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モノ創りの科学 第5回 電気回路と電子回路 環境情報学部 高汐 一紀 電気の2つの意味.. エネルギーとしての電気 情報の表現手段・伝達手段としての電気 強電と弱電 パワーエレクトロニクス

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Page 1: fabrication 09 5 - Keio Universitykaz/fab/fabrication_09_5.pdf電気回路 電気を熱やエネルギーとして有効に利用するための回路 オームの法則 E = IR キルヒホッフの法則

モノ創りの科学 第5回

電気回路と電子回路

環境情報学部 高汐 一紀

電気の2つの意味..

エネルギーとしての電気 情報の表現手段・伝達手段としての電気

強電と弱電 パワーエレクトロニクス

Page 2: fabrication 09 5 - Keio Universitykaz/fab/fabrication_09_5.pdf電気回路 電気を熱やエネルギーとして有効に利用するための回路 オームの法則 E = IR キルヒホッフの法則

電気回路

電気を熱やエネルギーとして有効に利用するための回路

オームの法則 E = IR

キルヒホッフの法則 ‒ 第一法則

回路網上の任意の電流の分岐点において 電流の流入の和と流出の和は等しい

‒ 第二法則 回路網上で任意の閉じた環状の電路をたどる とき電路中の電源の電圧の総和と電圧降下の 総和は等しい

電子回路

電気を信号として用い情報の伝達や処理に利用する回路

家電を例に取ると.. ‒ 洗濯機 ‒ 電子レンジ ‒ エアコン

実際にはどこからどこまでが電気回路で,どこからどこまでが電子回路か..を区別することは難しい

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マクロとミクロ

エネルギーとしての電気 信号としての電気

⇒ 物理的な意味は同じ

電子回路 = デジタル 電気回路 = アナログ

⇒ これもウソ

扱い方の違い マクロな視点での特性とミクロな視点での特性

http://www.ssda.or.jp/energy/index.html

電子回路を構成する部品(電子素子)

受動素子 ‒ 抵抗器 ‒ コンデンサ ‒ コイル 能動素子 ‒ ダイオード ‒ トランジスタ

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抵抗器(電気抵抗・抵抗)

電流の流れに逆らう,抵抗する性質を持った素子 種類 ‒ 固定抵抗器 ‒ 可変抵抗器 ‒ 半固定抵抗器

素材 ‒ 炭素皮膜抵抗 ‒ ソリッド抵抗 ‒ 金属被膜抵抗 ‒ 酸化金属被膜抵抗 ‒ 巻線抵抗 ‒ セメント抵抗,他

コンデンサ(キャパシタ)

電子回路の中で電荷を蓄える素子 ‒ 電荷を情報として蓄える ‒ 一時的にプール/放出する調整池 ‒ 直流電流を阻止,交流電流を通過 ‒ 周波数が高くなるにつれ通しやすくなる

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コイル

電流の変化に対し逆向きの起電力を発生する素子 ‒ 直流は通すが交流を遮る性質を持つ ‒ 周波数が高くなるにつれて遮る強さは増す

今日のお題(その1):ラジオの基本

鉱石ラジオ・ゲルマニウムラジオ ‒ 増幅器が無くても聞こえるラジオ ‒ 電力が不要

電波から音を取り出す手順 ‒ 受信 ‒ 同調 ‒ 検波 ‒ 受話

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ラジオの基本:受信

変調波:搬送波+元の音声波形 ‒ AM:振幅変調 ‒ FM:周波数変調

+ =

搬送波 音声 変調波

ラジオの基本:同調

目的の電波(周波数)を選び取る コイルとコンデンサで構成される同調回路

コイルとコンデンサを並列に接続接続すると,低い周波数の電流はコイルに,高い周波数の電流はコンデンサに流れてアースに..そのちょうど境目の周波数「固有周波数」の電流だけが両方を通ることができずに次段の検波器へ流れる..

