201252 vol. 2012.9 10代のネットコミュニケーション...

2
52 VOL. 2012.9 10代のネットコミュニケーション 共感を集める 「ネット友達」 日本のソーシャルメディア利用人口はこの2 年で急増、 5000 万人を 超えて2 人に1 人がネット上でつながりをもつ時代となった(図 1)。 Facebook Twitter などでつぶやくことも当たり前となり、 1020 代では約 6 割がネット上に情報発信をしている(図 2)。今号では、 ネット上で情報発信する割合が最も高い10 代に注目し、これからの ネットコミュニケーションを紐解く。 ネットメディアの進化がつなぐ「ネット友達」 スマートフォンを持っていて、 SNS を利用する10 代を対象に調査を 実施したところ、約 9 割が「実際には会ったことはないが、ネット上で コミュニケーションをしているネット友達がいる」と回答した。今の10 代は、 PSP やニンテンドー DS などのポータブルゲーム機で育った 世代。 Youtube iPod に小さい頃から親しみ、お気に入りの動画 や音楽を、デバイスを問わず親しんできた。それが、今では身近な友 人に限らず、ネット上で知り合った友人と「動画サイトで見つけた、気 に入った曲の URL を送ってお互いに教えあっている」、「お絵かき チャットで絵を描きつつ LINE で会話する」、「オンラインのゲームを Skype で通話しながら楽しむ」というように、ネット上の「コンテンツ」 を媒介としたソーシャルなコミュニケーションが日常となりつつある。 人間関係をベースとした従来のコミュニケーションだけでなく、コン テンツ先行型のコミュニケーションにも慣れ親しんできた10 代なら ではのネット友達との出会いや楽しみが広がっているのだ。 昨今の10 代は、リアルの 友達やネット友達からの 情 報、タレントなど有 名 人のブログや企業からの 情報など、多くの情報に 触れ、様々な人とコミュニ ケーションしている。その 中でも、ネット友達に対し ては「共感できる」、 「今後 もつながっていきたい」 といった意 識が高く(図 3)、本音で語り合える、 理解し合える相手として 期待をよせている。 Twitter では、まだ知り 合っていない人からのフォローを期待して、プロフィール欄に趣味な ど自分の関心があることを詳細に記載する10 代も多いという。 学校、家族、地域のコミュニティといった限定的なつながりの中で暮 らす10 代にとって、同じ関心ごと(インタレスト)でつながるネット友 達とのコミュニティは、日常生活の中では出会わない意見や評価と 遭遇する新たな社会として築かれつつある。 情報の循環を加速させるインタレストグラフ 写真や画像が共有できる「Pinterest」や、イラストの投稿、閲覧が楽 しめる「pixiv」など、テーマに特化した SNS が多く登場し、細分化が 進むなか、同じ趣味や嗜好、感性などインタレストでつながる場での コミュニケーションを楽しむことが浸透している。ネット友達に共感 する10 代同様、大人の世界でも興味関心などのテーマでつながる 関係 “インタレストグラフ” が形成され、そこでやり取りされる商品や サービスの評価などの情報は、影響力を増している。今後企業は、特 定の分野に関する高い共感を得るネット友達をも取り込みながら、 生活者のインタレストグラフの中で情報が循環するようなコミュニ ケーションを組み立てることが求められている。 0 (%) 20 気が合う 40 60 80 100 信頼できる 共感できる 今後もつながっていきたい 普段はあまり会う ことがない友達 ネット友達 モデルや歌手、 タレントなどの有名人 企業のサイトや コミュニティ 学校の友達など、 直接会っている友達 n1263 10 代のネット上でのコミュニケーション相手 への意識 スマートフォン利用者を対象に調査(2012 8月) DNP 10 SNS 利用者のネットコミュニケーション調査」 (万人) 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 2008 2009 2010 2011 2012 (年) 1 インプレス R&D 「インターネット白書201270 60 50 40 30 20 10 0 102030405060(%) PC ケータイ(スマートフォンを含む) 2 ネット上に情報発信する割合 DNP 「メディアバリュー研究2012ソーシャルメディアの利用人口推移

Upload: others

Post on 10-Mar-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 201252 VOL. 2012.9 10代のネットコミュニケーション 共感を集める「ネット友達」 日本のソーシャルメディア利用人口はこの2年で急増、5 0万人を

52VOL.

