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修士論文 食を起こす SU UMa 型矮新星 IY UMa の光度曲線解析 岡山理科大学大学院 総合情報研究科 生物地球システ専攻 I 0 8 G M 0 4

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修士論文

食を起こす SU UMa 型矮新星 IY UMa の光度曲線解析

岡 山 理 科 大 学 大 学 院

総 合 情 報 研 究 科

生 物 地 球 シ ス テ ム 専 攻 地 球 科 学 研 究 室

I 0 8 G M 0 4 ・ 國 富 菜 々 絵

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目次目次目次目次

要約

1 序論 ・・・・・・・・・・1

2 激変星の一般的性質 ・・・・・・・・・・4

2-1 激変星の分類 ・・・・・・・・・・4

2-2 近接連星系の一般的性質 ・・・・・・・・・・6

2-2-1 近接連星系の分類 ・・・・・・・・・・7

2-2-2 近接連星系の進化 ・・・・・・・・・・8

2-3 矮新星の一般的性質 ・・・・・・・・・・9

2-3-1 矮新星の分類 ・・・・・・・・・・9

2-3-2 降着円盤の形成 ・・・・・・・・・・12

2-3-3 矮新星の増光のメカニズム ・・・・・・・・・・13

2-3-4 SU UMa 型矮新星の増光 ・・・・・・・・・・13

3 矮新星 IY UMa について ・・・・・・・・・・16

4 観測 ・・・・・・・・・・18

4-1 観測装置 ・・・・・・・・・・18

4-2 観測方法 ・・・・・・・・・・19

4-3 観測ログ ・・・・・・・・・・21

5 データ処理 ・・・・・・・・・・22

5-1 一次処理 ・・・・・・・・・・22

5-2 測光 ・・・・・・・・・・23

5-3 光度曲線作成 ・・・・・・・・・・24

6 光度曲線の解析 ・・・・・・・・・・25

6-1 軌道周期の算出 ・・・・・・・・・・25

6-2 superhump 周期の算出 ・・・・・・・・・・26

6-3 O-C 図の作成 ・・・・・・・・・・27

7 結果 ・・・・・・・・・・28

7-1 光度曲線 ・・・・・・・・・・28

7-2 superhump 周期と軌道周期 ・・・・・・・・・・32

7-3 O-C 図 ・・・・・・・・・・33

8 考察 ・・・・・・・・・・35

9 結論 ・・・・・・・・・・37

謝辞 ・・・・・・・・・・38

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参考文献 ・・・・・・・・・・39

Appendix-1 ・・・・・・・・・・40

Appendix-2 ・・・・・・・・・・61

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要約要約要約要約

SU UMa 型矮新星は超増光の期間中に、superhump と呼ばれる軌道周期よりも数%長い 2 時間程度

の周期的な変光を示す特徴がある。IY UMa(おおぐま座 IY 星)は、そのような SU UMa 型矮新星の中で

も、光度曲線中に superhump に加え明瞭な食を持つ比較的珍しい天体である。IY UMa は 2009 年 4

月 12 日に W. Kriebel によって超増光が検出され、VSNET によって 14.0 等まで増光したことが報告さ

れた。岡山理科大学田邉研究室では、21 号館屋上の田辺研究室天文台において、4 月 15 日から 28 日

までの晴れた晩 9 夜に CCD 連続測光観測を行った。光度曲線中には superhump に加え明瞭な食が確

認され、superhump 周期、軌道周期、歳差周期を算出した結果、それぞれ 0.076136(9)日、0.073918(3)

日、2.5368(4)日となった。superhump 周期については観測開始から増加傾向を示し、21 日を境に late

superhump に移行し、一定の周期を示した。得られた IY UMa の superhump 周期及び軌道周期は、典

型的な SU UMa 型に見られる周期を表している。しかし、今回の観測からは SU UMa 型に一般的な

superhump 周期の減少とは異なる結果を得た。

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1. 1. 1. 1. 序論序論序論序論

宇宙にある恒星の半数ないしはそれ以上が、互いに共通重心の周りを公転しあう連星系を形成して

いると考えられている。連星の研究の歴史は、二重星の発見から始まった。二重星とは 2 つに分離し

て見える接近した星対のことである。17 世紀に望遠鏡が発明されると二重星の発見は飛躍的に進み、

18 世紀半ばには 70 個近くが発見された。1767 年に J. Michell は、二重星の中には偶然接近して見え

ているだけでなく、引力的な結合によって実際に空間的に接近しているものがあることを指摘した。

1803 年に F. W. Herschell は、二重星ふたご座α星(Castor)の A,B 両星の相対位置角の変化が、その 2

つの星による公転運動によるものと考え、引力的な結合を持つ「連星」という意味の言葉を初めて用

いた。現在では二重星の中で引力的な結合があるものを実視連星(visual binary)、距離の離れた 2 つの

星が視線方向に偶然接近して見えるものを光学的星対(optical star pair)と呼んで区別する。また、連

星系は主星(primary component)と伴星(secondary component)の距離によって、遠隔連星(wide binary)

と、両星の間隔が星の直径程度の近接連星(close binary)に分けられる。実視連星は一般に周期が数十

年から数百年と長く、遠隔連星であるのに対し、近接連星は公転周期が数日ないし数時間と非常に短

く、両星が接近しているために分離されないが、測光観測や分光観測から間接的に連星を構成してい

ることが分かる。分光観測によって最初に連星系であることが確認されたのは、おおぐま座ξ星

A(Mizar)であった。1889 年に Harvard 大学天文台の E. C. Pickering によって視線速度変化の観測から、

この星が分光連星(spectroscopic binary)であることが分かり、後に 20 日周期で公転しあう近接連星系

であることが判明した。

一方、恒星の中には変光星(variable star)と呼ばれる、時間とともに明るさが顕著に変化する星があ

る。変光星の研究は 16 世紀後半にヨーロッパで始まった。そのきっかけとなったのが、1572 年にカ

シオペア座に出現した超新星、いわゆるティコの新星(SN 1572)である。デンマークの天文学者、Tycho

Brahe はこの新星が減光し見えなくなるまで 14 ヶ月にも亘って観測を続け、この星に相対的な位置の

変化が観測されなかったことから星空の現象であることを確かめた。その後 1600 年のはくちょう座

新星(P Cyg)の発見を含め、1 世紀の間に数個の新星の発見が続いた。1667 年、イタリアの天文学者

G. Montanari は、ペルセウス座β星(Algol)の減光に気づき、観測記録を残した。その後 1782 年にイギ

リスの J. Goodricke が、Algol の減光が周期 2.867 日で正確に繰り返すことから、これは連星系の食

による変光であると主張した。食が起こるためには軌道面と視線方向のなす角(軌道傾斜角)がほとん

ど 90°に等しいことが必要であり、そのため近接連星系で食変光星が多く発見される。近接連星系の

理論的研究は Z. Kopal、次いで北村正利、山崎篤磨らによって進められた。

変光星の中でも激変星(cataclysmic variable star)は、近接連星系であることが変光の原因であり、そ

の名の通り短時間の急激な増光を示す。激変星は、古典新星(classical nova)、再帰新星(recurrent nova)、

矮新星(dwarf nova)、新星状変光星(nova-like)に大きく分類される。激変星の中でも特に食を起こす系

は、近接連星系の実態解明の歴史の中で重要な役割を担った。その第一歩となったのは 1954 年の

Walker によるヘルクレス座 DQ 星(DQ Her)の研究である。Walker はこの星の光電測光器を使用した連

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続観測を行い、光度曲線から DQ Her が食連星であることを発見した(Walker 1956)。光電測光器とは

