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研究所ニュース 建設技術展2014近畿、土研新技術ショーケース2014in 大阪 土木の日 2014 一般公開、建設技術フォーラム2014in 広島への出展 寒地技術推進室 1.はじめに 寒地土木研究所では各種の技術展示会等において研 究成果の普及活動を推進しています。その一環として 建設技術展2014近畿、土研新技術ショーケース2014in 大阪、「土木の日」2014一般公開、建設技術フォーラ ム2014in 広島に出展してきましたので報告します。 2.建設技術展2014近畿 平成26年10月29日(水)~30日(木)、大阪府大阪市「マ イドームおおさか」において、日刊建設工業新聞社お よび一般社団法人近畿建設協会主催による「建設技術 展2014近畿(ええもん 技術 使こて、ええもん創ろ!)」が 開催されました。「建設技術展2014近畿」は、民間企 業が開発した新技術・新工法を展示・紹介する場にお いて、産・学・官の交流により、これまで培われてき た建設技術のより一層の高度化や、より広範囲な技術 開発の促進へとつなげ、新技術の各工事への積極的な 活用を促すことを目的として開催され、出展企業・団 体数は155、出展は192ブース、両日の来場者数は14,839 名と主催者から発表がありました。 寒地土木研究所から「河川津波における遡上距離・ 遡上高の推定手法」と「ワイヤーロープ式防護柵」に 関するパネル等を展示しました。「河川津波における遡 上距離・遡上高の推定方法」は、寒地技術推進室道東 支所の佐藤研究員が説明にあたり、iRIC を活用したシ ミュレーション方法の詳細な内容について説明しまし た(写真-1)。「ワイヤーロープ式防護柵」は、土木 研究所での性能確認試験時の撮影データをモニターで 映していたところ、現役当時に試験に携わっていたと いう方が訪れ、試験時の状況を詳しく話していただき ました。また、「2車線道路において中央分離施設と して設置してほしい区間があるが、何処にお願いすれ ば良いのか。」といった質問を受けました。 会場内では「学生のためのキャリア支援~相談にの ります、将来への道づくり~(土木学会関西支部)」と いう学生がリクルート活動する会場が設けられ、近畿 地方整備局や大阪市といった官公庁、高速道路・鉄道、 総合建設業・建設コンサルタント・橋梁メーカーが仕 事の具体的な内容や魅力について学生へプレゼンテー ションし、地元の貴重な人材を地元で確保するといっ た取り組みに対する驚きとインフラ整備のための人材 育成への熱意を感じました。 3.土研新技術ショーケース2014in 大阪 平成26年11月13日(木)、大阪府大阪市「大阪科学技 術センター」において「土研新技術ショーケース2014 in 大阪」が開催されました。この土研新技術ショーケ ースは、研究開発された技術等を社会資本整備や管理 に携わる幅広い技術者への講演およびパネル・模型等 の展示により開発技術を紹介するとともに、当該技術 等の適用に向けての相談等に応じることを目的に開催 し、来場者数は277名となりました。 講演は、国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所 長鈴木勝氏から「近畿技術事務所における新技術への 取組について」と題し、近畿地方整備局における技術 開発・導入等に関して具体的事例を紹介していただき ました。特別講演は、新技術活用システム検討会議座 長・京都大学名誉教授嘉門雅史氏から「建設技術開発 写真-1 iRIC を活用したシミュレーション 方法について説明する佐藤研究員 70 寒地土木研究所月報 №741 2015年2月

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研究所ニュース

建設技術展2014近畿、土研新技術ショーケース2014in 大阪土木の日 2014 一般公開、建設技術フォーラム2014in 広島への出展

寒地技術推進室

1.はじめに

 寒地土木研究所では各種の技術展示会等において研究成果の普及活動を推進しています。その一環として建設技術展2014近畿、土研新技術ショーケース2014in大阪、「土木の日」2014一般公開、建設技術フォーラム2014in 広島に出展してきましたので報告します。

