原価企画に おけるライフサイクル・コストへの取り …...経営学研究論集...

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Meiji University Title �-�- Author(s) �,Citation �, 21: 119-139 URL http://hdl.handle.net/10291/7995 Rights Issue Date 2004-09-30 Text version publisher Type Departmental Bulletin Paper DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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Page 1: 原価企画に おけるライフサイクル・コストへの取り …...経営学研究論集 第21号 2004.9 原価企画に 一r先行研究のレビューと残された課題の検討

Meiji University

 

Title原価企画におけるライフサイクル・コストへの取り組

み-先行研究のレビューと残された課題の検討-

Author(s) 中島,洋行

Citation 経営学研究論集, 21: 119-139

URL http://hdl.handle.net/10291/7995

Rights

Issue Date 2004-09-30

Text version publisher

Type Departmental Bulletin Paper

DOI

                           https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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経営学研究論集

第21号 2004.9

原価企画に

    一r先行研究のレビューと残された課題の検討

おけるライフサイクル・コストへの取り組み

  Treatment of Life Cycle Costs in Target Costing

Areview of past research and examination of remained subjects

博士後期課程 経営学専攻 2004年度入学

     中  島  洋  行

       NAKAJIMA Hiroyuki

【論文要旨】

 Many literatures insist that a scope of target cost in target costing is the whole life cycle costs.

Therefore, this article initially reviews three past researches which emphasis this point, and con-

siders meanings of treatment of life cycle costs in target costing. But, a result of several question-

naire surveys indicate that treatment of life cycle costs in target costing is not often practiced by

many organizations. Why many organizations using target costing do not treat life cycle costs? I

think that several subjects of treating life cycle costs in target costing exist. Lastly, This article evi-

dences these subjects to solve and their causes.

【キーワード】 Target Costing, Target Cost, Life Cycle Cost, Estimate of Life Cycle Cost, Com-

petitive advantage

はじめに

 ライフサイクル・コスティング(Life Cycle Costing)は従来の原価計算技法とは異なり,製品

の供給者側で発生する製造コストのみを計算するのではなく,製品の需要者側で発生するコストも

含めた,製品あるいはシステムのラ・イフサイクル全体にわたり発生するコスト,すなわちライフサ

イクル・コスト(Life Cycle Cost)を計算するという点に特徴がある。昨今,製品を購入するコス

トよりも製品を使用・廃棄する際にかかるコストの方が大きくなりつつある状況が顕著になってい

論文受付日 2004年5月7日  掲載決定日

     一119一

2004年6月16日

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るので,顧客のライフサイクル・コストに対する関心は高まっている。また,地球環境保護や将来

的なエネルギー資源の枯渇が企業だけではなく,社会全体にとって大きな問題になっている状況下

では,ライフサイクル・コストおよびライフサイクル・コスティングの考え方が注目されている。

 このように,ライフサイクル・コストへの社会全体の関心が高まるにつれて,市場に投入される

製品についても,その製品のライフサイクル・コストの大きさが問題とされるようになってきた。

市場競争が激化している状況下で,メーカーが市場での競争優位を勝ち取るためには,ライフサイ

クル・コストの小さい製品を開発し,特に顧客側で発生する使用コストや廃棄コストを最小化する

ことが必要になってきている[小林(1996),1頁コ。もはや高品質,低価格,タイムリーな市場へ

の投入は,新製品を市場に投入し,市場での競争に打ち勝つための最低条件であり,高品質,低価

格,タイムリーな市場への投入以外の要素で優れていなければ,投入される新製品が市場で受け入

れられる可能性は低くなりつつある[加登(1993),13頁]。そこで,ライフサイクル・コストの

小さい製品を開発することは,市場での競争優位を勝ち取るための一つの:有力な方法であると思わ

れる。

 ライフサイクル・コストは,開発・設計段階で,どのような機能を付与するか,どのような原材

料を選択するかなどの意思決定により,その大半が決定してしまう性質があるため,ライフサイク

ル・コストを最小化するためには,製品の開発・設計段階を重視する必要がある[Horngren et al.

