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LTEコンポーネントの スティミュラス-レスポンス・ テスト Application Note

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LTEコンポーネントの スティミュラス-レスポンス・テスト

Application Note

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目次1. はじめに .................................................................................................... 3

2. LTE物理層の概要 .................................................................................... 4 2.1 一般的な特長 ..................................................................................................4 2.2 フレーム構造 ..................................................................................................4 2.3 リソース・ブロック ......................................................................................5 2.4 物理信号とチャネル ......................................................................................63. テスト要件 ............................................................................................... 8 3.1 増幅器 ...............................................................................................................8 3.2 トランスミッタ、レシーバ、トランシーバ用RFIC ................................8 3.3 LTE規格のトランスミッタ・コンフォーマンス・テスト .....................9 3.4 LTE規格のレシーバ・コンフォーマンス・テスト ................................11 3.5 コンポーネント・テスト用の測定 ..........................................................124. 測定セットアップ ................................................................................. 13 4.1 ダウンリンク/アップリンク信号の生成 ..............................................13 4.2 ダウンリンク/アップリンク信号の解析 ..............................................145. LTE信号の作成 ........................................................................................ 14 5.1 FDD用のE-UTRAテスト・モデル(ダウンリンク) .................................14 5.2 TDD用のE-UTRAテスト・モデル(ダウンリンク) ................................19 5.3 アップリンクのテスト信号 ......................................................................20 5.4 送信フィルタ ...............................................................................................24 5.5 マルチキャリア信号の作成 ......................................................................27 5.6 信号劣化の追加 ............................................................................................276. LTE信号の測定と解析 ........................................................................... 28 6.1 出力パワーの測定 ........................................................................................28 6.2 周波数誤差、エラー・ベクトル振幅、IQパラメータ ..........................29 6.3 ピーク対アベレージ・パワー比(PAPR)またはCCDF .............................31 6.4 隣接チャネル漏洩電力(ACLRまたはACPR) ...........................................32 6.5 スペクトラム・エミッション・マスク ..................................................34 6.6 スペクトラム・フラットネス(アップリンク) .....................................35 6.7 未割り当てのRBの帯域内エミッション(アップリンク) ...................36 6.8 スプリアス・エミッション .......................................................................38まとめ ............................................................................................................ 38

関連カタログとWebリソース ...................................................................... 39

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1. はじめに3GPP Long Term Evolution (LTE)仕様は、LTEシステムのコンポーネント/機器メーカに対していくつかの新しい問題をもたらします。規格はきわめて複雑であり、複数のチャネル帯域幅、ダウリンクとアップリンクで異なる伝送方式、周波数ドメインとタイム・ドメインの両方のデュプレックス(FDDおよびTDD)伝送モード、MIMO(マルチ入力マルチ出力)アンテナ手法などが採用されています。LTEは現行の2Gおよび3G携帯電話システムと共存するために、潜在的な干渉も重要な問題です。このような理由で、LTEシステムの性能目標は高く設定され、使用されるコンポーネントやデバイスの性能がその目標の達成に重要な要因となります。

「コンポーネント・テスト」というのは一般的な用語ですが、このアプリケーション・ノートでは、トランスミッタ、レシーバ、トランシーバ用のパワーアンプやRFICなどのデバイスを表します。基地局(BS、エンハンスド・ノードBまたはeNBとも呼ばれる)またはユーザ機器(UE)のトランスミッタまたはレシーバのテストについては、Agilentの他のアプリケーション・ノートでカバーされているので、ここでは扱いません。LTE信号を使用してRFICからの送信信号を測定するスティミュラス-レスポンス・テストにフォーカスしています。このようなコンポーネントの完全な特性評価には、このほかにもさまざまな測定が必要な場合があります。例えば、CW信号を使用するテスト(Sパラメータ、利得圧縮、相互変調歪みなど)、雑音指数、消費電力などです。しかし、このアプリケーション・ノートではこれらについては説明していません。

このアプリケーション・ノートでは最初に、LTE規格の物理層の概要を紹介しています。次に、LTEシステムのコンポーネントに適用されるテスト要件について、LTEコンフォーマンス・テストを出発点として、eNBやUEではなくコンポーネントをテストすることの意味に焦点を当てて説明しています。測定セットアップの概要では、AgilentのLTE用機器やテスト・ソリューションの一部を紹介し、その後にコンポーネント・テスト用のLTE信号の作成と、LTEコンポーネントからの送信信号の解析について説明しています。

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2. LTE物理層の概要

2.1 一般的な特長

LTEの物理層は、ダウンリンクに直交周波数分割多元接続(OFDMA)、アップリンクにシングル・キャリア周波数分割多元接続(SC-FDMA)を採用しています。どちらも多元接続テクノノロジーであり、複数のユーザが同時に送信できます。1.4~ 20 MHzの6種類のチャネル帯域幅が使用でき、サブキャリア間隔は15 kHz(MBMS:マルチキャリア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービスの場合は7.5 kHz)に固定されています。このため、使用されるOFDMサブキャリアの個数はチャネル帯域幅によって異なります。

2.2 フレーム構造

図1. LTEのフレーム構造、FDD用のタイプ1(TS 36.211)

LTEには2種類のフレーム構造が定義されています。フレーム構造タイプ1(FS1)はFDD用、フレーム構造タイプ2(FS2)はTDD用です。どちらのタイプでも、1フレームは長さ10 msで、長さ1 msのサブフレーム10個に分割されています(図1を参照)。1個のサブフレームには、長さ0.5 msのスロットが2個含まれています。FS1の場合は、フレーム全体がダウンリンクまたはアップリンク伝送用に使用されます。

TDDの場合は、FS2の10 msのフレーム1個は、長さ5 msのハーフ・フレーム2個に分割され、各ハーフ・フレームは長さ1 msのサブフレーム5個に分割されています(図2を参照)。スイッチ・ポイント周期性として、5 msと10 msの2種類がサポートされています。スイッチ・ポイントの周期性が5 msのフレームの場合は、サブフレーム1と6は特殊なサブフレームで、ダウンリンク・パイロット・タイムスロット(DwPTS)、ガード間隔(GP)、アップリンク・パイロット・タイムスロット(UpPTS)の3つのフィールドから構成されています。スイッチ・ポイント周期性が10 msのフレームの場合は、サブフレーム1だけが特殊なサブフレームで、サブフレーム6は通常のダウンリンク・サブフレームです。表1に、LTE規格でTDDモード用に定義されているダウンリンクとアップリンクのサブフレームの可能な組み合わせを示します。

1 無線フレーム、Tf= 307200Ts= 10 ms

1スロット、Tslot= 15360× Ts= 0.5 ms

1サブフレーム

#0 #1 #2 #3 #18 #19

サブフレーム 0 サブフレーム 1

, ,

サブフレーム 9

,

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図2. LTEのフレーム構造、TDD用のタイプ2、5 msのスイッチ・ポイント周期性(TS 36.211)

アップリンク- ダウンリンク 構成

スイッチ・ ポイント 周期性

サブフレーム番号

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

0 5 ms D S U U U D S U U U

1 5 ms D S U U D D S U U D

2 5 ms D S U D D D S U D D

3 10 ms D S U U U D D D D D

4 10 ms D S U U D D D D D D

5 10 ms D S U D D D D D D D

6 5 ms D S U U U D S U U D

表1. TDDのアップリンク/ダウンリンク構成(TS 36.211表4.2-2)

2.3 リソース・ブロック

伝送に使用される最小の時間-周波数単位をリソース・エレメントと呼び、1個のサブキャリア上の1個のシンボルとして定義されています。タイム・スロット1個の中の12個の連続するサブキャリアのグループがリソース・ブロック(RB)を構成し、データ伝送はRB単位で割り当てられます。1個のRBの中のシンボル数は、巡回プリフィックスの長さによって異なります。通常の巡回プリフィックスでは、1個のRBに7個のシンボルがあります。拡張巡回プリフィックスでは、サブキャリア間隔が15 kHzの場合は、6個のシンボルがあります。マルチメディア・ブロードキャストのダウンリンクでは、拡張巡回プリフィックスでシンボル数が3個、サブキャリア間隔が7.5 kHzの場合もあります。

RBのサイズはすべての帯域幅で同じですが、サブキャリアの個数が帯域幅によって異なるため、使用可能なRBの個数は、表2に示すようにチャネル帯域幅ごとに異なります。表2に示す使用サブキャリア数は、通常の15 kHzのサブキャリア間隔の場合です。

伝送帯域幅(MHz) 1.4 3 5 10 15 20

使用サブキャリア数 72 180 300 600 900 1200

スロットあたりのリソース・ブロック数 6 15 25 50 75 100

表2. 帯域幅ごとのサブキャリアとリソース・ブロックの個数

1 無線フレーム、

1 ハーフ・フレーム、

1 スロット、1 サブフレーム、

ガード間隔ガード間隔

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2.4 物理信号とチャネル

LTEのエア・インタフェースは、物理信号と物理チャネルから構成されています。物理信号はレイヤ1で作成され、システム同期、セル識別、無線チャネル評価に用いられます。物理チャネルは、上位レイヤからの制御、スケジューリング、ユーザ・ペイロードなどのデータを伝送します。表3に、物理信号の一覧を示します。ダウンリンクでは、プライマリおよびセカンダリ同期信号にセル識別データが含まれ、UEがネットワークを識別して同期するために用いられます。ダウンリンクとアップリンクの両方に含まれる基準信号(RS)は、他の規格ではパイロット信号と呼ばれるもので、レシーバが受信信号の振幅と位相のフラットネスを評価するために用いられます。

ダウンリンク信号 フル名称 変調シーケンス 目的

P-SS プライマリ基準信号 3つのZadoff-Chuシーケンスの1つ UEがセル探索/識別に使用。セルIDの一部 (3個の直交シーケンスの1つ)を伝送。

S-SS セカンダリ基準信号 2つの31ビットBPSK Mシーケンス UEがセル探索/識別に使用。セルIDの残りの部分 (168個のバイナリ・シーケンスの1つ)を伝送。