光電子倍増管を用い、光電効果で星からの光を増幅させる装置である。食は連星系の公転によって非

常に正確に繰り返すため、食の周期から軌道周期 4.65 時間であることが分かった。さらに Walker は、

DQ Her の光度曲線上にちらつき変光(周期 71.07 秒、振幅 0.03 等)を発見し、これは成分星の片方が白

色矮星であり、その脈動変光によるものと推論した。1960 年頃には、Kraft 等によって激変星の高分

散スペクトル観測が行われ、その視線速度変化が調べられた。その結果、これらの星のどれもが白色

矮星を成分星の片方に持つ、短周期の近接連星系であることが分かった。1970 年代には、B. Warner

と E. Nather が高速高電測光器(時間分解能510~ −秒)を使用し、激変星の細かな変動を捕らえる詳細な

観測を行った。この観測の結果、白色矮星の周りには降着円盤(accretion disc)が存在することが明ら

かになった。また、食は降着円盤上のブライトスポット(光点)が伴星によって隠されることで起こる

ことや、DQ Her の光度曲線中に見られたちらつき変動が、強い磁場を持つ白色矮星の自転に起因す

ることも解明された。食連星は、分光観測によって視線速度曲線が得られれば、光度曲線に加え視線

速度曲線の解析から成分星の質量と半径を直接求めることが出来る。このように食を持つ激変星の観

測は、近接連星系のモデルの構築と合わせて、その進化の研究への大きな寄与となった。

1855 年に発見された最初の矮新星ふたご座 U 星(U Gem)は、約 100 年の間その爆発のメカニズムは

謎のままであった。1960 年代に、新星の増光が白色矮星表面上での熱核反応の暴走による爆発である

ことが解明されると、矮新星はその小型版であると考えられた。しかし食を起こす矮新星の静穏期の

観測から、増光時に光っているのは降着円盤であることが分かった。矮新星の爆発メカニズムについ

ては 1970 年代から 90 年代にかけて激しい論争があった。1974 年に尾崎洋二によって降着円盤の熱不

安定モデルが提唱され、1980 年には蓮茨霊運、J. Pringle、F. Meyer, E. Meyer 夫妻らによって円盤不

安定性理論が確立した。この理論によると、円盤にガスが一定量溜まると水素が部分電離し、円盤は

熱的に不安定となる。そして粘性による加熱で白色矮星への質量降着が増大し、増光が起こるという

ものである。矮新星の中でも SU UMa 型と呼ばれるタイプの星は、超増光の極大期に superhump と呼

ばれる、増光幅 0.2-0.3 等で 2 時間程度の周期的な変動を持つ特徴がある。この superhump は軌道周

期よりも数%長い周期で観測され、星が静穏期に戻るまで続く。superhump の起源について、N. Vogt

は降着円盤が楕円形となることで歳差運動を始め、軌道周期と歳差周期の beat (うなり)周期で

superhump は発生すると提案した(Vogt 1982)。その後、楕円円盤は超増光に伴うものと認識されてき

たが、円盤が楕円になる理由は 1988 年まで謎のままであった。その年に Oxford の大学院生であった

R. Whitehurst は、相互作用する粒子の集合体によるモデル化された降着円盤のシミュレーションを行

った。その結果から、主星と伴星の質量比 12 /MMq = が 0.33 よりも小さい場合、降着円盤は伴星か

らの潮汐力を受けて楕円形となり、それが歳差運動を始めるということを示した。次の年に尾崎洋二

は、伴星からの潮汐力によって降着円盤が不安定となり、超増光や superhump が発生するという潮汐

不安定モデルを発表した。その後この理論モデルは、京都大学の加藤太一らによって観測的検証がな

され、現在広く受け入れられている。このように SU UMa 型矮新星は、楕円円盤に起因する superhump

が観測されることが大きな特徴であり、静穏期に向かうにつれ楕円円盤が収縮し、superhump 周期が

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減少傾向を示すことが観測から分かっている。

今回テーマに選んだ SU UMa 型矮新星おおぐま座 IY 星(IY UMa)は、1985 年に高見沢今朝雄によっ

て写真で発見され、その後 1997 年に写真等級 13.0 等で増光が検出された。その後 2000 年に超増光が

14.0 等で検出され、CCD による連続測光観測が行われ、光度曲線中に superhump に加え明瞭な食を

持つことが分かった。さらに、Patterson (2000)によって、軌道周期 0.0739091(1)日、superhump 周期

0.07583 日、主星質量 0.86(11)M、伴星質量 0.12(2) M、質量比 0.13(2)、軌道傾斜角 86.8(1.5)°であ

ることが分かった。IY UMaはその後約2年周期で増光を繰り返している。2009年4月12日にW. Kriebel

によってIY UMaの超増光が検出され、VSNET(国際変光星ネットワーク)によって14.0等(通常光度17.6

等)まで増光したことが報告され、我々は CCD による連続測光観測を行った。

本研究では、IY UMa の 2009 年超増光期における軌道周期と superhump 周期を求め、superhump

周期の変化率から、SU UMa 型矮新星に特徴的な降着円盤の進化を知ることを目的としている。

以下本論文中での 2 章では激変星の一般的性質、3 章では IY UMa の諸量を、4 章では観測に使用し

た装置並びに観測方法について、5 章ではデータ処理、6 章ではその解析方法を、7 章では光度曲線と

その解析によって得られた結果を、8 章ではその考察を、9 章では結論をそれぞれ報告する。

なお、矮新星の outburst(増光)の理論、ならびに SU UMa 型矮新星の superoutburst(超増光)の理論

については、ゼミで使用した Hellier (2001)のテキスト第 5 章、第 6 章にそれぞれ詳細が述べられてお

り、Appendix-1 及び Appendix-2 にその日本語訳を掲載する。

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2. 2. 2. 2. 激変星激変星激変星激変星のののの一般的性質一般的性質一般的性質一般的性質

1 章で紹介したように、激変星とは明るさが急激に変化する変光星の一種であり、その実体は主星

である高密度星(主に白色矮星、その他中性子星、ブラックホール)と、伴星である赤色星との半分離

型の近接連星系で、伴星から主星へ質量移動が起こっている。伴星から流入するガスは連星系の公転

運動による角運動量を持つため、回転しながら白色矮星へと流入し、降着円盤と呼ばれる土星の輪の

ような形状のガス円盤を形成している。この章では激変星の分類と、その一般的な性質について述べ

る。

2222----1. 1. 1. 1. 激変星激変星激変星激変星のののの分類分類分類分類

激変星は爆発の物理的メカニズム及び、その規模と頻度によって次のように分類されている。

(1)古典新星(classical nova)

激変星の中で最も古くから知られているのが古典新星(いわゆる新星)である。過去に 1 回しか爆発

の記録がない天体であり、増光幅が平均的に 8-16 等、明るいものは 20 等に及ぶ。古典新星の爆発

(eruption)の原因は、伴星(G~M 型の主系列星)からの質量降着によって白色矮星の表面に降り積もっ

たガスが、白色矮星の重力によって高温、高圧の状態になり、暴走的な水素の熱核反応を起こすため

である。水素ガスの降着率の大小により核爆発の規模は異なる。また、爆発は白色矮星表面で起こる

ため、白色矮星本体にはほとんど影響はないと考えられ、その後も伴星からの質量降着は継続する。

古典新星の初期の増光は 1 日程度と急激であり、その後極大光度に達し、しだいに減光していく。そ

の減光の速さは天体によって異なり、1 週間から数年で静穏期の光度に戻る。また、極大光度から 3

等級暗くなるまでの期間の違いによって fast、slow、very slow などに分類される。古典新星は過去に

1 回しか爆発の記録がないが、原理的には爆発は繰り返し起こり得るため、爆発の間隔が長い天体で

あると考えられる。普通の古典新星で爆発の間隔は数千年から数万年と見積もられている。

(2)再帰新星 (recurrent nova)

古典新星の中でも 2 回目以降の新星爆発が検出されたものを再帰新星と呼び、その平均的な増光幅

は 8-10 等である。再帰新星は伴星が赤色巨星であり、伴星からの質量降着率が大きく、爆発が起こ

るために必要なガスが短時間で溜まるため、爆発間隔が古典新星よりも短い。現在知られている再帰

の間隔は 20-80 年である。

(3)矮新星(dwarf nova)

矮新星は伴星が赤色矮星(主系列星)で、古典新星や再帰新星に比べ、増光幅 2-5 等と爆発規模が小

さく、1 週間から数ヶ月の間隔で頻繁に増光(outburst)を繰り返す。主星に白色矮星、伴星にスペクト

ル型 K~M 型の主系列星を持つ近接連星系である。爆発のメカニズムは新星とは全く異なり、新星が

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白色矮星表面での核爆発であるのに対し、矮新星は降着円盤中のガスが白色矮星へ降着する際の、重

力エネルギーの解放によるものである。したがって、降着円盤自体が明るく輝くことによって矮新星

は増光する。また、矮新星は増光時の光度曲線の形状や、その増光の間隔及び規模によって、さらに

U Gem 型(ふたご座 U 型)、Z Cam 型(きりん座 Z 型) 、SU UMa 型(おおぐま座 SU 型)と呼ばれるサブク

ラスに分類される。矮新星の一般的性質については 2-3 で詳述する。

(4)新星状変光星(nova-like)

新星状変光星は矮新星のような増光を示さず、ほとんど一定の明るさで見える。それは伴星からの

質量流入量が比較的大きく、同時に同量のガスが降着円盤から白色矮星へと定常的に落下するため、

降着円盤が常に明るい状態のためである。それは後述する矮新星の降着円盤の非定常状態が形成され

ず、熱的不安定が起こらないことを意味している。すなわち、常に矮新星の爆発時の状態にあると考

えられる。

(5)ポーラー(polar)と中間ポーラー(intermediate polar)

また激変星の中でも、特に白色矮星の磁場が強いものを強磁場激変星(Magnetic Cataclysmic

Variable)と呼び、ポーラー(polar)や中間ポーラー(intermediate polar)が含まれる。ポーラーは白色矮星

の磁場が非常に強く(~107G)、伴星からのガスが磁力線に沿って白色矮星に直接落下する。したがっ

て白色矮星の両極方向へ向かって、“漏斗”型の降着が起こり、降着円盤は形成されない。ポーラーは

強い磁場による相互作用で、主星と伴星の自転周期と公転周期が同期している。また、中間ポーラー

は白色矮星の磁場がポーラーほど強くないため、降着円盤が磁場の圧力と円盤のガスの圧力がつりあ

う場所で終わり、そこからガスが磁力線に沿って白色矮星の磁極に落下している。ポーラーのように

自転周期は公転周期と同期していない。

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2222----2. 2. 2. 2. 近接連星系近接連星系近接連星系近接連星系のののの一般的性質一般的性質一般的性質一般的性質

激変星は主星と伴星が星の半径と同程度まで接近し、数日ないし数時間という短い周期で公転する

近接連星系の一種である。ここでは近接連星系の基本的性質(主に幾何学)を述べる。

連星系では一般的に、以下の式で表されるケプラーの第 3 法則が成立する。

)(

4

21

322

MMG

aπP

+=

ここで、a は軌道長半径、 P は公転周期、 1M は主星質量、 2M は伴星質量、G は万有引力定数で

ある。

近接連星系の中で、観測から成分星の質量と半径が分かっているものは、両星の外形の幾何学的

形状や相対的な大きさについて、たびたび近似モデルを使用して表される。近似モデルはこのような

研究の先駆者である Edouard Albert Roche(1820~1883)*の名前を取って、ロッシュ・モデル(Roche

model)と呼ばれる。

近接連星系は 2 つの星の回転運動によって星の周囲の重力場が変化している。その重心を原点とす

る回転座標系を考えると、連星の周囲には回転によって生じた遠心力と重力から特殊な重力圏が生じ

ている。この構造を考える上で重要な概念が、等ポテンシャル面である。等ポテンシャル面とは、二

つの星の重力ポテンシャルと、軌道運動に由来する遠心力のポテンシャルの和が一定の面のことであ

る。成分星のそれぞれの表面はこの等ポテンシャル面に近似することが出来る。

両星の質量をそれぞれ 1M 、 2M ( 21 MM > )とし、 1r 、 2r をそれらの位置ベクトルとすると、 r に働

く両星からの全ポテンシャルΨ は次の式で表される。

2

2

2

1

1

2

1rω

rrrrr ×−

−−

−−=)( GMGM

Ψ

ここで、ωは軌道面に垂直な軸まわりの角速度ベクトルである。Fig.2-1 は等ポテンシャル面を軌

道面に射影したものである。L₁-L₅はラグランジュ点(Lagrangian point)と呼ばれ、重力と遠心力の合

力がゼロの点を表している。等ポテンシャル面のうち、L₁点を通る二つの袋を 8 の字型に 1 点でくっ

つけた面を内部臨界ロッシュ面と呼び、その面が囲む部分を内部臨界ロッシュ・ローブ、または単に

ロッシュ・ローブ(Roche lobe)という。内部臨界ロッシュ面は、成分星がそれぞれ安定した形状を保っ

ていられる限界の曲面を表している。それに対して、L2 点を通る面を外部臨界ロッシュ面と呼び、そ

の面が囲む部分を外部臨界ロッシュ・ローブと呼ぶ。外部臨界ロッシュ面は連星系としての形状を保

つことが出来る限界の曲面を表している。これらの 2 つの等ポテンシャル面は連星系を考えるとき特

に重要となる。

*ロッシュ限界(惑星中心からの限界距離。惑星の潮汐力により、その距離以内では大きな衛星は存在できない)など

を数学的に計算したフランスの数学者であり、天文学者、物理学者でもある。

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2222----2222----1. 1. 1. 1. 近接連星系近接連星系近接連星系近接連星系のののの分類分類分類分類

