ダイレクト・マーケティング研究...interactive marketing(以下jim)のこれまで...

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46 ダイレクト・マーケティング研究 ─海外ジャーナル抄訳集 No.6─ 監修 亀井昭宏 ルディー和子 (社)日本通信販売協会

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ダイレクト・マーケティング研究─海外ジャーナル抄訳集 No.6─

監修亀井昭宏ルディー和子(社)日本通信販売協会

ダイレクト・マーケティング研究──海外ジャーナル抄訳集 No.6 ──

監  修亀井昭宏

ルディー和子㈳日本通信販売協会

早稲田大学産業経営研究所産研シリーズ46

目  次

1.「ダイレクト・マーケティング研究── 海外ジャーナル抄訳集 No.6 ──」について ……… ルディー和子 1

2.インターネット環境におけるマーケティング戦略── Journal of Interactive Marketing の直近10年間の回顧と今後10年間の展望──

“Marketing Strategy in an Internet-Enabled Environment: A Retrospective on the First Ten Years of JIM and a Prospective on the Next Ten Years” ………………………… 久野慶一郎 3

3.オンラインにおける信用──技術、新領域、そして、今後の研究へ──

“Online Trust: State of the Art, New Frontiers, and Research Potential” ………………………………………… 五十嵐正毅 15

4.言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

“More than Words: On the Importance of Picture-Text Congruence in the Online Environment” ……………………………………… 加藤 祥子 29

5.規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウエブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

“Does Size Matter? An Examination of Small and Large Web-Based Brand Communities” …………………… 小松 聰子 41

6.相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証“Interactivity and Its Facets Revisited:

Theory and Empirical Test” …………………………………… 松本 大吾 53

7.マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

“Key Issues in Multichannel Customer Management: Current Knowledge and Future Directions” …………………… 大瀬良 伸 65

8.顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題“Customer Lifetime Value: Empirical Generalizations

and Some Conceptual Questions” ……………………………… 平野亜衣子 79

9.参考文献

─  ─1

 ダイレクト・マーケティングに関する海外の優れた研究文献を翻訳した「海外ジャーナル抄訳

集」の第一号は、2004年5月に刊行されました。早稲田大学商学学術院の亀井昭宏教授が、日本

における通信販売の成長やインターネットやモバイル端末の将来性を予測され、ダイレクト・

マーケティング研究の必要性が高まるとお考えになったのがきっかけです。

 (社)日本通信販売協会のご協力をえて、早稲田大学産業経営研究所にダイレクト・マーケティ

ング研究プロジェクトチームがつくられ、どういった活動をすべきか議論されました。当時、日

本ではダイレクト・マーケティング関連の先行論文数も少なかったために、海外の優れた論文を

翻訳して抄訳集を発刊することとなったわけです。

 最初のころには、ダイレクト・マーケティングやデータベース・マーケティング、ネット販売

やリレーションシップ・マーケティングの先行論文を時系列的にまとめた論文も掲載され、こう

いった分野を研究するかたたちにとって貴重な資料を提供することができたと思います。また、

翻訳を通じてダイレクト・マーケティングに関心をもたれた博士課程の研究者のかたたちのなか

には、博士課程終了後、いまでは、いくつかの大学で、「ダイレクト・マーケティング」や関連

科目のクラスを開講なさっている先生がたもいらっしゃいます。

 亀井先生はその後もダイレクト・マーケティングの啓蒙にご尽力をつくされ、2008年には、

(株)ユーキャンの寄付講座として早稲田大学大学院商学研究科に日本で最初の「ダイレクト・

マーケテイング戦略」を専門とするMBAコースが提供されることになりました。

 このコースを修了した卒業生は、現在、日本の通信販売企業、金融サービス企業、ネット販売

企業等で活躍をしていますが、在学中あるいは卒業後に、いくつかの抄訳も寄稿していらっしゃ

います。

 亀井先生が何年か前に予測なさいましたとおり、ソーシャルメディアの急成長とともに、この

数年は、とくにネット関連企業において、ダイレクト・マーケティングへの関心が非常に強いも

のとなっております。

 が、誠に残念ながら、亀井先生が早稲田大学を退職なさるために、抄訳集の刊行もMBAコー

スも、どちらも今年度をもって終了ということになりました。

 ソーシャルメディア上のデータマイニングやファンやフォロワーの生涯価値分析など、ダイレ

クト・マーケティングへの関心がより一層高まるなかで、二つのプロジェクトが同時に終わるこ

とは非常に惜しまれます。が、いずれにいたしましても、亀井先生のおかげで、6冊の抄訳集が

刊行できたこと、またそういった作業を通じてダイレクト・マーケティングに関心ある研究者が

育成されたこと、ここで深く感謝申し上げなくてはいけません。

「ダイレクト・マーケティング研究──海外ジャーナル抄訳集 No.6 ──」について

─  ─2

 抄訳集第6号の執筆者のなかには、昨年MBAを卒業したかたたち、早稲田大学大学院博士後

期課程終了後他大学で講師をしていらっしゃる方たちなど、お忙しい中、論文の調査、選択、翻

訳作業を担当していただきました。こういった研究員の皆様のご努力ご協力にも感謝申し上げま

す。

 亀井先生のご指導をうけた研究員の方々が、こういった抄訳集をひきつぎ発展した形で、将来、

ダイレクト・マーケティング関連ジャーナルを発行してくださればうれしい限りです。

ルディー和子

インターネット環境におけるマーケティング戦略

─  ─3

1.はじめに

 この10年間のインターネット市場の発展と情報製品のデジタル化は、現代マーケティングの思

想と実践に多大な影響を与えた。多くの製品にとって、競争は物理的市場と電子的市場とを包括

したインターネット市場に移行してきた。テクノロジーの進歩は、情報のデジタル化の結果とし

て非情報製品のマーケティングにもかなりの影響を与えている。こうした背景を受け、本稿では

インターネットの相互作用環境におけるマーケティグ戦略についての回顧と展望を提示する。構

成としては、まずインターネット環境におけるマーケティング戦略について簡潔に議論する。続

いて直近10年間(1998-2007年)の JIMで取り扱われたインターネット環境におけるマーケティ

ング戦略研究をレビューし、統合、批評する。さらに、インタラクティブマーケティングの将来

と今後の研究手段について推察する。最後に、Web2.0マーケティングの潜在的な影響力に注目

して本稿を総括する。

2.インターネット環境におけるマーケティング戦略

2-1.インタラクティブマーケティング

 本稿の目的として、アメリカ・マーケティング協会(AMA)のマーケティング定義に基づき、

インタラクティブマーケティングを以下のように定義する。“インタラクティブマーケティング

インターネット環境におけるマーケティング戦略── Journal of Interactive Marketing の直近10年間の回顧と今後10年間の展望 ──

“Marketing Strategy in an Internet-Enabled Environment: A Retrospective on the First Ten Years of JIM and a Prospective on the Next Ten Years”(Journal of Interactive Marketing, 23 (1), 2009, pp. 11-22)

Rajan VaradarajanManjit S. Yadav

 この10年間、インターネットの急成長により情報製品や非情報製品の情報のデジタル化は進み、市場原理の大きな変化と同じくしてマーケティング戦略は根本的な再考が必要とされてきた。こうした背景を受け、本稿では Journal of Interactive Marketing(以下 JIM)のこれまでの号(~vol.22)の研究を通して、インターネット環境における既存のマーケティング戦略研究を批評し、マーケティングの実行、研究、教育の文脈からインタラクティブマーケティングの将来を推測する。マーケティング戦略とオペレーションは、インターネットによって多くの点で変質してきたが、将来的にはインターネット市場環境においてより広範囲に統合され、融和していくだろうと予想される。

訳 ─── 久野 慶一郎株式会社ファンケル

─  ─4

は、交換を通じて顧客に価値を提供する製品を創造、コミュニケーション、配達するために組織

が取り組む活動とプロセスにおいて、組織-顧客間の相互作用を媒介するネットワークに接続す

る情報インフラネットワークとデバイスとを使用すること”である(Shankar and Malthouse

2006)。この定義を明確にするために説明を加える。第一に、インターネットが発展し、ピアツー

ピアマーケティング(ユーザー間での相互コミュニケーションを活用するマーケティング)がま

すます普及して以来、個人を言及する場合にも「組織(organization)」という用語を用いる。次

に、この定義は、インタラクティブマーケティングの範囲を、相互作用を媒介するための技術的

プラットフォームに限るものではない。さらに、「相互作用(interactions)」という用語は、組

織-顧客間のすべてのコミュニケーションと取引コンタクトを包含して広く用いられている。

2-2.インターネット環境におけるマーケティング戦略

 競争的な事業戦略とマーケティング戦略に関する主な課題は、(1)どこで競争するかを選択し、

(2)選択した製品市場でどのように競争するか、である。事業単位での「競争の方法」は、市場

で競争領域の優位性を達成し維持するために、経営資源をいかに配置するべきかについて言及さ

れることが一般的である。また、マーケティング部門での「競争の方法」は、市場で競争領域的

な優位性の達成と維持を促進する上で、事業活動とマーケティング資源の配分とを含んでいる。

事業活動と資源配分に関するマーケティング戦略は、市場での競争的マーケティング行動として

表れる。マーケティング資源とは、ブランドエクイティやチャネルエクイティ、顧客エクイティ

などのマーケティング資産や、広告や販売促進、商品開発など様々なマーケティング活動へ投資

される財務資産を含む。

 インターネット環境で競争する場合、事業はマーケティング戦略を決定する上で多様性に直面

する。インターネットの可能性を活用して現在のマーケティング戦略を増強する決定、または現

在のマーケティング戦略からの急激な離脱を必要とするまったく新たな決定が存在する。様々な

相対的条件から現在の戦略を増強させるマーケティング戦略決定とは次の3つである。1.顧客

への製品情報の提供、コミュニケーション、販売促進、取引のための「伝統的チャネル」と「イ

ンターネット」のどちらかを強調する。2.「インターネット経由の顧客へのダイレクトマーケ

ティング」と「仲介業者経由のマーケティング」のどちらかを強調する。3.製品、価格、販売

促進、流通、CRMの分野でのイノベーション、カスタマイズ、パーソナライズを実現するため

のインターネットの可能性を活用する。

3.企業 - 顧客間のコミュニケーションと相互作用

3-1.人-コンピューターの相互作用

 Rayport, Jaworski and Kyung(2005)は、いかに企業が顧客接点を管理するかは「多くの事

業にとって競争優位の次の一手」であると主張する(p. 67)。多くの研究は、オンライン接点で

インターネット環境におけるマーケティング戦略

─  ─5

の特定の要素がオンラインナビゲーション行動にどのように影響するかに着目している。包括的

な認知を構成するビジュアルによる双方向性は、売り手に対する買い手の態度や購入意思などの

結果に好ましい影響を示す(Fiore, Jihyun and Hyun-Hwa 2005)。この結果は、テレプレゼンス

と有用価値を認識することでもたらされる。Chan, Yun and Kihan(2005)は、オンライン環境

でのアニメーション利用の増大は必ずしも良好な結果をもたらさないと報告する。アニメーショ

ン利用度と広告効果(広告に対する認知と態度)との間で逆U字関係となる証拠を発見した。

 オンラインナビゲーションの待ち時間についての研究では、オンラインインタラクションを継

続するかどうかの個人の見込みに関して重要な示唆を示す。Dellaert and Kahn(1999)の待ち

時間に関する実験では、オンラインナビゲーションの間に直面する遅れは通常ネガティブな結果

と関連するが、待ち時間の管理によって抑制できることが分かった。個人が遅れをどう認識する

かには多様なバイアスがかかる傾向がある。Weinberg(2000)は、個人はオンライン閲覧の間

でどれほど待ったのかを正確に判断できないと示す。Cotte, Chowdhury, Ratneshwar and Ricci

(2006)による研究では、顧客がオンラインセッションに費やす時間計画スタイルにはかなりの

異種性があると示す。実利的利益を主に求める顧客が分析的である一方、快楽的利益を主に求め

る顧客は衝動的に行動する可能性がある。時間計画スタイルは、個人がどのようにオンラインを

閲覧し、情報を検索し、オンラインショッピングをするのかに影響を与えると結論づけている。

3-2.オンラインコミュニティ

 Hagel(1999)は、オンラインコミュニティは、新形態のコミュニケーションであるだけでなく、

新タイプのビジネスモデルを促進しうると主張した。例えば社会的相互作用はオンラインコミュ

ニティへ参加する消費者の考慮すべき動機となる(Henning-Thurau, Gwiner, Walsh and Grem-

ler 2004)。Bickart and Schindler(2001)は、消費者は、オンライン情報源としては、企業が直

接コントロールするオンライン情報よりも、オンラインコミュニティの消費者起因の情報を優先

することが明らかにされている。消費者がオンラインコミュニティでの推奨情報に依拠するかど

うかは、買い物目的が実用的か快楽的であるかにで異なる(Smith, Menon and Sivakular

2005)。買い物目的が実用的である場合に限り、推薦者の専門知識が重要な影響を与える。増加

するオンラインコミュニティ戦略の重要性は、企業認知に影響を与えるとする研究によって強調

されている(Chiou and Cheng 2003)。ブランドイメージの乏しい企業は、オンラインコミュニ

ティ上の消費者起因の好ましくない書き込みで特に被害を受ける。

3-3.電子環境における信頼性

 ネットショッピングの特徴は、プライバシーの懸念と結びつき、オンライン上の信頼性の課題

が主要な研究テーマとなった(Bart et al, 2005)。消費者が実物を触って完全に評価できない点

が、そのような信頼性の課題を強調する。しかし、ブランド評判や広告投資のようなシグナルは

─  ─6

そうした懸念を軽減することができる(Biswas and Biswas 2004; Yoon 2002)。信頼性向上を狙

いとするシグナルは、特に小規模なオンライン小売業にとって重要である(Wang, Beatty and

Foxx 2004)。企業が信頼性を高めるために戦略を構築する際、消費者差異に注目する重要性が

強調されている。ほとんどの消費者はインターネット環境でプライバシー問題を心配するとされ

る(Milne and Culnan 2004)が、特に女性の間で顕著である(Sheehan 1999)。

3-4.パーソナル化

 消費者のオンラインショッピング経験のパーソナル化は、研究上で多くの関心を集めた。

Thorbjørnsen et al.(2002)は、顧客とのブランド関係を強化するためにパーソナル化されたウェ

ブサイトがオンラインコミュニティより一層効果的であると示す。ウェブサイトとオンライン

ショッピング経験をパーソナル化するデータは、購入後調査(Dholakia, 2005)や探査行動のク

リックストリームデータ(Moe and Fader, 2004)から得られる。これらのデータは、オンライ

ン環境で消費者の意思決定を容易にするインテリジェント・エージェントの開発(Redmond

2002; Sivaramakrishnan, Wan and Tang 2007)、ターゲット販促(Jank and Kannan 2006)、長

期的で互恵的な関係性の構築に利用される。消費者は異なるレベルとタイプでのパーソナル化を

好み(Miceli, Ricotta and Costabile 2007)、一部の消費者はある種のパーソナル化戦略には悪い

反応を示すことさえある(Grewal, Hardesty and Iyer 2004)。したがって、顧客とのオンライン

対話を管理するパーソナル化戦略を構築する場合には、企業は顧客特性の差異と組織的プロセス

への影響を慎重に調べなければならない(Vesanen and Raulas 2006)。Iacobucci and Arabie

(2000)は、確立したクラスタ分析技術は、そのような差異を調査し、異なる顧客セグメントへ

のパーソナル化戦略の構築に用いることができると主張している。詳細は、Murray and Häubl

や Montgomery and Smith を参照されたい。

 パーソナル化の課題以上に、インターネット環境がいかに意思決定を容易にするのか、より細

かく観察する必要があるという認識が広まっている。Forsythe, Chualan, Shannon and Gardner

(2006)の分析は、オンラインショッピングに関する幾つかの利益(例えば、利便性、選択性、

買い物の容易性、エンターテインメント性)を消費者が知覚していることを示す。また、幾つか

のリスクと障害(例えば、製品を評価する難しさ、インターネットショッピングインターフェー

スの不便さ)についても報告している。複数の研究が、オンラインショッピングのベネフィット

をいかに強化し、同時にリスク認知をいかに排除して軽減できるかについて着目する。

4.企業間コミュニケーションと相互作用

 研究者は、Porter(1988)のバリューチェーンのフレームワークを用いて、組織内や異なる組

織間のマーケティング関連活動へのインターネットの影響を探り、市場環境が変化する中でこう

いった活動をどう再設計、再定義すべきかを理解しようとした。ウェブ環境での組織プロセス、

インターネット環境におけるマーケティング戦略

─  ─7

サプライチェーンマネジメント、B2B オンラインインターフェースの課題は、発展途上の研究

領域である。

 Anderson(1999)は、調達とサプライチェーンマネジメントに付随する広範囲の活動に「ウェ

ブ機能」を利用する機会について議論した。Quinn(1999)は、B2B の関係性とは慎重に検査、

管理されなければならない生態系であるとした。そしてインターネット関連の技術は、社内業務

と外部ビジネスパートナーとの相互作用において、高い可視性を創造する機会を提供すると主張

する。可視性の向上により、複雑な B2B の状況における活動パフォーマンスの効率性が増す可

能性がある。これらの活動がウェブサイトを通して調整され管理されるため、オンラインイン

ターフェースで知覚された効果に影響を与える要素を理解しておくことが重要である。

 Chakraborty, Lala and Warren(2002)は、B2B でウェブサイトの効力をもたらす4つの重要

な原動力は、情報提供、組織、取引に関連する相互作用、パーソナル化であることを明らかにし

た。一方で、オンラインインターフェースの特徴の中で、取引に関連しない相互作用、プライバ

シー/セキュリティ、アクセスの容易さ、エンターテイメント性は重要な影響力をもたない点に

も注目すべきである。プライバシー/セキュリティが重要でないという発見は、マスコミでの頻

繁な言及、多くのB2B間の部外秘扱いの高額取引を考慮すると、特に驚きがある。

5.マーケティングミックスによる決定の広がり

5-1.製品の課題

 デジタル化は、Bellman, Johnson, Lohse, and Mandel(2006)が言及した「人工的市場」を企

業が創造することを可能とした(p. 22)。有形製品におけるこれらの市場の一つの特徴は、製品

情報は物理的製品から簡単に分離できることである。Bellman et al.(2006)は、この特徴により、

企業はより多種にわたる製品やよりカスタマイズされたデザインの選択肢を提供することができ

ると記している。デジタル化は、新製品がどのように開発、製造され、市場で販売されるかに関

して重要な意味合いをもつ。(Sawhney, Verona, and Prandelli 2005; Wind and Rnagaswamy

2001)。例えば音楽のようなデジタル製品では、直接的な電子配信を提供することは、消費者と

企業の双方の利益向上にとって重要である。デジタル製品のダイレクトな即時配信は、請求の支

払いなどのワイヤレスサービスに関連する新たな機会を創造するものである。Weathers and

Makienko(2006)は、オンラインショッピング環境において重要な役割を果たすもうひとつの

重要な製品に関連する特徴を強調した。それは、購入や消費に先立って製品を評価できる範囲の

拡張である。購買前に適切に評価できない製品を販売するオンライン小売業者は失敗する確率が

高いと報告されている。

5-2.価格の課題

 Dolan and Moon (2000)は電子市場の特徴をレビューし、3つの異なる価格決定メカニズム

─  ─8

(企業で設定される価格、交渉で決まる価格、競争入札の過程で確立される価格)が示唆するこ

とを議論した。価格情報の入手可能性が拡大し容易になると、市場での消費者の力が高まり、価

格水準を引き下げる傾向を生み出すと結論づけられた。

 多くの研究成果は、価格設定態度に着目している。Jensen, Kees, Burton and Turnipseed

(2003)は、オンライン環境では、メーカーの広告参照価格のバイアス効果が弱まることを明ら

かにした。しかしながら、いくつかの心理的なバイアスがいまだに持続するという証拠も明らか

にされている。例えば、送料が区別されて表示されるような分割価格の場合、消費者は取引にお

いて価格に付加される構成要素に充分に合致せずに価格判断をする傾向がある(Xia and Mon-

roe 2004)。Heyman, Orhun, and Ariely(2004)は、オンラインオークションにおいて、消費者

が2つの心理的影響により、より高い付け値に同意する可能性があると示す。一つは消費者が入

札過程で製品の所有者としての感覚を膨らませる擬似保有効果、もう一つは他の入札者の行動が

競争的であると知覚される場合、製品の主観的価値が増加する敵対者効果の作用である。

 第二の研究の動向は、電子市場での企業の価格設定態度に着目している。特に価格分散の課題

として、価格バリュエーションの重要性が注目された。Xing, Yang and Tang(2006)は、マル

チチャネル小売業者のオンライン部門でのDVDの価格は、店舗を持たないオンライン専門企業

の価格と比べてより高い傾向がある点を見出した。価格は時間の経過につれ一点集中する傾向が

あり、それゆえ価格分散が減少する点も見出した。Baye, Morgan, and Scholten(2004)が、オ

ンライン環境での企業の価格態度を観察した結果、他の競争相手に不確実性を生み出すために価

格水準をランダムに変更する「クリアリングハウスモデル」と一致しているようだと主張する。

また、価格分散は企業間のサービス水準の違いからも生じる(Cao and Gruca 2004)。Pan,

Ratchford and Shankar(2004)は、価格分散の既存研究をレビューし、価格分散は企業や市場、

製品特性の影響を受けると結論づける。

5-3.広告とプロモーションの課題

 消費者がいかにしてオンライン環境で広告メッセージを情報処理するか、そしていかにして企

業はより影響力のある戦略的オンライン広告を生み出せるのかについて、この領域の研究では着

目する。Dreze and Hussherr(2003)は、アイトラッキング手法を使用してバナー広告の処理

を調査した。消費者の視野の周辺にバナー広告を押し出す方法を用いると、消費者はコンピュー

ター画面に直接的な関心を示す傾向があるとされた。また、ずらっと並んだサムネイル画像を消

費者は左から右へと処理するというアイトラッキングの研究もある(Lam, Chau and Wong

2007)。したがって、バナー広告は多くの場合注意を獲得する以前のレベルにあるため、クリッ

ク率(CTR)に基づく伝統的な尺度よりも、ブランド認知や広告想起の方が広告効果を測定す

るのに適切である。Moe(2006)のポップアップ広告の研究は、広告がオンラインセッションに

おいていつどこで表示されるかという要因が広告効果に非常に大きな影響を与えることを示し

インターネット環境におけるマーケティング戦略

─  ─9

た。つまり、企業がオンライン広告や販売促進の戦略を組み立てて実行するのには、かなりの努

力を注がなければならないことが明らかにされた。Briggs, Krishnan, and Borin’s(2005)は、

企業がオンライン広告をテレビやラジオ、印刷物などの他のチャネルと融合するように慎重に調

節努力をすれば高収益を期待できることを示した。そのような集団的な努力は、企業のオンライ

ンの可視性(Dreze and Zufreyden 2004)を決定づけ、企業のウェブサイトへのアクセス数の重

要な決定因子となる。

5-4.流通チャネルの課題

 電子市場の出現は、マルチチャネルマーケティング領域への研究的興味の再燃に拍車をかけ

た。Baladubramanian, Raghunathan and Mahajan(2005)は、製品効用とプロセス効用という

2つの異なるタイプの効用を区別することにより、消費者のチャネル選択性を明らかにする概念

的枠組みを提示している。プロセス効用は、あるチャネルでは安値で購入できるというような手

段要素と、あるチャネルでは楽しめる社会的側面があるというような非手段要素の双方から構成

される。異なるチャネルが選択できることは消費者にとって多くの利益があるが、その一方で、

あるチャネルから別のチャネルに切り替えるたびに、消費者は学習コストを被らなければならな

い(Dholakia, Zhao and Dholakia 2005)。

 企業の観点では、顧客の継続率はその顧客が新規獲得されたチャネルに大きく依存する(Ver-

hoef and Donkers 2005)。ラジオ、テレビ、ダイレクトメールと比べて、ウェブサイトからの新

規獲得は、より高い継続率を示す。Kumar and Venkatesan(2005)は、マルチチャネル販売戦

略を実行する企業が享受する多数の利益について報告をする。複数チャネルをまたいで買い物を

する顧客は、単独チャネル利用の顧客よりも、高い収入、高い財布シェア、高いアクティブ性を

もつ傾向がある。単独チャネル利用の顧客がマルチチャネル顧客になる可能性はいくつかの要素

に依存する。その見込みが増すのは、顧客が複数の製品カテゴリーをまたいで購入するか、より

高い頻度で購買するか、あるいは企業とより頻度の高いコミュニケーションを展開するかどうか

に拠る。

6.将来の研究の方向性

6-1.インターネット環境で「成功を生み出す要因」対「失敗を避ける要因」

 Varadarajan (1985)は、競合戦略の変数は「成功を生み出す要因」と「失敗を避ける要因」

とに明確に分類できるとする。競合戦略要因への反応が S字曲線であるシナリオの下では、「成

功を生み出す要因」と「失敗を避ける要因」への反応とでは異なることが予測されると仮定した。

他の条件はすべて同等とする。「成功を生み出す要因」は、努力と販売、市場占有率といった結

果との間に広範囲にわたるポジティブな関係を証明するだろう。一方で「失敗を避ける要因」は、

相対的に狭い範囲において、努力と販売、市場占有率といった結果との間のポジティブな関係を

─  ─10

証明するだろう。複数の戦略変数に関わる努力活動全体の失敗を避けるために「失敗を避ける戦

略要因」に費やされた活動レベルは、ポジティブな効果が得られる最低限の閾値以上でなければ

ならない。しかしながら、「成功を生み出す戦略要因」とは異なり、最低限の閾値を超えてレベ

ルを増大しても、それに伴うだけのポジティブな成果をあげることはないだろう。

 物理的市場に比例して、インターネット市場はこの課題を再検討するためにさらに豊かな実証

環境を提供する。この枠組みに基づく研究成果は、インターネット環境での「成功を生み出す戦

略要因」と「失敗を避ける戦略要因」の輪郭描写を示す可能性をもつ。数人の研究者は、電子小

売業者のパフォーマンスと(ナビゲーションが容易であるような)ウェブサイトの雰囲気や(双

方向支援のような)実用的決定機能などの要素との関係性に着目しているが、熟慮すべき問題は、

これらが本質的に「失敗を避ける戦略要因」であるかどうかである。

6-2.「プラットフォーム企業」対「ユーザー企業」のパフォーマンスの決定要素

 電子市場で事業を行うためにインフラサービスを使用する「ユーザー企業」と、インフラサー

ビスとしてのソフトウェアを提供する Google のような「プラットフォーム企業」との間には大

きな違いがある。両者を兼ね備えたAmazon のような企業もある。Amazon は、本業を経営す

るために使用するサプライ・チェーンとロジスティクスシステムを利用することによって、倉庫

のラックスペース、サーバーの予備のコンピューター能力、そのディスクドライブにおけるデー

タ保存、その営業活動を動かすソフトウェアコードなどを含む多くのサービスを紹介してきた。

データ格納のためにディスクドライブのスペースをプログラマーと事業に貸し出す Simple Stor-

age Service、中小企業が在庫を格納するために倉庫のスペースを Amazon から賃借する

Fulfillment by AMAZONがある(Hof 2006)。この領域では、市場の決定要因と企業の財務実績

への洞察を得るための調査の必要性が強調される。

6-3.新規ビジネスモデル─サービス効用型のソフトウェア

 デジタル形式の情報製品のための流通チャネルとしてのインターネットの成長とその可能性が

知られるにつれて、ソフトウェアや映画、テレビゲームのような特定タイプの情報製品の他に、

総合的情報製品マーケティングにビジネス界で高い関心が払われるようになってきた。代表例

は、サービス効用型ソフトウェアのマーケティングへの最近の傾向である。企業がソフトウェア

を購買して機器にインストールする従来のモデルとは異なり、ソフトウェアのアプリケーション

分野で進出してきている最近のビジネスモデルは、インターネット上でアクセスできる定期受信

契約サービスとしてのソフトウェアの販売である。インターネット上でサービスとして配信でき

る可能性の高いソフトウェアアプリケーションの特徴、競争型ビジネスモデルの経済的側面、そ

してサービス効用型ソフトウェアのマーケティングが重要となる環境で企業が効果的に競争でき

るために育成すべき能力に関する最近の研究は(Dubey and Wagle 2007)、この領域での更なる

インターネット環境におけるマーケティング戦略

─  ─11

研究の可能性と必要性を指摘している。

6-4.インターネット市場における先発者優位の持続期間

 Varadarajan, Yadav and Shankar(2008)は、先発者優位の有無を区別する概念的枠組みを提

案している。物理的な市場環境(PME)とインターネット市場環境(IME)とでは、先発者優

位の効果には違いがあるはずだと考えられている。類似した観点から、将来の調査において有益

な探索は、先発者優位の持続期間が PMEと IMEで異なるかどうかである。

6-5.オインライン態度、ターゲット広告、および公共政策

 個人のオンライン行動を追跡する能力は、特定顧客を対象にして非常に細かい精度で到達でき

ることを可能にした。顧客の過去の購買、あるいはGoogle、Yahoo、Amazon、Orbitz のような

ウェブサイトでのオンライン行動に基づいて製品提供や販促誘導をパーソナル化することは、こ

こ数年間の流行となっている。しかし、更に一層細かい精度で個人顧客の対象を絞る試みにおい

て、広告主は、ウェブサイトを横断する個人の行動を追跡するためにインターネットサービスプ

ロバイダーと協力しようとしている。最近の展開は、プライバシーへの懸念を高め、インターネッ

トサービスプロバイダーによるウェブサイトの横断追跡を制限する規制をプライバシー擁護派や

議員に呼び起させることになった。数人の議員は、ウェブサイトの横断追跡は、電話やケーブル

ネットワークを統制する「オプトイン」規定と同じ分類とすることによって統制されるべきだと

する見解を述べている(Johnson 2008)。こうした慣行を統制する公共政策やそういった規制が

オンライン広告や販促に与える影響について、今後の調査が待たれる。

6-6.ソーシャルメディアとインタラクティブマーケティング

 2005年、Business Week は「ブログはビジネスを変える」(Baker and Green 2005)という特

集を組んだ。インターネットが製品とアイデアについての数百万もの会話の主催者へと発展して

きた環境において、競争に関してのDwyer and Varadarajan(2008)の疑問が綴られている。

一体何が消費者を一般的なブログや特殊な企業ブログに参加するよう動機づけるのか?ブログ空

間でのキー顧客の耳に入るようにするために、企業には何ができるのか?企業ブログは、マーケ

ティング戦略とCRMプログラムにどのような役割を果たすことができるのか?企業ブログの相

互作用で企業が顧客を引き付けることが企業にどのように重要なのか?