2012.9

10代のネットコミュニケーション

共感を集める「ネット友達」

日本のソーシャルメディア利用人口はこの2年で急増、5000万人を超えて2人に1人がネット上でつながりをもつ時代となった(図1)。Facebookや Twitterなどでつぶやくことも当たり前となり、10、20

代では約6割がネット上に情報発信をしている(図2)。今号では、ネット上で情報発信する割合が最も高い10代に注目し、これからのネットコミュニケーションを紐解く。

ネットメディアの進化がつなぐ「ネット友達」スマートフォンを持っていて、SNSを利用する10代を対象に調査を実施したところ、約9割が「実際には会ったことはないが、ネット上でコミュニケーションをしているネット友達がいる」と回答した。今の10

代は、PSPやニンテンドー DSなどのポータブルゲーム機で育った世代。Youtubeや iPodに小さい頃から親しみ、お気に入りの動画や音楽を、デバイスを問わず親しんできた。それが、今では身近な友人に限らず、ネット上で知り合った友人と「動画サイトで見つけた、気に入った曲のURLを送ってお互いに教えあっている」、「お絵かきチャットで絵を描きつつ LINEで会話する」、「オンラインのゲームをSkypeで通話しながら楽しむ」というように、ネット上の「コンテンツ」を媒介としたソーシャルなコミュニケーションが日常となりつつある。人間関係をベースとした従来のコミュニケーションだけでなく、コンテンツ先行型のコミュニケーションにも慣れ親しんできた10代ならではのネット友達との出会いや楽しみが広がっているのだ。

昨今の10代は、リアルの友達やネット友達からの情報、タレントなど有名人のブログや企業からの情報など、多くの情報に触れ、様々な人とコミュニケーションしている。その中でも、ネット友達に対しては「共感できる」、「今後もつながっていきたい」 といった意識が高く(図3)、本音で語り合える、理解し合える相手として期 待 をよせている。Twitterでは、まだ知り合っていない人からのフォローを期待して、プロフィール欄に趣味など自分の関心があることを詳細に記載する10代も多いという。学校、家族、地域のコミュニティといった限定的なつながりの中で暮らす10代にとって、同じ関心ごと(インタレスト)でつながるネット友達とのコミュニティは、日常生活の中では出会わない意見や評価と遭遇する新たな社会として築かれつつある。

情報の循環を加速させるインタレストグラフ写真や画像が共有できる「Pinterest」や、イラストの投稿、閲覧が楽しめる「pixiv」など、テーマに特化したSNSが多く登場し、細分化が進むなか、同じ趣味や嗜好、感性などインタレストでつながる場でのコミュニケーションを楽しむことが浸透している。ネット友達に共感する10代同様、大人の世界でも興味関心などのテーマでつながる関係“インタレストグラフ”が形成され、そこでやり取りされる商品やサービスの評価などの情報は、影響力を増している。今後企業は、特定の分野に関する高い共感を得るネット友達をも取り込みながら、生活者のインタレストグラフの中で情報が循環するようなコミュニケーションを組み立てることが求められている。

0(%) 20

気が合う

40 60 80 100

信頼できる共感できる今後もつながっていきたい

普段はあまり会うことがない友達

ネット友達

モデルや歌手、タレントなどの有名人

企業のサイトやコミュニティ

学校の友達など、直接会っている友達

(n=126)

図3 10代のネット上でのコミュニケーション相手への意識

スマートフォン利用者を対象に調査(2012年8月)DNP「10代 SNS利用者のネットコミュニケーション調査」

(万人)6000

5000

4000

3000

2000

1000

02008 2009 2010 2011 2012(年)

図1

インプレスR&D「インターネット白書2012」

70

60

50

40

30

20

10

010代 20代 30代 40代 50代 60代

(%) PC ケータイ(スマートフォンを含む)

図2 ネット上に情報発信する割合

DNP「メディアバリュー研究2012」

ソーシャルメディアの利用人口推移

Page 2: 201252 VOL. 2012.9 10代のネットコミュニケーション 共感を集める「ネット友達」 日本のソーシャルメディア利用人口はこの2年で急増、5 0万人を

