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国立環境研究所GOSAT PROJECT NEWSLETTER ISSUE#7 JUL. 2010
感が異なっています。例えば国環研やサイエンスチームはデータの精度が重要ですし、JAXA は 1 日も早い成果の発表が重要、環境省は国の政策への反映が重要といった具合です。関係者の価値観の違いをすりあわせるため、本当に多くの議論を積み重ねてきました。決められたスケジュールと予算の中で、「いぶき」 を実現することができたのは、関係者の熱意の結集のたまものだと思います。
現在、各国から 「いぶき」 のデータの提供依頼が寄せられ、各種の国際会議でも 「いぶき」 の貢献が取り上げられるようになって来ています。気候変動に関する政府間パネル (IPCC) のパチャウリ議長も 「いぶき」 に大きな関心を示され、ご説明の直後に 「この説明パネルを持ち帰っていいか」 と言われたのには驚くとともに、大変感激しました。今後 「いぶき」 のデータが IPCC などで活用され、「世界共通の物差し」 となることを期待しています。世界を相手にした温室効果ガス観測専用衛星の実現レースは、欧州の計画中断と、OCO1
の打ち上げ失敗があり、「いぶき」の圧倒的勝利となりましたが、すでに第 2 ラウンドがはじまっています。NASA は OCO-2 の開発に着手し、欧州・カナダ・韓国・中国などでも類似衛星の検討が開始されています。残念ながら我が国は若干出遅れ気味ですが、「いぶき」後継機の実現に向けもうひと頑張りさせていただきたいと思っています。悪しからず。
1 Orbiting Carbon Observatory (OCO) 衛星は、米国 NASA の Earth System Science Pathfinder Project のミッションの一つで、大気中の CO2 とその時間変化の高精度全球観測を目的としています。2009 年 2 月 24 日に打上げが行われましたが、衛星を所定の軌道に投入することが出来ず、残念ながら打上げは失敗となりました。現在、後継機 OCO-2 の開発が始められています。
独立行政法人 国立環境研究所 ( 国環研 ) GOSAT プロジェクトオフィスがお届けする、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT、「いぶき」)プロジェクトのニュースレターです。
NEWSL
国立環境研究所
PROJECTETTER
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GOSAT
ISSUE #72010 年 7 月号CONTENTSGREETINGSGOSAT プロジェクト 現在と未来への思い 01NEWS米国ネバダ州レイルロードバレー「いぶき」の代替校正集中観測 02INTERVIEW日本リモートセンシング学会 建石隆太郎 前会長 03INFORMATION 宇宙からの温室効果ガス観測シンポジウム 開催のお知らせ 05AHA! OF THE MONTH
「今月のなるほど」「いぶき」の観測点について 06DATA PRODUCTS UPDATE 07ANNOUNCEMENT 07CALENDAR 07PUBLISHED PAPERS 07
月日の経つのは早いもので、「いぶき」の打上げから既に 1 年半が経過しました。「いぶき」の運用は極めて順調で、世界初・世界唯一の温室効果ガス観測専用衛星として、24 時間休むことなく全球の観測を続けています。2003 年 4 月に GOSAT プロジェクトチームが発足してから 2009 年 1 月の打上げまでの間、技術課題克服のための様々な挑戦の連続でした。中でも衛星内の機器の微小な振動や、細いケーブルの剛性の僅かな変化がセンサーのデータ精度に影響を与えることは予想外であ
り、最後まで解決に手こずりました。また、衛星の部品の故障、製造ミスなどが何件か起き、その都度、深夜あるいは早朝まで対策会議や確認作業に追われたのも今となっては懐かしい思い出です。
しかし、プロジェクトマネージャとして最も心血注いだことは、JAXA、 国 環 研、 環 境 省、GOSAT サイエンスチーム、メーカーに、データ利用で協力してくれる海外機関を加えた、いわば 「オールいぶきチーム」 の総力結集を図ることでした。各々のグループは価値観やスピード
GOSAT プロジェクト現在と未来への思い
- 浜崎 敬 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙利用ミッション本部 事業推進部長 JAXA 元 GOSAT プロジェクトマネージャ
GREETINGS
図 1. 「いぶき」 と JAXA 浜崎元 GOSATプロジェクトマネージャ。
図 2. IPCC パチャウリ議長(左)に 「いぶき」 データを説明する JAXA 浜 崎 元GOSAT プロジェクトマネージャ(右)。
