震源断層 地表地震断層...

9
1 活断層、震源断層、地表地震断層 活断層 最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動する可能性のある断 層。 震源断層 地震を発生させた地下の断層。 地表地震断層 地震時に地表に現れた断層。 (参考) 震源断層 地表地震断層 活断層 earthquake source fault surface earthquake fault active fault 新版地学事典 地学団体研究会 新版地学辞典編集委員会 1996 地震を発生させた地下の断層.地 震のとき発生したり動いたりした 断層は地震断層と呼ばれていた が,最近は地表に現れた断層を地 表地震断層,地震を発生させた地 下の断層を震源断層と呼ぶように なった. 地表に現れた断層. 定性的には「きわめて近き時代ま で地殻変動を繰り返した断層であ り,今後もなお活動すべき可能性 の大なる断層」(多田文男,1927) と定義される.「きわめて近き時 代」とは広義には第四紀,狭義に は第四紀後期ないしさらに狭い時 代範囲を示す場合があるが,明瞭 には限定されていない. 応用地質用語集 日本応用地質学会 2004 地震波動や変位を発生させた断 層.地表に現れ,記録された断層 (地表地震断層)と区別して用い る. 地震に伴い地表に現れた断層.地 震波を発生させた地下の地震(震 源)断層の一部が地表に達したも の.地震を発生させた地下の断層 である震源断層と区別して用い る. 最近(第四紀)に繰り返し活動し た断層で,今後も活動が予想され る断層. Glossary of Geology Klaus K.E. Neuendorf et.al. 2005 × × A fault on which slip has occurred recently and is likely to occur in the future. Active faults are the locus of contemporary elastic strain accumulation, seismicity, or fault creep. 産業技術総合研究所 RIO-DB 活断層データベース 地震を発生させた地下の断層のこ と.震源断層の一部が直接的ある いは間接的に地表に達したものを 地震断層と呼ぶ. 地震に伴って地表に変位(ずれ) をもたらした断層のこと.地下の 震源断層の一部が直接的あるいは 間接的に地表に達したもので,地 表地震断層と呼ばれることもあ る. 最近の地質時代に繰り返し活動 し,今後も活動する可能性のある 断層のこと.このデータベースで は,約 10万年前以降に繰り返し活 動した痕跡のある断層を活断層と して扱っている.なお,今後の活 動について考慮すべき将来の期間 の長さに応じて,活断層の定義に 用いる過去の期間の長さが異なる ことがある. 資料 9-4-参考

Upload: others

Post on 06-Mar-2021

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

1

活断層、震源断層、地表地震断層

活断層 最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動する可能性のある断

層。

震源断層 地震を発生させた地下の断層。

地表地震断層 地震時に地表に現れた断層。

(参考)

震源断層 地表地震断層 活断層

earthquake source fault surface earthquake fault active fault

新版地学事典

地学団体研究会

新版地学辞典編集委員会

1996

地震を発生させた地下の断層.地

震のとき発生したり動いたりした

断層は地震断層と呼ばれていた

が,最近は地表に現れた断層を地

表地震断層,地震を発生させた地

下の断層を震源断層と呼ぶように

なった.

地表に現れた断層. 定性的には「きわめて近き時代ま

で地殻変動を繰り返した断層であ

り,今後もなお活動すべき可能性

の大なる断層」(多田文男,1927)

と定義される.「きわめて近き時

代」とは広義には第四紀,狭義に

は第四紀後期ないしさらに狭い時

代範囲を示す場合があるが,明瞭

には限定されていない.

応用地質用語集

日本応用地質学会

2004

地震波動や変位を発生させた断

層.地表に現れ,記録された断層

(地表地震断層)と区別して用い

る.

地震に伴い地表に現れた断層.地

震波を発生させた地下の地震(震

源)断層の一部が地表に達したも

の.地震を発生させた地下の断層

である震源断層と区別して用い

る.

最近(第四紀)に繰り返し活動し

た断層で,今後も活動が予想され

る断層.

Glossary of Geology

Klaus K.E. Neuendorf et.al.

