精密機器用除振・免震床の間発 - hitachi142 日立評論 vol.70 no.2(1988-2)...

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u.nc.534.833.る_る:る28.517. 精密機器用除振・免震床の間発 DevelopmentofEarthquakeandMicro-VibrationlsolationFloor forPr¢CisonMechanicalEquipment 超LSIやレーザ応用製品などの製造設備は,生産性向上のために,清浄度とと もに微振動の除去に努力が払われてきた。最近では,製品の微細化が進むにつ れて,ますます高度な防・除振技術が要求されている。同時に,地震時の対策 も重要な課題となってきている。そこで,クリーンルーム内で使用される精密 機器を対象に振動吸収方法を種々検討し,多段積層ゴムを応用した,徴振動の 除去(除振)から地震動の吸収(免震)まで対応可能な床システムを開発した。そ の性能を評価した結果,除振性能は一般的な空気ばね除振台よりも優れており, また,免震性能はコイルばね・づアリング方式に比べ同等以上であることが分 かった。これによ†),微振動から強地震動までの振動吸収がほぼできるように なった。 超LSI工場やレーザ応用製品などの精密製品を加工する工 場では,工場内設備からの微振動や近隣の交通機関などから 伝わってくる振動によって製品の歩留まF)は影響される。ま た,ときおり発生する震度Ⅴ,ⅤⅠあるいはそれ以上の地震動 によって設備や製品が大きな損害を受けることが考えられる。 このような製造設備では,微振動から強地震動までのすべて の外来振動を吸収する除振・免震対策が要求されている1),2)。 現状では比較的小さい振動については,空気ばね方式による 機器単体での除振,あるいはコンクリートの大形独立基礎と の併用によって除振を行っている。しかし,これらの方法で は,低周波の振動(10Hz以下)の除振が難しい,あるいはコス トが高いという欠点がある。更に,地震などの大きな振動を 対象とする免震については十分な効果が期待できない。 最近,クリーンルーム内で使用する精密機器を対象とした, より実用的な防・除振対策のニーズが高まってきたので,微 振動から強地震動まで3次元的に振動吸収が可能な除振・免 震床の開発に着手した。なお,性能の目標値として入力値を ÷以下に低減することを目安とした。本稿は,床の除振,免震 システムの基本構造及びその性能試験結果についてまとめた ものである。 システムの基本構造 本システム恥4)の基本構造及び主要部材である多段積層ゴム を図lに,その仕様を表1に示す。システムは微振動から地 震動までの振動吸収を可能にするため,主要部材として多段 積層ゴムとコイノ_レばね,ダンパから構成されている。水平方 鶴田 顕* 福井伊津志* 藤田隆史** 西山国雄*** 竹下章治**** 肋刀 7七〃γ〟由 J由帖ゐオ 凡々〟オ 7七々年血∽オ叫言ゎ 肋乃わ∧伝ぁかα榔 A々オ鮎川 7七々βSゐオ由 向の振動は多段積層ゴムと粘性せん断形ダンパ(水平ダンパ) の組合せで,微振動から強地震動までの振動を連続的に吸 収する。鉛直方向の振動は浮床を2次元除振・免震床から つっているコイルばねとオイルダンパ(鉛直ダンパ)の組合せ で振動を吸収する。更に,このままでは浮床が浮いた状態で 横揺れが生じるため,浮床と隣接する支柱の部分にローラを 付けその揺れを防いでいる。また,ローラを通して浮床に支 柱から鉛直方向の微振動が伝わらないように,ローラが接す る支柱に軟質ゴムシートをてん(貼)着した。このシステムの 最大の特徴は全体の質量を支え,かつ水平方向の振動を吸収 表l除娠・免震床仕様 搭載質量,大きさは任意に設計可能で ある。 m2当たりの搭載質量 -500kg 幅l.8×長さ3.6×高さl.8(m) 徴物陰栃 …:::……芸 震〈7二三:≡ ±0.2m(水平方向) ±0.05m(鉛直方向) * 日立プラント建設株式会社松戸研究所 **東京大学生産技術研究所工学博士 *** R立プラント建設株式会社空調冷熱事業本部 ****株式会社日立建設設計建築本部建築設計部 47

