small patella syndromeに伴う 恒久性膝蓋骨脱臼...
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富山大学 整形外科
〇峯 隼人,下条竜一,野上真紀子,木村友厚
Small Patella Syndromeに伴う恒久性膝蓋骨脱臼に対し,
内側膝蓋大腿靭帯再建術を行った1例
第47回 北陸リウマチ・関節研究会
2018/07/22
はじめに
Small patella syndrome(SPS)
膝蓋骨の無形成あるいは低形成
骨盤帯や足の異常
しばしば膝蓋骨脱臼を合併する
我々は今回,SPSに伴い恒久性膝蓋骨脱臼を生じた
1例を経験したので報告する
Case Report
症例: 11歳 男性
主訴: 右膝痛
現病歴:
幼少期から両膝痛が時々あった.
10歳ごろより運動中の右膝痛や,膝に力の入りにくい感じ
が出現.
近医で右膝蓋骨脱臼を指摘され,当科に紹介.
Case Report
既往歴: 特記すべきことなし
家族歴:
両親には明らかな骨関節疾患の既往なし
兄と姉には母趾とII趾の趾間拡大がみられる
身体所見
右膝関節 ROM full
膝蓋骨 恒久性脱臼、徒手整復不可
Kujala score : 69
伸展位 30度屈曲 90度屈曲
母趾とII趾の趾間拡大
短いIV趾,V趾
全身関節弛緩性なし(Carter 2/5)
手指の爪形成不全なし
右膝 画像検査
右膝 画像検査
術前CT(右膝)
TT-TG distance
15mm
45度屈曲
30度屈曲
左右
90度屈曲
その他 画像検査
• 大腿骨頸部の延長
• 右恥骨坐骨結合部の骨化異常
• 第4, 5中足骨短縮
診断: Small patella syndrome
右膝蓋骨恒久性脱臼
手術
MPFL再建術+外側解離術+内側広筋前進術
MCL付着部
スリット
VMO
手術
術後経過
後療法:術後2週間 ニーブレース固定術後3週間 完全免荷術後3週目~膝蓋骨装具を装着して可動域訓練開始術後4週目~部分荷重開始,術後5週で全荷重許可
現在:術後3年経過し再脱臼なし膝関節機能は良好であり,サッカー競技に復帰Kujara score 95点膝関節ROM full patella apprehension (-)
考察1: 膝蓋骨異形成症
Nail-patella syndrome
Small patella syndrome(Ischiocoxopodopatellar
syndrome)
Meier-Gorlinsyndrome
遺伝形式 常優 常優 常劣
原因遺伝子 LMX1B TBX4 ORC1, ORC4, etc.
異常所見
膝蓋骨の低形成あるいは無形成膝蓋骨脱臼 (ときに恒久性)
爪形成不全腸骨の角状突起
(Iliac horn)肘関節の異形成
恥骨坐骨結合部の骨化異常大腿骨頸部の延長足部の異形成
低身長小頭症小耳症
小児の膝蓋骨脱臼では丹念な全身診察が必要
(Bongers, Clin Genet, 2005)
考察2: 小児膝蓋骨脱臼の治療
膝蓋大腿関節不適合
外反膝
膝関節拘縮
不適切治療
診断後可及的早期に膝蓋大腿関節の適合性を修復する
外科的処置が必要
歩行開始前での診断、手術を推奨(Ghanem, J Pediatr Orthop, 2000)
考察2: 小児膝蓋骨脱臼の手術法
・膝蓋骨低形成,形態異常
・大腿骨膝蓋溝形成不全
・脛骨粗面-大腿骨滑車間距離:正常
・骨端線閉鎖前
近位リアライメント法
MPFL再建
+外側解離術
+内側広筋前進術
MPFL再建による内側支持機構の強固な再建は、
他の近位リアライメント法よりも臨床成績が良好(Vavken, Arthroscopy, 2013)
考察2: 小児膝蓋骨恒久性脱臼の手術法
・膝蓋骨低形成,形態異常
・大腿骨膝蓋溝形成不全
・脛骨粗面-大腿骨滑車間距離:正常
・骨端線閉鎖前
近位リアライメント法
MPFL再建
+外側解離術
+内側広筋前進術
恒久性脱臼に対する本術式の成績は不明
習慣性脱臼に対する本術式の成績は
10歳未満 再脱臼,不安定感の残存などなく良好な成績
10歳以降 8膝中3膝に再脱臼,2膝に不安定感が残存(出家, 関節外科, 2006)
本例は手術時11歳であり,短期成績は良好であるが,長期の経過観察が必要
結語
Small patella syndromeに伴う膝蓋骨恒久性脱臼の1例を
経験した.
外側解離と内側広筋前進術を併用したMPFL再建術を行
い,術後経過は良好であるが,引き続き注意深い経過観
察が必要である.
SPSは稀ではあるが膝蓋骨脱臼の一因になり得る病態で
あり,本疾患を念頭に置いて診療に当たるべきである.