原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク...原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク...

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193 6 6 1 2 0 1 9 3 原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク 実態調査結果に基づく原価企画の基礎形態における実施レベルの探究 大槻 晴海 Ⅰ はじめに 原価企画は,多様な発展段階を経ながら,その究極的な発展形態である「あるべき姿」へ進 展すると考えられている。その生成以来,原価企画は,目的,管理対象,活動内容,適用段階 などの範囲を拡大しながら発展してきた(日本会計研究学会 1996)。 原価企画の発展段階に関する記述はいくつかみられる(たとえば,加登 1993;田中(雅) 1994, 1995, 2002;田坂 2008など)。しかし,原価企画の発展状況の多様さゆえ,どのような発 展形態を経ながら「あるべき姿」へ至るかは,いまだ明らかでない。また,原価企画の発展段 階が明らかでないことは,原価企画の導入企業が自らの原価企画活動についてそのレベル(実 施水準)を評価することを困難にしている。 そこで本稿は,原価企画活動を評価するためのフレームワークとそれを用いて原価企画の基 礎形態を提示することを目的とする。ただし,原価企画の概念および活動はいまや広範囲に及 ぶため,ここでは原価企画の中核に焦点を当て,前提としてその適用対象・範囲を限定した上 で,そこにおける活動内容を評価するためのフレームワークの構築を試みる。 以下の本稿の構成は次のとおりである。まず,原価企画の発展段階および評価に関する先行 研究をレビューし,その知見と課題を明らかにする。続いて,これまで蓄積されてきた知見に 基づいて原価企画活動の内容を明らかにし,その活動内容を評価するためのフレームワークを 構築する。次に,筆者らが行った原価企画についての実態調査結果を当該フレームワークに当 てはめ,実務ではどのような水準で原価企画の中核における活動内容が実施されいるかの一端 を明らかにすることによって,原価企画の基礎形態を探る。最後に,本稿で提示する評価フ レームワークの限界および今後の課題を述べる。

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Page 1: 原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク...原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク ― 実態調査結果に基づく原価企画の基礎形態における実施レベルの探究

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経 営 論 集6 6 巻 第 1 号2 0 1 9 年 3 月

原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク― 実態調査結果に基づく原価企画の基礎形態における実施レベルの探究 ―

大槻 晴海

Ⅰ はじめに

 原価企画は,多様な発展段階を経ながら,その究極的な発展形態である「あるべき姿」へ進

展すると考えられている。その生成以来,原価企画は,目的,管理対象,活動内容,適用段階

などの範囲を拡大しながら発展してきた(日本会計研究学会 1996)。

 原価企画の発展段階に関する記述はいくつかみられる(たとえば,加登 1993;田中(雅)

1994, 1995, 2002;田坂 2008 など)。しかし,原価企画の発展状況の多様さゆえ,どのような発

展形態を経ながら「あるべき姿」へ至るかは,いまだ明らかでない。また,原価企画の発展段

階が明らかでないことは,原価企画の導入企業が自らの原価企画活動についてそのレベル(実

施水準)を評価することを困難にしている。

 そこで本稿は,原価企画活動を評価するためのフレームワークとそれを用いて原価企画の基

礎形態を提示することを目的とする。ただし,原価企画の概念および活動はいまや広範囲に及

ぶため,ここでは原価企画の中核に焦点を当て,前提としてその適用対象・範囲を限定した上

で,そこにおける活動内容を評価するためのフレームワークの構築を試みる。

 以下の本稿の構成は次のとおりである。まず,原価企画の発展段階および評価に関する先行

研究をレビューし,その知見と課題を明らかにする。続いて,これまで蓄積されてきた知見に

基づいて原価企画活動の内容を明らかにし,その活動内容を評価するためのフレームワークを

構築する。次に,筆者らが行った原価企画についての実態調査結果を当該フレームワークに当

てはめ,実務ではどのような水準で原価企画の中核における活動内容が実施されいるかの一端

を明らかにすることによって,原価企画の基礎形態を探る。最後に,本稿で提示する評価フ

レームワークの限界および今後の課題を述べる。

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194 経 営 論 集

Ⅱ 原価企画活動の発展段階および評価に関する先行研究

1 原価企画活動の発展段階

 1996 年,日本会計研究学会原価企画特別委員会(小林哲夫委員長)は,それまでの原価企画

研究を総括し,原価企画の究極的な発展形態として「あるべき姿」を示した。それは,「製品の

企画・開発にあたって,顧客ニーズに適合する品質・価格・信頼性・納期等の目標を設定し,

上流から下流までのすべての活動を対象としてそれらの目標の同時的な達成を図る,総合的利

益管理活動」(日本会計研究学会 1996, 23 頁)という姿である。そのような原価企画のあるべ

き姿は,製品の企画・開発段階で適用されること,顧客ニーズに適合する諸目標が設定される

こと,製品ライフサイクル上の全活動が対象とされること,諸目標の同時達成が図られること,

総合的利益管理活動であることを本質的特徴とする。

 他方,原価企画の原初的生成形態とはどのような姿であろうか。原価企画の生成時期には諸

説あるが(1),トヨタ自動車でパブリカの開発時に行われた原価検討をそれとする見解が多い。

生成時の原価企画は,製品の企画設計段階での適用,市場志向による目標販売価格および製品

開発目標の設定,目標原価の細分割付(サプライヤーへの原価低減要請を含む),④製品開発の

下流(試作段階)での活動を対象といった特徴を持ち(岡野 2002; 田中(隆) 1994; トヨタ自動

車 1987; 丸田 2006; 諸藤 2011; 門田 1993),すでにあるべき姿を彷彿させる。しかしながら,前

田(2006)は,その活動が全社的ではなかったこと,原価削減のみを目的とした「原価の削ぎ

落し」であったことを指摘している(前田 2006, 6-8 頁)。

 トヨタ自動車での生成以来,原価企画は様々な企業でその形態が発展し(日本会計研究学会

1996),その究極的発展形態はいまや日本会計研究学会原価企画特別委員会が想定した姿とは異

なっているかもしれない。とはいえ,各企業が今日実践している原価企画は,「原価企画」と呼

ばれるものの原初的形態と究極的形態の間のどこかに位置づけられよう。それでは,そのよう

な原価企画の中間的発展形態として,先行研究ではどのような原価企画の姿が認められてきた

のであろうか。

 諸藤(2011)は,トヨタ自動車の原価企画が「総合的利益管理活動」に至った歴史的発展プ

ロセスを,自律的組織を支援するシステムの要素(市場志向,全社的 PDCA サイクルとのリン

ク,理解のしやすさ,迅速なフィードバック,責任の意識,厳しい目標,インタラクティブ・

コントロール・システム)の観点から,当社に関する文献に基づき,第 1 段階:価格・原価お

よび品質・信頼性の市場志向の形成,第 2 段階:複数尺度の目標同時設定・達成の仕組みの確

立,第 3 段階:長期経営計画とリンクした車種グループ別利益管理への展開,の 3 つの段階に

区分している(諸藤 2011, 61-66 頁)。

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195原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