2005

× × A fault on which slip has

occurred recently and is likely

to occur in the future. Active

faults are the locus of

contemporary elastic strain

accumulation, seismicity, or

fault creep.

産業技術総合研究所 RIO-DB

活断層データベース

地震を発生させた地下の断層のこ

と.震源断層の一部が直接的ある

いは間接的に地表に達したものを

地震断層と呼ぶ.

地震に伴って地表に変位(ずれ)

をもたらした断層のこと.地下の

震源断層の一部が直接的あるいは

間接的に地表に達したもので,地

表地震断層と呼ばれることもあ

る.

最近の地質時代に繰り返し活動

し,今後も活動する可能性のある

断層のこと.このデータベースで

は,約 10 万年前以降に繰り返し活

動した痕跡のある断層を活断層と

して扱っている.なお,今後の活

動について考慮すべき将来の期間

の長さに応じて,活断層の定義に

用いる過去の期間の長さが異なる

ことがある.

資料 9-4-参考

Page 2: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

2

文献による活断層の定義,認定基準

文献等 定義の内容

多田(1927)

活断層の二種類

極めて近き時代まで地殻運動を繰り返した断層であり,今後も活動する可能

性の大いなる断層。

吉川ほか(1973)

新編日本地形論

「現在」活動しつつある断層をいう。ただし,ここでいう現在とは,万年単

位での現在である。具体的には,第四紀,特に第四紀後期に活動したことの

ある断層は,活動しつつあるものと推定されるので,活断層と呼ばれる。

地質調査所環境地質部地震地質課

(1983) 1/50万活構造図

おおむね第四紀の後期に反復して活動した内因性の断層。第四紀後期を下末

吉面形成以降とした。

日本第四紀学会編(1987)

日本第四紀地図 1/50万活構造図と同じ

九州活構造研究会編(1989)

九州の活構造 第四紀に繰り返し活動し,将来も活動することが推定される断層。

活断層研究会編(1991)

新編日本の活断層 第四紀に繰り返し活動し,将来も活動することが推定される断層。

国土地理院都市圏活断層図 最近数十万年前間に約千年から数万年の間隔で繰り返し活動した跡が地形に

明瞭に現れており,今後も繰り返すと考えられるもの。

岡田・東郷編(2000)

近畿の活断層

第四紀後期に繰り返し活動した証拠があるもの。第四紀後期を約 30万年前以

降とした。

中田・今泉編(2002)

活断層詳細デジタルマップ

最近数十万年前間に概ね千年から数万年の間隔で繰り返し活動し,その痕跡

が地形に現れ,今後も活動を繰り返すと考えられる断層。

産業技術総合研究所 RIO-DB

活断層データベース

最近の地質時代に繰り返し活動し,今後も活動する可能性のある断層のこと.

このデータベースでは,約 10万年前以降に繰り返し活動した痕跡のある断層

を活断層として扱っている.なお,今後の活動について考慮すべき将来の期

間の長さに応じて活断層の定義に用いる過去の期間の長さが異なることがあ

る。

地震調査研究推進本部(2010)

活断層の長期評価手法(暫定版)報告

最近数十万年間にくりかえし活動し、将来も活動することが推定される断層。

「最近の地質時代」について、地表付近の形態は、主として段丘面上での活

動の痕跡等から認定できること、高位段丘面の年代は、地域等により異なる

が、最終間氷期(酸素同位体ステージ5)より前の間氷期(酸素同位体ステ

ージ 7, 9, 11)と対応づけられることが多いことから、約 40 万年程度を目

安とする。

建設省河川局開発課(1984)

ダム建設における第四紀断層の調査と

対応に関する指針(案)

第四紀断層:第四紀に地表に変位を生じたことのある断層。

要注意断層:①最終活動時期が 10,000 年前以降,②最終活動時期が 10,000

年前~30,000 年前の断層で長さ 10km 程度以上,③第四紀後期に繰り返し活

動した規模の大きい第四紀断層。

カリフォルニア地質調査所(2007)

