2.磁場激変星カタログ -...
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磁場激変星のカタログ化、および伴星のスペクトル型と進化の関係
2MASSやSDSS等から既存のデータを用いて、磁場激変星の基本情報を探りカタログ化するとともに、伴星の特徴などを調査した。 2007年12月現在で磁場激変星に分類されている天体、磁場激変星の候補天体の合計184天体についてのカタログが得られた。 本カタログを用いて、磁場激変星の伴星のスペクトル型分布をJHK等級の2色図で求め、既知の矮新星の伴星の2色図との比較を行なった。この比較から、磁場激変星と矮新星の伴星のスペクトル型の分布に大きな違いがないことが明らかとなり、磁場激変星の進化において、磁場の有無は伴星の温度・スペクトル型に関係しないと考えられる。
Abstract鹿児島大学 理学部 物理科学科 宇宙コース 面高研究室 4年 小林 崇則
磁場激変星とは、磁場を持った白色矮星と晩期型の恒星がお互いの周りを回る連星系で、二つの星の距離が近いために、恒星の表層がはぎ取られて絶えず白色矮星に落下している天体である。磁場激変星は白色矮星の磁場が強いため、降着円盤の形成を妨げられる。 現在、磁場激変星の進化についてはほとんど解明されていない。AM Her型(polar)とDQ Her型の2種類に分類される。
・白色矮星の磁場 : 1000~10万 テスラ・降着円盤 : 形成しない
→ 直接白色矮星の磁極に流れ込む。
・強磁場により軌道周期と公転周期が一致する。
・白色矮星の磁場 : 100~1000 テスラ・降着円盤 : 形成する
→ 光学的に薄い降着円盤を持つ。
・軌道周期と公転周期は一致しない。
AM Her型
DQ Her型
1.磁場激変星とは?
2.磁場激変星カタログ
磁場激変星、および磁場激変星候補天体をリストアップするにあたって、下記の論文を参考にした。1 .Catalogue of Cataclysmic Binaries, Low-Mass X-Ray Binaries and Related Objects
RKcat Edition 7.8 (1 July 2007) by Hans Ritter and Ulrich Kolb 2. CATACLYSMIC VARIABLES FROM SLOAN DIGITAL SKY SURVEY Ⅰ~Ⅵ
Szkody et al. et al.2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007
2.1 候補天体の収集
2.2 天体情報の収集候補天体は184天体見つかった。これらの天体に対して、個々の情報を下記のデータベースから検索・収集した。・SDSS (Sloan Digital Sky Survey) Data→ u, g, r, i, zの等級・2MASS (Two-Micron All Sky Survey) Data→ J, H, Ksの等級, offset・ROSAT (The Roentgen Satellite) Data→ count, countの誤差・NOMAD Catalogue (Nav al Observatory Merged Astrometric Dataset) Data→ proper motion(固有運動)・Cataclysmic Binaries, LMXBs, and related objects Data→ orb.per. , V等級, type
・ID‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐通し番号 ・X mag‐‐‐‐ J, H, Ksバンドの等級・NAME‐‐‐‐‐‐天体名 (Jから始まる天体名はSDSSを省略) ・e_Xmag‐‐‐J, H, Ks等級の誤差
(例)SDSS J0729… → J0729… と表記 ・X_mag ‐‐‐ u, g, r, i, z, Vバンドの等級・RA,DEC ‐‐‐座標:赤道座標系 (RA:赤経, DEC:赤緯) ・count ‐‐‐‐ Source count rate,X線Flux・pm ‐‐‐‐‐‐‐‐ proper motion (固有運動) ・e_count ‐‐‐X線Fluxの誤差
単位:(mas/yr) , mas = milli-second of arc ・orb. per. ‐‐‐orbital period, 軌道周期・offset ‐‐‐‐‐‐座標とのズレ 単位:(arcsec) = second of arc ・type‐‐‐‐‐‐‐星の分類 (AM,DQ,IP等)
2.3 カタログの項目
今回収集した磁場激変星の伴星のスペクトル型を決定し、既に調べられている矮新星(磁場を持たない激変星)の伴星のスペクトル型と比較することで、磁場激変星の進化について迫る。
JHK等級の2色図を作り、矮新星の2色図と比較した。ここで、今回収集した磁場激変星(JHK等級のわかっている141天体)の2色図と既知の矮新星の2色図(Hoard, D.W. et al.2002参照:110天体)を作成し、
比較したところ、有意な差は見られなかった。
この結果より、磁場激変星の伴星のスペクトル型と矮新星の伴星のスペクトル型に大きな違いはないと判断した。したがって磁場激変星は、 伴星の温度・スペクトル型の影響から磁場を持ったのではなく、もと
もと磁場を持つ白色矮星が晩期型の恒星と連星系であったことから生まれる天体だと考えられる。
赤点:磁場激変星
緑点:矮新星
目的
調査方法
結論
結果
4.まとめ4.まとめ
3.伴星スペクトル型と進化の関係
本カタログのデータから以下のことが求まる。・Proper motionに仮定の速度を与えてやると、天体までのおおよその距離が求まる。・Count値によりX線の強度(intensity)が求まり、天体までの距離がわかっていれば、
その天体の光度(luminosity)を求めることができる。
さらに、色指数-等級、色指数-周期、周期-等級などの関係を調べることができる。これらについても他の激変星と比較することで、磁場激変星進化の究明に近づくことができる。
5.今後の展望
全カタログデータ全カタログデータ 184184 天体天体
赤外線等級赤外線等級 141141 天体天体可視等級可視等級 6262 天体天体XX線線FluxFlux 8282 天体天体固有運動固有運動 9898 天体天体軌道周期軌道周期 167167 天体天体
磁場激変星
この卒業論文で、磁場激変星、磁場激変星候補の計184天体のカタログが完成した。掲載されている天体情報の項目は、天体名、座標、offset (座標とのズレ)、固有運動、等級、等級誤差(赤外等級のみ)、X線Flux、X線Fluxの誤差、軌道周期、星の分類である。
本カタログを用いて、磁場激変星の伴星のスペクトル型を調べ、さらに矮新星の伴星のスペクトル型との比較を行なった。このことで、磁場激変星の伴星と矮新星の伴星のスペクトル型の分布に大きな違いはないことが明らかとなった。よって、磁場激変星の磁場の有無は伴星の温度・スペクトル型の影響によるものではないことがわかった。
・初の磁場激変星データカタログ
・磁場激変星進化の理解に役立つ
・データをわかりやすくまとめる
磁場激変星カタログ作成の意義
磁場激変星と矮新星の伴星のスペクトル型分布に有意な差はない