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1.はじめにAtmospheric CO2 Observations from Space
(ACOS)1、NASA Ames Research Center (AMES)、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)、そして国立環境研究所は合同で 2010 年 6 月 21日から 25 日の間、米国ネバダ州の Railroad Valley ( レイルロードバレー、RRV) にて「いぶき」の代替校正のための観測を行いました。今回の場合、代替校正とは衛星の通過時刻に同期して衛星の視野内の地表面の放射輝度 2 を放射計を使って測定し、測定値を比較して衛星のセンサーの輝度校正を行う方法のことをいいます。
RRV はネバダ中東部に位置する長さ 30km、幅 20 km の playa(乾燥湖)です。その地表面は平坦で地表面反射率は空間的にほぼ一様であり、その広さは「いぶき」に搭載された温室効果ガス観測センサ (TANSO-FTS) の視野も広いため「いぶき」の代替校正に適しています。RRV における地上観測データから、「い
1 Atmospheric CO2 Observations from Space (ACOS) は米国航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所、カリフォルニア工科大学、コロラド州立大学の研究者を含む OCO サイエンスチーム関係者を中心に組織されたグループです。ACOS チームは GOSAT プロジェクトと緊密に連携し、「いぶき」及び OCO-2 のための CO2 算出アルゴリズム開発を「いぶき」データを利用して進めています。2 放射輝度: 光の強さの表し方の 1 つ。単位はWsr-1m-2µm-1。W は仕事率(ワット)。sr は単位立体角(ステラジアン)。µm は光の波長。
ぶき」の輝度校正を行うことが RRV 集中観測の目的です。2.観測
RRV にはベースキャンプを設営し、そこを中心に気象測器や全天カメラ等の各種観測機器を設置しました(写真1)。地表面からの放射輝度の測定は TANSO-FTS 視野内の代表値を求めるためにベースキャンプから 8 km 以内の複数のサイト(図 1)について行いました。地表面の放射輝度は FieldSpec Portable Spectroradiometer (フィールド携帯型分光放射計 )(ASD Inc.) を用いて測定しました。この放射計は 350 ~ 2500 nm の波長領域における放射輝度を測定することができます。
TANSO-FTS 視野内の放射輝度を把握するために、観測者はサイトにおいて図 2 の様なパターンで移動しながら地表面の放射輝度を測定しました。図中の緑線で示すグリッドの対角線で地表面の測定を行い、赤丸の部分で放射計の校正のためにスペクトラロンの測定を行いました。スペクトラロンとは、測定波長領域で高い反射率を持つ反射板のことです。
測 定は 6 月 21 日から 25 日にかけて放 射
計を 2 台用いて行いました。21 日、24 日はGOSAT パス 36、また 22 日と 25 日は「いぶき」の パス 37とそれぞれ同期した測定を行います。また 23 日は「いぶき」の通過はなかったのですが、ASTER3 が通過する予定だったため M03 サイトにて同期した測定を行いました。RRV における各測定日の測定サイトと「いぶき」 パスを表1に示します。3. 最後に
RRV では、ベースキャンプの設営、食事等の雑務も協力して行いました。このような作業も炎天下で行ったため、体力的にはかなり厳しく感じました。その中でも、参加した各人がそれぞれの任務に精力的に取り組めたと思います。厳しい環境にもかかわらず、全員が協力して RRV での観測を成功に導くために尽力しました。自分もその一員として参加できたことを光栄に思っています。
3 Advanced Spaceborne Thermal Emission and Refl ection Radiometer (ASTER、あすたー ) は可視バンドからから熱赤外バンドまでの 14 チャンネルを有する高性能光学センサーで、NASA、日本の経済産業省、資源・環境観測解析センターによる共同プロジェクトです。NASA Earth-Observing-System ( 地球観測システム、EOS) 計画の TERRA 衛星に搭載されており、1999 年に打上げられました。
米国ネバダ州レイルロードバレー「いぶき」の代替校正集中観測
写真 1. RRV におけるベースキャンプ
NEWS
図 2 地表面放射輝度測定の配置
表 1. 測定したサイトと「いぶき」のパス(表中のサイトにおける H, M, L は反射率の高低を表す。)
図・文 田中智章 ―国環研 地球環境研究センター (CGER) NIES ポスドクフェロー
図 1. TANSO-FTS の視野範囲(紫の円)と地表面からの放射輝度を観測したサイト
