第2回 仮想仕事の原理sirius.esi.nagoya-u.ac.jp/.../kaisekirikigakuimg/kougi2.pdf5 € d dt 1...
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第2回 仮想仕事の原理
今回の学習内容 1.多粒子系、剛体の力学 ・質量中心の並進運動 ・その周りの回転運動 2.エネルギー保存則 ・仮想仕事の原理 ・保存力とポテンシャル 1.多粒子系、剛体の力学 運動に関わる質点が1つしかない「1体問題」は、Newtonの運動方程式から非常に単純に解くことができる。Kepler 問題のような2体問題でも、換算質量をもちいて1体問題に置き換えられるので、簡単に解くことができた。
1体問題の例 系に含まれる質点の数を増やしていくとどうなるだろうか?
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F1 = m1˙ ̇ x 1F2 = m2˙ ̇ x 2
FN = mN ˙ ̇ x N
"
# $ $
% $ $
①
辺々足してみる。
€
Fi = mi˙ ̇ x ii∑
i∑ ②
ここで、
€
M = mii∑ ③
および
2
€
X =mix i
i∑
M ④
となる Mおよび Xを導入すると、
Ftotal = Fi =MXi∑ ⑤
このようにして、多体の運動方程式が1体の運動方程式に置き換えられる。 問 1 ③および④をもちいると、②から⑤が導出できることを示せ。③、④の物理的意味は? 質点がある座標の周りを回転している場合、運動方程式の形が少し変わる。 変更その1:並進運動における「力」Fの代わりに、「トルク」と呼ばれる以下の量 Nを定義する。
€
N = r ×F ⑥
トルク Nによってなされる仕事について計算してみる。 簡単のため、まずは2次元 xy平面内での運動に限定すると、
€
W = FxΔx + FyΔy
= xFy − yFx( )Δθ= NzΔθ
⑦
「仕事」=「トルク」×「回転角」の形! 変更その2:並進運動における「運動量」pの代わりに、「角運動量」と呼ばれる以下の量 Lを定義する。
€
L = r ×p ⑧
Lをもちいて⑥式を書き直すと
€
N = r ×F = r × ˙ p = ddt
r ×p( ) = ˙ L ⑨
問 2 ⑨式を確かめよ。 多粒子系の場合、各質点に対して
€
N1 = r1 ×F1N2 = r2 ×F2
NN = rN ×FN
#
$ % %
& % %
⑩
であり、辺々足し合わせると
€
Ntotal = Nii∑ = ri ×Fi
i∑ = ˙ L i
i∑ = ˙ L total ⑪
並進運動と同様に、多体の回転運動が1体の運動方程式で表せる。
3
任意の軸のまわりの全角運動量の時間的変化の割合はその軸に関する外力のトルクに等しい。もし、Ntotal = 0、すなわち粒子系にはたらくトルクが無いなら、
€
˙ L total = 0 ⑫ よって、
€
Ltotal = const. 角運動量保存則 ⑬ ところで、viを質点 miの速度の回転方向成分とすると
€
Li = rimivi = miri2ωと書ける。ここで ω
は角速度である。よって、全角運動量 Ltotalは以下のように書ける。
€
Ltotal = miri2ω
i∑ = Iω ⑭
ここで
€
miri2
i∑ = Iである。この Iは慣性モーメントと呼ばれる量である。
問 3 次の物体の重心のまわりの慣性モーメント Ix, Iy, Izを求めよ。 i) 長さ lの細い棒(太さ無視)、 ii) 半径 Rの球、 iii) 半径 R、高さ hの円柱 2.エネルギー保存則 2.1 仮想仕事の原理 運動エネルギーと位置エネルギー
・並進の運動エネルギー:
€
12mivi
2
i∑ ⑮
・回転の運動エネルギー:
€
12Iiω
2
i∑ ⑯