活断層 Active:完新世に活動したもの。

潜在的活断層 Potentially Active:第四紀に活動したもの。

Page 3: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

3

主断層、分岐断層、副断層

主断層 ①案 震源断層と密接に関係している断層

②案 震源断層の地表延長部、または震源断層と密接に関連する断

分岐断層 主断層から分岐して形成された断層

副断層 ①案 震源断層と密接に関係しているとは言えないが、断層変位を生

じさせた断層

②案 主断層と直接的な関連を持たない(二次)断層

(参考)

報告書(案)(2016/07/05)

図Ⅱ.2.2-1 断層の形態

主断層 分岐断層 副断層

master fault, principal fault splay fault, auxilary fault secondary fault

新版地学事典

地学団体研究会

新版地学辞典編集委員会

1996

広義には断層帯を代表する主要な

断層で主変形帯と同様である.狭

義にはプルアパート盆地を画する

雁行断層を指す.

[スプレー:splay]主断層末端部の

小断層群の配列の一つ.例えば横

ずれ断層末端部ではいくつかの小

断層に分岐し,変位を抹消してい

く.このとき小断層は主断層と同

様の横ずれ変位だけでなく縦ずれ

変位をもつことも多い.

[二次断層]主断層の発達による断

層面の摩擦のため隣接するブロッ

ク内に新たに生ずる応力分布に従

って,一定の方向に配列する副次

的断層.副断層とも.

応用地質用語集

日本応用地質学会

2004

× × 主断層の形成に伴う変位により,

新たな応力状態が周辺に生じて形

成される相対的に規模の小さな副

次的断層.二次断層ともいう.

Glossary of Geology

Klaus K.E. Neuendorf et.al.

2005

× auxiliary fault: A minor fault

abutting against or branching

from a major one. Syn: branch

fault

×

産業技術総合研究所 RIO-DB

活断層データベース

× × ×

Page 4: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

4

【「活断層とは何か」 池田、島崎、山崎共著 岩波書店 1996】

(p.45~47)

このような、地震時に地表に現れる断層を総称して地表地震断層という。(略)

地表地震断層はさまざまな成因の断層を一括して呼んでいるので、その中身には大きな違いがあ

る。成因的には次のようなグループに分けられる。

第一は、地下の震源断層の破断面の一端が地表まで到達したものである。これは震源域の中央部

に現れ、余震分布と一致し、震源断層と走向、変位様式、変位量などがおおよそ一致する断層で

ある、(略)地表近くで震源断層がいくつにも分岐して、それぞれの断層は変位量が小さいが全体

として幅広い断層帯を生じることもある。(略)

第二は、断層運動による地震性地殻変動の結果、震源域内または周辺の既存断層が活動するもの

で、後述する副断層がこれにあたる。地震の振動に誘発されて、離れた場所に断層が出現するこ

ともある。これらは震源断層とは位置や変位様式が一致せず、変位量も小さいことが多い。淡路

島の東海岸に現れた断層は、このグループである。

地すべりや圧密沈下、液状化に伴う側方流動などで、ブロックの縁辺部に見かけ上の断層や地割

れが生じることがある。これらは断層運動などの地下の構造的な要因とは直接関係しない表層の

みの現象なので、地表地震断層には含めない。しかし、一般には地表付近は未固結堆積物に覆わ

れていることが多いので、野外の観察で地表地震断層と地すべりや液状化で生じた表層の断層や

地割れを明確に区別することは困難である。

(p.181)

(略)この地表地震断層は震源断層とは直接つながらない副断層であろうと考えている。

Page 5: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

5

【「地震と断層、そして活断層とは何か 思いこみや風評を排して冷静な対応を」

山崎 日本原子力学会誌 Vol.55,No.6 2013】

(略)

(略)

(参考)山崎先生プレゼン資料から

• 主断層:地下の地震発生層内の震源断層の地表延長部,または密接に関連する断層

• 分岐断層:地下で主断層(震源断層)から分岐し、主断層から離れた所に出現する地震断層

• 副断層:主断層の近くの地表に出現するが、主断層と直接的な関連を持たない地震断層

Page 6: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

6

(高尾ほか、2013)