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  • u.nc.534.833.る_る:る28.517.4

    精密機器用除振・免震床の間発DevelopmentofEarthquakeandMicro-VibrationlsolationFloor

    forPr¢CisonMechanicalEquipment

    超LSIやレーザ応用製品などの製造設備は,生産性向上のために,清浄度とと

    もに微振動の除去に努力が払われてきた。最近では,製品の微細化が進むにつ

    れて,ますます高度な防・除振技術が要求されている。同時に,地震時の対策

    も重要な課題となってきている。そこで,クリーンルーム内で使用される精密

    機器を対象に振動吸収方法を種々検討し,多段積層ゴムを応用した,徴振動の

    除去(除振)から地震動の吸収(免震)まで対応可能な床システムを開発した。そ

    の性能を評価した結果,除振性能は一般的な空気ばね除振台よりも優れており,

    また,免震性能はコイルばね・づアリング方式に比べ同等以上であることが分

    かった。これによ†),微振動から強地震動までの振動吸収がほぼできるように

    なった。

    □ 緒 言

    超LSI工場やレーザ応用製品などの精密製品を加工する工

    場では,工場内設備からの微振動や近隣の交通機関などから

    伝わってくる振動によって製品の歩留まF)は影響される。ま

    た,ときおり発生する震度Ⅴ,ⅤⅠあるいはそれ以上の地震動

    によって設備や製品が大きな損害を受けることが考えられる。

    このような製造設備では,微振動から強地震動までのすべて

    の外来振動を吸収する除振・免震対策が要求されている1),2)。

    現状では比較的小さい振動については,空気ばね方式による

    機器単体での除振,あるいはコンクリートの大形独立基礎と

    の併用によって除振を行っている。しかし,これらの方法で

    は,低周波の振動(10Hz以下)の除振が難しい,あるいはコス

    トが高いという欠点がある。更に,地震などの大きな振動を

    対象とする免震については十分な効果が期待できない。

    最近,クリーンルーム内で使用する精密機器を対象とした,

    より実用的な防・除振対策のニーズが高まってきたので,微

    振動から強地震動まで3次元的に振動吸収が可能な除振・免

    震床の開発に着手した。なお,性能の目標値として入力値を

    ÷以下に低減することを目安とした。本稿は,床の除振,免震

    システムの基本構造及びその性能試験結果についてまとめた

    ものである。

    ヨ システムの基本構造

    本システム恥4)の基本構造及び主要部材である多段積層ゴム

    を図lに,その仕様を表1に示す。システムは微振動から地

    震動までの振動吸収を可能にするため,主要部材として多段

    積層ゴムとコイノ_レばね,ダンパから構成されている。水平方

    鶴田 顕*

    福井伊津志*

    藤田隆史**

    西山国雄***

    竹下章治****

    肋刀 7七〃γ〟由

    J由帖ゐオ 凡々〟オ

    7七々年血∽オ叫言ゎ

    肋乃わ∧伝ぁかα榔

    A々オ鮎川 7七々βSゐオ由

    向の振動は多段積層ゴムと粘性せん断形ダンパ(水平ダンパ)

    の組合せで,微振動から強地震動までの振動を連続的に吸

    収する。鉛直方向の振動は浮床を2次元除振・免震床から

    つっているコイルばねとオイルダンパ(鉛直ダンパ)の組合せ

    で振動を吸収する。更に,このままでは浮床が浮いた状態で

    横揺れが生じるため,浮床と隣接する支柱の部分にローラを

    付けその揺れを防いでいる。また,ローラを通して浮床に支

    柱から鉛直方向の微振動が伝わらないように,ローラが接す

    る支柱に軟質ゴムシートをてん(貼)着した。このシステムの

    最大の特徴は全体の質量を支え,かつ水平方向の振動を吸収

    表l除娠・免震床仕様 搭載質量,大きさは任意に設計可能で

    ある。

    項 目 仕 様

    m2当たりの搭載質量 -500kg

    ユ ニ ッ ト 寸 法 幅l.8×長さ3.6×高さl.8(m)