(2003),pp.425-426]。そこで,製品の開発・設計段階を重視する技法である原価企画に注目し,

原価企画におけるライフサイクル・コストへの取り組みについて考察することが重要であると思わ

れる。

 以下,本稿においては,ライフサイクル・コストを最小化する製品を開発するために,原価企画

においてライフサイクル・コストに取り組む必要性を先行研究のレビューから明らかにし,さら

に,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むために克服されるべき課題を明らかにす

る。まず,第1節では,ライフサイクル・コストの意義,およびライフサイクル・コストの特質

を明らかにする。ついで,第2節では,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むこ

と,すなわち,目標原価の設定範囲をライフサイクル・コストとした原価企画を実施することの必

要性を,3つの先行研究(CAM-1, M. D. Shields and S. M. Young,およびF. R. Schmidt)をレビ

ューすることから明らかにする。そして,第3節では,第2節での内容をふまえて,原価企画に

おいてライフサイクル・コストに取り組むことの意義を明らかにする。一方で,第4節では,過

去に行われた実態調査の結果から,原価企画におけるライフサイクル・コストの取り組み状況とそ

の問題点を解明する。最後に,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むことは,理想

的ではあるが,実際にそれを実践するためには困難な部分も多いこともまた事実である。そこで,

第5節では,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組む際に直面する課題を6点指摘

し,今後,克服されるべき課題を明らかにする。

一120一

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1.ライフサイクル・コストの意義とその特質

(1)ライフサイクル・コストωの意義

 「ライフサイクル・コストの内容は論者によって多様であり,一般的に妥当するような定義は確

立されていない」[小林(1993),165頁]といわれているが,ここでは,BlanchardとFabrycky

の定義に従い,ライフサイクル・コストの意義を明らかにしたい。彼らによれば,ライフサイクル

・コストとは,「あらかじめ決められたライフサイクル期間にわたり使用される製品あるいはシス

テムに関連して発生する全てのコストである」[Blanchard and Fabrycky(1998), p.560]と定義

される。そして,彼らは,ライフサイクル・コストを研究・開発コスト,生産コスト,運用(使

用)・支援コスト②,除却・廃棄コストの4種類のコストに分けている(3}。したがって,ライフサイ

クル・コストとは,ある製品の概念構想が定まった時点から,具体的に設計,製造,使用段階を経

て,最終的にその製品が廃棄されるまでに発生するコストの総額ということになる。

 ライフサイクル・コストの特徴は,伝統的な原価計算のように製造コストのみを対象とするので

はなく,製品の使用者側で発生する使用コスト,廃棄コストをも含めて,卜一タルな視点からコス

トを考えている点にある。実際に,製品を購入する際に支払うコスト(取得コスト)よりも,製品

を購入してから支払うコスト(使用コストと廃棄コスト)の方が高くなることがしばしば起こる。

このため,取得コスト情報のみに依存した意思決定を行うことは,誤った意思決定を行うことにな

りかねない。ライフサイクル・コストを考えることの一つの意義として,ライフサイクル期間全体

にわたるトータルな視点からの意思決定を可能にすることが挙げられる〔Blanchard and Fabrycky

(1998),p.559]。

 ライフサイクル・コストを考えるもう一つの意義は,ライフサイクル・コストを考慮すること

が,市場での競争優位の確保につながることである。前述したように,製品が,高品質,低価格,

市場ニーズに合致していることは,もはや市場に製品を出すための最低条件であり,市場に投入さ

れる製品がヒットするためには,これら以外の部分で優れていることが重要になってきている[加

登(1993),13頁]。その一方で,顧客は取得コストのみならず,使用コストや廃棄コストにも高

い関心を持つようになってきており,ライフサイクル・コストの小さい製品を望んでいると共に,

企業側から見ても,製品が顧客に提供された後の使用段階および取替・廃棄段階で提供される様々

なサービスが顧客の購買意欲やリピート購買に貢献し,持続的な競争優位をもたらす源泉となる場

合もあり得る[成松(2002),168頁,小林(1996),1頁,およびShields and Young(1991), p. 49]。

したがって,ライフサイクル・コストを最小化にする製品を開発することは,市場での競争優位の

源泉をもたらすといえる。

② ライフサイクル・コストの特質

 次頁の図1は,ライフサイクルのそれぞれのフェーズにおいて,コストがどの程度の割合で確

                   一121一

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図1 コストの確定状況と実際の発生状況

100

 80確定し

 60たコ

ストの 40割

 20

発生が確定したコストの割合

   \

\実際に発生するコストの割合

  0

                                   製品の配送        製品の                設計と開発      生産       サービス       概念構想                                   製品の処分

   く一製品ライフサイクルーレ(出所) Berliner, C and Brimson, J. A.(eds.)(1988),Cost Management for Toclay ’s Advanced Manufacturingr

   The CAM-1 Conceptual 1)esign, Harvard Business School Press, Boston, MA., p.140.(長松秀志監訳

   (1993)『先端企業のコスト・マネジメソト』中央経済社,132頁),一部修正。

定し,さらに各フェーズでは,実際にはどれだけのコストが発生するかを示した図である。この図

から明らかなように,開発・設計段階(製品の概念構想・設計と開発までの各フェーズ)までに実

際に支出されるコストはおよそ25%であるが,コストの90%はこの段階で決定してしまう。そし

て,ライフサイクルの後のフェーズになればなるほど,コストに影響を与えること,すなわちコス

トを低減させることは難しくなる。それゆえに,開発・設計段階において,どのような機能および

性能を製品に付与するか,製品の品質をどのレベルに置くか,どのような原材料の選択がなされる

かで,使用・廃棄コストも含めたライフサイクル・コストの大半が決定されてしまう。すなわち,

開発・設計段階とその後に発生するコストとの間にはトレード・オフの関係がある。したがって,

ライフサイクル・コストを最小にするためには,製品の開発・設計段階での取り組みを重視するこ

とが不可欠である[小林(1996),5頁およびBerliner and Brimson(eds.)(1988), pp.139-140,

長松監訳(1993),131-132頁]。

(3)ライフサイクル・コストと原価企画

 前述したように,ライフサイクル・コストを最小化するためには,製品の開発・設計段階での取

り組みが重要になる。一方で,「原価企画とは,原価発生の源流に遡って,VE(価値工学)などの

手法をとりまじえて,設計,開発,さらには商品企画の段階で原価を作り込む活動である」[神戸

大学管理会計研究会(1992a),88頁]と定義されるように,原価企画もまた,開発・設計段階で

の取り組みを重要視する技法である。そこで,ライフサイクル・コストと原価企画の関連性を考え

ることが有用であると思われる。

                    -122一

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 原価企画の文献においては既に,「原価企画は最終的には,製品ライフサイクル・コスト全体を

対象として実施すべきであるし,そうすることによってのみ本当のコストダウソが可能となる」

[加登(1993),55頁]という指摘,および原価企画の目標は生産者のみならず,顧客も含めた双

方のライフサイクル・コストを最小化することにある[Ansari et al.(1997), p.15〕という指摘が

見られ,原価企画においてライフサイクル・コスト全体を目標原価の設定対象とすべきであるとい

う主張がなされている。したがって,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むこと

が,ライフサイクル・コストを最小化する製品の開発に貢献すると思われる。

2.ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画の必要性一先行研究のレビュー一

 前節で明らかにしたように,ライフサ・イクル・コストを最小化する製品開発を行うためには,原

価企画において,ライフサイクル・コスト全体を目標原価の設定対象とした原価企画活動に取り組

むことが有用であると思われる。そこで,本節では,まず,ライフサイクル・コスト全体を目標原

価の設定対象とする原価企画,すなわちライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画の必要

性について明らかにしているCAM-1(Consortium for Advanced Manufacturing-lnternational:国

際先進製造協会)およびSheilds(M D. Shields)とYoung(S. M. Young)の研究をレビューす

る。ついで,ラ・イフサイクル・コスティングと原価企画(Target Costing)を統合したライフサイ

クル目標原価計算(Life Cycle Target Costing)に関するSchmidt(Felix R Schmidt)の研究をレ

ビューする。これらの先行研究のレビューをふまえて,ライフサイクル・コストを目標原価とする

原価企画の必要性を明らかにするω。

(1)CAM-1の研究

 CAM-1は,「原価企画(Target Costing)はライフサイクル全体にわたり発生するすべてのコス

トを考慮している。そして,原価企画の目標は生産者のみならず,顧客も含めた双方のライフサイ

クル・コストを最小化することにある」[Ansari et al.(1997), p.15]と主張し,ライフサイクル

・コストを目標原価とする原価企画を実施する必要性を説いている。本項では・CAM-1の1988年

と1997年の2つの文献に基づき,ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画の必要性を

明らかにする。

①1988年の研究

 ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画に関するCAM-1の研究の源流は,1988年に

出された文献(Cost Management for Today’s Advanced Manufacturing)に遡ることができる。こ

の文献では,ライフサイクル・コストを考える必要性について,次のように述べている。「製品の

使用時に消費者に負わされた原価が取得原価よりも大きいことがしばしばある。顧客は製品を信頼

性と保守可能性の点から需要する傾向が強くなっている。このことは,全ライフサイクルの原価計

算を強調する意義が増大したことを示す。」[Berliner and Brimson(eds.)(1988), p.156,長松監

                   一123一

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訳(1993),147頁]