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横田(以下 Y):今日はお時間をいただき、ありがとうございます。建石先生はリモートセンシング学会の会長を 2 年間なされていましたが、まずはこの学会の良いところ悪いところ、それから、今後はこのようになっていって欲しいというようなご希望をお聞かせ下さい。建石(以下 T):そうですね、運営面では、良いと悪いと両方の意味があるのですが、この学会はローテーションが早いですね。ご存知のとおり、役員の任期は 2 年間と限られています。最初の 1 年間で慣れて、次の 1 年間仕事して、それでまたバトンタッチしないといけない。常にバトンタッチの準備が必要であるということは、ある意味運営面での悪い点です。ただ、それをよく解釈すれば、偏らないと言えます。つまり、色々な人に役員になっていただき、運営の機会を持っていただくということです。運営面ではそういう良い点と悪い点がありますね。そのような運営の仕方にも関係しますが、開かれた学会という言い方ができます。つまり一部の人だけが運営に参画しているということはない学会です。Y: そうですね、この学会というのは会員の方の分野もすごく多彩ですね。多分リモートセンシングと言うのは手段ですから、それを応用する分野は、もう陸海空だけではなくて、色々なところにあります。それぞれの分野のひと達が手段としてのリモートセンシングという意味でこの学会に参加されているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。T: そうですね。分野がバラエティに富んでいる、という特徴があると思います。 私はこの 2 年間で何をやるのかということを、最初から体系的にこれとこれをやろうと決めて行った訳ではないのです。目の前にやらなくてはならないことが出てきて、そしたら「こういう事も大事だ。」「じゃ、これもやりましょう」と言って実行してきました。 一つの例は、従来からリモートセンシングの教科書というのはないので、あった方がいい、という声があった時のことです。ご存知の通り、いくつかリモートセンシングの本はありますね。しかし講義にそのまま使える本はないじゃないですか。そこで議論したところ、大学の講義は普通 15 回ですから、15 章の本を作ろうという声が出て来て、教科書を作ることになりました。横田さんにも執筆を依頼していますね。その中で、第 1 章でリモートセンシングとは?について書かなくてはなりませんでした。私が担当して書くのですけれども、この本を「日本リモートセンシング学会編」にしたかったので、その時の理事に、リモートセンシングの定義はこれでよいかと聞いたところ色々な意見が出てきました。そこで、リモートセンシングははっきりとは学問分野が決まっていない、とまず気づきました。 外国の文献をみますと "Remote sensing is science and technology which ~~ "という書き方がしてあります。つまりリモートセンシングはこういう技術であり、こういう科学である、という説明が書かれています。日本語の「リモートセンシングは~~という技術である」、という部分は素直に理解できるのですが、「リモートセンシングは~~という科学であ
日本リモートセンシング学会
建石隆太郎 前会長千葉大学 環境リモートセンシング研究センター 教授
INTERVIEW
「いぶき」は宇宙から光を利用して地球大気を観測しています。このように離れた場所から電磁波を利用して対象物を観測する技術をリモートセンシングといいます。リモートセンシングは「いぶき」のように研究の分野で用いられるだけではなく、気象、農業、林業、漁業、防災、資源探査、地図作成などの実用的な分野でも用いられています。最近では、気象衛星の画像だけでなく、Google Earth のように高分解能の衛星画像が簡単に見られるようになり、リモートセンシングが身近なものになっています。
国立環境研究所 GOSAT プロジェクトニュースレターでは、7 月号と 8 月号の 2 回にわたって、日本におけるリモートセンシングの発展を目的とする社団法人日本リモートセンシング学会の建石隆太郎前会長、そして六川修一新会長のインタビューをお届けいたします。
今月号のインタビューでは、建石隆太郎前会長に「リモートセンシングとは何か」という観点からお話を伺いました。建石前会長は、千葉大学環境リモートセンシング研究センター教授でいらっしゃいます。ご専門は衛星データを利用した陸域情報抽出・モニタリングで、具体的にはグローバルあるいは大陸規模での土地被覆マッピングとモニタリング、日本の国土の基盤土地被覆データ作成、そして地理空間データ蓄積共有システムの構築、といった3つのテーマの研究をされています。(インタビュア: 国環研 GOSAT プロジェクト 横田達也。5 月 27 日つくば市にて。)