RS 基準信号(パイロット) 複素I+jQ疑似ランダム・シーケンス (長さ31のGoldシーケンス)

ダウンリンク・チャネル評価に使用。 セルIDから導出された厳密なシーケンス、 3×168=504シーケンスのうち1つ

アップリンク信号 フル名称 変調シーケンス 目的

DM-RS 復調基準信号 Zadoff-Chu UEとの同期およびアップリンク・チャネル評価に使用

S-RS 音声基準信号 Zadoff-Chuに基づく UEへの伝搬条件のモニタに使用

表3. LTEの物理信号

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物理チャネルは、システム情報とユーザ・データを伝送します。表4にその一覧を示します。このようにさまざまなチャネルが存在するため、フレーム構造はきわめて複雑になります。コンポーネントのテストでは、通常はこれらすべての物理チャネルを含む信号を作成する必要はありません。

この物理層の概要では、比較的上位レベルのエレメントのいくつかをカバーすることにより、基本的なバックグランドを提供します。変調や物理リソースへのマッピングなどの詳細情報については、このアプリケーション・ノート末尾に記載してある参考文献を参照してください。

ダウンリンク・チャネル

フル名称 変調方式 目的

PBCH 物理ブロードキャスト・チャネル QPSK セル固有の情報を伝送

PDCCH 物理ダウンリンク制御チャネル QPSK スケジューリング、ACK/NACK

PDSCH 物理ダウンリンク共有チャネル QPSK、16QAM、64QAM ペイロード

PMCH 物理マルチキャスト・チャネル QPSK、16QAM、64QAM マルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・ サービス(MBMS)のペイロード

PCFICH 物理制御フォーマット・ インジケータ・チャネル

QPSK サブフレーム内のPDCCHの伝送に使用されるOFDM シンボルの個数(1、2、3、4)に関する情報を伝送

PHICH 物理ハイブリッドARQ インジケータ・チャネル

拡散係数2または4のWalsh コードでI/Q変調されたBPSK

ハイブリッドARQ ACK/NACKを伝送

アップリンク・チャネル

フル名称 変調方式 目的

PRACH 物理ランダム・アクセス・チャネル

Zadoff-Chu 呼設定

PUCCH 物理アップリンク制御チャネル BPSK、QPSK スケジューリング要求、ACK/NACK、チャネル品質 インジケータ(CQI)

PUSCH 物理アップリンク共有チャネル QPSK、16QAM、64QAM ペイロード、ACK/NACK、CQI

表4. LTEの物理チャネル

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3. テスト要件

3.1 増幅器

LTEのダウンリンクにはOFDMAが使用されているため、信号のピーク対アベレージ・パワー比(PAPR)やクレスト・ファクタが大きくなります。この理由は、複数のサブキャリアの独立した位相が強め合うように加算されるからです。クレスト・ファクタが大きいと、トランスミッタのパワー・アンプに広いダイナミック・レンジが必要になり、コストや複雑さを抑えながら性能を最適化するのが困難になります。アップリンクではクレスト・ファクタを小さくするためにSC-FDMAが用いられますが、それでもUEの増幅器はさまざまなパワー・レベルを処理できる必要があります。

増幅器を非線形領域で動作させると、利得圧縮やクリッピングにより歪みが生じ、隣接チャネル干渉やスペクトラム効率の低下につながります。増幅器を圧縮ポイントより下で動作させると、増幅器が線形領域内で動作し、歪みを最小にできますが、その代償として効率が低下します。

デザイン・エンジニアの重要な仕事は、さまざまな条件で、PAPRが異なる信号を入力したときの増幅器の性能を理解し、制約内で最良のトレードオフを決定することです。一般的に用いられるテストとしては、パワー測定、エラー・ベクトル振幅(EVM)などの変調品質測定、隣接チャネル漏洩電力(ACLR、ACPRとも呼ばれる)、スペクトラム・リグロースなどの歪み測定があります。

3.2 トランスミッタ、レシーバ、トランシーバ用 RFIC

LTEデバイスのトランスミッタとレシーバの簡略化したブロック図を図3に示します。トランスミッタまたはレシーバの下位レベルのコンポーネントは、デザインに使用されるアーキテクチャのタイプ(スーパーヘテロダインかダイレクト・コンバージョンか、など)により決まり、フィルタや可変利得増幅器(VGA)などの追加のコンポーネントが含まれる場合もあります。LTEではMIMOテクノロジーが使用されるため、LTEトランスミッタおよびレシーバには複数のアンテナが装備され、それぞれが送信および受信チェーンに接続されます。図3では簡略化のためにこれは示していません。

図3. トランスミッタおよびレシーバの簡略化したブロック図

ADC

DigR

Fインタフェース

IQ復調器

IQ変調器

Rxシンセサイザ

Txシンセサイザ

ADC

DAC

DAC

LNA

PA

RFスイッチ

TxデジタルIQ

RxデジタルIQ

アナログIQのRFICの例Rx I

Rx Q

Tx I

Tx Q

デジタルIQのRFICの例

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RFICには、このブロック図のさまざまな部分が含まれる可能性があります。例えば、トランスミッタまたはレシーバのみを含むもの、トランスミッタとレシーバの両方を1つのコンポーネントに統合したトランシーバを含むものなどがあります。デバイスにはマルチバンドのものもあり、各周波数バンドに対応する複数の出力経路がIQ変調器の後に存在するか、RFスイッチ/マルチプレクサからIQ復調器までの間に複数の入力経路が存在します。

従来のほとんどのRFICは、アナログ・ベースバンドIQ入力/出力を使用していました。最近では、デジタルIQインタフェースが一般的になりつつあります。MIPI(Mobile Industry Processor Interface)アライアンスが開発したDigRF v3.09規格は、2.5Gと3Gのデュアル・モード・デバイスのベースバンドとRFICの間のデジタル・インタフェースを規定していますが、LTE信号は、高いデータ・レート、MIMOテクノロジーの採用といった複雑性のため、この規格では対応できません。このような要件に対応できるDigRF v4規格は、現在開発中です。

これらのRFICの特性評価にどのような測定が必要かを知るには、LTE規格で要求されているコンフォーマンス・テストについて調べるのが有効です。

3.3 LTE規格のトランスミッタ・コンフォーマンス・テスト

基地局(eNB)用のトランスミッタ・テストは、3GPP TS 36.141のセクション6に記述されています。これらのテストは、E-UTRAテスト・モデル(E-TM)と呼ばれる特定のダウンリンク信号構成を使用して行われます。表5に、テストの一覧、規格でテストが記述されているサブセクション、使用されるテスト・モデルを示します。ここには、これらのテストに使用できる、Agilent Xシリーズ(PXA、MXA、EXA、CXA)シグナル・アナライザ用のN9080A LTE FDDおよびN9082A LTE TDDアプリケーションの測定も記載されています。これらのアプリケーションと測定については、このアプリケーション・ノートの後半で詳しく説明します。

TS 36.141 セクション eNBトランスミッタ・テスト 使用するE-TM

XシリーズN9080A/82A LTE 測定アプリケーションでの測定

6.2 基地局の出力パワー 1.1 チャネル・パワー

6.3 6.3.1 6.3.2

出力パワー・ダイナミクス REパワー制御のダイナミック・レンジ 全パワーのダイナミック・レンジ

2, 3.1, 3.2, 3.32, 3.1

変調解析変調解析

6.4 6.4.1 6.4.2

送信オン/オフ・パワー トランスミッタ・オフ・パワー トランスミッタの遷移時間

注記:これはTDDのみ未定未定

送信オン/オフ・パワー (N9082A LTE TDDアプリケーション)

6.5 6.5.1 6.5.2 6.5.3 6.5.4

送信信号品質 周波数誤差 エラー・ベクトル振幅(EVM) トランスミッタの分岐間の時間調整 ダウンリンクRSパワー

2, 3.1, 3.2, 3.32, 3.1, 3.2, 3.31.11.1

変調解析変調解析 変調解析 変調解析

6.6 6.6.1 6.6.2 6.6.3 6.6.4

不要エミッション 占有帯域幅 隣接チャネル漏洩電力(ACLR) 運用バンドの望ましくないエミッション トランスミッタのスプリアス・エミッション

1.11.1, 1.21.1, 1.21.1

占有帯域幅 隣接チャネル漏洩電力 スペクトラム・エミッション・マスク スプリアス・エミッション

6.7 トランスミッタの相互変調 1.1 スペクトラム・アナライザ・モード

表5. 基地局トランスミッタ・コンフォーマンス・テスト(TS 36.141 V8.5.0)

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UE用のトランスミッタ・テストは、3GPP TS 36.521-1のセクション6に記述されています。表6に、これらのテストの一覧と、テストに使用できるXシリーズLTEアプリケーションの測定を示します。これらのテストのほとんどは表5のeNBテストに対応していますが、未割り当てのRBの帯域内エミッション(6.5.2.3)など、アップリンクに固有のものもいくつかあります。これらのテストに使用されるアップリンク・チャネル構成は、基準測定チャネル(RMC)と呼ばれます。

表5と6のテストは、ベースバンド、RF、プロトコルのすべての機能を備えたeNBまたはUEトランスミッタ全体を対象としているので、コンポーネント・テストには適用できないものもあります。増幅器やRFICをテストする主な目的は、送信RF信号の品質に影響を与えるコンポーネントの特性を検査することです。例えば、IQオフセットや利得不平衡などのIQ変調器のエラー、IQタイミングのずれ、LOフィードスルー、位相雑音、EVMなどと、ACLRやスペクトラム・リグロースなどの歪み特性です。