 さらに,この文献では,ライフサイクル・コスト・マネジメソトが取り上げられており,その中

でライフサイクル・コスト・マネジメソトは,「総ライフサイクル・コストが確実に最低になるよ

うに,生産時点より以前に発生する諸活動に焦点をあてる。というのは,製品原価の90%以上

は,製造段階より以前の段階で決定してしまうので,事前の計画設定段階で無駄の排除が可能な様

々な機会を資本化計算しておく必要がある」[Berliner and Brimson(eds.)(1988), p.139,長松監

訳(1993),131頁]と述べられており,源流管理の必要性が指摘されている。

 また,CAM-1の1988年の研究においては,原価企画(Target Costing)という言葉は直接的に

は使われていないものの,既に原価企画の類型と思われるモデル(製品ライフサイクル・モデル)

が提示されている。下記の図2が製品ライフサイクル・モデルの概念図である。「基本財務モデル」

と「市場・競争者の分析」を統合することで,目標原価に関する情報(予定売価,利益)を生み出

すための「市場財務モデル」が形成されて,製品の原価を確定する場合には,製品ライフサイクル

期間中の原価の動きを把握したうえで,新製品の原価を正確に見積り,このようにして見積られた

原価と,図2のプロセスを経て導かれる目標原価とを比較する必要があるとCAM-1は主張してい

る[Berliner and Brimson(eds.)(1988), p.146,長松監訳(1993),137頁]。図2の下半分は,原

価企画でいうところの“予定売価一目標利益=目標原価”の算式と全く同じものを表しており,目

標原価と見積原価の比較を行う部分もきわめて原価企画と類似している。

 ライフサイクル・コスト・マネジメソトに関する記述と製品ライフサイクル・モデルから明らか

なように,CAM-1の1988年の研究において,既にライフサイクル・コストを目標原価とする原価

企画の類型と思われる部分が示されているといえよう。

図2 製品ライフサイクル・モデルの位置付け

基本財務モデル

市場財務モデル

売上高

必要利益率

目標原価

市場・競争者の分析

(出所)Berliner, C. and Brimson, J. A.(eds.)(1988),p.146.(長松監訳(1993),137頁)。

                 -124一

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②1997年の研究

 CAM-1の1997年の文献(Target Costing:The Next Frontier in Strategic Cost Management)に

おいては,原価企画において,ライフサイクル・コストを目標原価とすることが主張されている。

CAM-1は原価企画における目標原価(許容製品原価)に含まれる要素を下記の図3に示すように,

5つの観点からの考察で分類しているが,その中の一つにライフサイクルの観点からの考察があ

る。ここでは,これについて取り上げたい。CAM-1は,ライフサイクルの観点から許容製品原価

を分析すると,原価の発生に時間差があるため,企業は目前の原価に対する意思決定のみではな

く,将来発生するであろう原価に対する意思決定にも焦点を当てるようになるため,長期的な観点

からの意思決定が可能になると主張している[Ansari et al., pp.46-47]。その結果,製造業者側

と顧客側で発生するコストを最小化し,ライフサイクル・コストを考慮した製品開発が動機付けら

れる。

 しかし,CAM-1の1997年の研究では,具体的にどのようにして製造原価以外のライフサイクル

 コストを目標原価に組み込み,原価企画として実施していくかという点については言及されてい

ない。

価値連鎖からの考察

許容製品原価

企菓内部で発生するコスト

企薬外部で発生するコスト

  図3 多様な観点からの許容製品原価要素の考察

ライフサイクル    顧客からの    技術者からの

からの考察      考察       考察

一(出所)

許容製品原価

研究・開発

製造

マーケティング

@ 流通

サービス

@支援@廃棄

許容製品原価 許容製品原価

特徴 機能

顧客の見方から技術者の

ゥ方への転換

測定基準

構成要素

会計からの

 考察

許容製品原価

新製品原価

@もしくは

竡Y原価

設計原価@もしくは

?ョ原価

1回限りのコスト

@ もしくは

Jり返し発生する

@ コスト

                                 (注)遺産原価(legacy                                cost)とは、過去の意                                思決定の結果として支                                 出される原価を意味                                する。

Ansari, S。 L., Bell, J. E. and the CAM-I Target Cost Core Group(1997),Target Costing The Nllxt

Frontier in Stra tegic Cost Management, Irwin, Chicago. p,46.