    固 有 振 動 数

    徴物陰栃 …:::……芸…芸芸三

    震〈7二三:≡…芸書芸≡;最 大 許 容 変 位

    ±0.2m(水平方向)

    ±0.05m(鉛直方向)

    *

    日立プラント建設株式会社松戸研究所 **東京大学生産技術研究所工学博士***

    R立プラント建設株式会社空調冷熱事業本部

    ****株式会社日立建設設計建築本部建築設計部

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  • 142 日立評論 VOL.70 No.2(1988-2)

    する多段積層ゴムを採用した点にある。一般に,免震用の積

    層ゴムは定格搭載質量下で0.5Hz程度の低い固有振動数とな

    る水平剛性と,0.2m程度の水平吸収能力とを併せ持つことが

    要求される。これまでに実剛ヒされた免震用の積層ゴム構造

    では,定格搭載質量が3,000kg以下になると,水平剛性の条件

    を満たすと形状が細長くなり,0.2m以下の水平変位で座屈し

    て荷重支持ができなくなる。この不具合を解決したのが,今

    回用いた多段積層ゴムである。多段積層ゴムは図1に示すよ

    うに小形の積層ゴム(要素積層ゴム)を四隅に配置し,安定板

    を介して多段に積み重ねた構造である。この多段に積み重ね

    た結果,水平剛性の等しい通常の構造の積層ゴムに比べて,

    変位吸収能力を相対的に大きくすることができる。本実験に

    は定格質量が1,500kg用と3,000kg用の2種類の多段積層ゴ

    ムを用いた。

    B 3次元振動実験

    3.1実験モデル

    除振・免震床の実験モデルを図2に示す。本モデルは実規

    模レベルで実際のクリーンルーム内に設置することを想定し

    て設計したもので,床面は1.8mx3.6mの床はr)(梁)区画で

    2区画(3.6mX3.6m)の面積を持ち,高さは1.8mである。片

    方の区画は浮床のある3次元除振・免震床である。このモデ

    ルでは,前述したように多段積層ゴムを合計6個使用した。

    供試体の四隅の柱に用いた多段積層ゴム及び2本の中間の柱

    に用いた多段積層ゴムは,共に要素積層ゴムを8段に積み重

    ねた構造である。これら6個の多段積層ゴムが支持する総質

    量は,定格質量1,200kgに対し9,550kgであり,この質量に対

    する全体の国有振動数は水平に0.48Hz,鉛直に14Hzである。

    また,水平用粘性せん断形ダンパは2個使用したが,これに

    よる減衰は減衰比で設計値20%程度に対し,測定値は約18%

    であった。浮床は14本のコイルばねでつられ,その質量は搭

    丑さ讃こ田ご

    一一■rl-〆--

    図2 除振・免震床の実験モデル 写真の左側の部分が3次元除

    振・免震床,右側の部分が2次元除振・免震床となっている。

    載機器の質量も含めて3,640kgに設定した。そのときの鉛直固

    有振動数は0.9Hz(定格荷重下で設計値0.8Hz)であった。た

    だし,この値はローラが転がる振幅での固有振動数であり,

    徴振動に対しては軟質ゴムシートの剛性が加わるため,鉛直

    固有振動数は約2Hzとなった。また,浮床には4本のオイル

    ダンパを使用したが,その減衰は減衰比で設計値20~40%に

    対し,測定値は上向き側38%,下向き側17%であった。

    3.2 実験方法

    除振・免震性能評価実験は日立製作所機械研究所の20t3次

    元振動台を用いて,微振動実験と正弦波加振及び地震波加振

    実験を行った。微振動実験では,振動台を着座させ,地盤振

    動と油圧ポンプの運転とによって生じる微振動を入力として,

    実験モデルの床面の応答を測定した。正弦波加振実験では3

    3次元除糎・免震床(浮床)