 この諸藤(2011)による研究は,トヨタ自動車の原価企画が総合的利益管理活動に発展した

経緯を明らかにしようとしている点で興味深い。しかしながら,その原価企画の発展形態区分

は,自律的組織を支援するシステムの各要素の生成プロセスに注目したものであり原価企画活

動自体の内容の発展に注目したものではないこと,トヨタ自動車 1 社における発展段階でしか

ないこと,およそ原価企画が登場した 1959 年頃から総合的利益管理活動になったとする 1969

年頃までの期間に限られていることといった点で,原価企画の発展段階区分として一般化する

には限界がある。

 原価企画の発展段階については,加登(1993)が,実態調査結果およびトヨタ自動車と密接

な関係を持つダイハツ工業の事例を中心とした知見に基づき,「原価企画発展モデル」を概念的

に示している(加登 1992, 50-78 頁)。このモデルでは,原価企画の基本思想である「源流管理」

の進展に伴って,対象業務,対象組織,対象費目,VE のレベル,目的・目標原価の算定方法,

他のコスト・マネジメント手法との関係,原価企画支援ツールの整備状況の各側面で,原価企

画活動が洗練されて行くとされる。

 加登(1993)は,上記の各側面の進展度にある程度の対応関係を示唆しており,また原価企

画の発展プロセスにおける「パラダイム・シフト」にも言及している。さらに, 原価企画の発

展段階の理解が,原価企画の実施企業にとって自社の原価企画レベルを確認するガイドライン

となる点,原価企画の思想におけるパラダイム・シフトを確認できる点,および原価企画の潜

在力だけでなくその限界を正しく理解できる点で役立つことを指摘しており,原価企画の発展

段階を検討する上で多くの示唆に富む。しかしながら,そこでは原価企画の発展形態が段階的

に明示されていない。

 この点,田中(雅)(1994, 1995, 2002)は,長年にわたる原価企画に関する研究および指導

の経験に基づき,原価企画の発展段階を 5 つに区分する私見を展開し,各段階における形態の

特徴を具体的に述べている。その概略は次のとおりである(田中(雅) 1994, 8-13 頁 , 1995,

34-39 頁 , 2002, 20-22 頁)。すなわち,第 1 段階:開発設計の中後期における試作品などを中心

とした原価低減活動,第 2 段階:開発設計の中後期における目標製造原価の達成を目的とした

原価低減活動,第 3 段階:狭義の原価企画(2)にほぼ一致,第 4 段階:中長期の利益計画や製品

戦略の一環として位置づけられる,製品群別の原価管理・利益管理および管理会計システムに

よる測定・評価,第 5 段階:事業進出・撤退戦略および製品戦略の中心として,技術開発戦略

と関連づけた製品群別・ライフサイクル別の目標利益の確保と利益創造を志向した展開,である。

 このように,田中(雅)(1994, 1995, 2002)では,原価企画活動の内容を踏まえて,発展形

態が段階別かつ具体的に明示されており,原価企画の発展段階を識別する上で有用である。し

かしながら,その発展段階は,コスト・エンジニアリング(cost engineering)を原価企画概念

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196 経 営 論 集

の起源とするものであり(田中(雅) 1994, 1-4 頁),主として VE をベースとして考えられた発

展段階といえる。また,明確なフレームワークの下に各発展形態の特徴を整理したものではない。

 原価企画の発展段階を識別するフレームワークという点では,田坂(2008)が,「目的」

「ツール」「関連組織の考え方」「戦略性」の 4 つの視点からなるフレームワークを用いて,わが

国の原価企画研究(櫻井 2001; 田中(雅) 1995, 2002; 日本会計研究学会 1996; 吉田 2003 など)

の発展段階を次の 3 つの研究アプローチとして整理している(田坂 2008, 11-16 頁 , 25-32 頁)。

すなわち,第 1 段階:「管理工学的アプローチ」による「設計担当技術者が中心となって,原価

企画のツールづくりを行なった時代の原価企画」(田坂 2008, 11, 27 頁)に関する研究であり,

コスト・エンジニアリングを内容とする。第 2 段階:「原価低減活動アプローチ」による狭義の

原価企画に関する研究であり,新製品の企画・設計段階における組織内および組織間の関連組

織による原価低減活動を内容とする。第 3 段階:「戦略的コストマネジメント・アプローチ」に

よる広義の原価企画に関する研究であり,グローバルな競争環境下で「原価低減と利益管理を

図る,戦略的コスト・マネジメント」(櫻井 2015, 307 頁)を内容とする。

 実務と理論の相互発展的な関係を考えると,原価企画研究の進展に注目して原価企画の内容

を整理した田坂(2008)による発展段階区分は意義深い。しかしながら,そのことで原価企画

の実務的発展と理論的発展との間で発展段階の見解に混乱がみられる。また,原価企画の本質

はあくまで総合的原価管理であるとして総合的利益管理または利益企画という考え方を否定し

ている点(田坂 2008, 16-17 頁)は,原価企画の究極的発展形態である「あるべき姿」を狭く捉

えるものとして議論の余地があろう。とはいえ,原価企画の中核における活動内容についての

評価フレームワークを構築することを目的とする本稿にとって,原価企画の本質を総合的原価

管理に限定し,膨張した原価企画の姿を本来の核心的な姿に留めようとする田坂(2008)の見

解は示唆に富む。

2 原価企画活動の評価

 原価企画活動の評価を主題とする先行研究はほとんどみられない。関連する研究では,原価

企画と業績評価や報酬制度との関係に焦点を当てた研究や言及(岡野 1999, 2003, 2009; 望月・

加藤 2011; 西居ほか 2010; 山本ほか 2010)が増えつつあるが,いまだ先行研究に乏しい(西居

ほか 2010; 山本ほか 2010; 吉田 2003)。本稿は,これらの目標原価の達成状況に基づく業績評

価や報酬制度にではなく,原価企画活動というマネジメント・プロセスの評価に関心がある。

これに関する文献として,門田(1994),田中・大槻(2004a, 2004b)および田中(雅)(2006)

が,また関連する言及や記述として,吉田(2003),朴(2006)および伊藤(2012)を挙げるこ

とができる。

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197原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

 田中・大槻(2004a)は,狭義の原価企画活動における目標原価の設定・細分化とその達成支

援・管理活動の評価を,主として定量的に行うための考え方と方法について述べている。それ

は,マイルストーン管理における節目ごとに目標製造原価の明確な達成基準によって原価企画

活動を評価すること,および最終評価を製造段階で行うことを提案するものである。後者の最

終 評 価 に つ い て は, 門 田(1994) が「 原 価 企 画 実 績 評 価(Evaluation of Target Costing

Process)」と称して,「新車両がいよいよ生産に移され,製造や購買活動が行われた段階で,そ

の実績を測定して,原価企画の結果やプロセスを評価することである」(門田 1994, 134 頁)と

定義し,具体的な手順なども提示している(門田 1994, 134-136 頁)。また,朴(2006)は,「原

価企画活動によって生み出された製品の機能,品質,価格,信頼性,納期などの最終評価は顧

客によって行われる」(朴 2006, 4 頁)と述べ,原価企画の最終評価を顧客や消費者に委ねる考

えを示している。しかしながら,いずれも主として原価企画活動の結果を評価するものであり,

活動内容や実施能力を評価するものではない。

 原価企画活動の内容の評価という点では,田中(雅)(2006)が,広義の原価企画活動の評価

を 3 つの観点から捉え,「原価企画活動の仕組みと運用状況の評価」に言及している(3) (田中

(雅) 2006, 115-116 頁)。その具体的な評価項目には,目標利益(率)・目標原価の企画活動の評

価,目標原価の確認と細分化ならびに目標利益の配分活動の評価,開発設計段階における目標

利益(率)・目標原価の達成推進と支援活動の評価,目標利益(率)・目標原価の達成管理活動

の評価,製造段階以降の活動における目標利益(率)・目標原価の達成推進・支援活動の評価が

含まれる。

 また,伊藤(2012)は,原価企画活動の強化を目的に,BSC(balanced scorecard)の内部

業務プロセスに「源流からの VE の強化」と「節目管理の強化」を位置づけ,それを支援する

「原価企画力の向上」をインタンジブルズの観点から「組織体制力」「採算管理力」「仕組力」

「ツールカ」「スキルカ」に分類して測定・管理する A 社の取組みを紹介している(伊藤 2012,

114-116)。この取組みは,BSC と原価企画を結びつけ,原価企画活動の内容およびそれを実現

する基となる能力を評価・向上させようとするものであるといえる。

 加えて,原価企画の評価に関する研究ではないが,吉田(2003)は,実証研究のために作成

した自らの調査票が原価企画能力を測定するための具体的尺度を提供するとして,これを原価

企画能力の社内調査に利用し,時系列分析や開発拠点または事業単位間での比較分析を行うこ

とを勧めている(吉田 2003, 211 頁)。そして,「原価企画能力のさらなる革新のためには,そ

の成果を測定し,変革・改善していく必要がある」(吉田 2003, 212 頁)とも述べ,原価企画能

力の測定・評価とそれに基づく変革・改善の必要性を指摘している。

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 これまで本節では,原価企画活動の発展段階および評価に関する先行研究をレビューしてき

