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逐次的なDNA伸長反応に基づく 状態遷移モデルの開発に関する研究 北海道大学大学院 工学研究科 システム情報工学専攻 複雑系工学講座 調和系工学分野 修士課程2橋本 圭輔

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Page 1: hashimoto m

逐次的なDNA伸長反応に基づく

状態遷移モデルの開発に関する研究

北海道大学大学院 工学研究科

システム情報工学専攻 複雑系工学講座

調和系工学分野 修士課程2年

橋本 圭輔

Page 2: hashimoto m

背景

超並列性 10μlの溶液中で10 の分子が同時に化学反応 12~15

酵素反応による操作が可能(伸張・切断…)

従来の手法→それぞれの問題に特化したコーディング

相補性 4種類の塩基(A, T, G, C)の組み合わせで特異的に2本鎖を形成

さまざまな問題に対処できる計算モデル

DNAコンピューティング – DNA分子の化学反応を利用して計算

•Whiplash PCRによる状態遷移 [Hagiya 1999]

状態遷移反応の構築

Page 3: hashimoto m

先行研究

• Whiplash PCRによる状態遷移 [Hagiya 1999]

1本鎖DNAにもつ遷移規則と自ら2本鎖形成し酵素伸張で状態遷移を行う

塩基配列設計に制約が大きい(4塩基→3塩基)

状態遷移の分岐や遷移確率の取り扱いが困難

j

k i j

i 現在の状態

i j k

j

k i j

i

i j k

j

k i j

i j

i j k

j

k i j

i j

i j k

現在の状態

i j

i j

i j k

j k i j

i j

i j k

j k

k

i j

i j

i j k

j k

k 現在の状態

:酵素伸張停止配列 (酵素が相補鎖の伸張を行えない)

単純な操作(溶液調整後80℃付近を維持)によって状態遷移が進む

Page 4: hashimoto m

目的

逐次的なDNA酵素伸張を用いて状態遷移反応の実現

•分岐する状態遷移や遷移確率を扱える

Page 5: hashimoto m

状態分子: 状態を表現・伸張可能

状態の履歴を持てる

提案する状態遷移モデル State Transition PCR 1状態→ある一定の塩基長で表現

i 現在の状態

j k

i j k

i j 遷移分子:

遷移規則に対応

3‘末端を修飾

(反応中で伸張しない)

i

i j

1. i → jへの遷移 状態分子SMiと遷移分子TMijが結合

j k

Page 6: hashimoto m

状態分子: 状態を表現・伸張可能

状態の履歴を持てる

提案する状態遷移モデル State Transition PCR 1状態→ある一定の塩基長で表現

i 現在の状態

j k

i j k i

i j

1. i → jへの遷移 酵素伸張

i j

j

遷移分子: 遷移規則に対応

3‘末端を修飾

(反応中で伸張しない)

j k

Page 7: hashimoto m

状態分子: 状態を表現・伸張可能

状態の履歴を持てる

提案する状態遷移モデル State Transition PCR 1状態→ある一定の塩基長で表現

現在の状態

j k

i j k i

1. i → jへの遷移 変性により遷移完了

i j

j

i j

遷移分子: 遷移規則に対応

3‘末端を修飾

(反応中で伸張しない)

i j j k

Page 8: hashimoto m

状態分子: 状態を表現・伸張可能

状態の履歴を持てる

提案する状態遷移モデル State Transition PCR 1状態→ある一定の塩基長で表現

現在の状態

j k

i j k i

2. j → kへの遷移 状態分子SMij と 遷移分子TMjk が結合

i j

j

i j

j k

遷移分子: 遷移規則に対応

3‘末端を修飾

(反応中で伸張しない)

i j

Page 9: hashimoto m

状態分子: 状態を表現・伸張可能

状態の履歴を持てる

提案する状態遷移モデル State Transition PCR

遷移分子: 遷移規則に対応

3‘末端を修飾

(反応中で伸張しない)

1状態→ある一定の塩基長で表現

現在の状態

j k

i j k i

2. j → kへの遷移 酵素伸張

i j

j

i j

j k

k

i j

Page 10: hashimoto m

状態分子: 状態を表現・伸張可能

状態の履歴を持てる

提案する状態遷移モデル State Transition PCR 1状態→ある一定の塩基長で表現

現在の状態

j k

i j k i

2. j → kへの遷移 変性により伸張完了

i j

j k

i j k

遷移分子: 遷移規則に対応

3‘末端を修飾

(反応中で伸張しない)

i j j k

Page 11: hashimoto m

…..