    軟質ゴム

    精密機器

    ロー7

    鉛 直ダンパ

    2次元除振・免震床

    、、\コイルばね

    ーーーーノ し-------、′--・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ノ

    多段積層ゴム 水平ダンパ

    (a)システムの基本構造 (b)多段積層ゴム

    図l除据・免震床の基本構造と多段積層ゴム 多段積層ゴム,コイルばねのはかに,鉛直ダンパ,水平方向に対する粘性せん断形ダンパ及

    びローラと軟質ゴムを使い,除振,免震を可能にする。

    48

  • 精密機器用除娠・免震床の開発143

    JJ J】

    J2 J2

    〟1,Cl

    仔2,C2

    C3

    〝2

    m2

    m3

    ∬2

    2次元

    除娠・免震床

    】。。ズl

    l

    l1

    3次元

    除娠・免震床

    l

    〟1,Cl

    ∬1,Cl

    Zg

    ‡だ2,C2

    ____Z∬∬1,Cl

    注:之エ X方向地震動入九Zy Y方向地震動入力

    図3 水平応答の解析モデル モデルは×一Z平面内の回転がないと

    いう実験結果から,Y-Z平面内についてだけ考える。

    入力加速度

    貰三≡幽遠遠王?0.00 0,50 1,00 1.50時間(s)宝喜・[..∴AX■=4`21×10‾3(m′s2'0■56`s)Ill‥l.l.‥11L‥.1山

    1亘

    1q>-

    ・匡†qN

    ・匡†で><

    1亘

    特>-

    ・匡+qN

    窒芋照㌘習0,50 1.00 1,50時間(s)

    皇喜「._MAX・=4・12×10‾3(m′s2'1■14`s'.lしハーハ.. L.血l山山.

    石さL二■■\ ⊂⊃

    王10・00

    三≡巨〉10.00

    三≡包〉?0.00

    ……E

    0.50 1,00

    時 間(s)

    1.50

    入力絶対変位

    MAX.=3.34×10-7(m)1.75(s)

    0.50 1,00 1.50

    時 間(s)

    MAX.=2.10×10‾7(m)0.74(s)

    0.50 1.00 1.50

    時 間(s)

    MAX.=9.02×10-8(m)1.27(s)

    0.50 1.00 1.50

    時 間(s)

    2.00

    2.00

    2.00

    一勺.N℃

    2∬7

    L斤”几

    ハし

    g10

    Cll

    斤9

    Z

    ・土T

    2

    汗ClO 打9

    c=方

    (し

    けÅ

    ん11

    m2

    iZ3

    ¢2Zl

    Cll

    ClO

    〟4,J2

    e2

    2C8 J3 J3 2∬8 2C9 2∬7 2C8

    Jl Jl

    注:ZぴZ方向地震動入力 ト図4 鉛直応答の解析モデル モデルは床全体を一つの剛体とみな

    し,×方向の並進(礼 Y方向の並進(y),水平面内の回転(¢)の3自由

    度が考慮されている。

    ……ヒ…≡巨三?0.00

    ……巨三10・00

    (a)入力加速度と応答加速度の波形例

    2.00

    2.00

    2.00

    ト[0・。。

    mOd

    の〇.〇-

    N〇.〇

    TO「×

    (∈)

    TOLX

    (B+

    王?0.00

    岳喜入

    床の応答加速度

    MAX.=7.49×10-4(m/s2)1.68(s)

    0.50 1.00 1.50

    時 間(s)

    MAX.=1,31×10‾3(m/s2)0.63(s)

    0.50 1.00 1.50

    時 間(s)

    MAX.=8.92×10-4(m/s2)1.23(s)

    0.50 1.00 1.50

    時 間(s)

    応答絶対変位

    MAX.=1,07×10-7(m)0.98(s)

    0,50 1.00 1,50

    時 間(s)

    MAX.=7.02×10‾8(m)0.23(s)

    0.50 1.00 1.50

    時 間(s)

    MAX,=1,74×10‾7(m)0.07(s)

    三等甜「訂工芯0.50 1,00 1.50時 間(s)

    2.00

    2.00

    2.00

    2.00

    2.(二0

    2.00

    (b)入力絶対変位と応答絶対変位の波形例

    図5 微振動除振性能(入力絶対変位と応答絶対変位の波形例) 鉛直方向での増幅は,浮床の微振動に対する減衰が小さいため,固有振動

    数(2Hz)での振動が励起されたことによる。

    49

  • 144 日立評論 〉0+.78 No.2(I988-2)