 2008年、Business Week はまたもや「ブログの向こうに:ビジネスが知るべきこと」(Baker

and Green 2008)と特集を組んだ。ブログに加えFacebook やMySpace などの SNS、YouTube

などのビデオサイト、Twitterなどのミニブログを取り巻きソーシャルメディアは発展している。

マーケティング実行にあたりソーシャルオンラインメディアの発展が示唆することに対する疑問

が、マーケティングの将来の研究の主要部になるであろう。

─  ─12

7.結 論

 この10年間でのインターネットの急成長、情報製品のデジタル化、非情報製品の情報のデジタ

ル化などの展開では、マーケティング戦略の変化だけでなく根本的な事業の再考が求められてき

た。マーケティング戦略やマーケティングオペレーションへのインターネットの効果的な統合

は、ますます競争するための必須事項となってきた。JIMでレビューされた事業の展開や傾向

(Barwise and Farley 2005; Brodie, Winklhofer, Coviello, and Johnston 2007; Sultan and Rohm

2004)から判断して、多くの産業や製品市場でこうした変化は起こっているようである。

 Web2.0テクノロジーへの企業投資や投資計画に着目した経営者向けグローバル調査(McKin-

sey Quarterly 2007)では、回答者の70%が顧客サービスなどの顧客インターフェースにWeb2.0

テクノロジーを使用していると回答した。また、製品開発やナレッジマネジメントの内部管理で

75%、供給業者やパートナーとのインタフェースでは51%であった。追跡調査(McKinsey

Quarterly 2008)では、Web2.0ツールとテクノロジーを活用した取り組みに満足している経営者

はわずか21%に留まった。将来への多くの疑問や課題は未解決のままであると言えるだろう。

インターネット環境におけるマーケティング戦略

─  ─13

訳者コメント

 近年のダイレクトマーケティング関連の論文を紐解くと、インターネット領域の研究に席巻さ

れている。こうした時流の中で、まさに本論文はインターネット環境をテーマにした JIMの主

要なマーケティング研究をレビューしている。参考文献は80本に上り、この領域のこれまでの研

究の展開を鳥瞰的に押さえるのに大いに貢献する論文である。

 訳者は抄訳にあたり、原文で取り上げられたすべての研究者と論旨とを本文で網羅することに

重きを置いた。インターネット環境に関する研究は比較的歴史が浅く、世界中で新たな研究者の

台頭もあり、研究内容を幅広く把握できる構成を先決に考えたためである。Varadarajan らのフ

レームワークによる整理は割愛したが、この領域の研究についての理解を助ける抄訳が完成して

いるとしたら嬉しい限りである。

 さて、日常生活を思い起こすと、インターネット環境に接続する各種デバイスの普及は進み、

関連する製品・サービスが話題をさらっている。私事だが、携帯電話の着信に何だかハッと緊張

する一方、インターネット経由のコミュニケーション環境に入っていく行為の方がむしろ心理的

なバイアスが低いようにさえ思える。生活者にとってインターネット環境は身近で日常的な存在

となり、消費やコミュニケーション手段がリアルなのか電子なのかという選択性は、すでにシー

ムレス化しているのではないだろうか。

 訳者は、通信販売でダイレクトマーケティングに従事する実務家である。インターネット技術

の高度化、さらにはソーシャルメディアの普及などの外的環境を受け、消費者のコミュニケー

ション領域は一層多様化し、マーケティング対象となる個客の行動はますます掴み処が難しく

なっている。デジタル化の波を捉え、変化する消費者のライフスタイルに入りこんでいけるかど

うかは、今日のダイレクトマーケティング戦略の重要なポイントである。

 国内のインターネット利用者数は前年比54万人増の9,462万人(総務省「平成22年通信利用動

向調査の結果」)であり、世代を問わずにインターネットによる購買・取引の裾野が広がり続け

ている。2010年度のインターネット関連の B2C 市場規模は前年度比16.3%の7兆7,880億円(経

済産業省「平成22年度我が国情報経済社会における基盤整備報告書(電子商取引に関する市場調

査)」)であり、今後も各業種・業界でこの傾向が続くものと推察される。

 最後に、本論文で展望として示されたように、インターネットの戦略的統合は、実務と理論の

双方において将来へ向けての課題の中心に位置づけられるに違いない。今後の研究の動向に着目

するとともに、取り上げた研究者たちの新たな展開にも注目していきたい。

オンラインにおける信用

─  ─15

はじめに

 インターネットの誕生以来、信用(trust)は重要な成功要因として知られ、インターネット

の利用が広まるにつれ、信用の問題は、オンライン取引におけるセキュリティやプライバシー保

護の問題を手始めとして注目されるようになった。信用の欠如は消費者のオンライン取引を妨げ

るものとされ、マーケターは信用を創造し維持する努力に迫られてきたが、その成果には目覚し

いものがある。10年前にわずか80億ドルであった(Driscoll et al. 1997)米国消費者のオンライ

ン小売支出はいまや1,000億ドル以上(comScore 2007a)に成長した。米国の eコマースの小売

売上高は、景気衰退にも関わらず、2008年上期だけで638億ドルに達し、対前年16%増(comScore

2008a, 2008b)という。comScore(2007c)によれば、オンライン取引におけるクレジットカー

ドの支払額や決済件数も著しく増え、2004年と比べて73%増加という。このことも、消費者が抱

くオンラインにおける信用一般の高まりと理解することができる。

 オンラインショッピングは今や大きな経済現象になっている一方、多くの新たな問題をも抱

え、ますます関心を集めるようになっている。

技術的現状

 伝統的市場における信用概念の検討をふまえ、オンライン市場の信用についても考察されてい

オンラインにおける信用── 技術、新領域、そして、今後の研究へ ──

“Online Trust: State of the Art, New Fron-tiers, and Research Potential”(Journal of Interactive Marketing, 23(2), 2009, pp. 179-190)

Glen L. UrbanCinda AmyxAntonio Lorenzon

 オンラインにおける信用(trust)は、研究トピックとして重要性を高めており、インターネット・マーケティング戦略におけるその影響も強まっている。本稿では、オンラインにおける信用を取り扱った研究をレビューし、これまでの主要な考察を概観する。そこでは、オンラインにおける信用は、プライバシー保護やセキュリティといった概念以上のものであること、サイトデザインと密接な関係を持つこと、プロセスによって構築されること、消費者特性や製品特性によって多様なこと、が議論されている。そして、経時的な信用構築、複数チャネルにおける諸問題、グローバル対応、個別対応、学際的研究、といった領域での今後の研究に向けたアイデアを提案する。

訳 ─── 五十嵐 正毅九州産業大学商学部第一部講師

─  ─16

る。Rousseau et al.(1998)は、信用を「他者の意図や行動に対する肯定的な期待に基づき、脆

弱性(vulnerability)を受容しようとする心理状態」と定義した。この定義からは、Morgan and

Hunt(1994)が指摘したように、消費者は販売者の信頼性(reliability)や誠実さ(integrity)

に対し一定の確信を必要としていることが示唆される。Bart et al.(2005)は Rousseau の定義

をもとに「オンラインにおける信用には、ウェブサイトが期待にどのように応えてくれるか、ウェ

ブサイトの情報がどれくらい信じられるか、ウェブサイトがどれほど確実に機能するか、という

消費者の知覚が含意されている。」とした。つまり、消費者が電子事業者のサイトに肯定的印象

を形成し、その脆弱性を受容しようとした際に信用はもたらされる。信用を「脆弱であっても不

安視されないこと」(Saint Paul Insurance 2000)とする広告主もある。

 信用はしばしば、信憑性(credibility)、誠実さ(integrity)、信頼性(reliability)、確実性

(confidence)、親切さ(benevolence)を含意してきた。Gefen(2002)は、オンライン市場にお

ける信用には、誠実さ(integrity)、能力(ability/competence)、親切さ(benevolence)といっ

た3要因が含まれることを実証し、Lee and Turban(2001)やBelenger, Hiller and Smith(2002)

もこれらの要因を検証している。Doney and Cannon(1997)はレピュテーション概念を、能力

(competence)と誠実さ(integrity)を示すものとして、信用性(trustworthiness)の一部に含

めている。McKnight, Choudhury and Kacmar(2000)は信用を「ある状況において、他者を、

親切(benevolent)で、有能(competent)で、正直(honest)で、予測可能(predictable)で

ある、と信じること」と規定した。

 信用の定義はこの10年の間に議論が重ねられてきたが、今日では、誠実さ/確実性(integrity/

confidence)、能力(ability/competence)、親切さ(benevolence)、の3次元を認めることが研

究者間の共通認識となってきた。

 図1は、オンラインの信用の作用を示している。ウェブサイトは信用に影響し、顧客の購買行

動に、そして企業の売上高や利益に影響する。

図1 信用とその周辺構造

インターネット

プライバシーの保護サイトデザインユーザーの多様性

信用

確実性(Confidence)能力(Competence)親切さ(Benevolence)

顧客の学習

使用WOMソーシャル・ネットワーク

行動

購買ロイヤルティサービス

企業の成功

売上高利益ステークホルダー

オンラインにおける信用

─  ─17

 また、図1は、オンラインにおける信用は媒介変数であることも示している。Doney and

Cannon(1997)は、伝統的市場の考察から、信用は意思決定に対する媒介変数とはなるが購買

行動にとってはそうではない、とした。しかし、オンライン市場では信用が購買意思決定に影響

を与えることが実証されている(Jarvenpaa, Tractinsky and Vitale 2000; Schlosser, White and

Lloyd 2005; Shankar, Urban and Sultan 2002; Yoon 2002)。Wang, Beatty and Foxx(2004)は、

手掛かり情報と消費者の行動意図との間を信用が媒介することを明らかにした。McKnight,

Choudhury and Kacmar(2000)は、信用は、アドバイスや情報共有、購入といった顧客の行動

意図を導く、とした。Bart et al.(2005)は、信用が、ウェブサイトや消費者特性といった先行

要因と、行動意図のような結果要因とを媒介することを明らかにした。Buttner and Goritz

(2008)も、信用は知覚リスクと購買意図を媒介するとしている。

信用はプライバシー保護やセキュリティ以上のものである

 ウェブサイトの特徴は信用に影響を与える。最も顕著なのは、サイトのプライバシー保護とセ

キュリティが信用に与える影響である。インターネット登場初期では、プライバシー保護とセ

キュリティが、オンラインビジネスで消費者の信用を得るために決定的な要素として議論され

た。しかしその後、信用への要求も高まり(Shankar, Urban and Sultan 2002)、プライバシー保

護とセキュリティが十分なことは当然とされている。Pollach(2005)は、プライバシー・ステー

トメントが明らかでなかったりデータの用途が明確でなかったりした場合に、企業の信用性は損

なわれる、と警告している。

 Bart et al.(2005)は、信用の先行要因として、ブランドを指摘した。強いブランド・エクイティ

を持つ製品は、オンライン環境でも信用を直ちに獲得する。また、注文のフルフィルメントを通

じて得られた経験が、消費者のサイトへの信用において重要であることも明らかにされている。

 信用に影響を与える要因は他にも存在する。Urban, Sultan and Quail(2000)は、(1)バーチャ

ル・アドバイザーを起用すること、(2)情報を偏りなく十二分に提供すること、(3)競合情報を

提供し透明性を高めること、を推奨している。他にも、消費者間のフィードバックの相互交換や、

オンライン・コミュニティも挙げられている。消費者に主導権を与えること(empowerment)は、

信用構築の初期においては有効である。Bart et al.(2005)は、オンライン事業者のウェブサイ

トにおいて情報を取り扱ったり理解したりする手段を提供することで、得られるものが大きいこ

とを明らかにしている。Hoffman, Novak and Peralta(1999)は、「信用は、オンライン事業者

と消費者との協力的な相互作用を企図するパワーのバランスによってもたらされる」としてい

る。

 図1は消費者の経験やインターネットでの学習が信用にフィードバックされることも表してい

る。Smith, Menon and Sivakumar(2005)は、オンラインでの推奨が消費者にとって極めて貴

重な情報資源で、多くの消費者が購買意思決定にそれを活用していることを明らかにした。他者

─  ─18

の評価情報が提供されることで消費者心理に確信が構築され、購入が行われると理解することが

できる。

 Prahalad and Ramaswamy(2004)は、企業と消費者の間の価値創造システムが、製品 /企業

中心的視点から消費者個人の経験を中心とする視点へ進化しているとした。伝統的なマーケティ

ング思想では、企業と消費者との交換におけるドライビング・フォースは企業であるとされてき

たが、Prahalad and Ramaswamy(2004)は共創の概念を提唱した。彼らは消費者と企業とが同

じ経験を経て新製品や競争優位性の源泉を開発するようなコラボレーションの意義を提唱してい

る。このようなwin-win のアプローチが促進されることで、相互の対話、情報入手、透明性、リ

スクやベネフィットの理解が進み、売り手と買い手の間に信用が生まれる。ウェブサイトにこれ

が適用されるならば、さらに強力なものとなろう。Urban and Hauser(2004)は、消費者が自

分の車をデザインできる事例を紹介しているが、こうした共創プロセスは企業と消費者との信用

の上に築かれるのである。

サイトデザインは信用に影響を与える

 サイトデザインは、消費者の信用を獲得し商品購買意図をもたらす(Schlosser, White and

Lloyd 2005)。Karvonen(2000)は、消費者が、ウェブサイトへの知覚に基づき、直感的で感情

的な意思決定をすることを明らかにした。Bart et al.(2005)は、ユーザー・フレンドリーなナ

ビゲーションや表現の重要性を指摘し、相互作用手段による販売者の「支援意図」に関する知覚

についても指摘した。つまり、オンライン事業者が、ウェブサイトでの消費者の情報処理を手助

けする手段を持つならば、その事業者は消費者思いな事業者とされ信用が高まる。また、サイト

における不備(リンクやページの欠損など)は信用を損ねることも指摘されている。

 情報工学におけるサイトデザイン研究では、レイアウトやタイポグラフィー、余白、イメージ、

色彩計画といった要素が扱われてきた。Yang, Hu and Chen(2005)は、(1)グラフィックデザ

イン(新規ユーザーへの第一印象に影響する)、(2)デザイン構造(サイト情報の組織化とアク

セスしやすさ)、(3)コンテンツ計画、(4)社会的手掛かり(サイトインターフェイスに何らか

の社会的手掛かりを埋め込むこと)、といった4次元によるモデルを主張している。

 スタンフォード大学の説得的テクノロジーグループ(Fogg et al. 2003)は、2,600名以上の対

象者を扱った研究で、様々なサイトの信憑性を評価したコメントを収集した。そこでは、コメン

トの46.1%がサイトデザインについてのものであり、分類上最も多かったことが明らかにされて

いる。

 社会心理学では、外見的魅力が信憑性の源泉とされることが示されている(Berscheid and

Walster 1974; Joseph 1982)。信用に値するサイトを構築するには、次の2点からビジュアルデ

ザインが重要となる。(1)見た目のよいウェブサイトはユーザーにプロフェッショナルな環境で

ブラウズしていると思わせるため、企業への信用性を高める。(2)見た目がよくユーザー・フレ

オンラインにおける信用

─  ─19

ンドリーなウェブサイトで閲覧することは、ユーザーの滞在時間を長くし、滞在時間が長くなる

ほど、サイトが得る消費者の信用も高くなると考えられる。この文脈では、ウェブサイトのビジュ

アル・コミュニケーションはユーザー中心的視点から開発されるべき(Mandel 2002)とされる。

 ビジュアル・コミュニケーションの知覚品質とユーザー満足との間には正の相関がある(Hart-

mann, Sutcliffe and De Angeli 2007; Lingaard and Dudek 2003; Tractinsky, Shoval-Katz and

Ikar 2000)。「ウェブサイト・インターフェイスのビジュアル・デザインによって、信用性のよ

うなターゲットの情動を引き出すことが可能である」とする研究もある(Fang and Salvendy

2003; Kim and Moon 1998)。

 一般に、インターネット・ユーザーは、グラフィカルなアイコンやボタン、製品画像や豊富な

情報を好む。Riegelsberger, Sasse and McCarthy(2003)や Fang and Salvendy(2003)によれ

ば、ユーザー中心的なデザインのウェブサイトは5つの要素に整理できる。(1)ホームページ:

シンプルで整理された、有用な検索ツールがあり主要な機能がわかりやすいこと。(2)カテゴラ

イゼーション:サービスやツール、製品の位置が容易に特定でき、整理されていること。(3)製

品情報:明解な画像、正確で、読んで十分に分かる説明、製品比較が容易なこと。(4)顧客サー

ビス:顧客の課題と結びついていること。(5)ログアウトと登録:最小限の情報提供で確実にサ

イトアクセスできること。

オンラインにおける信用はプロセスである

 1回の接触だけで信用が構築されることは希である。図1は信用-行動-学習-信用のループ

を示しており、何度もこのループが繰り返されることで、信用は構築される。最近の研究では、

信用の構築には、初期の経験とその後の継続的な経験とが共に重要であるとするプロセス中心的

な視点が現れている。Bart et al.(2005)は初期の信用構築に着目し、新規顧客がオンライン事

業者に対して寄せる信用の第一の要因は、顧客の製品情報理解や取扱いをその事業者が容易に

し、仕事を完遂する能力であるとした。Wang, Beatty and Foxx(2004)は、「手掛かりベース

の信用」という用語を用い、「消費者がある刺激との最初の出会いを通じて受け取った手掛かり

に基づいて構築する信用。そこでは、消費者は、自分の脆弱性が悪用されることはないと信じる

ことができる」とした。Wang et al.(2004)は、セキュリティに関する明確な表明や中立的情

報源からの受賞、承認の証、プライバシー保護の開示といった手掛かりが、初期の信用の基礎で

あることを示した。手掛かりは信用を低下させることもある。Grewal, Hardesty and Iyer(2004)

は、価格を顧客によって変えていることが知られると、信用や公平性、そして購買意図に有意に

負の影響が現われることを示した。手掛かりベースの信用は、相互作用の繰り返しに基づく経験

ベースの信用とは異なり、関係性の初期段階において、オンライン事業者によって活用された手

掛かりに基づいて構築される(Urban, Sultan and Qualls 2000)。

 信用は、消費者が注文のフルフィルメント、サービス、製品満足、評判といった物事を通じて

─  ─20

オンライン事業者に肯定的な経験をした時にも構築される。Fassnacht and Köse(2007)は、サー

ビス品質が信用のロイヤルティやクロス購買に影響を与えることを実証した。信用は、オンライ

ン事業者が注文を完遂し、適切な顧客サービスを提供する際に確認され、製品に対する長期的な

顧客の満足体験によっても強化されるのである。信用は、消費者が同じ事業者から習慣的に購入

することを通じて保たれるのである(Cheskin 1999)。

消費者特性や製品特性によって信用の影響は異なる

 Shankar, Urban and Sultan(2002)は、自信/インターネットへの精通程度、過去の行動、

インターネット・ショッピング経験、エンターテインメント経験といった消費者特性が、いずれ

も信用に影響を与えるとした。Lee and Turban(2001)は、個人のデモグラフィック特性やパー

ソナリティが、インターネット・ショッピングにおける消費者の信用に影響しているとするモデ

ルを概念化し、信用の3つの先行要因を示している。能力、誠実さ、親切さはオンライン事業者

への信用をもたらし、技術的競争力、信頼性、メディア理解がインターネットショッピングメディ

アへの信用をもたらす。さらに、文脈的要因(第三者保証の効果とセキュリティ・インフラの効

果)が存在する。

 製品によって、信用への影響も異なってくる。Bart et al.(2005)の研究では、情報リスクと

関与が共に高い場合(例えば、旅行サイト)には、プライバシー保護とフルフィルメントが信用

にとって最も強い要因であった。スポーツ関連サイト、一般ポータルサイト、コミュニティサイ

トのような情報の影響力が大きいサイトでは、ナビゲーションが最も強い要因であった。自動車

や金融のように高関与なものを取り扱うサイトでは、ブランドが決定的要因であった。このよう

に、オンラインにおける信用はサイト、消費者特性、行動意図との間を媒介し、媒介効果は高関

与な商材を扱うサイトで大きい。

研究アイデア

経時的な信用の構築

 信用はプロセスであるという考えについてはCheskin(1999)で早くから明らかにされている

が、プロセスについての研究は多くない。サイト訪問と信用の水準についての経時的データベー

スが求められる。企業のなかには大規模に消費者のサイト接触行動を追跡しているところがあ

り、それらのデータは有用な情報源といえよう。信用に関する多面的な調査によってこれらの

データを補うことができるならば、信用の構築プロセスは一層よく理解されるようになり、信用

のダイナミクスがモデル化されるだろう。おそらく、構造方程式や階層ベイジアンモデルの活用

が有益だろう。

オンラインにおける信用

─  ─21

表1 オンラインにおける信用の主要な研究成果(1999-2008)

著  者 焦  点 知    見

Hoffman, Novak and Peralta(1999)

オンラインにおける信用をいかに向上させるか

オプトイン/オプトアウト方針の活用のように、個人情報に関して消費者に権限を与えることが、消費者の信用や結果としての売上高を獲得する非常に効果的な方法である。

Jarvenpaa, Tractinsky and Vitale(2000)

インターネット店舗における信用の先行要因と結果要因

知覚される規模と評判がオンラインでの信用を規定し、リスク知覚と購買に影響を与える。顧客満足補償、返品、返金の方針についてコミュニケーションをはかることは、信用を高める。

Urban, Sultan and Qualls(2000)

信用とアドバイスバーチャルのアドバイザーは偏りのない情報を伴うため信用の構築に寄与する。透明性も信用構築に重要である。

Yoon(2002)オンライン購入意思決定における信用の先行要因と結果要因

知覚される規模と評判がオンラインでの信用を規定し、リスク知覚と購買に影響を与える。顧客満足補償、返品、返金の方針についてコミュニケションをはかることは、信用を高める。

Shankar, Urban and Sultan(2002)

信用におけるステークホルダー視点

信用は顧客に対してのみならず、従業員、仕入先、流通業者、パートナー、株主、当局に対しても重要である。

Wang, Beatty and Foxx(2004)

オンライン小売業者の信用性

「手掛かりベースの信用」概念に基づいて、消費者の信用を検討。

Smith, Menon and Sivakumar(2005)

推奨とオンラインにおける信用の指標

自分と同立場の人によるレビューは重要で、消費者に活用される。信用を評価するために、サイトの寿命、アイテム選択、オンライン・コミュニティ、他サイトとのリンク、サーチエンジン、プライバシー保護を指標とした。

Urban(2005)信用と顧客アドボカシー

オープンで正直な情報とアドバイスは、競争力を高め、信用と、顧客-企業間の相互のアドボカシーを構築する。

Schlosser, White and Lloyd(2005)

消費者の信用と購買意図

ウェブサイトへの投資は消費者の信用やオンラインでの購入意図を高める。

Bart et al.(2005)サイト間の信用の差異

ウェブサイトと消費者特性は信用を促進し、信用は顧客のウェブ行動を促進する。信用はウェブサイトや消費者特性の、ウェブ行動に対する効果を媒介する。サイトの規定要因はサイトや顧客によって異なる。

Fassnacht and Köse(2007) サービス品質と信用サービス品質は、信用、行動意図、支出意図に影響を与える。

Buttner and Goritz(2008)オンラインショップの信用性

信用性は購買意図と金銭的リスクの受容を促進する。信用性は、購買意図への知覚リスクの影響を部分的に媒介する。

─  ─22

信用の標準的な測定尺度

 信用研究のほとんどすべてには、信用を測定する態度尺度が取り扱われている。しかし、標準

的な尺度群は存在しておらず、先行研究はそれぞれ異なる項目や尺度を用いてきた。さまざまな

状況での信用を測定しうる、入念に検討された質問群が必要である。単一尺度で測定された総合

的な信用が信頼に値しないことは知られており、信用の主要な構成概念である、能力(compe-

tence)、確実性(confidence)、親切さ(benevolence)をそれぞれ複数の尺度で測定することで、

測定精度を高めることができる。Shadish, Cook and Campbell(2002)は、多次元尺度の計画と

妥当性に有用な指針を提供している。

顧客による格付け(ratings)の影響と信用

 Dellarocas(2003)によれば、この領域には研究意義があるとされており、自分と同じ立場の

人による格付け(peer ratings)の重要性が高まることはこの領域の研究意義を示している。格

付けはどういったときに信用されるのか?格付けを行う評者はいかにして顧客から選良の地位を

得るのか?格付けは信用構築に有用なのか?特定の評者やサイトの信用を調査し、それらを全体

的な信用や購買行動と結びつけて検討する研究が今後展開されるべきである。評者による経験や

専門性を体系的に変化させ、信用に対するそれらの影響を測定するような実験が行われるべきで

あろう。

第三者サイト対企業サイト

 信用と透明性について考察するならば、第三者サイトを題材とする研究が求められる。例えば、

自動車の購入意思決定の際にしばしば参照される第三者サイトがある一方で、企業やディーラー

もサイトを持っている。企業サイトは第三者サイトと同程度に信用されているのだろうか?企業

サイトは製品情報の透明性と優位性を確かにすることで信用を得ることができるのであろうか?