2.建設技術展2014近畿

 平成26年10月29日(水)~30日(木)、大阪府大阪市「マイドームおおさか」において、日刊建設工業新聞社および一般社団法人近畿建設協会主催による「建設技術展2014近畿(ええもん技術使こて、ええもん創ろ!)」が開催されました。「建設技術展2014近畿」は、民間企業が開発した新技術・新工法を展示・紹介する場において、産・学・官の交流により、これまで培われてきた建設技術のより一層の高度化や、より広範囲な技術開発の促進へとつなげ、新技術の各工事への積極的な活用を促すことを目的として開催され、出展企業・団体数は155、出展は192ブース、両日の来場者数は14,839名と主催者から発表がありました。 寒地土木研究所から「河川津波における遡上距離・遡上高の推定手法」と「ワイヤーロープ式防護柵」に関するパネル等を展示しました。「河川津波における遡上距離・遡上高の推定方法」は、寒地技術推進室道東支所の佐藤研究員が説明にあたり、iRICを活用したシミュレーション方法の詳細な内容について説明しました(写真-1)。「ワイヤーロープ式防護柵」は、土木研究所での性能確認試験時の撮影データをモニターで映していたところ、現役当時に試験に携わっていたという方が訪れ、試験時の状況を詳しく話していただきました。また、「2車線道路において中央分離施設として設置してほしい区間があるが、何処にお願いすれば良いのか。」といった質問を受けました。 会場内では「学生のためのキャリア支援~相談にのります、将来への道づくり~(土木学会関西支部)」と

いう学生がリクルート活動する会場が設けられ、近畿地方整備局や大阪市といった官公庁、高速道路・鉄道、総合建設業・建設コンサルタント・橋梁メーカーが仕事の具体的な内容や魅力について学生へプレゼンテーションし、地元の貴重な人材を地元で確保するといった取り組みに対する驚きとインフラ整備のための人材育成への熱意を感じました。

3.土研新技術ショーケース2014in 大阪

 平成26年11月13日(木)、大阪府大阪市「大阪科学技術センター」において「土研新技術ショーケース2014in 大阪」が開催されました。この土研新技術ショーケースは、研究開発された技術等を社会資本整備や管理に携わる幅広い技術者への講演およびパネル・模型等の展示により開発技術を紹介するとともに、当該技術等の適用に向けての相談等に応じることを目的に開催し、来場者数は277名となりました。 講演は、国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所長鈴木勝氏から「近畿技術事務所における新技術への取組について」と題し、近畿地方整備局における技術開発・導入等に関して具体的事例を紹介していただきました。特別講演は、新技術活用システム検討会議座長・京都大学名誉教授嘉門雅史氏から「建設技術開発

写真-1 iRIC を活用したシミュレーション

     方法について説明する佐藤研究員

70 寒地土木研究所月報 №741 2015年2月

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構造物および気象条件によって複雑に変化し、人の目では正確な判別が難しく、主観による個人差があることから、判断の的確性に限界が生じています。路面のすべり抵抗値を連続的に測定可能な「連続路面すべり抵抗値測定装置」による測定データを道路管理者にリアルタイムに情報発信することができ、また、冬期道路の性能を評価するための種々の分析が可能となっている「冬期路面すべり抵抗モニタリングシステム」について発表しました。開発に至った経緯、路面のすべり計測技術やすべり抵抗測定結果等について詳しく説明していました。質疑・応答では、「装置の開発において、普通路面と雪氷によるすべる路面でのすべり抵抗値は同じように数値で表されるのか。」、また「速度の変化により、すべり抵抗値は変わるのか。」といった質問に対して、「すべり抵抗値として数値化され、速度によるすべり抵抗値は変化しない。」と応えていました。コメンテーターである日本建設業連合会関西支部土木工事技術委員会副委員長の内藤雅文氏からは「路面すべり抵抗値測定装置を導入している事業者はあるのか。」、また「導入時の価格は?」といった質問があり、「導入実績は現在のところはないが、次年度以降に導入する予定あり、導入価格は450万円程度となっている。」と応えていました。

4.土木の日 2014 一般公開

 平成26年11月15日(土)に国土交通省国土技術政策総合研究所と土木研究所との共催で 「土木の日2014一般公開 」が開催されました。この催しは、「土木の日(11月18日)」にちなんで、広く一般の方に両研究所と土木についての理解を深めてもらうことを目的として、実験施設の公開や土木体験教室等を行うもので、当日は家族連れが多数訪れ、1,057名の来場者数となりま