TS 36.521-1 セクション UEトランスミッタ・テスト

XシリーズN9080A/82A LTE測定 アプリケーションでの測定

6.2 6.2.2 6.2.3 6.2.4 6.2.5

送信パワー UEの最大出力パワー 最大パワー低減 追加最大パワー低減 構成済みUEの送信出力パワー

チャネル・パワー チャネル・パワー チャネル・パワー チャネル・パワー

6.3 6.3.2 6.3.3 6.3.4 6.3.5

出力パワーのダイナミクス 最小出力パワー 送信オフ・パワー オン/オフ時間マスク パワー制御

チャネル・パワーチャネル・パワー-チャネル・パワー

6.5 6.5.1 6.5.2 6.5.2.1 6.5.2.2 6.5.2.3 6.5.2.4

送信信号品質 周波数誤差 送信変調 エラー・ベクトル振幅(EVM) 搬送波リーケージ 未割り当てのRBの帯域内エミッション スペクトラム・フラットネス

変調解析

変調解析変調解析変調解析変調解析

6.6 6.6.1 6.6.2 6.6.2.1 6.6.2.2 6.6.2.3 6.6.3 6.6.3.1 6.6.3.2 6.6.3.3

出力RFスペクトラム・エミッション 占有帯域幅 帯域外エミッション スペクトラム・エミッション・マスク 追加スペクトラム・エミッション・マスク 隣接チャネル漏洩電力(ACLR) スプリアス・エミッション トランスミッタのスプリアス・エミッション スプリアス・エミッション・バンドUE共存 追加スプリアス・エミッション

占有帯域幅

スペクトラム・エミッション・マスクスペクトラム・エミッション・マスク隣接チャネル・パワー

スプリアス・エミッションスプリアス・エミッションスプリアス・エミッション

6.7 送信相互変調 スペクトラム・アナライザ・モード

表6. UEトランスミッタのコンフォーマンス・テスト(TS 36.521-1 V8.4.0)

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3.4 LTE規格のレシーバ・コンフォーマンス・テスト

eNB用のレシーバ・テストは、3GPP TS 36.141のセクション7に記述されています。表7に、テストの一覧を示します。これらのテストは、アップリンク・テスト信号を定義するRMCを使用して行われます。TS 36.141の付録Aのテスト用に、いくつかの固定基準チャネル(FRC)パラメータが定義されています。ほとんどのレシーバ・テストで規格に定められた測定は、特定の条件でのデータ・スループットにおけるシステム性能です。コンポーネントの場合は、スループットの結果を得るために必要なレシーバ・ベースバンドとソフトウェアが通常備わっていないため、これらのテストは使用できません。適用可能な場合もある測定は、レシーバのスプリアス・エミッション・テストです。これは、他のポートを終端したときにレシーバ・ポートに現れるエミッションを測定するものです。このテストは、トランシーバに対しても実行できます。

TS 36.141セクション eNBレシーバ・テスト

7.2 レシーバ感度レベル

7.3 ダイナミック・レンジ

7.4 チャネル内選択度

7.5 隣接チャネル選択度と狭帯域ブロッキング

7.6 ブロッキング(帯域内および帯域外)

7.7 レシーバのスプリアス・エミッション

7.8 レシーバの相互変調

表7. 基地局レシーバ・テスト(TS 36.141 V8.5.0)

UEのレシーバ・テストは、3GPP 36.521-1のセクション7に記述されています。テストの一覧を表8に示します。これらのテストの多くはまだ完全に定義されていませんが、概念と目的は基地局レシーバ用のテストと共通です。これらのテストのすべてでデータ・スループットの測定が必要なので、コンポーネントのテストには適用できません。

TS 36.521-1セクション UEレシーバ・テスト

7.3 基準感度レベル

7.4 最大入力レベル

7.5 隣接チャネル選択度

7.6 ブロッキング特性(帯域内および帯域外)

7.7 スプリアス応答

7.8 相互変調特性

表8. UEレシーバ・テスト(TS 36.521-1 V8.4.0)

レシーバ・コンポーネントに対してこれらのテストを使用する代わりに、下位レベルのレシーバ・コンポーネントまたはレシーバのRFフロント・エンド全体に対して、復調品質と歪み特性をテストすることができます。どちらを対象とするかは、テスト信号の入力や信号の測定のためのアクセスがどこで得られるかに依存します。

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3.5 コンポーネント・テスト用の測定

テストの要件に関するここまでの説明より、LTEコンポーネントに対して使用できる可能性がある測定の一覧を表9に示します。

測定 増幅器テスト 送受信RFICテスト

出力パワー X X

周波数誤差 X

ピーク対アベレージ・パワー (CCDF) X X

エラー・ベクトル振幅(EVM) X X

IQパラメータ (オフセット、利得不平衡、スキュー、直交エラー)

X

隣接チャネル漏洩電力(ACLR)、 ACPRとも呼ばれる

X X

スペクトラム・エミッション・マスク X X

スペクトラム・フラットネス X X (UEトランスミッタ

のみ)

未割り当てのRBの帯域内エミッション X X (UEトランスミッタ

のみ)

スプリアス・エミッション X X

表9. コンポーネント・テスト用の測定

増幅器テストには、スティミュラス-レスポンス測定が必要です。この測定では、信号発生器でRF LTE信号を出力して被試験デバイス(DUT)に入力し、DUTからの出力信号をシグナル・アナライザで測定します。

トランスミッタ・チェーンのテストでは、信号発生器からのデジタルまたはアナログ・ベースバンド信号を使用してI/Q入力をドライブし、シグナル・アナライザでRF出力を測定する必要があります。レシーバ経路に対しては、RF信号を使用してレシーバをドライブし、低雑音増幅器(LNA)またはI/Q変調器の出力(アクセス可能な場合)を測定します。次のセクションでは、測定セットアップと、LTE信号の作成と解析について説明します。

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4. 測定セットアップRF入出力を持つコンポーネントの代表的な測定セットアップはある程度簡単ですが、トランスミッタ、レシーバ、トランシーバ用RFICのテストはもっと複雑です。図4は、図3のRFICブロック図に対して、Agilentのテスト・ソリューションを使用してトランスミッタやレシーバ・チェーンのさまざまなポイントでテストを行うためのセットアップ例です。ここではこれらの製品の概要を紹介します。これらの製品やAgilentのその他のLTEデザイン/検証テスト用製品の最新情報については、www.agilent.co.jp/find/lteを参照してください。

図4. RFICテスト用の測定セットアップ

4.1 ダウンリンク/アップリンク信号の生成

AgilentのSignal Studioソフトウェアは、さまざまなフォーマットの検証済み信号を提供するPCベースのアプリケーションです。N7624B 3GPP LTE FDD用Signal StudioとN7625B 3GPP LTE TDD用Signal Studioは、ダウンリンク/アップリンク用のコード化された物理層LTE信号を提供します。波形ファイルは、さまざまなAgilent測定器にダウンロードして再生できます。AgilentのMXGおよびESG信号発生器を使用して、RFまたはアナログIQ信号を出力できます。MXGは、業界最高のACLR性能により、パワーアンプのテストに適しています。ESGは、N5102Aデジタル信号インタフェース・モジュールと組み合わせても使用できます。このモジュールは、デジタルIQデータを被試験デバイス(DUT)に適したフォーマットに変換するもので、デバイスへの物理的な接続に便利な何種類かのブレークアウト・ボードが付属しています。Signal Studioは、Agilentの16800/16900シリーズ・ロジック・アナライザおよびN5343A DigRFエクセサイザ・モジュール(DigRF用のAgilent RDXソリューションの一部)と組み合わせて、デジタルIQ信号を作成するためにも使用できます。

ADC

DigR

Fインタフェース

IQ復調器

IQ変調器

Rxシンセサイザ

Txシンセサイザ

ADC

DAC

DAC

LNA

PA

TxデジタルIQ

RxデジタルIQ

アナログIQのRFICの例Rx I

Rx Q

Tx I

Tx Q

デジタルIQのRFICの例

シグナル・アナライザ

信号発生器

RF

RF

信号発生器

デジタル信号インタフェース・モジュール

ロジック・アナライザ

DigRF用RDF

オシロスコープベクトル信号解析ソフトウェア

アナログIQ

アナログIQ

デジタルIQ

デジタルIQ

Signal Studioソフトウェア

Signal Studioソフトウェア

XシリーズLTEアプリケーション

ベクトル信号解析ソフトウェア

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4.2 ダウンリンク/アップリンク信号の解析

複雑なLTE信号のテストには、RFパワー測定に加えて、詳細な変調解析を伴う信号解析が必要です。Agilent Xシリーズ(PXA、MXA、EXA、CXA)およびPSAを使用してLTE信号のRFパワーを測定でき、MXAおよびPXAではアナログIQ信号も測定できます。

N9080A LTE FDDおよびN9082A LTE TDD測定アプリケーションは、Agilent PXA、MXA、EXAシグナル・アナライザ上で動作し、便利なワンボタン・パワー測定、ダウンリンク/アップリンク信号の変調解析、SCPIコマンドによるプログラミング制御が行えます。

もう1つの解析ソリューションは、89600ベクトル信号解析(VSA)ソフトウェアです。これはさまざまなフォーマットをサポートするPCベースのアプリケーションです。LTE FDD用のオプションBHDと、LTE TDD用のオプションBHEにより、現行のLTE規格に基づいた包括的な変調およびMIMOシグナリング解析と、ワンボタン測定以上の柔軟性が得られます。VSAソフトウェアは、XシリーズおよびPSAシグナル・アナライザ、オシロスコープ、ロジック・アナライザ、N5344A DigRFアナライザ・モジュール(DigRF用のRDXソリューションの一部)など、さまざまな測定器で使用できます。VSAは複数の測定器で使用できるので、同じソフトウェアをさまざまなハードウェアで動作させて、ブロック図内のRF、アナログIQ、デジタルIQの各インタフェースでのテストに使用できます。また、VSAは、Xシリーズのアプリケーションにない、トラブルシューティングに便利ないくつかの機能を備えています。例えば、信号の記録/再生、最大6個の同時ディスプレイ、スペクトログラム表示、データ表示のズームなどです。

コンポーネント・テストの問題の1つは、どのようなテスト信号を使用するかを決めることです。理想的には、実際のLTEシステムに使用されるデバイスのさまざまな条件(例えば、さまざまなPAPRや、シンボルごとのパワーの変動など)を反映した、さまざまな信号を使用してコンポーネントの性能をテストすべきです。LTE規格は複雑で、チャネル帯域幅、物理制御/データ・チャネル、変調方式、使用するRB数、データ・コンテンツなどにより、ダウンリンク/アップリンク信号の可能な構成は膨大な数になります。これらの選択肢を実用的な数のテスト信号に絞り込むのは、手間のかかる作業です。