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ラジオの基本:検波・受話

同調された電流(音の情報が乗った波)から音の成分を取り出す 能動素子であるダイオードの性質を利用

今日のお題(その2)

赤外線(IR)コントロール

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電気と電子:マクロとミクロ

エネルギーとしての電気 信号としての電気

⇒ 物理的な意味は同じ

電子回路 = デジタル 電気回路 = アナログ

⇒ これもウソ

扱い方の違い マクロな視点での特性とミクロな視点での特性

http://www.ssda.or.jp/energy/index.html

電子回路を構成する部品(電子素子)

受動素子 ‒ 抵抗器 ‒ コンデンサ ‒ コイル 能動素子 ‒ ダイオード ‒ トランジスタ

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半導体(セミコンダクタ)とは?

半導体 ‒ 電気を通しやすい導体 ‒ 通さない不導体(絶縁物) ‒ 流しそうで流さない,流さないようで流す..

そんなニクイやつが半導体 ‒ 熱や光,磁場・電圧・電流などの刺激で

物性が動的に変わる

http://print.necel.com/ja/faq/f_semi.html

半導体 - Wikipedia

ミクロに見ると..

原子核と電子の関係 ‒ 原子核が持つプラス電荷と

同じだけの電子が周回 ‒ シリコン(Si)の場合

最外殻に4つの電子(価電子) さらに4つの電子が入る余裕

4

  は安定軌道

最外殻軌道が安定するには, さらに4つの電子が必要

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結晶の構造(Si)

共有結合(電子対結合) ‒ 4本の腕で隣り合う4つの原子と結合し ‒ 互いの価電子を共有することで安定する ‒ 常温に相当するエネルギーでも電子は

結合を離れて格子間に存在..  多少の導電性

不純物のドーピング

不純物 ‒ 5価原子(価電子5個):砒素(As)等 ‒ 3価原子(価電子3個):硼素(B)等

N型半導体 ‒ 4価原子のシリコン(Si)に5価原子を僅かに混入 P型半導体 ‒ 4価原子のシリコン(Si)に3価原子を僅かに混入

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N型半導体(シリコン+5価原子)

余分な電子により導電性が上がる ドナー ‒ 砒素(As),アンチモン(Sb)等

P型半導体(シリコン+3価原子)

正孔 ‒ 価電子が不足している状態 ‒ 正の電荷を持った荷電粒子のように振る舞う アクセプタ ‒ 硼素(B),ガリウム(Ga),インジウム(In)等

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ダイオード

N型半導体とP型半導体を接合したもの ‒ P型側電極:アノード ‒ N型側電極:カソード 整流作用 ‒ 電子の動き ‒ 正孔の動き

発光ダイオード

原理 ‒ 電子と正孔の衝突

(再結合) ‒ 低いエネルギー準位へ

移行する際,エネルギー を光として放出

NEDO:技術開発機構

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発光ダイオード

光の3原色 ‒ 70年代:

黄緑,黄,赤 ‒ 1993年:青 ‒ 1995年:緑 ‒ 1996年:白色

照明としての利用 ‒ 長寿命・省電力・

省スペース・低発熱 通信への応用 ‒ 高速のスイッチング ‒ 可視光通信・赤外線通信

NEDO:技術開発機構

フォトダイオード(フォトトランジスタ)

発光ダイオードの逆の原理 ‒ 光のエネルギーにより,伝導電子と正孔が発生(光起電力) ‒ 通常は逆方向に電圧(僅かな電流しか流れない状態) ‒ 光起電力によって増加した電流を計測

フォトダイオード+増幅回路 ⇒ フォトトランジスタ

発光ダイオードと組み合わせた 信号の送受信 イメージセンサ(CCD)

社団法人 ソーラシステム振興協会

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リモコン(赤外線 Ir)

