29.n.l材 のgp及 びcpの 性質* - jst

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N.L材 のGP及 びCPの 性 質 549 ある。 1) Sankey, C.A.etal.,Pulp PaperMag.Can.52 (3),136~46(1951) 2) Mason,S.G.etal.,Pulp Paper Mag.Can.55 (9),97~108(1954) 3) Casper, R.R. Tappi40(5),174~7A(1957) 4) Mason, S.G.,etal.,Pulp PaperMag.Can.58 (10),153(1957) 5) Hock,C。W.,Tappi, 37,427~30(1954) 6) Archibald,R.S.,J.Boston Soc. Civil Eng.37, 49~116(1950) 7) Seaman,W.,Sewageand Ind. Wastes 28(3), 296~305(1956) 8) Brunton,D.C,Pulp PaperMag.Can .54,225 (Conv.1953) 9) Rediske,J.H.,Southern Pulp PaperMfr.16 (1)473~7(1953) 10)Sadtler,J.D.and Borofsky,H.,Tappi 38(8), 494~7(1955) 11)Indian Pulp and PaperCo.,Indian Pulpand Paper7(10),473~7(1953) 12)Feamside,K.,World's PaperTmde Rev.135 (3),148,150,152(1951) 13)今 村,化 学 技 術2(11),40~2(1958) 14)今 村 他,日 本 化 学 会 第12年 会 講 演(1959) 29.N.L材 のGP及 びCPの 性 質* 一** (1)緒 一 口に木 材 パ ル プ と 言 って も 最 近 で はN及 びL材 を原 料 と して,GPか らCPに 亘 って各 種 の パ ル プが 生 産 せ られ 非常 に複 雑 化 して い る。 こ こでは まず,製 紙 用 木材 パル プ の分 類 を行 い,次 に 主 要N・L材 の 性 質 を 比較 した後,各 種 パ ル プの 性 質 の概 要 を述 べ る こ ととした。 (II)木材 パ ル プの 分 類 最 近 の紙 パル プ技 術 の 進 歩は 目覚 しい ものが あ り, L材 利 用,高 歩 留 パル プの製 造 と言 う大 き な基 本線 に 副 って次 々 と新 しい パル プ化 法 が 発 展 し,非 常 に多 種 類 の パ ル プが 製造 され て い る。 従 って,木 材 パ ル プを GP,SP,KPに 分 け て事 足 りて い た 時代 は 既 に過 ぎ去 り,高歩 留 パ ル プ,SCP,CGP等々 の新 顔 が 登場 し, 今後更に新しいパルプが増える傾向にある。パルプの 種 類 の増 加 と共 に,相 互 の 区別 が 不 明 瞭 に成 って来 て い る の で混 乱 を避 け るた め,ま ず初 め に 一 応 ア メ リカ, そ の 他 の例 に準 じ て主 要 な木 材 パル プの 製造 方法 に よ る分 類 を 行 うと第1表 に示 す 如 くで あ る。 *原 稿受 付34 .5.23 **十 条 製 紙K .K.研究所 第1表 木材 ルプ の分 昭 和34年7月 123

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N.L材 のGP及 びCPの 性質549

あ る 。

参 考 文 献

1) Sankey, C.A. etal.,Pulp Paper Mag.Can.52

(3),136~46(1951)

2) Mason,S.G.etal.,Pulp Paper Mag.Can.55

(9),97~108(1954)

3) Casper, R.R. Tappi 40(5),174~7A(1957)

4) Mason, S.G., et al.,Pulp Paper Mag.Can.58

(10),153(1957)

5) Hock,C。W.,Tappi, 37,427~30(1954)

6) Archibald,R.S.,J.Boston Soc. Civil Eng.37,

49~116(1950)

7) Seaman,W.,Sewage and Ind. Wastes 28(3),

296~305(1956)

8) Brunton,D.C,Pulp Paper Mag.Can .54,225

(Conv.1953)

9) Rediske,J.H.,Southern Pulp Paper Mfr.16

(1)473~7(1953)

10) Sadtler,J.D.and Borofsky,H.,Tappi 38(8),

494~7(1955)

11) Indian Pulp and Paper Co.,Indian Pulp and

Paper 7(10),473~7(1953)

12) Feamside,K.,World's Paper Tmde Rev.135

(3),148,150,152(1951)

13) 今 村,化 学 技 術2(11),40~2(1958)

14) 今 村 他,日 本 化 学 会 第12年 会 講 演(1959)