    次元各々の単独方向で加振し,地震波加振実験では3次元同

    時加振を行った。この地震波には,実地震の地動波とそれら

    から作成した床応答模擬波を用いた。

    田 解析モデル

    本システムの地震動入力に対する挙動を解析するため,各

    要素を解析モデル化した。まず,水平入力による水平面内の

    運動と鉛直入力による鉛直面内の運動とを独立に考え,解析

    は水平方向解析モデルと鉛直方向解析モデルの二つに分けて

    行った。なお,微振動用の解析モデルは装置各部のモデル要

    素が複雑すぎるため,省略した。水平方向解析モデルを図3

    に,鉛直方向解析モデルを図4に示す。水平方向の振動は床

    全体を一つの剛体とみなし,Ⅹ方向の並進,Y方向の並進,水

    平面内の回転の3自由度を考えた。鉛直方向の運動は,Ⅹ-Z平

    面内の回転がか-という実験結果からY-Z平面内についてだ

    け考えた。モデルは床全体を2次元除振・免震床と3次元除

    振・免震床の二つの剛体に分け,2次元除振・免震床のZ方向

    の並進,その鉛直平面内の回転の4自由度を考えている。搭

    載機器の挙動については,床全体の応答を求めた後に,床各

    部の加速度を入力して,各方向について非達成の1自由度応

    答解析を行った。各運動方程式の数値計算はルンゲークッタ

    法によって行い,計算の時間刻みは志不少とした。

    b 実験及び解析結果とその検討

    5.1微振動除振性能

    微振動実験で測定された除振性能結果の入力加速度と応答

    加速度の波形例を図5(a)に,入力絶対変位と応答絶対変位の

    波形例を同図(b)に示す。ただし,入力は振動台上で,水平応

    答は2次元除振・免震床上で,鉛直応答は3次元除振・免震

    床(浮床)上で測定した。加速度については10-3m/s2オーダの

    最大加速度を持つ微振動が,水平方向で約÷~÷に,鉛直方

    向では約÷~÷に低減しており,良好な除振効果が得られて

    02

    0

    ∈N.〇rX

    002

    50

    いる。一方,同図(b)の変位についてみると,10-7mオーダの最

    大変位を持つ微振動が,水平方向には÷程度に低減している。しかし,鉛直方向には2倍程度に増幅している。この鉛直方

    向の増幅は,浮床の微振動に対する減衰が小さいため,固有

    振動数(2Hz)での振動が励起されたことによるものと考える。

    このような,低い周波数での変位の増幅は,その固有振動数

    が十分に小さい限り(この場合の2Hzの固有振動数は空気ば

    ね式除振台のそれと同程度のものである。)問題となることは

    ないと考えられる。水平方向の応答波形のスペクトル解析結

    果から,本除振・免震床は,微振動に対しても,水平に約0.5

    Hzの固有振動数を持つことが明らかになっており,この水平

    固有振動数は空気ばね除振台のそれと比べてはるかに低い値

    である。また,水平方向の粘性せん断形ダンパは,同図(b)の

    結果から明らかなように,微振動に対しても有効であること

    が確認された。以上の結果から,本システムは,水平方向で

    約0・5~0・6Hzの固有振動数,鉛直方向で2Hzの固有振動数

    を持っていることが分かった。本性能は,従来の空気ばね式

    除振台と比較して,鉛直方向ではほぼ同等であるが,水平方

    向には優れたものであることが分かった。

    5.2 免震性能

    地震波としてエルセントロ波,八戸波,東北大学彼の3種

    類を用いた加振実験結果と,解析モデルによる計算結果とを

    図6に示す。地震波はいずれも建屋による増幅を考慮した床

    応答模擬波である。同図の下段は加速度であり,左から入力

    加速度,非免震時と免震時の応答加速度及び解析モデルの計

    算応答加速度を,上段は変位量の測定値と計算値を示す。

    なお,非免震時の応答加速度の測定は,実験の安全性を考

    慮して,入力加速度を小さくして行い,測定値を線形補正(約

    2倍)して求めたものである。応答加速度は地震入力加速度に

    対して水平方向で約÷~古,鉛直方向で約ナ~ナに低減されている。また,応答加速度は免震していない状態に比べ,

    水平方向で約÷一志に,鉛直方向で約ナ~古に低減されて

    什010.8

    4.43.4

    5.44.1

    ハ0060

    4=8

    2.32.34.5 4.3 3.5 3.1

    1

    689

    ,47

    ∴よ

    0

    10781

    1

    404

    ,14

    ∴く

    0

    10688

    1

    316

    ,500

    7371

    1

    502

    ,02

    ヾ\

    、く、

    ∴:

