produced by the /aaas custom publishing o ce ......ム(wpi)の一つです。」...
TRANSCRIPT
AdvertisementProduced by the Science/AAAS Custom Publishing Office
1871 年創立の名古屋大学は、4人のノーベル賞受賞者(野依良治[2001年・化学賞]、下村脩[2008年・化学賞]、益川敏英および小林誠[2008年・物理学賞])を輩出するなど基礎研究分野で国際的に高く評価されている。また、赤﨑勇が、窒化ガリウムを使った青色発光ダイオード(青色LED)を実現したのも名古屋大学である。「『名古屋大学から Nagoya Universityへ』―これは私たちが目標とする教育と研究のグローバル化を表しています」と名古屋大学総長の濵口道成氏は話す。目指すのは、若手科学者たちが国際社会に貢献する最先端研究を行うための環境創出である。濱口氏は続けて語る。「名古屋大学の国際的な知名度向上に取り組んでいます。文部科学省の研究大学強化促進事業の下で、研究力のさらなる強化に向け、大学の改革を進めています。たとえば、新たに設置したトランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)では、新しいプロジェクトを幾つも推進しています。このITbMは、文科省により採択された9つの世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の一つです。」濱口氏が2009年の総長就任時にまとめた大学の運営方針「濵口プラン」には、上述の研究戦略のほか、国際化拠点整備事業(グローバル30)やスーパーグローバル大学事業のような国際的な人材育成が掲げられている。また、国際化と研究の推進の両方を目的に、アジア諸国から医学および農学系留学生を誘致するプログラムも含まれる。グローバル30では、年間約50人の留学生に対し、奨学金を提供するとともに、英語による授業を行っている。学部では6コース11プログラム、大学院では7コース17プログラムが設置され、工学から経済学にいたるさまざまな分野がカバーされている。理事兼研究・学生支援担当副総長、國枝秀
世氏は「留学生は現在2,200人、総学生数の15%ですが、2020年までに3,000人、20%に増やしたいと思っています。それと同時に、留学する日本人学生数を現在の600人から1,000人(1学年の総学生数は約2,200人)に増やしたいと思います」と、語っている。一方、教育・研究のスーパーグローバル化を目標に、名古屋大学は海外拠点の整備を進めている。法政国際教育協力研究センター(CALE)はその一例である。名古屋大学の研究施設として、これまでに、ウズベキスタン、モンゴル、ベトナム、カンボジア、ミャンマーに日本法教育研究センターを設置し、日本法と日本語の教育を行っている。1年以内に、インドネシア、ラオスにも同センターを開設する。「欧州連合法のような、アジア全域に適用可能な法律を作る人材の育成を目指しています。CALEで学んだ学生たちは政府や学界で影響力のある地位に就きますが、それと同時に、彼らは名古屋大学の国際的ネットワークの重要なメンバーでもあるのです」と濱口氏はいう。同様の拠点は、ドイツ、中国、および米国に設置されている。名古屋大学はまた、アジアからの医学および農学系留学生の誘致に取り組んでいる。保健行政の将来を担うリーダーを養成するヤング・リーダーズ・プログラムは、その代表例で、アジアおよび東ヨーロッパ14カ国の学生が、1年で修士号を取得している。そのほかにも、教育施設として、ベトナムの病院に内視鏡トレー
ニングセンター、また米国ノースカロライナ州の国際産学連携拠点(NU Tech)、そしてドイツのフライブルクにヨーロッパセンターを擁する。より最近のプログラムとして、ウェルビーイング inアジア実現のための女性リーダー育成プログラムがある。2013年、文科省/日本学術振興会の博士課程教育リーディングプログラムの補助金交付を受け、2013年に開始された同プ
