

ART KOBE 80

ART KOBE 120

ART HACHI 40

ART HACHI 80

ART HACHI 120

ART KOBE 40

ART KOBE 80

ART KOBE 120

[2018年 2月 3日原稿受理 2018年 4月 2日採用決定]