た。前者については,いくつかの先行研究において言及されてきたものの,原価企画の発展段

階または中間形態の区分はいまだ曖昧さを残しており一般化がなされていない。また,後者に

ついては,関連する研究において原価企画と業績評価や報酬制度との関係に焦点を当てた研究

が増えつつあるものの,マネジメント・プロセスとしての原価企画活動の内容や実施能力の評

価に関する議論に乏しい。加えて,原価企画活動の発展段階と評価を組み合わせて,原価企画

の形態が異なる発展段階ごとに活動内容や実施能力を評価するという視点に欠けていることを

指摘できる。

 原初的形態から究極的形態までの間に多様な中間的発展形態を有する原価企画の活動内容や

実施能力を評価しようとする場合,少なくとも次の関連する 2 つの論点があると考える。すな

わち,①評価対象とする原価企画活動がどの発展段階または中間形態に相当するかの特定,②

ある発展段階または中間形態における原価企画活動レベルの客観的な測定および評価,である。

しかしながら,いまだ原価企画の発展形態に応じた活動内容や実施能力の評価を実現するフ

レームワークがない。

 そこで次節では,まず多様な原価企画の形態において基礎となる諸要素を体系化することに

よって原価企画の中核を規定し,そこにおける諸活動を評価するための概念的フレームワーク

の構築を試みる。

Ⅲ 原価企画活動の評価フレームワーク

1 原価企画の中核の定義および対象・範囲

(1)原価企画の中核の定義

 従来,原価企画は多様に定義されてきた。趙(2014)は,原価企画の先行研究文献 96 編にお

ける 106 個の定義の内容分析によって,原価企画の定義における「必須要素」と「追加的要

素」(4)を識別した。そして,原価企画が導入されているとの判断基準として用いるため,最低

限の必須要素である「源流管理」要素(製品開発の各段階)と「目的」要素のうちの「原価管

理目的」を組み合わせて,次のように原価企画を再定義している。すなわち,「原価企画とは,

目標原価を達成するために,源流段階において,原価を引き下げる活動である」(趙 2014, 72

頁)。また,追加的要素として,「新製品」要素(新製品,改良品,新サービス),「ツール」要

素(VE,コスト・テーブル,コンカレント・エンジニアリングなど),「ライフサイクル・コス

ト」要素,「市場志向」要素(顧客ニーズに適合する製品開発諸目標の設定とそれらの同時達成

など),「関連組織」要素(社内の原価企画チームおよび社外のサプライヤーとの連携),「目的」

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199原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

要素のうちの「利益管理目的」を挙げ,各企業が置かれている特定の状況(環境,業種,戦略

など)や各研究者が重視する異なる要素により,さらに広範かつ高機能な原価企画を表す定義

となることを明らかにした(5)。

 たとえば,Ansari et al.(1997)は,要素という言葉は用いていないが,原価企画における

6 つの基本原理(Six key principles)として,「価格主導の原価計算(Price led costing)」「顧

客の重視(Customer focus)」「製品設計および工程設計への焦点(Focus on design of products

and processes)」「機能横断的チーム(Cross-functional teams)」「ライフサイクル・コストの低

減(Life cycle cost reduction)」「価値連鎖上のメンバーの参画(Value chain involvement)」

を挙げ,これらをすべて盛り込んで原価企画を定義している(6)(Ansari et al. 1997, pp.10-16)。

 これまで先行研究が明らかにしてきた原価企画の要素(7)は,優れた企業実務(ベスト・プラ

クティス)の観察に基づいて抽出されたものであり,Ansari et al.(1997)のようにそれらすべ

てを定義に盛り込んだ場合,必然的にある時点での究極的なあるべき姿の原価企画を表すもの

となろう。しかしながら,本稿は原価企画の中核を明らかにし,そこにおける活動内容を評価

することを狙いとしており,原価企画を構成する必要十分な要素は何かという点が問題となる。

 この点,関(2016)は,先行研究における原価企画の説明を必要十分条件の枠組みにおいて

検討した結果,製造業における原価企画の成立条件(有効活用される条件)を導出している。

それには,「目標原価に基づく源流管理」を最小要件として,「VE 等の支援ツール」と「社

内・社外を問わない協力関係」が含まれる(関 2016, 115-118 頁)。

 以上の議論を踏まえ,本稿では,上記の原価企画の必須要素および成立条件から原価企画の

中核を次のようにより具体化した形で定義する。すなわち,原価企画の中核とは,開発する新

製品等に目標原価を設定し,その仕様等の決定段階で,原価低減支援ツールを活用しながら,

社内外を問わない連携・協働により,この目標原価を達成させる原価管理活動である。

 このような原価企画の中核は,原価企画の発展形態からいえば,田中(雅)(1994, 1995,

2002)の第 2 段階〜第 3 段階,田坂(2008)の第 2 段階における原価企画の形態であり,狭義

の原価企画のタイプに該当する。ただし,それは必須要素および成立条件から構成されるもの

として「原価企画の基礎形態」に位置づけられよう。なお,上記の定義は,産業を問わず適用

可能であるが,以下では製造業を前提とする。

(2)原価企画の中核における対象・範囲

 原価企画を適用する対象および範囲は,製品,製品開発の段階,費目という 3 つの観点から

整理することができる。これらはそれぞれ,趙(2014)が識別した「新製品」要素,「源流管

理」要素,「ライフサイクル・コスト」要素に関わるが,各企業が置かれている特定の状況によ

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り各々について “ 幅 ” があるため,評価する原価企画活動を特定する上で,最初にこれらの幅

を絞り込む必要がある。

 まず,原価企画を適用する製品については,導入期にある製品(新製品)か成長・成熟期に

ある製品(改良品)かの別,主力製品かその他の製品かの別,代表種かその他の種類も含むか

の別,見込生産品か受注生産品かの別などを考慮して,対象および範囲を決定する必要がある。

これは,各企業における製品の属性および戦略などの状況に応じて異なってこよう。

 次に,原価企画を適用する段階については,製品開発プロセスを構成する諸段階(製品企画,

開発設計,製造準備および製造初期流動管理)から,対象および範囲を決定する必要がある。

加登(1993)の「原価企画発展モデル」によれば,これは各企業における「源流管理」の進展

状況に応じて異なり,またそれによって原価企画活動のレベル(洗練度)が異なってくる。た

とえば,田中(雅)(1994, 1995, 2002, 2015)は,あるべき姿に近い広義の原価企画では,製品

開発プロセスを構成するすべての段階において原価企画が適用されるが,狭義の原価企画では,

開発設計と製造準備の段階において原価企画が適用されると説明している(田中(雅) 1994,

7-8 頁 , 1995, 14-20 頁 , 2002, 7-8 頁 , 2015, 25-27 頁)。

 最後に,原価企画を適用する費目については,ライフサイクル・コストを構成する諸費目か

ら,対象および範囲を決定する必要がある。原価企画の管理対象となる費目の範囲は,理論的

にはライフサイクル・コストを構成するすべての費目とされるが,実際には原価企画の発展段

階や製品開発の各段階などによって異なる(日本会計研究学会 1996, 55 頁)。

 本評価フレームワークでは,製品に関する前提として,新製品か改良品かの別と見込生産品

か受注生産品かの別は区別せず,主力製品の代表種を対象・範囲として想定する。また,製品

開発の段階に関する前提として,原価企画の中核は狭義の原価企画のタイプに属することから,

開発設計と製造準備を対象・範囲とする。そして,費目に関する前提として,ライフサイク

ル・コスト全体ではなくそれを構成する費目の一部を対象・範囲とする。

 次項では,これらの前提と先行研究を踏まえて,原価企画の中核におけるプロセスないし活

動内容を規定し,各活動の評価尺度となる実施水準を仮定する。

2 原価企画の中核におけるプロセスおよび活動内容

(1)原価企画のプロセス・モデル

 原価企画のプロセスは,各産業・各企業における経営環境や製品開発の特徴により一様では

ないが(小林(哲)1993, 179 頁),それを概念的に示したものがいくつかある(たとえば,Ansari

et al. 1997, pp.20-28; 小林(啓) 1995, 36-39 頁 ; 田中(雅) 2002, 12-19 頁 ; 日本管理会計学会

1993, 45-48 頁 ; 門田 1994, 9-16 頁)。

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201原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