    0

    5351

    570

    437こミ

    6650

    395

    167/拙09

    947

    52什

    126124

    772

    552ぎー

    j濃盈

    701

    312:†48175

    南 北 東 西 鉛 直 南 北 東 西 鉛 直 南 北 東 西 鉛 直

    エルセント口演 八 戸 波 東北大学波

    000

    N∽\∈N.〇「×

    軸確⊂市

    図6 免震性能(床応答模擬浪人力の場合) 良好な免震効果が得られている。

    床応答模擬波

    ×,Y3Hz-3% フィルタ

    Z地動浪

    注:

    [二二二ニコ入力

    非免震状態

    免震状態(実験値)

    免震状態(計算値)

  • 実験結果

    世確⊂や六く

    0〇.ト

    0〇.ト

    (N∽\∈)

    ○の.r

    Oの.「-

    (N∽\∈)

    世増長純増G世

    せ拒×

    (∈)

    単軸G世

    世機長只Y

    q⊂⊃

    0〇

    ⊂〉

    d

    0∩)0 8.00 16.00 24.00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX.=6.89(m/s2)2,75(s)

    0∩)0 8.00 16.00 24.00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX,=1.07(m/s2)5,84(s)

    10.00

    ○爪.寸

    ○の

    (N∽\∈)

    8.00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=8.35×10‾2(m)5.86(s)

    40.00

    0(UO寸-

    ○の.「

    ○の.「-

    (N∽\∈)

    軸確岸純増G世

    世特>

    単軸G世

    00

    q⊂)

    (コ:〉

    q⊂)

    8.00 16.00 24.00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX.=4.04(m/s2)9.13(s)

    0∩)0 8.00 16.00 24.00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX.=1.06(m/s2)3.75(s)

    10.00

    ○の.の

    ○呵M

    (N∽\∈)

    世職長尺Y

    世糊口下軸哩G世

    世拇N

    8.00 16.00 24.00 32,00

    時 間(s)

    MAX.=7.69×10‾2(m)4.56(s)

    40.00

    0β0

    0

    のト.〇

    の卜d-

    り〇.〇

    (Nの\∈)

    TO;ハ

    16.00 24.00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX.=3.16(m/s2)0.92(s)

    00 8.00 16,00 24.00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX.=7.27×10‾1(m/s2)0.91(s)

    16.00 24,00 32.00 40.00

    時 間(s)

    MAX.=5.55×10▲3(m)2.81(s)

    図7 エルセントロ床応答模擬波の実験と解析による応答波形の比較

    (N∽\∈)

    (/〕

    の、・■・■、

    ⊂)

    q「ヽ、

    ⊂⊃

    ⊂)

    精密機器用除振・免震床の開発145

    計算結果

    8.00 16.00 24,00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=6.89(m/s2)2.75(s)

    40.00

    10.00

    00

    q⊂)

    ⊂0⊂〉

    8.00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=8.12×10‾l(m/s2)5.75(s)

    40.00

    ?0.00

    ⊂〕の

    ⊂)

    ⊂)

    8.00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=7.14×10‾2(m)5.82(s)

    40.00

    臥00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=4.04(m/s2)9.13(s)

    40.00

    10.00

    CO

    q⊂)

    ⊂)

    8.00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=8,76×10‾1(m/s2)4.50(s)

    40.00

    ⊂)

    10.00 8.00

    ⊂)

    ⊂)

    16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX,=7.26×10‾2(m)4.56(s)

    40.00

    M

    10.00

    卜:

    ⊂〉

    「、

    8,00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=3,16(m/s2)0.92(s)

    ⊂)

    =).00 8.00

    一 CO

    l O

    ⊂)d

    X

    -‾■、(:X)

    ∈ ⊂)

