p-7 導電性メッシュ素材の材料不均一性と 電磁波遮蔽性能...はじめに...

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可視光で透明な電磁波遮蔽材料はシールドルーム内 の窓として利用されている。なかでも電磁波者へ材のMRI 室の利用のためには、その大面積化が求められている。 透明な電磁波遮蔽材料はガラスやPET等の透明基板の 上に金属材料をメッシュ状にすることで、一部分は光が通 るようにすることで実現されている。金属メッシュはこれま でにステンレスの織物等が用いられているが、シールドル ームの窓としての利用のため、大面積化できる作成手法 には印刷法に着目した。簡便かつ定量性のある焼成条件 の追及が望まれる。しかしながら、大面積に金属微細パタ ーンを作成するためには高度に制御された材料作成技術 が要求される。印刷法ではインクの相分離により試料の不 均一になり、安定した特性のあるサンプル作製は難しい。 例として、Figure 1に同一条件で作製したサンプルの電磁 波遮蔽性能を測定結果を示した。いずれの測定結果も周 波数特性が安定していないことがわかる。特性がばらつく 原因の調査と解決が望まれる。そのため、本研究では周 波数特性が材料の面内の不均質性によるものであると考 え、不均質性が電気抵抗率と電磁波遮蔽脳に及ぼす影 響を調査した。 測定サンプルとして90%以上の空隙を持つAgメッシュパ ターンを印刷した10cm 2 のサイズを持つサンプルを用いた。 本実験ではサンプルの面内不均質性を評価するため 10cmのサンプルのサンプルを2cm角の領域に分割し、以 下の評価を行った。 1.電気抵抗率面内分布測定 導電性メッシュ素材の料の抵抗率は4探針法(ロレスタ、 三菱化学製)を用いて評価した。 2.電磁波遮蔽性能測定 電磁波遮蔽(シールド)性能は内部に平面状の送/受信 アンテナを持つ1対の金属性のチャンバーであるKEC法 治具を用いて評価を行った。KEC法は対となったチャン バー間に試料を設置し送受信アンテナ間の透過率を測 定する方法であるが、本実験では2cm 2 の領域を評価出来 るように2cm 2 の開口を持つ金属により窓を作り、測定を行 った。 電気抵抗率と電磁波遮蔽性能の測定結果をFigure 2に 示した。なお、表面電気抵抗率は6 (Ω/sq.) から10 7 (Ω /sq.)と広くオーダーで値が分布することより底が10の対数 をとりプロットした。電磁波遮蔽性能は0 – 40 (dB)の間に 分布している。電気抵抗率が高い(低い)領域は電磁波遮 蔽性能が低い(高い)傾向があることが、必ずしもこれは成 り立たないことがわかる。これは今回の測定の分解能であ る2cm 2 よりも小さなサイズの不均一性にあると考えられる。 本研究結果により、Figure 1に示したシールド性能の材 料館のばらつきは材料の不均質性に伴う導電率のムラで あることが明らかとなった。性能改善のためには金属イン クの相分離を抑制するなどの作製条件を調整する必要が ある。 Figure 2 In-plane distribution of surface resistivity (left), shield effectiveness (right). Vertical and horizontal axes present sample position. Both sides are corresponded to sample length whose length are 10 cm. Figure 1 Frequency responses of conductive sheet sample. 表発表問合せ先 3 0 5 - 8 5 6 3 1 - 1 - 1 T E L 0 2 9 - 8 6 1 - 2 9 9 4 F A X 0 2 9 - 8 6 1 - 4 1 7 7 Y o s h i k i - y a m a z a k i @ a i s t . g o . j p 1メッシュ状電磁波遮蔽材料 (2)試料の不均一性と表面電気抵抗率 (3)試料の不均一性と電磁波遮蔽性能 P-7 ─ 9 ─