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る」というとなんか違和感ありませんか? 科学と言うと真理探究のような、論理的に何か追求すべきものがあるような意味で使います。すなわち、リモートセンシングを科学の一分野とは言い切れないと感じました。 一方、リモートセンシングという分野は科研費
1の分野・細目としては
ないのです。では学問分野としてリモートセンシング学という言い方はできるのか、という意見が理事から出ました。そこで今日の総会でも報告しましたように、リモートセンシングの学術領域を検討するために「学術領域ワーキンググループ」というものをつくりました。教科書を作るということから派生して、「じゃあちょうどいい契機だから、ちょっと考えてみよう。」と、ワーキンググループを立ち上げたということです。ここ一年かけてリモートセンシングとは、どういう学問分野になるかを検討し直そうという訳です。以上は一つの例ですけど、ある課題が目の前に現れる度に、じゃあこれをしよう、あれをしよう、ということで過ごして来ました。Y: リモートセンシングは広いのですけど、建石先生ご自身のご専門はどういうところにあたるのでしょうか。T: 私は東京大学の生産技術研究所で、標高データの三次元表現、つまり地理空間データの表現方法についての研究を行い、博士号を取得しました。衛星データは地表面のパターンとして使っていました。それが終わった後、土地利用や土地被覆の分類と補正など、主に衛星データのデータ処理に関する研究をしていました。今の研究の契機となったのは、1980 年代に科研費の重点領域研究に関わったことです。Y: 遠隔計測という研究領域がありましたね。T: そうです、その時にグローバルな土地被覆などのマッピングに初めて出合いました。それからグローバルなものに興味を持つようになりました。その後、90 年代は International Society for Photogrammetry and Remote Sensing ( 国際写真測量リモートセンシング学会、ISPRS)の中で 50 くらいワーキンググループがあるのですが、そのうちの一つで global environmental databases というワーキンググループのチェアマンを担当しました。色々なグローバルデータをどういう風に集めて統合して使うかというようなワーキンググループでした。グローバルデータに非常に興味をもって、自分自身もグローバルな土地被覆に関心をもっていたのですね。2000 年代になってからは、国土地理院が地球地図プロジェクトを立ち上げて、その中の土地被覆データセット作成のワーキンググループに呼ばれたのです。そのチェアマンを担当して、今に至っています。ですから現在は地球地図の土地被覆データを作るとか、樹木被覆率のデータを作るとか、そういったことが私の研究の 60 パーセントぐらいを占めています。Y: その樹木被覆率や土地被覆の地図というのは、日本だけでなく世界を対象にして作ろうという計画なのですか?T: 処理するときは大陸単位で処理しますけれども、結果としてはグ
1 科研費:科学研究費補助金。日本の学術振興のため、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる分野で、独創的・先駆的な研究を発展させることを目的とする、文部科学省及び独立行政法人日本学術振興会の研究助成費です。
ローバルです。MODIS 2 データを使って行う計画です。
Y: GOSAT はご存知だと思いますけれども、現在の印象とこれから先のGOSAT プロジェクトに対するご助言をいただけないでしょうか。T: 実は、私自身は陸域を対象として研究をしていましたので、大気とか温室効果ガスのことについてあまり詳しくはありません。ですから最初 GOSAT プロジェクトが立ち上がって打ち上げられたとき、実はあまり事前知識とかそういう動きがあることは知らなくてですね、「日本はそんなにやっているのか、その分野で。」とちょっとびっくりしました。ですから、あまり技術的なコメントはできないのですが、少なくとも世界に先駆けて、二酸化炭素のデータを作って配布するというその意義の大きさは非常に高く評価しています。まだノイズを除去する必要性があるなどの問題点があることを聞いています。しかし、温室効果ガスの全球マッピングという試み自身が、多分、このタイプの衛星データを今とっているのは GOSAT しかないという点で、日本として世界に誇れるプロジェクトだと思います。Y: そうですか? ありがとうございます。確かにそれを主な目的とした衛星は「いぶき」(GOSAT) だけですし、他の世界の研究者も目指してはいるのですが、一応先駆けているでしょうか。T: 私からの印象としては、その意味でもう半分成功しているという風に見ています。データの品質はまだ、とお見受けしますけれども、非常に高く評価したい。それで、望むらくは使えるデータを配布してもらいたい、というのが希望です。エアロゾルの影響を除去するにも、必ずしもエレガントに処理をする必要はなくて他のエアロゾルのデータがあれば、それを利用することでもいいと思うのです。本当は全球のマッピングをしたいのでしょうけれど、ここだけしか信頼できるデータが使えないというのでもいいと思うのですね。既にデータが公開されているということであれば、検証をしてここは使えるとかそういう情報を付加して、続けていってもらいたいですね。Y: ありがとうございます。T: おめでとうございます、と言えるようなプロジェクトだと思います。Y: それでは今日はありがとうございました。T: ありがとうございました。