 小林(啓)(1995)は,原価企画の一連のプロセスを 4 つのサブプロセスに分け,そのうち

「製品に関する目標原価を導き出すプロセス」と「原価見積りを行って目標原価の達成度合いを

確認していくプロセス」を「原価企画のコア・プロセス」としている(小林(啓)1995, 36 頁)。

同様に,加登(1993),岡野(1995)および Ansari et al .(1997)は,原価企画のプロセスに目標原

価の「設定」と「達成」という 2 つの側面を見出している。

 特に加登(1993)は,目標原価達成のための PDCA サイクルとして,「目標コストの設定

(P),コスト目標達成のための諸活動(D),活動結果の評価(C),そしてコスト目標達成のた

めの方針とその実行(A)」(加登 1993, 170 頁)という 4 つの局面からなるプロセスを示してい

る。田中(雅)(2002)も同様に,広義の原価企画活動を「原価・利益の企画活動」「原価・利

益のつくり込み活動」「原価・利益の達成管理活動」「原価企画活動の評価」という 4 つの局面

に分けているが(田中(雅) 2002, 15-19 頁),これを狭義の原価企画の観点からみると,目標原

価の設定側面である「原価の企画活動」と目標原価の達成側面である「原価のつくり込み活動」

および「原価の達成管理活動」という 3 つの局面となる(8)。

 原価企画のプロセスに関する以上の見解に基づき,またマネジメント・サイクルを PDS

(plan-do-see)として 3 局面で捉えると,原価企画のコア・プロセスにおける活動内容は,図

表 1 に示すように,目標原価の「設定」プロセスにおける①目標原価の設定活動(細分化活動

を含む),「達成」プロセスにおける②目標原価のつくり込み支援活動および③目標原価の達成

管理活動からなる。以下では,このような原価企画のコア・プロセスにおける活動内容それぞ

れについて,それらのより詳細な活動内容と実施水準を,先行研究に基づいて明らかにして行く。

図表 1 原価企画のコア・プロセスにおける活動内容

(出所)筆者作成

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202 経 営 論 集

(2)目標原価の設定活動

 目標原価の設定には,控除法(割付法),加算法(積上法)および統合法(折衷法)という方

法がある。加登(1993)によれば,これらの方法は,加算法から控除法,そして統合法へと展

開される。加算法は社内(外)の技術情報により実施できるが,控除法は市場・顧客情報に基

づく売価の予測や設定が必要となる。また,統合法は外部環境・組織能力間および経営者・技

術者間での擦り合わせ(QCD の高次元での調整)を必要とする(林 2008)。したがって,目標

原価の設定の実施水準として,第 1 水準:加算法,第 2 水準:控除法,第 3 水準:統合法とい

う段階が考えられる。

 次に,目標原価の細分化には,物的細分化と人的細分化という方法がある。前者は,製品の

機能別や構造別,および原価要素別に目標原価を割り当てるものであり,後者は,開発設計者

のグループ別(中グループ別と小グループ別)および個人別に目標原価を割り当てるものである。

 物的細分化のうち,機能別細分化は,基本的に新規性の高い製品に対する顧客の評価値に基

づく方法であり実施が比較的困難であるが,構造別細分化は,基本的に開発設計者の評価値に

基づく簡便法であり実施が比較的容易である。また,原価要素別細分化は,具体的な製品構造

がほぼ決定した段階での構造別細分化の実施後に,通常,重要部品について行われる(田中

(雅) 2002, 59-62 頁)。したがって,物的細分化の実施水準として,第 1 水準:構造別,第 2 水

準:構造別・原価要素別,第 3 水準:機能別,第 4 水準:機能別・構造別,第 5 水準:機能

別・構造別・原価要素別という段階が考えられる。

 また,物的細分化だけでは開発設計者の原価意識を高揚し,製品仕様に対する原価保証を確

保するのに不十分な場合が多いことから,人的細分化が行われる(田中(雅) 1995, 73-74 頁)。

しかしそれは,責任会計の観点から組織業績と個人業績を結果またはプロセスに基づいて評価

するという業績評価制度に関する難しい問題を孕んでいる(岡野 1999, 2003, 2009; 望月・加藤

2011)。それゆえ,物的細分化に加えて人的細分化を行うこと自体が高度な実践であり,それを

個人にまで展開するのは「最も厳しい」(田中(雅) 2002, 62 頁)方法である。したがって,人

的細分化の実施水準として,第 1 水準:細分化をしない,第 2 水準:中グループ別,第 3 水

準:小グループ別,第 4 水準:個人別という段階が考えられる。

(3)目標原価のつくり込み支援活動

 目標原価のつくり込みを行う主体は,開発設計者である。したがって,その支援とは,関係

諸部門またはサプライヤーによる開発設計者との連携・協働を意味し,それには情報提供,開

発支援および共同推進という 3 つの活動が含まれる(田中(雅) 2015, 18-20 頁 , 43-45 頁)。

 情報提供は,開発設計者と関連諸部門およびサプライヤーとの間で社内情報やその加工情報,

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203原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

その他入手可能な社外情報などの共有を行う活動であり,連携・協働の基礎となる。開発支援

は,原価見積の支援を中心とし,コスト・テーブル(cost table: CT)の作成と更新が具体的な

活動となる。これには,受動的開発支援(特定の技術情報や原価情報などの調査・分析および

原価見積の代行など)と能動的開発支援(新部材,新工法および新サプライヤーなどの探索,

必要な情報や支援の聞取りなど)がある。共同推進は,開発チームの一員として,関連諸部門

やサプライヤーが能動的かつ積極的に問題の予見と解決策の提示を行うことにより開発設計者

を援助する活動であり,原価低減案の発掘,技術や技能などの紹介,テアダウン(tear down)

や共同 VE の主催,新サプライヤーの開拓などが含まれる。

 連携・協働の程度は,情報提供から開発支援,さらに共同推進へと移行するにつれて高まる。

また,それが開発設計者の依頼による受動的活動か,その先取りによる能動的活動かによって

も連携・協働への取組み方が異なる(田中(雅) 2015, 43-45 頁 , 55-56 頁)。したがって,連携・

協働の実施水準は本来 6 段階となるが,現実的には共同推進を受動的に行うことは考え難いた

め,第 1 水準:受動的情報提供,第 2 水準:能動的情報提供,第 3 水準:受動的開発支援,第

4 水準:能動的開発支援,第 5 水準:共同推進という段階が考えられる。

(4)目標原価の達成管理活動

 原価企画では,製品開発諸目標の達成を保証するため,会議体による節目管理(いわゆるマ

イルストーン管理)が行われる。これには,製品性の審査により品質保証を行うデザイン・レ

ビュー(design review: DR),経済性の審査により原価保証を行うコスト・レビュー(cost

review: CR),事業性の審査により採算(利益)保証を行うビジネス・レビュー(business

review: BR)がある(加登 1993, 170-177 頁)。ただし,BR は狭義の原価企画の範囲外の採算

(利益)保証活動であることから,目標原価の達成管理活動としては DR および CR が含まれる。

 DR は, JIS(日本工業規格)においてかつて「設計審査」と呼ばれ,「アイテム(システム,

サブシステム,機器,装置,構成品,部品,素子,要素など)の設計段階で,性能・機能・信

頼性などを価格,納期などを考慮しながら設計について審査し改善を図ること。審査には,設

計・製造・検査・運用など各分野の専門家が参加する」(JIS Z8115-C4)と定義されていた(9)。

この定義からわかるように,原価についての観点が弱い。そこで,CR が DR の一環として行わ

れる(加登 1993, 19-20 頁 , 155-156 頁 , 174 頁)。

 また,これらの審査が会議体により組織的に行われることや,そこでの意思決定(製品化の

可否,設計変更の承認,仕様変更などの開発方針の決定)の重要さに鑑みると(加登 1993, 170

頁 ; 日本会計研究学会 1996, 117 頁 ; 加藤・望月 2010, 75-77 頁),その公式化の程度が重要であ

る。さらに,マネジメント・サイクルをより多く回し,DR および CR を反復して実施すること

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204 経 営 論 集

で品質と原価がつくり込まれ,目標原価の達成度が高まる(加登 1996, 72 頁 ; 谷 1996, 40 頁 ;