メーカー、ディーラー、第三者サイトが共存するとき、それぞれの役割はどのようなものだろう

か?調査やサイト間遷移の研究がこうした問いに答えるデータを提供しうるだろう。

複数チャネルにおける信用

 Best Buy は、リアルの販路とともに、カタログや複数のインターネットサイトを持っている。

Cabela’s、LL Bean、Bass Pro Shopはカタログを主として、店舗やテレマーケティング・センター

を持っている。モバイルを活用する企業もある。オンラインにおける信用はマルチチャネル流通

によってどのような影響を受けるのか?信用はチャネル間でどのように転移するのであろうか?

複数チャネルのうちどこかが信用を損ねた場合、他のチャネルも影響を受けるのか?こうした仮

説は、例えば自動車カテゴリーで検証されるべきだろう。ディーラーの信用が乏しければ、関わっ

ているメーカーのオンラインにおける信用はどのような影響を受けるのか?複数チャネルにわた

オンラインにおける信用

─  ─23

る信用の水準はどのように保たれるのか?シナジーはどのように得られるのだろうか?例えば、

Circuit City は、ユーザーがオンラインで注文をして、小売店でほとんど直接的に製品を受け取

れるようにしているが、このようなクロス - チャネルのフルフィルメントは信用を構築するの

か?メーカーのサイトで培われた信用のメリットを小売業者は享受できるのか?Neslin and

Shankar(2009)や Shankar and Balasubramanian(2009)は、マルチチャネルの問題やモバイ

ルメディアの話題に詳細な議論を行っている。

信用とB to B 取引

 B to B 市場での信用構築については90年代初期に幾つかの研究が行われた(Morgan and

Hunt 1994)が、その後の研究の多くはB to C 市場のものである。オンラインチャネルを持って

いることと人的販売努力とはどのように相互作用があり、信用構築につながるのだろうか?販売

員の時間を新規顧客との信用構築や既存顧客との信用維持に費やすために、販売員の通常業務を

オンライン化することは可能だろうか?販売機能はどの程度までオンラインサイトに代替しうる

のか?例えば、GE Plastics はオンライン上で、技術者にプラスチックのデザインや購入につい

てのアドバイスを早くから行っていたが、他の企業はそれに追いついたのであろうか?このよう

なことを行うサイトは有効なのだろうか?コールセンターによって積極的に顧客との信用構築に

努めるべきか、そのコストは最小化されるべきか?コールセンターのサービスは信用や利益の構

築にどれほどの価値があるのか?

プライバシー保護と個別対応(パーソナライゼーション)

 信用は、消費者が個人情報を提供しようとする意図に影響を与える(Cazier, Shao and St.

Louis 2003; Chellappa and Sin 2005; Liu, Marchewka and Lu 2005; Milne and Boza 1999; Schoen-

bachler and Gordon 2002)。広告のターゲティングや個別対応がますます進む一方で、プライバ

シー保護と情報提供意図についての問題が重要性を増している。図2は、個人情報取得の利害と

消費者意識との関係を表したものである。左の2つの象限は明らかに、消費者プライバシーの侵

害であり、規制されるべきである。広告のターゲティングは、通常消費者に意識されないため、

右下の象限に位置づけられる。プライバシー保護の侵害と見る者もいるが、被害をもたらさない

としてこれを受容する人もいる。ターゲティングは、パミッションの取得(オプトイン)や、明

瞭な脱退の仕組み(オプトアウト)によって、右上の象限に移ることができる。賢明なプライバ

シー保護規制が開発されるためには、社会政策研究が有用である。雇用や成長の拡大に基づく利

益とターゲティングに気づかないでいることによる個人の損失とはどのようなものだろうか?モ

バイル・マーケティングにおける信用と個別対応(パーソナライゼーション)の研究がとりわけ

興味深い研究となるだろう。

─  ─24

オンラインにおける信用の新領域

信用はますます戦略的に

 プライバシー保護やセキュリティへの着目から始まった信用の研究は、サイトデザインの諸変

数にまで拡張された。このことは、信用がマーケティング戦略において中核的な構成要素である

ことを裏付ける。Urban(2005)は、オンラインにおける信用に基づいた「カスタマー・アドボ

カシー」パラダイムについて述べている。企業は顧客との明確なパートナー関係性を目指して、

品質と顧客満足を礎として信用の構築をすすめる。そして、最終的に、企業はアドボカシーへと

移行する。この考え方は「もし自分が他者を同じ立場で支援するなら、他者も自分にそうしてく

れる」という相互信用観に基づいている。つまり、企業が、最良の製品や誠実な情報提供によっ

て顧客が最善の選択をすることを支援し満足させるべきことに取り組むならば、顧客はその企業

のことを他人に語ったり、製品開発や改良を支援したりすることになる。GMのプロジェクトに

よれば、情報やアドバイス、コミュニティ参加やテスト運転の機会を購買者に十分に与えること

によって、顧客行動、販売成果が変化することが明らかにされている(Urban 2005)。

 英国のBritish Telecom(BT)のブロードバンド・サービスでは、カスタマー・アドボカシー

の体系を整え実践した結果、成果をあげたという。BTのサイトでは、顧客に対して開かれた誠

実な情報提供を図ること─すなわち、親切さ(benevolence)─で信用が築かれている。その目

的は、信用に基づくマーケティング(trust based marketing)である。

図2 プライバシー保護と個別対応(パーソナライゼーション)

ユーザーの知識レベル

意識あり

意識なし

被害 高ベネフィット

●オプトイン 個別対応(パーソナライゼーション)

●オプトアウト 個別対応(パーソナライゼーション)

●広告のターゲティングID盗難●

詐欺●

ユーザーベネフィット

オンラインにおける信用

─  ─25

学際的研究の必要性

 オンラインにおける信用の研究には、行動科学や行動経済学の視点を付け加えた研究が一層必

要とされる。この領域の先進的な研究例として、Ariely and Gneezy(2007)の研究が挙げられる。

消費者行動の研究者は、信用についての行動科学的実験の意義を理解している。また、経済学者

による比較的早期の業績であるReznick and Zeckhauser(2002)でも、高い格付けが与えられ

たオークション出品者による商品には多くの金額が支払われることが明らかにされている。この

業績は、ネットオークション行動において信用が重要であることを明らかにした Cabral and

Hortacsu(2004)に基づいている。

 学際的アプローチの最近の例として、マサチューセッツ工科大学(MIT)のモーフィング・

サイトの研究がある(Hauser et al. 2009)。モーフィング(morphing)とは、顧客の認知構造に

合わせて発話をすることで効果的なコミュニケーションを図ろうとする試みである。この方法論

によれば、ウェブサイトは個人の意思決定様式(分析型-全体型、や衝動型-熟考型)に合わせ

て大きく変化する。例えば、分析的で衝動的な閲覧者に向けては、サイトから製品について簡潔

なデータを受け取り、最小限のクリック数で購入できるようにする。全体型で熟考型の閲覧者に

向けては、概説的なアドバイスをし、情報に基づいた意思決定ができるように詳細なデータを示

す、というものである。モーフィングの最近の研究では、平等主義-階層主義、個人主義-集団

主義、情緒的-中立的といった、受け手の文化的次元の要因も検討されている。

隣接領域の考慮

 信用の情報を理解するために fMRI を用いた例を挙げよう。fMRI は信用や裏切りによって脳

が活性化する(血流が増加する)ことなどを明らかにしてきた(Glimcher and Rustichini 2004;

King-Casas et al. 2005)。Kosfeld et al.(2005)は、オキシトシン・ホルモンと対人信用との関

係を明らかにした。MITでは、オンライン・アドバイザーの顔を消費者に似せることで信用が

高まったかどうかを判断するのに fMRI を用いている。fMRI と信用という領域は、信用とオン

ライン行動の研究にとってもエキサイティングな領域である(Murtagh and Dimoka, 2007や、

彼らの近年の報告を参照されたい)。

グローバル対応

 多くの企業がグローバルにインターネット戦略を展開している。通常は、1つのサイトを翻訳

の違いだけで対応するものが多いが、国ごとの違いや最適なサイトデザインによって、信用に影

響を与える要因がどのように異なるか、を研究することができよう (Chong, Yang and Wong

2003を参照)。また、国の違いを超えるフレキシブルなサイトの構築についても研究課題とでき

る。Hofstead(1980)は、国ごとの差異を指摘しており、文化的特徴に基づくモーフィングとい

う概念は興味深い。共通の基幹要素を持ちながら国ごとに変化するウェブサイトがあったとした

─  ─26

ら、個人差などは完全に包含されるだろう。日本における1,000名を対象とした初期の研究によ

れば、認知スタイルに対応することによって、信用は(5点尺度による測定で、3.1から3.7へ)

有意に高まった。真に多国籍な基幹要素や国ごとのモーフィングについて研究することは、大き

な可能性のある研究領域である。

新しいメディアが成長している

 インターネットは進化し続けており、変化は加速するだろう。Myspace や Facebook、Second

Life、ブログやカスタマーの不平を集めるサイトのようななかでは、革新的な現象が起こってい

る。ソーシャル・コミュニティのような新しいメディアが信用を高めている(Urban, 2005)が、

ソーシャル・ネットワークの影響を理解するためにさらに多くの研究が必要とされる。これらの

機能や購入意思決定への影響を理解することが必要である。

 コミュニケーションのターゲットを個人単位にまでセグメントすることは Google の検索ワー

ド広告では熱心に行われているが、検索行動に対する信用の影響を明らかにするというのは、す

でに研究機会として成熟している。スポンサーによるリンクやポップアップは個人の意思決定ス

タイルに合わせて個別対応するべきかどうか、といったことも研究トピックとして挙げられる。

最後に、ニュー・メディアはブランドを構築できるのかどうか、という課題が挙げられる。ブラ

ンディングとオンライン広告の成果についての研究は非常に有用である。ニュー・メディアにつ

いての詳しい議論は、Winer(2009)を参照されたい。

むすび

 オンラインにおける信用については多くの研究がなされてきたが、今後も多くの実りが期待で

きる領域が残されている。私たちは、現在の技術環境と研究可能性の一部を見てきたに過ぎない。

学術組織における研究は進歩し続けており、その一連のワーキング・ペーパーはオンラインで入

手できる。産業界も活発に検討を重ねている。オンラインにおける信用は、活気に溢れ産学双方

にとって成長機会が見込まれる領域であり、さらなる進歩が期待できるだろう。

オンラインにおける信用

─  ─27

訳者コメント

 本論文は、この10年余りの注目トピックである、インターネットを通じたマーケティング・コ

ミュニケーションにおける信用(trust)概念を取り扱った展望論文である。著者らによれば、

オンラインにおける信用の考察領域は拡大してきているというが、その背景にはインターネット

技術の目覚しい進化によって、オンラインでのマーケティング・コミュニケーションで可能なこ

とが革新的に拡大してきたことを指摘できる。例えば、モーフィング技術を用いたスムーズな顧

客対応は、リアルの店舗では実現できなかったオンラインならではの新しいコミュニケーション

の様相であり、マーケティングにとって未知の開拓領域である。これまでの急速な技術の進化を

踏まえるならば、モーフィング・サイトは今後予想以上に早く一般的になり、研究への要請も強

まるかもしれない。

 本論文の第一著者であるUrban 教授は「アドボカシー・マーケティング」の提唱者として我

国実務家の間でもよく知られている。「顧客にとっての最善」を徹底的に追求することで顧客の

信用を得て、共創関係を構築しようとするアドボカシー・マーケティングの視点は、本論文にお

いても強調されている。価格競争や製品・サービスのコモディティ化の話題でもちきりの我国企

業のマーケティングにとって、信用概念に着目することで活路が開けるかもしれない。

 本論文は、いち早く今、伝統的な信用研究をあらためて見直しオンライン市場の考察に取り掛

かる契機を与えてくれる。「手掛かりベースの信用」「経験ベースの信用」というコンセプトの紹

介や、第三者となる推奨者の信用の問題、マルチチャネルにおける信用の転移の問題、など刺激

的な研究課題も豊富に挙げられており、研究者、実務家の双方にとって有意義な論考であるとい

えるだろう。

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

─  ─29

はじめに

 近年では、サービスや店舗環境が消費者の意思決定に与える影響について調査した研究が増え

ている。これらの研究は、例えば店舗内のBGM、混雑の程度、店舗の色調といった環境的要因が、

製品の選択(North et al. 1999)、買い物経験の評価(Van Rompay et al. 2008)、店舗イメージ

(Bellizzi et al. 1983)といった消費者の行動や認知に影響を与えることを示している。こうした

関心と平行して、eコマースやインタラクティブ・マーケティングの領域の研究者は、オンライ

ン上の情緒的要素(例えば、ウェブサイトのレイアウト、色調、製品の外観)が消費者の選択に

影響を与えたり、感情的な経験を促進するための手段となる可能性に注目するようになった。最

近では、本ジャーナルの特集号で、インタラクティブの環境デザインに関する論文が発表されて

いる(Malthouse and Shankar 2009)。

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

“More than Words: On the Importance of Pic-ture-Text Congruence in the Online Envi-ronment”(Journal of Interactive Marketing, 24(1), 2010, pp. 22-30)

Thomas J. L. van RompayPeter W. de VriesXaviera G. van Venrooij

 本稿は、オンラインの環境における写真と文章の調和が、消費者の反応に与える影響について論じている。「情報処理の流暢性」に関する最近の理論に基づくと、ウェブ上の写真的要素と文章的要素によって創造される象徴的な意味の調和は情報処理の流暢性を高め、購買態度の形成を促進するとされている。象徴的な意味の統合は入念な情報処理を必要とするため、本稿では消費者の情報処理に反映される個人差の影響について議論し、仮説を立てた。次に実験を行い、被験者にオンラインのホテル予約サイトを評価してもらった。その際、「ホテルの外観の写真」と「内容に関する記述」によって創造される象徴的な意味が、調和している場合と調和していない場合とを設定した。実験の結果から、写真と文章の調和は情報処理の流暢性を高め、ホテルへの態度にポジティブな影響を与えることが分かった。ただし、それは認知欲求度の高い被験者のみに言えることだった。これらの結果は、ウェブ上の写真と文章の調和は消費者の反応に影響を与えることを示し、オンラインの環境を慎重に考慮することの重要性を強調している。

訳 ─── 加藤 祥子目白大学社会学部専任講師

─  ─30

 消費者の感情的経験は、非常に大きな注目を集めている。例えば、Jin(2009)は3次元のヴァー

チャル店舗で動画、アバター、製品の視覚化といったウェブサイト上の特徴を比較し、様相の豊

富さが消費者の評価や購買意図に与える影響について研究した。それによると、特に低関与の消

費者は様相の程度によって影響を受けやすいことが証明された。Finn et al.(2009)は、ウェブ

サイトの視覚的訴求に加え、「次にどこをクリックすればよいのか」といったウェブサイトの明

瞭さも、サイトの評価に大きな影響を与えることを示している。消費者の感情的経験の重要性は、

いまだにオンライン上で買い物をすることにリスクを感じ躊躇している消費者がいるという発見

(Cho et al. 2006; Forsythe et al. 2006; Forsythe and Shi 2003)によって、さらに強調されている。

こうしたリスクは、オンライン上での購買意図にネガティブな影響を与えることが分かっている

(Forsythe et al. 2006)。このような発見は、ウェブサイトの知覚や消費者の選択の先行要因に対

する、研究者やオンライン上の売り手、ウェブ・デザイナーの注目をかなり高めた。オンライン

上の環境を慎重に考慮してデザインすることは、Featherman et al.(2006)や Finn et al.(2009)、

Jin(2009)などの先行研究の中でも、特に重要性が高いとされている。

 その際、ウェブサイトの要素が製品の評価にどのように影響を与えるかということを明確に理

解することが、最も重要であろう。過去の研究は、ウェブサイト上の視覚的訴求や美的要素など

が消費者の製品評価に与える直接的な影響や、これらの要素がオンライン上で消費者の目的達成

をどのように助けるかということに焦点を当てたものがほとんどであるのに対し(例えば、Jin

2009; Finn et al. 2009)、最近の研究は、ウェブサイト上での製品の視覚化、サイトのレイアウト

や色調といった要素も、象徴的意味を伝えることによって、消費者の選択に潜在的あるいは無意

識的に影響を与える可能性があることを示している(Valdez and Mehrabian 1994; Van Rompay

et al. 2005; Zhang et al. 2006)。

 また、オンラインの環境における複数の要素の様々な意味の間に、調和や斉合性があることが

重要であると立証されている(Moore et al. 2005; Shen and Chen 2007)。例えば Shen and Chen

(2007)は、ウェブサイトの主題に合致したバナー広告は、合致しないバナー広告よりも消費者

の好意的な態度を生じることを示した。小売店に関する研究でも、Mattila and Wirtz(2001)

は売り場の香りやBGMがその環境と調和している方が、調和しない場合よりも消費者は快適に

感じることを証明している。

 これらの研究結果は、消費者はオンライン上の環境をゲシュタルトのように(つまり、全体論

的に)知覚するということと、消費者の意思決定とは、オンライン上の要素が伝達する様々な意

味を統合する精緻化のプロセスの結果であるということを示唆している。特に興味深いのは、情

報処理の流暢性に関する最近の理論である(Reber et al. 2004; Winkielman and Cacioppo

2001)。こうした提唱の核心は、消費者はオンライン上の情報をより流暢に処理できるほど、そ

の情報への評価もよりポジティブになるということである。実際の店舗と同様に、オンライン上

の小売店は多くの異なった要素(例えば、色調、レイアウト、文章、画像)によって構成されて

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

─  ─31

おり、それらが象徴する意味は、消費者が意思決定を行うためには、情報処理されなければなら

ない。その情報処理が比較的容易に行われれば、消費者の反応を得やすくなる。

 ウェブサイトは通常、製品の視覚化と説明といった視覚的特徴と文章から構成されるため、本

稿ではこれらの要素に関連する象徴的意味の適合または不適合に焦点を当てた。特に、ウェブサ

イト上の製品の画像と説明によって伝達される意味が調和すると、調和しない場合よりも情報の

統合を促進し、情報処理の流暢性を高めることになると提言する。そして、情報処理の流暢性が

高まると、提示された製品やサービスに対する消費者の評価にポジティブな影響を与えると仮説

を立てた。この仮説を検証するために、ホテルの予約サイトを用いて製品の画像と説明を操作し、

実験を行った。

意味の調和と印象の形成

 マーケティング研究や消費者研究では、マーケティング的要素の複合によって表現される意味

の調和は、一般に製品やブランドの評価に先行する重要なものと考えられている(Erdem and

Swait 2004; Van Rompay and Pruyn 2008)。例えばVan Rompay and Pruyn(2008)は、製品

のパッケージ上に書かれた文字の書体と製品の形状によって暗示される象徴的性質の調和が、ブ

ランド知覚にポジティブな影響を与えることを示した。同様に Peracchio and Meyers-Levy

(2005)は、写真の志向性と広告のスローガンによって伝達される暗示的意味が調和すると、製

品への態度にポジティブな影響を与えることを示した。これに加えChilders and Jass(2002)は、

広告の中で訴求されるベネフィットは、広告に用いられる書体や画像、コピーによって暗示され

る意味の間の斉合性が高まると、記憶されやすくなることを示した。

 意味の調和の影響に関する研究は多数あるにもかかわらず、情報の調和が消費者の反応に影響

を与えるプロセスについては、完全に理解されている状態にはほど遠い。また、ウェブサイト上

の言語的情報と視覚的情報によって伝達される暗示的意味の統合について研究したものは実質的

にはなく、例外的には広告研究で Peracchio and Meyers-Levy(2005)があるくらいである。広

告の領域では、調和の影響はユーモアやウィットに関連してときどき議論され、不調和は通常、

広告の視覚的部分の中の予期しない要素として扱われる。例えばHeckler and Childers(1992)

は、航空機の座席の快適さを強調した旅行の広告について説明している。座席に快適に座る人物

を描写するのが調和した状態と言えるが、代わりに人物を象に置き換えた調和しない状態を描写

することによって、座席が広いという快適さを強調して伝えることができた。このような「ユー

モアに関連づけられた調和」の効果は、本稿で議論される「象徴的意味の不調和」とは区別され

るべきものである。

情報処理の流暢性と情報の統合

 情報処理の流暢性の評価によれば、一般に簡単に処理される刺激はポジティブに評価され、好

─  ─32

意的な態度をもたらすとされている。Lee and Labroo(2004)はこの考えを拡張し、ある製品が

予測可能な文脈の中に提示され、より迅速に思い浮かべられると、消費者は製品に対してより好

意的な態度を持つようになることを示した。このような結果の根拠は、流暢な情報処理は精神生

理学の尺度でポジティブな経験とみなされる、という発見に結びつけられる(Reber et al. 2004;

Winkielman and Cacioppo 2001)。ポジティブな経験はその後、手近な刺激に帰属され、ポジティ

ブな評価を誘発する(Reber et al. 2004)。

 意味の調和もまた、情報処理の流暢性に影響を与える。例えば、オンライン上のショッピング

サイトで、製品の説明などの文章と製品のサムネイルなどの画像によって様々な意味が暗示され

る場面に遭遇すると、消費者は製品の質や適切性を評価するために、これらを統合して第一印象

を形成し、購買意思決定を行う。インターネット上で同じような製品やサービスを提供する多数

のウェブサイトに遭遇すると、消費者がそのサイトに見入るかどうかは、この第一印象とサイト

の明瞭さによって決まると言ってよい。情報処理の流暢性はこの第一印象となる明瞭性を決定づ

ける。ウェブサイト上の様々な要素によって暗示される情報が調和すると情報処理が容易にな

り、明瞭な印象が形成される。

 上で述べたことに基づくと、製品に関する記述と製品の視覚化が調和的意味を暗示するような

オンライン上のショッピングサイトは、情報処理がより簡単になるだろう。そして、流暢な情報

処理は、提供される製品やサービスへの消費者の態度にポジティブな影響を与えることが期待さ

れる。

 しかし、消費者が情報処理に従事する程度やそれを楽しむ程度、または情報の精緻化の程度に

は大きな差異があることを、多くの研究が示している(Cacioppo and Petty 1982)。多様な意味

の統合は念入りな情報処理を必要とするため、起こりうる影響はおそらく認知欲求度の低い消費

者よりも高い消費者のほうがより明白に現れるだろう。Peracchio and Meyers-Levy(2005)は、

広告の中の「写真の志向性とスローガン」の調和が製品の知覚に与えるポジティブな影響は、認

知欲求度の高い消費者のみに明白であることを示した。

 一方、不調和は情報処理を促進するという代替的仮説もある(Maheswaran and Chaiken

1991; Meyers-Levy et al. 1994)。つまり不調和は、通常は表面的な情報処理を行うような認知欲

求度の低い消費者に、その情報を十分に評価するためにはより念入りに処理する必要があるとい

う合図を送っているといえる。

 このような見解に基づくと、不調和は消費者の認知欲求度にかかわらず、より念入りな情報処

理を促進することによって意思決定に影響を与えるといえる。これらの対照的な仮説を検証する

ために、本研究では次のような実験を行った。

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

─  ─33

実験の方法

予備的研究

 ホテルのイメージは、予備的研究でテストされた。オランダのTwente University の大学院生

および学部生60名が被験者となり、いくつかのホテルの外観から感じられる現代性や居心地の良

さについて、7段階で評価することを求められた。この結果に基づいて、3つの外観が実験の素

材として選ばれた。それらは「非常に現代的で居心地はあまり良くないもの」、「あまり現代的で

はないが居心地は非常に良いもの」、そして「現代性と居心地の良さの両方とも中間的なもの」

である。分散分析によって、これら3つの外観は「現代性」および「居心地の良さ」という点に

おいて、互いに大きく異なることが示された。

 次に、ホテルに関する2種類の記述が作られた。1つは「現代的な雰囲気のホテル」について

のもので、もう1つは「居心地の良い雰囲気のホテル」についてのものだった。第2の予備的研

究では、Twente University の24人の学生を被験者に、これらの記述を読んでホテルの現代性と

居心地の良さを評価することを求められた。独立標本の t 検定によって、「居心地の良さ」とい

う点に関しては居心地の良い雰囲気のホテルについての記述のほうが高く評価され、同様に「現

代性」という点に関しては現代的な雰囲気のホテルについての記述のほうが高く評価された。

実験の被験者と形式

 実験にはTwente University の168人の学生(男性が96人で女性が72人、年齢は18才から28才

まで)が被験者となった。実験は、ホテルの外観(3種類:居心地が良い、中間的、現代的)×

ホテルに関する記述(2種類:居心地が良い、現代的)×被験者の認知欲求度(2種類:低い、

高い)という設定で行われた。

実験の手順

 被験者は実験の前に、所要時間15分ほどの関連性のない2つの実験に参加してもらうという説

明を受けた。各被験者は別々のコンピューターの前に誘導され、実験は開始された。コンピュー

ターの画面には、オンラインの質を改善するために、eコマースのページを評価する実験に参加

してもらうという前書きが提示された。特に、オランダ西部の主要都市であるハールレム地方の

ホテルを、オンライン上で検索することを想定するように求められた。次に、被験者は「ハール

レム地方のホテル」と題した多数のホテルが掲載されたリストを提示された。ウェブ上のそれぞ

れのページでは、ホテルの画像とそれに添付された記述を見ることができた。ここで、先ほどの

予備的研究を経て作られたホテルの外観と記述が用いられた。

 なお、ホテルに関する記述は以下のものが被験者に提示された。操作した部分は太字で示した。

カッコ内は現代的な雰囲気のホテルに用いた記述である。

─  ─34

 ハールレムホテルは魅力的な(粋な)ハールレム地方の端に位置しています。居心地の良い(現

代的な)雰囲気の客室には、衛星テレビ、ラジオ、国際電話、金庫、トイレ、シャワーが装備さ

れています。ホテルには快適なオランダ伝統のリビングルーム(現代的な設備の整ったリラック

スルーム)があり、バーカウンターやプールも付いています。インテリアは暖かみのある(最新

の)デザインです。居心地の良いリビング(リラックスルーム)は、ハールレム周辺での1日の

活動の後にくつろぐのに理想的な場所となるでしょう。また、当ホテルには暖かい雰囲気の(ス

タイリッシュな)ブレックファーストルームもあり、1日の始まりに充実した朝食を楽しむこと

ができます。夕食はホテル内の伝統ある(革新的な)レストランで味わうことができます。

 ホテルに関する記述は、被験者が部分的にしか読まない場合もあるため、上に述べたように「居

心地が良い」あるいは「現代的」という本質的な要素に注意が向けられるように構成された。被

験者はウェブ上のページを入念に見るように指示され、最後にオンライン上の評価フォームを満

たすことを求められた。

 評価フォームでは、従属変数は7段階で測定された。Ellen and Bone(1991)の研究に基づい

て、イメージの形成しやすさは、7つの項目によって測定された(例えば、「ハールレムホテル

について明確なイメージを持つことができた」、「ハールレムホテルの印象を容易に形成すること

ができた」など)。ハールレムホテルへの態度は6つの項目(楽しい、良い、美しい、おもしろい、

魅力的な、誘惑的な)によって測定された。表面的には関連性のない第2の実験では、Cacioppo

and Petty(1982)が提唱した認知欲求度の尺度が用いられ、被験者を認知欲求度の高いグルー

プと低いグループの2つに分けた。

実験の結果

情報処理の流暢性

 「ホテルに関する記述」、「ホテルの外観」、「被験者の認知欲求度」は独立変数として、「情報処

理の流暢性」は従属変数として、分散分析が行われた(平均値と標準偏差は図表1を参照、平均

値のみグラフ化)。

 結果から、「ホテルに関する記述」は情報処理の流暢性に有意な主作用を与えず、「ホテルの外

観」は情報処理の流暢性に有意な主作用を与えることが分かった。一対比較によって、「ホテル

の外観」は中間的な雰囲気のもの(平均値3.92)よりも、居心地の良い雰囲気のもの(平均値4.38)

