薬物モニタリング(tdm)について ·...
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薬物モニタリング(TDM)について:抗MRSA薬
鳥取市立病院 薬剤部森本 幸弘
当院採用抗MRSA薬
VCM TEIC ABK
LZD DAP(左)ファイザー㈱ ザイボックス®錠600mg(右)ファイザー㈱ ザイボックス®注射液600mg
(左)meiji seika ファルマ㈱ バンコマイシン塩酸塩 点滴静注用0.5g「MEEK」(右)東和薬品㈱ テイコプラニン点滴静注用200mg「トーワ」 武田テバファーマ㈱ アルベカシン硫酸塩注射液100mg「テバ」
MSD㈱ キュビシン®静注用350mg
抗MRSA薬の作用機序
TDM(薬物モニタリング)
濃度(mg/L)
副作用
曲線
効果
曲線
効果と副作用の反応率
2010
治療域
治療域
TDMが必要な薬剤は3種類のみ
VCM TEIC ABK
バンコマイシン(VCM)の特徴①
◆細胞壁合成を阻害し、殺菌的に作用する
グラム陰性菌には無効
◆各臓器への移行性あり(髄液へも移行する)
◆投与量:腎機能が正常な成人には、
通常15~20㎎/kg(実測体重)12時間毎
◆投与:1時間以上かける
急速投与した場合には、
レッドマン症候群おこすことがある
バンコマイシン(VCM)の特徴②
◆臨床効果(S. aureusに対して)
・AUC/MIC≧400が効果の目安
・重症例(菌血症, 感染性心内膜炎など)に
対しては、 トラフ濃度15-20mg/mLを目標
◆有害事象に関連して
・有害事象等を考慮すると、
トラフ濃度として20mg/mL以下が推奨
VCMの感受性
バンコマイシンに対する
MIC ≧2μg/mLのMRSAが増加している
何が問題か?
MIC ≧2μg/mLのMRSAでは、
AUC/MIC≧400以上が確保しにくいため、
バンコマイシンでの効果が期待しにくい。
時間
血清ハンコマイシン濃度
MICとVCMの治療効果
MIC=1μ g/mlの場合
AUC24/MIC=420>400
MIC=2μ g/mlの場合
AUC24/MIC=210<400
↓
MIC=2μg/mlでAUC24/MIC=420>400するためには、トラフ値=20が必要
ピーク値25
トラフ値10
初回投与設計初回投与設計
1回投与量
VCMの標準投与量 △975㎎
1回15~20㎎/kg×2/日 ○1000㎎
体重65kg ○1250㎎
1回975~1300㎎×2/日 △1300㎎(1950~2600㎎/日)
テイコプラニン(TEIC)の特徴
◆細胞壁合成を阻害し、殺菌的に作用する
◆VCMより脂溶性が高く、分布容積が大きい
ため、良好な組織移行性が期待できる
(髄液への移行は不良)
◆副作用:腎障害, 第8脳神経障害、肝障害
◆注意事項:
有効濃度への到達が遅いので、
ローディング(負荷投与)が必要
テイコプラニン(TEIC)の特徴
例えば、60歳男性, 55kg, Ccr 75mL/minの人に
初日投与量:200㎎×2維持投与量:200㎎/day
初日投与量:400㎎×2維持投与量:400㎎/day
適切なローディングドーズ、投与量でないと有効血中濃度域に達し難い
アルベカシン(ABK)の特徴
◆細菌の蛋白合成を阻害し、殺菌的に作用
グラム陰性菌にも感受性あり
◆胸水・腹水・心嚢液・滑膜液への移行は良好
(髄液への移行は不良)
◆1日1回投与
◆効果は濃度依存性:Cmax/MIC
◆副作用:腎障害, 第8脳神経障害
副作用モニタリング~特に押さえておきたい副作用
腎障害 肝障害レッドマン症候群
難聴
VCM ○ ○ ○
TEIC△
VCMに比べて頻度が少ない
○ ○
ABK ○ ○
TDM(薬物モニタリング)
濃度(mg/L)
副作用
曲線
効果
曲線
効果と副作用の反応率
2010
治療域
治療域
TDM実施で必要なポイント
TDM業務の実際
◆情報収集
年齢
性別解析ソフトの
体重 血中濃度シミュレーション
血清クリアチニン値
併用薬副作用発現防止
臓器障害の有無
TDM業務の実際
◆適切な点滴時間
VCM 1時間以上かけて点滴・・・・・時間依存性(1回1gを超える場合は、0.5gあたり30分を目安に延長)
⇨レッドマン症候群を回避するため
TEIC 30分以上かけて点滴・・・・・ 時間依存性
ABK 30分点滴 ・・・・・ 濃度依存性⇨ピーク値↑で効果↑
TDM業務の実際
◆採血ポイント : 定常状態時で行う
血中濃度
時間
定常状態 投与量と排泄量が等しくなり、血中濃度の蓄積がなくなった状態
TDM業務の実際
◆投与間隔を遵守するVCM 1回1gを12時間毎に投与
TDM業務の実際
◆投与間隔を遵守する
投与間隔がバラバラ
TDM業務の実際◆血中濃度採血
トラフ値・ピーク値はどこか?
TDM業務の実際
◆血中濃度採血
トラフ値・ピーク値どちらを採血する?
VCM トラフ値 1ポイントのみ ・・・・推奨トラフ値:10~20μg/ml
TEIC トラフ値 1ポイントのみ ・・・・推奨トラフ値:15~30μg/ml
ABK トラフ値 と ピーク値 ・・・・推奨トラフ値:1~2μg/ml未満
・・・・推奨ピーク値:15~20μg/ml
血中濃度採血
採血時間を遵守する
〈例〉ABKのピーク値。推奨値:15~20μ g/ml
良し! 減量必要? 増量必要?
15
25
8
・・・高いなぁ
・・・低いなぁ
終了後30分 終了後1時間終了直後
血
中濃度
血
中濃度
血
中濃度
時間 時間 時間
解析ソフトを使用したTDM
症例症例:84歳 男性 体重43.7kg
MRSA感染症
血清クリアチニン 0.87mg/dL
7/8からバンコマイシン注 1日2回 1回500mg開始
投与日 投与予定時刻 投与時間 投与量 投与時間7月8日 16時50 500mg 60分7月9日 10時00分 10時13分 500㎎ 60分7月9日 22時00分 23時25分 500㎎ 60分7月10日 10時00時 10時02分 500㎎ 60分7月10日 22時00分 22時11分 500㎎ 60分7月11日 10時00時 10時04分 500㎎ 60分
7/11投与直前に採血あり⇒13.1μ g/dL7/11投与終了後2時間後に採血あり⇒20.6μ g/dL
症例: 84歳 男性 体重43.7kgMRSA感染症血清クリアチニン0.87㎎/dL
8日目でトラフ値が20.1となる
トラフ値が14.5となる
定常状態時のトラフ値が21.3
AUCが622.7 になる
定常状態時のトラフ値が14.5
AUCが467.3 になる
1日1回 1回750㎎に変更した場合
1日2回 1回500㎎で開始・継続した場合
TDMの効果
• 耐性菌の出現抑制
• 副作用発現リスクの軽減
• 薬剤投与日数の短縮
• 医療費の削減
初回投与時のシミュレーションも行います困った時は薬剤部へご相談ください
参考資料
Meiji SeiKaフェルマ株式会社 TDM解析ソフト
バンコマイシン「MEEK」TDM解析ソフト
ハベカシンTDM解析ソフト
アステラス製薬株式会社
テイコプラニンTDM解析支援ソフトウェア
ご清聴ありがとうございました