LTE規格では、コンフォーマンス・テストに使用する特定のダウンリンク/アップリンク・テスト信号を定義しています。これらはコンポーネント・テストに使用する信号の有効なサンプルとなりますが、さらに詳細なテストのために追加の信号が必要になる場合もあります。

5.1 FDD用の E-UTRAテスト・モデル(ダウンリンク)

E-UTRAテスト・モデル(E-TM)は、TS 36.141のセクション6で基地局トランスミッタのテスト用に定義されています。したがって、これらの信号は基地局のパワーアンプまたはトランスミッタ・コンポーネントのテスト用に使用できます。各コンフォーマンス・テストで使用するテスト・モデルは、前述の表5に示してあります。各E-TMに必要な物理チャネル・パラメータはきわめて詳細に定義されています。E-TM1.2のパラメータの例を表10に示します。特定の物理リソース・ブロック(PRB)のパワー・レベルをブースト/デブーストすることもできます。さまざまな制御/データ・チャネルの構成と、その相対パワー・レベルが指定されています。

5. LTE信号の作成

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パラメータ 1.4 MHz 3 MHz 5 MHz 10 MHz 15 MHz 20 MHz

基準、同期信号

RSブースト、PB=EB/EA 1 1 1 1 1 1

同期信号EPRE/ERS [dB] 0.000 –4.730 –4.730 –4.730 –4.730 –4.730

予約EPRE/ERS [dB] -無限大 -無限大 -無限大 -無限大 -無限大 -無限大

PBCH

PBCH EPRE/ERS [dB] 0.000 –4.730 –4.730 -4.730 -4.730 –4.730

予約EPRE/ERS [dB] -無限大 -無限大 -無限大 -無限大 -無限大 -無限大

PCFICH

制御チャネルに使用されるシンボルの個数 2 1 1 1 1 1

PCFICH EPRE/ERS [dB] 3.222 0 0 0 0 0

PHICH

PHICHグループの個数 1 1 1 2 2 3

グループあたりのPHICHの個数 2 2 2 2 2 2

PHICH BPSKシンボル・パワー /ERS [dB] –3.010 –3.010 –3.010 –3.010 –3.010 –3.010

PHICHグループEPRE/ERS [dB] 0 0 0 0 0 0

PDCCH

使用可能REGの個数 23 23 43 90 140 187

PDCCHの個数 2 2 2 5 7 10

PDCCHあたりのCCEの個数 1 1 2 2 2 2

CCEあたりのREGの個数 9 9 9 9 9 9

PDCCHに割り当てられたREGの個数 18 18 36 90 126 180

パディング用に追加されたダミー REGの個数 5 5 7 0 14 7

PDCCH REG EPRE/ERS [dB] 0.792 2.290 1.880 1.065 1.488 1.195

<NIL> REG EPRE/ERS [dB] -無限大 -無限大 -無限大 -無限大 -無限大 -無限大

PDSCH

ブーストされたQPSK PDSCH PRBの個数 2 6 10 20 30 40

PRB PA=EA/ERS [dB] 3 (*) 3 3 3 3 3

デブーストされたQPSK PDSCH PRBの個数 4 9 15 30 45 60

PRB PA=EA/ERS [dB] –2.990 (*) –4.730 –4.730 –4.730 –4.730 –4.730

表10. E-TM1.2の物理チャネル・パラメータ(3GPP TS 36.141 V8.5.0の表6.1.1.2-1)

これらの複雑な信号の作成は、時間のかかる作業です。AgilentのN7624B 3GPP LTE FDD用Signal StudioやN7625B 3GPP LTE TDD用Signal Studio などの信号作成ソフトウェアを使用すれば、これらのテスト・モデルを選択するだけで作成できます。テスト・モデルは、「基本」搬送波に対して使用でき、FDDでは“eNB Setup”ページ、TDDでは“Downlink”セットアップ・ページを選択して、上部のWizardボタンをクリックすることにより選択できます。例えば、図5に示すのは、N7624B Signal Studioソフトウェアによる5 MHz帯域幅のE-TM 1.2のフレーム構造です。これは表10に示したパラメータに対応しています。E-TM 1.2には、同期とチャネル予測のためのP-SS、S-SS、RS信号と、ほとんどの物理チャネルが含まれます。使用可能なPDSCH RBはすべて、QPSKで変調されます。2つの独立したPDSCHが定義されているので、一部のRBのパワーをブーストし、他のRBのパワーをデブーストできます。

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図5. 5 MHz帯域幅のE-TM1.2のフレーム構造

各E-TMに対する物理チャネル・パラメータ・テーブルを調べることにより、その主な違いがわかります。

• RSリソース・エレメントのEPRE(ERS)を基準にした、さまざまな物理信号やチャネル(PBCH、PCFICHなど)のリソース・エレメントあたりのパワーまたはエネルギー (EPRE)

• PDCCHに割り当てられたリソース・エレメント・グループ(REG)の個数(1個のREG=4個のリソース・エレメント)とPDCCHの定義

• PDSCH物理リソース・ブロック(PRB)のパワー・ブーストまたはデブースト

• ブーストまたはデブーストされるPRBの個数• パワー・ブーストまたはデブーストの大きさ• 各サブフレームでどのPRB(番号)がブーストまたはデブーストされるか

• EVM測定のためのPDSCH定義

• EVMが測定されるスロット内にある特定の変調方式でのPRBの個数• EVMが測定されない(パワー平衡のためだけに使用される)スロット内にあるPRBの個数と変調方式、または割り当てられないPRBの個数

• RSがないシンボル内のPDSCHリソース・エレメントのEPREとERSとの比

基準信号(RSまたはパイロット)

PDCCH PCFICH

S-SSP-SS

PBCH PHICH

PDSCH #1 PDSCH #2

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これらの違いの結果として、E-TMのスペクトラム特性やパワー特性はかなり異なります。特に、E-TM2は他のE-TMよりもPAPRが大きくなっています。スロットごとに割り当てられるPDSCH PRBが1個だけで、他のPRB(RSを除く)にはパワーがないからです。他のE-TMでは、すべてのPRBが割り当てられていますが、パワー・レベルはPDSCHの違いに応じて異なります。PAPRの大きさは、信号の相補累積分布関数(CCDF)を調べることによりわかります。これは、信号が平均パワー・レベルより与えられたパワー・レベルだけ上にある時間の割合を、統計的に記述したものです。Signal Studioソフトウェアでは、信号を作成した後でCCDFを計算して表示できます。または、シグナル・アナライザでAgilentの89600 VSAソフトウェアまたはXシリーズ・シグナル・アナライザ用のN9080A LTE FDD/N9082A LTE TDD測定アプリケーションを使用して、実際のCCDFを測定することもできます。図6に示すのは、5 MHz帯域幅のE-TM1.1およびE-TM2に対するSignal StudioでのCCDFの計算結果です。

図6. E-TM1.1(左)およびE-TM2(右)のCCDF曲線の計算結果

図6の表示では、信号のCCDFが黄色のトレースで、参照用としてガウシアン雑音のCCDFが青のトレースで示されています。X軸は、信号の平均パワー・レベルを基準としたパワーです。左の表示からは、E-TM1.1でCCDFが0.01 %になる値が9.52 dBであることがわかります。この値は、信号パワーが平均パワーより9.52 dB以上大きい時間が、全体の0.01 %であることを示しています。言い換えれば、99.99 %の時間は、信号パワーは平均+9.52 dBより下にあります。右のE-TM2信号では、CCDFが0.01 %となる値は14.34 dBです。Y軸のすべてのパーセンテージにおいて、E-TM2信号のX軸のピーク対アベレージ値はE-TM1.1信号を上回っています。この信号は、パワーアンプにとってはE-TM1.1信号よりもはるかにストレスが大きな信号です。その他のE-TM信号のCCDF特性は、E-TM1.1と同様で、CCDFが0.01 %となる値は9.38~9.88 dBの範囲です。

テスト・モデル信号のスペクトラム/タイム・ドメイン表示には、他にもいくつかの違いが見られます。例えば、図7に示すのは、5 MHz E-TM3.1信号の10 ms(1フレーム)にわたるスペクトラム/タイム・ドメイン測定の結果です。信号パワーは周波数と時間の両方できわめて一様です。図8に、5 MHzのE-TM2信号に対する同じ測定を示します。明らかに、周波数と時間の両方でパワーの変動が大きくなっています。図9は、E-TM2のフレーム構成です。これを見れば、このような変動が存在する理由がわかります。全体のほとんどを占める明るい色の背景の部分は、未割り当てのPDSCHリソース・ブロックを表します。ここにはパワーがありません。2スロット(1サブフレーム)にわたるピンク色のブロックは、64QAM変調のデータを含む割り当て済みのPDSCHリソース・ブロックです。RSを含むシンボルは、短い赤のラインの列で示されています。1個目と6個目のサブフレームにはP-SSとS-SSが含まれ、1個目のサブフレームにはPBCHも含まれています。このフレーム構成を図8のパワー対時間構成と比較することにより、パワーの大きいシンボルが多くの割り当て済みRBを含むシンボルに対応することが明確にわかります。

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図7. 5 MHzのE-TM3.1信号のスペクトラムとパワー対時間

図8. 5 MHzのE-TM2信号のスペクトラムとパワー対時間

図9. 5 MHzのE-TM2信号のフレーム構成

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5.2 TDD用の E-UTRAテスト・モデル(ダウンリンク)

TDDの場合は、テスト・モデルは、アップリンク/ダウンリンク構成3(表1を参照)と、TS 36.211に定義されている特殊なサブフレーム構成8に基づいています。テスト・モデルの主な特性を以下に示します。