                -125一

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(2)Shields and Youngの研究

 ShieldsとYoungは,企業にとって長期的な市場での競争優位を生み出すような効果的なラ・fフ

サイクル・コスト・マネジメソトを実施するために,製品ライフサイクル・コスト・マネジメント

(Product Life Cycle Cost Management:以下PLCCMという)のモデルを提唱している。 PLCCM

は,9つの企業の事例研究を基礎に,製造業のための効果的なモデルを提示している。PLCCMは,

2つの原則と10個のガイドライソから構成されている[Shields and Young(1991), P.44]。

①PLCCMの構成要素

 ShieldsとYoungは,まず初めにPLCCMの構成要素として,次の4つを挙げている[Shields

and Young(1991), p.39]。

 1.ライフサイクル・コスティソグ

 2.製品ライフサイクル・マネジメソト

 3.組織構造

 4.原価引下げ方法

 ここでは,4つの構成要素のうちで,特に,ShieldsとYoungが独自の主張を展開している製品

ライフサイクル・マネジメントと組織構造について説明する。

i)製品ライフサイクル・マネジメント

 Susman(G.1. Susman)は,製品ライフサイクルの概念をマーケディングの視点と製造の視点か

ら考察している。マーケティングの視点とは,導入期,成長期,成熟期,衰退期といった4つの

ステージから製品ライフサイクルを考える視点であり,製造の視点とは,製品コンセプトの決定,

設計,開発,製造,ロジスティクス支援のステージから製品ライフサイクルを考える視点である

[Susman(1989), pp.8-9]。 ShieldsとYoungは,このSusmanの研究をベースに, Susmanの2

つの視点に,さらに2つの視点,すなわち消費者の視点と社会の視点を加えて,合計4つの視点

から製品ライフサイクルを考えている。消費者の視点とは,購入,使用,支援,保全,廃棄の各ス

テージからなり,社会の視点とは,廃棄コストと外部コスト(例:製品による環境汚染から健康被

害を受けた場合に生じるコスト)の2つのコストから構成されるとしている[Shields and Young

(1991),p.40]。 ShieldsとYoungは効果的な製品ライフサイクル・マネジメソトのためには,消

費者の視点および社会の視点からの考察も不可欠であると考え,Susmanの主張をより拡張してい

る。

ii)組織構造

 ShieldsとYoungは,後述するPLCCMの原則からも明らかなように,継続的な改善を行うこ

とを非常に重視している。彼らは1989年の研究において,継続的な改善を行い,企業が成功する

ためには,企業は従業員をいかにやる気にさせるかが重要であり,これに成功すれば,イノベーシ

ョンを引き起こし,高品質な製品を製造し,企業は成功することを明らかにしている。そして,彼

らは企業の成功のためには,数字による管理ではなく,継続的な改善への献身による管理が必要で

                   一126一

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あるとし,そのためには企業文化や従業員の管理方法,報酬などの側面で組織構造を変革すること

が必要であると主張している[Shields and Young(1989), p.17]。 PLCCMにおいて組織構造が

構成要素の一つに含められているのは,1989年の研究の成果を受けているためである。

 ShieldsとYoungは,組織構造として,マルチ・ファソクショナルチームの必要性を主張し,

“壁越し構造”の批判について述べている。彼らは,欧米で多く行われている壁越し構造による製

品開発プロセスを継続的な改善を妨げるものと批判し,壁越し構造ではなく,ラグビー式の製品開

発やコソカレソト・エンジニアリソグのように,前後の作業(例えば設計と製造)をオーバーラッ

プさせながら行う必要性と,クロス・ファンクショナルなチーム活動を行う必要性を主張している

[Shields and Young(1991), p.41]。

②PLCCMの原則

 SheildsとYoungは, PLCCMを実施するための原則として,次の2つの原則を挙げている

[Shields and Young(1991), p。48]。これら2つの原則は後述する10のガイドライソの基盤となる

ものである。

 1.PLCCMシステムの成功に対する最も重要な決定要因は,幅広い洞察力を最大化し,さら

  に,全ての従業員とPLCCMシステムの目的を達成するために必要な全ての活動とを統合す

  るために,企業の構造とプロセスを組織することである。

 2.PLCCMが成功するために最も重要な行動変数は,よく管理された継続的改善である。継続

  的改善の文化は長期的に好ましい結果をもたらすために,すべての従業員が共有する強い信

  念,価値,目標を提供することが望ましい。

③PLCCMのガイドライン

 ShieldsとYoungは, PLCCMのための2つの原則につづいて,ガイドライソとして10挙げてい

る[Shields and Young(1991), pp.48-51]。

 1.人間統合型企業

 2.全ライフサイクル・コスト

 3.関連原価

 4.投資

 5.源流管理

 6.原価企画

 7.原価管理ではなく,原価削減

 8.業績評価

 9.従業員の反発を軽減すること

 10.継続的な教育

 このうち,以下で,PLCCMに特に強く関連し,さらにライフサイクル・コストを目標原価とす

る原価企画の実施と関連するガ・イドライソとして,2の全ライフサイクル・コストと6の原価企画

                   一127一

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について説明する。

i)全ライフサイクル・コスト㈲

 ShieldsとYoungは,製造者側で発生するコストだけではなく,顧客側で発生するコストを含ん

だ全ライフサイクル・コストこそが製品原価として最も適切な概念であることを示し,製品購入後

に顧客側で発生するコストが増大している現状では,全ライフサイクル・コストを考慮することが

重要であることを明らかにしている。顧客は全ライフサイクル・コストが最小になることを求めて

いるので,企業にとって長期的によい結果を得るためには,全ライフサイクル・コストを考慮しな

ければならない[Shields and Young(1991), pp.48-49]。

ii)原価企画

 設定された製品原価に関する目標を達成するためには,原価企画は不可欠な方法である。原価企

画の目標原価は市場で予想される販売価格から期待される利益を控除したものであるが,この目標

原価の設定対象は全ライフサイクル・コストでなければならない[Shields and Young(1991), p.

49]。

 PLCCMのガイドライン2と6の内容より明らかなように, ShieldsとYoungは全ライフサイク

ル・コストを目標原価とする原価企画の実施を主張している。そして,それを行うことが,

PLCCMの目的である,長期的な市場での競争優位をもたらすことに貢献することを明らかにして

いる。

(3)Schmidtのライフサイクル目標原価計算

 「ライフサイクル・コスティングと原価企画を統合する製品ライフサイクル原価計算およびライ

フサイクル目標原価計算の研究は,製品開発を含む製品ライフサイクル上の製品関連の戦略的意思

決定を支援する理論の創造を指向する。これは,英米の理論と日本の理論を一体化させ,新たな理

論展開を試みる研究であり,ここにはドイツにおける理論的研究方法の特質が認められる」[岡野

(2003),85頁コといわれているように,ドイツでは,ライフサイクル・コスティソグと原価企画

を統合する研究が進められている。ここでは,特にSchmidt(Felix R. Schmidt)の所説を取り上

げて,「ライフサイクル目標原価計算」について明らかにしたい。

 Schmidtは,単一の会計期間に対応させて考える伝統的な原価計算を「静態的なシステム」であ

ると捉え,伝統的な単一会計期間対応の原価計算では,会計期間をまたがって発生する原価につい

ては,原価が発生する因果関係を無視して,会計期間に無理に対応させてしまっていると批判して

いる。その一方で,ライフサイクル・コスティングは,複数の会計期間にまたがる原価計算手法で

あり,短期(一会計期間)を前提とした原価計算を動態化するものであり,会計期間をまたがって

発生する原価についても,その原価の発生期間に対応させて適切に処理できると主張している

[Schmidt(2000), S.62]。

 原価企画は後述するように時間軸上のある一点(製造時点)の原価に対して実施されることが多

                   一128一

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図4 原価企画とライフサイクル・コスティングの関係

ライフサイクル・コスティング(Lre Cycle Costing):

ライフサイクル期間全体

ノわたる売上への影響ライフサイクル期間全体

ノわたる原価への影響

ライフサイクルの各局面での意思決定に貢献する情報の提供

製造 使用・廃棄初期の製品構想 開発・設計

市場での需要の調査

原価企画(Target Costing):

ライフサイクル期間全体を対象とした

@ 臼標原価の設定とその達成市場での予定販売価格

(出所)Schmidt, F, R,(2000),ム旋Cycle Target Costing TEin Konzept zur Jn(egrration der Lebensayk-

   lusorientierung in dαs Target Costing-, Shaker Verlag, S。77.