2 MODIS(もーでぃす): Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer(中分解能撮像分光放射計)のこと。アメリカ航空宇宙局 (NASA) によって開発された可視・赤外域の 36 バンドの観測波長帯を持つ光学センサーです。NASA Earth-Observing-System ( 地球観測システム、EOS) 計画 のTERRA 衛星と Aqua 衛星にそれぞれ搭載されています。
「世界に先駆けて、二酸化炭素のデータを作って配布するというその意義の大きさは非常に高く評価しています。」
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INFORMATION
2010 年 8 月 25 日に「宇宙からの温室効果ガス観測シンポジウム」を開催します。これは、「いぶき」の GOSAT プロジェクトを進めている JAXA、国環研、及び環境省が、「いぶき」搭載の温室効果ガス観測センサおよび雲・エアロソルセンサによって得られたデータに関する話題を中心に、宇宙からの温室効果ガス観測に関する理解を深めていただくことを目的として開催する公開シンポジウムです。本シンポジウムは、衛星データの利用者、研究者のみならず、地球温暖化問題に関心をお持ちの一般の方(高校生以上)を対象としています。「いぶき」による温室効果ガス観測データの特徴などを概説するとともに、宇宙からの温室効果ガス観測の役割と期待についての話題を紹介するものです。「いぶき」研究者が講演や展示を通して、「いぶき」の研究や宇宙からの地球観測について直接お話しします。会場で皆様にお会いできることを楽しみにしております。参加をご希望の方は下記シンポジウム特設ウェブサイトより事前登録をお願いします。
平成 22 年 8 月 25 日(水)13:00 ~ 16:00コクヨホール東京都港区港南 1−8−35(JR 品川駅より徒歩 5 分)http://www.kokuyo.co.jp/showroom/hall/access
第 1 部:講演会 13:00 ~15:10 司会:飯島希(いいじまほまれ)(気象予報士・環境カウンセラー)13:00 -13:10 開会挨拶 (宇宙航空研究開発機構、環境省より)13:10 -13:35 講演「地球温暖化と健康」 向井千秋(宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士・医学博士)13:35 -14:00 講演「地球温暖化と科学者の責任」 横山裕道(淑徳大学 教授)14:00 -14:20 講演「なぜ宇宙から二酸化炭素を測るのか」 井上元(GOSAT サイエンスチームチーフサイエンティスト/総合地球環境学研究所 教授)14:20 -14:30 宇宙からの温室効果ガス観測のしくみの紹介 中島正勝(宇宙航空研究開発機構 GOSAT ミッションマネージャ)14:30 -14:45「いぶき」データの紹介 横田達也(国立環境研究所 GOSAT プロジェクトリーダー)14:45 -15:05 ビデオ講演「NASA と GOSAT プロジェクトの連携」 David Crisp(NASA Jet Propulsion Laboratory シニアリサーチサイエンティスト)15:05 -15:10 閉会挨拶 (国立環境研究所より)
第 2 部:ふれあいタイム(展示) 15:10 ~16:00 ・「いぶき」の模型展示・球面ディスプレイによる観測データやシミュレーション結果展示・「いぶき」搭載センサーの試作モデルを利用した二酸化炭素濃度観測実験・「いぶき」に関するポスター展示・「いぶき」搭載カメラからの映像・ディスプレイを使った「いぶき」データの利用方法紹介・「いぶき」パンフレットやニュースレター、研究公募のお知らせの配布 など
http://www.prime-pco.com/gosat2010/定員に余裕がある場合は、当日でもご参加になれます。
主催:独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 独立行政法人 国立環境研究所 ( 国環研 ) 環境省お問い合わせは [email protected]まで。
~温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT) の役割~温室効果ガスを宇宙から測るための衛星「いぶき」について、専門家が丁寧にわかりやすく解説いたします。
宇宙からの温室効果ガス観測シンポジウムを開催します!