State Transition PCRの遷移機構

1.94℃: 1本鎖に変性 2.66℃: 2本鎖形成+酵素伸張

伸張可能

PCRサイクル

0

1

3

2

4

5

6

3 5 …

2 4 …

1 4 …

4 6 …

5 6 …

1 …

0 2 …

0 3 …

0

0

0 1

0 2

0 3 …

0 3 5

0 2 4

0 1 4

0 3 5 6

0 2 4 6

0 1 4 6

Page 12: hashimoto m

State Transition PCRの遷移機構

1.94℃: 1本鎖に変性 2.66℃: 2本鎖形成+酵素伸張

伸張可能

PCRサイクル

0

1

3

2

0 4

5

6

3 5 …

2 4 …

1 4 …

4 6 …

5 6 …

1 …

0 2 …

0 3

0

濃度制御[Yamamoto 2002]の利用が可能

0 1

0 2

0 3

0 1 4

0 2 4

0 3 5

0 1 4 6

0 2 4 6

0 3 5 6

Page 13: hashimoto m

実現への課題

2.反応系の検討

2状態分の長さの2本鎖形成→安定

この結合が起こらないと, 伸張による状態遷移が起こらない

1. 遷移分子の検討 j i

•状態遷移が可能 → 遷移分子と状態分子が結合し伸張が可能

•反応中に遷移分子が不変 → 3’末端修飾による酵素伸張停止

•並列探索・濃度制御の利用 → 各遷移分子の反応効率が等しい

遷移分子の必須条件

伸張が起こりやすい反応系の設定を調査

配列・実験設定をどうすればよいか?

j k

伸張可能

Page 14: hashimoto m

1. 遷移分子の検討

状態遷移反応に必要な長さ

遷移分子を変化させないための3’末端修飾の種類

最低12塩基は必要 14,16塩基で伸張が効率よく起こる

アミノ化修飾の場合の伸張効率がよい

いずれも酵素伸張をとめることができる

3’修飾なし→ 1状態 10塩基でも伸張が起こる

3’修飾あり→10塩基~20塩基で2塩基毎の調査

結合させたい

3’末端修飾→アミノ化 ・ 塩基長→15塩基前後

3’末端修飾の種類

}

必要な長さは?

アミノ化・リン酸化・FITCの比較

×

Page 15: hashimoto m

1-2.遷移分子の反応効率

各配列で水素結合の強い塩基G, Cの含有量が一致した配列

塩基配列による状態遷移反応への

影響を少なく出来る

塩基配列の影響を極力排除したい

配列の結合の強い位置の違い

→反応に影響

Sequence Position

DNA分子の1本鎖の2次構造→状態遷移反応の障害

2次構造をつくりやすい配列を除去

1状態 15塩基 配列設計支援システム[Tanaka 2001]

1状態 16塩基 GC Template[Arita 2002] 融解温度=結合の強さ

各配列でG, Cの含有量に加え,各配列でのG, Cの位置も一致

融解温度=結合の強さ

Sequence Position

Page 16: hashimoto m

2. 反応系の設定 - 2本鎖形成に着目

伸張が起こる2本鎖形成

比較的高温に設定し長時間反応 伸張可能

i j k

高温→酵素活性があがり伸張が進む

伸張は不可逆→徐々に遷移が完了

Page 17: hashimoto m

ST PCRに適した反応系

11頂点の最短経路問題を応用として取り扱う

1状態 16塩基

GC Template[Arita 2002]による配列

遷移分子→ 3’末端アミノ化修飾

反応系 → 94℃ 10s

遷移分子の濃度制御[Yamamoto 2002]の利用が可能

66℃ 60s

辺のコスト

→遷移分子の濃度比に反映

→コストの高い辺を通る経路の枝狩り

Page 18: hashimoto m

取り扱う問題

状態遷移反応によって経路生成 ST PCR 20-80cycle

PCR20cycle 始点0と終点10を持つ経路抽出

S 0 状態分子: 遷移分子: 0 2 8 10

プライマー: 10 S

0-2-1-4-5-6-9-8-10 (8回遷移) コスト40

0 2

1

3

5

4

6

8

7

9

10

10(0.25)

20(0.06)

5 (1)

設定した問題

最短経路

Dij = (Min / Cij) α

Cij: i→ j へのコスト

Dij: i→ jへの濃度

Min: 最小のコスト

α=2

濃度変換式[Yamamoto 2002]

5 (1)

5 (1)

5 (1)

5 (1)

5 (1)

5 (1)

5 (1)

10(0.25)

10(0.25)

10(0.25)

20(0.06)

20(0.06)

20(0.06)

コスト(濃度比) i j

… (全16本)

Page 19: hashimoto m

ST PCRの濃度制御の検証

- コストの小さい遷移ほど起りやすくなる

- 多く生成されているものはコストの小さな経路である可能性が高い

1. DNAの長さによる分離(ゲル電気泳動) – 経路の遷移回数別の存在比を確認

2. DNAの塩基配列による分離(DGGE) – 同じ遷移回数の経路の分離

多く生成されている経路について調べる

辺のコストによる濃度制御

設定した問題のコストの小さな経路の生成が起きているか?

Page 20: hashimoto m

実験結果 同じ長さで違う配列のDNAを分離

→ DGGE

ST PCR60 PCR20サイクル濃度比あり

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

4 5 6 7 8 9 10

20 40 60 80

ST PCR

4 5

6 7

8 9 10

遷移回数

蛍光量

8段階遷移した1本

もっとも濃く見えているもの 遷移回数別の存在比

コストの小さな経路の生成が

進んでいる可能性がある

8

9 10

5

6

7

4

遷移回数

遷移回数

ST PCR 60 cycle結果

Page 21: hashimoto m

結論

• 逐次的な酵素伸張による状態遷移反応を提案し反応系を設定して, 実現を確認した

• 応用として11頂点グラフの最短経路問題を例にST PCRへの濃度制御の適用例を示した