吉田 2011, 53 頁 ; 吉田 2012)。したがって,達成管理の実施水準は,DR と CR の公式化の程度

と実施頻度との組合せとなる。公式化の程度については,第 1 水準:大まかな手続きや基準に

基づく実施,第 2 水準:詳細な手続きや基準に基づく実施,第 3 水準:規程に基づく厳格な実

施という段階が考えられる。

 以上に述べた原価企画のコア・プロセスにおける活動内容の細目をまとめて,原価企画の中

核における原価企画活動の評価フレームワーク(実施水準を除く)を図示すれば,図表 2 のよ

うになる。次節では,筆者らが実施した実態調査(10)の結果を本評価フレームワークに当ては

めることにより,実務における狭義の原価企画の実施状況を確認し,原価企画の中核における

活動内容とその実施水準の実態を探る。

図表 2 原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

(出所)筆者作成

Ⅳ 実態調査結果に基づく原価企画活動の実施水準

1 目標原価の設定と細分化の実施水準

(1)目標原価の設定

① 目標原価の設定方法

 図表 3 は,目標原価の設定方法についての実態調査結果を示している。これをみると,狭義

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205原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

または広義の原価企画を実施している事業所の双方で,導入期にある製品であれ成長・成熟期

にある製品であれ,加算法の実施割合が最も高く,次いで控除法,最後に統合法の順となって

いる。したがって,目標原価の設定方法については加算法が第 1 水準であるといえる。また,

実施割合の高さは多くの事業所で共通して実施されている状況を示すものと推測されることか

ら,目標原価の設定活動としては加算法が基礎形態をなすと考えられる。

図表 3 目標原価の設定方法

製品ライフサイクル 目標原価設定方法 狭義の

原価企画広義の

原価企画両者の併用 全体

導入期

控除法 49% 55% 22% 48%加算法 73% 86% 22% 71%統合法 25% 41% 78% 35%その他 2% 5% - 2%

有効回答事業所数 51 22 9 82

成長・成熟期

控除法 61% 54% 44% 57%加算法 75% 83% 56% 75%統合法 23% 42% 22% 28%その他 2% - - 1%

有効回答事業所数 56 24 9 89(出所)筆者作成

② 目標原価の設定対象

 図表 4 は,目標原価の設定対象としている費目についての実態調査結果を示している。これ

をみると,狭義または広義の原価企画を実施している事業所のほとんど(80%以上〜 100%)

が,導入期にある製品であれ成長・成熟期にある製品であれ,「直接材料費」「直接加工費・組

立費」「金型費」を目標原価の設定対象としている。したがって,これらの費目は最低限,目標

原価の設定対象とされる第 1 水準の費目であるといえる。また, 60%前後〜 70%の事業所が

「工場間接費」「開発設計費」「製造関連物流費」を設定対象としている。そこで,第 1 水準の費

目にこれらを加えたものを第 2 水準の費目とみなすことができる。

 このようにしてみると,狭義の原価企画における目標原価の設定水準は,第 1 水準:直接材

料費,直接加工費・組立費,金型費,第 2 水準:左記+工場間接費,開発設計費,製造関連物

流費,第 3 水準:左記+ソフトウェア開発・製作費,販売関連物流費,第 4 水準:左記+販売

促進費,直接セールス費,品質保証・顧客サポートとなる。そして,その割合の高さから,直

接材料費,直接加工費・組立費,金型費が基礎形態における目標原価設定対象費目であると考

えられる。

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206 経 営 論 集

図表 4 目標原価の設定対象

製品ライフサイクル 目標原価設定対象費目 狭義の

原価企画広義の

原価企画両者の併用 全体

導入期

製品開発設計費 65% 86% 89% 73%ソフトウェア開発・製作費 53% 50% 67% 54%直接材料費 100% 100% 100% 100%直接加工費・組立費 96% 100% 100% 98%金型費 80% 95% 89% 85%工場の間接費 67% 68% 100% 71%製造関連の物流費 61% 68% 89% 66%販売関連の物流費 41% 59% 67% 49%販売促進費 22% 32% 22% 24%直接セールス費 22% 27% 44% 26%品質保証・顧客サポート費 20% 32% 67% 28%PL 関連コスト 12% 9% 33% 13%メンテナンス・コスト 10% 18% 44% 16%ランニング・コスト 10% 27% 33% 17%リユース・コスト 4% 9% 22% 7%リサイクル・コスト 10% 23% 22% 15%廃棄コスト 12% 14% 33% 15%環境保全コスト 10% 23% 22% 15%

有効回答事業所数 51 22 9 82

成長・成熟期

製品開発設計費 54% 83% 78% 64%ソフトウェア開発・製作費 48% 54% 56% 51%直接材料費 100% 100% 100% 100%直接加工費・組立費 98% 100% 100% 99%金型費 82% 92% 89% 85%工場の間接費 66% 63% 100% 69%製造関連の物流費 70% 83% 89% 75%販売関連の物流費 48% 67% 67% 55%販売促進費 20% 25% 22% 21%直接セールス費 27% 17% 44% 26%品質保証・顧客サポート費 20% 33% 67% 28%PL 関連コスト 9% 17% 33% 13%メンテナンス・コスト 7% 29% 44% 17%ランニング・コスト 7% 33% 44% 18%リユース・コスト 4% 13% 33% 9%リサイクル・コスト 9% 25% 33% 16%廃棄コスト 9% 13% 44% 13%環境保全コスト 54% 83% 78% 64%

有効回答事業所数 56 24 9 89(出所)筆者作成

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207原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

(2)目標原価の細分化

① 物的細分化

 図表 5 は,目標原価の物的細分化の方法についての実態調査結果を示している。これをみる

と,「細分化しない」とする回答の割合は,広義の原価企画を実践している事業所よりも狭義の

原価企画を実践している事業所の方が高いが,導入期にある主力製品と成長・成熟期にある主

力製品でそれぞれ 15%と 18%であり比較的少ない。また,物的細分化をしている場合には,狭

義または広義の原価企画を実施している事業所の双方で「構造別」細分化の割合が最も高く,

次いで「機能別」,「機能別・構造別」と続く。本調査では,原価要素別細分化は機能別や構造

別などへの細分化後に行うものとして尋ね,また選択肢を個別に設けたため,本評価フレーム

ワークの水準で示すことができない。しかしながら,少なくとも構造別細分化が最も実施され

ており(ただし,機能別細分化との割合の差は小さい),第 1 水準の物的細分化方法であるとい

える。したがって,構造別細分化が基礎形態をなすと考えられる。

図表 5 目標原価の物的細分化の方法

製品ライフサイクル 物的細分化の方法 狭義の原価企画

広義の原価企画 両者の併用 全体

導入期

細分化しない 15% 9% 11% 13%機能別(・機能別) 25% 23% 22% 24%構造別(・構造別) 31% 32% 56% 34%機能別・構造別 12% 18% 33% 16%構造別・機能別 - 23% 11% 7%原価要素別 23% 32% 44% 28%その他 - 5% - 1%

有効回答事業所数 52 22 9 83

成長・成熟期

細分化しない 18% 8% - 13%機能別(・機能別) 21% 8% 11% 17%構造別(・構造別) 30% 25% 44% 30%機能別・構造別 14% 17% 22% 16%構造別・機能別 2% 25% 11% 9%原価要素別 25% 63% 78% 40%その他 - 4% 11% 2%