29.N.L材 のGP及 びCPの 性 質*

奥 杏 一**

(1)緒 言

一 口に木材パルプ と 言って も最近ではN及 びL材

を原料 として,GPか らCPに 亘 って各種のパルプが

生産せ られ非常 に複雑化 している。 ここでは まず,製

紙用木材 パルプの分類 を行い,次 に主要N・L材 の性

質を比較 した後,各 種パルプの性質の概要を述べ るこ

ととした。

(II)木 材 パ ル プの 分 類

最近の紙 パル プ技術の進歩は 目覚 しい ものがあ り,

L材 利用,高 歩留パル プの製造 と言 う大 きな基本線に

副 って次 々 と新 しいパルプ化法が発展 し,非 常に多種

類のパルプが製造 されている。従 って,木 材パルプを

GP,SP,KPに 分けて事 足 りていた時代は既に過 ぎ去

り,高 歩留パルプ,SCP,CGP等 々の新顔が登場 し,

今後更に新 しいパルプが増える傾向にある。パルプの

種類の増加 と共に,相 互の区別が不明瞭に成 って来て

いるので混乱を避け るため,ま ず初めに一応アメ リカ,

その他の例に準 じて主要な木材パル プの製造 方法に よ

る分類を行 うと第1表 に示す如 くであ る。*原 稿受付34 .5.23

**十 条製紙K .K.研 究所

第1表  主 要 木 材 パ ル プ の 分 類

昭 和34年7月 123

550奥 杏 一

(III)主 要 パ ル プ 原 木 の 性 状

パルプの性質は パル プ化方法に よって決 ることは勿

論であるが,同 一 パル プ化法において も原木の種類に

よって大いに異なる。特 にL材 においてはその種類が

広範多岐であ り,か つ,そ の性状が大幅に相違 してい

るため,原 木 を考慮に入れずにパルプ品質を述べ るこ

とは出来ない。我国の主要パルプ原木 の形態的,物 理

的,化 学的性質を見 ると第2表 の如 くであ る。

N材 は90%以 上の仮導管 と,10%以 下の射 出髄細

胞及び柔軟細胞か ら構成 され ているのに対 して,L材

は一般に60~80%の 木繊維 と,10~30%の 射出髄細

胞及び柔軟細胞,10%の 絞孔導管か ら成 っている。(椈

は特に導管 が多 く,木 繊維が少ない)。 一般的に言 っ

て,夾 雑細胞の多い原木か らのパルプは紙力,ピ ック

が弱 く,塵 が多 く,品 質が劣 る傾 向を示す。繊維長は

紙力の決定的要素 とは考え られないが,引 裂強 さ,耐

折強 さ,湿 紙強度等 とは関連が深いので繊維長がN材

の1/2以 下程度のL材 パルプはこれ等の性質 は 劣 る。

形態比の大 きな細 長い もの程,繊 維の絡合性が良 く,

紙の強度が高い。繊維膜の厚い ものは叩解が難 し く,

嵩高で不透 明な紙質を与え,紙 力は低い。樺 は他 のL

材に比べて繊維が細長 く,膜 厚 も薄 く,髄 線も少ない

ので緊 った,紙 力の高い パルプを作る。

パルプの化学 的組成 はパルプ化法,漂 白法等に よっ

ても異なるが,原 木の化学組成に よる処が多 く,紙 の

性質に大 きな影響を及ぼす。L材 はヘ ミセル ローズの

含有量 が多い ので全般的にL材 パル プはヘ ミセル ロー

ズ含有量が多 く,従 って膨潤 し易 く,叩 解によ って粘

状叩解 とな り,緊 度の高い紙質 となる傾向がある。又

パル プは乾燥 によって角質化す る性質が強い。

(IV)各 種 パ ル プ の 性 質

1.GP

GPは 機械的に繊維の結束を離解 してパル プとした

もので,歩 留が90~95%位 であるか ら原木 の水又は温

水可溶成分が僅かに除去せ られるのみで,木 材非繊維

分を殆ん どそのまま含 んでいるため原木の性質が大 き

く現われ る。 リグニンとヘ ミセル ローズ との結合が残

っているので,結 束が多 く,繊 維は比較的短細かつ硬

直で,絡 合性に乏しく,強 度が低い。又,リ グニ ン含

有量 が多いため褪色 し易い欠点がある。しか し,不 透

明度が高 く,嵩 が高 く,紙 層形成性 も良 く,弾 性 もあ

り,イ ンクの吸収 も優れているので印刷適性は良好で

第2表  日本産主要パルプ原木 の性質

註1.繊 維幅平均は右田伸彦 「パルプ及び製紙工業実験法」より引用。2.そ の他の数値は 「木材工業」9~11(1954~56)よ り引用。

3.形 態比は繊維長平均及び繊維幅平均より計算した。

124 紙パ技協誌 第13巻 第100号

N.L材 のGP及 びCPの 性質551

ある。

GPの 性質は原木,砕 木機,ス トーンの性状,ス ト

ー ン周速,磨 砕圧力,磨 砕温度,磨 砕濃度等の複雑 な

諸 因子 の影響があるため,比 較的その研究が遅れてい

たが,最 近,Klemm,Brecht等 の熱心な研究に よっ