    16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=7.08×10‾l(m/s2)1.74(s)

    ⊂〉

    18.00 8,00 16.00 24.00 32.00

    時 間(s)

    MAX.=6.09×10‾3(m)0,60(s)

    エルセントロ波(床応答模擬浪)水平 3Hz-3% フィルタ

    鉛直 他動浪

    実験と解析による応答波形は,良好な一致を示Lている。

  • 146 日立評論 VOL.70 No.2(1988-Z)

    表2 各種除娠・免震装置,システムの仕様 各種仕様に応じて最適な装置,システムを選択する。

    式 造 対象‡辰動l司有振動数*

    水 平 鉛 直

    標準寸;去

    搭載質量

    免震床

    精密機器

    除振

    (徴振動)0.4Hz 2Hz

    3次元除娠・免震方式 ローフ

    グンパー

    金属ばね

    ダンパ

    多段

    積層ゴム

    免震 0.4Hz 0.8Hz

    1.8mX3.6nl

    、500kg/m2

    多段積層ゴムダン/て

    水平免震方式

    水平除・振・免震方式

    除娠

    (微振動)

    0.4 ~

    1.4Hz

    免震0.4~

    1.4Hz

    1.8mXl.8m

    ~500kg/m2

    積層ゴムダン/( 除・振

    (微振動)1~5Hz 5Hz㌧

    簡易3次元除娠・免震方式

    免震 1Hz

    3.6mX3.6m

    ~500kg/m2

    積層ゴム 空気ばね ダンパ

    3三欠元除振方式 除娠

    (徴振動)

    0.5~5Hz 0.5~5Hz0.9mXl.8rn

    う00、1,000kg

    注:* 固有振動数は,定格質量下での値である。

    いる。本結果から,水平,鉛直ともに免震効果は非常に大き

    いことが分かる。

    図7は,エルセントロ披・床応答模擬波入力の場合の応答

    波形について,実験値と解析モデルの計算値を比較したもの

    であるが,両者はよく一致している。この結果,本解析モデ

    ルは設計に十分適用できる。

    田 本システムの応用例

    これまでに,微振動から強地震動までの振動を連続的かつ

    3次元的に吸収可能なシステムの開発結果について述べた。

    しかし,実際の要求は多種にわたr),コスト,耐久性などを

    加味した最適な装置や床システムを要求に応じて提供する必

    要がある。そこで日立プラント建設株式会社,株式会社日立

    建設設計では開発した除振・免震床をベースに,機器レベル

    あるいは床レベルでの(1)微振動除振,(2)免震,(3)微振動除

    振・免震併用の種々の要利こ応じた装置,床システムを開発

    した。表2は,これら開発した種々の除振・免震装置,床シ

    ステムの仕様を示すもので,既に一部は実設備に適用し,効

    果を発揮している。

    8 結 言

    今回開発した除振・免震床によって,微振動から強地震動

    52

    までの振動(加速度のオーダでは10▼3~100m/s2,変位のオー

    ダでは10【7-10】1mの振動)に対して有効な振動吸収技術を実

    現することができた。既に,本システムを応用したタイ70が

    実際のクリーンルーム内に設置され,微振動除振台として実

    用化されている。しかし,この除振・免震床は他に類をみな

    い新しいものであるため,今後改良すべき点も多〈,現在,

    よりいっそうの性能向上を目指して研究開発を行っている。

    最後に,この開発に当たり御指導,御協力をいただいた日立

    製作所機械研究所の笠井洋昭工学博士をはじめ関係各位に対

    して,心からお礼を申し上げる。

    参考文献

    1)藤田:超LSI工場の振動問題一徹振動防振技術と免震技術¶,

    日本機械学会誌,89,809,99~104(昭6ト4)

    2)藤田:免震技術の現状と将来,日本機械学会論文集,51,461,

    1~7(昭60-1)

    3)ValterDjordjevic:TestingSensitive Process Equipment

    to Determine Reliable Clean Room Vibration Criteria:

    SolidStateTechnology/December(1986)

    4)藤田:多段積層ゴムを用いた三次元免震・除振床の開発,第7

    回目本地震工学シンポジウム論文集(昭和61-12)