ロッシュ・ローブを用いた連星系の幾何学的分類

を初めて行ったのは Z. Kopal (1959)である。現在こ

の分類法は、連星の成分星の形状やその進化につい

て議論するのに一般的に使用されている。この分類

法によると、近接連星系は(a)分離型(detached

system)、(b)半分離型(semi-detached system)、(c)接

触型(contact system)の 3 種類に分類することが出来

る(Fig. 2-2)。

(a)分離型(detached system)

分離型とは、成分星がそれぞれロッシュ・ローブ

の内側に納まっている状態であり、実視連星などの

遠隔連星はこの分離型に属する。近接連星系で分離

型に属するものは、主系列星同士の組み合わせが多

く、両星の間に質量移動は起こっていない。

(b)半分離型(semi-detached system)

半分離型とは成分星の片方がロッシュ・ローブを満たしており、もう一方が満たしていない状態で

ある。主星が主系列星で、伴星が準巨星の組み合わせのもの(代表的なものとして Algol などの食連星)

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----1111 軌道面に射影した等ポテンシャル面(Iben & Livio 1993)。

質量比は 0.25 であり、L₁~L₅点はラグランジュ点、CM は重心を示している。。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----2222 近接連星系の分類(中村 2009 より)。

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と、主星が降着円盤を持つ白色矮星、または中性子星やブラックホールで、伴星が通常の星といった

組み合わせがある。このような系が激変星や X 線連星である。これらの系では L₁点を通過して伴星か

ら主星への質量移動が行われている。

(c)接触型(contact system)

接触型とは成分星の両方がロッシュ・ローブを満たし、共通の外層大気を持っている。L₁点で両星

の光球が接触しているか、ロッシュ・ローブを越えて外側まで広がっている場合もある。この系の成

分星はスペクトル型が同じか、巨星同士といった組み合わせが多い。半分離型同様に L₁点を通って両

星間に質量移動が起こっており、公転周期の変動が著しいといった特徴を持つ。

2222----2222----2222.... 近接連星系近接連星系近接連星系近接連星系のののの進化進化進化進化

半分離型近接連星の大部分が、質量の小さい方の星がロッシュ・ローブを満たしていることが観測

から分かっている。連星系の星が同時に誕生したと考えた場合、このことは質量の大きい星ほど早く

進化し膨張を始めるという星の進化に矛盾しているように思われる。これは Algol パラドックスと呼

ばれ不思議に思われていたが、連星系の進化に関連した問題として理論的に解決された(Morton 1960)。

これによると、質量の大きい星が先に進化しロッシュ・ローブを満たすと、L₁点から相手の星へ向か

ってガスが溢れ出す。これをロッシュ・ローブ overflow と呼び、この際に相手の星への大量の質量移

動が起こる。したがって、元々質量が大きく早く進化した星が、質量を失ったために相手の星よりも

質量の小さい星としてロッシュ・ローブを満たしているという観測事実を説明できる。

ロッシュ・ローブ overflow によって、ガスが相手の星の上にあふれたとき、両星の周りに共通外層

が形成される。さらにその大気層が膨張すると、連星系は共通外層進化(common envelope evolution)

を遂げる。ロッシュ・ローブを越えて膨張したガスは L2 点から流れ出し、さらに膨張すると L3 から

も流れ出す。このとき、ガスは連星の軌道運動に比べてゆっくりと出ていくため、連星系の公転によ

りガスは角運動量を得る。連星系はその反作用で軌道角運動量を失い、軌道半径は小さくなる。した

がってロッシュ・ローブも小さくなり、ガスの放出がさらに進み、連星系は急速に軌道半径が小さく

なる。激変星などの公転周期が数日ないしは数時間以下の近接連星系は、この共通外層進化を経て形

成される。また、公転周期が共通外層進化によって 1 日程度まで短くなると、 磁気制動(magnetic

braking)や重力波放出(gravitational wave)の効果が大きくなり、連星系の角運動量損失が進み、公転周

期は数時間まで短くなると考えられている。

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2222----3. 3. 3. 3. 矮新星矮新星矮新星矮新星のののの一般的性質一般的性質一般的性質一般的性質

矮新星は激変星の中で最も数の多い天体である。矮新星という名前は新星爆発の小型版ということ

で名付けられたが、矮新星は降着円盤の物理状態の変化によって光度変化を起こすことから、増光の

メカニズムは新星爆発とは全く異なる。以下に矮新星の分類と、その一般的な性質について述べる。

2222----3333----1. 1. 1. 1. 矮新星矮新星矮新星矮新星のののの分類分類分類分類

2-1 で述べたように、矮新星は増光時の光度曲線の形状や、増光の間隔や規模によって(a)U Gem 型

(ふたご座 U 型)、(b)Z Cam 型(きりん座 Z 型)、(c)SU UMa 型(おおぐま座 SU 型)という 3 つのサブク

ラスに分類される。

(a)U Gem型(SS Cyg型)

U Gem型は通常光度よりも2-4等ほど増光する通常の増光(normal outburst)を数週間おきに繰り返す。

増光時は1~2日で極大になり、数日から数週間で静穏期の光度に戻る。軌道周期がおよそ12時間から

3 時間と矮新星の中では比較的長く、連星進化の初期段階にあると考えられている。

Fig. 2-3は代表的なU Gem型であるSS Cygの光度曲線である。この星は通常光度がおよそ12等だが、

40-50日周期でおよそ8等まで増光し、10日ほどで静穏期の明るさに戻る。増光の立ち上がりは早いも

の(約2日)と遅いもの(約8日)があり、plateau(極大期の平坦な形状)は約10日間続くものと、そうでな

いものがある。しかし減光にかかる時間はすべてのoutburstで約8日となっている。

(b)Z Cam型

Z Cam型はnormal outburstに加え、増光した後明るさが一定になる期間があり、その期間をstandstill

と呼ぶ(Fig. 2-4参照)。standstillは極大の後やや光度を落とし、静穏期よりも明るい状態を一定に保っ

たまま、数日から数ヶ月持続する。Z Cam型は、増光時に降着円盤の照射によって伴星が加熱され、

質量輸送率が一時的に増大する。増大した質量流入によって円盤のガス密度が増大し、水素が常に電

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----3333 U Gem 型矮新星 SS Cyg の 1 年間の光度曲線(AAVSO)。

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離した状態となり、降着円盤が一定の明るい状態を継続するためstandstillが起きると考えられている。

Z Cam 型の進化段階に関する性質はU Gem 型とほとんど変わらず、軌道周期もU Gem 型の範囲にあ

る。

(c)SU UMa型

SU UMa 型は増光時の振幅がおよそ 3.5-6 等と大きく、normal outburst に加え、それよりも 0.5-1

等ほど明るく長期間に渡って持続する superoutburt の2つの増光を起こす(Fig. 2-5 参照)。

superoutburst は plateau 期が 2 週間ほど持続した後、急激に減光していく。さらに superoutburst の

極大時には、光度曲線上に superhump と呼ばれる、振幅が 0.2-0.3 等ほどの軌道周期より数%長い周

期的な変光が見られる。superoutburst の発生は、降着円盤の 2 つの不安定性(熱不安定性と潮汐不安

定性)に起因すると考えられている(Osaki. 1989)。さらに SU UMa 型は、supercycle(superoutburst が繰

り返される期間)の長さが数十日と短い ER UMa 型と、数十年と長い WZ Sge 型というサブクラスに分

類される。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----4444 矮新星 Z Cam の 10 年間の光度曲線(AAVSO)。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----5555 SU UMa 型矮新星 VY Hyi の 2 年間の光度曲線(Royal Astronomical Society of New Zealand)。

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WZ Sge 型は、矮新星の中でも最も低い質量輸送率を持つ。したがって superoutburst を起こすため