や現代的な雰囲気のもの(平均値4.29)のほうが情報処理の流暢性をかなり高めることが示され

た。

 また、「被験者の認知欲求度」は情報処理の流暢性に有意な主作用を与えなかった。「被験者の

認知欲求度」と「ホテルに関する記述」との間、および「被験者の認知欲求度」と「ホテルの外

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

─  ─35

観」との間のいずれにおける相互作用とも、情報処理の流暢性に有意な影響を与えないことが分

かった。

 最も重要なことは、「被験者の認知欲求度」、「ホテルの外観」、および「ホテルに関する記述」

の3変数の間に有意な相互作用が見出されたことである。コントラスト解析によって、「被験者

の認知欲求度」が低い場合、「ホテルの外観」と「記述」の間の調和は情報処理の流暢性に影響

を与えなかった。一方、「被験者の認知欲求度」が高い場合、「外観」と「記述」が調和すると、

不調和の場合に比べて情報処理の流暢性を促進した。

図表1 「ホテルの外観」、「ホテルに関する記述」、および「被験者の認知欲求度」を関数とした、情報処理の流暢性の平均値および標準偏差

ホテルの外観

ホテルに関する記述

被験者の認知欲求度低 い 高 い 合 計

平均値 標準偏差 被験者の数 平均値 標準偏差 被験者の数 平均値 標準偏差 被験者の数

居心地が良い

居心地が良い 4.57 0.66 11 4.71 0.79 16 4.65 0.73 27現代的 4.51 0.68 15 3.72 0.8 14 4.13 0.83 29合計 4.54 0.66 26 4.25 0.93 30 4.38 0.82 56

中間的居心地が良い 3.83 0.55 14 4.01 1.03 14 3.92 0.82 28現代的 4.07 1.03 14 3.79 1.02 15 3.93 1.02 29合計 3.95 0.82 28 3.9 1.02 29 3.92 0.92 57

現代的居心地が良い 4.21 0.93 13 4.08 0.89 16 4.14 0.89 29現代的 4.15 0.81 17 5.04 0.63 9 4.46 0.86 26合計 4.18 0.85 30 4.43 0.92 25 4.29 0.88 55

合 計居心地が良い 4.17 0.77 38 4.28 0.94 46 4.23 0.86 84現代的 4.25 0.85 46 4.06 1.01 38 4.16 0.92 84合計 4.21 0.81 84 4.18 0.97 84 4.2 0.89 168

※ 数値が高いほど、情報処理の流暢性が高いことを示す。

a 被験者の認知欲求度が低い場合 b 被験者の認知欲求度が高い場合

5.5

5

4.5

4

3.5

5.5

5

4.5

4

3.5居心地がよい 中間的

ホテルの外観現代的 居心地がよい 中間的

ホテルの外観現代的

居心地の良さそうな記述

現代的な記述

居心地の良さそうな記述

現代的な記述情報処理の流暢性の平均値

情報処理の流暢性の平均値

─  ─36

ハールレムホテルへの態度

 次に、独立変数は上述したものと同様に、「ハールレムホテルへの態度」を従属変数にして分

散分析を行った(平均値と標準偏差は図表2を参照、平均値のみグラフ化)。

 ここでも、「ホテルの外観」のみがハールレムホテルへの態度に有意な主作用を与えることが

示された。「ホテルの外観」の間で比較すると、居心地の良い外観への態度(平均値4.92)は、

現代的な外観への態度(平均値4.6)や中間的な外観への態度(平均値4.47)よりも高いことが示

された。

図表2 「ホテルの外観」、「ホテルに関する記述」、および「被験者の認知欲求度」を関数とした、ハールレムホテルへの態度の平均値および標準偏差

ホテルの外観

ホテルに関する記述

被験者の認知欲求度低 い 高 い 合 計

平均値 標準偏差 被験者の数 平均値 標準偏差 被験者の数 平均値 標準偏差 被験者の数

居心地が良い

居心地が良い 4.82 0.46 11 5.31 0.74 16 5.11 0.67 27現代的 4.9 0.73 15 4.57 1.15 14 4.74 0.95 29合計 4.87 0.62 26 4.97 1.01 30 4.92 0.84 56

中間的居心地が良い 4.57 0.59 14 4.51 0.83 14 4.54 0.71 28現代的 4.27 0.91 14 4.53 1.09 15 4.41 1 29合計 4.42 0.77 28 4.52 0.96 29 4.47 0.86 57

現代的居心地が良い 4.55 0.71 13 4.25 0.98 16 4.39 0.87 29現代的 4.41 1.02 17 5.67 0.61 9 4.85 1.07 26合計 4.47 0.88 30 4.76 1.1 25 4.6 0.99 55

合 計居心地が良い 4.64 0.6 38 4.7 0.96 46 4.67 0.81 84現代的 4.53 0.92 46 4.82 1.11 38 4.66 1.01 84合計 4.58 0.79 84 4.75 1.02 84 4.66 0.91 168

※ 数値が高いほど、好意的な態度を示す。

a 被験者の認知欲求度が低い場合 b 被験者の認知欲求度が高い場合

6

5.5

5

4.5

4

6

5.5

5

4.5

4居心地がよい 中間的

ホテルの外観現代的 居心地がよい 中間的

ホテルの外観現代的

居心地の良さそうな記述

現代的な記述

居心地の良さそうな記述

現代的な記述

ハールレムホテルへの態度の平均値

ハールレムホテルへの態度の平均値

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

─  ─37

 また、情報処理の流暢性への影響と同様に、「被験者の認知欲求度」はハールレムホテルへの

態度に有意な影響を与えなかった。「被験者の認知欲求度」と「ホテルに関する記述」との間、

および「被験者の認知欲求度」と「ホテルの外観」との間のいずれにおける相互作用とも、ハー

ルレムホテルへの態度に有意な影響を与えないことが分かった。

 最後に、「ホテルの外観」、「ホテルに関する記述」、そして「被験者の認知欲求度」の3変数の

間には、有意な相互作用が見られた。コントラスト解析によって、「被験者の認知欲求度」が低

い場合、「ホテルの外観」と「記述」の間の調和はホテルへの態度に影響を与えなかった。一方、

「被験者の認知欲求度」が高い場合、「外観」と「記述」が調和すると、不調和の場合に比べてホ

テルへの態度がポジティブになった。

調整された媒介変数

 ハールレムホテルへの態度に与えられる独立変数の調和の影響は、特に被験者の認知欲求度が

高いときに、情報処理の流暢性によって媒介されると仮定された。このような条件つき媒介変数

を検証するために、本研究ではMuller et al.(2005)によって提唱された、「調整された媒介変

数の検証」の手順に従った(これについては Preacher et al. 2007も参照)。

 この手順には、回帰分析の手法が含まれる。まず、図表3中の左2列と中央2列は、「独立変

数の調和」と「被験者の認知欲求度」の間の相互作用(独立変数×調整変数)が、「ハールレム

ホテルへの態度(従属変数)」と「情報処理の流暢性(媒介変数)」の両者に有意な影響を与える

ことを示しており、分散分析の結果が確証されたといえる。次に右2列は、媒介変数が「ハール

レムホテルへの態度」に与える独自の影響は非常に有意であることを示している。さらに中央2

列と右2列から、「独立変数の調和」と「被験者の認知欲求度」の相互作用の影響(独立変数×

調整変数)を b値と t 値で比較すると、この相互作用の影響は媒介変数が回帰分析に含まれると

明らかに低減することが示されている(b値が0.66から0.31に低減している)。最後に Sobel 検定

によって、「独立変数の調和」と「被験者の認知欲求度」の相互作用(独立変数×調整変数)が「情

図表3 回帰分析による条件つき媒介変数の検証

予測変数情報処理の流暢性への影響

ハールレムホテルへの態度に与える影響

媒介変数がハールレムホテルへの態度に与える影響

b値 t 値 b値 t 値 b値 t 値独立変数(調和) 0.55 3.88*** 0.5 3.48*** 0.09 0.76調整変数(被験者の認知欲求度) -0.51 -1.85 -0.06 -0.59 -0.01 -0.13独立変数×調整変数 0.44 2.11* 0.66 3.12** 0.31 1.72媒介変数(情報処理の流暢性) 0.62 8.90***独立変数×媒介変数 0.16 1.12媒介変数×調整変数 0.02 0.23

(*p < 0.05 **p < 0.01 ***p < 0.001)

─  ─38

報処理の流暢性(媒介変数)」を通じて「ハールレムホテルへの態度」に影響を与えるルートは、

有意であることが示された。

全体的なディスカッション

 本研究での結果は、インターネットのショッピングサイトにおいて文章とイメージの調和が重

要であることを強調しており、調和の影響に関する研究に貢献しているといえる。また本研究は、

情報の調和が消費者の製品評価に影響を与えるプロセスを洞察している。文章とイメージの調和

は、消費者に明確な製品イメージを形成させることにより、印象形成のプロセスを促進する。対

照的に、調和しない情報は、提示された製品やサービスの同一性について消費者に不信感を与え

ることにより、印象形成の妨げになる。これらの影響は被験者の認知欲求度が高い場合のみに表

面化した。

 製品に関する記述と視覚化は、インターネットのショッピングサイトの中で、製品に関する2

つの最も直接的な情報源となる。例えば、オンラインのホテル予約サイトのような特定のサービ

スは経験的特徴が大きく、実際に消費した後でないと評価できないため(Klein 1998)、情報の

調和はさらに重要になる。そのような高い不確実性を伴う状況では、消費者は誤った選択を生じ

るような知覚リスクを低減できる、明白で斉合性のある情報を価値あるものと考える(Cho et

al. 2006; Tversky and Shafir 1992)。情報の調和により情報処理の流暢性が高められると、オン

ライン上で消費者にウェブサイトの使いやすさを印象づけ、買い物の目的を容易に達成できると

いう信頼を与え、消費者が早々にサイトから離れるのを防ぐ効果がある。

 一見して、本研究での結果は、広告などの低関与の刺激における調和の影響について調べた研

究結果とは一致していない(Heckler and Childers 1992; Houston et al. 1987; Meyers-Levy et al.

1994)。最近の研究は、文章とイメージの不調和は、広告や広告されたブランドの認識を高める

ことを示している。不調和は「何かが起きていますよ」という信号を送ることによって消費者の

注意を引いたり、あるいは解くべき謎を提示することによって消費者の好奇心をそそる可能性が

ある(Meyers-Levy et al. 1994)。したがって特定の状況では、不調和が消費者の選択にポジティ

ブな影響を与えることもありうる。消費者の認知欲求度という点に関しては、情報処理の差異に

ついての既存の考えをさらに探究する余地がある。

 本研究では情報処理の流暢性を直接的には測定しなかったが、本研究で用いられた流暢性に関

する尺度は、実際に情報処理の流暢性についての基準を開発することにつながったという確信が

ある。だが、将来の研究では既存の主張を強化するために、例えば消費者の反応の速度といった、

より直接的で精神生理学的な基準が用いられるべきである。後に続く研究では、情報処理の流暢

性に加え、代替的な媒介変数が探究されるべきである。例えば過去の研究では、オンライン上の

消費者の態度(De Vries and Pruyn 2007)や選択(Smith et al. 2005)、ロイヤルティ(Fassnacht

and Köse 2007)に関する信頼の重要性を測定したものがある。Osgood and Tannenbaum(1995)

言葉以上のもの:オンラインの環境における写真と文章の調和の重要性

─  ─39

による古典的研究は、文書によるコミュニケーションにおける情報の不調和は、被験者にメッ

セージの出所について疑いを持たせることを証明した。ウェブサイト上での情報の不調和は、情

報処理の流暢性を媒介変数としてネガティブな影響をもたらすのに加え、オンライン上の売り手

に対する信頼にもネガティブな影響を与えるだろう。また、統一性あるいは一貫性といった、調

和に関連する「デザインの原理」は、視覚的刺激についての美的評価にポジティブな影響を与え

るとする研究もある(Hekkert 2006; Veryzer 1993)。ウェブサイト上の視覚的要素の重要性を

考慮すると、今後の研究では、この要素を調和の影響への媒介変数として取り入れていくべきで

ある。

 最後に、本研究での結果は、調和の影響は消費者個人によって異なることを示している。本稿

で概要を述べた「被験者の認知欲求度」という尺度に加え、「情報のあいまいさに対する被験者

の許容」(Neuberg and Newsom 1993)に関する尺度や、「新しい経験の受容度」(McCrae

1996)に関する尺度が探究されるべきである。これらの尺度は、消費者が「意外なことよりも確

実なことを高く評価する程度」、あるいは、「予測できることよりも目新しさを高く評価する程度」

を測定するものである。Van Roomy et al.(2009)では、広告の中での製品の視覚化とブランド

のスローガンとの間の不調和は、情報のあいまいさに対する許容の小さい消費者についてのみ、

製品への態度形成にネガティブな影響を与えることを示している。また、インターネットの経験

の程度は消費者の購買行動を説明する上で重要な要因になる。リスクを心配して、不調和に対し

てネガティブに反応することは、インターネットでの買い物の経験が増すほど減少するという調

査結果もある(Forsythe et al. 2006; Frambach et al. 2007)。マーケターはターゲットとなる消

費者集団について、インターネットの経験の程度や個性を明確に理解すべきである。

 特に、経験の程度が重要なサービスの場合や、購買に関する潜在的なリスクが高い製品の場合、

マーケティングマネジャーは消費者の意思決定に重要なウェブ上の要素(製品に関する記述や製

品の視覚化など)は同調したものを用いるようにすべきである。結局、競争はクリックただ1つ

に懸かっているのである。

─  ─40

訳者コメント

 本論文はインターネット上の通信販売サイトで、商品の画像イメージと説明が消費者の購買態

度に与える影響について論じられている。画像と説明が調和すると、消費者の購買態度はよりポ

ジティブになるという点について、様々な角度から調査が行われた。

 たしかに、私たちがインターネットの通販サイトで何か買おうとしたとき、「画像+説明」に

よって商品へのイメージを膨らませる。商品の画像はあるが説明がほとんどない場合、その商品

が本当に画像どおりのものなのか、信憑性を疑う。一方、商品の説明は詳しく書かれていても画

像がない場合、実物の商品をイメージしづらい。画像と説明の両方が揃って、はじめてその商品

が現実味を伴ったものとして消費者に把握されることになる。

 このように考えると、本論文で指摘されていた「画像と説明の調和」は、消費者にその商品を

買わせるための絶対条件ともいえる。画像から得られるイメージと説明が調和しない場合、消費

者は混乱する。その商品の実物をイメージしようとしても、焦点が合わないからである。消費者

が、そのような「よく分からない」商品を買う可能性は極めて低いだろう。インターネット上に

通販サイトは無数にある。通販業者がこのような競合過多の状態で生き残るためには、消費者に

「分かりやすい」サイト作りに力を注ぐべきで、もしかしたら良い商品を提供すること以上に重

要性が高いかもしれない。商品検索から購買に至るプロセスの簡便さ、つまりサイトの使いやす

さはもちろんのこと、これに商品情報を明確に把握できる要素がプラスされれば、消費者を「購

入ボタン」のクリックへと導く環境が整う。

 実際にインターネット上で買い物をしてみると、ネット通販が消費者を魅了する最大の力と

は、クリックするだけで簡単に買い物のプロセスが完了してしまう「達成感の得やすさ」にある

のではないかと思う。指先1つの操作で欲しいものが手に入る簡便さ、つまり、少ない努力量で

多くの結果を手にしたかのような感覚が得られるところに、消費者はつい引き寄せられるのでは

ないか。したがって、認知的努力についても同様のことがいえるだろう。想像力をたくましく働

かせなければ商品のイメージが浮かばないようなサイトに、多くの消費者が集まるはずはない。

より楽に、瞬時にイメージが把握できるようなサイトが好まれるはずである。

 また、「画像+説明」によって、商品を実物より魅力的に見せることも可能になる。写真や映

像は実物よりも良く撮れている場合が多い。本論文で挙げられたホテルなどは、その好例といえ

る。美しい風景や外観にやすらぎのある室内を映し、そのイメージを膨らませるような文章を添

えれば、消費者はそのホテルが夢のような空間であると想像するに違いない。ただし、消費者は

インターネットのおかげで購買後(経験後)のクチコミ情報も得やすいため、誇大広告が見破ら

れやすい状況にあることには注意が必要である。消費者に夢を与える一方で、その期待を裏切ら

ずに内実を伴った商品を提供することは、売り手と買い手が顔を合わせることのないインター

ネットの時代にこそ、重要性を増しているといえる。

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウェブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

─  ─41

イントロダクション

 スターウォーズのファンや、ハーレーダビッドソンのオーナーズクラブ、そしてデイビッド

オースティンローズの園芸愛好家に共通するものは何であろうか。彼らは、サイトのスポンサー

企業にとっては、ロイヤルユーザーであり潜在的顧客を意味しているのである。ブランドのリ

ピート購買率が低い中、ブランドコミュニティサイトをつくることは、ロイヤル顧客を維持する

という目的を達成するための手段の一つなのだ。コミュニティーは、共有された関係性(Rhein-

gold 1993)、社交的慣習(Hesselbein 1998)とメンバーシップの意識(Bender 1978)を示す社

会的組織だと説明することができる。

 ブランドコミュニティーというのは「あるブランドのユーザー間の組織だった関係性に基づ

く」ものだということである(Muniz and O’Guinn 2001, p. 412)。

 今日、伝統的なオフラインコミュニティー研究と共に、ウエブ上のブランドコミュニティーの

研究が活発になっている。Shaker and Malthhouse(2007)は企業と顧客の間の対話や交流の増

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウエブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

“Does Size Matter? An Examination of Small and Large Web-Based Brand Communities”(Journal of Interactive Marketing 24(1), 2010, pp. 14-21)

Daniele Scarpi

 我々はブランドコミュニティーへの帰属意識とブランド感情、コミュニティーロイヤリティー、ブランドロイヤリティー、ブランドエヴァンゲリズム、そしてコミュニティーエヴァンゲリズム間における因果関係について調査を行った。小規模のウエブベースのブランドコミュニティーと大規模のそれを比較しながら、サイズが関係性の調整要因の役割を果たすと見做して分析した。小規模コミュニティーは大規模コミュニティー運営と多くの点で異なる働きをしており、特定の強さと弱さを持っているという結果が得られた。小規模コミュニティーのメンバーはより強いコミュニティーロイヤリティーを展開させている。つまり、小規模コミュニティーのブランドロイヤリティーはブランド感情よりもコミュニティーロイヤリティーに起因するものだということである。また。小規模コミュニティーはブランドに関する口コミよりもコミュニティーに関する口コミに深く関与している。

訳 ─── 小松 聰子オリンパスイメージング株式会社

─  ─42

加、とりわけウエブ上で形成されたネットワークで相互交流している消費者のグループ間での増

加傾向を指摘している。(Dellarocas, Zhang, and Awad 2007; Mayzlin 2006; McWilliam 200; Sun

et al. 2006; Winer 2009)。

目的と構造

 我々はコミュニティー帰属意識、コミュニティーロイヤリティー、ブランド感情、ブランドロ

イヤリティー、そして口コミの関係性について構造方程式モデルを使用して検討を行った。デー

タは小規模コミュニティーと大規模コミュニティーから収集し、コミュニティーサイズの違いに

基づいて関係性の相違を調べた。目的は、コミュニティーのサイズが果たす役割に関連する仮説

的因果関係と、小規模ブランドコミュニティー研究に貢献するような仮説的因果関係を供与する

ことである。ゆえに我々はオンラインとオフラインのブランドコミュニティーに関連する研究や

(Dholakia, Bagozzi, and Koening 2002; Muniz and O’Guinn 2001)、消費のネオ・トライバリズム

(新部族主義)とサブカルチャーに関連する研究や(Cova 1997; Schouten and McAlexander

1995)、スモールワールド・ネットワーク理論に関する研究を参考にするなど、多様な理論的観

点を利用する。(Dorogovtsev and mendes 2003; Uzzi, Amaral, and Reed-Tsochas 2007; Watts

and Strogatz 1998)。

理論的ベースと仮説

 消費のサブカルチャーとブランドコミュニティーの研究はブランドコミュニティーへの帰属意

識の役割に集中している(Algeshiimer, Dholakia, and Herrmann 2005; McAlexander, Schouten,

and Koening 2002; Muniz and O’Guinn 2001; Schouten and McAlexander 1995)。他分野の研究

でも組織化行動において帰属意識がプラスの影響を与えると提示されている(Bhattacharya and

Elsbach 2002; Bhattacharya, Rao, and Glynn 1995; Bhattacharya and Sen2003; Dutton, Duk-

erich, and Harquail 1994; Mael and Ashforth 1992)。帰属意識とは、あるグループ分類に所属し

ているという知覚である(Mael and Ashforth 1992, p. 104)。

 顧客との関係性の結びつきの促進要因の定義に於いて、関係性マーケティングの研究ではブラ

ンド感情が中心的役割を果たしているとされている(Chaudhui and Holbrook 2001など)、加え

て、ブランドコミュニティーの調査ではコミュニティー帰属意識とブランドロイヤリティーの間

にプラスの関係性があると指摘されている(Bagozzi and Dholakia 2002; Bhattacharya and Sen

2003; Dholakia, Bagozzi, and Klein 2004; McAlexander, Kim, and Roberts 2003)。ブランドコミュ

ニティーのメンバーはお互いのことを知っているという感情を共有しているが(Bender 1978;

Cova 1997; Muniz and O’Guinn 2001)、その関係性は1つではなく、ブランドに対して、ブラン

ドユーザーに対して、そして非ブランドユーザーに対しての意識は異なっている。ある研究では

それゆえにコミュニティーに傾倒しているメンバーは、ブランド自体にもロイヤリティーを維持

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウェブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

─  ─43

しつづけると主張している。ブランドをスイッチすることは、コミュニティの他メンバーとの関

係を損なうことにもなる、よって消費者間の相互作用はブランドロイヤリティーの分析に含まれ

る必要がある。(Holt 1995, 2002)。ブランドコミュニティーへの経営的関心は、ブランド消費や

共有された経験によって構築された社会的結びつきは将来的にそのブランドを購買することやブ

ランドへのロイヤリティーに影響を与え得るという考えから生じている。Chaudhui and Hol-

brook(2001)によれば、ロイヤリティーは態度に関するものであり、また、行動に関するもの

である。本稿では、行動面でのロイヤリティーを中心にして、その表出として1つはブランドの

継続購買を、もう1つはポジティブな口コミ行動について分析する。

 Ellemerts, Kortekaas, and Ouwerkerk(1999)がグループ内の偏愛が感情的コミットメントと

関係しているということを指摘している。ブランドコミュニティー帰属意識はコミュニティーに

対する口コミに関係している(Arnett, German, and Hunt 2003)。概して、ブランドに関する口

コミは顧客との関係性におけるロイヤリティーの展開に影響している(Bettencourt 1997;

Reichheld 2003; Wangenheim and Bayón 2004; White and Schneider 2000など)。直近の研究

(Brown, Broderick, and Lee 2007; Henning-Thyrau et al. 2004; Keller and Berrt 2003)ではコ

ミュニティーに対するロイヤリティーはコミュニティーへの口コミとプラスの関係性があるであ

ろうとされている。前述の文献に基づいて、我々は以下のモデルを展開し、図1に提示した変数

間の関係性はすべてプラスの関係であるという予測をした。

 このモデルを使って、小規模と大規模コミュニティーにおける同じ関係性を比較することで、

サイズの役割を分析する。

 大規模コミュニティーにおいては、個々人は自分自身を所属グループ全体と共鳴させる傾向が

高く、特定の個人と関係を結んではいない。そして、ブランドそれ自体がグループ活動の動機要

因であることが実証的に示されている(Dholakia, Bagozzi, and Klein 2004)。これに反して、小

図1 概念モデル

ブランドロイヤリティー

ブランドエヴァンゲリズム

コミュニティーエヴァンゲリズム

ブランド感情

コミュニティーロイヤリティー

コミュニティー帰属意識

─  ─44

規模コミュニティーは、友人の集まりに近く、商業的というよりは社交的側面が強いといえる

(Ashforth and Jonson 2001; Bagozzi and Dholakia 2006; Hogg and Turner 1985)。

 もし小規模コミュニティーが友人同士のグループのようなオペレーションによって動かされる

のであれば、グループメンバーはよりグループ内に対する偏愛の態度を示し得るだろうし、グ

ループ内接触は愛着と所属感情に対してより強固な結びつきたり得る(Frijda, Kuipers, and Ter

Shure 1989)。

 これらのことから、我々は以下の仮説を立てた。

仮説1. コミュニティー帰属意識とコミュニティーロイヤリティーの関係性は大規模コミュニ

ティーよりも小規模コミュニティーで強化される。

仮説2. ブランドコミュニティー帰属意識とブランド感情の関係性は大規模コミュニティーより

も小規模コミュニティーで強化される。

 同時に、もしも小規模コミュニティーが商業的側面に対して関心が低いなら、ブランド感情と

ブランドロイヤリティー間の関係性が小規模コミュニティーに於いてより弱いものになるといえ

る。小規模コミュニティーのブランドに対するロイヤリティーはグループの仲間に対するロイヤ

リティー、つまり商業的な意味合いではなく社会的な因果関係に起因するものである。

 これらのことから、

仮説3. ブランド感情とブランドロイヤリティー間の関係性は大規模コミュニティーよりも小規

模コミュニティーで強化される。

仮説4. コミュニティーロイヤリティーとブランドロイヤリティー間の関係性は大規模コミュニ

ティーよりも小規模コミュニティーで強化される。

 口コミにはグループメンバーに対するもの、あるいはブランド自体に対するものがある。それ

はブランドに対する感情に起因し、またコミュニティーに対するロイヤリティーに起因する。

我々は全体として、ブランド感情がブランドコミュニティーに対する口コミよりもブランドの口

コミに影響を与えるだろうと予測を立てた。そして対照的に、コミュニティーロイヤリティーは

ブランドに対する口コミよりもコミュニティーへの口コミに影響を与えるだろうとも予測を立て

た。我々は小規模コミュニティーに於いて、エヴァンゲリズムが主にグループ内の個々人に対す

るロイヤリティーの知覚に起因するものであり、それはブランドよりもグループの仲間に向けら

れるものであると予測した。他方では、大規模コミュニティーに於いて、メンバー間の関係性が

より商業的であり、エヴァンゲリズムはコミュニティーロイヤリティーに比較してブランド感情

に起因すると予測し(Ashforth, and Johnson 2001; Bagozzi and Dhlakia 2006)、大規模コミュニ

ティーのエヴァンゲリズムはグループに対してというよりもブランドに対して向けられていると

予測した。従って、我々は以下の仮説を展開させた。

仮説5a. ブランド感情はコミュニティーエヴァンゲリズムに比べてブランドエヴァンゲリズム

に影響を与える。

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウェブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

─  ─45

仮説5b. コミュニティーロイヤリティーはブランドエヴァンゲリズムよりもコミュニティーエ

ヴァンゲリズムに影響を与える。

仮説6. コミュニティーエヴァンゲリズムとコミュニティーロイヤリティー間の関係性は大規模

コミュニティーよりも小規模コミュニティーで強化される。

仮説7. ブランドエヴァンゲリズムとブランド感情間の関係性は小規模コミュニティーよりも大

規模コミュニティーで強化される。

調査手法

セッティング

 調査はバラ愛好家のインターネット上のブランドコミュニティーに於いて行われた。植物とい

う文脈の上でブランドが語られるというのは普遍的で無いと思われるかもしれないが、近代のバ

ラや新種の交配種に関してはブランドがあり(しばしパテントもある)、それは洋服や車のブラ

ンドと同じである。

データ収集

 データはコミュニティーのメンバーにオンライン上で回答者を募って収集された。マイクロソ

フト社の MIRC を使用してランダムにメンバーに対して質問票を送った。質問票は(1)国立大

学による広告目的ではない調査であり、(2)匿名のデータとして収集され、第三者に売買される

ことが無いということが最初に掲げられた。この手法によって、750の回答者から回答を得られ

た(68%が女性であり、平均値と中央値は35歳である)。60%の回答が3つのウエブ上の大規模

ブランドコミュニティーに所属する者から得られた(それぞれ1000名以上で構成され、コミュニ

ティーとしては最大規模のものである)。40%の回答が5つの小規模コミュニティーに所属する

者から得られた(それぞれ100名以下で構成され、コミュニティーとしては最小規模のものであ

る)。回答率は高く、平均して75%だった。

測定尺度とモデルの評価

 我々はすでに確立されている尺度を分析に適用した。口コミ行動の研究については File, Judd,

and Prince(1992)と Frenzen and Nakamoto(1993)、コミュニティーロイヤリティーについ

ては Brewer and Brown(1998)、ブランドコミュニティー帰属意識としては Bergami and

Bagozzi(2000)、ブランド効果については Aaker(1996)と、Chaudhuri and Holbrook(2001)