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GOSAT 「いぶき」 は観測点の時刻と条件がいつも同じになるように、太陽同期準回帰軌道で地球を周回しています。太陽同期では、地球が太陽の周りを 1 周する1 公転周期の間に人工衛星の軌道面も1 回転します。従って太陽光線と軌道面の相対的な位置関係は一定に保たれます。「いぶき」では赤道を北から南に通過する降交点通過時の地方太陽時がいつも13 時前後になるように制御されています。準回帰とは一定周期でほぼ同一の軌道に回帰することで、「いぶき」の場合は 1 周約 98 分で、44 周回後の 3日で元の軌道に回帰します。各周回を「パス」と呼び、西へ行くほど増加するように 1 から 44 の番号がつけられています。「いぶき」の軌道は地表面から高度 666km にあり、国際宇宙ステーションの約 400km よりは高く、気象衛星「ひまわり」などの静止軌道の約36000km よりはずっと低いところを周回しています。
「いぶき」 による温室効果ガスの観測は、地球全体をほぼ一様に ( 但し高緯度ほど密になる ) カバーします。そして、搭載センサーTANSO-FTS (Fourier Transform Spectrometer) の 1 回の観測は、直径約 10km の円内をターゲットとしています(図 1)。通常はセンサーの向きを少しずつ動かしながら、軌道とほぼ直交する方向に 5 点ずつ観測する「5 点観測」を行っており、その観測点を標準メッシュ点と呼びます。また、海域については太陽の反射光が弱いので、サングリントという太陽が鏡面反射する方向を狙って観測を行うことがあります。5 点観測とサングリントも含めた日本付近の観測点 ( 降交:日照時 ) の例を図 2 に示します。1 回帰で観測する点数は、全てを 5 点観測で行った場合約 56,000 点(図 3)ありますが、昼間 ( 日照時 ) に限れば半分の約 28,000 点になります。その中で、温室効果ガスの解析が可能なのは反射光の信号が充分強く、雲が含まれない観測点で、全体の数パーセントに減ります。それでも約 200 点の地上の観測点(図 4)と比較すると多くの観測点があり、何よりもこれまで地上観測点が存在しなかった領域を観測できるという利点が生じます。観測日とパスの関係や観測点 ( 標準メッシュ点 ) の情報は、GOSAT プロジェクト Web サイトの「技術情報」ページにある、「GOSAT パスカレンダーの説明はこちらです。」をご参照ください。http://www.gosat.nies.go.jp/jp/technology/technology.htm
また、GOSAT データ提供サービスの登録ユーザまたはゲストユーザは「観測運用状況」で、より詳細な観測運用状況 ( 予定を含む ) を調べることができます。
GOSAT ( いぶき ) に搭載されているもう一つのセンサーTANSO-CAI (Cloud and Aerosol Imager) では、昼間 ( 日照時 ) の地表面や雲の状態を観測しています。そのバンド 1 ~ 3 は 500mの分解能で衛星の直下点を中心に幅約 1000km の領域を観測しており、バンド 4 は 1500m の分解能で約 750km の領域を観測しています。
渡辺宏 国環研 GOSAT プロジェクトオフィスマネージャ
今月のなるほど!AHA! OF THE MONTH
GOSAT 「いぶき」 の観測日・観測点
図 1. 「いぶき」による観測概念図
図 4. 地上観測点(出典:温室効果ガス世界資料センター)(WDCGG)
図 3. 「いぶき」の「5 点観測」による全ての観測点(3 日間、44 周回分)。
図 2. 日本付近における「いぶき」の観測点 ( 降交 )
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GOSAT プロジェクトは、2010 年 8 月後半に第 3 回研究公募を実施します。応募資格は、GOSAT データの非営利目的かつ平和利用を目的とする研究機関、教育機関、政府機関、私企業に属する研究者、そして個人の研究者です。国籍は問いません。既に過去の研究公募に採用さ