2.1 主断層(principal faulting)

地震断層のうち、震源断層と密接に関係している断層を主断層と定義する。本研究では、それぞ

れの歴史地震に対して各研究者によって提案されている震源断層モデルとの対応を重視し、断層

変位の連続性および変位の大きさを考慮した。評価地点が活断層の直上に立地している場合は、

主断層による断層変位の年超過頻度を考慮する必要があるが、評価地点が活断層の直上に立地し

ていない場合は考慮する必要はない。

主断層による断層変位の年超過頻度は、以下の頻度または確率の積として評価される。

(略)

2.2 副断層(distributed faulting)

地震断層のうち、震源断層と密接に関係しているとは言えないが、地表に断層変位を生じさせた

ものを副断層と呼ぶこととする。活断層の活動に伴ってその活断層から離れた場所で副次的また

は従属的に生じた断層変位と言うこともできる。Youngs et al.(2003)は“distributed faulting”

という用語を用いているが、これに対応する適切な訳語が存在しないため、この論文では、これ

まで日本で用いられてきた用語のうち最も近い意味を持つ“副断層”を訳語として当てることと

した。

(高尾ほか、2014)

本研究及び高尾ほか(2013)3)では、地表地震断層が震源断層と対応しているかどうかの判定にあ

たっては、Vermilye andScholz (1998)5)によって提案された「プロセスゾーン」という考え方を

導入し、震源断層の地表延長部に分布する地表地震断層だけを主断層とするのではなく、地表延

長部を含めて、断層長のおよそ 1.0% の幅に入っている断層は震源断層と関係する主断層とみな

し、それ以外の地表地震断層を副断層とみなした.

(鈴木ほか、2015)

Page 7: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

7

【「日本の海成段丘アトラス」小池、町田 東京大学出版会(2001) 】から作成

Page 8: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

8

岩 盤 岩石で構成される地盤。岩石は堆積岩、火成岩、変成岩に分類

される。

変 形 傾斜、撓みなどの連続的な変状

(参考:新版 地学事典 地学団体研究会 平凡社 1996 年)

(実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈 別記1)

2 第3条第2項に規定する「変形」とは、地震発生に伴う地殻変動によって生じる支持地盤の傾

斜及び撓み並びに地震発生に伴う建物・構築物間の不等沈下、液状化及び揺すり込み沈下等の周

辺地盤の変状をいう。

3 第3条第3項に規定する「変位」とは、将来活動する可能性のある断層等が活動することによ

り、地盤に与えるずれをいう。

Page 9: 震源断層 地表地震断層 活断層roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj...2016/07/05  · 1 活断層、震源断層、地表地震断層活断層データベース

9

断 層 岩石の破壊によって生じた不連続面で、その面に沿って相対的変位

のあるもの。

(参考)

断層 破砕帯 シーム 節理 断裂 地すべり

fault crush zone seam,parting joint fracture,rupture landslide

本委員会での使い方岩石の破壊によって生じた不連続面で,その面に沿って相対的変位のあるもの.

断層運動等に伴い岩石が破砕され,断層角礫やガウジからなる,ある幅を持ったゾーン.

成因を問わず薄い幅を有し,ある程度連続するもの.

岩盤中の割れ目で,変位のあるものも無いものもあるが,あっても小さい.

地層や岩石の中にある割れ目の総称,断層も含まれる.

斜面物質が重力により滑動する現象.