く,「静態的な」システムである。これではライフサイクル・コスト全体に対して影響を与えて,

ライフサイクル・コストを最小化することが難しい。そこで,Schmidtは原価企画とライフサイク

ル・コスティングが,共に開発・設計段階を重視した技法であることに着目して,両老を統合した

ライフサイクル目標原価計算を提案している。上述したようなラ・イフサイクル・コスティソグの

「動態的な」考え方を原価企画に適用することで,原価企画の対象を製造原価のみならず,その前

後で発生する原価(開発・設計,’ g用・廃棄に関わる原価)にまで拡大することが可能である

[Schmidt(2000), S.76-77]。上記の図4は上述した内容を図示したものである。

 図4から明らかなように,原価企画とライフサ・イクル・コスティソグを統合し,ライフサイク

ル・コスティソグの動態的な視点を原価企画に取り入れることで,原価企画の目標原価の設定対象

をライフサイクル・コスト全体へと拡大し,ライフサイクル・コストの引き下げが可能であるとい

うことをSchmidtは主張している。

3.原価企画においてライフサイクル・コストに取り組む意義

 前節では,ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画を実施することを主張する3つの

先行研究についてレビューした。本節では,これらのレビューをふまえて,ライフサイクル・コス

トを目標原価とし,ライフサイクル・コストの最小化を目指す原価企画を実施することの意義を明

らかにしたい。

                   -129一

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(1)市場での競争優位の確保

 前述したように,市場に投入される製品が高品質,低価格,市場へのタイムリーな投入という条

件を満たしていることはもはや最低条件になっている。したがって,市場での競争優位を確保する

ためには,高品質,低価格,市場へのタイムリーな投入以外の要素で,自社製品を差別化できなけ

ればならない。そこで,競争優位を確保するための一つの方法として,ライフサ・fクル・コストの

最小化を目指すことが挙げられる。小林哲夫教授やShieldsとYoungも指摘するように,顧客は

購入価格が安く,製品購入後に顧客自らが支払うコストが最小となる製品を期待している。したが

って,ライフサイクル・コストを最小化する製品を開発することは,市場において自社製品の差別

化を図り,競争優位を確保するための一つの要素となりうる[小林(1996),8頁およびShields

and Young(1991), p.49]。

② 企業の長期的な収益性への貢献

 「原価企画は,これを実施する企業が長期的な収益性を確保することを裏付けるライフサイクル

・コスト目標を達成することを確実にする」[Freeman(1998), p.23]といわれるように,ライ

フサイクル・コストを目標原価とする原価企画を行い,ライフサイクル・コストを最小化しつつ

も,品質を維持し,必要な機能を実現する製品を開発することは,企業の長期的な収益性の確保に

貢献する。ライフサイクル・コストを最小化しようとすることは,前述したように,市場での競争

優位を確保し,売上を増大することにつながる。

 一方で,ライフサイクル・コストを最小化することは,後述するように,地球環境の保護やエネ

ルギー資源の節約に貢献するため,ライフサイクル・コストの最小化に向けて努力することは,環

境に優しい企業であることや,エネルギー資源の節約に貢献する企業,リサイクルを積極的に進め

ている企業など,企業にとってよいイメージを植え付けることにつながる。その結果として,企業

のイメージアップおよび売上の増大など,企業にとってプラスの効果をもたらすことが期待できる。

(3)地球環境問題およびエネルギー資源枯渇問題への対策

 地球環境問題,およびエネルギー資源が将来的に枯渇しかねないという問題は,日を追うごとに

深刻さを増している。これらの問題が発生する要因として,企業が製造を行う過程よりもむしろ,

企業が製造する製品自体が大きな影響を及ぼしている[Cairncross(1991), p.269,東京海上保険

グリーンコミッティ訳(1992),309頁]。例えば,フロンガスを含む製品を使用することで,オゾ

ン層が破壊されるという問題は,フロンガスを含む製品が製造される過程よりも,むしろ,フロン

ガスを含む製品が使用されて,フロソガスが大気中に放出されることが直接的な原因となってい

る。また,燃費の悪い自動車はそれだけ多く給油が必要になるので,長期的にみれば,最終的に石

油が枯渇する遠因にもなっている。

 ある製品が地球環境を汚染したり,破壊したりするような製品であるかどうかは,原材料が選択

                   一130一

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され,基本仕様が選択される段階,すなわち開発・設計段階で,大部分が決定してしまうので,地

球環境保護やエネルギー資源の節約に貢献する製品を開発するためには,製品の開発・設計段階を

重視する必要がある[Lewis et al.(2001), p.13]。したがって,ライフサイクル・コストを目標

原価として原価企画に取り組み,製品の開発・設計段階から環境負荷の小さい製品や地球上の資源

の節約に貢献する製品を開発することを重視すべきである。その結果として,ライフサイクル・コ

ストを最小化する製品を開発することが可能となり,これは地球環境の保護やエネルギー資源の節

約に大きく貢献する。

4.原価企画におけるライフサイクル・コストへの取り組みの現状

(1)実態調査結果に見られる現状

 前述したように,原価企画では理想的には,目標原価の設定対象はライフサイクル・コスト全体

に拡大すべきであるという主張がなされている。しかし,実際には,原価企画において,目標原価

の設定対象をライフサイクル・コスト全体に拡大しているとは言い難い。次頁の表1は,田中雅

康教授により2000年に行われた最新の実態調査(6)の結果の一部である。この質問では,導入期の新

製品,成長・成熟期の新製品に対して,ライフサイクル・コスト全体の中で,どのコストを目標原

価の対象に含めるかどうかということが問われている。表1から明らかなように,製造コストに

ついては,ほぼ全ての企業が目標原価の対象に「含める」と回答しているが,使用コストやリサ・イ

クル・コスト,廃棄コストを目標原価の設定対象に「含める」と回答した企業の割合は極端に少な

いことから,原価企画におけるライフサイクル・コストへの取り組みが積極的に行われているとは

表1 目標原価の設定対象に含まれるコスト(複数回答)