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)の拠点長を務める伊丹健一郎氏は世界を変容させたいという。「ITbMでは、世界が直面する環境、食糧生産および医学関連の問題を解決する分子の設計を目指しています。社会が直面する最も困難な問題への対処に向けて、さまざまな国の化学者と生物学者で構成される複数のチームが、高い特異性と標的機能を備えた独自の生物活性分子の作製に取り組んでいます」と同氏はいう。2013年4月に開設されたITbMは、文部科学省によるWPIの一つとして採択された10年にわたるプロジェクトであり、年間500万米ドル(約5億円)が投じられる。ITbMの研究者は3つの中核プロジェクト、すなわち生体システムの制御、生体システムの可視化、および新たな生物機能を有する分子の合成に取り組んでいる。「研究スタッフの55%は外国人ですが、ITbMには優秀なバイリンガルの研究補助スタッフが揃っています。その中には、外国人研究者の公私にわたるサポー
トで中心的な役割を担う、まさに『WPIの母』を演じるスタッフがいます」と伊丹氏は語る。化学者、生物学者、および理論家が研究室を共用する「Mix-lab」コンセプトは、ITbMの研究基盤における重要な特長である。「このような『一つ屋根の下』アプローチは、われわれの研究を支える原動力なのです」と伊丹氏はいう。ITbMには10名の主任研究者が所属しており、そのうち7名が名古屋大学を、残り3名がそれぞれETH-Zurich(スイス)、クイーンズ大学(カナダ)、およびワシントン大学(米国)を拠点としている。また、ITbMの研究者は、米国立科学財団のCenter for Selective C-H Functionalization、および理化学研究所環境資源科学研究センターとの連携を図っている。国際的な連携に加え、ITbMは研究の遂行に不可欠な3つの重要なセンターを名古屋大学に設置した。分子構造センター、化合物ライブラリーセンター、そしてライブイメージングセンターである。「われわれは合成化学とシステム生物学
を組み合わせることで、新たな合成パラダイムを生み出します。試験管と生体双方における新たな分子の創製を目指しています」と伊丹氏は語る。
トランスフォーマティブ生命分子研究所
www.itbm.nagoya-u.ac.jp/index-ja.php
トランスフォーマティブ生命分子研究所
ログラムは、活力ある多文化社会のアジアで活躍する女性リーダーの育成を目指す。名古屋大学の学生には、さまざまなプログラムを通して海外で学ぶ機会が提供されている。アデレード大学(オーストラリア)との医学分野のジョイント・ディグリー・プログラム、フライブルク大学(ドイツ)およびストラスブール大学(フランス)とのジョイント・エデュケーショナル・プログラム、ミシガン大学およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)との修士課程国際共同大学院の創成を目指す先駆的日米協働教育プログラムなどが挙げられる。
戦略と目標「名古屋大学では、若手研究者を(教授の)レイバーから(独立した)リーダーへと育成するための新たなインセンティブシステムを導入しました。たとえば、WPIプロジェクトなどの競争的助成金を獲得した研究者に対しては給与を上げています」と濱口氏は述べている。ほかにも重要な改革として、テニュアトラック教員制度の導入を挙げている。「教員職の採用プロセスは透明性と説明責任が重要。たとえば新規助教はすべてテニュアトラック制度の対象となり、5年以内に評価を受けます。その結果、所定の要件を満たしていれば、テニュア講師として採用されます。この制度は、日本のすべての国立大学に共通する
問題を解決する取り組みでもあります。若手科学者は短期的なポスドク契約で雇用されることが多いため、安定的な職を得るために必要な、独自の研究を行うことができません」と同氏は話す。研究力強化の戦略について、濱口氏はいう。「若手研究者が、世界の持続可能性に資する学際的な研究を行うことができる環境を創出することが不可欠です。改革の最も重要な側面の一つは、教職員の考え方を変えること、すなわち国際的競争力のある大学を生み出すには変革が重要だということを認識させることです。」この目標達成に向けて、名古屋大学は産学官連携推進本部(技術移転機関を含む)とリサーチ・アドミニストレーション室を統括す
る学術研究・産学官連携推進本部を設置した。この組織を率いるのは、前述の國枝氏である。「新しい研究管理体制が担う中心的役割とは、情報の収集、分析と伝達強化、新規プロジェクトの創出能力向上、ならびに外部機関との連携に向けた機能の一元化です」と同氏はいう。このような取り組みを支援すべく、リサーチ・アドミニストレータ(URA)の数は現在の34から44へと増える見込みである。
名古屋大学: www.nagoya-u.ac.jp
濵口道成氏 豊田講堂
伊丹健一郎氏
名古屋大学
モンゴルで学ぶ博士課程教育リーディングプログラムの学生たち
世界の持続的な発展を目指す研究と教育