• ダウンリンク-アップリンク・スイッチ・ポイント周期性:10 ms• ハーフ・フレーム(10 ms)あたりのアップリンク/ダウンリンク・サブフレームの個数:ダウンリンク6、アップリンク3

• DwPTS:24144 * Ts(Ts=32.55 ns)• ガード間隔:2192 * Ts• UpPTS:4384 * Ts

これらのテスト・モデルは、FDDに対して定義されているテスト・モデルに似ていますが、RB割り当てが少し異なっています。TDDのテスト・モデルには2個のフレームが定義されていますが、FDDに対して定義されているのは1個だけです。

図10に、5 MHzのE-TM2 TDD信号のスペクトラムとパワー対時間を示し、図11に、それに対応するフレーム構成を示します。詳細を見やすくするために、2個のフレームのうちの1個だけが示されています。

図10. 5 MHzのE-TM2 TDD信号のスペクトラムとパワー対時間

図11. 5 MHzのE-TM2 TDD信号のフレーム構成

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コンポーネント(特にパワーアンプ)をTDD信号でテストする場合は、入力テスト信号のタイミングを出力信号の測定と、DUTのオン/オフに同期させることが必要な場合があります。例えば、CCDFを測定する場合は、RF信号がオンである期間に測定時間を制限することが重要です。RFバーストがオフのときにCCDFのパワーを測定すると、平均パワー値が変化するため、ピーク対アベレージ結果も変わってしまいます。図10に示すE-TM2信号では、N7625B Signal Studioソフトウェアで計算したCCDFが0.01 %となる値は、RFバーストのみの場合は13.82 dBですが、波形全体を含めると15.50 dBになります。AgilentのSignal Studioソフトウェアで作成した波形ファイルには、フレームの先頭にマーカ出力信号が含まれているため、これを使用してテスト・システムの他の測定器をトリガすることにより、同期を実現できます。

5.3 アップリンクのテスト信号

さまざまな規格文書で定義されているいくつかのアップリンク信号は、UEパワーアンプまたはトランスミッタ・コンポーネント、またはBSレシーバ・コンポーネントに対するテスト信号として使用できる可能性があります。

3GPP TS 36.141では、BSレシーバのテストに使用するアップリンク信号が定義されています。これらは基準測定チャネル(RMC)と呼ばれます。特定の帯域幅とテストに使用する具体的な構成は、付録Aに固定基準チャネル(FRC)として記載されています。表11に、QPSK 1/3変調/コード化を使用するBSレシーバのテスト用FRCの例を示します。UMTSのアダプティブ変調/コード化(AMC)のテスト用に可変基準チャネル(VRC)を使用する可能性は議論されたことがありますが、実現されませんでした。現時点では、LTE用に定義されている唯一のRMCのタイプはFRCであり、FRCとRMCは同じ意味で用いられることがあります。

基準チャネル A3-1 A3-2 A3-3 A3-4 A3-5 A3-6 A3-7

割り当て済みリソース・ブロック 1 6 15 25 50 75 100

サブフレームあたりのDFT-OFDMシンボル数 12 12 12 12 12 12 12

変調 QPSK QPSK QPSK QPSK QPSK QPSK QPSK

コード・レート 1/3 1/3 1/3 1/3 1/3 1/3 1/3

ペイロード・サイズ(ビット) 104 600 1544 2216 5160 6712 10296

トランスポート・ブロックCRC(ビット) 24 24 24 24 24 24 24

コード・ブロックCRC(ビット) 0 0 0 0 0 24 24

コード・ブロック数:C 1 1 1 1 1 2 2

12ビットのトレリス終端を含むコード化ブロック・サイズ(ビット)

396 1844 4716 6732 15564 10188 15564

サブフレームあたりの全ビット数 288 1728 4320 7200 14400 21600 28800

サブフレームあたりの全シンボル数 144 864 2160 3600 7200 10800 14400

表11. QPSK 1/3の性能要件のFRC(表A.3-1、TS 36.141 V8.5.0)

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表11は、A3-1に対して1つのRBを割り当てた場合と、A3-2からA3-7までの各帯域幅に対してRBをフルに割り当てた(使用可能なすべてのRBを使用した)場合を示しています。これらのFRCを使用する例として、TS 36.141のセクション8.2に記載されている「PUSCHの性能要件」を考えます。5 MHzの帯域幅に対して、TS 36.141の表8.2.1.5-3には、伝搬(フェージング)条件に応じて、FRC A3-1またはA3-4をBSレシーバのテスト用に使用できると記載されています。

3GPP TS 36.521-1の付録A.2には、UEトランスミッタ・テストに使用するアップリンク信号のRMCが定義されています。RMCには、フルRB割り当てで定義されたものと、部分的RB割り当てで定義されたものがあります。例えば、表12に示すのは、フルRB割り当てのQPSK基準チャネルです。

TS 36.521-1のセクションA.2.2.2では、さまざまな変調方式の各帯域幅に対して、部分的RB割り当てのFDD基準チャネルが定義されています。5 MHzのQPSK信号に対しては、1個、8個、20個のRBが割り当てられた基準チャネルが定義されています。

同様の基準チャネルがTDDに対しても定義されています。ここでは、アップリンク-ダウンリンク割り当て構成1(表1を参照)を使用し、ダウンリンク/アップリンク構成比がダウンリンク2:アップリンク2であると仮定されています。

パラメータ 単位 値

チャネル帯域幅 MHz 1.4 3 5 10 15 20

割り当て済みリソース・ブロック 6 15 25 50 75 100

サブフレームあたりのDFT-OFDMシンボル数 12 12 12 12 12 12

変調 QPSK QPSK QPSK QPSK QPSK QPSK

ターゲット・コード化レート 1/3 1/3 1/3 1/3 1/5 1/6

ペイロード・サイズ ビット 600 1544 2216 5160 4392 4584

トランスポート・ブロックのCRC ビット 24 24 24 24 24 24

コード・ブロック数:C 1 1 1 1 1 1

コード・ブロックのCRCサイズ ビット 0 0 0 0 0 0

サブフレームあたりの全ビット数 ビット 1728 4320 7200 14400 21600 28800

サブフレームあたりの全シンボル数 864 2160 3600 7200 10800 14400

表12. フルRB割り当てでのQPSK基準チャネル(表A.2.2.1.1-1、TS 36.521-1 V8.4.0)

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RBがフルに割り当てられたアップリンク信号は、BSレシーバのコンポーネント・テストの一部に使用できる可能性があるので、AgilentのSignal Studioソフトウェアでは、基本的なアップリンク搬送波用のフル割り当て信号の定義済み構成を提供しています。ただし、現実には、UEはシステム内の他のUEとリソースを共有する必要があるため、多くの場合にUEは部分的に割り当てられた信号を送信します。したがって、UEの増幅器またはトランスミッタ・コンポーネントをテストする際には、部分的に割り当てられたアップリンク信号で一部のテストを行う必要がある場合があります。Signal Studioでは、部分的なRB割り当てのRMCは、アップリンクのアドバンスド搬送波に対する定義済み構成として使用できます。これらは規格ではBSレシーバ・テスト用に定義されているからです(TS 36.141)。図12に、Signal Studioで作成したフル割り当ての5 MHzアップリンク信号のスペクトラム/パワー対時間とフレーム構造を示します。予想されるように、この信号のパワーはきわめて一様です。フレーム構造の図の明るいグレーの部分は割り当て済みのPUSCHであり、縦のオレンジ色の線は復調RSです。

図12. 25個のRBが割り当てられた5 MHzアップリンク信号(QPSK)のスペクトラム、パワー対時間、フレーム構造

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図13に示すのは、FRC A3-1に定義された1個のRBだけが割り当てられた 5 MHzアップリンク信号(TS 36.141の表A.3-1を参照)のデータです。この図では、周波数バンドの下端のRB 0だけが割り当てられていて、スペクトラムからはこの範囲の周波数に信号パワーが集中しているのがわかります。他のRBにはパワーがないはずですが、実際にはスペクトラムに多少のパワーが現れています。このことから、未割り当てのRBに対する帯域内エミッション用のUEトランスミッタ・テストが定義されています。これについては後で詳しく説明します。

図13. 1個のRBが割り当てられた5 MHz信号(QPSK)のスペクトラム、パワー対時間、フレーム構造

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アップリンク信号のCCDF特性をダウンリンク信号と比較することにより、興味深い結果が得られます。図14では、5 MHzのフル割り当てQPSKアップリンク信号のCCDF(図12の信号のCCDFも同様)を左側に、フル割り当てのQPSKダウンリンク信号(E-TM1.1)のCCDFを右側に示しています。アップリンク信号のCCDF(黄色のトレース)のほうが、ピーク対アベレージ・パワー特性がはるかに小さくなっています(例えば、0.01 %の値は6.54 dBと9.52 dB)。PAPRが小さいために、UEでは線形領域が狭い増幅器が使用できます。これが、OFDMAでなくSC-FDMAがアップリンクに採用された理由です。

図14. 5 MHzのフル割り当てのアップリンク信号(左)とダウンリンク信号(右)のCCDF

5.4 送信フィルタ

cdma2000、W-CDMA、HSPAなどの従来の移動体通信規格とは異なり、LTE規格では特定の送信フィルタを定義していません。このため、さまざまなフィルタ実装が使用でき、チャネル内性能を最適化してEVMを改善したり、チャネル外性能を最適化してACPRやスペクトラム・マスク特性を向上させたりできます。これらの特性はトレードオフの関係にあるので、どちらかを最適化するともう一方は悪化する傾向があります。

コンポーネントのテストでは、最良のEVMまたはACLR性能を持つスティミュラス信号を出発点として、DUTに起因する悪化を明確に判定できるようにする必要があります。AgilentのSignal Studioソフトウェアでは、信号のEVMとACPR特性を変更するためのさまざまなフィルタリング・オプションが提供されています。デフォルトでは、Agilentによって定義されたベースバンド・フィルタが使用されます。これはACPR性能とEVM性能のバランスを重視したものです。信号のEVM性能を最適化するには、シンボルのロールオフ長さ(Ts単位、1 Ts=32.55 ns)に0でない値を入力することにより、別の種類のフィルタを適用できます。これにより、OFDMシンボル間の不連続部を滑らかにするためにタイム・ドメインで適用されるOFDMウィンドウの長さが設定されます。このパラメータの値を大きくすると、EVM性能が改善されますが、ACPR性能は低下する可能性があります。