コストの発生段階 具体的なコスト 導入期 成長・成熟期

開発段階 開発設計費 76% 56%

直接材料費 99% 99%

直接加工費 98% 98%

製造段階金型費 83% 79%

工場の間接費 72% 78%

製造関連の物流費 57% 63%

物流段階販売関連の物流費 50% 57%

使用段階メンテナンス・コスト 32% 37%

ラソニソグ・コスト 36% 40%

リユース・コスト 8% 16%

環境への対応段階 リサイクル・コスト 10% 16%

廃棄コスト 12% 17%

(出所) 田中雅康(2001)「原価目標の設定と細分化(先進企業の原価企画

   一実態と動向(1))」『企業会計』VoL 53 No.11,105頁。

一131 一

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言い難いω。

② 目標原価の設定対象が製造コストに偏るという問題点

 前項で示した田中雅康教授の実態調査(表1)から明らかなように,目標原価の設定対象は製造

コストに偏っている。このような結果が生じる理由として,使用コストや廃棄コストなどのような

顧客の側で発生するライフサイクル・コストの実態が,製造コストと比べると把握しづらいこと

や,使用コストや廃棄コストの予測が難しい場合があることが挙げられる[小林(1996),10頁]。

これらの理由から,実態調査の結果が示すように,ラ・fフサイクル・コスト全体を目標原価の対象

とすることは難しく,目標原価の対象は生産者側で発生するコスト(開発・設計コスト,製造コス

ト,物流コスト)に偏っている場合が多いと考えられる。

 しかしながら,原価企画において,目標原価の設定対象が製造コストに偏るのは望ましくない。

今日,製品ライフサイクル・コスト全体でみた場合において,使用コストの増大が非常に顕著であ

り,製造コストを上回る勢いである。特に,ハイテク製品ではこの傾向が強い[Blanchard and

Fabrycky(1998), p.558]。下記の図5は,ある製品のライフサイクル・コストを構成する4種類

のコスト(開発・設計コスト,製造コスト,使用・支援コスト,除却・廃棄コスト)が,ライフサ

イクル全体の時間軸(1,2,…年目)のどの部分で多く発生するかを示したものである。

 図5から明らかなように,使用・支援コストの額が製造コストの額を上回りつつある。さら

に,研究・開発コストや除却・廃棄コストの額も決して小さいわけではない。したがって,製造コ

スト以外のコストが増大している現状,および図5からも明らかなように,原価企画を行う場合

には,製造コストだけではなく,ライフサイクル・コストを十分に考慮し,目標原価の設定対象を

コスト発生額

0

図5 ライフサイクル・コストの発生状況とその内訳

               翻研究・開発コスト

5       10

ライフサイクル(年)

15

(出所)Blanohard, B. S. and Fabrycky, W. J.(1998),Systems Engineering and、AnalysiS, 3rd ed., Prentice Hall,

   Upper Saddle River, New Jersey, p.591.

一132一

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ライフサイクル・コスト全体へと拡大する必要がある。

5.ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画を実践するための課題

 前述したように,企業が市場での競争優位を確保し,長期的な収益性を安定させ,さらに深刻化

する地球環境問題に対処するためには,ライフサイクル・コストの最小化を常に意識しておくこと

が重要である。そのためには,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むことが有用で

あることをこれまでの節で明らかにしてきた。

 しかし,表1からも明らかなように,実際に,原価企画において目標原価の設定範囲をライフサ

イクル・コスト全体にまで拡大している企業は少なく,原価企画におけるライフサイクル・コスト

への取り組みは不十分であるのが実状である。表1のような結:果が生じる要因として,原価企画に

おいてライフサイクル・コストに取り組むために克服されるべき課題が存在すると考えられる。本

節では,これらの課題を6点に分けて,それぞれについて明らかにしたい。

(1)経営者および株主の理解

 第一の課題は,ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画を実施することに対して,経

営者や株主の理解をどのようにして得るかということである。「原価企画は環境配慮型の製品開発

を阻害するものではないが,わずか1円にも満たないボルト1本あるいは抵抗器1つがコストダ

ウンの対象とされるような厳しい競争下にあるわが国では,環境配慮に十分な資金や経営資源が充

てられないのが現状である」[経済産業省(2002),33頁]といわれているように,原価企画にお

いては製造原価の徹底的な引き下げが行われており,製造原価以外のライフサイクル・コストの削

減に取り組む余裕がないのが実情である。ライフサイクル・コストを最小化するように努力するこ

とは長期的にみれば,企業利益の最大化につながるが,短期的には支出の増大ということになる。

そこで,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むことに対して,経営者や株主の理解

をどのように得るかが課題となる[伊藤(1993),20頁]。

(2)環境コスト⑧への取り組み

 第二の課題として,環境コストへの取り組みが挙げられる。BlanchardとFabryckyの伝統的な

ライフサイクル・コストの定義の中には,環境コストは含まれていないが,20世紀の後半から環

境問題が深刻化している現状では,環境コストを無視することは不可能であり,環境コストもライ

フサイクル・コストの構成要素の一部と考えるべきである。したがって,原価企画においても積極

的に環境コストに取り組むべきであることは言うまでもない。

 しかしながら,原価企画におL〈て環境コストに取り組むことはきわめて難しいとされている。伊

藤嘉博教授によれば,まず,環境コストの測定自体が困難なことに加えて,原価企画の基本的な算

式である,予定売価一目標利益=目標原価において,予定売価は所与のものであるが,売価の値上

                   一133一

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げをせずに,環境コストだけを目標原価に含めることは,不可能に近い。環境コストまで原価企画