に十分な物質を降着円盤に積もらせるのに数十年かかる。superoutburst の際の増光幅は 6 等以上で

あり、SU UMa 型の中でも比較的大きい。また、起こる outburst は全て superoutburst であり、normal

outburst を起こさないといった特徴を持つ。もう一つの特徴は、superoutburst の初期の光度曲線中に

early superhump が見られることである。early superhump は軌道周期に近い周期で 2 つのピークを示

す周期的な変動である。WZ Sge 星自体について、early superhump は superhump に変わる前に約 12

日間持続することが分かっている。しかし、この変動の起源はまだ明らかになっていない。

ER UMa 型は伴星からの質量輸送率は大きく、supercycle が矮新星で最も短い 20 日から 50 日とい

う特徴を持つ。短い supercycle の間に normal outburst も起こすため、静穏期がほとんど存在しない。

supercycle が 20 日と最も短い ER UMa 型星 RZ LMi は、その期間において 4 日おきに 2 度の normal

outburst を起こす。

SU UMa型は軌道周期が2 時間から90分のものがほとんどであり、WZ Sge型にいたっては最も短い

ものでは78分という軌道周期の系を持つ。軌道周期の短縮に伴って伴星からの質量輸送が進んでいる

ため、伴星の質量が小さく、スペクトル型も晩期化(G,K,M型)したものが多い。したがってWZ Sge型

は、激変星の進化において晩期に位置する系と考えられている。

Fig. 2-6は伴星からの質量輸送率と、連星系の軌道周期の関係を表した図である。図中の軌道周期

が2時間から3時間付近に見られる、矮新星の個数が極端に少ない領域をperiod gapと呼ぶ。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----6666 質量輸送率と軌道周期による矮新星の分類。

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2222----3333----2. 2. 2. 2. 降着円盤降着円盤降着円盤降着円盤のののの形成形成形成形成

降着円盤は伴星からのガスが L₁点を通過し、白色矮星に流れ込む過程で形成される。降着するガ

スは連星の軌道運動によって角運動量を持つため、ガスは白色矮星のまわりに回転円盤状に分布し、

回転しながら徐々に白色矮星に降り積もっていく(Fig. 2-7 参照)。

一般に、質量 M の天体の周りを半径 r で円運動する粒子はケプラー回転する。降着円盤中のガスの

粒子の回転速度 Kv 、角速度 KΩ 、角運動量 Kl とすると、ケプラーの第 3 法則によりそれぞれ以下の

ような式で表される。

r

GMv =K ,

3K r

GM=Ω , GMrvr =≡ KKl

上式より回転速度、角速度ともに内側ほど大きく、角運動量は逆に外側ほど大きくなる。したがっ

て、円盤内では中心天体からの距離によって回転角速度が違うため、ガスに粘性抵抗が働く。内側を

回転するガスは回転速度の遅い外側のガスによる粘性抵抗を受け、回転にブレーキがかかる。この粘

性抵抗によって内側を回転する環帯(annulus)は、外側の環帯に対し回転方向にトルクを及ぼす。その

結果、角運動量が内側から外側に輸送され、角運動量を失ったガスは遠心力が小さくなり、中心天体

に徐々に降着していく。このように、粘性による効果が角運動量を輸送させてガスの降着を可能にす

る。さらに粘性は、摩擦熱を発生させることで重力エネルギーを熱エネルギーへ、そして放射エネル

ギーへと効率よく転換する。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----7777 激変星のモデル(Robinson 1976 )。

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2222----3333----3333.... 矮新星矮新星矮新星矮新星のののの増光増光増光増光ののののメカニズムメカニズムメカニズムメカニズム

矮新星では降着円盤が不安定となることで円盤中の物質が一気に白色矮星に落下し、重力エネルギ

ーの解放が起こる。重力エネルギーが放射エネルギーに転換され、降着円盤自体が輝くことによって、

矮新星は増光する。矮新星の増光は降着円盤からの白色矮星への質量降着が突然増大した結果であり、

それは質量降着が間欠的に起こっていることを意味している。

1970 年代、間欠的な質量降着を説明する 2 つの仮説が互いに競い合っていた。その一つは 1973 年

に G. Bath が提案した「伴星不安定モデル」に基づくものである。そのモデルによると、矮新星の爆

発は伴星からの質量流出が間欠的であるために引き起こされる。つまり伴星の質量の流出量の変化は、

降着円盤を経由して白色矮星にも間欠的に質量降着し、その結果爆発が起こるというものである。

二つ目は 1974 年に尾崎洋二によって提案された「円盤不安定モデル」である。このモデルでは伴

星からの質量流入は一定であり、円盤に溜め込まれた物質量が限界となったとき熱的不安定を起こし、

一気に白色矮星に物質を降着させるため爆発が起こるというものである。したがって、降着円盤から

さらに白色矮星表面への降着が非定常的に起こる場合に爆発が起こり、定常的に降着する場合は爆発

的な増光にはならない。現在ではいくつかの観測事実から、この「円盤不安定モデル」が広く支持さ

れている。熱不安定性に基づく「円盤不安定モデル」の詳細は Hellier (2001)の第 5 章を和訳した

Appendix-1 に掲載している。

2222----3333----4. SU UMa4. SU UMa4. SU UMa4. SU UMa 型矮新星型矮新星型矮新星型矮新星のののの超増光超増光超増光超増光

2-3-1 で述べたように、矮新星の中でも SU UMa 型は normal outburst に加え、それよりも規模、継

続期間ともに大きい superoutburst の 2 種類の増光を示す天体である。SU UMa 型以外の系でも起こ

る normal outburst については円盤の熱的不安定性で理解できるが、superoutburst の原因となる不安

定性については長い間そのメカニズムは分からなかった。

Y. Osaki (1996)は、熱不安定性と潮汐不安定性の組み合わせによって superoutburst が発生すること

を提案した。光度曲線の形状から、superoutburst は normal outburst の連続の後、引き起こされるよ

うに見える(Fig. 2-9)。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----9 9 9 9 SU UMa 型矮新星 VW Hyi の 1 回の supercycle を示した光度曲線(Osaki 1989 )。

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superoutburst が繰り返す期間を supercycle と呼び、supercycle の間に発生する normal outburst の

数は星によって異なる。normal outburst が終了すると、円盤の半径は小さくなるが、円盤中の全ての

物質が白色矮星へと降着したわけではない。normal outburst を数回繰り返すうちに、円盤中では残さ

れた物質が溜まり、全体として降着円盤の半径は徐々に大きくなっていく(Fig. 2-10)。降着円盤はあ

る一定の大きさになると、円盤の端が伴星の潮汐力を強く受けるようになる。

SU UMa 型矮新星では、軌道周期と降着円盤内で物質が回転する周期が 3:1 となる半径で共鳴現象

起こり、楕円円盤が形成されると考えられている。楕円円盤の長径方向の膨らみ(バルジ)が伴星に最

も接近するとき(一直線に並んだとき)、伴星からの強い潮汐力を受け変形し、大量の摩擦熱が発生す

る。この潮汐トルクによる摩擦熱は降着円盤をさらに高温にする。したがって円盤は効果的に角運動

量を輸送させ、白色矮星に物質を降着させる。このような現象は、伴星の潮汐力によって起こる円盤

の不安定性であり、潮汐不安定性(tidal instability)と呼ばれる。Hirose & Osaki (1990)は、降着円盤の

潮汐不安定性を示した流体の数値シミュレーションを行っている。このシミュレーションによると、

離心楕円形の降着円盤が、連星の公転運動と同じ向きにゆっくりと歳差運動していることが分かる。

詳細は Hellier (2001)の第 6 章を和訳した Appendix-2 に掲載している。

この潮汐不安定に熱不安定の効果も伴うことにより、円盤内の物質をほとんど消費させるまで降着

が進み、normal outbusrst よりも円盤を明るく長い期間に渡って輝かすことが出来る。これが

superouburst が発生するメカニズムである。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----10 10 10 10 SU UMa 型矮新星 VW Hyi の、1 回の supercycle における disc の半径の変化(Osaki 1989 )。

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SU UMa 型矮新星の superoutburst 期の光度曲線上に見られる superhump は、軌道周期よりも数%

長い周期的な変動として観測される。superhump は星が静穏期に戻るまで続き、一般的にその周期は

この期間にわたってわずかに短い周期に変化していく(Fig. 2-11)。

superhump は、上記で詳述した楕円円盤が歳差運動を始め、伴星と楕円円盤が同じ位置関係になる

周期(会合周期)で発生する。これは連星の公転周期ではなく、楕円円盤が歳差運動をする分だけ長く

なる。その様子を表したものが Fig. 2-12 である。ここで、 shP を superhump 周期、 orbP を軌道周期、

precP を楕円円盤の歳差運動の周期とすると、(a)では時刻 t=0 で楕円円盤の長径方向と伴星が一直線に

並んでおり、それから orbP 後の(b)では、楕円円盤は歳差運動のため少し動く。さらに shP 後の(c)では、

再び(a)と同じ位置関係となり、伴星の潮汐力によって楕円円盤は最も明るくなる。

ここで、楕円円盤と伴星が 1 時間あたりに動く角度はそれぞれ prec/P°360 、 orb/P°360 となる。した

がって precP は会合周期であるから、 shPt = だけ経過したとき、角度 °+ 360θ は以下の式で表される。

°=×

°−°360

360360prec

shorb

PPP

したがって、次の式が導かれる。

precorbsh PPP

111 −=

上式から、 shP は orbP と precP の beat(うなり)

周期であることが分かる。通常、SU UMa 型矮

新星では軌道周期を求めることは容易ではない

が、食を起こす系については orbP が正確に決定

できる。したがって shP 及びその時間変化を正

確に知ることが可能となる。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----11111111 SU UMa 型矮新星 V1159 Ori の superhump (Hellier 2001)。

Fig. 2Fig. 2Fig. 2Fig. 2----11112222 軌道周期と楕円円盤の歳差運動の周期及び

superhump 周期の関係。

G(a)

(b)

(c)

M2M1

t=0

1軌道周期後

Gt=Porb

t=PshG

時刻

降着円盤

θ

G(a)

(b)

(c)

M2M1

t=0

1軌道周期後

Gt=Porb

t=PshG

時刻

降着円盤

G(a)

(b)

(c)

M2M1

t=0

1軌道周期後

Gt=Porb

t=PshG

時刻

降着円盤

G(a)

(b)

(c)

M2M1

t=0

1軌道周期後

Gt=Porb

t=PshG

時刻

降着円盤

θ

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3. 3. 3. 3. 矮新星矮新星矮新星矮新星 IY UMaIY UMaIY UMaIY UMa についてについてについてについて