を適用した。

 バリマックス回転、クローンバック α、項目間相関係数、そして項目が削除された場合の αを

使用した因子分析を行って18項目の因子が選出できた(因子負荷量 > .6; α > .75; Nunnally

1967)。バリマックス回転を使用した検証的因子分析では予測していた因子に対して高負荷が示

─  ─46

された(因子負荷量 > .45; 固有値 > .1)。因子間の相関関係は高くなかったので、因子同士が概

念的に重複していると考えられた(< .65)。

 相関関係を1に固定したモデル予測は、非拘束モデルと比較して適合度が明らかに低くなっ

た。(χ二乗検定で p < .01)。よって、弁別的妥当性が証明された(Anderson and Gerbing

1988; Bagozzi, Yi, and Phillips 1991; Jöreskog and Sörbrom 2003)。

 データは尺度得点である。よって、多分相関マトリックスを使用して構造方程式モデルが構築

され、係数予測には加重最小二乗法が採用された。

 調整効果は一般的に LISREL モデルによって多母集団比較メソッドを使ってテストされる

(Jöreskog and Sörbrom 2003)。調整変数は一般的にカテゴリー変数であり、さらにそれ以上に

2値変数であることが非常に多い(Iacobucci 2008)。今研究の目的上、サンプルは2つのサブグ

ループに分かれている。大規模コミュニティーのメンバー(60%)と、小規模コミュニティーの

メンバー(40%)である。データは多母集団分析にかけられ、最初に制約なしモデルを、ついで

制約つきモデルでテストされ、χ二乗差異検定によって、各モデルや各パスの差が有意かどうか

決められた。

 媒介変数としてのブランド感情とコミュニティーロイヤリティーに関しては、媒介変数を通し

ての直接的ないしは間接的効果がどのくらいの範囲なのかを見極めるかが問題だった。これらの

変数の関係性の有意性と規模は Jöreskog and Sörbrom(2003)、Iacobucci(2008)の研究に従っ

て探求された。

結果と議論

 RMSEA、AGFI と GFI, NNFI を使用してモデルの適合度の評価を行った。加えて、NFI と

CFI を用いた。図2で、小規模コミュニティーに対するパス係数は太字、大規模コミュニティー

のそれは下線で示している。有意でないパスは省略した。有意なパスについては LISREL を使

用して t 検定を行っている(t 値が絶対値1.96以上であれば有意なものとして判断する;

Jöreskog, and Sörbrom 2003)。

 今回のモデルではブランド感情とコミュニティーロイヤリティーが媒介変数としての役目を果

たしていると提案したい。この2項目の媒介としての役割は LISREL を使用して検証され、そ

れは Jöreskog and Sörbrom(2003)、Iacobucci(2008)の研究と同一である。コミュニティー帰

属意識からブランド感情へのパス、ついでブランド感情からブランドロイヤリティーへの関係性

における媒介効果は有意である。一方で、直接のリンクは有意ではなかった(γlarge = .11; γsmall =

.09, p > .05)。すなわち、帰属意識はブランド感情に対してプラスの効果があった(γlarge = .50;

γsmall = .54, p < .05)。また、ブランド感情はブランドロイヤリティーに対してプラスの効果があっ

た(βlarge = .42; βsmall = .80, p < .05)。加えて、ブランド感情の媒介経路を削除することは χ二乗

検定値に変化をもたらし、結果として、コミュニティー帰属意識-ブランドロイヤリティー間の

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウェブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

─  ─47

関係におけるブランド感情の媒介効果は支持された。

 同様に、帰属意識-エヴァンゲリズム間のリンクにおけるブランド感情の媒介効果は支持され

た。このリンクは、ブランドエヴァンゲリズムにおけるブランド感情効果がプラスの効果を持ち、

有意性があり(βlarge = .78; βsmall = .82, p < .05)、直接のリンクは有意ではなく(γlarge = .07; γsmall

= .06, p > .05)、ブランド感情による媒介経路を削除することは χ二乗値の変化を生じた(p <

.01)。

 同じく、コミュニティー帰属意識とブランドロイヤリティー間の関係性におけるコミニュケー

ションロイヤリティーの媒介をテストし、コミュニティー帰属意識からコミュニティーロイヤリ

ティーへのパスが有意でありプラスの関係性にあるということを指摘しておく(γlarge = .62; γsmall

= .30, p < .05)。コミュニティーロイヤリティーからブランドロイヤリティーへのパスもまた有

意でありプラスの関係性がある(βlarge = .77; βsmall = .33, p < .05)。加えて、媒介経路の除外は χ

図2 小規模コミュニティーと大規模コミュニティーのパス

ブランドロイヤリティー

ブランドエヴァンゲリズム

コミュニティーエヴァンゲリズム

ブランド感情

コミュニティーロイヤリティー

コミュニティー帰属意識

0.500.54

0.620.30

0.420.80

0.840.53

0.780.82

0.770.33

0.280.25

(GFI.97;AGFI.96=;NFI≧.9NNFI≧.9CFI.96;RMSEA.07).

表1 小規模コミュニティーと大規模コミュニティーのパス

小規模コミュニティー

大規模コミュニティー 有意差

帰属意識→愛情 .50 .54 >.05

帰属意識→コミュニティーロイヤリティー .62 .30 <.05

ブランド感情→ブランドロイヤリティー .42 .80 <.05

ブランド感情→ブランド口コミ .78 .82 >.05

コミュニティーロイヤリティー→ブランドロイヤリティー .77 .33 <.05

コミュニティーロイヤリティー→ブランド口コミ .28 .25 >.05

コミュニティーロイヤリティー→コミュニティー口コミ .84 .53 <.05

─  ─48

二乗値の有意(p < .01)な変化を生じさせた。類似の考察はブランドエヴァンゲリズムへの媒

介経路に対しても合致した(βlarge = .28; βsmall = .25, p < .05)、コミュニティーエヴァンゲリズム

についても(βlarge = .84; βsmall = .53, p < .05)同様であり、媒介経路除外テストでも同様の結果が

得られ、媒介効果が支持された。

 表1にモデルのパス係数を提示する。

 帰属意識からコミュニティーロイヤリティーへのパス、ブランド感情からブランドロイヤリ

ティーへのパス、コミュニティーロイヤリティーからブランドロイヤリティーへのパス、コミュ

ニティーロイヤリティーからコミュニティー、そしてそこから口コミへのパスが提示されてい

て、それらはコミュニティーサイズによって変わっている。その代わりに、帰属意識から感情、

ブランド感情からブランドの口コミ、コミュニティーロイヤリティーからブランドの口コミ、コ

ミュニティーロイヤリティーからブランドの口コミへのパスはサイズによって変化が無かった。

小規模コミュニティーは大規模コミュニティーとは異なった強さ、異なった関係性を示し、大規

模コミュニティーと同じように捉えたりマネジメントしたりしてはいけないということが提示さ

れたのである。(図2)。

 さらに重要なことに、表1でコミュニティー帰属意識とコミュニティーロイヤリティー間の関

係性は大規模コミュニティーに比べてより強固であると見做し得る。仮説1に於いて、コミュニ

ティーロイヤリティーは小規模コミュニティーでも大規模コミュニティーでも存在するが、小規

模コミュニティーにおける帰属意識は大規模コミュニティーと比べてグループに対するより強力

なロイヤリティー構築可能性が高い。他方では、コミュニティーサイズは帰属意識とブランド感

情の調整要因ではないということである(ゆえに仮説2は却下)。2つの構成概念の関係性は小

規模コミュニティーにとっても大規模コミュニティーにとっても同等に高く、有意である。

 表1はさらに、小規模コミュニティーに於いてコミュニティーロイヤリティーとブランドロイ

ヤリティーの結びつきはより強固なものであるのに対して、大規模コミュニティーに於いてブラ

ンド感情とブランドロイヤリティー間の関係性が、小規模コミュニティーよりも強固な結びつき

があるということを強調している。ロイヤリティーに対するドライバーは小規模コミュニティー

と大規模コミュニティーで異なっている。つまり、小規模コミュニティーではロイヤリティーは

グループに向かうが、大規模コミュニティーではブランドに対する愛情に向かうのである。それ

ゆえ、サイズはブランドロイヤリティーに対するインパクトに関する調整要因としての役割を果

たすのである。これは重要な鍵となる発見である。なぜなら、経営上関心のある結果(たとえば

ロイヤリティ)が、コミュニティーサイズによって異なる要因によってもたらされているという

事実が明らかにされたからである。

 最後に、ブランドに対する口コミとコミュニティーに対する口コミの分別をした。ブランドコ

ミュニティーメンバーはブランドに対する口コミに加わっており、また彼らの所属するコミュニ

ティーに対する口コミにも加わっている。仮説5aと仮説5bに提示したように、ブランドエヴァ

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウェブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

─  ─49

ンゲリズムはブランド感情によって引き起こされ、コミュニティーエヴァンゲリズムはコミュニ

ティーロイヤリティーによって引き起こされるということが発見された。ここでもサイズはこう

いった関係性を強化する調整要因となっている。小規模コミュニティーでは、コミュニティーエ

ヴァンゲリズムにおけるコミュニティーロイヤリティーのインパクトは大規模コミュニティーの

それに比べてより強力である。加えて、小規模コミュニティーのメンバーはグループへの高い帰

属意識を深める傾向が高いだけでなく、大規模コミュニティーに比べてより間断なくグループへ

の口コミが行われているのである。(大規模コミュニティーも小規模コミュニティーも同じこと

が行われていてパスも有意性が高いが、小規模コミュニティーのほうがよりさかんである。仮説

6を支持。)

 代わって、ブランド感情とブランドエヴァンゲリズムの関係性の強さに関しては小規模コミュ

ニティーも大規模コミュニティーも同等であった(仮説7は棄却)。ブランドコミュニティー帰

属意識からブランド感情へのパス、ブランド感情からブランドエヴァンゲリズムへのパス、これ

らはコミュニティーのサイズに左右されることは無かった。小規模コミュニティーは自身をブラ

ンドよりもグループと結び付けているという先行研究における主張と示唆は、よって、今回の発

見に基づいて再度注意深く検証する必要がある。他方では、我々は小規模ブランドコミュニ

ティーに於いて生じるロイヤリティーがブランド感情よりもグループロイヤリティーに起因して

いるということを発見し、実際、小規模コミュニティーのメンバーは大規模コミュニティーのメ

ンバーに比べてより高いロイヤリティーを展開しているということが分かった。また、さらに

我々の知見として、小規模コミュニティーの商業的性格が弱いと主張するのは難しいということ

を提示したい。大規模コミュニティーでの帰属意識のブランド感情とブランドエヴァンゲリズム

に対するインパクトと比較して有意な差異は認められなかった上に、小規模コミュニティーでは

コミュニティーに対する口コミは大規模コミュニティーよりも勝っているようにみられる。

 今回の研究結果は、(1)小規模コミュニティーと大規模コミュニティーの働きは大きく異なっ

ていて、サイズはロイヤリティーと口コミに於いての帰属意識の効果を理解するための鍵とな

る。(2)小規模コミュニティの帰属意識は、コミュニティーに対するより強固なロイヤリティー

を構築する。(3)ブランド感情は大規模コミュニティーに於いてブランドロイヤリティーの非常

に強固な先行条件である。対して、小規模コミュニティーのブランドに対するロイヤリティーは

コミュニティーに対するロイヤリティーがより強い起因要因となっている。(4)小規模コミュニ

ティーの帰属意識は大規模コミュニティーに比べてコミュニティーに対する口コミをより多く生

ずる、しかしながら、ブランドに対する口コミも生じる。

 ゆえに小規模コミュニティーと大規模コミュニティーでは異なった様式でマーケティング手法

を検討すべきである。小規模コミュニティーは全く異なるコミュニティーであり、特別な関係と

独特の強さを持っている。

─  ─50

研究の限界と今後

 今回の分析ではブランドコミュニティー間の関係性の有意な媒介としてサイズが提示された。

定量的なアプローチを使用し、構造方程式モデルを展開しいくつかのキーとなる変数を検討し

た。

 更なる研究としては、結果をより一般化できるよう、例えば特徴が異なった産業間での違いな

ど(もっとも、Jang, Ko, and Koh(2007)の直近の研究によると、そういった違いは予測して

いたほど有意なものではなかった)、広い範囲でのオンラインコミュニティー研究を行っていく

べきであろう。

 また、コミュニティーの発展をコントロールできるのかどうかというのも研究されるべき課題

であろう。マネジメントとして望ましくないコミュニティーサイズにならないように小規模コ

ミュニティーを小規模のままに据え置くようなことである。これは経営的な観点からのインプリ

ケーションである。

 最後に、今後のウエブベースのブランドコミュニティーの時系列データの収集と分析を大いに

歓迎する次第である。

規模による違いがあるのか?小規模/大規模のウェブブランドコミュニティ(ブランドコミュニティ・サイト)の検定

─  ─51

訳者コメント

 本稿ではオンライン上で形成されるブランドコミュニティーについて論じられている。コミュ

ニティーのサイズ(規模)に着目し、サイズがコミュニティー運営上の重要な媒介であることを

指摘している。ブランドを持つ企業にとって、この研究結果は非常に有用であり、自社のブラン

ドコミュニティーがどのような性質のものなのかを見極めなければ適切なコミュニティー運用が

できないという重要な示唆である。

 しかし、インターネットコンテンツの著しい発展の中で実態に追いついていかないということ

が考えられる。一例として、オンライン上のコミュニティーの成立要件がオフラインと大きくか

け離れていく可能性が考えられる。2011年現在、対顧客マーケティング手法としてツイッターに

注目が集まっている。ツイッターはご存知の通り、個々のアカウント(アカウントの管理者は個

人であり、また企業であり、企業以外のグループでもある)から発せられる非常に短いメッセー

ジ(ツイート)によるコミュニティーサイトである。あるブランド A のフォロワー(ツイート

をチェックしているメンバー)というのはこのブランド A のコミュニティー成員と見做すこと

ができるのであろうか、また、フォローをしていなくてもブランド A のツイートをリツイート

(自分のアカウント上でそのメッセージを転送公開すること)しているメンバーはコミュニ

ティーメンバーかそうでないのかは非常に曖昧である。このように、オンラインでコミュニ

ティー形成が可能になったことで、コミュニティー成立とは何かという定義から考え直す必要が

あるのではないか。著者の指摘している地理的制約からの開放などの他にも様々に(オフライン

と)異なる構造や境界を持ったコミュニティーが発生する可能性を示している。

 このように、オンラインコミュニティー研究は非常に興味深いフェーズに直面していると言え

るだろう。

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

─  ─53

 インターネット広告は飛躍的に成長を遂げたが、その大半は未だに一方向のモノローグであ

る。インターネットによって相互作用の機会を得たにも関わらず、広告主自身の「語りかけ」と、

消費者の発した声の「聞き取り」の割合は、50対1であるという。この原因は、広告主が相互作

用性概念の多面的な構造を全く理解しておらず、特性を生かせていないことにある。

 相互作用性に関する先行研究には4つの問題点がある。第1に、定義の比較可能性と一般化可

能性の欠如である。先行研究では特定の技術に根ざした相互作用性を概念化する傾向にあり、全

ての相互作用的な状況に対して一般化することが困難であると考える。第2に、相互作用性を導

くファセットが概念的な合理性がないままに導入されてきたことである。特に、先行研究におい

て重要なファセットとして扱われる「情報のコントロール」は、相互作用性とそのファセットと

は概念的に異なることを、本研究では主張する。第3に、非言語情報に関する検討が不足してい

ることである。近年、コミュニケーション研究では非言語情報を検討することが求められている。

本研究ではインタラクティブ・コミュニケーションの理解を促すこのアプローチを採用する。第

4に、広告、コミュニケーション、情報システム、マーケティング、教育心理学等の各領域にお

いて相互作用性に関する研究蓄積があるものの、各々が独立していたことである。本研究では各

領域からの知見を検討する。

背 景

 「相互作用性」の意味はそれに言及する人や文脈で変わる。例えば、技術者は技術的観点から

定義するが、広告主は「コミュニケーションプロセスに付加価値を与えるために」どのように技

術が使用できるかに関心を持つ。従って、コミュニケーションプロセスにおける相互作用性の構

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

“Interactivity and Its Facets Revisited: The-ory and Empirical Test”(Journal of Advertising, 35(4), 2006, pp. 35-52)

Grace J. JohnsonGordon C. Bruner IIAnand Kumar

 先行研究には大きな問題点がある。それらの問題を解決するため、レビューに基づき相互作用性の4つのファセット(facet)を提示し検証した。その結果、「応答性」(responsiveness)、「非言語情報」(nonverbal information)、「応答速度」(speed of response)が、知覚相互作用性(perceived interactivity)に影響することが分かった。特筆すべきは、2次のフォーマティブ(formative)な構成概念としての相互作用性モデルが支持されたことである。

訳 ─── 松本 大吾千葉商科大学サービス創造学部専任講師

─  ─54

成要素の理解や、これらの構成要素を操作する方法を必要とする。

 だからこそ、あらゆる状況や技術に適用可能な相互作用性の定義が必要である。相互作用性を

概念化するには文脈やアプリケーションを超える必要がある。フェイス・トゥ・フェイスの会話

における相互作用性はずっと前から存在した。特定技術という狭いレンズを通して相互作用性を

見ていると、異なる文脈の相互作用性を比較可能とする基礎を提供できない。

 先行研究では、これまで「双方向コミュニケーション」「シンクロニシティ」「情報のコントロー

ル」といった次元が提案されてきたが、それらが相互作用性の一部である理由を理論に基づき説

明する研究はほとんどない。その証拠として情報のコントロールを取り上げる。この概念を扱う

者の多くがSteuer(1992)を参照しているが、その文脈はバーチャルリアリティー(VR)であり、

媒介された相互作用性(mediated interactivity)であることが明らかである。彼の相互作用性に

関する定義は次の通りである。「メディアのユーザーがフォーム、あるいは媒介された環境のコ

ンテンツに影響を与えることができる程度(すなわち、コントロールの行使)」。これは、VRシ

ステムには適用可能だが、必ずしも全ての種類の相互作用性に適用できるものではない。

 本研究では、一般的な人間の社会経験(「行動的相互作用性」、Burgoon et al. 2002)を用いて

理論的に相互作用性の基準を探る。そのような一般的な相互作用性の概念化は、技術によって媒

介された相互作用性とともに、媒介されないフェイス・トゥ・フェイスの相互作用性を説明する

ことができるだろう(図1)。また、媒介の有無に関わらず、人による相互作用性の知覚も説明

することができるだろう。この基準を用いて、我々は「レシプロシティ」、「応答性」、「非言語情

報」、「応答速度」が相互作用性の要因となるファセットであることを主張する。一方、「情報の

コントロール」は異なる概念であることを主張する。

図1:一般的な相互作用性の概念化

媒介されない(行動的な)相互作用性

相互作用性の知覚

媒介された(技術ベースの)相互作用性

一般的な相互作用性の概念化

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

─  ─55

先行研究のレビュー

 「相互作用性」として最初に想起することは、送り手と受け手の間での情報の双方向の流れだ

ろう。これは「フィードバック」概念に類似しているようだが、それは一般的に送り手に対する

受け手の反応を意味する。従って、「フィードバック」と「相互作用性」は基本的に同じなのか

を考える必要がある。

 Fiske(1990)はフィードバックをチャネルの「入手可能性」と「アクセス」という2側面か

ら見る。「入手可能性」はコミュニケーションにおけるチャネルの多様性の程度を意味する(例

えば、テレビは言語的〔文字と音声〕であると同時に非言語的〔映像〕チャネルだ)。「アクセス」

は全ての参加者がこれらのチャネルを使用できるかどうかの程度を意味する(例えば、テレビの

視聴者は同じチャネルを通じて送り手に反応する機会が非常に限られる。)相互作用性もこうし

た特徴を含んでいるだろうか。

 知覚相互作用性に影響する変数を明確化するため、これまでの相互作用性の定義をレビューし

た。まず「相互作用性」の語源である「相互作用」について互恵的(reciprocal)あるいは相互

的(mutual)な行為に言及する社会学の行動的相互作用理論から調べた(Goffman 1967)。

 相互行為はコミュニケーションの交換に参加する2者に言及する(フィードバックの「アクセ

ス」面)。しかし、知覚の観点から見ると問題はより複雑である。コミュニケーションの交換に

は2つの異なる構成要素がある。

 交換における1つめのレベルは、2者によるメッセージの単純な送受信である。先行研究では

「レシプロシティ」「参加」「相互行為(mutual action)」「行為-反応(action-reaction)」「双方

向コミュニケーション」と名付けられている。インターネットにおける例としては、検索サイト

でキーボードやマウスで入力するとサイトが反応し検索結果が現れる、といったことが挙げられ

る。「行為」に続いて「反応」がある(Rafaeli 1988)。

 交換におけるもう1つのレベルは、反応はメッセージ内容に関連するということである。これ

は「応答の関連性(response contingency)」「相互性(mutuality)」「応答性(responsiveness)」

「フィードバック」「相互会話(mutual discourse)」として言及されている。メッセージは、そ

れが適切で関連があり相互作用の連続性を維持する場合、非常に応答性が高いものとして知覚さ

れる。これは、インタラクティブ・コミュニケーションにおける「応答性」と名付けられるだろ

う。例えば、自然言語による検索エンジンは、しばしば高い関連性のある検索結果を生成し、応

答性の知覚を高めている。

 以上から、「レシプロシティ」と「応答性」はそれぞれ相互作用性のファセットの1つと言え

るだろう。以下では、これら2つの相互作用性のファセットに加え、他の2つについてもレビュー

し、相互作用性とフィードバックを比較していく。

─  ─56

ファセットその1:レシプロシティ

 レシプロシティは相互作用性研究で広く知られ、同様の概念に言及する様々な用語が使われて

きた。「ダイアログ」「参加」「反復」「双方向コミュニケーション」「行為と反応」「返答」等は、

このレシプロシティのファセットに言及しており、消費者が企業との会話に参加する機会を持つ

ことを意味する。この考えはインタラクティブ・コミュニケーション(送り手が交代してメッ

セージを伝達すること)と、取引的コミュニケーション(送り手が同時にメッセージを伝達する

こと)の違いを明確にしている。

ファセットその2:応答性

 複数の定義で「応答性」を相互作用性の構成要素としている。応答性に乏しい(すなわち、関

連性や適切性の低い)コミュニケーションは、もう一方のニーズを満たせず、持続することが難

しい。インタラクティブ・コミュニケーションにおいて参加者は高い応答性を期待する。応答性

が高いコミュニケーションは、適切で関連性があり、相互作用の継続性を維持する。フィードバッ

ク概念にはこの側面は含まれていない。

ファセットその3:応答速度

 シンクロニシティ、あるいは応答速度は、メッセージ交換のリアルタイム性の程度を意味し、

多くの研究者が相互作用性のファセットだと考えている。遅れが最小限の応答は相互作用の継続

性に貢献する。一方、応答が遅いとコミュニケーションの流れが妨げられる。これは教育技術に

関する先行研究でも支持されている。従って応答速度が相互作用性に関連していることは、ある

程度のコンセンサスと理論的根拠があると言える。やはり、フィードバックにはこうした側面が

含まれていない。

ファセットその4:非言語情報

 近年、コミュニケーションにおける非言語情報に関する研究が増えている。これは Fiske

(1990)のフィードバック概念の「入手可能性」側面と一致しており、コミュニケーションに使

用されるチャネルの程度を表している。より多くのチャネルが使用されればフィードバックはよ

り豊かになる。しかし、この考えは相互作用性の研究に反映されてこなかった。

 それでは非言語情報とは何か。いかなるコミュニケーションも1つのチャネルだけでメッセー

ジを送ることはない。人が話すとき言語的側面は基本的なメッセージを構成する。ジェスチャー、

表情、声のトーンや早さ、抑揚、大きさ等の非言語的側面は、言語的側面に付随し、会話をより

豊かにし、意味を付加する。この多様なチャネル状況は印刷物によるコミュニケーションでも存

在する。メッセージは、印刷広告における言語的要素だけではなく、写真、文字の大きさや種類

といったパラ言語、ページにおける位置、イメージとの関連性、句読点等の非言語的要素からも

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

─  ─57

伝達される。

 教育心理学におけるマルチメディア研究と同様に、本研究でもインターネットにおける非言語

情報を議論するとき、画像、動画、音楽、音声、パラ言語に言及する。従って、以下の2点に結

論づけられる。第1に、非言語情報はその他のファセットと区別して検討する必要がある。第2

に、非言語情報が豊富なコミュニケーションは知覚相互作用性が高い。

 今節では理論的立場と先行研究から、相互作用性の知覚を促す多くの変数を明らかにした。こ

こで記述した4つのファセットを持つ相互作用性は、2つの側面を持つフィードバックよりも豊

かで複雑な概念であることが明らかになった。

相互作用性とその諸側面の理解

 以上のレビューから行動的相互作用性を基盤とし複数のファセットを持つ概念として相互作用

性を定義する。

「相互作用性とは、コミュニケーション・エピソードに関わる行為者が、当該コミュニケーショ

ンのレシプロシティ、応答性、応答速度、そして非言語情報の使用による特徴付けを知覚する程

度である。」

 知覚相互作用性を構成する4つのファセットは以下の通りである。

1 .レシプロシティ:コミュニケーションが互恵的である、あるいは相互の行為が可能であると

知覚される程度

2 .応答性:コミュニケーションにおける応答が適切で関連性があり、相互作用のエピソードや

イベントにおける情報の必要性を解決すると知覚される程度

3 .応答速度:コミュニケーション・イベントへの応答が迅速であり、遅滞がないと知覚される

程度

4 .非言語情報:コミュニケーションが非言語情報(情報を伝達するための複数チャネルの使用)

によって特徴づけられていると知覚される程度

 この定義は、コミュニケーションにおける媒介の有無に関わらず全ての状況に適用できるだろ

う。この定義が全ての「相互作用的」な技術に適用可能であることを示すため、我々は企業ウェ

ブサイトを考える。

 ウェブサイトがユーザーに行為する機会を提供する特徴(リンク、クリック可能なボタン等)