に含めるとなれば,原価企画の目標原価の算定方法を見直す必要があるかもしれない[伊藤

(1993),21頁]。

(3)ライフサイクル・コスト間での見積りの正確性の相違

 第三の課題として,原価企画の目標原価に組み込まれるライフサイクル・コスト間で見積りの正

確性にかなりの相違があることが挙げられる。ライフサイクル・コストの中で,製品の需要者側で

発生するコスト(使用コストおよび廃棄コストの大半)やPLコスト,環境コストなどの社会的コ

ストは,見積り期間が長期間に及ぶために,リスクを多く含んだ不確実性の高い値になりやすいと

いう問題がある。また,Emblemsvagのように,ライフサイクル・コストを広義に解釈すれば,

企業のブラソド・イメージの低下による売上減などもライフサイクル・コストの一部に含められる

が,これらはどうしても主観的な見積もりに頼らさるを得なく,正確性に欠ける[伊藤(1996),

84頁]。これに対して,製造原価はきわめて短期間のコスト見積もりで,さらに自社内で発生する

コストであるため,見積りの正確性は上述したコストに比べれば高くなる。このように,見積り精

度が大きく異なるコストを一律に目標原価の中に組み込み,その達成を求めることが本当に可能で

あるかという問題が考えられる。

(4)割引現金収入価値法(DCF法)と割引率の設定

 第四の課題として,割引率の設定が挙げられる。ライフサイクル・コストのうち,将来にわたり

発生するコストについては,貨幣の時間価値を考慮して,適切な現在価値に直す必要がある。この

場合,一般的に,DCF(Discounted Cash Flow:割引現金収入価値)法による割引計算が行われ

る。将来にわたり発生するコストはある一定の割引率を用いて,現在価値に割り引かれるわけだ

が,この時に割引率をどのように設定するかという問題がある。DCF法による割引現在価値の計

算では,割引率の設定の仕方により現在価値額が大きく異なる。特に,DCF法の計算対象となる

期間が長期になればなるほどこの傾向が強まる。例えば,100年後に起こる100万ドル相当の環境

破壊を10%の割引率で割り引いた場合の現在価値(9)は73ドルでしかない。仮に,割引率を1%とす

ると369,711ドルとなり,全く異なる現在価値額になる。製品の需要老側で発生するコストや環境

コストは見積り期間がきわめて長期に及ぶために,割引率の設定の仕方で将来コストの見積り額が

大きく影響を受けることになる[Cairncross(1991), p.31,東京海上保険グリーソコミッティ訳

(1992),34頁]。したがって,DCF法を用いる場合に,最適な割引率をいかにして設定するかとい

うことが問題となる。

 また,より根本的な問題としては,このように割引率の設定方法により将来コストが大きく変わ

ってしまう欠点があるDCF法に替わる将来コストの計算方法を考える必要もあると思われる。

一134一

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(5)間接費の管理

 第五の課題として間接費の管理が挙げられる。原価企画は直接費を管理するためのッールである

が,現在では,間接費の増大が問題となっており,これらの間接費をどのように管理するかが問題

になっている。トータル・コストの50%以上が間接費だともいわれている[Blanchard and

Fabrycky(1998), p.580]。そこで考えられるのが,直接費部分は原価企画を活用し,間接費部分

をABC(Activity-Based Costing:活動基準原価計算)により管理することである。しかし,これ

についても「原価企画が直接費部分を,ABCが間接費部分を,といった守備範囲を分け合う際の,

両者の接点については,さらに慎重な検討を要する」[佐藤(1999),89頁]とされている。

 一方で,一般的にライフサイクル・コストの見積りは,コスト・ブレークダウン・ストラクチャ

ー(Cost Breakdown Structure:CBS)°Φを活用して行われるが,この過程において,一部の間接費

が無視されてしまっているという問題がある。ライフサイクル・コストの概念が提案された1960

年代には,間接費を無視してもさほど問題はなかったが,間接費が増大している現在では,間接費

を無視することは大きな問題である[Emblemsvag(2003), p.287]。したがって,ライフサイク

ル・コストに含まれる間接費をどのように処理するかという課題もある。

 上述したところから明らかなように,原価企画,およびライフサイクル・コストの見積り過程の

双方において,間接費をどのようにして処理するかということが問題となっている。これは,原価

企画においてライフサイクル・コストに取り組むうえで,大きな課題となる。

(6)アセンブリーメーカーとサプライヤーの関係

 第六の課題として,アセンブリーメーカーとサプライヤーとの良好な関係(信頼関係)の構築が

挙げられる。より具体的に言えば,アセソブリーメーカーは,サプライヤーといかにしてウィン・

ウィンの関係を築くかということである。ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画を行

い,ライフサイクル・コストを最小化する製品を開発することにより,顧客と製造業者だけではな

く,サプライヤーも含めて,バリュー・チェーン全体でメリットがもたらされるようでなければな

らない。現在,行き過ぎたコストダウソおよびグリーン調達などにより,サプラ・イヤーは疲弊して

おり,これは原価企画の逆機能として取り上げられている[小林(2004),6頁,および吉田

(2003),206-208頁]。しかし,ライフサイクル・コストを最小化する製品を開発しようとする場

合,企業内部の部門を超えた連携だけでなく,企業外部組織との強固なサプライヤー関係を築くこ

とは非常に重要であり,サプライヤーの協力なしにはライフサイクル・コストを最小化する製品を

開発することは難しいと言っても過言ではない[Cooper and Slagumlder(2003), pp.92-94]ω。

したがって,アセソブリー・メーカーとサプライヤーとがウィソ・ウィン関係を築くことが可能に

なるような組織間マネジメソトの問題についても今後検討しなければならないと思われる。

一135一

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むすび

 本稿では,市場で競争優位を勝ち取り,企業の長期的な収益性を安定させるための一つの方法と

して,また,地球環境問題やエネルギー資源の枯渇などの問題に対する一つの解決策として,ライ

フサイクル・コストを最小化する製品の開発,特に原価企画におけるライフサイクル・コストへの

取り組みについて考察してきた。まず,第1節では,ライフサイクル・コスト概念の意義と特質

を明らかにした。ついで,第2節では,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むこ

と,すなわちライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画に関する3つの先行研究をレビ

ューし,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組む必要性を明らかにした。さらに,第

3節では,第2節での先行研究のレビューをふまえて,原価企画においてライフサイクル・コスト

に取り組むことの意義について考察した。一方で,第4節では,原価企画におけるライフサイク

ル・コストへの取り組みに関する実態調査の結果から,原価企画におけるライフサイクル・コスト

への取り組みは現状では不十分であることを明らかにした。第4節でみた実態調査の結果から原

価企画においてライフサイクル・コストへの取り組みが不十分であることは明らかだが,その背景