IY UMa(おおぐま座 IY 星)は、1985 年に K,Takamizawa(高見沢今朝雄)によって写真で発見され、当

時 Takamizawa V85(Tmz V85)と呼ばれた。1997 年 11 月 9.751 日(UT)に写真等級 13.0 等で増光が検出

され、矮新星の可能性が示唆された(Takamizawa. 1998)。その後 2000 年 1 月 13.509 日(UT)に P. Schmeer

によって再び 14.0 等で増光が検出され(vsnet-alert 4027)、静穏期の光度が 17.0 等であることから超増

光の可能性があり、CCD による連続測光観測が行われた。Uemura et al. (2000)によると、光度曲線上

には superhump(初期の増光幅約 0.5 等)に加え深い食が確認されたことから、IY UMa は矮新星の中で

も比較的珍しい食を持つ SU UMa 型であることが判明した。

Patterson et al. (2000)によると、IY UMa は超増光が検出された後、SU UMa 型に一般的に見られる

common superhump が約 1 週間続き、その周期は減少傾向を示した。その後約 3 日間で軌道運動の位相が

0.58(7)cycle ずれ、一定の周期で変化する late superhump へ移行し、約 10 日間かけて静穏期の光度まで

減光していった。また、Patterson は IY UMa の分光並びに連続測光観測を行い、以下の諸量を得てい

る;

軌道周期 orbP :0.0739091(1)日

superhump 周期 shP :0.07583 日

superhump 周期超過ε :2.6%

歳差周期 precP :2.9 日

主星質量 1M :0.86(11)M

伴星質量 2M :0.12(2)M

質量比q :0.13(2)

軌道傾斜角 i :86.8(1.5)°

距離:190(60)pc

IY UMa の他に深い食を示す SU UMa 型矮新星としては、HT Cas、OY Car、Z Cha、DV UMa、V2051

Oph などがあり、HT Cas、OY Car、Z Cha に関しては長い間研究が進められ、SU UMa 型に見られる

特有の降着円盤の構造や、その時間的進化の解明への大きな寄与となった。

矮新星の光度曲線上に見られる食は、連星系の公転運動によって伴星(赤色矮星)が降着円盤やブラ

イトスポット、白色矮星を隠すことによって現れる減光である。第 1 章でも述べたが、食が起こるた

めには軌道傾斜角(inclination) i が 90°に近いことが重要である。Fig. 3-1 は、成分星の質量がそれぞ

れ 1M 、 2M の連星系の軌道運動を表した図であり、波線の矢印は視線方向を示している。ここで、連

星系の軌道傾斜角は、連星の軌道面における法線と視線方向のなす角度 i (0°< i <90°)として定義さ

れる。

Fig 3Fig 3Fig 3Fig 3----1111 連星系の軌道面と軌道傾斜角の関係。

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一般的に、食は超増光の初期では浅く広く、後半では深く鋭い形状へ変化する。Fig. 3-2 は 2000 年

超増光期における IY UMa の光度曲線を示しており、食の振幅は前半では約 1.3 等であったが後半で

は約 1.8 等と深くなった。このことは、質量降着に伴い降着円盤の外縁部の光度が徐々に減光したか、

あるいは降着円盤自体がその進化のステージにおいて縮小したことを意味している(Uemura et al.

2000)。

IY UMa の減光が進むにつれて、光度曲線上には明瞭な食に加え軌道運動に起因するハンプ(orbital

hump)が現れるようになる(Fig. 3-3)。Patterson et al. (2000)は、この期間におけるブライトスポット

や白色矮星の食の解析により、成分星の質量や連星系の軌道傾斜角、また地球からの距離などの詳細

なパラメータを得た。

Fig. 3Fig. 3Fig. 3Fig. 3----2222 2000 年超増光期における IY UMa の光度曲線(Uemura et al. 2000)。

Fig. 3Fig. 3Fig. 3Fig. 3----3333 IY UMa の orbital hump(Rolfe et al. 2001)。

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Fig. 4Fig. 4Fig. 4Fig. 4----1111 田辺研究室天文台

Fig. Fig. Fig. Fig. 4444----3333 7 階制御室 Fig. 4Fig. 4Fig. 4Fig. 4----2222 観測装置

4444. . . . 観測観測観測観測

4444----1. 1. 1. 1. 観測装置観測装置観測装置観測装置

本研究の観測は、岡山理科大学21号館屋上の田辺研究室天文台(東経133°55′50.87″北緯34°41′

37.56″)において行った(Fig. 4-1)。

観測に使用した装置は以下の通りである。

望遠鏡:Celestron C9

口径 235mm

焦点距離 1480mm F6.3

シュミットカセグレイン式

CCD カメラ:ST-7XE (SBIG 社)

受光面サイズ 6.9×4.6mm

ピクセルサイズ 9×9μm

ピクセル数 765×510pics

フィルター:C, B, V, Ic, Rc,

赤道儀:EM-200 (タカハシ社)

望遠鏡コントローラー:Temma2

CCD 制御ソフト:CCDOPS Ver.5.1

天体導入ソフト:Telescope Tracer2000

CCD、赤道儀、フォーカス合わせなどの制御は 21 号館 7 階の制御室から遠隔で行っている(Fig. 4-3)。

またファインダーには目的星導入用にビデオカメラを取り付け、リモートファインダーとして使用し

ている。

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Fig. 4Fig. 4Fig. 4Fig. 4----4444 IY UMa(R.A.=10h43m56.87s、Dec.=+58d07m32.5s)

のファインディングチャート(D.S.S)

4444----2. 2. 2. 2. 観測方法観測方法観測方法観測方法

①観測準備

まず目的星の位置を確認するための星図、ファ

イ ン デ ィ ン グ チ ャ ー ト を DSS(Digitized Sky

Survey)、AAVSO(American Association Variable

Star Observers)などを用いて作成する(Fig. 4-4)。

実際に使用したのは目的星を中心にそれぞれ 15

×15 分角、30×30 分角の範囲を示したチャート

である。

次に、観測の数時間前から CCD の冷却を行う。

CCD には光が全く当たらない状態でも、暗電流な

どの熱的に発生する電流が生じ、ピクセルごとに

異なるレベルの電化信号が出力され、ダークノイ

ズが画像に表れる。ダークノイズは CCD チップ

を冷却することで軽減することが出来る。この

とき、急激に温度を下げると CCD チップに霜が

付着してしまうため、数時間前から冷却を開始

し、徐々に温度を下げる必要がある。

②フラットフィールドの撮像

次に、薄明時の空に望遠鏡を天頂に向けた状態で、鏡筒の開口部にディフューザーを乗せ、フラッ

トフィールドを撮像する。フラットフィールドは CCD のピクセルごとの感度ムラの補正のために使用

するが、このフレーム自体にもダークノイズが含まれるため、CCDOPS の撮影モードで“dark also ”

を使用して事前にダークフレームを引き算する。ダークノイズの除去とフラットフィールドの補正に

ついて詳しくは第 5 章のデータ処理で説明する。また、フラットフィールドの輝度レベルは適正範囲

内にある必要があり、輝度値が飽和しないように最大値が CCD の輝度特性の直線性が良好な範囲から

外れないように注意する。したがって全ピクセルの最大輝度値がフルレベルの 3 分の 1 から 2 分の 1

になるように露出時間を調節して撮像する。また、レベルが低すぎると良好に補正が出来ないため、

最低でも輝度値はフルレベルの 6 分の 1 から 5 分の 1 以上にする必要がある。今回使用した ST-7XE

はフルレベルが 65536 であるため、35000 前後になるように調節した。

③連続測光観測

CCD の冷却が安定した状態で赤道儀の電源を入れ、制御ソフト Telescope Tracer2000 を立ち上げる。

15′×15′

N

E15′×15′

N

E

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このとき PC の時刻がずれていると望遠鏡が誤作動を起こす原因となるので、インターネット時刻と

同期させる必要がある。

次に鏡筒を天頂に向けた状態で天頂設定を行う。天頂設定を行うことでおおよその天球上での位置

が定まるが、目的星のような暗い星を一度で視野に入れることは難しい。そのためまず明るい天体を

導入し、視野の中心に来るよう調節し位置設定を行った後、目的星の導入を行う。

ファインディングチャートを使用して目的星を導入するとき、視野内に比較星とチェック星が入る

ように調節する。露出時間を変えて何枚か撮像し、目的星とスカイのカウント値が 1000 カウント程

度になるように調節する。次に、CCDOPS の連続測光モード“auto grab”を使用し、決定した露出時

間で連続的に撮像を行う。このとき撮像された画像は自動で保存されていく。

④ダークフレームの撮像

測光が終了するとダークフレームの撮像を行う。CCD のシャッターを閉じた状態でノイズ成分のみ

を撮像する。このとき CCD の冷却温度と露出時間は測光時と同じである。ダークフレームはフラット

フィールドと同様にライトフレームの補正に使用する。

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Table. 4Table. 4Table. 4Table. 4----1111 観測ログ (2009/4/15-28)

Fig. 4Fig. 4Fig. 4Fig. 4----5555 IY UMa の CCD 画像 (2009/4/17)

4444----3. 3. 3. 3. 観測観測観測観測ログログログログ

連続測光観測を行ったのは 2009 年 4 月 15 日から 28 日までの晴れた晩 9 夜である。Fig. 4-5

は例として IY UMa(4/17)の CCD 測光画像を示す。フレーム総数は 3291 枚、フィルターはすべて

Clear で行い、IY UMa の光度変化に応じて露出時間を調節した。観測ログは Table. 4-1 に示す。

HJD Start Duration T exp

(2,454,900+) (hr) (s) Filter Points

37.06332~ 1.68 30 C 254

38.57456~ 4.70 30 C 483

39.58343~ 4.44 30 C 460

40.59523~ 4.10 30 C 418

42.56233~ 4.72 40 C 377

43.56520~ 4.58 40 C 366

44.61493~ 6.29 40 C 485

48.96534~ 2.88 45 C 207

49.97372~ 3.55 45 C 241

V

C1 C2

16.0′×10.7′

V

C1 C2

16.0′×10.7′

N

E

V

C1 C2

16.0′×10.7′

V

C1 C2

16.0′×10.7′

N

E

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5555. . . . データデータデータデータ処理処理処理処理