この後のいくつかの図に、さまざまなタイプのフィルタを使用した結果を示します。使用した信号はすべて、5 MHzのE-TM 1.1信号で、QPSK変調を使用し、使用可能なRBすべてをフルにPDSCHに割り当てています。図15は、デフォルトのベースバンド・フィルタを使用した結果です。コンポジットEVMは約0.53 %で、ACPRは-73.2 dBです。

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図15. デフォルトのベースバンド・フィルタを使用した5 MHz E-TM 1.1信号(ACLRが最善)

図16は、ベースバンド・フィルタをオフにし、シンボル・ロールオフ長さを20 Tsに設定した結果です。この組み合わせでは最良のEVMが得られますが、隣接チャネルのスペクトラム・リグロースがかなり大きくなります。EVMは約0.37 %で、ACPRは-43.1 dBです。

図16. ベースバンド・フィルタを使用せず、シンボル・ロールオフ長さ=20 Tsに設定した 5 MHz E-TM 1.1信号(EVMが最善)

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両方のタイプのフィルタリングを組み合わせることにより、良好なACLRを維持しながらEVM性能を改善できます。図17は、ベースバンド・フィルタをオンにし、シンボル・ロールオフ長さを20 Tsに設定した結果です。EVMは約0.46 %で、ACPRは-73.1 dBです。

図17. ベースバンド・フィルタを使用し、シンボル・ロールオフ長さ=20 Tsに設定した5 MHz E-TM 1.1信号

図17の測定結果は、Agilent MXG信号発生器の優れたACLR性能を示しています。比較のために、別のベンダの信号発生器で作成した、ACLR性能に最適化されたE-TM 1.1信号の代表的な測定結果を図18に示します。セットアップは、図15でMXG用に使用したものと同じです。ACLRが図15では-73 dBcであるのに対し、ここでは-69 dBcになっています。MXGは、他のベンダの信号発生器に比べて、信号のパラメータに応じて代表的な場合で3~ 5 dB程度ACLR性能が優れているので、高性能デバイスのテストでより多くのマージンが得られます。

図18. 他のベンダの信号発生器で作成した、ACLRに最適化された5 MHzのE-TM 1.1信号

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5.5 マルチキャリア信号の作成

マルチキャリア信号は、基地局マルチキャリア・パワーアンプ(MCPA)のテストや、必要な信号と干渉信号の両方が存在するデバイスのテストに適しています。LTEシステムはW-CDMAシステムと共存すると予想されるので、両方のタイプの搬送波を含むテスト信号を作成できることも必要です。N7624B LTE FDD用Signal Studioでは、最大16個の搬送波を含む信号を作成できます。搬送波としては、LTEの基本搬送波とアドバンスド搬送波(ダウンリンクまたはアップリンク)、またはW-CDMAダウンリンク/アップリンク搬送波が使用できます。このマルチキャリア機能を使用すれば、LTEとW-CDMAの搬送波を作成するために別のアプリケーションを購入する必要がないため、他のソリューションに比べてコストを低減できます。各搬送波に対して、周波数オフセット、パワー、タイミング・オフセット、初期位相、フィルタリングなどのパラメータを設定できます。W-CDMA搬送波では、フィルタ設定は、デフォルトでは3GPP規格に規定されているロールオフ係数α=0.22のルート・ナイキスト・フィルタですが、他のフィルタ・タイプも使用できます。

LTE搬送波とW-CDMA以外のフォーマットとを組み合わせた信号を作成するためには、ベースバンド信号またはRF信号との組み合わせが可能なソリューションが使用できます。ベースバンド結合を実現するには、Agilent N5106A PXBベースバンド・ジェネレータ/チャネル・エミュレータのような製品が使用できます。この製品は、最大6個のベースバンド・ジェネレータからの信号を再生して加算するもので、組み合わせた信号は1台の信号発生器でRFにアップコンバートできます。PXBの各ベースバンド・ジェネレータは、それぞれ異なるSignal Studioアプリケーションからの信号を、異なる周波数オフセットと振幅で出力できます。このソリューションは、RF結合ソリューションよりも低価格です。RF結合ソリューションとは、複数の信号発生器で別々のRF信号を発生し、それらを加算してDUTに印加するものです。ただし、RF結合ソリューションは、必要な信号と干渉信号の間のダイナミック・レンジを広く取れるので、レシーバ・テスト・アプリケーションには適しています。

5.6 信号劣化の追加

デザイン段階では、特定の信号劣化を含む信号でコンポーネントをテストするのが有効な場合があります。信号劣化を使用することで、デバイスのストレス・テストを行ったり、送信/受信チェーン内の他のコンポーネントから信号に追加される特性をシミュレートしたりできます。また信号劣化は、テスト信号の不完全性を補正するためにも使用できます。

ほとんどの信号発生器では、I/Qオフセット、利得不平衡、直交角度、スキュー、遅延などのI/Q信号劣化を追加できます。AgilentのN5162AやN5182A MXG RFベクトル信号発生器など、いくつかの測定器では、位相雑音も信号劣化として追加できます。

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6. LTE信号の測定と解析LTEコンポーネントをテストするための主な測定には、前述のリストに記載したように、以下のものがあります。

• 出力パワー• 周波数誤差• EVM• IQパラメータ(オフセット、利得不平衡、スキュー、直交エラー)• ピーク対アベレージ・パワー (CCDF)• ACLRまたはACPR• スペクトラム・エミッション・マスク• スペクトラム・フラットネス(アップリンク)• 未割り当てのRBの帯域内エミッション(アップリンク)• スプリアス・エミッション

これらの測定は、AgilentのXシリーズ・シグナル・アナライザ(MXA/EXA)用のLTE FDDおよびLTE TDD測定アプリケーションか、89600 VSAソフトウェア+LTE FDDまたはLTE TDD変調解析を使用して行えます。

以下のセクションでは、これらの測定のそれぞれについて詳しく説明します。Signal StudioとMXA/EXAアプリケーションを使用してこれらの測定を実行する詳細な手順については、AgilentのWebサイトからダウンロードできる『N9080A and N9082A LTE Modulation Analysis Technical Overview with Self-Guided Demonstration』(カタログ番号5989-6537EN)を参照してください。VSAソフトウェアに関する手順を記載した『89600オプションBHD 3GPP LTE変調解析』(カタログ番号5989-7698JAJP)も用意されています。

6.1 出力パワーの測定

このアプリケーション・ノートでは、出力パワー測定とはチャネル・パワーと占有帯域幅を表します。チャネル・パワーは、適切な積分チャネル帯域幅内の平均パワーを示します。占有帯域幅とは、チャネル・パワーの99 %を含むLTE信号の帯域幅です。これらはどちらも、Agilent Xシリーズ・シグナル・アナライザ用のN9080AおよびN9082Aアプリケーションでワンボタン測定として実行でき、LTE信号のすべての帯域幅が定義済み設定として用意されています。この測定は、89600 VSAソフトウェアでも容易に実行できます。89600では、バンド・マーカ・パワー機能でチャネル・パワーを測定し、占有帯域幅マーカ機能を使用します。

ダウンリンクに対しては、コンフォーマンス・テストではこれらのテストにE-TM 1.1を使用します。アップリンクに対しては、出力パワーに関するコンフォーマンス・テストは複数あり、それぞれ異なる信号構成と、RBの部分的割り当てまたはフル割り当てを使用します。RMCはTS 36.521-1の付録A.2に、RB割り当てはセクション6.2と6.3のいくつかの表に定義されています。

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TDD信号では、バースト・パワーがオンの間にデータが捕捉されることを保証するために、タイム・ゲーテッド測定が必要です。Xシリーズ・アナライザのゲーテッドLO機能([Sweep/Control]フロント・パネル・キーの下)またはVSAソフトウェアのタイム・ゲート機能を使用して、測定時間を定義します。規格では測定時間を定義していませんが、通常はバーストが完全にオンである期間に測定を実行し、立ち上がりと立ち下がりの期間は含めません。Signal Studioで作成した波形ファイルには、ゲート機能用の外部トリガとして使用できるフレーム開始マーカ(マーカ1)が含まれています。信号発生器のEVENT 1出力からの信号を、Xシリーズ・アナライザのリア・パネルにあるTrigger 1 INコネクタに接続します。図19に、MXAでゲート表示をオンにしてTDD信号のチャネル・パワー測定を行った結果を示します。

図19. ゲート表示をオンにしたLTE TDDチャネル・パワー測定

6.2 周波数誤差、エラー・ベクトル振幅、IQパラメータ

周波数誤差は、信号の中心周波数と目的の中心周波数との間のオフセットであり、送信RFセクションのLO周波数誤差などに起因して発生する可能性があります。EVMはトランスミッタの変調品質の主要なテストであり、信号の歪みの大きさを示します。IQエラー測定により、歪みの考えられる原因のいくつかが明らかになることがあります。UEトランスミッタのコンフォーマンス・テストでは、搬送波リーケージまたはIQ原点オフセットの測定が必要です。これはベースバンド信号の搬送波フィードスルーまたはDCオフセットの指標となります(3GPP TS 36.521-1、セクション6.5.2.2)。

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周波数誤差、EVM、IQパラメータは、Xシリーズ・アプリケーションまたはVSAソフトウェアのエラー・サマリに報告されます。図20を参照してください。エラー・サマリを得るには、LTE信号を復調するために変調解析パラメータを適切に設定する必要があります。この設定には、チャネル帯域幅、ダウンリンクまたはアップリンク、チャネル・プロフィール、測定時間設定などの基本的なパラメータと、イコライザ設定、EVMのウィンドウ長さなどの高度なパラメータが含まれています。Xシリーズ・アプリケーションと89600 VSAのどちらにも、E-TM信号のEVM測定のための便利な設定済みのセットアップ・ファイルが用意されています。これらのセットアップを利用するには、以下の手順を実行します。