れた研究者も、別のテーマで応募することができます。第 3 回研究公募の詳細は募集の開始と同時にホームページにてご案内いたします。なお、第 1 回及び第 2 回研究公募については、下記Web サイトで紹介されていますので、ご参考になさってください。第 1 回及び第 2 回研究公募について: http://www.gosat.nies.go.jp/jp/proposal/proposal.htm
6 月分のデータ処理状況をお知らせします。5 月に引き続き、FTS L1Bは V100100 として、CAI L1B、L1B+、L2雲フラグは V00.90 として処理し、公開しています。FTS L2 SWIR CO2, CH4 カラム量についてはチェック作業を行っておりましたが、留意事項とともに 3 月観測分データを公開しました。3/1 ~ 3/16 観測分は V00.80 として、3/16 ~ 3/31 観測分は V00.90 として検索、取得が可能です。留意事項は、GUIG の「FTS L2 SWIRプロダクト月別留意事項」に掲載されています。ご一読の上、プロダクトをご利用下さい。(GUIG/プロダクト& サービス/ ユーザ認証 / メニュー選択 /FTS L2 SWIR プロダクト月別留意事項)2010 年 4 月以降、及び、2009 年 8 月、9 月、10 月観測分につきましても、速やかに公開していく予定です。また、2010 年 7 月 9 日時点での一般ユーザの登録数は 826 名となっています。
2010/08/09-12京都市 国立京都国際会館にて行われる、国際写真測量とリモートセンシング学会(ISPRS)第 8 部会シンポジウムに参加。2010/08/25東京・品川 コクヨホールにて「宇宙からの温室効果ガス観測シンポジウム」を開催。2010/08 後半GOSAT 第 3 回 研究公募開始。2010/09/05-09東京・新宿 早稲田大学早稲田キャンパスにて行われる、2010 年度統計関連学会連合大会(日本統計学会第 78回大会)に参加。2010/09/07-11ポーランド・ポズナン市にて行われる、第 21 回高分解能分子分光に関する国際会議 - POZNAN2010 に参加。
編集発行:GOSAT プロジェクトオフィス
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2010 年 7 月号 発行日 : 2010 年 7 月 28 日 ISSUE #7 JUL. 2010
DATA PRODUCTS UPDATE
プロジェクトオフィスからのデータ処理状況アップデート— 河添 史絵 国環研 GOSAT プロジェクオフィス 高度技能専門員
CALENDAR 今後の予定第 3回研究公募(RA)がいよいよ行われます!
PUBLISHED PAPERS
掲載誌: Atmospheric Measurement Techniques (Volume 3, Number 4, July 2010, pages 909-932)題名: The inter-comparison of major satellite aerosol retrieval algorithms using simulated intensity and polarization characteristics of refl ected light (和訳:太陽反射光の模擬強度データと偏光特性を用いた衛星エアロゾル解析アルゴリズムの相互比較)著者 : A. A. Kokhanovsky, J. L. Deuzé, D. J. Diner, O. Dubovik, F. Ducos, C. Emde, M. J. Garay, R. G. Grainger, A. Heckel, M. Herman, I. L. Katsev, J. Keller, R. Levy, P. R. J. North, A. S. Prikhach, V. V. Rozanov, A. M. Sayer, Y. Ota, D. Tanré, G. E. Thomas, and E. P. Zege
論文発表情報
ANNOUNCEMENT