には,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組むことにはいくつかの困難な点があると

考えられる。そこで,第5節において,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組む際

に克服されるべき課題を明らかにした。

 本稿では原価企画の目標原価の対象をライフサイクル・コストとすべきであることを主張した先

行研究をレビューすることにより,その必要性を明らかにしてきた。ライフサイクル・コストを最

小化する製品開発を行うことは,市場での競争優位の確保,企業の長期的な収益性の確保,地球環

境問題やエネルギー資源の枯渇問題の深刻化への対処といった観点からみて必要不可欠なことであ

る。それゆえに,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組み,ライフサイクル・コスト

を最小化する製品開発を行うことは今後ますます重要になると思われる。

 その一方で,第4節でみた田中教授の実態調査からも明らかなように,原価企画においてライ

フサイクル・コストへの取り組みは必ずしも十分なものであるとはいえない。また,「ライフサイ

クル・コストへの取り組みについて,顧客とのリンケージ,サプライヤー関係,クロス・ファソク

ショナルな組織活動,さらにコソカレント・エソジニアリソグなどの必要性が述べられているが,

それは原価企画活動で指摘されていることと多くの点で共通している。しかし,たんに似通った点

があるからといって,原価企画活動のなかでライフサイクル・コストへの取り組みが本格的に実施

されるということは断定しがたい」[小林(1996),9-10頁]という指摘からも明らかなように,

ライフサイクル・コストを目標原価とする原価企画を実施することは決して容易なことではないの

も事実である。第5節で挙げたような克服されるべき課題が残されている。これらの課題が克服

されていないことが,実態調査において,ライフサイクル・コストへの取り組みが不十分であるこ

との一つの要因と考えられる。

                   -136 一

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ライフサイクル・コストを最小化する製品を開発することは,厳しい競争環境に直面した21世

紀の企業にとって急務であり,どうしても取り組まなければならないことである。しかし,上述し

たように,原価企画においてライフサイクル・コストに取り組み,ライフサイクル・コストを最小

化する製品開発を実現するためには克服されるべき課題があるのも事実である。したがって,これ

らの課題が原価企画においてライフサイクル・コストに取り組む際の障壁となるが,これを克服す

るための研究を今後の研究課題としたい。

ωラ・イフサイクル・コストおよびライフサイクル・コスティングは,製品を対象にして用いられるものと,シ

 ステム構築やプラントなどの設備資産を対象にして用いられるものの2種類に大別される。本稿では,前者

 の,製品を対象としたライフサイクル・コストおよびライフサイクル・コスティソグについて考える。な

 お,ここで対象となる製品は,自動車や家電製品のような耐久消費財であり,使用コストが比較的長期間に

 わたり発生し,廃棄コストも発生することを前提としている。

②本稿では,製品を対象としたライフサイクル・コストを対象としているので,運用・支援コストを,以下で

 は特に「使用コスト」と呼ぶこととする。

(3)ライフサイクル・コストの最も基本的な分類は,これら4つに分類する方法であるが,最近では,ライフサ

 イクル・コストの範囲をより広義に解釈する傾向が強い。例えば,Emblemsvag(J. Emblemsvag)は,上

 述したコスト以外に,法律を遵守しない場合に生じる罰金,製品の欠陥などから生じる補償金,環境汚染に

 よる社会的損失などのような将来的な負債コスト(1iability cost),顧客の信頼,顧客ロイヤリティーおよび

 企業イメージを喪失した場合に生じる損失などもライフサイクル・コストに含めるべきだと主張している

 [Emblemsvag(2003), pp。31-32]。

(4)上記以外の研究として,原価企画,プロセス原価計算,およびライフサイクル・コスティングの結合を試み

 たBeath Kremin-Buchの1998年の研究が参考になるが,紙幅の関係から割愛させていただく。この研究に

 ついては崎章浩(2002)「戦略的コスト・マネジメントー原価企画とプロセス原価計算,ライフサイクル・

 コスティングの結合一」『経営論集』第49巻第3・4号において紹介されているので,そちらを参照されたい。

(5)論者によっては,製造者側で発生するコストと,顧客側で発生するコストを合計したものをライフサイクル

 ・コストではなく,「全ライフサイクル・コスト」と呼ぶこともある。

(6)この実態調査は,田中雅康教授が2000年に電気機器,輸送用機器,機械・精密機械,その他製造業のメーカ

 ー4業種の上場企業の事業所を対象に調査を行い309事業所から回答を得ている。実態調査の詳細に関して

 は,田中雅康(2001)「先進企業の原価企画一実態と動向(i)~(2>一」『企業会計』VoL 53 No.11-12および田

 中雅康(2002)「先進企業の原価企画一実態と動向(3)~(4・完)一」『企業会計』VoL 54 No.1-2を参照さ

 れたい。

〔7)田中教授と同様の質問を行った実態調査として,森久教授による実態調査(1997年),神戸大学管理会計研

 究会による実態調査(1991年)があるが,これらの実態調査からも,原価企画において,ライフサイクル・

 コストへの取り組みが不十分であることが明らかにされている。詳細は,森久(1998)「資料:原価管理に

 関する実態調査の集計結果」『経理知識』第77号,144-159頁,および神戸大学管理会計研究会(1992b)

 「原価企画の実態調査(2)」『企業会計』Vol.44 No.6,74-79頁を参照されたい。

(8)環境コストという用語には様々な定義がなされているが,本稿で言うところの環境コストとは,「内部環境

 コスト」を意味している。内部環境コストとは,「全体または部分的に,環境への配慮から生じる支出」

 [Bennet and James(1998), p.55,國部監修,海野訳(2000), p.63]である。

(9}割引率を10%とした場合の現在価値の計算式は,

 1,000,000x{1÷(1+0.1)100}≒72。5より求められる。

  また,割引率を1%とした場合の現在価値は,

 1,000,000×{1÷(1+0.01)100}≒369,711.2である。

一137一

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eoコスト・ブレークダウソ・ストラクチャー(CBS)とは,全てのライフサイクル・コストをまず,研究・開

 発,生産,運用・支援(使用),廃棄の4つのカテゴリーに分類した後に,さらにそれぞれのカテゴリー内

 で,資源の消費を伴う活動ごとにブレークダウンされていき,それぞれの活動のコストが測定される。こう

 して算定される全てのコストを合計するとライフサイクル・コストになる。なお,CBSについての具体例は,

 Blanchard and Fabrycky(1998), p.574を参照されたい。

01)環境コストの低減を考えようとする場合には,サプライヤーのみではなく,リサイクル業者との協力関係も

 重要になることが指摘されている[Ansari et al.(1997), p.94]。

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