43 技術情報liaj.lin.gr.jp/japanese/liajnews/liajnews89-11.pdf42 技術情報...
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遺伝的能力
「牛群改良情報」(農家情報)には4つの表と2つの
グラフがありますが、遺伝的能力は表3のあなたの牛
群の推定育種価(EBV)の推移と、表4の推定育種価
(EBV)・推定生産能力(EPA)の平均です。
◎推定育種価(EBV)・推定生産能力(EPA)の平均
先ず表4を見ましょう。これは現在のあなたの牛群
の遺伝的能力です。
表は上下2段に表示され、網掛けしてある上の段が
推定育種価(以下EBVという)で、下段は推定生産能
力(以下EPAという)です。
表4で主に見て頂きたい点は、
1.あなたの牛群のEBVがあなたの組合、あなたの
県、北海道、都府県、全国と比べてどのあたりの位
置にあるかを見ること。
例えばこの牛群の乳量のEBVは+538kgで全国の
+331kgより200kgも高い能力で、乳代効果も他を引き
離して高い数値を誇っていますが、乳成分はF%。
P%、SNF%ともにマイナスが大きいので、種雄牛の
選定に当たってはこの点の注意が必要です。
2.乳量のEBVに比べてEPAが高いこと。
表4のEBVとEPAの数値を比べて見てください。
多くの項目でEBVの数値よりEPAの数値が大きいで
しょう。
例えば乳量の欄を見ましょう。EBVは+538ですが
EPAは+570とEPAの方が大きいことです。
検定牛が現実に能力を発揮するには、遺伝的能力に
加えて、育成の善し悪しが大きな影響を持ちます。
従ってEPAの数値は、遺伝的能力に育成の数値が加
わるので、EPAはEBVの数値(特に乳量)より大きく
なければいけません。
◎あなたの牛群の推定育種価(EBV)の推移
これは表3と、グラフ「あなたの牛群の推定育種価
(EBV)」で、対象になっている検定牛を生年毎に6年
間の推移を示してありますが、グラフがありますので
改良の進み具合が良く分かります。
表3も上下2段に表示されており、網掛けのある上段
は除籍牛が含まれた平均値で、牛群の改良の進み具合
が良く分かります。グラフが右肩上がりになっていれ
ば改良は順調に進んだといえます。
この牛群のグラフは平成10年からグーンと伸びてい
ます。
下段は除籍牛を含まない平均値で、現在の牛群の選
抜淘汰がキチンと行われているかどうかが分かりま
す。グラフでは除籍牛を含む平均値より上にあるのが
良い姿です。
牛群を見ましょう。これも平成10年から良い姿にな
りました。
飼養管理技術の指標
一つは遺伝的能力でしたが、二つ目はこれが現実の
能力にどのように表れているかを教えてくれる指標
で、表1と表2です。
検定牛が持っている遺伝的能力を現実に表すには、
技術情報� 検定成績表が読めたら、酪農は10倍楽しくなる検定成績表を「同時通訳」したら面白い(その19)
その43
家畜改良アドバイザー 永井 仁牛群改良情報を見ていますか?─2「農家情報」には2つの情報がある
その一つは言うまでもなく「牛群の遺伝的能力」であり、二つ目は「飼養管理技術の指標」で、それぞれの表に加えてグラフで示して分かりやすく解説してありますが、この素晴らしい情報も、登録を励行されていない牛群には残念ですが送られてきません。
42
技術情報�
飼養管理技術や天候等の影響を受けます。
その上検定牛は、年型によって能力が異なりますの
でこれも考慮する必要があります。
それらを整理して作られたのが表1と表2です。
表2 平成14年での飼養管理技術の指標の平均
表2は自分の牛群の補正された平均能力と、あなた
の組合、あなたの県、北海道、都府県、全国等の平均
が載せられておりますので、これ等と比べると自分の
牛群能力の位置が一目で分かります。
この牛群の能力を見てください。遺伝的能力のとお
り、乳量平均は9,124kgで都府県の7,523kgより1,600kg
も上回る高い能力を誇っています。
また乳成分の遺伝的能力は低い値でしたが、高い飼
養管理技術によって、バランスのとれた良い値を示し
ています。
表1 あなたの牛群の飼養管理技術の指標の推移
表1は、表とともにグラフによって1年間だけでなく、
10年間の推移を長い目で教えてくれています。
年々右肩上がりに伸びていれば、飼養管理の改善が
順調に進んでいることになりますが…。
この牛群の状態をグラフで見ましょう。
乳成分は順調ですが、乳量の動きはやや乱れていま
す。これは牛が大型になって肢蹄を痛めてトラブルが
続いたのが表れて、グラフが乱れたもので、フリーバ
ーンに変わってから改善に向かいつつある様です。
-10
0
10
20
30
40
50
60
12�11�10�9�8�7�-40
-20
0
20
40
60
80
100
120
140
乳代効果�
産乳成分�
平成�生年�
年�
(千円)�
8,600
8,800
9,000
9,200