40kHz前後に変調した 制御信号の送受信

トランジスタ

20世紀最大の発明 ‒ AT&Tベル研 ブラッデン,バーディーン,ショックレー

(1948年6月30日) ‒ NHK技研 内田秀男氏が先に発明を報告していたが,

GHQの検閲で闇に葬られた..との説もある ‒ 1954年頃,東京通信工業(現SONY)で国産化,

翌年同社からトランジスタラジオが商品化 2つの用途 ‒ 増幅作用

電流の増幅 電圧の増幅 電力の増幅

‒ スイッチング作用 論理演算回路

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トランジスタ

トランジスタの構造 ‒ P型半導体とN型半導体を交互に

3つ接合 ‒ ダイオードを向かい合わせ,

または背中合わせにした構造 ‒ PNP型とNPN型

増幅作用 ‒ 「ベース電流を土台」として

「エミッタが放出した電子」を 「コレクタが受け取る」(NPN型)

‒ ベースに流れる電流の変化が コレクタ・エミッタ間の電流を 大きく変化させる

スイッチング作用

PMOSトランジスタのスイッチング動作

S G D

MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ ‒ 3つの電極:ソース,ドレイン,ゲート ‒ 電界効果型トランジスタの一種

ゲートに電圧を加えることでトランジスタのスイッチングを制御

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論理演算

入力 出力 A out 0 1 1 0

入力 出力 A B Y 0 0 0 0 1 1 1 0 1 1 1 1

論理 論理式 回路記号 (MIL) NOT A OR A + B

AND A・B XOR A + B NOR A + B

NAND A・B

論理演算

入力 出力 A B Y 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 1 1

論理 論理式 回路記号 (MIL) NOT A OR A + B

AND A・B XOR A + B NOR A + B

NAND A・B

入力 出力 A B Y 0 0 0 0 1 1 1 0 1 1 1 0

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論理演算

入力 出力 A B Y 0 0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 0

論理 論理式 回路記号 (MIL) NOT A OR A + B

AND A・B XOR A + B NOR A + B

NAND A・B

入力 出力 A B Y 0 0 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0

CMOS論理回路

2種のMOSトランジスタの組み合わせ ‒ N型:チャネル(ゲート)がN型半導体(PNPの組み合わせ) ‒ P型:チャネル(ゲート)がP型半導体(NPNの組み合わせ)

論理演算回路 ‒ NOT ‒ NAND ‒ NOR

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ムーアの法則

今日の課題

受信への苦難の道.. ‒ ゲルマニウムラジオのキットを組み上げてみる ‒ 2人~3人でグループを作ってください ‒ もしくは自身でキットを入手(鉱石ラジオ等) ‒ 受信の状況,工夫したコト等々,報告してください 提出先:SFC-SFS 授業ページ 期限:6月2日(火)12:00 まで モノ創り実験工房 ‒ 月曜日 5・6限 ο23

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秋月電子の商品補足から.. コイルの線は細いので切れないように気をつけてください。 コイルは固定されないのでテープなどで固定してください。 付属のアンテナは単線なので固いです。 周波数はトリマーをドライバーなどで回して調整してください。 ‒ 何回も回りますが1周すると元の周波数に戻ります。 ‒ ゆっくり回さないと放送が聞こえる前に周波数が変わってしまいます。

ゲルマラジオは長いアンテナやコンセントアンテナなどを使用しないと 聞こえません。また遠方では聞こえません。聞こえない場合は以下を試してみてください。 ◎10~15m程度のビニール線を庭などに出して、片方を ゲルマラジ

オのアンテナ端子につけてみる。 ◎AC100Vのコンセントの片方に対して47pF程度の セラミック

コンデンサーを間に挟んだ上でゲルマラジオのアンテナ端子に つけてみる。(片方だけです!感電注意!!)

実装例(基板の色が違います..)

http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-00907/

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ヒント

ループアンテナの構造 http://aomorikuma.hp.infoseek.co.jp/making/

260pf.htm#loop_vc 電灯線アンテナのアイデア http://www.zea.jp/audio/ge3/ge3_01.htm 製品ページ http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-00907/ 原理解説 http://www.k5.dion.ne.jp/~radio77/