を多く備えるとき、レシプロシティが高いと知覚されるだろう。ウェブサイトがユーザーの行為

に対して関連性が高く適切な応答をするとき、応答性が高いと知覚されるだろう。ウェブサイト

が多くの非言語情報(写真、画像、音声、動画等)を持つとき、非言語情報が高いと知覚される

だろう。ウェブサイトがユーザーの行為に対してすぐに反応するとき、スピーディーだと知覚さ

─  ─58

れるだろう。

 行動的相互作用性の例のように、友人2人で行われる生き生きとしたフェイス・トゥ・フェイ

スの会話は、レシプロシティ(各自の発言は互いにとって互恵的である)、応答性(関連性の高

い応答だけが会話の継続を促す)、応答速度(瞬間的な応答である)、非言語情報のいずれにおい

ても(ジェスチャー、表情等がある)高いだろう。

 この他に相互作用性を構成するファセットはあるかもしれないが、本研究の狙いは「相互作用

的」という用語の意味を導くことにある。4つのファセットは知覚相互作用性を互いに促進し合

うだろうが、それを探索することは今後の課題としたい。

 前述の定義の用語を明確にする。相互作用性は「コミュニケーション・エピソード」内で生じ

る。コミュニケーション・エピソードとは開始と終了という境界で区切られた、相互作用の出来

事を構成する「コミュニケーション・イベント」の集合である。コミュニケーション・イベント

は、行為者によるメッセージの伝達あるいは応答である。相互作用性は非常に低いものから非常

に高いものまで連続的に変化する。

 相互作用性の側面としてよくコントロールが言及されるが、いずれも媒介された相互作用性の

文脈である。コントロールは行動的相互作用性の本質的側面だろうか。

 フェイス・トゥ・フェイスの対話を持つ場合、相手の情報提供を操作可能である。例えば、客

は販売員に「もう一度お話し願いますか」等と言える。レシプロシティが低い、すなわち販売部

長がたとえば部下の販売員に参加機会を与えずスピーチする場合、受け手による情報操作はほと

んどできない。コントロールはレシプロシティによって促進される。またレシプロシティこそが

情報の流れをコントロールすることを可能とする。同様に、媒介されたコミュニケーション環境

では、ユーザーは媒体をコントロールするため、互恵的なコミュニケーションにアクセスしなけ

ればならない。

 コントロールは全ての相互作用的状況で生じるわけではない。媒介された相互作用的状況でも

コントロールできない場合がある。印刷物を読む場合、消費者にとってテレビよりコントロール

可能だが、テレビより「相互作用的」だとは言えない。

 我々の考えでは、コントロールを相互作用性と結びつけることはできない。その理由として、

第1に2つの概念が異なること、第2にコントロールの先行要因はレシプロシティであることが

挙げられる。コントロールは、概念的に異なるが、レシプロシティと高い相関関係にある。それ

がしばしば相互作用性の本質的側面と見られる理由である。

 最後に、相互作用性概念のフォーマティブな性質について言及する。フォーマティブな構成概

念とは、因果関係の方向性が観測変数から潜在変数へと向かうものである。本研究の場合、4つ

の1次因子(ファセット)が2次の構成概念である相互作用性の分散に影響する。言い換えると、

相互作用性の分散は、4つのファセットの変化に影響を受けるのであり、その逆ではない。例え

ば、非言語情報を多く含むメッセージは、そのメッセージが相互作用的であるという知覚を導く

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

─  ─59

のであり、相互作用性の知覚がメッセージの非言語情報の多さを導くのではない。従って、相互

作用性は4つのファセットによって形成される2次の潜在変数として表されるのである。これは

先行研究では言われていない考えである。

4つのファセットの検証

 図2は検証モデルである。前述の議論に基づき仮説を提示する。

仮説1: コミュニケーション・エピソードにおけるレシプロシティの程度と、エピソードの知覚

相互作用性には正の関係がある。

仮説2: コミュニケーション・エピソードにおける応答性の程度と、エピソードの知覚相互作用

性には正の関係がある。

仮説3: (使用される多様なチャネルが、同じ情報を伝達する、あるいは補完しているとして)

コミュニケーション・エピソードにおける非言語情報の程度と、エピソードの知覚相互

作用性には正の関係がある。

仮説4: コミュニケーション・エピソードにおける応答速度と、エピソードの知覚相互作用性に

は正の関係がある。

仮説5: 知覚相互作用性は、4つのファセットであるレシプロシティ、応答性、非言語情報、そ

して応答速度によって形成される2次の構成概念である。

 構成概念の妥当性の検証プロセスの1つとして法則的妥当性を検討すべきである。そのため知

覚相互作用性が理論的に関連するだろう別の構成概念との関係を仮定する。ウェブコミュニケー

ションにおいて知覚相互作用性と正の関係があると思われる構成概念はウェブサイトへの態度と

図2:検証モデル

レシプロシティ

応答性

知覚相互作用性

関 与

ウェブサイトへの態度

非言語的情報

応答速度

─  ─60

コミュニケーションへの関与である。相互作用的であると知覚されるほどウェブサイトは好まし

い評価を得るだろう。また、結果としてコミュニケーションへの関与も高まるだろう。広告、教

育心理学、コミュニケーション研究においてこれらの関係は確認されてきた。従って、この論理

に基づき以下の仮説を設定する。

仮説6: コミュニケーション・エピソードにおける知覚相互作用性と、ウェブサイトへの態度に

は正の関係がある。

仮説7: コミュニケーション・エピソードにおける知覚相互作用性と、コミュニケーションへの

関与には正の関係がある。

・方 法

 相互作用性の検証には、ある課題を達成するためにウェブサイトから情報を得るという文脈を

用いた。仮説を検証するため、コンピュータを使用した2(レシプロシティの高低)×2(応答

性の高低)×2(非言語情報の高低)×2(応答速度の高低)の被験者間実験を計画した。これ

に先立ち、各ファセットの高低を決定するために45名の被験者による予備調査を行った。

・刺激と被験者

 実験における統制を高めるために「The Wine Club」という架空のワイン販売サイトを作成し

た。また、架空のストーリーとして、同サイトを運営する会社が、若手専門家が興味を持つよう

なワインの種類を知ること、効果的なウェブサイトを設計するために彼らのインプットを引き出

すことを望んでいることにした。ワインは、被験者の事前知識がほとんどない製品として選択さ

れた(これは予備調査で確認された)。先行研究で事前知識の有無が結果に影響することが確認

されているためである。

 非言語情報の提示には、関連性が強く情報を補足するテキストとともにシンプルな画像と動画

を用いた。マルチメディア研究において、単にイラストの提示だけではテキスト情報の学習や想

起を促進しないことが分かっているためである。イラストはテキストで表された情報と関連させ

なければならない。さらに、ユーザーの注意をそらさないようシンプルにした。非言語情報が多

すぎると、認知的オーバーロードを起こし、目の前の課題を妨害する可能性があるからである。

 被験者には新卒の広告会社の社員を演じてもらい、同僚や上司を招くクリスマスパーティーを

主催する設定にした。被験者の課題は、3ブランドのワインを調べ、その後、パーティーで提供

するものを1つ選択することである。被験者は無作為に1から16の実験群に振り分けられた。各

群の被験者が見られる全情報は同一である。ただし、情報提示の仕方は各群に応じてなされた。

ブランドネームは架空のものを用意し、事前にブランドネームによってブランド評価に差がない

かを確認した。被験者による全ての応答と行為はデータベースを通じリアルタイムに測定され

た。アメリカの大学におけるビジネスコースに所属する大学3年生と4年生180名が参加した。

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

─  ─61

結果にバイアスがかからないように指示はコンピュータ上で行われた。

・測 定

 知覚相互作用性の尺度開発のために、まず多数の質問項目案を作成した。これらは上述の議論

や先行研究のレビューの他、33名のボランティアに対して相互作用性の高低の識別に関するイン

タビュー結果に基づき作られた。69項目が作成され(不要とされた248項目を除外)、4つのファ

セットに分類された。

 続けて、ITの専門家11人と博士課程所属の大学院生に69項目を、各ファセットに対して(1)

高い代表性がある、(2)やや代表性がある、(3)全く代表性がない、に分類してもらった。高い

代表性があると分類された17項目を質問項目とした。質問項目が知覚相互作用性の全領域をカ

バーしているかを再確認するために精査した。質問項目のワーディングは本実験における環境で

ある、特定のコンピュータを媒介した相互作用的状況に合わせて作成された。被験者はウェブサ

イトが相互作用的かを7点尺度で評価するよう求められた。ウェブサイトへの態度は Bruner

and Kumar(2000, 2002)の3項目、関与は Personal Involvement Inventory(Zaichkowsky

1985)の12項目で測定された。

結 果

・マニピュレーションチェックと測定モデル

 各側面における被験者の知覚の高低に有意差があったかどうかを調べるため分散分析を行っ

た。その結果、有意差があることがわかり、実験における操作が成功したことが示された。レシ

プロシティ: F (1, 178) = 32.13 (p < .01); 応答性: F (1, 178) = 14.41 (p < .01); 非言語情報: F (1,

178) = 488.62 (p < .01); 応答速度 : F (1, 178) = 68.87 (p < .01)。

 EQS6.1(Bentler 2003)を用いて測定モデルと構造モデルの検証を行った。確認的因子分析の

結果、17項目で測定された5つの構成概念によるモデルの適合度は高かった(CFI = .96, IFI =

.97, NFI = .90, NNFI = .96, GFI = .88, AGFI = .84, RMSEA = .05)。尺度の1次元性、内的整合性、

収束妥当性、弁別妥当性を確認した結果、それぞれ基準値を満たした。構造モデルのパラメータ

の推定に対して多重共線性が問題にならないことも確認された。

・仮説の検証

 仮説を検証するために構造方程式モデリングを用いた。分析プロセスにおいて「ウェブサイト

への態度」から「コミュニケーションへの関与」にパスを引いた方が、適合度が高いことが分かっ

たためモデルの修正を行った。モデルの適合度は十分な値を示した(CFI = .97, IFI = .97, NFI

= .86, NNFI = .97, GFI = .88, AGFI = .82, RMSEA = .04)。

 分析の結果、仮説2から4は支持された。応答性(β = .37, p < .01)、非言語情報(β = .41, p

─  ─62

< .05)、応答速度(β = 28, p < .05)は知覚相互作用性に有意な影響があった。特に、非言語情

報が最も重要なことが分かった。仮説1の検証において、レシプロシティは知覚相互作用性に正

の影響があるが、有意水準に達しなかった(β = .16, p < .08)。仮説5は、モデル全体が適合し

ていることに加えて、4つのファセットが2次概念である知覚相互作用性の分散の67.7%を説明

していることから、支持された。仮説6と7も支持された。知覚相互作用性はウェブサイトへの

態度(β = .65, p < .01)とコミュニケーションへの関与(β = .42, p < .01)に対して強い正の影

響があった。従って知覚相互作用性の法則的妥当性が確認された。

議論とインプリケーション、結論

 本研究の最大の貢献は、様々な状況に適用可能な頑健性を持つ相互作用性の定義を作成した点

である。同時に、フィードバックやコントロールといった類似概念との共通点と差異を明らかに

した。もう1つの重要な貢献は、相互作用性とそのファセットの関連性を経験的に確認した点で

ある。知覚相互作用性は、非言語情報、応答性、応答速度から影響を受けた。加えて法則的妥当

性も実証された。また、2次構造の相互作用性概念に対する強い経験的支持を得た。

 非言語情報は知覚相互作用性に最も強く影響した。この結果は教育心理学のマルチメディア研

究では二重符号化理論によって説明されている。今後の研究ではこの理論を探索し、学習、理解、

あるいは想起を伴う相互作用性を検証したい。応答性は2番目に大きく影響した。コミュニケー

ションを相互作用的にするには応答性に優れていなければならない。レシプロシティは必要であ

るものの知覚相互作用性を生み出すのに十分ではないことが示唆された。単に互恵的な参加機会

があるだけでは相互作用的と知覚されないかもしれない。あるいは尺度の信頼性が低かった

(.77)ことが原因かもしれない。今後は、レシプロシティの影響力が確かに弱いのかを確認すべ

きだろう。

 実務家に対してもインタラクティブ・コミュニケーション戦略への示唆を与える。非言語情報

が応答速度よりも知覚相互作用性に影響力を持つことは、質の高い画像を使用するかウェブサイ

トを高速化するかを検討する指針を提供する。レシプロシティの問題は興味深い課題だ。消費者

視点では早く情報を入手できる方が良いが、企業視点では消費者の滞在時間が増すため高いレシ

プロシティが求められる。消費者がイライラしないレシプロシティの高さを探ることは興味深

い。

 応答性については、ユーザーの行為にどの程度応答しているかを見せることが重要である。こ

れは、消費者との相互作用から得たデータを消費者─企業リレーションシップの最適化に用いる

ことを意味している。ウェブサイトを相互作用的に作ってもユーザーを止め置くことが難しいこ

ともある。このような場合、相互作用性の増大は応答性の増大に関連がない可能性がある。

 また、ウェブサイトデザインに関する示唆もある。ポータルサイトではフロントページの短い

見出しにガイドされる。短い見出しは誤解されやすい(低い応答性)。クリック後に求めていた

相互作用性とそのファセットの再検討──理論と実証

─  ─63

情報が見つからないと、いら立ち、不満足、失望といったウェブサイトへのマイナス評価を導く

かもしれない。

 我々の結果は、非言語情報が知覚相互作用性を促す最も重要なファセットであることを示し

た。それでもやはり、その他のファセットが際だつ機会も起こりえる。また、特定のファセット

を高めることが良い結果をもたらさないこともあるだろう。

 広告主はインターネット広告による双方向コミュニケーション能力を引き出す必要がある。

「マーケターは、説得(一方向コミュニケーション)としてのマーケティングをやめなければな

らない。マーケターは、顧客と一緒にコミュニケーションを取る方法を学ばなくてはならないし、

顧客にメッセージを送るのと同じように顧客の話を聞かなくてはならない」(Deighton 1996)。

もし「マーケティング志向」(Levitt 1960)が顧客のニーズを発見し満足させる文化であるなら

ば、マーケターや広告主は、顧客が話しているとき、それを聞き、適切に反応するべきである。

─  ─64

訳者コメント

 ここ数年、積極的に消費者との直接的なコミュニケーションを試みる企業が増えているように

思う。そのきっかけは、2010年頃から普及しだしたスマートフォンであろうし、それに伴い

Twitter や Facebook といったソーシャルメディアを多くの消費者が使い始めたことであろう。

トヨタ自動車、コカ・コーラ、無印良品など名だたる企業が消費者と対等な立場でTwitter につ

ぶやき、Facebook でファンとの交流を図りはじめている。

 とはいえ、今はまだ多くの企業が手探りで行っている状態だろう。「新しい手段で何かできそ

うだから」、「とりあえず使ってみよう」、と考えている企業も多いのではないか。そうであれば、

企業と消費者によるインタラクティブ・コミュニケーションとはそもそも何なのか、という疑問

に対する答えを提示することは、インタラクティブ・コミュニケーションに携わる実務家にとっ

て何らかの手掛かりになるだろう。

 Johnson, Bruner, and Kumar(2006)の議論は、まさにその答えになり得るだろう。彼らは、

あらゆる状況や技術に適用可能な相互作用性を定義することを目指しており、一般性の高い議論

を展開している。特に、相互作用性を構成する4つのファセット、「レシプロシティ」「応答性」

「応答速度」「非言語情報」は、相互作用性の先行要因として挙げられている。すなわち、これら

の特徴を高めることが、インタラクティブ・コミュニケーションの質の高さにつながるのである。

 ただし、学術的観点からは、なぜ知覚相互作用性概念をフォーマティブな構成概念としたのか

については疑問である。4つのファセットを先行要因として捉えることによって、知覚相互作用

性は従属変数になる。すなわち、知覚相互作用性は4つのファセットとは別の質問文を用いて、

そのレベルを測定する必要がある。原文には付録として、調査に使用した質問文が掲載されてい

るが、その文章を訳すと「このウェブサイトは相互作用的だった(The Web site was interac-

tive.)」となる。この文章に対して7段階尺度で評価するのだが、少なくとも日本においては「相

互作用的」あるいは「インタラクティブ」という言葉の持つ意味は曖昧であり、この質問に回答

することは難しいだろう。訳者である松本もインタラクティブ・コミュニケーションを研究テー

マにしており、彼らの研究をベースに日本版の知覚相互作用性尺度を開発しようと考えている。

そのときにはここで挙げた疑問に取り組むつもりだ。

 こうした疑問点があるとはいえ、Johnson らの研究から得られる示唆は実務的にも学術的にも

大きい。インタラクティブ・コミュニケーションという新たな世界を切り拓こうと考えている人

にはぜひ一読してもらいたい。

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─65

はじめに

 マルチチャネル・カスタマー・マネジメント(multichannel customer management: MCM)

とは、「効果的な顧客獲得、維持、拡大を通して顧客価値を高めるためのチャネル・デザイン、チャ

ネル展開、およびチャネル評価」のことである(Neslin, Grewal, Leghorn, et al. 2006)。近年、

MCMは、消費財企業、産業財企業、小売業、およびサービス業などの多くの企業、産業にまた

がる関心事になっている。

 本稿の目的は、企業がマルチチャネル戦略を構築・展開しうる、カスタマー・マネジメント・

ベースのフレームワークを提示すること、およびカスタマー・マネジメントにおいて取り組むべ

き重要課題を特定するためにそれを利用することである。このフレームワーク(multichannel

customer management decision: MCMD)は、Blattberg, Kim, Neslin(2008)に基づくものであ

り、我々はここから以下の5つのタスクを識別する。すなわち、(1)顧客の分析、(2)マルチチャ

ネル戦略の構築、(3)チャネルのデザイン、(4)戦略の実行、および(5)戦略の評価である(図

1)。

重要課題:我々は何を知っており、何を知る必要があるのか

 我々は、MCMDフレームワークにおいて示された5つの段階を踏まえつつ、マルチチャネル・

カスタマー・マネジメントにおける13の課題を識別する。図1では、それぞれの課題が各段階と

結びついている。これらの課題に対し、我々はまず、重要な課題について議論し、次にその課題

に関連する最新の知見について概説し、最後に未解決の課題および将来の研究と我々の知見との

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

“Key Issues in Multichannel Customer Man-agement: Current Knowledge and Future Directions”(Journal of Interactive Marketing, 23(1), 2009, pp. 70-81)

Scott A. NeslinVenkatesh Shankar

 近年、マルチチャネル・マーケティングは驚異的な進展を遂げてきたが、今後さらに拡大することが予想される。我々はシングルチャネル顧客に対するマルチチャネル顧客の相対的な顧客価値といった、ある種の疑問について理解を深めつつあるが、研究上あるいは実務上の課題はいまだ多く残されている。我々は、これらの課題および将来の見通しについて概説し、今後の研究方法に関する重要な視点を提供する。

訳 ─── 大瀬良 伸東洋大学経営学部講師

─  ─66

ギャップについてまとめる。

(1)マルチチャネル環境において、企業は顧客をどのように細分化すべきなのか

 MCMDフレームワークは顧客に対する理解からはじまるが、ここでの重要課題はセグメン

テーションである。基本的な疑問は、企業はマルチチャネル環境を細分化の軸に組み入れるべき

か否か、またそれをどのようになすべきなのかということである。

 セグメンテーションの実施には、セグメントが測定可能であること、到達可能であること、差

別的な反応を得られること、維持可能であることが求められる(Kotler and Keller 2006, p. 262)。

チャネルごとの購買データが利用できることを前提とすれば、セグメントを測定することは可能

である。Kushwaha and Shankar(2008a)は、チャネルの利用の仕方によって顧客の特性は異

なることを見出している。このことは企業が顧客についてより詳しく理解できることを意味す

る。チャネルに基づいて識別されたセグメントは、販売チャネルとしてだけでなく、コミュニケー

ション・チャネルとしても機能するため、到達可能性も確保される。また、利用するチャネルが

異なればニーズも異なるがゆえに、すなわちチャネルに基づくセグメントはそれぞれ性質が異な

るがゆえに、マーケティング活動に対する反応も異なるであろう。したがって、チャネルによる

セグメンテーションはマーケターがチャネルに応じてマーケティング計画をデザインできるため

に、その実行も可能である。さらに、各チャネルが十分な顧客ベースを確保する限り、そのセグ

メントは頑健である。

 では、こうしたセグメントをどのように形成するのか。顧客のチャネル利用は選択肢のひとつ

である。しかしながら、チャネルはセグメンテーションに有用だとしても、用いられるべき指標

はチャネルに対する選好やマーケティング活動に対する反応、チャネルの潜在的成長性であっ

図1 マルチチャネル・カスタマー・マネジメント意思決定(MCMD)フレームワーク

顧客の分析 マルチチャネル戦略の構築

チャネルのデザイン 実行 評価

効率かセグメンテーションか、あるいは満足か?(2)(3)

競争の評価(4)

顧客の単一ビュー(12)

チャネルのアカウンティング(13)

いずれのチャネルを採用すべきか(5)

各チャネルの機能はどのようなものであるべきか(6)(7)

顧客は“正しく導かれる”べきか(8)

マーケティング・プログラム(9)

組織の調整(10)

マーケティング・ミックスの調整(11)

マルチチャネル戦略およびチャネル・デザインのための適切な顧客セグメンテーションの展開(1)

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─67

て、チャネルの利用ではないという主張もあるだろう。

 既存研究では、チャネル利用以外の指標に基づくセグメンテーションが実施可能であるという

ことが示されている。たとえば、チャネル選好(Balasubramanian, Raghunathan, and Mahajan

2005; Inman, Shankar, and Ferraro 2004; Keen, Wetzels, de Ruyter, et al. 2004; Konus, Verhoef,

and Neslin, 2007; Knox 2005)、マーケティング活動に対する反応(Ansari, Mela, and Neslin,

2008; Thomas and Sullivan 2005)および売上高と利益の構成(Kushwaha and Shankar 2008b)

は、顧客によって異なることが示されている。またチャネル選択における惰性の影響は顧客ごと

に異なることも示されている(Ansari, Mela, and Neslin 2008; Thomas and Sullivan 2005; Valen-

tini, Neslin and Montaguti 2008)。今後の課題は、こうした知見を顧客ベース全体に適用できる

ようなセグメンテーションの枠組みに組み入れることである。

 上記に加え、セグメンテーションに関する問題は多く残されている。すなわち、マーケティン

グ活動に対するチャネルごとの顧客の反応はどの程度異なるのか、セグメンテーションにおける

最適な指標とは何であるのか、チャネルに基づくセグメントは時間的に安定しているのか、変化

するものなのかということである(Knox 2005; Valentini, Neslin, and Montaguti 2008)。

(2)マルチチャネル戦略とは、効率性、セグメンテーション、顧客満足のいずれに関するものな

のか

 マルチチャネル戦略の視点は3つある。すなわち、効率性、セグメンテーションおよび顧客満

足である。効率性の視点に立てば、マルチチャネルに対する努力はコスト削減に向けられる。セ

グメンテーション・アプローチでは、そのための道具と見なされる。そして顧客満足の視点から

は、たとえば顧客が望むチャネルを勧めることで喜びを感じてもらう、あるいはチャネル間の統

合を実現するといった満足を高める手法のひとつとして理解される。重要な点は、マルチチャネ

ル戦略はこれらのうち、いずれの動機に基づいて管理されるべきなのかということである。

 こうした問題について我々が知っていることは多くないが、Langerak and Verhoef(2003)は、

これらの戦略すべてが組織構造に対して大きな影響を与えるという調査結果を報告している。た

とえば、効率的な戦略を展開する企業にとってはデータ管理部門が決定的な役割を果たしてい

た。また顧客満足戦略を採用する企業は、インティマシーを高めるために顧客マネジメント・チー

ムの育成に力を注いでいた。

 顧客満足戦略に関連して、マルチチャネル化はロイヤルティを高める(Shankar, Smith, and

Rangaswamy 2003; Hitt and Frei 2002; Campbell and Frei 2006; Danaher, Wilson, and Davis

2003; Wallace, Giese, and Johnson 2004)という検証結果が報告されている一方で、インターネッ

ト利用はロイヤルティを阻害すると述べる研究も存在する(Ansari, Mela and Neslin 2008;

Wright 2002)。複数のチャネルによってロイヤルティが高まったのであれば、それは顧客のチャ

ネル選択の自由度を高めたことによって生じたと見なすことができるため、顧客満足戦略として

─  ─68

複数チャネルを利用することは、適切な戦略であるといえよう。

 我々が知るべきことは、以下の問いに対する答えである。すなわち、マルチチャネル顧客はシ

ングルチャネル顧客よりもサービスや経験に対する満足や喜びを強く感じるのか、マルチチャネ

ル利用と顧客満足は因果関係にあるのかということである。また、戦略を展開する上で生じうる

種々のコンフリクトをどのようにすれば回避できるのか。たとえば、効率性重視の戦略は顧客満

足を減少させるかもしれない。あるいは、ニーズにおいて異なるセグメントはチャネルに対して

も異なる要望をもっているという理由で、顧客満足戦略の実行は難しいかもしれない。

(3)企業は顧客のマルチチャネル利用を促進させるべきなのか

 マルチチャネル顧客の満足度は高いのであろうか。ひとつの重要かつ示唆的な知見は、マルチ

チャネル顧客の売上はシングルチャネル顧客のそれより大きくなる傾向があるということであ

る。マルチチャネル顧客の価値は大きいということであれば、企業は多くの顧客をマルチチャネ

ル顧客へと移行させようとするかもしれない。このことは理想的な戦略とはいわないまでも、効

果的な戦略であるといえるのであろうか。

 平均的なマルチチャネル顧客はシングルチャネル顧客よりも多く購買し、企業にとって価値が

大きいということは広く認められている(Neslin, Grewal, Leghorn, et al. 2006; Kumar and Ven-

katesan 2005; Myers, Van Metre, and Pickersgill 2004; Kushwaha and Shankar 2007a; Ansari,