観測で得られた一連の画像には様々なノイズ成分や、CCD 自体の感度ムラなどが含まれているため、

一次処理によって画像を補正した後、測光を行う。これらの処理には測光ソフト AIP4Win Ver2.3.1 を

使用した。

5555----1. 1. 1. 1. 一次処理一次処理一次処理一次処理

①ダークノイズの除去

CCD は光が当たっていない状態でも半導体で発生し

た熱電子が溜まる性質がある。CCD で天体を撮像すると、

受けた光を光電変換して生じた電子がピクセルに蓄積さ

れ、これが画像成分の信号となる。しかし同時に熱電子

も露出時間に比例して蓄積されるため、暗電流ノイズが

生じてしまう。実際に常温の状態で撮像すると数秒の間

にノイズでフレームが埋め尽くされてしまう。こうした

暗電流ノイズは CCD チップを冷却することで減少させ

ることができる。暗い天体の撮像では、露出時間も長く

なるため暗電流ノイズも多く発生するが、冷却することによってノイズを抑え、天体を鮮明に捉える

ことが可能になる。

観測に使用した ST-7XE はチップの冷却にペルチェ素子を使用している。ペルチェ素子とは、電気

を流すと片面の熱を反対側に移動させることで、片面が冷えて反対側の面が熱くなるという特殊な半

導体素子である。このペルチェ素子による冷却を電子冷却と呼ぶ。ST-7E はペルチェ素子を 2 段に重

ねた 2 段式冷却を行い、外気温から約-40低温に出来る。

また CCD 画像のノイズには暗電流ノイズの他にも、電気ノイズ(読み出しノイズ)やバイアスなどが

含まれている。電気ノイズとは電荷転送中や電荷信号伝送中の増幅、スイッチングによる電気回路か

ら発生する。バイアスとは露出時間が 0 秒でもバックグラウンドのカウント値が 0 にならないように

出力値をわずかに上げることで補正を行うものである。これらの光が当たらなくても存在する輝度情

報をまとめてダークノイズという。

暗電流ノイズはピクセルごとに癖があり、比較的再現性がよい特徴がある。また、読み出しノイズ

やバイアスはピクセルごとに異なる値となり、暗電流ノイズと同様にランダムノイズとして画像に含

まれる。したがって CCD のシャッターを閉じた状態で、ライトフレーム(天体を撮像した画像)と同じ

冷却温度、露出時間で撮像することでダークノイズだけを撮像した「ダークフレーム」を得られる(Fig.

5-1)。ライトフレームからダークフレームを引き算することで、ダークノイズの影響を軽減すること

が出来る。ダークフレームは多数撮像して加算平均することで S/N を高くすることが出来る。本研究

ではダークフレーム 10 枚を加算平均したフレーム(マスターダークフレーム)を用いた。

Fig. 5Fig. 5Fig. 5Fig. 5----1111 ダークフレーム

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②フラットフィールドによる補正

CCD は各ピクセルごとに感度ムラがあり、それを補

正するためにフラットフィールドを撮像する必要があ

る。フラットフィールドの補正は感度ムラだけでなく、

CCD 受光面やフィルターに付着した小さなゴミの影

や、光学系に起因する周辺減光も同時に取り除くこと

が出来る。

フラットフィールドは望遠鏡の開口部にディフュ

ーザーを取り付け、入射光を散乱させることでより均

一な光にして撮像する(Fig. 5-2)。そのとき CCD は観

測時と同じ状態(冷却温度、フィルターなど)で撮像する。本研究では薄明時の空を撮像する方法を用

いている。感度ムラは単純な引き算で補正することは出来ず、各ピクセルごとの輝度値に対する比を

求める必要があるため、ライトフレームをマスターフラットで割るとういう処理を行う。ここでマス

ターフラットとは、撮像した 10 枚のフラットフィールドを正規化したものである。

5555----2. 2. 2. 2. 測光測光測光測光

aperture photometry による差測光を行う。

差測光とは変光星(V)と比較星(C1)の等級差を

求めるもので、同一視野内にある 2 つの星の差を

取るため、大気による吸収差が少ないという利点

がある。また、比較星が変光星でないことの確認

のために、もう一つチェック星(C2)を同時に差測

光する。測光精度を上げるために、比較星は変光

星よりも明るく、色(V-B)の値が近い星を選択する

ようが良い。また、チェック星は C2-C1 の値が測

光精度の目安となるので、変光星と同程度の明る

さの星を選ぶようにする。

aperture photometry とは測光画像から星の明るさを測定する方法であり、星の周りに 3 重の同心円

を重ね、一番内側の環帯(aperture)内部で(星+スカイ)のカウントの積分値を測定し、2 番目の環帯

(inner annulus)と 3 番目の環帯(outer annulus)の間の領域で、スカイのみのカウントの積分値を測定す

る(Fig. 5-3)。AIP4Win ではポグソンの式を元に、星の等級値を以下の式で算出している。

( )Z

tlog52 annulusannulusapertureaperture +

−−=

/nCnC.m

Fig. Fig. Fig. Fig. 5555----3333 AIP4Win 測光画面。(C1:TYC3829-00205-1,

V=12.51,C2:TYC3829-0098-1, V=11.88)

Fig. 5Fig. 5Fig. 5Fig. 5----2222 フラットフィールド

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ここで、 apertureC 、 annulusC はそれぞれ星、スカイの総カウント値であり、 aperturen 、 annulusn はそれぞ

れ星、スカイのピクセル数、 t は露出時間である。また、 Z は任意の等級値を表わしている。等級値

の誤差 mσ は 1.0857/SNR(signal-to-noise ratio)で計算される。したがって算出される等級値は mm σ+

となる。

5555----3. 3. 3. 3. 光度曲線光度曲線光度曲線光度曲線のののの作成作成作成作成

AIP4Win で差測光を行った後、保存したテキストデータを使用して光度曲線を作成する。光

度曲線は縦軸に目的星と比較星の等級差、横軸に時刻を表す。変光星の観測では光度変化のタイ

ムスケールが長期に渡る場合が多いので、時刻は通常ユリウス日(Julian Day)を使用する。

ユリウス日は B.C.4713 年 1 月 1 日の世界時(Universal Time)の正午を起点とし、そこから連続

した通しの日数を表す。また、時刻まで含むユリウス日を表示する場合は小数点を付けて表す。

ここで世界時とは、イギリスのグリニッジを通る本初子午線上での平均太陽時角に 12 時間を加

えたもので表される。我々が普段使用している時刻は日本標準時(Japan Standard Time)と呼ばれ

るもので、世界時を 9 時間進めたものである。

したがって時刻を日本標準時からユリウス日に変換するには、9+12=21 時間の時差があること

を考慮し、観測時間から 21 時間を引く必要がある。ここで、ユリウス日の 1 日の起点は世界時

の 12 時であり、日付より 0.5 日遅れていることに注意する。例えば日本標準時 2009 年 4 月 17

日 20 時 24 分は、グリニッジ平均時(Greenwich mean time)で 2009 年 4 月 16 日 23 時 24 分となり、

ユリウス日は 2454938.975 日となる。グリニッジ平均時とは通常のグリニッジ時刻(世界時)から

12 時間遅れた時刻体系である。

また、地球は太陽の周りを公転しているため、地球と目的天体の距離は一年周期で変化し、そ

れに伴い天体からの光が地球に届く時間も変化する。解析の段階ではこの地球の公転による影響、

つまり光の到達時間のずれを補正した時刻を用いる必要がある。比較的周期の短い激変星の周期

解析では、一般的に日心ユリウス日(Heliocentric Julian Day)と呼ばれる、太陽を中心とした時刻

に補正したユリウス日を使用する。この補正を日心補正と呼ぶ。

日毎の光度曲線、観測期間に渡る全体の光度曲線、また、superhump の周期性を分かりやすく

するために横軸を phase(位相)に変換した光度曲線を作成する。phase については次章で PDM に

よって superhump 周期を求めた後、食を取り除いた日毎の光度曲線を重ね合わせ平均化する。極

大の観測時刻と元期(最初に観測された極大時刻)との差を superhump 周期で割り、その少数値が

phase となる。phase は 0 から 1 までの値で表されるが、グラフを見やすくするために-0.5 から

1.5 の範囲で表している。phase は主に周期性の高い変動を示す天体(食変光星など)の光度曲線と

しても用いられる。

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6.6.6.6. 光度曲線光度曲線光度曲線光度曲線のののの解析解析解析解析

周期解析は、測光の結果明瞭な光度曲線が得られた 4/17,18,19,21,22,23 の観測データについて行っ

た。4/15 の測光データについては、観測時間が 1.68 時間と短く、superhump 周期 1.82 時間(Patterson

et al. 2000)に対して不十分であるため、解析を行わなかった。また、4/27,28 については光度曲線上に

superhump が確認できず、IY UMa の減光が進み、S/N が悪くデータのばらつきが大きかったため解

析を行わなかった。

6666----1111.... 軌道周期軌道周期軌道周期軌道周期のののの算出算出算出算出

食は連星系の公転によって起こる減光なので、軌道周期と食が起こる周期は等しい。したがって軌

道周期を求めるために、光度曲線から食の極小時刻を求める必要がある。極小時刻の算出には KW 法

(Kwee and Van Woerden method)を用いた(Kwee & Woerden, 1956)。

KW 法ではまず、等しい時間間隔 t∆ で計測された光度曲線において、食の極小時刻から左右対称に

等間隔の時刻の区間を 1T とする。 1T の区間を表す軸をそれぞれ( tT ∆+ 2/11 )、( tT ∆− 2/11 )とし、そ

の区間における等級値の差 km∆ を求め( nk ...2,1= )、その 2 乗和を算出する。これは以下のような式

で表される。

∑=

∆≡n

kkmsT

1

21 )(

)( 1Ts は対称軸を連続的にシフトさせることで計

算され、 nsT が最小となる値が極小時刻となる。

ここで、関数 )(Ts は以下の 2 次式で近似され、

cbTaTTs ++= 2)(

最小値の座標はそれぞれ次のようになる。

(a

b

2− ,

a

bc

4

2

− )