• Xシリーズ・アプリケーション

• LTEアプリケーションを開始します:[Mode] > LTE

• 変調解析測定を選択します:[Meas] > More > Modulation Analysis

• EVMセットアップ・ファイルをリコールします:[Recall] > Data > EVM Setup > Open。My Documents\LTE\data\evmsetupフォルダが開いていない場合は、このフォルダに移動します。テスト・モデル番号とチャネル帯域幅に一致するファイル名を選択し、Openをクリックします。

• 89600 VSA

• VSAソフトウェアを開始した後、File > Recall > Recall Setupを選択します。

• C:\Program Files\Agilent\89600 VSA\Help\Signals\LTE\E-TMフォルダに移動します。

• 信号帯域幅とE-TM番号に一致するファイルを選択して、Openをクリックします。

• セットアップ・ファイルでは、記録ファイルを再生することを仮定しているため、対応する記録ファイルがない場合は、エラー・メッセージが表示される場合があります。エラー・メッセージが表示されたら、OKをクリックして消します。Input > DataFrom > Hardwareを選択し、Restart(再生)ボタンをクリックして、測定を開始します。

• 測定するLTE信号の必要に応じて、中心周波数とレンジを設定します。

図20. 周波数誤差、EVM、IQエラーを示すエラー・サマリ

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6.3 ピーク対アベレージ・パワー比 (PAPR)または CCDF

PAPRとCCDFの概念についてはすでに説明しました。XシリーズLTEアプリケーションにはワンボタンCCDF測定があり、89600 VSAにもCCDF測定が備わっています。TDD信号では、測定はRFバーストがオンである期間に限定する必要があります。バーストがオフの期間にパワーを測定すると、正しいアベレージ・パワー値が得られず、CCDF測定に誤差が生じるからです。ESGまたはMXG信号発生器のEVENT 1出力からのフレーム・スタート・マーカを、シグナル・アナライザ測定の外部トリガとして使用できます。89600で測定時間を制限するには、メイン・タイム長を変更するか、タイム・ゲーティングを使用します。LTE TDD Xシリーズ・アプリケーションでは、CCDF測定を選択し、[Meas Setup]を選択し、[Meas Offset]と[Meas Interval]の時間を設定することにより、測定のタイム・スパンを指定できます。選択した測定インターバルを表示するようにスロット表示をオンにするには、図21に示すように、[View/Display] > Slot View Onを選択します。

図21. LTE TDDダウンリンク信号のCCDF

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6.4 隣接チャネル漏洩電力(ACLRまたは ACPR)

ACLRはトランスミッタの主要な特性の1つで、パワーアンプのテストに重要なパラメータです。パワーアンプは送信チェーンの歪みの最大の原因だからです。LTEシステムは同じ周波数バンドでW-CDMAシステムと共存する必要があるので、LTEのRFコンフォーマンス・テストには、隣接チャネルがE-UTRA(LTE)信号またはUTRA(W-CDMA)信号のケースが含まれています。E-UTRAチャネルはすべて方形フィルタ(基本的にフィルタなしと同じ)で測定されるのに対して、UTRAチャネルは、ロールオフ係数が0.22で、帯域幅がチップ・レート(3.84 MHzなど)に等しいルート・ナイキスト・フィルタで測定されます。基地局(ダウンリンク)コンポーネントの場合は、すでに説明したように、すべてのPDSCH RBのパワーが同じであるE-TM1.1と、パワーのブースト/デブーストを伴うE-TM1.2がテストに使用されます。UEコンポーネントの場合は、アップリンクのRMCは付録A.2で指定されていて、TS 36.521-1の表6.6.2.3.4.1-1で定義されているように、テストはフルRB割り当てと部分的RB割り当ての両方で実行されます。

ACLR測定のセットアップには、搬送波、オフセット周波数、積分帯域幅、分解能帯域幅とビデオ帯域幅、測定フィルタ、リミット・テストの設定が含まれています。XシリーズLTEアプリケーションには、セットアップ・プロセスを大幅に単純化するワンボタンAPC測定が含まれています。ACP測定を選択した後、以下の手順とキー入力を使用して、使用可能な選択肢のリストから、適切なパラメータとテスト・リミットをリコールできます。

• [Recall] > Data > Mask > Openを選択します。

• My Documents\LTE\data\masksフォルダを開きます。

• アップリンクとダウンリンクのどちらの信号をテストするかに応じて、ACP_BSフォルダまたはACP_MSフォルダのどちらかを開きます。フォルダには、ペアまたは非ペアのスペクトラム、カテゴリAまたはカテゴリBのリミット(ITU-R SM.329に定義)、隣接チャネルおよび交互チャネルの搬送波のタイプ(E-UTRA(LTE)、UTRA(W-CDMA)、TD-SCDMA)のそれぞれに対応した信号帯域幅のファイルがあります。

• 適切なファイルを開いて、設定とリミット・ラインをリコールします。搬送波のタイプに基づいて、適切な測定フィルタが選択されます。

デフォルトでは、リミット・ラインは絶対リミットであり、格子線の上端の上に表示される場合があります。相対リミットに変更するには、[Meas Setup] > Offset/Limits > Limits > Fail Maskを選択し、Relativeを選択します。これらのリミットはBSまたはUEトランスミッタ全体をテストするためのものなので、コンポーネント・テストに使用するには緩すぎる可能性があります。必要に応じてリミットを編集して、セットアップを保存してください。

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クイック・セットアップを使用すればLTE規格に基づいたACLR測定を簡単に実行できますが、アナライザ設定を最適化することでさらに性能を改善することもできます。ACLR測定を改善する方法を以下に示します。

1. 入力ミキサでの信号レベルの最適化によるダイナミック・レンジの拡大2. ノイズ補正の使用3. 測定方法の変更によるフィルタリングありの積分帯域幅の使用

クリッピングを最小化し、過負荷を防ぐために、シグナル・アナライザは入力ミキサでの現在の信号レベルの測定値に基づいて減衰値を自動的に選択します。機械式と電子式の両方のタイプのアッテネータを備えたアナライザの場合は、これら2種類の減衰の組み合わせが使用される場合があります。これはダイナミック・レンジを最大化するための最良の減衰とは限らず、減衰量をわずかに減らすことでACLRを改善できる場合もあります。電子式アッテネータがオンになっている場合は、これをオフにする(単に減衰を0 dBにするのではなく)ことにより、さらに結果を改善できることがあります。

ノイズ補正をオンにすると、特に測定する歪みがアナライザのノイズ・フロアに近い場合に、ACLRを大幅に改善できます。ノイズ補正をオンにした場合は、アナライザは、掃引を1回実行して内部ノイズ・フロアを測定し、その後の掃引では、その内部ノイズ・フロアを測定データから減算します。

最後に、測定方法を変更することができます。デフォルトでは、アナライザは積分帯域幅法を使用します。これは、1回の掃引でデータを取得した後、各オフセットのバンド・パワーを計算するものです。ダイナミック・レンジを最大にするには、フィルタリングありの積分帯域幅法を選択します。この方法では、急峻なカットオフのバンドパス・フィルタを使用して、分解能帯域幅を制限します。この方法では、ダイナミック・レンジは大きくなりますが、測定時間も長くなります。搬送波と隣接チャネルまたは交互チャネルのパワー・レベルの絶対確度は最大0.5 dB低下しますが、ACLR測定は相対パワー測定なので確度は低下しません。

これらの最適化手法の組み合わせにより、ACLR測定性能をデフォルト設定に比べて10 dB(代表値)以上改善できます。

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6.5 スペクトラム・エミッション・マスク

スペクトラム・エミッション・マスク(SEM)測定は、3GPP TS 36.141セクション6.6.3(基地局用)およびTS 36.521-1セクション6.6.2(UE用)に規定されている運用バンドの不要エミッション・テストをカバーしています。これらのテストは、運用バンドに加えて、バンド境界周波数の上下1チャネル分を含む周波数スパンのチャネル外エミッションを測定します。

SEM測定のセットアップはACLRのセットアップとよく似ていて、搬送波、オフセット周波数、積分帯域幅、分解能帯域幅とビデオ帯域幅、テスト・リミットの設定が含まれています。ACLRの場合と同様に、XシリーズLTE アプリケーションにはSEM測定用の定義済みリミット・マスクが用意されていて、パラメータの手動設定も可能です。これらのマスクを利用するには、次のキー入力を使用します。[Recall] > Data > Mask > Openを選択します。My Documents\LTE\data\masksフォルダに移動します。アップリンクとダウンリンクのどちらの信号をテストするかに応じて、SEM_BSフォルダまたはSEM_MSフォルダのどちらかを開きます。ファイルの名前は、信号の帯域幅、カテゴリAまたはカテゴリBリミット、1 GHzより下または上、特定の地域で適用される追加要件のためのリミット、バンド12、13、14、17の追加要件のためのリミットを表しています。デフォルトのリミット・ラインは絶対リミットであり、DUTがコンフォーマンス・テストで定義された最大パワーで送信していると仮定しています。ただし、リミット・ラインは、前のセクションのACLRに関する説明と同様にして、相対リミットに変更できます。図22に、10 MHz E-TM 1.1信号に対するSEM測定の例を示します。

ACLRと同様に、SEMのリミットはコンポーネントに対しては緩すぎるので、必要ならコンポーネント・テストに適した値にリミット値を編集してください。

図22. 10 MHz E-TM 1.1信号に対するスペクトラム・エミッション・マスク測定

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6.6 スペクトラム・フラットネス(アップリンク)