9,400
9,600
9,800
10,000
10,200
141312111098765
8.6
8.8
9.0
9.2
3.0
3.5
4.0
乳 量�
無脂固形分率�
乳脂率・蛋白質率�
平成�分娩年�
年�
(kg)� (%)�
��あなたの牛群�あなたの組合�熊 本 県 �北 海 道 �都 府 県 �全 国 �
農 家 戸 数 ��
─�56�361�
5,499�4,754�10,253
乳 量 �(kg)�9,124�7,781�7,554�7,414�7,523�7,465
乳 脂 量 �(kg)�358�293�286�296�293�294
乳 脂 率 �(%)�3.92�3.76�3.79�3.99�3.89�3.94
蛋 白 質 量 �(kg)�309�257�248�248�248�248
蛋 白 質 率 �(%)�3.38�3.30�3.28�3.34�3.29�3.32
無脂固形分量�(kg)�823�687�665�661�664�662
無脂固形分率�(%)�9.02�8.83�8.80�8.91�8.82�8.87
除 籍 牛 含 �除 籍 牛 除 �平成 7年�
生まれ� 8年�� 9年�� 10年�� 11年�� 12年�以降生まれ�
頭 数 ��
11��9�2�13�4�12�3�17�10�23�23
頭 数 �(注3)�
9��8�2�4�2
乳 量 �(kg)�-105�
�-26�+73�+536�+305�+374�-170�+620�+701�+602�+602
乳脂量�(kg)�-2��
-5�+5�+14�+4�+19�+10�+14�+15�+13�+13
乳脂率�(%)�+0.03��
-0.04�+0.02�-0.06�-0.08�+0.07�+0.21�-0.10�-0.12�-0.10�-0.10
蛋白質量�(kg)�-5��
-2�+1�+9�+2�+10�-4�+16�+17�+15�+15
�産乳成分�-34�
�-19�+14�+80�+21�+93�-10�+124�+133�+111�+111
蛋白質率�(%)�-0.02��
-0.01�-0.02�-0.09�-0.08�-0.02�+0.02�-0.04�-0.05�-0.05�-0.05
総合指数�(NTP)�-104�
�-55�+64�-134�-370
無脂固形分量�(kg)�-12�
�-1�+9�+39�+22�+34�-12�+55�+59�+49�+49
無脂固形分率�(%)�-0.03��
+0.03�+0.03�-0.08�-0.04�+0.01�+0.03�+0.01�-0.02�-0.04�-0.04
乳代効果(円)��-8,605�
�-2,932�+7,586�+37,426�+19,612�+32,221�-5,961�+45,816�+50,354�+42,594�+42,594
表2 平成14年での飼養管理技術の指標の平均(注2)�
分 娩 年 ��平成 5年�
6�7�8�9�10�11�12�13�14
頭 数 ��
23�26�23�25�27�28�31�31�37�38
乳 量 �(kg)�9,064�8,957�8,648�8,777�9,395�9,283�10,037�9,961�9,535�9,124
乳 脂 量 �(kg)�318�314�301�304�332�331�356�364�360�358
乳 脂 率 �(%)�3.51�3.51�3.48�3.47�3.53�3.56�3.55�3.65�3.78�3.92
蛋 白 質 量 �(kg)�287�279�272�274�295�305�322�323�317�309
蛋 白 質 率 �(%)�3.17�3.11�3.15�3.12�3.14�3.29�3.21�3.24�3.32�3.38
無脂固形分量�(kg)�793�776�758�767�825�829�888�880�855�823
無脂固形分率�(%)�8.75�8.66�8.76�8.74�8.79�8.93�8.85�8.83�8.96�9.02
表1 あなたの牛群の飼養管理技術の指標の推移(注2)�
表3 あなたの牛群の推定育種価(EBV)の推移(上段:除籍牛を含む平均値 下段:除籍牛を含まない平均値)�
E B V �E P A �あなたの牛群��あなたの組合��熊 本 県 ��北 海 道 ��都 府 県 ��全 国 �
頭 数 ��
43��
1,781��
9,551��
275,288��
108,616��
383,904
頭 数 �(注3)�
4��
987��
3,952��
95,302��
40,146��
135,448
乳 量 �(kg)�+538�+570�+377�+407�+364�+397�+328�+357�+338�+379�+331�+364
乳脂量�(kg)�+13�+13�+9�+10�+8�+9�+9�+10�+8�+9�+9�+10