新版地学事典地学団体研究会

新版地学辞典編集委員会1996

岩石の破壊によって生ずる不連続面のうち,面に平行な変位のあるもの.力学的には,岩石の剪断破壊を表す.この不連続面を断層面といい,その向きを走向と傾斜(または倒角)で表す.断層の両側の部分(盤という)の変位(方向と量)を示すのは実移動で,これの各方向の成分に走向移動・傾斜移動などがある.実移動の方向にかかわらず,断層をある特定の断面でみたときの見かけの変位を隔離という.断層は分類の基準によってさまざまな名で呼ばれ,鉛直断面でみた見かけのずれによって正断層・逆断層に(ただし,これらの語には違った定義を与える人もいる),断層面と地層面との幾何学的な関係によって走向断層・傾斜断層などに,実移動の方向によって走向移動断層・傾斜移動断層などに,地域的な地質構造との関係によって横断断層・縦走断層などに・・・・

主に断層運動に伴い岩石が機械的に破壊され,不規則な割れ目の集合体をなし,断層角礫や断層ガウジなどから構成されるある幅をもった帯.脆性剪断帯のなかでも,未固結~半固結の断層内物質を含むもの.剪断性の断裂によるものは剪断帯,剪裂裂とも呼ぶ.

元来,石炭層や鉱石の中にみられる薄い異質の岩層を指すが,転じて厚い粘土層中に砂の薄層や,逆に厚い砂層中に粘土の薄層が挟まれた場合のように,厚い地層中に挟まれた薄い層をいう.ラミナ単位レベルのごく薄い挟みや,節理や断層に伴う粘土などをいう場合もある.

地質学的成因による岩石・岩盤中の明瞭かつ平滑な割れ目で,割れ目の面に平行な方向への相対的変位がみられないか,あってもごくわずかなものをいう.規則正しく発達している場合もあるが,そうでない場合もある.クラック,亀裂という語も同義で用いられることが多いが,節理はどちらかというと面が平面で整然としている場合に使われることが多い.いずれの場合にも単一の割れ目として出現するものではなく,複数のものが集まって群をなしている.・・・・・・

岩盤の破壊(少なくとも一時的に粘着力を失うこと)を表す割れ目(力学的不連続面)の総称であり,断層,節理,裂罅などに分けられる.断層は面に沿った変位が両側の相対変位が明瞭なもの,節理は面に沿った変位がみられないかあってもごくわずかなもの,そして裂罅は面に直交する方向に変位が認められるもの,すなわち開口したり充填物を含むものをいう(M. P. Billings, 1972).ある地域に分布する断裂をまとめて断裂系(fracture system)と呼ぶことがある.

斜面構成物質が地下のすべり面を境界として活動する現象(狭義).広義にはマスムーブメントの運動形態の崩壊・流動・匍行の一部を含め,斜面運動の代名詞として使用される.・・・・

地盤工学用語辞典地盤工学会

地盤工学用語辞典改訂編集委員会2006

地質構造の一形態であり,通常は破砕帯を伴う.岩体が破断面に沿って二つの岩体に分離し,それらが破断面に沿って相互に逆方向に変位することにより生じる.断層面に対して上側にある岩盤を上盤(hanging wall, hangingside),下側の岩盤を下盤という.・・・・

断層運動,褶曲運動などの構造運動に伴って破砕した岩石の帯状分布をいう.通常,断層ガウジ,断層角礫の範囲をいう.断層面に近いほど破壊は進む.断層面から順にガウジ粉砕部,角礫破砕部が並び,断層面に平行に帯状に分布する.構造運動により生成した構造角礫は,本来その内部に変位した面を伴っている.英語のfracture zoneは海洋底における断裂帯に対する用語である.

(挟み層).岩石内の薄い層で,その薄層を境に,組成が異なるかあるいはより大きい規模の二つの層に分かれさせるものをいう.断面では二つの地層間の線状の薄層である.元来石炭層や鉱石中に見られる薄い火山灰や細粒の砕屑物質に対して使用された.厚い粘土層に挟まれた砂の薄層や厚い砂層に挟まれる粘土の薄層をいうことが多い.粘土中に挟まれる砂から構成される薄層をサンドシーム(sand seam)という.小断層をシームと呼ぶことがあるが,本来の語意とは異なる使用例である.

岩盤・岩石内に見られる平行する破断,割れ目あるいは分離であり,破断面の両側において相対的変位はないかあるいはほとんどみられないものをいう.表面には通常羽毛状の構造が見られる.一群の節理の部分では平行配列したほぼ等しい間隔の節理が見られることが多い.節理は生成時の応力状態から,剪断節理と伸張節理とに分けられる.前者は最大主応力軸に鋭角で交わり,後者は最大主応力軸に平行にそれぞれ形成される.節理の形成には構造運動に関する構造応力,地殻中の残留応力,冷却による収縮などの応力が考えられる.