EVMイコライザのスペクトラム・フラットネスは、UEトランスミッタに対する送信信号品質のコンフォーマンス・テスト(3GPP TS 36.521-1、セクション6.5.2.4)の一部です。このテストは、EVMと組み合わせて実行するのに適しています。EVM測定は通常、規格の定義に基づいて、アナライザがイコライゼーション・プロセスを通じて各周波数での振幅誤差と位相誤差を評価して除去した後で行われるからです。これらの誤差は、EVMだけを考慮した場合は見逃される可能性があります。スペクトラム・フラットネスは、割り当てられたRBのサブキャリア間において、タイム・ドメインの1スロット分の相対パワーの変動を測定するもので、1フレーム中の20回測定されます。このテストは、QPSK変調のRBがフル割り当てされたアップリンク信号を使用して実行され、テスト信号を作成するために、Signal Studioソフトウェアのデフォルトのアップリンク搬送波設定を使用し、チャネル設定として適切な帯域幅とQPSK変調を選択します。

スペクトラム・フラットネスを測定するには、イコライゼーション・プロセスから得られたイコライザ・チャネル周波数応答結果を調べます。これは、89600 VSAソフトウェアおよびXシリーズ・アプリケーションの変調解析測定で使用できるデータ型の1つです。どちらのアプリケーションでも、図23に示すように、スロットごとのイコライザ・チャネル周波数応答をスロットごとに異なるカラーのトレースで表示できます。必要に応じて、測定インターバルを変更することにより、特定のスロットの結果だけを見ることもできます。

図23. 5 MHzアップリンク信号のスロットごとのイコライザ・チャネル周波数応答

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6.7 未割り当ての RBの帯域内エミッション(アップリンク)

すでに説明したように、アップリンク・チャネルは複数のUEの間で共有されるため、1台のUEはチャネル帯域幅の一部分だけを占めます。図12に示すように、チャネル帯域幅内に信号リーケージが発生して、他のUEに対する干渉が発生する可能性があります。未割り当てのRBの帯域内エミッション・テストは、UEが未割り当てのRBで送信するパワーの大きさを測定するものです。このテストは、UEのトランスミッタとコンポーネントだけに適用されます。テストはまだ完全に定義されていませんが、コンポーネント・テストに十分な情報は得られます。

アップリンク信号は、付録A.2に指定されたRMCを使用して設定されます。ここでは、チャネル帯域幅のスタートRBがRB #0およびRB #(最大値+1-RB割り当て)と定義されています(3GPP TS 36.521-1の表6.5.2.3.4.1-1を参照)。

帯域内エミッションとして、3つの種類(汎用、IQイメージ、DC)が定義されています。一般的には、未割り当ての周波数に適用されます。測定帯域幅はRB 1個分であり、測定結果は、割り当て済みのRB 1個の中のパワーと、すべての割り当て済みRBを対象としたRB 1個あたりの平均パワーとの比です。IQイメージは、割り当て済み帯域幅の中のイメージ周波数に適用されます。これは中心周波数に関する対称性に基づいたもので、割り当て済みのRBを除外したものです。DC測定は、使用可能なRBの個数が奇数の場合は中心周波数を含むRB、RBの個数が偶数の場合は中心周波数に直接隣接する2個のRBに適用されます。ただし割り当て済みのRBは除きます。DCの場合は、測定帯域幅はRB 1個分であり、テスト・リミットは、割り当て済みのRB 1個の中のパワーと、該当する割り当て済みRBの合計パワーとの比です。

これらの測定は、「RBパワー・スペクトラム」データ表示を使用して実行できます。これは、89600 VSAソフトウェアの"Demod"データ型の1つであり、Xシリーズ・アプリケーションの“Demod Error”データ・トレース・タイプの1つです。相対マーカを使用して、未割り当てRBと割り当て済みRBのパワーの比を測定できます。これらの測定の詳細な例が、Xシリーズ・アプリケーションのデモ・ガイドに記載されています。このガイドをダウンロードするには、www.agilent.co.jpでカタログ番号“5989-6126JAJP”を検索してください。

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図24に、Xシリーズ・アプリケーションを使用した5 MHzアップリンク信号の測定結果を示します。この信号には、3GPP TS 36.521-1の表6.5.2.3.4.1-1の要求に基づいて、QPSK変調の割り当て済みRBが8個あります。使用可能なRBは25個(RB #0~ RB #24)なので、DC成分は中央のRB(#12)に含まれています。図24では、マーカ1がスロット0のRB #6のパワーを示し、マーカ2がRB #18のパワーを示しています。RB #18はRB #6のイメージです。どちらも中央からRB 6個分だけ離れているからです。X軸上のポイント(RB #)に設定できる「マーカX」に加えて、時間軸に対する「マーカZ」を使用することにより、測定対象のスロットを選択できます。

図24. RBパワー・スペクトラム

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6.8 スプリアス・エミッション

スプリアス・エミッションは、トランスミッタのパワーアンプやその他の送信コンポーネントの高調波、相互変調成分、周波数変換成分などの問題から生じます。コンフォーマンス・テストでは、9 kHz~ 12.75 GHz(SEMテストの対象となる周波数レンジを除く)でこれらの帯域外エミッションを測定することにより、同じ地域で動作している他の無線システムに影響を与えないことを確認します。コンフォーマンス・テストには、各周波数レンジで適用されるテスト・リミットと、それぞれに使用する測定帯域幅が定められています。

ダウンリンクのスプリアス・エミッション・テストは、E-TM 1.1信号を使用して実行されます。アップリンクでは、テストは3つの設定で行われます。フルRB割り当て、RB #0の1個のRB割り当て、付録A.2.2で定義されたRMCを使用したRB #最大値の1個のRB割り当ての3つです。

Xシリーズ・アプリケーションには、3GPPで定義された周波数バンドのスプリアス・エミッションのパワー・レベルを識別して測定するスプリアス・エミッション測定が備わっています。この測定では、周波数レンジのテーブルに、測定帯域幅とフィルタ・タイプ、スプリアスしきい値、合否判定リミットを設定できます。アプリケーションに用意されているデフォルトのレンジ・テーブルは、カテゴリBのリミットに基づいていますが、特定のLTE周波数バンドに対応する周波数とリミットは設定されていません。また、コンフォーマンス・テストには、GSM900、DCS1800、PCS1900、PHSや公共安全無線システムなどの他のシステムとの共存など、特定の条件でのテスト・リミットも定められています。このような条件は、各地域の規制やLTE機器の動作バンドに応じて異なるため、実際には当てはまらない可能性もあります。このため、レンジ・テーブルを編集することにより、実際に適用可能な要件を設定する必要があります。コンフォーマンス・テスト・リミットは、BSに関しては3GPP TS 36.141セクション6.6.4、UEに関しては3GPP TS 36.521-1セクション6.6.3に記載されています。

これらの測定に関するシグナル・アナライザのダイナミック・レンジを改善するには、[Amplitude]メニューで入力減衰設定を最適化します。

このアプリケーション・ノートでは、LTEコンポーネントに関するテスト要件と考慮事項を紹介し、テスト機器のセットアップ、コンポーネント用のLTEテスト信号の作成、コンポーネントやトランスミッタからのLTE信号の解析に関する情報を提供しました。AgilentのLTEソリューションの詳細については、以下のWebサイトでオンラインでご確認いただけます。www.agilent.co.jp/find/lte

Signal Studioソフトウェア、89600 VSAソフトウェア、Xシリーズ測定アプリケーション用の無料のダウンロードと無料試用版が用意されています。これらを利用すれば、AgilentのLTE製品の機能の詳細を理解でき、LTE物理層の特性についてさらに詳しく学ぶことができます。89600 VSAとN9080A/N9082A XシリーズLTE測定アプリケーションのデモ・ガイドには、これらのアプリケーションの機能が詳しく解説されています。

まとめ

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関連カタログとWebリソース

LTEの一般情報

『Agilent 3GPP Long Term Evolution システムの概要、製品開発、テスト上の問題、Application Note』、カタログ番号5989-8139JAJP

『Understanding the Intricacies of LTE Agilent Poster』、カタログ番号5989-7646EN

『LTE and the Evolution to 4G:Wireless Design and Measurement Challenges』、Agilentの専門家による書籍、Wiley刊:www.wiley.com

3GPPシリーズ36(LTE)仕様:www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series

Agilent LTE Webページ(アプリケーション・ノート、Webキャスト、カタログ、その他のリソースへのリンクを含む):www.agilent.co.jp/find/lte

LTEアプリケーション・デモ・ガイド

『Agilent N9080A LTE FDD and N9082A LTE TDD Measurement Applications Technical Overview with Self-Guided Demonstration』、カタログ番号5989-6537EN

『89600オプションBHD 3GPP LTE変調解析、 Technical Overview and Self-Guided Demonstration』、カタログ番号5989-7698JAJPwww.agilent.co.jp/find/89600

製品情報

『LTE の可能性を拓くために、Brochure』、カタログ番号5989-7817JAJP

Agilent N5182A MXGおよびN5162A MXG ATEベクトル信号発生器www.agilent.co.jp/find/mxg

Agilent E4438C ESG信号発生器www.agilent.co.jp/find/E4438C

Agilent N7624B LTE FDD用Signal StudioAgilent N7625B LTE TDD用Signal Studio製品Webページから入手できるテクニカル・オーバビューとオンライン・ドキュメント:www.agilent.co.jp/find/signalstudio

Agilent N9020A MXAシグナル・アナライザwww.agilent.co.jp/find/mxa

Agilent N9010A EXAシグナル・アナライザwww.agilent.co.jp/find/exa

Agilent N9030A PXAシグナル・アナライザwww.agilent.co.jp/find/pxa

Agilent 89600ベクトル信号解析ソフトウェアLTE変調解析www.agilent.co.jp/find/89600

Agilentオシロスコープ・ファミリwww.agilent.co.jp/find/scopes

Agilent 16800シリーズ・ポータブル・ロジック・アナライザwww.agilent.co.jp/find/16800

Agilent 16900シリーズ・ロジック解析システムwww.agilent.co.jp/find/16900

DigRFテスト・ソリューションwww.agilent.co.jp/find/digrf

Agilent RDX DigRF v3 & v4テスト・ソリューションwww.agilent.co.jp/find/rdx

Agilent N5106A PXBベースバンド・ジェネレータ/チャネル・エミュレータ www.agilent.co.jp/find/pxb

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Published in Japan, May 17, 20105990-5149JAJP

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