有効回答事業所数 57 24 9 90

(出所)筆者作成

② 人的細分化

 続いて,図表 6 は,目標原価の人的細分化の方法についての実態調査結果を示している。こ

れをみると,狭義の原価企画を実施している事業所では,導入期にある主力製品であれ成長・

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208 経 営 論 集

成熟期にある主力製品であれ,「細分化をしない」とする回答の割合が 45%と最も高く,物的

細分化よりもかなり高い。その割合は,広義の原価企画を実施している事業所の 2.5 倍以上で

ある。したがって,人的細分化をしない方法が第 1 水準の人的細分化方法であるといえ,それ

が基礎形態をなすと考えられる。なお,人的細分化をしている場合,中グループ別細分化が多

く用いられている。本評価フレームワークで最も水準の高い方法と仮定した個人別細分化は,

小グループ別細分化と同じかそれよりも高い割合となっている。

図表 6 目標原価の人的細分化の方法

製品ライフサイクル 人的細分化の方法 狭義の原価企画

広義の原価企画 両者の併用 全体

導入期

細分化しない 45% 18% 33% 37%中グループ 29% 32% 44% 32%小グループ 12% 32% 22% 18%個人 18% 23% 22% 20%その他 - - - -

有効回答事業所数 51 22 9 82

成長・成熟期

細分化しない 45% 17% 33% 36%中グループ 32% 29% 56% 34%小グループ 16% 46% 33% 26%個人 16% 25% 11% 18%その他 - - 11% 1%

有効回答事業所数 56 24 9 89(出所)筆者作成

2 目標原価のつくり込み支援の実施水準

(1)情報提供

 図表 7 は,総見積件数に占めるコスト・テーブル(CT)の利用割合についての実態調査結果

を示したものである。これをみると,狭義の原価企画を実施している事業所では,導入期にあ

る主力製品であれ成長・成熟期にある主力製品であれ,製品開発のどの段階でも CT の利用を

「20%未満」とする回答の割合が最も高い。しかしながら,詳細設計段階では,利用割合が

40%以上である回答の割合を合計すると 6 割を超え,他の段階よりも比較的よく利用されてい

ることがわかる。これらより,CT による情報提供は,詳細設計段階では比較的よく行われて

いるものの,他の段階ではまだ不十分な状況であることが窺える。

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209原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

図表 7 コスト・テーブルの利用状況

製品開発プロセス

総見積件数に占める割合

狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体導入期 成長・成熟期 導入期 成長・成熟期 導入期 成長・成熟期 導入期 成長・成熟期

構想設計段階

80%以上 17% 20% 5% 10% 20% - 13% 16%60%以上 7% 7% 10% 19% 20% 20% 9% 11%40%以上 14% 20% 10% 10% - - 12% 16%20%以上 12% 11% 30% 33% - 20% 16% 19%20%未満 50% 41% 45% 29% 60% 60% 49% 39%

合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 42 44 20 21 5 5 67 70

基本設計段階

80%以上 14% 25% - 10% - - 9% 19%60%以上 19% 18% 16% 30% 20% 20% 18% 22%40%以上 12% 5% 37% 20% 20% 20% 20% 10%20%以上 17% 20% 21% 25% 20% 40% 18% 23%20%未満 38% 32% 26% 15% 40% 20% 35% 26%

合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 42 44 19 20 5 5 66 69

詳細設計段階

80%以上 23% 26% 11% 25% - - 17% 24%60%以上 20% 26% 37% 35% 40% 40% 27% 29%40%以上 18% 12% 21% 25% - - 17% 15%20%以上 5% 5% 26% 5% 20% 40% 13% 7%20%未満 35% 33% 5% 10% 40% 20% 27% 25%

合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 40 43 19 20 5 5 64 68

製造準備段階

80%以上 21% 28% 16% 25% 40% 40% 21% 28%60%以上 7% 9% 21% 25% - - 11% 13%40%以上 17% 13% 11% 15% - - 14% 13%20%以上 5% 7% 21% 5% - 20% 9% 7%20%未満 50% 43% 32% 30% 60% 40% 45% 39%

合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 42 46 19 20 5 5 66 71

(出所)筆者作成

(2)開発支援

① コスト・テーブルの作成

 図表 8 は,CT の作成状況についての実態調査結果を示している。これをみると,狭義の原

価企画を実施している事業所では,CT を「作成している」とする回答の割合は 86%であり,

「作成中である」とする回答の割合を含めると 9 割にのぼる。また,CT を「作成している」と

回答した事業所の CT 作成年数をみると,「5 年未満」とする回答の割合が 28%と最も高く,近

年,CT を作成して開発支援に力を入れ始めた事業所が増えたことがわかる。

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210 経 営 論 集

図表 8 コスト・テーブルの作成状況

コスト・テーブルの作成状況 狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体作成していない 11% 8% 33% 12%作成中である 4% 4% - 3%作成している 86% 88% 67% 84%

5 年未満 28% 4% - 19%5 年以上〜 10 年未満 7% 8% - 7%10 年以上〜 15 年未満 9% 8% 11% 9%15 年以上〜 20 年未満 7% 4% - 6%20 年以上〜 25 年未満 7% 4% 11% 7%25 年以上〜 30 年未満 7% 21% - 10%30 年以上〜 40 年未満 9% 21% - 11%40 年以上 12% 17% 44% 17%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 57 24 9 90

(出所)筆者作成

② コスト・テーブルの更新

 図表 9 は,CT の改訂状況についての実態調査結果を示している。これをみると,狭義の原

価企画を実施している事業所では,「特定の改訂時期なし」とする回答の割合が 43%と最も高

く,「必要な都度,部分改訂」という割合が 39%と次に高い。いずれにしても定期的に改訂が

行われておらず,注意しなければ原価情報が陳腐化しがちになる。ただし,必要な都度,こま

めに部分改訂をするのであれば,原価情報は常に最新の状態に保たれる。本調査の選択肢に曖

昧な表現があったため推測の域を出ないが,開発支援にやや消極的な姿勢が垣間みえる。

図表 9 コスト・テーブルの改訂状況

コスト・テーブルの改訂状況 狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体ほぼ毎月,部分改訂 6% - - 4%必要な都度,部分改訂 39% 62% 67% 47%半年ごと,全体改訂 12% 5% 17% 11%1 年ごと,全体改訂 14% 24% 17% 17%特定の改訂時期なし 43% 14% 17% 33%ここ数年,改訂なし 6% 10% - 7%その他 2% 10% 17% 5%

有効回答事業所数 49 21 6 76(出所)筆者作成

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211原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

③ 製品開発関係者によるコスト・テーブルの利用度

 図表 10 と図表 11 は,製品開発関係者による CT の利用度についての実態調査結果を示して

いる。利用度の尺度は,1:「全く使わない」〜 5:「非常に頻繁に使う」である。これをみると,

狭義または広義の原価企画を実施している事業所の双方で,概算見積目的でも詳細見積目的で

も「原価見積専任者」の利用度が最も高く,次いで「原価企画推進担当者」が高い。特に,原

価見積専任者を置き,その CT の利用度が高いことは,原価見積の代行が実施されていること

を意味しており,開発支援がよく行われている状況が窺える。

図表 10 コスト・テーブルの利用度(概算見積目的)

狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体

開発設計チームリーダー平均値 2.34 2.10 2.25 2.26

標準偏差 1.21 1.17 0.50 1.16N 38 20 4 62

開発設計担当者平均値 2.55 2.42 3.00 2.54

標準偏差 1.13 1.17 0.82 1.12N 38 19 4 61

製品企画担当者平均値 2.16 1.68 2.00 2.00

標準偏差 1.26 1.06 0.82 1.18N 37 19 4 60

原価企画推進担当者平均値 3.34 3.58 3.20 3.40

標準偏差 1.26 1.07 0.84 1.17N 38 19 5 62

原価見積専任者平均値 3.71 4.24 4.00 3.88

標準偏差 1.18 1.09 0.71 1.14N 38 17 5 60

開発購買担当者平均値 2.51 2.80 2.67 2.61

標準偏差 1.12 1.28 0.58 1.15N 39 20 3 62

外注品・購入品購買担当者平均値 2.66 3.00 2.80 2.77

標準偏差 1.26 1.25 0.84 1.22N 41 19 5 65

生産技術・製造担当者平均値 2.08 2.35 2.25 2.18

標準偏差 1.14 1.35 1.26 1.20N 37 20 4 61

VE 推進担当者平均値 2.94 3.25 3.25 3.07

標準偏差 1.39 1.29 0.50 1.31N 34 20 4 58

(出所)筆者作成

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212 経 営 論 集

図表 11 コスト・テーブルの利用度(詳細見積目的)

狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体

開発設計チームリーダー平均値 1.94 1.95 2.00 1.95

標準偏差 1.19 1.18 0.82 1.15N 36 19 4 59

開発設計担当者平均値 2.41 2.35 3.00 2.43

標準偏差 1.40 1.11 0.82 1.29N 37 17 4 58

製品企画担当者平均値 1.78 1.67 2.00 1.76

標準偏差 1.10 1.08 0.82 1.06N 36 18 4 58

原価企画推進担当者平均値 3.05 3.45 3.17 3.18

標準偏差 1.47 1.15 0.98 1.33N 40 20 6 66

原価見積専任者平均値 3.78 4.16 4.33 3.94

標準偏差 1.31 1.17 0.52 1.23N 41 19 6 66

開発購買担当者平均値 2.42 2.53 3.00 2.48

標準偏差 1.15 1.07 1.00 1.11N 38 17 3 58

外注品・購入品購買担当者平均値 2.86 3.06 3.20 2.94

標準偏差 1.44 1.26 0.45 1.33N 43 18 5 66

生産技術・製造担当者平均値 2.26 2.16 2.50 2.25

標準偏差 1.33 1.26 1.29 1.29N 38 19 4 61

VE 推進担当者平均値 2.83 2.72 3.75 2.86

標準偏差 1.52 1.27 0.96 1.42N 35 18 4 57

(出所)筆者作成

(3)共同推進

 図表 12 は,目標製造原価を達成する上で特に有効な手法についての実態調査結果を示したも

のである。狭義の原価企画を実施している事業所で回答の割合が高かった上位 1 位〜 10 位まで

をランキング形式で示しており,開発設計段階(構想設計段階と基本・詳細設計段階)では

「DR」(デザイン・レビュー)が,製造準備段階では「協力企業へのコストダウン要請」が,最

も有効な手法とされている。また,開発設計段階では 2 位に「原価見積・コストテーブル」,3

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213原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

位に「VE」,4 位に「テアダウン・ベンチマーキング(TD・BM)」,5 位以下には「CR」「開発

購買」「コンカレント・エンジニアリング(CE)」「共同開発」などがランクインし,総じて協

働で行う手法が多い。間接的ながら,共同推進が実施されている状況を窺い知れる。

図表 12 目標原価の達成手法

順位製品開発プロセス

構想設計段階 基本・詳細設計段階 製造準備段階1 DR DR 協力企業へのコストダウン要請2 原価見積・コストテーブル 原価見積・コストテーブル 原価見積・コストテーブル3 VE VE CR

4 テアダウン・ベンチマーキング テアダウン・ベンチマーキング割安な国内外調達 割安な国内外調達

5 部品の共通化・標準化・VRP CRVEDRIE・JIT

6 類似品など過去事例の分析 開発購買 品質管理技法7 CR 類似品など過去事例の分析 新しい工程設計の研究・採用

8 開発購買 コンカレント・エンジニアリング 市販の部品・材料の活用新生産技術・新加工方式の採用

9 機能水準・製品構造の見直し 共同開発協力企業へのコストダウン要請 コンカレント・エンジニアリング

10 共同開発 市販の部品・材料の活用新生産技術・新加工方式の採用

トレード・オフの活用コスト・ドライバー分析

(出所)筆者作成

 以上から,目標原価のつくり込み支援活動については,間接的ながら共同推進まで実施され

ていることがわかり,本評価フレームワークにおける第 5 水準にあるといえる。ただし,その

実施状況からは,情報提供,開発支援,共同推進の程度が共に弱い形態であると推測され,そ

れが基礎形態をなすと考えられる。基礎形態のさらなる明確化には,情報提供,開発支援,共

同推進のそれぞれに実施水準の評価尺度を設ける必要があるかもしれない。

3 目標原価の達成管理の実施水準

(1)デザイン・レビュー(DR)の実施状況

 図表 13 は,DR の体制についての実態調査結果を示している。これをみると,狭義の原価企

画を実施している事業所で DR を「実施していない」とする回答の割合は,基本設計段階と詳

細設計段階で 9%とかなり低い。また,基本設計・詳細設計・製造準備の各段階において,「規

程に基づく厳格な実施」とする回答の割合がそれぞれ 52%,59%,54% と 5 割を超え,構想設

計段階でも 43% と 4 割を超えている。このことから,少なくとも基本設計段階と詳細設計段階

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214 経 営 論 集

の節目で 2 度,公式的な DR が実施され,制度にしたがって品質保証が行われていることがわ

かる。これらより,規程に基づく厳格な DR の実施が基礎形態をなすと考えられる。

図表 13 デザイン・レビューの体制

製品開発プロセス デザイン・レビューの体制 狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体

構想設計段階

実施していない 17% 5% - 12%大まかな手続きや基準に基づく実施 22% 18% 11% 20%詳細な手続きや基準に基づく実施 19% 27% 44% 24%規程に基づく厳格な実施 43% 50% 44% 45%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 54 22 9 85

基本設計段階

実施していない 9% - 11% 7%大まかな手続きや基準に基づく実施 17% 5% 11% 13%詳細な手続きや基準に基づく実施 22% 23% 33% 24%規程に基づく厳格な実施 52% 73% 44% 56%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 54 22 9 85

詳細設計段階

実施していない 9% - 22% 8%大まかな手続きや基準に基づく実施 13% - - 8%詳細な手続きや基準に基づく実施 20% 13% 22% 18%規程に基づく厳格な実施 59% 87% 56% 66%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 56 23 9 88

製造準備段階

実施していない 23% 9% 44% 22%大まかな手続きや基準に基づく実施 13% 4% - 9%詳細な手続きや基準に基づく実施 11% 9% 22% 11%規程に基づく厳格な実施 54% 78% 33% 58%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 56 23 9 88

(出所)筆者作成

(2)コスト・レビュー(CR)の実施状況

 図表 14 は,CR の体制についての実態調査結果を示している。これをみると,狭義の原価企

画を実施している事業所では,CR を「実施していない」とする回答の割合が,開発設計段階

(構想・基本・詳細設計)で DR よりも高い。また,詳細設計と製造準備の各段階では「規程に

基づく厳格な実施」とする回答の割合がそれぞれ 35% と 39% で高いが,より上流段階では,

基本設計段階を境にその割合が減少し,「大まかな手続きや基準に基づく実施」とする回答の割

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215原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

合が構想設計段階で 31%,基本設計段階で 35% と高くなっている。これらのことから,原価保

証についてはまだ十分な体制が整えられていないものと推測される。したがって,構想設計段

階・基本設計段階では大まかな手続きや基準に基づいて,詳細設計段階・製造準備段階では規

程に基づいて厳格に,CR を実施する体制が基本形態をなすと考えられる。

図表 14 コスト・レビューの体制

製品開発プロセス コスト・レビューの体制 狭義の原価企画 広義の原価企画 両者の併用 全体

構想設計段階

実施していない 33% 5% - 22%大まかな手続きや基準に基づく実施 31% 32% 22% 31%詳細な手続きや基準に基づく実施 11% 27% 56% 20%規程に基づく厳格な実施 24% 36% 22% 27%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 54 22 9 85

基本設計段階

実施していない 15% 5% - 11%大まかな手続きや基準に基づく実施 35% 14% 22% 28%詳細な手続きや基準に基づく実施 19% 27% 44% 24%規程に基づく厳格な実施 31% 55% 33% 38%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 54 22 9 85

詳細設計段階

実施していない 11% - - 7%大まかな手続きや基準に基づく実施 29% 9% 11% 22%詳細な手続きや基準に基づく実施 25% 18% 56% 27%規程に基づく厳格な実施 35% 73% 33% 44%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 55 22 9 86

