量子操作と量子測定がひらく...
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量子操作と量子測定がひらく量子情報処理
一般物理分野(A5サブコース) 村尾美緒
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+一般物理って。。。
n 多分、東大理物における特殊用語(他ではあまり聞かない)
n 物性物理学、素粒子・原子核物理学以外の分野
n 実験系はA6サブコース、A7サブコース、A8サブコース
n 理論系はA5サブコース
一般物理
物性
素粒子 原子核
宇宙
misc (miscellaneous)、ごった煮?
宇宙物理学、レーザー科学、量子光学、量子情報、 プラズマ物理、流体物理学、非平衡物理学、生物物理学
量子情報 (辺境…)
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+量子情報
n 量子力学で許されるすべてのツールを使って、古典力学ではできない(主に情報がらみ)の色々なことをしたい!
n 複雑な計算を早くしたい:量子計算
n 秘密通信の安全性を高めたい:量子暗号
n 通信効率を上げたい:量子通信
n より精密な測定をしたい:量子度量衡学
n ….
Q
Q
Q
Q
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+なぜ量子力学で情報を考えるのか?
n 従来のテクノロジー n ナノテクノロジー
1量子状態制御
相互作用制御
1量子測定
マクロレベルでの制御・操作 ミクロレベルでの制御・操作
我々は、量子の世界を制御・操作できるツールを手に入れつつある。この“器用さ”の変化によって、究極的には、従来は不可能であった何ができるようになるのか?
量子状態の集まり
テクノロジーの発展による大きな進歩
不器用…
器用!
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+量子力学で許されるすべてのこと
n ハミルトニアンを自由にデザインできるとした場合の量子力学的なユニタリ時間発展(シュレディンガー方程式の解)ができる
n 系を追加して、相互作用させることによって、より大きな系をつくることができる
n 量子測定(確率的な状態変化を引き起こす操作)ができる
n 量子測定の結果に応じて、別の量子測定を行ったり、ユニタリ時間発展を選んだりできる
n 通常の物理学: 自然な状況で、ハミルトニアンによって記述される系の性質を調べ、予言する
量子力学ゲームのルール:
量子操作、量子測定、制御操作(if 文で表されるような操作)
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graphite diamond
非直感的な量子力学的効果
n 自由に重ね合わせ状態を作ることができる 量子的な箱
n 測定によって確率的な状態変化が起きる
n エンタングルメントがある 二つの量子的な箱
ψ =
( )= +12
ξ,η 測定した時に初めて瞬時に値が決まる 選んだ測定の種類によって、値が異なる
0 1
0 1
Φ =
( )+12
重ね合わせ状態
Earth Milky way
確率 12
12
12
12
非局所的相関 確率
Spooky action at a distance!
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+基礎と応用が裏表
量子計算機:量子力学で許されるすべての操作を行うことができるマシン
このマシンを使うことで、古典力学系における直感に反する事象(量子効果)を探し出して、量子計算、量子暗号、量子通信、量子度量衡学などに利用したい。
マシンの性質を理解すること
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マシンを使って何かおもしろいや役立つことをすること
問題点:大規模な量子計算機はまだ存在しない。。。
操作性に制限のある量子計算機でできることは?