への新たな視点-NETIS の改善施策-」と題し、これまでの建設技術開発から今後の建設技術開発について「産・学・官が一体となった取組みが重要である。」と締め括られていました。 当日紹介しました講演技術は、「道路インフラ管理技術」、「環境・下水道技術」、「地盤・災害対応技術」の3テーマが設けられ、9技術(表-1)が講演されました。寒地土木研究所からは、道路インフラ管理技術テーマに「冬期路面すべり抵抗モニタリングシステム」について、寒地交通チーム徳永ロベルト主任研究員が講演しました(写真-2)。 冬期における路面状態は、沿道環境や橋梁等の道路

写真-2 講演する徳永主任研究員

表-1 講演(発表)技術一覧

寒地土木研究所月報 №741 2015年2月�� 71

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6.おわりに

 今回は「建設技術展2014近畿」、「土研新技術ショーケース2014in 大阪」、「『土木の日』一般公開」、「建設技術フォーラム2014in 広島」に出展・参加し、開発技術について紹介しました。各出展において、寒地交通チームの「ワイヤーロープ式防護柵」のパネルおよび実車による性能確認試験映像を展示し、来場者から「自分たちが住んでいる地域にも2車線道路で、正面衝突事故等の防止のために設置してほしい。」といった声を多数聞くことができました。このような来場者からの声を反映する取り組みが必要であり、国土交通省各地方整備局や関係する県・自治体等への普及活動が必須となると思われます。今後は関係するチームと情報共有し連携を図りながら対応していければと考えています。

(文責:寒地技術推進室 竹ヶ原 一郎)

5.建設技術フォーラム2014in 広島

 平成26年11月21日(金)~22日(土)、広島県広島市「広島県立広島産業会館」において、建設技術フォーラム実行委員会主催による「建設技術フォーラム2014in 広島�~地域づくりを支える建設技術~」が開催されました。このフォーラムは、多発する自然災害への対応や、安全で安心して生活できる地域づくりのため、建設業は常に新しい技術の開発に取り組み、これらの建設技術を一堂に集め紹介することを目的とし、出展企業・団体数は54、出展ブースは66、両日の来場者数は7,000名と主催者から報告がありました。

 寒地土木研究所からは「汎用二次元氾濫計算ソフトを用いた洪水の氾濫範囲推定手法」の技術に関して、寒地河川チーム柿沼総括主任研究員がプレゼンテーションセミナーを行いました。北海道大学と共同開発した汎用二次元氾濫計算ソフト「Nays2D�Flood(iRICソフトウエア)」を活用して洪水や津波規模別の氾濫範囲計算が行えます。事前に洪水や津波規模別の氾濫範囲を把握しておくことにより、河川管理者や自治体防災担当者にとって緊急を要する防災・減災対応の判断を支援することができる技術であるということを発表しました(写真-4)。出展ブースでは、CERI1D(iRICソフトウェア)を用いた1次元計算モデルによる河川津波における遡上距離・遡上高の推定手法についても説明し、防災・減災のために活用してほしいと伝えていました。

した。 寒地土木研究所のブースは、国土技術政策総合研究所の1階ロビーに設けられ、「ワイヤーロープ式防護柵」および「高盛土に対応した新型防雪柵」の模型のほか、積雪寒冷地の開発技術に関する8技術のパネルを展示しました。寒地交通チームの高田研究員が「ワイヤーロープ式防護柵」について、新しい中央分離施設の必要性や開発技術について紹介しました(写真-3)。また、「高盛土に対応した新型防雪柵」の模型実験が好評で、パーツの入れ替え等を行ないながら、大勢の見学者に防雪柵の効果について紹介しました。吹雪により視界不良となる映像を見た方から「吹雪で前が見えなくなるなんて信じられない。北海道では当たり前におきることなのですか。」といった質問や「北海道に住んでいたけれど、スノーポールが吹雪で見えなくなって矢羽根を見て運転したことを思い出す。」と懐かしがっている方がいました。また、模型実験では、防雪林と防雪柵の効果が明瞭だったためか、それとも単に面白かったためか、何度も模型を訪れる子どもたちがいました。

写真-3 ワイヤーロープ式防護柵の模型を

   使用して説明する高田研究員

写真-4 プレゼンテーションセミナーで

    発表する柿沼総括主任研究員

72� 寒地土木研究所月報 №741 2015年2月