乳脂率�(%)�-0.08�-0.09�-0.05�-0.06�-0.06�-0.06�-0.03�-0.03�-0.05�-0.06�-0.04�-0.04
蛋白質量�(kg)�+12�+13�+10�+11�+9�+10�+9�+10�+9�+10�+9�+10
�産乳成分�+98�
�+76�
�+70�
�+73�
�+66�
�+71
蛋白質率�(%)�-0.05�-0.05�-0.02�-0.02�-0.03�-0.02�-0.01�-0.01�-0.02�-0.02�-0.01�-0.01
総合指数�(NTP)�-153�
�+467�
�+443�
�+442�
�+438�
�+441
無脂固形分量�(kg)�+43�+46�+31�+34�+29�+32�+28�+31�+27�+31�+28�+31
無脂固形分率�(%)�-0.04�-0.04�-0.02�-0.02�-0.02�-0.02�-0.01�0.00�
-0.02�-0.02�-0.01�-0.01
乳代効果(円)�生産効果(円)�+38,514�+40,531�+27,157�+29,394�+25,732�+28,146�+24,492�+26,750�+23,974�+27,070�+24,346�+26,840
表4 推定育種価(EBV)・推定生産能力(EPA)の平均(上段:推定育種価 下段:推定生産能力)�
あなたの牛群の推定育種価(EBV)�
乳代効果�(除籍牛含)�
乳代効果�(除籍牛除)�
産乳成分�(除籍牛含)�
産乳成分�(除籍牛除)�
あなたの牛群の飼養管理技術の指標�
乳量�
乳脂率� 蛋白質率�
無脂固形分率�
(注1)農家情報には参考情報掲載牛は含みません。�(注2)飼養管理技術の指標は天候などの環境の効果も含みます。�(注3)総合指数は、初産体型審査成績がない雌牛については計算できないために頭数が異なります。�
43
技術情報�
「個体情報」で種雄牛の選定を
「牛群改良情報」の2つめ情報は(個体情報)です。
この情報の牛コードは、産乳成分のパーセント順位の
高いものから順に記載されています。
この産乳成分のパーセント順位は表の最右欄に記載
してありますので、個体の遺伝的能力を確認するとと
もに、種雄牛の選定に当たっては、検定牛毎個体情報
「参考情報」で未経産牛の能力を識る
泌乳能力の不明な未経産牛や、無登録牛の遺伝的能
力と、種雄牛選定善し悪しを教えてくれる情報です。
泌乳能力が分かりませんので、信頼度が35%程度と
低いのが残念ですが、改良には大いに役立ちます。
個体情報と同じように、表の最右欄にパーセント順
位が示されていますので、早い時期に選抜淘汰に役立
ってくれます。
また母牛の記録があれば、これと比べて見ると種雄
牛選定の善し悪しがはっきり分かります。
遺伝的能力を先行させて、検定牛に余裕を持たせた
乳搾りをすればさらに楽しい牛飼いができます。
検定情報を手にされたら、早速該当の検定牛とドッ
キングして見たら検定成績表が10倍面白くなります。
*
LIAJニュース33号(1995年1月25日号)以来、検定
成績表と自分の拙い体験とをドッキングさせながら拙
文を寄稿しましたが、この稿をもって失礼させていた
だきます。
検定成績表は牛飼い必見の宝の山です。フィードバ
ックされてきたら直ぐ封筒から出して、うまく使って
しっかり儲けてください。長い間、有難うございまし
た。
と検定済み種雄牛の情報をドッキングさせれば科学的
な改良ができます。
しかし1頭ごとの選定作業は大変なので、最寄りの
家畜改良事業団の種雄牛センターの担当にご相談され
たら、BOSSシステムなどの適切なアドバイスが受け
られます。
当面パーセント順位80%以下の牛の娘牛は、今から
繁殖に供さないことをおすすめします。
生年月日�
②牛コード�
①牛群内評価�
�母牛登録番号�7151445�6904956�7355205�6905215�6905215�5731041�7355206�6898487�
�
�乳 量�(kg)�
+1430�+1972�+1330�+1258�+1423�+1918�+1095�+1166�
�
�信頼度�(%)�58��
54��
65��
54��
0265��
0273��
0219��
0276
�乳脂量�(kg)�+27�+38�+33�+34�+33�+45�+35�+44�
�
�乳脂率�(%)�
-0.28�-0.38�-0.18�-0.13�-0.21�-0.29�-0.07�+0.01�
�
�蛋白質�量(kg)�+40�+60�+36�+39�+29�+43�+28�+32�
�
�蛋白質�率(%)�-0.06�-0.02�-0.07�0.00�-0.17�-0.19�-0.07�-0.06�
�
�無脂固形分量(kg)�+125�+176�+114�+113�+103�+146�+96�+103
�無脂固形分率(%)�0.00�+0.05�-0.02�+0.05�-0.22�-0.22�0.00�+0.02