製造準備段階

実施していない 18% - - 11%大まかな手続きや基準に基づく実施 26% 9% 11% 20%詳細な手続きや基準に基づく実施 18% 13% 33% 18%規程に基づく厳格な実施 39% 78% 56% 51%

合計 100% 100% 100% 100%有効回答事業所数 57 23 9 89

(出所)筆者作成

Ⅵ おわりに

 本稿では,原価企画活動を評価するためのフレームワークと原価企画の基礎形態を提示する

ことを目的として,まず先行研究の知見により原価企画の中核における活動内容を評価するた

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216 経 営 論 集

めのフレームワークを構築し,次いで実態調査結果に基づく原価企画実務の実施水準により原

価企画の基礎形態を探った。その結果として明らかとなった原価企画の基礎形態の姿を図表 15

に示す。

 従来の研究では,原価企画のベスト・プラクティスから優れた要素を抽出し,それを組み合

わせて原価企画像がつくられてきた。そのような原価企画のあるべき姿は,数多くの要素が盛

り込まれた,現時点でのおよそ究極的でフル・スペックな形態(11)である。それは,原価企画

導入企業が自らの現行実務レベルを確認したり,企業が新たに原価企画の導入を図ったりする

際の参照点として,かなり高いハードルであろう。原価企画のあるべき姿を目指して組織変革

に成功すれば劇的な業績向上が期待できる一方(岩淵 1995a, 1995b),原価企画の実施能力不足

ゆえに失敗や逆機能の発現,導入中止といった事態にもなりかねない(吉田 2003)。

 本稿では,「原価企画」と呼ぶのに必須の諸要素から構成される原価企画の中核における活動

内容に評価対象を限定したが,そうであっても各企業における特定の状況や活動内容,実施水

準などの点で,その形態には様々な「幅」がある。とはいえ,本稿で提示した評価フレーム

ワークおよび基礎形態は,理論面では原価企画の発展段階,さらには導入および変化を議論す

るための叩き台を提供するという点で,また実務面では原価企画の導入企業が自らの実施水準

を評価する際に基準となるものを提供するという点で,貢献すると考える。

図表 15 原価企画の基礎形態

(出所)筆者作成

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217原価企画の中核における活動内容の評価フレームワーク

 しかしながら,本稿で提示した評価フレームワークおよび実施水準の段階には少なくとも次

の限界が指摘でき,改善の余地が多々ある。第 1 に,原価企画の形態にはある程度の幅がある

ことから,本評価フレームワークの構築に際しては,前提を設けることによって原価企画活動

の対象・範囲を限定している。また,原価企画のインフラストラクチャー(人材,ツール,仕

組み,体質,文化)や実施能力の評価については未検討である。原価企画は総体として機能す

るものであることを考えれば,本評価フレームワークはいまだ部分的であるといえる。第 2 に,

実施水準の段階は先行研究に基づいているものの,その段階には大まかな部分や主観的な部分

が含まれることは否めず,いまだ客観的な証拠によって確立されたものではない。本稿におい

て原価企画活動の実施水準の確認に用いた実態調査にしても,必ずしも本評価フレームワーク

を用いて原価企画実務における実施水準を明らかにしようとしたものではなく,また実施割合

の高さをもって基礎形態の実施水準とすることにはいまだ理論的根拠を見出せていない。それ

ゆえ,本稿における実施水準の妥当性については問題が残る。

 今後の研究では,本評価フレームワークをより包括的で強固なものとするために,本評価フ

レームワークに基づく調査を実施し,原価企画実務に即したより客観的かつ一般的な実施水準

を明らかにすることが課題となる。その先の課題としては,原価企画の基礎形態の次の段階に

位置づけられるであろう発展形態の探究が残されている。

(付記)

 本稿は,日本原価計算研究学会第 43 回全国大会(関西大学)での自由論題報告を加筆修正し

たものである。共同研究者の田中雅康先生(東京理科大学名誉教授),報告にて司会をしていた

だいた吉田栄介先生(慶應義塾大学),貴重なご質問ご示唆を頂いた加藤典生先生(大分大学),

窪田祐一先生(南山大学),その他有益なコメントを賜った先生方に感謝申し上げる。

(注)

(1)  原価企画の生成については,前田(2006)や丸田(2006)に詳しい。また,米国に原価企画と同概念の起源を求める説に Burrows and Chenhall(2012)がある。

(2)  田中(雅)(1995)によれば,狭義の原価企画とは,「開発設計する新製品等が原価目標の範囲内で開発設計,製造,販売,使用・廃棄されるように,取引先企業をも含めた全社的活動によって,この原価目標を達成させる一連の管理活動のこと」をいい,広義の原価企画とは,「新製品等の開発にあたり,顧客ニーズに適合する性能・価格・日程等の目標並びに原価目標を設定し,その企画から製造初期流動までの全活動にわたって,これらの目標を同時に達成することにより,当該製品等のライフサイクルにわたる利益の企画管理をする全社的活動」をいう(田中(雅) 1995, 14 頁)。

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218 経 営 論 集

(3)  他の 2 つの観点は,「全ライフサイクルにわたる目標原価と目標利益(率)の達成および全社利益計画への貢献の測定・評価」と「製造段階前と製造段階以降における目標原価の達成の測定・評価」である。

(4)  必須要素とは,「あらゆる原価企画実践において,必ず備えておくべき要素」をいい,追加的要素とは,「必ずしもあらゆる原価企画実践において備えられている必要はなくとも,ある特定の原価企画実践において備えることで有益となる要素」をいう(趙 2014, 66 頁)。

(5)  趙(2016)は,原価企画研究論文 515 編における 151 個の定義をテキストマイニングにより解析し,同様の結論に至っている。

(6)  その定義とは次のものである。「原価企画プロセスは,価格主導,顧客重視,設計中心,かつ機能横断的な利益計画および原価管理の体系である。原価企画では,製品開発の最も早い段階で原価管理が開始され,積極的に価値連鎖全体を関与させることで製品ライフサイクルにわたって原価管理が適用される」(Ansari et al. 1997, p.11)。

(7)  原価企画の要素(エレメント)については,谷(1996)や吉田(2003, 24-30 頁)が整理している。(8)  「原価企画活動の評価」は,次の理由により除外した。すなわち,それは「先に企画した目標利益や目標原

価などが達成されたか否かを測定し,総合的な評価を行うもの」(田中(雅) 2002, 17 頁)をいい,本稿が狙いとする「原価企画活動の仕組みと運用状況の評価」(田中(雅) 2006, 115-116 頁)とは異なる。また,それは①開発期間中の評価,②製造期間中の評価および③製造終了後の評価からなるが,①は「原価の達成管理活動」に含まれ,②と③は製造段階以降に行われることからして,狭義の原価企画活動の範囲外となる。

(9)  現在は「設計・開発のレビュー」といわれ,次のように「設計・開発」と「レビュー」に分割して定義されている。すなわち,設計・開発とは,「対象(3.6.1)に対する要求事項(3.6.4)を,その対象に対するより詳細な要求事項に変換する一連のプロセス(3.4.1)」(JIS Q9000:2015-3.4.8)をいい,レビューとは,「設定された目標(3.7.1)を達成するための,対象(3.6.1)の適切性,妥当性又は有効性(3.7. 11)の確定(3.11.1)」

(JIS Q9000:2015-3.11.2)をいう。(10)  本調査は,主として東証 1 部上場の電気機器,輸送用機器,機械・精密機器を対象に,2016 年 11 月末を

回答期限として,郵送質問票により実施した。質問票は,同一企業でも異質の事業を展開している場合には複数部を送付した。回答数が少なかったため,回答期限後から 2017 年 3 月末までの間,FAX や電子メールなどにより回答を依頼した。その結果,回答総数は 115 事業所となり,原価企画未導入の 22 事業所と回答無効の 3 事業所を除いた有効回答数は,90 事業所であった。本調査の詳細については,田中ほか(2017)を参照されたい。

(11)  河合・梶原(2016)は,あるべき姿の原価企画を「フルセットの原価企画」と称し,クラスター分析により,それに近いエレメントの組合せを持つ日本企業群を見出している。

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ワーキングペーパー 26.

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