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Page 1: P-7 導電性メッシュ素材の材料不均一性と 電磁波遮蔽性能...はじめに 可視光で透明な電磁波遮蔽材料はシールドルーム内 の窓として利用されている。なかでも電磁波者へ材のMRI

はじめに 可視光で透明な電磁波遮蔽材料はシールドルーム内

の窓として利用されている。なかでも電磁波者へ材のMRI室の利用のためには、その大面積化が求められている。透明な電磁波遮蔽材料はガラスやPET等の透明基板の上に金属材料をメッシュ状にすることで、一部分は光が通るようにすることで実現されている。金属メッシュはこれまでにステンレスの織物等が用いられているが、シールドルームの窓としての利用のため、大面積化できる作成手法には印刷法に着目した。簡便かつ定量性のある焼成条件の追及が望まれる。しかしながら、大面積に金属微細パターンを作成するためには高度に制御された材料作成技術が要求される。印刷法ではインクの相分離により試料の不均一になり、安定した特性のあるサンプル作製は難しい。 例として、Figure 1に同一条件で作製したサンプルの電磁波遮蔽性能を測定結果を示した。いずれの測定結果も周波数特性が安定していないことがわかる。特性がばらつく原因の調査と解決が望まれる。そのため、本研究では周波数特性が材料の面内の不均質性によるものであると考え、不均質性が電気抵抗率と電磁波遮蔽脳に及ぼす影響を調査した。 実験内容

測定サンプルとして90%以上の空隙を持つAgメッシュパターンを印刷した10cm2のサイズを持つサンプルを用いた。本実験ではサンプルの面内不均質性を評価するため10cmのサンプルのサンプルを2cm角の領域に分割し、以下の評価を行った。 1.電気抵抗率面内分布測定

導電性メッシュ素材の料の抵抗率は4探針法(ロレスタ、三菱化学製)を用いて評価した。 2.電磁波遮蔽性能測定

電磁波遮蔽(シールド)性能は内部に平面状の送/受信アンテナを持つ1対の金属性のチャンバーであるKEC法治具を用いて評価を行った。KEC法は対となったチャンバー間に試料を設置し送受信アンテナ間の透過率を測定する方法であるが、本実験では2cm2の領域を評価出来るように2cm2の開口を持つ金属により窓を作り、測定を行った。

実験結果 電気抵抗率と電磁波遮蔽性能の測定結果をFigure 2に

示した。なお、表面電気抵抗率は6 (Ω/sq.) から107 (Ω/sq.)と広くオーダーで値が分布することより底が10の対数

をとりプロットした。電磁波遮蔽性能は0 – 40 (dB)の間に分布している。電気抵抗率が高い(低い)領域は電磁波遮蔽性能が低い(高い)傾向があることが、必ずしもこれは成り立たないことがわかる。これは今回の測定の分解能である2cm2よりも小さなサイズの不均一性にあると考えられる。 結論

本研究結果により、Figure 1に示したシールド性能の材料館のばらつきは材料の不均質性に伴う導電率のムラであることが明らかとなった。性能改善のためには金属インクの相分離を抑制するなどの作製条件を調整する必要がある。

Figure 2 In-plane distribution of surface resistivity (left), shield effectiveness (right). Vertical and horizontal axes present sample position. Both sides are corresponded to sample length whose length are 10 cm.

Figure 1 Frequency responses of conductive sheet sample.

物質・材料

導電性メッシュ素材の材料不均一性と 電磁波遮蔽性能

代表発表者 山崎 芳樹(やまざき よしき)

所 属 (独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門 電磁波計測科 電磁界標準研究室

問合せ先 305-8563 茨城県つくば市梅園 1-1-1 中央第3 TEL:029-861-2994 FAX:029-861-4177 [email protected]

キーワード: (1)メッシュ状透明電磁波遮蔽材料 (2)試料の不均一性と表面電気抵抗率

(3)試料の不均一性と電磁波遮蔽性能

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