したがって極小時刻の平均誤差は次のように

表される。

)12/1(4

42

22

0 −−=

Na

bacTσ

KW 法は食変光星の解析などに一般的に用いられる方法である。今回の極小時刻の算出には、KW 法

を用いた解析ソフト AVE(Analisis de Variabilidad Estelar)Ver. 2.51 を使用した。Fig. 6-1 はその解析画

面の一例である。AVE は食を含む左右対称の区間を指定すると、自動で極小時刻と誤差の算出を行う。

Fig. 6Fig. 6Fig. 6Fig. 6----1 1 1 1 AVE による解析画面の例(2009/4/17 の光度曲線)。

3 つの矢印がそれぞれの極小時刻を示している。

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次に最初の観測で得られた食の極小時刻を元期 0E (HJD)として、日毎に観測された食の極小時刻か

ら元期との差をとったものを報告されている IY UMa の軌道周期 orbP で割ると、軌道の周期回数

E (orbital cycles)が求まる。E は整数であり、E と食の極小時刻(HJD)とのグラフに回帰直線をフィッ

ティングさせることで、予報式を算出する。極小の予報式は以下のように表される。

EPEmin ×+= 0

ここで直線の傾きを軌道周期として求めることが出来る。

6666----2. superhump2. superhump2. superhump2. superhump 周期周期周期周期のののの算出算出算出算出

得られた全体の光度曲線から PDM(Phase Dispersion Minimization)を使用して superhump の周期の

算出を行う。また、光度曲線に直線的トレンド(右上がり、または右下がりの傾向)が含まれる場合、

周期を算出する前にこれを取り除く必要がある。日毎の光度曲線は目的星の減光にしたがって、全体

的に右に下がる傾向がある。したがって光度曲線に最小二乗法による回帰直線を当てはめ、トレンド

を除去する。

PDMはフーリエが不得意とする非正弦波や、切れ目のある時系列データに有効であり、矮新星の周

期解析に一般的に使用される解析ソフトである。

PDM ではまず光度曲線に試験周期を当てはめ、この試験周期の間隔で光度曲線を分割する。この分

割された光度曲線の区間内で、平均の等級値からの偏差を計算し、さらに標準偏差を求める。標準偏

差 2iσ は、

1

)( 22

−−∑

=σN

xx j

と表される。ここで N は分割された区間内におけるデータ数、 jx は j 番目の等級値、 x は区間内の

平均の等級値を表している。この標準偏差は分割されたすべての区間について計算され、その和 theta

が求められる。試験周期を変えて同様に計算し、theta が最小となる試験周期が真の周期として求めら

れる。

さらに theta の最小値を求めるために、グラフの最小値を含む前後の区間に最小二乗法による 2 次

曲線の当てはめを行う。その二次曲線が最小値となる横軸の値を真の周期とする。その際、この二次

曲線と、実際に PDM により得られたグラフとの間の偏差から、superhump の周期の誤差も計算する。

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6666----3. O3. O3. O3. O----CCCC 図図図図のののの作成作成作成作成

軌道周期と superhump 周期の変化を調べるために、それぞれの O-C 図を作成する。O は観測値

(Observation)で、C は理論値(Calculation)であり、O-C は観測値と理論値の差をとることである。

食の予報式と同様に、superhump の極大時刻の予報式を作成する。初期の superhump 周期が変化し

ないと仮定することで、外挿した極大時刻 C を求めることが出来る。予報式は以下のように表される。

EPEC ×+= 0

ここで 0E は元期(最初に観測されたsuperhumpの極大時刻)、 P はsuperhump周期、 E は周期回数

(superhump cycles)である。

プロットしたO-Cに2次曲線をフィッティングさせ、その曲線の傾きが周期に相当する。周期が時間

と共に一定の割合で減少または増加する場合、O-C は放物線となる。曲線が上に凸ならば観測期間に

おけるsuperhump周期は減少傾向であり、下に凸ならば増加傾向を表す。周期変化がない場合、O-C の

グラフは傾きがゼロの直線になる。また傾きを持った直線の場合、一定の周期で変化しているか、予

報に用いた要素の周期と実際の周期の誤差が加算されている場合がある。また周期が不連続的に変化

するとO-C も同様に不連続に変化し、連星系に劇的な変化が起こったこと表している。

Fig. 6-2 は 2000 年 superoutburst 期に

おける IY UMa の superhump 周期の変化

を表した O-C 図である。曲線で示された

初期の superhump 周期は減少傾向を示

している。その後 O-C が約 0.5cycle 増加

し、その前の状態に対して phase が逆転

しているのが分かる。後半の superhump

の周期は傾いた直線によって示されるよ

うに、前半の superhump 周期よりも短く

なっていくことが分かる。

Fig. 6Fig. 6Fig. 6Fig. 6----2222 2000 年 superoutburst 期における IY UMa の O-C 図

(Patterson et al. 2000)

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7.7.7.7. 結果結果結果結果

以下に測光観測で得られた光度曲線と、解析の結果算出された superhump 周期及び軌道周期、それ

ぞれの O-C 図を示す。

7777----1. 1. 1. 1. 光度曲線光度曲線光度曲線光度曲線

IY UMa の superoutburst 期間(4/15,17,18,19,21,22,23,27,28)における全体の光度曲線を Fig. 7-1 に示

す。横軸が日心ユリウス日(HJD)、縦軸は相対等級を表している。IY UMa は観測を開始してから

0.15mag/day で減光していった。superhump が観測されたのは 4/23 までであり、4/28.612(UT)にはお

よそ 16.3 等と IYUMa の減光が進み、S/N が悪く測光が難しくなったため観測を終了した。

次の Fig.7-2 から Fig.7-7 に、明瞭な superhump と食が確認された 4/17,18,19,21,22,23 の日毎の光

度曲線を示す。縦軸のスケールはいずれも 3.0 等で統一している。軌道周期よりも superhump 周期は

数%長く観測されることから、superhump のプロファイルの中を食が少ずつ移動していく様子が分か

る。食は IY UMa の減光が進むにつれて、浅く広い形状から深く鋭い形状に変化していった。

Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----1111 全体の光度曲線(4/15,17,18,19,21,22,23,27,28)。

IY UMa Lightcurve 2009/04/15-280

1

2

3

4

5

6

7

35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55HJD 2454900+

rela

tive

mag

nitude

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Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----2222 2009/4/17

Fig. Fig. Fig. Fig. 7777----3333 2009/4/18

Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----4444 2009/4/19

IY UMa 2009/04/191.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

40.58 40.63 40.68 40.73 40.78HJD 2454900+

⊿m

ag

IY UMa 2009/04/180.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

39.57 39.62 39.67 39.72 39.77HJD 2454900+

⊿m

ag

IY UMa 2009/04/171.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

38.57 38.62 38.67 38.72 38.77HJD 2454900+

⊿m

ag

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Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----5555 2009/4/21

Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----6666 2009/4/22

Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----7777 2009/4/23

IY UMa 2009/04/211.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

42.55 42.60 42.65 42.70 42.75HJD 2454900+

⊿m

ag

IY UMa 2009/04/231.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

44.6 44.65 44.7 44.75 44.8 44.85 44.9HJD 2454900+

⊿m

ag

IY UMa 2009/04/221.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

43.55 43.60 43.65 43.70 43.75HJD 2454900+

⊿m

ag

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Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----8888 食を取り除いた日毎の平均光度曲線。(4/18 -1.0mag, /19 -2.0mag, /21 -3.0mag,

/22 -4.0mag, /23 -5.0mag)

Fig. 7-8 は superhump の周期性を分かりやすくするために、食を取り除いた日毎の光度曲線

(4/17,18,19,21,22,23)を、PDM で算出した superhump 周期 shP で重ね合わせた平均の光度曲線である。

横軸は位相(Phase)、縦軸は相対等級である。グラフを見やすくするために日毎に一定の等級値を加算

している。superhump の振幅は 4/17 が 0.65 等程度であるのに対し、4/23 には 0.36 等程度と徐々に

減少していった。

-5.5

-4.5

-3.5

-2.5

-1.5

-0.5

0.5

-0.5 0 0.5 1 1.5

Phase

Rel

ative

Magnitude

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Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----10101010 superhump cycle と食の極小時刻(HJD)の

回帰直線のフィッティング。

7777----2222.... ssssuperhumpuperhumpuperhumpuperhump 周期周期周期周期とととと軌道周期軌道周期軌道周期軌道周期

IY UMaの (4/17,18,19,21,22,23)にお

ける PDM の出力結果は Fig.7-9 のよう

になった。横軸が周期(日)、縦軸が theta

である。superhump 周期 shP は theta

が最小値となる x 座標で見積もること

が出来る。ここで、極小付近のデータ

に最小 2 乗法による 2 次曲線のフィッ

ティングを行い、その係数から極小値

を求めた。その結果 shP は 0.076136(9)

日となった。

次に、AVE で日毎の光度曲線から食の

極小時刻をそれぞれ求めた後、食の予報

式を作成した。ここで、4/17 の最初の

食の極小時刻を元期とする。日毎の光

度曲線の食の極小時刻と元期との差を取

ったものを、報告されている IY UMa の

軌道周期 0.073909 日(Kato et al. 2009)で

割ることで、軌道の周期回数 E (orbital

cycles)が分かる。E は整数であり、E と

食の極小時刻(HJD)のグラフに回帰直線

をフィッティングさせると、以下のよう

な予報式が導かれた(Fig. 7-10)。

Ε..HJD ×+=− )3(0739180)2(5818382454900(min)