× 斜面を構成する物質が重力の影響で斜面下方へ移動するような斜面移動現象を総称してマスムーブメントと呼ぶ.地すべりは崩壊・土石流・落石等と並んでマスムーブメントの一種であり,これらの運動様式や移動速度によって区分される.その分類基準は明瞭ではないが,主として地質構造的特性や力学的要因によって斜面が比較的広い範囲にわたって活動するものを地すべりという.・・・・

応用地質用語集日本応用地質学会

2004

岩石の破壊によって生じた不連続面で,その面に沿って相対的変位のあるもの.力学的にはせん断破壊面である.

断層に沿って形成された角礫や粘土帯を保有する不良岩盤部の総称で,突発湧水や押し出し,支持力不足などの問題を伴うことが多い.

[挟み:parting]炭層および鉱体中に挟在される岩石層.多くは堆積岩である.その他,鉱物内の面に沿って含まれる異種物質.ほとんどは変質物.

岩石・岩盤中の破断面のうち,相対的な変位がないか,あってもごくわずかなもの.

岩石・岩盤・岩体の破壊を表す割れ目の総称.力学的に不連続面が生じていることが重要である.

狭義には,斜面物質が滑動する現象をいう.特定の地形・地質条件下で起こりやすい.広義には落下・流動現象を含む.

地質基準日本地質学会

地質基準委員会2001

破断面(断層面)にそって両側の地質体に変位が見られるもので,母岩の破砕と周辺の節理密集体をともなうことがおおく,基盤の強度・透水性(透気性)にあたえる影響が大きい.

× × 破断面(断層面)にそって地質体に変化がないか,あってもごくわずかなもの.分野によっては割れ目とよぶこともある.

地質体中の破断面である.断裂には断層・裂罅・節理がある.

斜面上の物質が緩慢な動きで原形をある程度とどめたまま継続的に滑動するもの.

地質学ハンドブック加藤碵一・脇田浩二

2001

地層や岩石中に認められる割れ目(断裂:fracture of rupture)のうち,面に沿って明瞭な相対的変位を示すもの.

断層は断層面だけでなく,一般にはそれに沿って,断層面の両盤を構成する岩石や地層が破壊された物質からなる,ある幅をもった板状の帯が伴っている.これを破砕帯や剪断帯と呼ぶ.

× 地層や岩石中に認められる割れ目(断裂:fracture or rupture)のうち,面に沿った方向にも直交する方向にもほとんど変位がないもの.

地層や岩石中に認められる割れ目. 斜面構成物質がある程度塊状を保ちながら,すべり面上を比較的緩慢に下方へ移動する現象.

Glossary of GeologyKlaus K.E. Neuendorf et.al.

2005

A discrete surface or zone of discretesurfaces separating two rock masses acrosswhich one mass has slid past the other.

An area of fault breccia or faultgouge.

[ore dep] A particular bed or vein ina series of beds; it is usually saidof coal but may also pertain tometallic minerals.[stratig](a) A thin layer or stratumof rock separating two distinctivelayers of different composition orgreater magnitude.(b) Strictly, the line of separationbetween two different strata,resembling the seam between two partsof a garment.

A planar fracture, crack, or partingin a rock, without sheardisplacement; the surface is usuallydecorated with a plumose structure.Often occurs with parallel joints toform part of a joint set.

(a) A general term for any surfacewithin a material across which thereis no cohesion, e.g. a crack.Fracture includes cracks, joints, andfaults. (b) A crack in a rock wherethe movement of rock separated by thecrack in normal to the surface.

A general term covering a widevariety of mass-movementlandforms and processesinvolving the downslopetransport, under gravitationalinfluence, of soil and rockmaterial en masse. Usually thedisplaced material moves overa relatively confined zone orsurface of shear. ....