基礎科学
応用科学
Q
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+最近の研究室のテーマ(分野一覧)
n エンタングルメント理論 n 量子状態アンサンブルのエンタングルメント研究、測定ベース量子計算の資源としてのエンタングルメントの解析
n 分散型量子情報処理 n ネットワーク量子計算、量子計算ネットワーク符号化
n 量子計算アルゴリズム n 未知ハミルトニアンのエネルギー固有状態測定、熱平衡化アルゴリズム
n 量子測定 n 未知量子状態に量子測定や量子推定をして、状態の情報を知る
n 量子力学基礎論 n 量子力学より強い非局所相関がある場合の情報理論、量子系のエネルギー交換に関する揺らぎの定理
ネットワーク符号化理論、グラフ理論
量子制御理論、計算理論、マルコフ鎖
推定理論、統計論、暗号理論
情報理論、計算機科学理論
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+最近の研究成果のいくつか
量子力学に起因する制限を巧みにかわして役立つことをしよう
n 未知ハミルトニアンの固有状態への射影測定アルゴリズム
量子力学を「外側」から理解する
n 情報因果律と非局所的相関
制限のある量子計算機を用いて役立つことをしよう
n 量子力学的な“乱数”の作り方
E. Wakakuwa and M. Murao, New J. Phys. (2012)
S. Nakayama, A. Soeda and M. Murao, in preparation
Y. Nakata and M. Murao, arXiv:1206.4451
nビット + 相関
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+未知ハミルトニアンの固有状態への射影測定アルゴリズム
n ハミルトニアンのよくわからない系が与えられたとき、量子計算機と接続することによって、そのハミルトニアンのエネルギー固有状態のいずれかに射影測定をするアルゴリズム。
interaction Quantum computer
Hamilton dynamics
ただし、ハミルトニアンは不明
ハミルトニアンに依存しない相互作用
1量子測定
不明
を作り出すことができる 量子位相推定アルゴリズムを使う
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+物理系のノイズ制御をヒントにして 位相推定アルゴリズムに乗せる
n 位相推定アルゴリズムでは、制御ユニタリ化したゲートが必要。
n 未知ハミルトニアンの時間発展を正確に制御ユニタリ化することは量子力学で禁止されている。
n 物理系のノイズ制御で使われるダイナミカルカップリング法をうまく用いて、未知ハミルトニアンの時間発展を制御ユニタリ化を近似
ancilla | 𝜓⟩
I/d I/d I/d
U1/n
U1/n
⇒ 位相推定アルゴリズムに乗せることができ、 エネルギー固有状態への射影測定ができた
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+量子力学を外側から理解する: 情報因果律と非局所的相関
量子力学特有の非局所的相関:エンタングルメント
n 非局所的相関の強さを評価する不等式:CHSH不等式(ベル不等式)
n 量子力学での限界:
n 特殊相対論に反しない理論での限界 (no signaling): 4
それでは、量子力学の外側(ただし、特殊相対論には反しない範囲の理論)で許される非局所的相関を用いると、計算が速くなったり、実際の通信量より大きい通信ができるようになったりするか?
A1B1 + A1B2 + A2B1 − A2B2 ≤ 2A1 = σ z +σ x( ) / 2,A2 = σ z −σ x( ) / 2,B1 =σ z ,B2 =σ x
局所実在論での限界
2�
2
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+相互情報量と情報因果律
n 従来の研究では、
我々は、操作論的な意味を持つ相互情報量を定義して、??=nであることを証明した。→ 量子力学より強い相関でも通信の役に立たない!
この相互情報量は、Tsirelson boundを超える相関をもつ理論では、通常の相互情報量で成り立つチェイン律が成り立たないことも示した。
古典力学および量子力学 量子力学より強い相関を持つ理論
Tsirelson bound
nビット + 相関 = nビット
nビット + 相関 = ?? ビット ?? � n?
E. Wakakuwa and M. Murao, New J. Phys. (2012)
I(X : Y |Z) = I(X : Y, Z)� I(X : Z)チェイン律
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+量子力学的な“乱数” (ランダム状態) の作り方
古典ビット 量子ビット 乱数 ランダム状態
i, j, k, ...
i, j, k, ... � {0, 1}=
�
i,j,...
ci,j,... |i, j, . . .�|�({ci,j,k,...})�
i, j, k, ... � {0, 1}ci,j,k,... � R
ランダム状態: n量子ビットのとりうるすべての量子状態からのランダムサプリング
乱数: nビット列のとりうるすべてのビット列からのランダムサプリング
Y. Nakata and M. Murao, arXiv:1206.4451
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+ランダム状態ランダムサンプリング
n 量子計算機を使っても、ランダム状態の完全なサンプリングを多項式時間で行なうことはできないことが知られている。
n ただし、多少のエラーを許すならば、量子計算機を使って多項式時間でランダム状態のサンプリングを行なうことができる。
n が、大規模な量子計算機が実現するのはかなり先の話。そこで、
Q 2体対角行列のみ
+ = N量子ビット状態の ランダムサンプリング
重ねあわせ 状態
重ねあわせ 状態
必要な対角行列ゲート
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+最後に: 量子情報の分野の研究の特徴
n 自由な発想で、直感にとらわれずに、面白い現象の発見とその応用を追求する
n 面白い問題を自分で考えて、解く
n 知識の積み重ねありきではないが、必要に応じて柔軟にある程度の知識を習得する必要 n 例:グラフ理論、マルコフ鎖、統計学、スピングラス理論、ネットワーク符号化理論、符号理論、カテゴリー理論、トポロジカル場の理論、。。。。
n 境界領域(辺境領域?)ということで、多彩な背景を持つ国際的な研究者との議論を通じて、研究発展を進める必要
または一般物理分野にあてはまるかも