予報式の傾きから、軌道周期 orbP は 0.073918(3)日という結果が得られた。ここで、軌道周期に対す

る superhump 周期超過 orborbsh /PPP )( −=ε は 3.0±0.5%という結果となった。

また orbP と shP から、beat の式を用いて歳差運動の周期 precP を計算すると、2.5368(4)日という結

果となった。

Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----9999 PDM 出力結果

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

0.045 0.055 0.065 0.075 0.085 0.095 0.105 0.115Period (day)

The

ta

shP

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

0.045 0.055 0.065 0.075 0.085 0.095 0.105 0.115Period (day)

The

ta

shP

38.00

39.00

40.00

41.00

42.00

43.00

44.00

45.00

46.00

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

E (orbital cycles)

HJD

2454

900+

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Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----12121212 IY UMa の 2009 年 superoutburst 期における superhump 周期の O-C 図

7777----3. O3. O3. O3. O----CCCC 図図図図

食の予報式と同様に、日毎の光度曲線

の superhump の極大時刻と元期との差

を取ったものを、superhump 周期 shP で

割 る こ と で 周 期 回 数 E (superhump

cycles)が分かる。ここで、4/17 の最初の

superhump の極大時刻を元期とした。ま

た、superhump の極大時刻は、極大を含

む区間の増光時と減光時に多項式のフィ

ッティングを行い、秒の精度(510−day)

で求まるように極大の時刻を算出した。

E と極大時刻とのグラフに回帰直線

をフィッティングさせると(Fig. 7-11)、

以下のような予報式が導かれた。

EHJD ×+=− )38(076092.0)19(6089.382454900(max)

得られた予報式を元に極大の予報値(C)を計算し、O-C 図を作成すると Fig. 7-12 のようになった。

Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----11111111 superhump cycle と極大時刻(HJD)の回帰直線の

フィッティング。

38.00

39.00

40.00

41.00

42.00

43.00

44.00

45.00

46.00

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

E (superhump cycles)H

JD24

5490

0+

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

-10 10 30 50 70 90

E (superhump cycles)

O-C

(cy

cles

)

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Fig. 7Fig. 7Fig. 7Fig. 7----11113333 IY UMa の 2009 年 superoutburst 期における軌道周期の O-C 図

同様に、食の予報式を元に軌道周期の O-C 図を作成すると、Fig. 7-13 のようになった。

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

-10 10 30 50 70 90

E (orbital cycles)

O-C

(cy

cles

)

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8.8.8.8. 考察考察考察考察

得られた superhump 周期 0.076136(9)日は、2000 年超増光期の 0.07583 日(Patterson et al. 2000)と

比較すると、周期が長くなっていることが分かる。また軌道周期 0.073918(3)日は、報告されている

0.073909 日と比較するとやや増加しており、有意な値のように思えるが、その増加の速度は 0.08 秒/

年であることからほとんど変化はないといえる。また、観測期間における軌道周期の変化については

O-C の傾きがほとんど 0 の直線を示したことから、同様に周期変化はないと考えられる。さらに、軌

道周期と superhump 周期から superhump 周期超過は 3.0±0.5%と見積もられ、これらの値は平均的な

SU UMa 型矮新星の値を示している。

Kato et al. (2009)によると、superhump には 3 段階の進化のステージがあり、それぞれ以下のよう

な特徴を示すことが分かっている。

(A)early stage;初期の進化のステージであり、光度曲線中に周期が一定で長い周期の early superhump

が見られる。

(B)middle stage;中間的なステージであり、common superhump が見られる。系によって増加傾向ま

たは減少傾向を示す。

(C)late stage;進化の最終ステージであり、late superhump が見られる。周期変化が一定となり、短い

周期の late superhump が見られる。

また、IY UMa は 2000 年の超増光期において、超増光が検出された後約 1 週間 common superhump

が続き、その後 O-C が約 3 日間の内に 0.58(7)cycle ずれ、位相の逆転が起こった。その後は一定の周

期で変化するlate superhumpへと移行した(Patterson et al. 2000)。我々の観測から得られたO-Cでは、

50cycle の辺りで superhump 周期は位相が変化し、late superhump に移行したように見える。したが

って、位相の変化が確認された 4/22 を superhump の進化ステージの転換点と考え、周期が一定とな

る以前の 4/17,18,19 において 2 次曲線のフィッティングを行い(Fig. 8-1)、その結果得られた 2 次式は

以下のようになった。

)(−×)(−×=− − 505110011210(3.4)011 32-5 ..E..E.CO

上式の 2 次の項を時間微分すると、

周期変化率 dotP を求めることが出来

る。この値は以下のようになった。

3109092 −×)(=≡ ../PPP shshdot&

したがって middle stage におけ

る superhump 周期変化率は正とな

り、superhump 周期が増加している

ことが分かる。 Fig. 8Fig. 8Fig. 8Fig. 8----1111 2009 年超増光期の IY UMa の O-C 図のフィッティング。

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

-10 10 30 50 70 90

E (superhump cycles)

O-C

(cy

cles

)

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

-10 10 30 50 70 90

E (superhump cycles)

O-C

(cy

cles

)

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我々の解析結果との比較を行うために、Table. 8-1 に IY UMa の 2000 年から 2009 年における

superouburst 期の記録と、Fig. 8-2 に 2009 年 superoutburst 期における O-C を示す。データは両方と

も Kato et al (2000)によるものである。

Table. 8-1 より、middle stage における IY UMa の周期変化率は51021 −×− . であり、負を示したこと

が分かっている。

一般に SU UMa 型矮新星では、superhump 周期は超増光期間において減少傾向を示すことが知られ

ている。それは白色矮星への質量降着が進み、楕円円盤の収縮に伴い歳差運動の周期が長くなるため

だと考えられている。しかし、我々の観測からは middle stage における周期変化は増加傾向を示した。

今回の IY UMa の観測開始は天候により 14 日の超増光の報告から 3 日後であり、すでに superhump

が発生した後であった。元期は最初の観測の superhump の極大時刻で決定されるため、O-C は観測の

開始日、観測期間によってその形状は異なり、曲線のフィットの仕方も変わってくる。観測で得られ

た元期以前の O-C を考慮した曲線のフィットを行うことで、superoutburst 時の全体的な superhunp

周期の変動と、降着円盤の進化の関係が分かる。したがって矮新星の観測は superoubust の初期段階

の観測が非常に重要であることが言える。

-0.05

-0.04

-0.03

-0.02

-0.01

0.00

0.01

0.02

0.03

-10 40 90 140 190

E(superhump cycles)

O-C

(d)

Fig. 8Fig. 8Fig. 8Fig. 8----2222 2009 年超増光期の IY UMa の O-C 図(Kato et al. (2000)によるデータをもとに作成)。

Table. 8Table. 8Table. 8Table. 8----1111 IY UMa の superoutburst 期の記録(Kato et al. 2000 より引用、一部改変)

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一方、IY UMa は 2002、2004、2006 年超増光期において、いずれも superhump 周期変化率は正を

示している。近年の矮新星の観測において、SU UMa 型の中でも superoutburst 時に superhump 周期

が増加傾向を示す系が発見されるようになってきている(Imada et al. 2005)。また、superhump 周期が

0.08 日以下の矮新星の多くが、middle stage において superhump 周期が増加傾向を示すことも観測的

に分かってきており(Kato et al. 2009)、IY UMa の superhump 周期が 0.076136(9)日は矛盾しないよう

に思える。

これらの観測的な事実から、SU UMa 型矮新星の superhump 周期の変化が、降着円盤の半径の大き

さだけに関係するという今日までの解釈では説明が難しい。したがって、今後も矮新星の観測を継続

し、観測結果から superhump 周期変化を起こす原因について、他の解釈を模索する必要がある。

9. 9. 9. 9. 結論結論結論結論とととと今後今後今後今後のののの課題課題課題課題

以上の結果をまとめると、次のようになる;

(1) 2009 年 superoutburst 期における IY UMa の光度曲線解析から、superhump 周期は 0.076136(9)

日、軌道周期は 0.073918(3)日、歳差周期 2.5368(4)日が得られ、superhump 周期超過は 3.0±0.5%と

見積もられた。これらの値は平均的な SU UMa 型矮新星の値を示している。

(2) superhump の O-C 図から、middle stage における superhump の周期変化率は -3109(0.9)2 ×. cycle

count-1 で増加傾向を示し、我々のデータからは SU UMa 型に特徴的な周期の減少は見られなかった。

(4) IY UMa は過去の超増光(2002,2004,2006,2007)において middle stage で増加傾向を示している。Kato

et al. (2009)によると、superhump 周期が 0.08 日以下の矮新星の多くが、middle stage において

superhump 周期が増加傾向を示すことが観測的に示され、IY UMa の superhump 周期は 0.076136(9)

日でその範囲内であり、矛盾しないように思われる。

(3) 今回の我々の IY UMa の観測開始は、天候の関係で超増光の検出から 3 日後であったため、結果で

示したO-Cの元期以前のVSNETに投稿されている他の観測者のデータを加えてフィッティングを

行う必要がある。

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謝辞

田邉健茲先生には、大学に入学してから大学院卒業までの 6 年間に渡り、天文学や観測の方法、ま

た論文や発表の添削など、多くのご指導と助言をいただき、心から感謝いたしております。大学に入

学する以前から天文学に興味を持ち、この研究室を希望していた私にとって、特にこの 3 年間で学ん

だ知識と技術は貴重なものとなりました。物理学実験の S.A、T.A を経験し、必要とされる知識の多さ

と、教える側に立つ難しさを知りました。しかし、田邉先生の熱心なご指導によって学んだことは非

常に多く、自分自身の成長に繋がったと思います。そして、同期の今村和義君には、観測の手法やデ

ータ処理、解析など、様々な場面で手助けしてもらい、本当に感謝しています。学部生の頃から共に

天文学を学び、教え合い、協力し合ったことで、この 3 年間を乗り越えることが出来たのだと思いま

す。また、国弘憲司君、能勢樹葉さん、高木良輔君には、短い期間ではありましたが、ゼミや観測、

研究会、学会、また学科のイベントなどを通して、共に学び合い、励ましあい、充実した時間を過ご

すことが出来ました。皆様本当にありがとうございました。

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