�体細胞�スコア�2.38�
�2.44�
�2.54�
�2.46�
�
�乳代効果(円)�
生産効果(円)�+103010�+143501�+98215�+97084�+96686�+131988�+84537�+93915
����
120201��
120922��
090724��
120928��
�最近分娩�年月日�
�150226�
�150829�
�141223�
�151016�
�
�最近�産次�02��
02��
04��
02
検定方法�
上 段 推 定 育 種 価 (E B V)�下 段 推 定 生 産 能 力 (E P A)�登 録 番 号�
③�
④� ⑤�
⑥総合指数� (NTP)�
⑦�
9
8
��
産乳成分���
+293��
+278��
+235��
+232
�����1��2��4��4
参考�パーセント�順位(%)�
牛群改良情報(個体情報)
生年月日�
①牛コード� 個 体 識 別 番 号�
YMD クレバー ヒッポ��ビューティ トレジャー ジーナ��エムエス ニックマン ベル�
父牛略号��
P5824��
P5824
�母牛登録番号�7358782�6816148�
0529502757�6978685�
0529502870�
�乳 量�(kg)��
+986��
+938��
0304��
0311��
0309
�乳脂量�(kg)��
+39��
+33��
�乳脂率�(%)��
+0.02��
-0.02��
�蛋白質�量(kg)�
�+32�
�+32�
�
�蛋白質�率(%)�
�+0.01�
�+0.02�
�
�無脂固形分量(kg)�
�+84�
�+79�
�
�無脂固形分率(%)�
�+0.02�
�+0.03�
�
�体細胞�スコア�
�2.62�
�2.65�
�
�乳代効果�(円)�
�+78,348�
�+72,705�
�
����
130913��
131117��
�最近分娩�年月日�
�160102�
�160215�
�
�最近�産次�
�01��
01
②母牛の�
検定方法�
名 号� 両 親 の 推 定 育 種 価(EBV)の 平 均�登 録 番 号� ③�④�
⑤��
�産乳成分���+260��+250��+216
�生産内�評価���9��9��8
�����3��3��7
参考�パーセント�順位(%)�
総合指数�(NTP)�
牛群改良情報(参考情報)
①産乳成分に基づいて、牛群内におけるランク付けを1~10の10段階で表示②※は無登録牛です。登録するよう努めましょう。③夜朝交互立会検定(AT検定)を行った場合に「AT」と表示されます。初産検定時に次のことを行った場合に#が表示されます。ア)検定をしていない、または非公式であった場合イ)自家検定を行った場合(搾乳ロボットによる検定を除く)ウ)AT検定を行っている検定牛において、何らかの事由により検定を一時的中止した場合エ)初産泌乳時に購買した検定牛の場合 オ)その他
④EBV乳量の信頼度⑤体細胞数は、一般的には1ml中の個数で示されますが、このままでは遺伝評価には適さないので、実測値を0~10のスコアに対数変換して評価されます。今回の評価で得られた遺伝ベース年生まれの雌牛集団(初産牛)の平均値は2.37です。評価値が小さいほど、遺伝的には優れていることになります。環境の影響を受けやすい形質ですので、補助的な利用にとどめてください。⑥総合指数が表示されていない牛は、初産時の体型審査成績がありません。⑦全国の個体情報掲載牛の中で上位から何%の位置にあるかを示す。(参考情報掲載牛は含まれません)
①※は無登録牛です。登録するよう努めましょう。②母牛が夜朝交互立会検定(AT検定)を行った場合に「AT」と表示されます。初産検定時に次のことを行った場合、又は立会回数の少ない拡張記録による評価値の場合に#が表示されます。ア)検定をしていない、または非公式であった場合イ)自家検定を行った場合ウ)AT検定を行っている検定牛において、何らかの事由により検定を一時的中止した場合エ)初産泌乳時に購買した検定牛の場合オ)その他③父牛と母牛の推定育種価(EBV)の平均値であり、未経産牛や立会回数の少ない初産牛など
EBVが計算されない雌牛のEBVの期待値を示します。本牛の泌乳記録がないために信頼度が低い(35%程度)点に注意してください。④体細胞数は、一般的には1ml中の個数で示されますが、このままでは遺伝評価には適さないので、実測値を0~10のスコアに対数変換し、今回の評価で得られた遺伝ベース年生まれの雌牛集団(初産牛)の平均値を基準として評価値が示されます。評価値が小さいほど、遺伝的には優れていることになります。環境の影響を受けやすい形質ですので、補助的な利用にとどめてください。⑤両親の推定育種価(EBV)の平均から算出される産乳成分が、個体情報掲載牛の牛群内評価・パーセント順位のどの水準に相当するかを示します。(参考情報掲載牛は含まれません)
未経産牛等の両親の推定育種価(EBV)の平均