Mela, and Neslin 2008; DoubleClick 2004; Thomas and Sullivan 2005)。100万人の顧客のデータ

をもとに分析を行ったKushwaha and Shankar(2008a)では、平均的なマルチチャネル顧客の

金銭的な価値は、オフラインのみの顧客に比べて467ドル、またオンラインのみの顧客に比べる

と791ドルほど大きいことが示されている。しかしThomas and Sullivan(2005)は、あらゆるチャ

ネルの組み合わせがシングルチャネルよりも優れているのではないと述べる。彼らは、ウェブお

よびカタログから購買する顧客は店舗のみから購買する顧客より価値があるわけではなく、ま

た、ウェブおよび店舗から購買する顧客は、ウェブのみ、もしくは店舗のみから購買する顧客よ

りも価値が大きいことを見出している。

 我々が解決すべき主要な課題は、マルチチャネルと購買量は因果関係にあるのかということで

ある。また、因果関係にはブランド・ロイヤルティのような第三の要因が影響を与えるのかといっ

たことについても検討が必要である。しかしながら、たとえ因果関係が見出せたとしても、販売

増が競争相手から得られるということであれば、費用に見合うだけの利益を上げられないかもし

れない。

(4)マルチチャネル・マーケティングは競争優位の源泉となりうるのか

 マルチチャネル戦略を構築する際に重要なのは、競争について考慮するということである。競

争環境におかれたマルチチャネル企業は難題に直面する。すなわち、競争相手がすでに取り組ん

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─69

でいるので自社も新しいチャネルを追加せざるを得ないという意味での囚人のジレンマに過ぎな

いのではないか(Neslin, et al. 2006)、あるいは確固たる競争優位を築きうるアプローチとなり

得るのかということである。

 この問題について検証している研究はほとんどない。しかし、顧客のチャネルに対する知覚は

異なること(Verhoef, Neslin, and Vroomen 2007)を考慮すれば、マルチチャネルに対する努力

は差別化につながるといえよう。

 我々が知るべきことは、以下の問いに対する答えである。すなわち、顧客は同じチャネルであっ

ても企業が異なる場合にそれを異なるものとして知覚するのか、顧客が最初に選ぶのはチャネル

なのか企業なのか、そしてどちらが優先事項なのかということである。

 リソース・ベースド・ビューによれば、企業のケイパビリティを競争優位に変換するための

ルートは4つある。すなわち、異質性、不完全な移動可能性、競争に対する事前的制限、競争に

対する事後的制限である。ある企業が他社に比して顧客満足を生み出すためにチャネルを用いる

ことに長けていた場合、なぜそのケイパビリティは模倣することが難しいのであろうか。少なく

ともいえることは、たとえどのような戦略が展開されたとしても、顧客データの管理が競争優位

の源泉になりうるということである(たとえばChen, Narasimhan, and Zhang 2001)。

(5)企業はどのチャネルを採用すべきなのか

 戦略構築からチャネル・デザインに視点を移したときはじめに抱く疑問は、「どのチャネルな

のか」ということである。企業は採用するチャネルを決定する際、次の2つの問いに直面する。

すなわち、(1)この意思決定をどのようになすべきか、(2)チャネルを選択した後、複数のチャ

ネルに対して資源をどのように配分すべきなのか、どのチャネルを強化するのかということであ

る。

 我々のこの点に関する知識は限られている。実際には、あらゆる企業が複数のチャネルを同じ

程度に活用できるわけではない。我々は企業のチャネル選択が商品の価格、最終的には利益に影

響を及ぼすことを知っているが、このことはあらゆる業界に適用できるというほど一般化されて

いるわけではない。採用すべきチャネルを決定する上で考慮すべきことは、チャネル間のカニバ

リゼーションとシナジーである。この点については先駆的な研究がある。たとえば、小売店舗と

カタログの間にはカリバリゼーションが存在するのに対して(Biyalogorsky and Naik 2003; Del-

eersnyder, Geyskens, Gielens, et al. 2002; Pauwels and Neslin 2008)、オンラインとオフライン

の間ではそれは最小限にとどまることが知られている(Pauwels and Neslin 2008)。

 ひとつのチャネルに対するマーケティング努力は、別のチャネルを通じた売上にも影響を及ぼ

す。たとえば、Pauwels and Neslin(2008)は、カタログ送付が、短期的にも長期的にも、カタ

ログ・チャネルのみならず、オンラインおよび店舗を通じて売上を高めることを見出している。

Kushwaha and Shankar(2008b)は、大手アパレル企業の分析において、店舗利用のみのセグ

─  ─70

メントがもっとも高い利益を生み出すこと、ウェブ利用のみセグメントおよびマルチチャネル・

セグメントは表示価格に対してより敏感であるのに対し、店舗利用のみセグメントはディスカウ

ントに対してより敏感であること、平均利益率はマルチチャネル・セグメントにおいて最も高く、

ウェブ利用のみセグメントにおいて最も低いことを見出している。

 これらの検証結果にもかかわらず、我々の知識には重大なギャップがある。あるチャネルの販

売活動が別のチャネルに与えるインパクトはどの程度なのか、異なる業界や企業においてそれは

どのように変化するのか。ウェブは他のチャネルを通じた販売を阻害することはないかもしれな

いが、店舗販売はウェブ販売を阻害することはなくてもカタログ販売を阻害するかもしれない。

こうした影響については一般化に向けてさらなる研究が求められる。マルチチャネル化は企業に

顧客との関係を深めることに対する恩恵をもたらすのであろうか。もしそうであるなら、そうし

た恩恵は顧客の探索購買行動、あるいはクロスチャネル・プロモーションによって生じるであろ

う。では、企業は最適なチャネル・ミックスを決定するために、こういった情報をどのように収

集するのか。どのようにしてその分析に競争に関する情報を組み込むことができるのであろう

か。

 求められるものは、どのチャネルを採用すべきかを決定するためのモデルであり、意思決定支

援システムである。チャネル間の交差弾力性や競争反応はこうしたシステムの重要な要素であ

る。我々は、潜在的なカニバリゼーションをシナジーに転換する方法、あるいは複数のチャネル

が長期的にどのようにして相互作用し、強化しあうのかということについて理解するために発見

事実を統合する必要があるだろう。

(6)企業は顧客のライフサイクルを管理するためにどのようにチャネルを活用すべきなのか

 チャネル・デザインに関する重要な意思決定はチャネルの機能性、すなわちどのチャネルがカ

スタマー・マネジメントのどの側面に対し、機能を果たすべきなのかということに関するもので

ある。顧客の獲得、成長、維持、離脱の各段階において異なるチャネルを活用することは当然の

ことのよう思われる。この点に関する課題は、チャネルの機能性は正常に作用しうるのか、もし

そうであるなら、企業はそれをどのように実施すべきなのかということである。

 初期の研究では、顧客獲得のために複数のチャネルを活用することに関して焦点が当てられて

いる。たとえば、チャネルが異なると顧客獲得に要する費用も異なる(Villanueva, Yoo, and

Hanssens 2008)。より興味深い発見は、チャネルが異なるとそこで獲得した顧客のライフタイ

ム・バリューも異なるということである(Verhoef and Donkers 2005; Villanueva, Yoo, and

Hanssens 2008)。たとえば、Verhoef and Donkers(2005)は、獲得チャネルに応じて顧客の維

持率やクロス購買の傾向が異なることを見出している。

 我々が知らなければならないことは、以下の問いに対する答えである。すなわち、チャネルに

おける獲得活動によって顧客の長期的な価値を高めることができるであろうか。チャネル別価格

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─71

戦略はひとつの手段である(Blattberg, Kim, and Neslin 2008, 第29章)。顧客の獲得、育成、維持、

離脱のそれぞれにおいて、最善のチャネルはいずれであろうか。先行研究では顧客獲得に関して

検証しているが、ライフサイクルのあらゆる段階に適用するには不十分である。より重要かつ包

括的な問いは、顧客のライフサイクルの段階にあわせて、あるチャネルから別のチャネルへ移行

させるべきかどうか、またそれをどのようになすべきなのかということであろう。

(7)企業は探索購買をどのように活用することができるのか

 チャネルの機能性に関する重要な課題は、顧客の購買にあたっての情報収集行動を考慮した

チャネル・デザインである。探索購買者、すなわちあるチャネルで探索し、それとは別のチャネ

ルで購買するという顧客に注目が集まっている(Verhoef, Neslin, and Vroomen 2007)。

 顧客の基本的な行動は3つあるが、そのうちの2つが探索購買(research-shopping)に該当

する。すなわち、ある企業において探索し、別の企業で購買するという競争的探索購買者と、チャ

ネルが異なったとしても単一の企業で探索し、購買するロイヤル探索購買者である。探索購買者

に関する企業の課題は、ロイヤル探索購買者を増やす(あるいは少なくとも維持する)ために、

また競争的探索購買者のシェアを獲得するためにそのチャネルをデザインすることである。いま

ひとつの課題は、より費用のかかるチャネル(たとえばコール・センター)を利用して商品を探

索しているようなワンストップ購買者をロイヤルな探索購買者に変えることである。

 探索購買は3つの要因によって促進される(Verhoef, Neslin, and Vroomen 2007)。すなわち、

チャネル属性の違い、顧客のロックインおよびチャネル間のシナジーである。顧客のロックイン

とは、あるチャネルが顧客をとどめておく能力に関連している。たとえば、店員に待たされる間

に立ち去るよりもウェブサイトから退出するほうがはるかに容易である。チャネル間のシナジー

は、顧客が同一企業の複数チャネルを利用できるという意味でのチャネルの効率性に関連してい

る。たとえば、ある顧客は特定の商品を選ぶ際の基準について知るためにウェブを利用し、その

結果として、どのように商品を比較すべきか、店舗でどのように販売員と接するべきかといった

ことを知るかもしれない。

 我々が知らなければならないことは、ウェブ検索-店舗購買は、一般化された行動なのか、あ

るいはインターネットが初期段階であるために見られる行動なのかということである。いまひと

つ重要な課題は、競争環境において企業は探索購買を促進させるべきか否かということである。

探索購買者をめぐる競争に打ち勝つためには、どのような方法が最善であるのか。顧客が店舗を

訪れてくれることを期待してウェブサイトを閲覧するよう促すのではなく、むしろ、探索し、か

つ購買するためにそのウェブサイトを利用してもらうよう促すべきなのであろうか。

(8)顧客は“正しい”方向へ導かれるべきなのか、そうであるならどのようになすべきか

 セグメンテーションあるいはコスト削減のためのマルチチャネル戦略においては、ある種の顧

─  ─72

客は特定のチャネルを利用すべきであるということが仮定されている。しかしながら、顧客は企

業が最適だと考えるチャネルを利用するとは限らない。ここでの課題は、顧客は正しく導かれる

べきか否か、すなわち特定のチャネルを利用するよう促されるべきなのかということである。ま

たもしそうであるべきならば、どのようにすれば達成できるのであろうか。当然のこととして、

顧客は自らの選好とは異なるチャネルの利用を強いられることによって離脱する可能性もある。

 我々はこの問いに関してはその一部を理解しはじめたばかりである。Venkatesan, Kumar, and

Ravishanker(2007)は、顧客が初回およびその次のチャネルを採用するまでの時間を調べるこ

とによって、顧客の方向づけを容易にするためのアプローチについて分析している。Knox

(2005)、Thomas and Sullivan(2005)およびAnsari, Mela, and Neslin(2008)はまた、コミュ

ニケーション努力がチャネル選択に影響を及ぼすことを明らかにしている。さらに Sun and Li

(2005)は、顧客満足や顧客維持へのインパクトのみならず、どのチャネルが企業にとって経済

的であるのかということについて考察している。

 我々はこの問いについてさらに理解する必要がある。企業による誘導は顧客に怒りや嫉妬の感

情を呼び起こすであろうか。そうであるならば、顧客の誘導は強引な方法によるのではなく、イ

ンセンティブや自己選択によってなされるものなのであろうか。

(9)マルチチャネル戦略はマーケティングの効率性および有効性を高めうるのか

 MCMDフレームワークの実行段階における重要課題として、マルチチャネル環境のもとで、

企業はより効率的なマーケティング・プログラムを開発することによって優位性を確保すること

ができるのかということがあげられる。そのための方法は3つである。第一の方法は、規模の経

済を追求するというものである。多くのチャネルを保有することがマーケティング機会の増加を

意味するというものであり、マーケティング活動に関する限界費用がマーケティング努力に伴っ

て減少するということになる。第二の方法は、範囲の経済によるものである。多くのチャネルを

保有することがチャネル間においてマーケティング費用を負担しあうことを意味し、マーケティ

ング活動がより経済的になるということになる。

 第三の方法は、マーケティング・プログラムを統合するというものである。これには、すべて

のチャネルにおいて、たとえば同一のロゴや価値提案を用いるといった伝統的な IMCの手法を

適用することができる。いまひとつ期待できるのが、クロスチャネル・プロモーションである。

たとえばインターネット利用者に対して、注文した商品を店舗で受け取るならば割引をするとい

うことも可能であろう。こうした顧客は店舗において追加的な購買をすることが期待できる。ま

た、クロスチャネル・プロモーションにおいては、インターネット利用者に向けて小売店舗での

購買に適用されるクーポンを提供することができる。これとは逆に、小売店舗においてオンライ

ンでの購買に利用できるクーポンを提供することも可能である。

 こうした課題についても我々は十分に理解していないのが現状である。小売業者はウェブ注文

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─73

や店舗での受け取り、企業への反応に対するインセンティブといったシンプルなプロモーション

を活用するが、これらの効率性についてはあまり理解されていない。企業は、あるチャネルでの

プロモーションを別のチャネルでの購買を増やすために活用することができるのであろうか。

チャネル横断的な IMCは機能するのであろうか。規模の経済や範囲の経済に関する議論は、現

実の世界において適用されるのであろうか。

(10)どのような組織構造(協調的か独立的か)を企業はもつべきか

 実行段階におけるいまひとつの課題は、マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおいて、

どのような組織構造が適切なのかということである。ビジネスにおいて、そのチャネルを独立し

た部門として扱うことは当然である。なぜならチャネルが異なれば、そこで要求されるスキルや

特性も異なるからである。それゆえ、多くの企業は運営主体を分離し、別々のチャネルを通じて

事業を展開することになる。

 この点についての課題は、これらの独立した組織はどの程度まで統合されるべきなのかという

ことである。独立した組織であれば、それぞれのチャネルは異なるプロフィット・センターとし

てビジネスを展開する。複数チャネルの管理においては、これらを別個のビジネス・ユニットと

して扱うほうがよいのであろうか。あるいは統合されたビジネス・ユニットをもつことで利益を

得るのであろうか。

 こうした課題については、理論的解釈を与えることが可能である。我々はチャネル間調整の欠

如がマーケティング支出に関する意思決定において非効率あるいは準最適になることを示すこと

ができる。すなわち、複数のチャネルが調整されている場合のマーケティング支出は、それらが

独立である場合よりも利益を生み出し、また、その利益の差は複数チャネル間のマーケティング

に対する弾力性が強いほど大きくなるのである。我々はチャネル間に共食いが起きることを想定

しているが、このことはそれが起きない場合、すなわちシナジーが発生している場合にも当ては

まる。

 Berger, Lee, andWeinberg(2006)は、この点に関して詳細な分析を行っている。彼らは、(1)

独立チャネル、(2)シュタッケルベルグ先導者としての企業本部を伴う統合チャネル、(3)十分

に統合されたチャネルという3つのケースを取り上げている。分析の結果、3つのケースにおけ

る利益の大きさは、十分に統合されたチャネル>シュタッケルベルグ統合>独立チャネルという

関係になることが示されている。

 上記の分析では、調整はマーケティング支出に関するだけでなく、こうした支出によって提供

されるメッセージや顧客経験についてもなされることが想定されている。チャネルの調整はま

た、ブランドとも関連する。チャネル・レベルでの独立した意思決定は、一貫性のない顧客コミュ

ニケーションや価格決定を容易にするため、ブランドがもつ意味の明瞭性を損なうことになる。

これは企業がセグメンテーション戦略を実行し、ニーズの異なる顧客に対して異なるチャネルで

─  ─74

対応したいと考えるときには望ましいかもしれないが、顧客満足戦略を実行するには不利なもの

となる。

 我々は、調整費用が利益を相殺してしまうのかどうかを理解する必要がある。調整費用は以下

の理由から高くなる可能性がある。すなわち、あるチャネルは他のチャネルよりも素早く意思決

定する必要があるかもしれない。さらに、調整された構造のもとでは、独立した構造のもとより

も特定のチャネルからの売上が少なくなるということが起こりうるため、チャネル・マネジャー

に対し売上に基づいて報酬を与えることが難しいということもある。実際、探索購買者の存在を

考えてみると、あるチャネルは主に情報源として機能し、それとは別のチャネルは取引の場とし

て機能するかもしれない。そうした場合、どちらのマネジャーに売上に対する報酬が与えられる

べきかを決めることは非常に困難になる。このような場合、どのような報酬構造が適切なのであ

ろうか。どのようにして過度な費用をかけることなく、チャネル調整による便益を維持できるの

であろうか。

(11)企業はチャネル間で商品と価格をどのように調整すべきか

 実行段階における最後の課題は、チャネル間におけるマーケティング・ミックスの調整に関す

るものである。企業は異なるチャネルにおいて、同一の商品を販売するべきであろうか。また、

もし企業が同じ商品を複数のチャネルで販売するとしたら、その価格は同じであるべきなのだろ

うか。企業が異なる価格を設定したいと望む場合、顧客を混乱させたり、離脱させることなくそ

れを実行できるのであろうか。

 その答えの一部は、セグメンテーション戦略のスキームにあるといえる。もし顧客がその反応

性に基づいて異なるセグメントに分類されているならば、チャネルAの顧客はチャネル Bの顧

客よりも価格には敏感ではないということがあり得る。そのような場合、企業はチャネルAに

おいてより高い価格を設定するということになるかもしれない。

 我々はこうした問題に関していくつかの知見を得ている。一般に、商品の価格はインターネッ

ト専業企業よりもマルチチャネル企業のほうが高い(Ancarani and Shankar 2004)。また、価格

感度はオフラインとオンラインとでは異なるわけではないこと(Shankar, Rangaswamy, and

Pusateri 2001)、オンラインにおける企業間の価格のばらつきは常態となっており、このことは

企業のサービス要因によっては適切に説明することができないこと(Pan, Ratchford, and Shan-

kar 2002)が知られている。これらの検証結果は、マルチチャネル企業は顧客に対して付加的な

便益を提供することによってインターネット専業企業よりも高い価格を設定することができるこ

とを示している。しかし、ここでの問いはこうした企業間の価格の違いを企業内のチャネル間の

価格の違いに置き換えて考えることができるのかということである。チャネル間の価格差は、顧

客に対しては混乱と怒りを、またチャネルに対してはカニバリゼーションやコンフリクトを引き

起こすため、通常、チャネル間では同一の価格を設定する(Pan, Ratchford, and Shankar

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─75

2004)。ただし、企業はチャネル限定的な価格プロモーションを活用したり、送料や手数料を通

じて異なる価格設定することができる。もうひとつの方法は、類似してはいるが同一ではない複

数の商品を異なるチャネルで販売することである(Bergen, Dutta, and Shugan 1996)。

 この課題については多くの問いが残されているが、基本的な問いは2つである。すなわち、(1)

価格と商品の「違い」をどのように管理するのか、(2)価格と商品の「類似性」をどのように管

理するのかということである。「違い」については、どの程度の顧客が価格と商品における違い

に気づき、それを気にするのかということに依存している(Morwitz, Greenleaf, and Johnson

1998)。「類似性」に関して、企業は商品間の重複部分について知らせるべきなのであろうか。あ

るいは、どのような状況において価格と商品の統一性が企業のパフォーマンスを高めるのであろ

うか。

(12)企業は評価に必要な顧客に関する単一ビューを作成することができるのか

 企業が顧客からマルチチャネル戦略に対して優れた評価を得て、それを実行していくために求

められることは、各顧客がそれぞれのチャネルをどのように活用しているのかということに関す

るデータを得ることである(Neslin, Grewal, Leghorn, et al. 2006 を参照)。

 Neslin, Grewal, Leghorn, et al.(2006)は、単一ビュー、すなわち全顧客のすべてのチャネル

における行動を把握することは必要ではないと主張する。その理由は、より多くの顧客の単一

ビューを作成することで、その見返りが減少する反面、費用が増加するためである。これに対し

て、Zahay and Griffin(2002)は、顧客情報システムの質と利用可能性は、企業のパフォーマン

スを高めると主張する。

 ここでの問いは以下の3つである。すなわち、(1)単一ビューの費用対効果はどの程度のもの

なのか、(2)単一ビューの作成を経済的かつ実践的に行うための方法とはどのようなものである

のか、(3)100%のカバレッジとならない単一ビューをマルチチャネル戦略の評価に活用する方

法とはどのようなものであるのかということである。

(13)貢献度の高いチャネルをどのように判断するのか

 実務的な課題としてあげられるのは、各チャネルの売上に対する貢献度をどのように判断する

のかということである。たとえば、もし顧客がインターネットで検索し、店舗で購買するとした

ら、いずれのチャネルが購買を発生させたといえるのだろうか。あるいはもしウェブサイトが発

注機能を備えているにもかかわらず、顧客がそこを情報収集のためだけに利用しているとした

ら、そのウェブサイトは重要とは見なされていないだろう。しかし、その顧客がウェブサイトを

見なかったとしたら、店舗での販売はなかったかもしれない。

 研究者はこうした問題に対して直接には取り組んではいない。しかし、チャネルは相互に作用

し、相互に得るものがあることははっきりしている。

─  ─76

 たとえば、Ansari, Mela, and Neslin(2008)は、カタログ発送がインターネットでの購買を促

進することを示している。Pauwels and Neslin(2008)も同様に、eメールはインターネットで

の販売だけでなく、店舗での販売を促進させることを示している。これらは、マルチチャネル環

境においてはすべてのチャネルが重要であり、相互に影響しあうことを示している。

 我々は、チャネルごとに企業の利益を分解する方法を開発しなければならない。またその際に

は、検索や販売、アフターセールスが果たす役割について完全に理解することが求められる。

要 約

 我々は企業のマルチチャネルに関する意思決定を導くためにフレームワークを示してきた。

MCMDフレームワークは、マネジャーがマルチチャネル戦略を構築、実行する際に踏まなけれ

ばならない段階を示すものである。また、それぞれの段階では多くの課題が示された。このこと

は、カスタマー・マネジメントがマルチチャネル戦略の構築・実行プロセスのあらゆる箇所にお

いて重要な検討事項であることを意味している。

 本稿が研究者および実務家による見解の集約、適切な調査の実施、およびマルチチャネル・カ

スタマー・マネジメントに関する議論に役立つことを望む。

マルチチャネル・カスタマー・マネジメントにおける重要課題:最新の知見および将来展望

─  ─77

訳者コメント

 Scott A. Neslin およびVenkatesh Shankar によって執筆された本論文は、マルチチャネル研

究において高い評価を得ている。世界最大級の引用データベースである Scopus によると、この

論文の引用数は、Journal of Interactive Marketing に過去5年以内に掲載された論文の中で8位

に、また、2009年に掲載された論文としてはもっとも上位に位置づけられている(2010年11月11

日時点)。

 マルチチャネルに関する視点は大きく分けて2つある。ひとつは、企業視点、すなわちマルチ

チャネル環境におけるチャネル・マネジメントあるいはチャネル戦略について考察・分析するも

のである。具体的には、チャネル・リレーションシップ(自社サイトを立ち上げることによって

発生する既存のチャネル・メンバーとのコンフリクトをどのように管理するのか、チャネル・

リーダーシップをどのように発揮するのか)、組織構造(複数のチャネルをどのような組織構造

のもとで管理・運営するのか、いかにしてカニバリゼーションを回避し、シナジーを発揮してい

くのか)、マルチチャネル戦略(オンライン/オフライン・チャネルの固有の役割とは何なのか、

どのようにして顧客のチャネル遷移を促進するのか、どのようなクロス・プロモーションが有効

か)といったことについて研究が進められている。

 いまひとつは、顧客視点、すなわちマルチチャネル顧客の心理的・行動的な特性について考察・

分析するものである。これまでに、マルチチャネル顧客のプロフィール分析(顧客全体に占める

マルチチャネル顧客の割合はどの程度か、企業にどの程度の利益をもたらす存在であるのか、マ

ルチチャネル顧客のデモグラフィック特性、マルチチャネル顧客の価格感度)、マルチチャネル

利用を促進する要因(ウェブサイトのあり方、顧客の情報感度、顧客の理性的/快楽的傾向の程

度)、ブランド構築(マルチチャネル環境において、どのようにしてブランド・エクイティを高

めていくのか)といった視点に基づいて研究が進められている。

 彼らは、CRMの視点に立脚し、これら2つの視点に基づく諸研究を幅広くレビューすること

で、マルチチャネル環境を前提としたCRMにおける13の課題を導き出している。彼らはマルチ

チャネルに関する研究を精力的に行っており、巻末の参考文献に記載されている論文のほか、下

記の論文に携わっている。

Konu , U., Verhoef, P. C. and Neslin, S. A. (2008) “Multichannel Shopper Segments and Their Covariates,” Jour-nal of Retailing, 84 (4), 398-413.

Shankar, V. and Yadav, M. S. (2010) “Emerging Perspectives on Marketing in a Multichannel and Multimedia Retailing Environment,” Journal of Interactive Marketing, 24 (2), 55-57.Verhoef, P. C., Neslin, S. A. and Vroomen, B. (2007) “Multichannel Customer Management: Understanding the Research-Shopper Phenomenon,” International Journal of Research in Marketing, 24 (2), 129-148.

 なお、2010年発行の Journal of Interactive Marketing の第24巻第2号は、「Emerging Perspec-

─  ─78

tives on Marketing in a Multichannel and Multimedia Retailing Environment(マルチチャネル

およびマルチメディア小売環境におけるマーケティングの新視点)」と題した特集号となってお

り、Shankar らの最新の論文のほかにも、ブランド研究の第一人者であるKeller や、リテイリ

ング研究において多くの論文を執筆しているKumar の論文が掲載されている。マルチチャネル

に関心のある方は、こちらをご覧いただきたい。

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

─  ─79

本研究の目的

 今日、有益な顧客を特定し長期的関係を育成していくことに注力をしている企業は多い。1 to

1マーケティングや、ロイヤルティ、データベース・マーケティングといった、さまざまな顧客

関係性管理のアプローチと、そうした世の中の動向の中心には、CLVのコンセプトが存在して

いる。CLVは、顧客関係性の結果として、将来キャッシュフローの現在価値とされている(Pfeifer

et al.2005)。将来における顧客、企業、および競争相手の行動は不確実であるため、CLVは確率

的な変数であり、計算によって推定される。我々は、CLVという用語を、期待される生涯価値

を意味して用いており、その正味の貢献は(1)関係の持続性、(2)期間内の期待される収益、(3)

期間内にかかることが予想される経費、の3つによって規定される。すなわち、CLVには、(1)

関係の持続性、(2)収入、(3)コスト、(4)割引率といった4つの構成要素があると言える。

 CLVとその構成要素の研究は活発に行われている。そして、様々な条件下でCLVを試算する

方法や、そうした条件下での構成要素、CLVの先行要因についての研究は数多く存在し、一方で、

マーケティング行動の特定領域でCLVを最大化する試みや実践に関する議論が重ねられている。

本稿の目的は、(1)先行研究から得られる実証的手続きを経た一般的法則について議論すること、

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

“Customer Lifetime Value: Empirical General-izations and Some Conceptual Questions”(Journal of Interactive Marketing, 23(2), 2009, pp. 157-168)

Robert C. BlattbergEdward C. MalthouseScott A. Neslin

 顧客生涯価値(以下CLV)に関する研究から、実証を経て一般化された4つの結論が明らかにされている。その4つとは、顧客満足、マーケティング努力、クロス購入、そしてマルチチャネルの購入が、いずれもCLV の向上と正の関係を持っているということである。若干の異なる研究成果もあるものの、購買頻度と購買金額が、CLV に肯定的な影響を与えることも一般に認められる。我々は、先行研究ではこれまであまり注目されてはいないが、さらなる実証研究が求められる諸問題を明らかにする。それは、プライシングや特典と販売促進のCLVに対する効果や、顧客反応率とCLV を最大にするために顧客との時系列な接触を管理すること、CLVは十分正確に予測できるのか、といった問題である。その他にも、今後の研究に資する概念的問題について本稿では議論を行う。

訳 ─── 平野 亜衣子株式会社ファンケル

─  ─80

(2)まだ一般化までは達していないが、示唆に富んでおり、興味深い実証結果について論じるこ

と、(3)CLVに関連する概念的および戦略的問題について議論すること、である。

 Blattberg, Briesch and Fox(1995)は、実証による一般化を「(1)分析されるトピックが明

確であること。(2)特定分野の実証研究について、少なくとも3人の研究者による、少なくとも

3つの論文があること。(3)実証的証左が一貫しており、効果の兆候はそれぞれに関する論文で

同じであること。」と規定している。学術的視点からは、同様の実証的結論を報告する複数の研

究によって、理論が立証されたり、または理論的研究がさらに必要な領域を特定することができ

る。実務的視点からは、マーケティングの意思決定において、実証された一般的な法則は、マネー

ジャーに指針を提供しうる。次節にて、我々は、上の定義を満たす概念的なフレームワークと実

証研究の成果を示す。次に、研究成果があるものの、一般化して語るには不十分な問題を議論す

る。さらに、それ自体は実証対象ではない概念的な問題について議論するが、それらは CLVの

概念を実践にどのように適用すべきかの理解を促す。まとめとして、今後の研究方向性を示すこ

ととする。

実証的手続きを経た一般的法則

 我々の最終目標は、企業が CLVの先行要因に何らかの働きかけを行うことで CLVを高めら

れるような、一連の規範となる命題を創出することである。そこで、我々は、CLVに関する先

行研究整理の概念的フレームワークとして図1を示す。まず、人口などの外因性の顧客特性が、

顧客との関係性に影響を与え、CLVを規定している。

 企業と顧客との関係性は動態的なもので、長期にわたる相互作用を伴う。まず、企業は、ブラ

ンド・コンセプトの明確化、製品・サービスの開発、マーケティング・ミックスの計画といった、

マーケティング活動を実行する。これらのマーケティング活動は、ブランドや製品に対する顧客

の態度や情緒などの消費者の反応を喚起する。マーケティングと情緒的反応の両方が、製品の購

図1 CLVの先行要因に関する概念的フレームワーク

CLV(顧客生涯価値)