好きなアーティストの話で気が合ったから(19歳/女性)

オンラインゲームのコメント欄で話すようになった(14歳/男性)

Twitterで友達がリツイートしたユーザーをフォロー(17歳/男性)

スポーツやアイドルについてのツイートに共感してフォロー(14歳/男性)

ネット友達はいる92%

ネット友達はいない8%

♪♬

♡♡www

☆☆

C&I事業部 マーケティング開発室〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20 URL http://www.dnp.co.jp/cio/ いかなる形式でも本紙の一部または全部の複製および無断転載をお断り致します。当レポートは、メディアバリュー研究「コミュニケーション接点調査」(訪問留置法、15~69歳男女1800名対象、実施 : 2011年10月)及びその他の自主調査の分析結果を基にしています。©大日本印刷株式会社 2012 printed in japan 12.9

10代の「ネット友達」とのコミュニケーション

• DNPは2001年より、生活者の情報コミュニケーションや購買行動の変化を捉える生活者調査研究 に取り組んでいます。• 生活者の購買行動把握から、商品(ブランド)を通した、企業と生活者のコミュニケーション戦略まで 幅広くサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。

生活者とのコミュニケーションチャネルを探る

「メディアバリュー研究」http://www.dnp.co.jp/mediavalue

スマートフォンで SNSを利用している10代は、情報収集を目的にネット友達とつながる20~40代とは異なり、ネット友達に対して「共感して欲しい」、「知って欲しい」と考える傾向がある。Twitterや LINEを利用して、好

きなアーティストやオンラインゲームについて話すなど、リアルタイムに出来事を共有し盛り上がる、即時性のあるコミュニケーションをネット友達と楽しんでいる。

(%) 10代(n=113)20~40代(n=547)

盛り上がる

深く理解して

欲しい

本音が言える

知って欲しい

共感して欲しい

何でもいいから

何か反応したり、

つっこんで欲しい

新しいことを

知ることができる

書き込んだり

つぶやいたり

できればよい

知りたい情報を

教えて欲しい

50

40

30

20

10

0ケータイでブログや

ツイッター、コミュニティ

サイトの書き込みを読む

ケータイでLINE

などのチャットや

メッセンジャーをする

パソコンでブログや

ツイッター、コミュニティ

サイトの書き込みを読む

ケータイでブログや

ツイッター、コミュニティ

サイトにコメントをする

パソコンでブログや

ツイッター、コミュニティ

サイトにコメントをする

ケータイで話す

パソコンでメールをする

パソコンでLINE

などのチャットや

メッセンジャーをする

(%)

ケータイでメールをする

50

40

30

20

10

0

10代(n=108)

DNP「10代のネットコミュニケーション調査」

DNP「10代 SNS利用者のネットコミュニケーション調査」フリーアンサーの一部を掲載

DNP「10代 SNS利用者のネットコミュニケーション調査」フリーアンサーの一部を掲載

DNP「10代 SNS利用者のネットコミュニケーション調査」

「ネット友達とのやり取りをどのように感じていますか?」

「ネット友達になったきっかけは何ですか?」

「ネット友達はいますか?」

「ネット友達とどのようにやり取りしていますか?」

百鬼大戦絵巻襲いかかる妖怪から大将を守る戦略的なカードゲームアプリ

グラフィックが美しい。のめり込める。(18歳/男性)

世界観がすごい。(17歳/男性)

pixiv (ピクシブ)プロのイラストレーターから素人まで、誰でも投稿できる作品(イラスト)共有 SNS

良い絵を見つけた時は感動する。(16歳/男性)

自分とは価値観も実力も違う人たちの絵や漫画が見られて勉強になる。(17歳/女性)

パズル&ドラゴンズパズルをしながらドラゴンを育てる、パズルとRPGが融合したゲームアプリ

パズドラはパズルだけじゃない!! 育成も楽しい。(17歳/男性)

簡単で楽しいが意外と頭を使うゲーム。ハマる。(17歳/女性)

“ハマっている”アプリ