問 4 回転の運動エネルギーが⑯式で与えられることを示せ。 ・位置のエネルギー ΔV = F ⋅ Δs ⑰ (エネルギーの変化)=(力)・(力のはたらきつづけた距離)
エネルギー保存則の面白い使い方 問 5 両端にオモリが付いたヒモを右図のように斜面に置いたところつりあった。オモリWの重さを mで表せ。
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力の合成則(平行四辺形の法則)を使えば、とても簡単に解けるが、ここでは別な解法を考えてみる。 「仮想的に動かす」ことを考えてみる。 この「仮想変位」はオモリのつりあいを保ったまま行なうので、動かすための力は必要なし! すなわち、仕事なし!可逆的! よって、エネルギー保存しているはず! 問 6 仮想変位の前後でオモリ m および W の得たあるいは失ったエネルギーを計算し、それらが保存されることをもちいてオモリ Wの重さを求めよ。 大事なポイント ・エネルギー保存則から力がでる。 ・拘束力を考える必要がない。 ・内部の複雑な構造を考える必要がない。 ・スカラー量の代数だから計算が単純 「仮想仕事の原理」 系がつりあいの状態にあって各質点に作用する力の合力 Fiがゼロのとき、仮想変位δriが行なわれるとき、力 Fiのなす仕事Fi ⋅δriの和はゼロとなる。
€
Fi ⋅ δrii∑ = 0 ⑱
2.2 保存力とポテンシャル ・エネルギー保存則と F=maの等価性についての考察 例として、一様重力場中を鉛直方向(h、上向きを正)に運動する粒子を考える。 運動エネルギーを時間微分すると、
€
ddt
12mv 2
"
# $
%
& ' = mv
dvdt
= mav = Fv ⑲
いま、 F = −mg , v = dh dt
€
ddt
12
mv 2"
# $
%
& ' = −mg ˙ h = d
dt−mgh( ) ⑳
よって、
€
ddt
12mv 2 + mgh
"
# $
%
& ' = 0 (21)
€
12mv 2 + mgh = const. 全エネルギー保存則 (22)
⑲を3次元に拡張すると、
5
€
ddt
12mv 2
"
# $
%
& ' = F ⋅ v (23)
となる。両辺に dtを掛けると
€
d 12mv 2
"
# $
%
& ' = F ⋅ dr (24)
積分すると
€
Δ12mv 2
#
$ %
&
' ( = F ⋅ dr
1
2∫ (25)
「保存力」:仕事量が経路のとり方に依存しない力 保存力なら、
€
F ⋅ dr∫ = 0 あるいは
€
∇ ×F = 0 (26) 問 7 保存力の例を挙げよ。また非保存力の例を挙げよ。 ポテンシャルの場 (位置エネルギー)=(力)・(変位) 「場」の考え方 例えば重力場の場合、そこに質点を置くか置かないかにかかわらずgという重力場があり、質点が受ける重力は、重力場と質点の相互作用である、と考える立場。 力=mCとなる Cを導入すると、ポテンシャル Vは、 V = F ⋅dr∫ =m C∫ ⋅dr =mΨ (27)
となる。 ポテンシャルの利点 ・スカラー場 ・勾配(grad)をとって場がすぐ出せる。(gradψ = C) (実は保存力であることの必要十分条件) 問8 次の関数 fの勾配(grad f)を求めよ。 (1) 1次元直線関数 f(x) = ax (2) ハーフパイプ関数 f(x, y) = bx2 + cy
(3) クーロンポテンシャル f(r) = 1 / r (4) 螺旋状滑り台 F = −∇U とすると、ストークスの定理より
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F ⋅ drl∫ = ∇ × −∇U( ) ⋅ndS
S∫ = 0 (28)
Fが保存力なら、渦はないので常にゼロ 渦があれば、永久機関!
c.f. ストークスの定理
€
F ⋅ drC∫ = ∇ ×F ⋅ndS
S∫