関係性、持続性収入、コスト、割引率

外因性顧客特性

例:人口統計学的要因

顧客関係性

マーケティング活動

ブランド、製品、価格、

プロモーション、資源分配

行動的反応

RFM、クロス購買、マルチチャネル

情緒的反応

態度、満足

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

─  ─81

買や使用といった行動につながる。また、消費経験(行動)は、情緒的反応や後のマーケティン

グ活動に影響を与える。このような相互作用は、CLVを規定する一連のキャッシュフローに影

響を与える。

 企業は、顧客関係性の変数に影響を与えるために戦略を適用する。例えば、顧客満足度向上の

ために、製品改良に投資すること、顧客の態度や信念を変えるために広告宣伝すること、マルチ

チャネルでの購買促進やクロス購買のためにプロモーションを行うこと、が挙げられる。我々が

検討しているのは、このような投資が CLVに影響を与えるかどうかである。我々は、先行研究

を渉猟して、CLVに関して適切であると信じうる4つの実証的見解を明らかにした(本文図1)。

つまり、顧客満足度、マーケティング努力、クロス購買、そしてマルチチャネルの購入は、いず

れもCLVとの間に正の関係がある。

問題1:顧客満足は、CLVと正の関連がある。

 顧客満足が企業実績の各指標や持続性と関係を示している研究は多数存在している。関係性の

持続はCLVの構成要素である。

 Yeung et al.(2001)は、関係性の強さとその影響の程度は、業種によって異なることを明ら

かにしている。例えば、金融業界では関係が強いが、技術・通信部門でははるかに弱い。これは、

顧客満足と収益性との関係に業界特徴が影響していることを示しており、さらなる理論的考察の

必要性を指摘していることとなる。満足度と CLVの関係についての見解は、確立している。し

かしながら、顧客満足が個別の構成要素、特に関係の持続性と収入、コストに及ぼす直接的な関

係についてはさらなる研究の必要がある。

問題2:マーケティング努力は、CLVと正の関係がある。

 企業のマーケティング活動は、CLVに影響を与えなければならない。マーケティング努力と

関係の持続性には強い関連があることを示す研究成果が示されている。顧客の「利益性」に着目

し、収益、経費との関係を明らかにした研究(Reinartz, Thomas, and Kumar, 2005)がある。

しかし、企業は、持続性の弱い顧客や、マーケティング努力がなくても買ってくれる顧客の離脱

を防ぐために過度の投資を行い、努力に対する利益を乏しくすることがあるかもしれない。この

法則が一般化できるかどうかは非常に重要な問題である。なぜならば、それは、企業がマーケティ

ング活動によってCLVを管理することができることを示唆しているからだ。

問題3:クロス購買は、CLVと正の関係がある。

 Reinartz and Kumar(2003)は、文献レビューを行い、クロス購買は顧客維持に正の関係を

与える理論的根拠を示した。 先行研究によれば、生涯持続期間や収益などのCLV構成要素とク

ロス購買との間には直接的な正の影響が広く示されているが、研究によっては有意な効果が明ら

─  ─82

かにされなかったものもある。クロス購買と CLVの関係は表面上のものでしかないかもしれな

いという疑問が残る。例えば、ある顧客がアフターサービスを評価して特定の家電小売店のロイ

ヤルユーザーになっているとするならば、その顧客はテレビ、DVD、コンピューター機器など

をその小売業者から多数購入する可能性が高い。Reinartz, Thomas and Bascoul(2008)は、

Granger テストを使用して、因果関係の方向性を確かめ、利益性がクロス購買を喚起したので

あって、その逆ではないことを明らかにした。したがって、クロス購買と CLVとの間に正の関

係があるのは確かだとしても、我々はその因果関係を明らかにする必要がある。

問題4:マルチチャネル購入は、CLVと正の関係がある。

 この一般的法則は、マルチチャネル研究において重要な知見である。(Neslin and Shankar

2009; Neslin et al. 2006)。複数のチャネルを利用して購買する顧客は、単独チャネル利用の顧客

よりも、多くの収益を生み出す。さらに、インターネット・チャネルでの購買が加えられること

によって、顧客の持続性とCLVが改善される(Boehm, 2008)。マルチチャネル購入は便利さゆ

えに顧客満足の向上につながることもあるが、また、スイッチングコストも生む。例えば、銀行

のATM、店舗、オンライン窓口のいずれをも使っている顧客が、取引銀行を変更するには、複

数の障壁があり、スイッチングコストが高いことが挙げられる。この正の関連を示す証左は豊富

であるが、すべてのケースを網羅しているわけではない。興味深い例外としては、オンラインバ

ンキング利用者の取引頻度が高まるほど、効率的な資産運用が図られ収益が低下するという現象

が挙げられる。

実証的研究成果によって見解が分かれている問題

問題5:RFMはどのようにCLVと関連しているか?

 顧客の購入行動は、しばしば RFM(R= Recency:最新購買日、F= Frequency:累計購買

回数、M=Monetary value:累計購買金額)によって要約される。これらの変数は広く知られ

ており、CLVモデルに含められ、顧客レベルを見積もるために使われている。累計購買回数と、

累計購買金額はしばしば強い相関関係が見られ、実は同じ構成要素に基づくものではないかとす

る議論がある。Najar and Rajan(2005)は、ローン量と企業の企業の収益性との正の関係を見

出した。Reinartz and Kumar(2003)は、累計購買金額と生涯持続性との正の関係を明らかに

した。Donkers et al.(2007)は、直近に保険を購入した顧客が、将来再び保険を購入する可能

性が、高い事を明らかにした。Malthouse and Blattberg(2005)のモデルは、100以上のカタロ

グ会社、ソフトウェア会社、非営利組織と、教育サービスプロバイダを対象として検討されたが、

累計購買回数と、累計購買金額は個人顧客の長期的価値との間に一貫して正の関係性を確認した

が、最新購買日では負の関係性が明らかにされた。しかしながら、Li(1995)は、顧客持続性と

の間に否定的な効果を指摘しており、Nijar et al(2001)は「注文数」という新たな説明変数を

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

─  ─83

提起した。この領域については更なる研究が必要なことは明らかである。

実証的成果が少ない問題

問題6:プロモーションは、どのようにCLVに影響を与えるか?

 Anderson and Simester(2004)は、実験によって、カタログ会社のプロモーションが長期的

に与える影響を研究した。研究対象となった顧客には、「セール中」表示を伴った商品が紹介さ

れているカタログが配布されたが、「プロモーション」グループでは、商品の価格がより安く設

定されていた。いずれのグループにおいても短期的売上が増加したが、プロモーショングループ

の顧客のプロモーション後12ヶ月間の購入金額は、その翌年の購入金額より少なかった。また、

大きな割引は、初回顧客による購入を増やしたものの、既存顧客の将来の購入を減らしたのであ

る。このような命題の検証は、他の企業や産業でも行われるべきであろう。Li(1995)も、割引

プランが提示された場合に、遠距離電話サービスからの離脱が低減されることを明らかにした。

Anderson and Simester の研究に見られるように、データベースに基づくマーケティング・コ

ミュニケーションはプロモーションとして作用し、プロモーションに関する研究で観察されたの

と同じような長期的影響を及ぼすとする見解があるが、これについてはさらなる実証研究が求め

られる。

問題7:価格戦略は、どのようにCLVに影響を与えるか?

 企業が、異なるセグメントにライフサイクル上の異なるタイミングでどのように値付けをする

べきかを示唆する研究は、非常に少ない。Thomas et al.(2004)は、新聞の定期購読契約の再

獲得を図るための価格戦略の効果を研究した。経時的な研究によって、彼らは、再獲得のために

呈示する価格は低く、再獲得後に値上げするのが適切であると結論付けた。Reinartz and

Kumar(2000)は、ライフサイクルの最も短い顧客が、カタログ会社の1つの品目に対して支払っ

ている平均価格がかなり高いことを明らかにしたが、併せて他の要因の影響の可能性があること

も指摘している。さらなる研究がここでも必要とされている。また、価格の違いが CLVに影響

を与えるのか、あるいは、反対に CLVに基づいて価格を決定すべきかの因果関係の方向性も明

らかではない。

問題8:特典(earned reward)は、CLVにどのように関連しているか?

 多くの企業が、消費行動に基づいて顧客に「特典」を与えるプログラムを活用している。航空

会社は、マイルまたはフライトの頻度に基づき、無料フライト特典を提供している。ホテルは、

宿泊頻度に基づいて無料宿泊券を提供している。英国のスーパーマーケットチェーンTesco は、

直近3ヶ月間に使われた金額の一定割合を、ロイヤルティクラブのメンバーに還元している。ク

レジットカード会社は、直近期間の利用金額に応じて、特典(キャッシュバックボーナス、マイ

─  ─84

ルなど)を与えている。いずれも、特典は顧客の直近の行動に基づいて提供される。このような

特典は、価格割引と密接な関係があるが、若干の重要な相違がある。購入時点で割引を与えるの

ではなく、顧客がある期間にわたり望ましい購入行動を行うことを条件として、提供されるので

ある。したがって、特典プログラムが、顧客との関係持続性を向上するのに役立つと考えられ、

結果として、プログラムによる特典は、顧客が特典の資格を持つのに十分な購入を重ねるよう「ポ

イントのプレッシャー」を与える。その一方で、特典を受け取ることが、将来の行動に明らかな

影響を与えるのか、つまり、「報われた行動」効果があるかといった問題がある。Blattberg et

al.(2008)がそういった現象に関しての実証研究を要約しているが、特典が CLVに与える影響

とその程度を明らかにする研究はさらに必要である。

問題9:顧客との接触数と、顧客反応率との関係はどうなっているのか?

 顧客反応率とマーケティングの接触頻度(回数)との関係は、CLV管理に重要である。1つ

の肝心な問題が、この関係には「ウェアアウト(疲労)」が示されるのかである。ウェアアウト

については、伝統的なマスマーケティングの例で研究がなされてきた(Little 1979; Simon

1982)。CRMの実践においても、ウェアアウトについての非常に多くの証拠がある。Ansari et

al.(2008)は、カタログの配達間隔が長いほうが購買頻度に与える影響が大きいことを明らかに

し、同様の成果を間断なく送付される電子メールの例ても確認している。Campbell et al.(2001)

は、カタログへの企業の投資が増えるほど、顧客のレスポンスが逓減することを明らかにしてい

る。カタログの選択行動において、Gönül, Kim and Shi(2000)は、(あまり多くの冊数ではなく)

2、3冊程度のカタログを、(あまり長く間隔をあけすぎずに)適切な時間間隔で送ることが最

良である、と結論づけている。

 ウェアアウトの影響は強力なため、マーケティング接触を増やすことは反応率を減少させると

いう興味深い証拠もある。Eastlick,Feinberg and Trappey(1993)は、顧客が受け取るカタログ

の数と出費の間には逆U字の関係があると報告し、それに対する反論も示され議論となってい

る。

 ウェアアウトは実在する現象であるように思われる。そして、ある状況下では、マーケティン

グ活動を増やすことで顧客反応率が減少しうる。しかしこのことは、企業にとっては、少ないコ

ミュニケーションでより高いCLVを生み出すことを可能にすることも意味する。しかしながら、

これには検証を必要とする。ウェアアウトの曲線が逆U字で表されるならば、反応率の減少が

始まるポイントを明らかにすることは不可欠であるし、どのような条件が逆U字をもたらすの

か理論的考察が必要とされる。

問題10:CLV最大化のための、最適化接触モデルは有効か?

 これまでの知見をうまく統合することによって、企業は「最適化接触モデル」を開発・適用し、

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

─  ─85

CLVを管理することが可能になると考えることができる。例えば、Sun and Li(2005)は、顧

客満足と使用チャネルのコストのトレードオフを最適化するダイナミックプログラミングモデル

を提案している。Journal of Interactive Marketing 誌の創刊号は重要な研究課題として、経時的

なコンタクト戦略を強調している(Kestnbaum et al. 1998)。この課題に関しては多くのモデル

が提案されている。(Bitran and Mondschein, 1996; Gönül and Shi, 1998; Gönül et al 2000; Camp-

bell et al 2001; Elsner et al, 2004; Ching et al,2004; Rust and Verhoef, 2005; Simester et al, 2006;

Neslin et al, 2007). Blattberg et al.(2008)は、複数のアプローチをまとめて比較している。そ

のなかには肯定的な実証結果を得たものも存在するものの、さらなる研究が必要であり、とりわ

け、ダイナミックプログラミングモデルと、シンプルで近視眼的アプローチのモデル(例えば、

Malthouse and Derenthal、2008; Ha et al. 2005)との比較の必要性を指摘している。

CLVに関する戦略的、概念的課題

問題11:CLVは、個客単位で正確に予測でき、マーケティング資源の割当ができるか?

 もし企業がCLVをもとにマーケティング資源を割り当てる場合、CLVが不正確に見積もられ

ると、マーケティング資源は誤った配分がなされるであろう。結果、実際にはマーケティング努

力を受け取るべきでない客が受け取り、その価値がある顧客が受け取らないことになる。Mal-

thouse and Blattberg(2005)は、80-15と20-55の法則(上位20%の顧客のうち、55%が間違っ

た分類をされ、下位80%の顧客のうち15%が間違った分類がされる)と提起した。そして、CLV

に基づいて資源配分を決定するときには、分類ミスの確率やコストが考慮されるべきだと結論づ

けた。Donkers et al.(2007)も同様の結論を示している。

 一方、産業界でよく用いられているのが、ロイヤルティプログラムに基づく過去の購買行動に

基づく資源配分である。また、顧客に均等に配分する考え方もある。これらの異なるアプローチ

のどれがどういった場合に適切であるかを理解すべく、さらなる研究が求められる。

問題12:最優良顧客アプローチとブランド中心的アプローチの共存

 最優良顧客アプローチという考え方にならえば、利益を生み出す顧客を購買履歴によって識別

し、彼らのニーズに基づくマーケティング意思決定を行うことが勧められている。(Mulhern

1999; Kumar et al 2009)また、顧客を価値によって分類し、それぞれに応じたマーケティング

プログラムを開発することも提起されている(Zeithaml, Rust and Lemon 2001)。一方、ブラン

ドを中心的に置く事業体(ブランドマネージャー)は、市場調査に基づいて、ブランド・コンセ

プトを明瞭に表現する。歴史的に、最優良顧客へのアプローチは、ダイレクト・マーケティング

から発達している。これら両者はしばしば対立するものと見られるが、両者を上手に共存させて

いる企業も多数ある。例えば、レクサスは強いブランドでもあり、最優良顧客の顧客データベー

スを持つことでも知られている。ホテルチェーンや小売業者にも強力なブランドと顧客データ

─  ─86

ベースの双方を管理している企業がある。

 この2つのアプローチは、相反する意思決定を導くことがあるが、おそらく両立は可能である。

だが、これら2つの目標が矛盾する状況になった場合、企業は一方を犠牲にする決定をしなけれ

ばならないことが想像される。最優良顧客に焦点を合わせる企業は、ブランドを必要とするか。

最優良顧客のためのマーケティング活動を企画する際、ブランドを考慮すべきか。あるいは、ま

た、強いブランドを育成した企業は、弱いブランドを持っている企業より高い CLVを持つのだ

ろうか? どういった状況において、どのアプローチが選ばれるのか?

 この問題はセグメンテーションの考え方に混乱を与える。ブランド中心的なマーケティングで

は、態度、信念、ニーズ、人口統計学的特性、サイコグラフイック特性などに基づいてセグメン

テーションが規定され、単一の目標が定められる。最優良顧客へのアプローチでは、(例えば

RFMによる)収益性に基づく規定がなされ、各セグメンテーションは異なるマーケティング活

動を受ける(Reutterer et al 2006)。最優良顧客アプローチによる、収益性ベースのセグメンテー

ションに基づくマーケティング活動は、一体どの程度までブランディング活動と整合をとること

ができるのだろうか?

問題13:絶対的CLVか、増分CLVか?

 企業は、顧客の現在の価値である絶対的 CLVと、投資することによって変化する増分 CLV

のどちらに基づいてマ-ケティング資源を割り当てるべきか。多くのロイヤルティプログラム

は、絶対的 CLVに基づいて顧客を段階的に分類している。例えば、航空会社は、最多のマイル

を持っている顧客にトップクラスのステータスを与え、多くのマーケティング資源を提供する。

最多のマイルを持っている顧客にメリットを与えなければ、競合企業にスイッチしてしまう恐れ

があり、その場合は、増分 CLVにも影響を与える。しかし、段階的分類アプローチは絶対的

CLVに基づいている。一方で、Rust and Verhoef(2005)は、1年間に漸増する利益を最大化

するために、それぞれの顧客に割り当てるマーケティング資源を決定すべきである、とする。多

くの CLVモデルは、絶対的 CLVモデルのみを見積もっていて、マーケティング活動によって

変わるかもしれない増分 CLVをもとに活動の是非を考慮しない。経済学的理論によれば、増分

CLVモデルを活用することが示唆されるが、実務やマーケティング研究ではほとんど注目され

ていない。

問題14:生涯価値か、長期的価値か?

 企業が経営資源を割り当てる際に考慮する将来時間の枠組みは、非常に短期的なものから一顧

客の生涯を考慮するものまである。企業は意思決定する際に長期的効果を考慮すべきというのが

CLVの教訓だが、それはどれくらいの長さであるべきだろうか? Najar and Rajan(2005)と、

Rust and Verhoef(2005)は、ともに1年間の視点を用いている。生涯を通じて予想されるキャッ

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

─  ─87

シュフローに基づいて資源を割り当てることが、最適であるかもしれないが、実際的には、マネー

ジャーや企業は、上司や投資家に迅速に成果を示す必要があるという制約を受けている。

問題15:RFMは正確に行動を表しているか?

 RFMは嗜好の多様性に基づく概念といえるだろうか。また、購買行動には常習性が存在する

のだろうか。つまり、特定の製品やサービスを嗜好する顧客は、より高い頻度で購入するのか、

という疑問である。伝統的なRFMマトリクスでは、購入頻度が高く、直近の購入がある顧客は、

購入確率が高いとしている。このことは事実であるが、問題は因果関係である。 企業は顧客の

将来の購入確率を高めるために、顧客の直近購入(Recency)の向上に投資すべきであろうか。

嗜好は人によって異なり、好みは変わらないとするならば、最近購入があったからといってその

人の購入確率は高くはならないであろう。この問題は、データベースマーケティングに関わる者

にとって重大な問題である。なぜなら、この問題はターゲティング戦略に関わるからである。ター

ゲティングモデルは、RFMをどのように組み入れることができるか、また、現状のモデルを改

良していくことは可能なのだろうか。

問題16:直接費アプローチか、間接費アプローチか?

 CLVの研究の多くが、収益と持続性に焦点を当てているが、おそらく、最も重要な概念的問

題は、CLVを構成するコストを計算するとき、(顧客へのサービス提供にかかる)直接変動費だ

けを含むべきか、(顧客にサービスを提供しようがしまいがコストが発生する)間接費を含むか

どうかである。どちらのコスト計算を使うかによって、顧客の利益性が変わることがある。しか

も、問題を複雑にするのは、「半変動」のコストがあることだ。

 例えば、ある顧客が2つ目のコールセンターを必要とする。そのコストは、その後に続く全て

の顧客にとっては固定された間接費となる。コールセンターを増やすことを必要とさせたボー

ダーラインの顧客に、2つ目のコールセンターの全ての経費を割り当てることは正しくないよう

に思われる。これは難しい問題である。直接変動費は顧客によって変わることもあるが、間接費

は、そのコストが想定された範囲内で変化することがないのなら、割り当てる必要はないという

議論もある。この問題は難解だが研究しがいのあるもので、概念的に研究した文献もあるし、ま

た、どちらのコスト計算方法を採るべきか仮設をたてて実際に検証してみることもできる。

問題17:適切な割引率は?

 資本予算理論(Brealey, Myers, and Marcus, 2004)は、顧客をプロジェクト投資と見なす。

それに従えば、適切な割引率とは、企業の投資家にとっての資本の機会コストである。企業が割

引率を使用するなら、その企業は投資家の回収率への期待を考慮して、ネガティブな(あるいは

マイナスの)CLVを持つ顧客には投資しないだろう。Blattberg, Kim, and Neslin(2008)は、

─  ─88

資本の機会コストを算出する方法について議論する。この計算の重要手段は資本資産価格モデル

(CAPM)である。適切な割引率を特定するために CAPMを使用するのには、確立された理論

と方法論である。しかしここには複雑な問題もある。例えば、この理論によって設定される割引

率は、新規プロジェクト(たとえば、新規客獲得キャンペーン)が、企業の他のプロジェクトと

リスクが同程度であると仮定する。だが、新規プロジェクトがターゲットとする新規顧客が平均

的既存顧客よりもリスクが大きいと考えるならば、企業はより高い割引率を使用するだろう。

 この議論の詳細は、我々の範囲を超えているので、ここでは触れないが、重要なことは、適切

な割引率を特定するための確立された理論が存在していることである。しかし、その理論は、新

しいマーケティング活動での顧客のリスクが企業の既存顧客のものと同様であると仮定してい

る。実際は、顧客にはそれぞれ異なったリスクがあり、一概には言えない。従って、企業は「プ

ロジェクト特有」の、または、顧客毎に特定される割引率を導入しようとするかもしれない。問

題はこれをどう実際的に扱うかということである。プロジェクトや顧客によって異なる割引料金

の有用性を例証する、実証的な研究が必要である。

問題18:モデルにおける仮定の実証

 CLVモデルは仮定を立てるが、どのような環境下でその仮定が合理的で、仮定が満たされな

い場合にはその有効性はどう捉えるべきであろうか。例えば、顧客が「離脱」した場合、後に再

び活性化する可能性があるとして休眠顧客として扱うべきだろうか? この質問への回答は、分

析者が、顧客が「活性化」状態から出たり入ったりするモデルを使用するかどうかを決定する。

購買率を、顧客の生涯にわたり一定と見るか、生涯を通じて変化すると見るか。一次の静止モデ

ルを仮定しているが、この仮定は合理的か?合理的仮定がいくつもあるとき、あるいは、仮定が

間違っていたときどうなるかについて、一般的なガイドラインを持っていることは有用であろ

う。

結 論

 これまで我々は、CLVに関する一般化しうる命題および、一般化には不十分なものの示唆に

富む知見を明らかにしてきた。図2に、我々のレビューから研究成果を図示し、さらなる研究を

必要とする領域を明らかにする。図2の項目は、図1の先行要因と対応している。それぞれのバー

の長さは、マーケティング研究によって、CLVの先行要因がどれほどよく理解されているか、

についての我々の主観的評価である。

 一般化された命題ではすべて、関連性の存在は一貫して認められているものの、因果関係の方

向を理解する必要がある。マーケティング活動において、CLVとの確かな因果関係を明らかに

すべきである。マーケティング活動研究では、異なったライフサイクルステージにある顧客や、

異なる顧客セグメントへのプロモーションや戦略や価格戦略についての研究を探求し始めたばか

顧客生涯価値:実証を経た一般的法則と概念的課題

─  ─89

りである。ポイント制度が顧客にかけるプレッシャーや特典の影響についての研究もあるが、こ

ういった影響は CLVを向上するほどに大きなものではないかもしれない。最優良顧客アプロー

チとブランド中心的アプローチの戦略的問題についての議論もあるが、これについての研究は非

常に少ない。

 多くの研究が、顧客反応と CLVとの関係性を検討したが、因果関係は十分には理解されてい

ない。顧客満足と CLVは正の関係にあったが、相関関係は非常に小さなものであった。マーケ

ティング努力、RFM、クロス購買と、マルチチャネル購入は、いずれもCLVとの関連が認めら

れたが、その因果関係については明らかにされていない。我々が明らかにした4つの一般的法則

がいずれも因果関係に関わるものであることに留意されたい。マーケティングマネージャーのた

めには、これらの因果関係が整理され、方向性を規定するガイドラインとして明確化されなけれ

ばならない。

 我々は、CLVが顧客関係性によって生み出される将来キャッシュフローの正味現在価値であ

ると定義して研究を始めた。そして、この概念の理解に向けて成し遂げられた進歩と複雑さを指

摘した。4つの一般的法則と実証研究された他のいくつかの課題を明らかにしたが、さらなる研

究が求められる。CLVの領域には、興味深い知見とブレークスルーが残されている。本稿が、

今後の優れた成果に貢献することになれば幸いである。

図2 CLVに対する先行要因の影響

マーケティング マーケティング活動(2) 価格戦略(7) 特典(8, 11) 顧客とのコンタクト(接触)戦略(9, 10) 販売戦略(6) 最適なコスト/ブランド(12)情動 満足(1)顧客の反応 RFM(5, 17) クロス購買(3) マルチチャネル(4)

(←→)

(←→)

(←→▲)(←→)(←→)

領  域 理解されていないこと 完全に理解されていること

※括弧内の数字は問題番号を示す。また、両矢印は、因果関係の方向性が明らかでないことを示し、▲は矛盾する知見が存在することを示す。

─  ─90

訳者コメント

 私の勤務する株式会社ファンケルは、元々、通信販売が母体の会社であるが、現在は、通信販

売、直営店舗・インターネット・一般流通(CVS, GMS)等、様々なチャネルが確立されている。

お客様との絆作りのために、まさに本論にある顧客分析、マーケティング行動を日々行っている。

「顧客満足度、マーケティング努力、クロス購入、そしてマルチチャネルでの購入が、全てCLV

向上と好ましい関係を持っている。」とあるが、現在、自社においても、RFM分析、VOC分析、

マーケティングリサーチ、ネットでのクロスセル提案(レコメンド機能)等実施している。自社

の今後の課題は、「マルチチャネルの購入促進によって、CLVを向上させていくこと」である。

例えば直営店舗とインターネットを併用している顧客は、店舗のみで買い物する顧客・インター

ネットのみで買い物する顧客よりも、購入単価、継続率に関して高い数値が出ている。お互いの

チャネル特性を生かし、足りない部分を補完し合い、お客様をチャネル間で誘導することや、お

客様毎に最適なチャネルを選択して頂くことで、顧客満足度向上につなげることが大切である。

 本論は先行研究レビューであり、その中で紹介されているがまだ確たる証拠がない事例や、更

に深い研究が必要な事例について、自身の携わっている実務で明らかにしていきたいと強く感じ

た。私は、入社以来一貫して直営店舗運営に関わる仕事をしている。自社を取り巻く環境や直営

店舗というチャネルのあるべき姿、お客様のライフスタイル・ニーズについても、ここ数年目ま

ぐるしく変化している。その変化に迅速に対応し、お客様の「なりたい姿」に応え、信頼関係を

ともに築き、一生涯のお付き合いをしていくために有効なヒントが本論には多数あった。

 マーケティング競争が激化の一途を辿る中、常に顧客から「選ばれるブランド」であり続ける

ためには、お客様視点を忘れず、お客様自身がまだ気づいていないニーズを発見し、それを満た

し他社に先駆けて実現化していくことが重要である。本論は、顧客生涯価値向上を目指す多くの

企業にとって、大きな示唆を与えてくれるだろう。

参 考 文 献

─  ─91

インターネット環境におけるマーケティング戦略── Journal of Interactive Marketing の直近10年間の回顧と今後10年間の展望──

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執筆者紹介(掲載順)

久野慶一郎 株式会社ファンケル五十嵐正毅 九州産業大学商学部第一部講師加藤 祥子 目白大学社会学部専任講師小松 聰子 オリンパスイメージング株式会社松本 大吾 千葉商科大学サービス創造学部専任講師大瀬 良伸 東洋大学経営学部講師平野亜衣子 株式会社ファンケル

産研シリーズ No.46

2012年1月31日 発行  発行者 早 稲 田 大 学 産 業 経 営 研 究 所

所長 武井  寿  発行所 早 稲 田 大 学 産 業 経 営 研 究 所

〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1電 話 03-3203-9857FAX 03-3202-4274

  印刷所 三 美 印 刷 株 式 会 社

監  修

亀 井 昭 宏  早稲田大学商学学術院教授ルディー和子  早稲田大学大学院商学研究科客員教授         有限会社ウィトンアクトン代表取締役(社) 日 本 通 信 販 売 協 会

本研究は、㈳日本通信販売協会( )の寄付金を受けて「早稲田大学産業経営研究所ダイレクト・マーケティング戦略研究」の一環として実施したものです。

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Research Institute ofBusiness Administration

R.I.B.A