て大いに進み,GPの 品質は主 としてfiberとfineの

性状 と,そ れ らの配合状態に よって決 ると言われ てい

る。

GPは リグニ ン含有量が多いので完全漂白す ること

は難 しいが,ハ イ ドロサル ファイ ト塩,過 酸化物,晒

粉等 によって比較的容易に半晒され る。

米 国のForest Products Labolatoryの 試験に よる

各種N・L材 のGPの 性質を第3表 に示 した。フ リー

ネスが高 く,強 度表示 も異なるが,比 較値 として これ

を見る と,松 はスプルースに比べて長繊維分が少な く,

微 細繊維 が多 く,強 度がやや劣 ることが認め られるが,

我 国の赤松GPも 北洋材GPに 比較す ると,繊 維 が

太 く短 く,か つフ ィブ リル化が少ないので,紙 力が低

く,白 色度 も劣る傾向があ る。L材GPは 全般に繊維

が短小 なるため紙力が低 く,好 ま しくないが,白 楊,

樺等では強度はN材GPよ りやや弱い程度で,白 色

度 も良好でかつ軟 く,嵩 高な特徴があ り,イ タ リー,

その他で工業生産せ られ,我 国で も若干製造 され てい

る。なお,濠 州ではユーカ リのGPを 生産 してお り,

更に これをアル カリ処理す ることに よりGP中 の着色

成分及びヘ ミセル ローズの一部を除去 して,白 色度及

び強度が向上す ることを報告 している。我国のL材GP

の場 合はアルカ リ処理で何れ も白色度が低下す る。

2.CGP

(a)丸 太法CGP

GP原 木を水蒸煮或いは水蒸気処理 した後,磨 砕 し

てパルプ とする所謂,褐 色GPは 可成 り昔か ら行なわ

れ て来 たが,1954年,ニ ューヨー ク州立大学の研 究結

果 に基 いて,Great Northern Paper Co.,が 予 め薬 品

(Na2SO3)処 理 を行なったL材 をグラインダーで磨砕

して,特 殊 のGP即 ちCGPを 大規模に生産す るに至

って丸太法CGPは 世界の注 目を浴びた。 その後,我

国において も2,3社 生産を始めた。

丸太法CGPは 主 としてL材 を原料 として歩留は85

~90%位 で,普通 のN材GPに 比べて微細繊維が少な

く,150メ ッシュ通過分は20~30%でN・GPの 約1/2,

フ リーネスは200~300(c.s。)程 度であ る。強度は良

好で,破 裂 強 さ,引 張強 さはN・SPに 近 く,引 裂強

さはGPとSPの 中間位である。白色度は原木,蒸 煮

条件等に もよるが,樺,楓 白楊等では50%位 でN・

GPに 近 く,未 晒での使用も可能である。椈,楢,椎

等では40~45%程 度或いは更 に低 く,未 晒のままで の

使用には問題 がある。 しか し,晒 粉又は過酸化物に よ

って比較的容易に,白 色度60~65%に 達する。 丸太

CGPはN・GPに 較べてシー トの密度が大 きく,不 透

明度が低 い嫌 いが ある。

(b)チ ップ法CGP

丸太CGPの 場合には,丸 太のま ま軽度の化学処理

を行 うために,薬 液の浸透性 の点にや や問題があ り,

品質的に もバ ラツキが考え られ る。 これに対 して,チ

ップを軽度 の薬品処理 した後,レ ファイナー,そ の他

の機械処理に よってパルプ化する所謂,チ ップ法CGP

が最近急激に増加 している。使用す る薬品には種々の

ものが考え られ るが,現 在工業的に行なわれ ているチ

ップ法CGPは 中性亜硫曹法(Na2SO3)と コール ドソ

ーダ法(NaOH)で あ る。

中性亜硫曹法チ ップCGPは 主にBauer Brother

Co.,の研 究に よるもので,我 国では十条製紙で工業化

してい る。 このパル プは超高歩留NSCPで あるか ら,

化学処理 条件を強 くして歩留を下げて行 くと,NSCP

の性質に近づ いて 来 る。 一般に,品 質的には 丸太法

CGPよ りは均質であ り,強 度 も更に高い。 未晒 白色

度及び漂 白性は丸太法CGPの 場合 と大差ない。丸太

法CGPよ り若干,不 透明度が,低 く,バ リ付 く傾向

があ る。

コール ドソーダパルプ(CAP)はForest Products

LabolatoryのBrown等 の研究によるもので,最 近

各国において相次いで工業化 されてお り,我 国でも大

昭和製紙,東 北 パルプ等で操業 中であ る。N材 も使用

されるが,一 般にL材 を原料 とす る。 こ の 場合 の

NaOHは 脱 リグニン剤 と言 うよ りは 軟化剤 とも 言 う

べきもので,リ グニ ン,セ ル ローズの除去は殆 んどな

く,少 量のヘ ミセルローズが溶 出され るだけである。

NaOH処 理の条件を強化 して,歩 留を 下げるに 従 っ

て得 られるCAPの 未晒白度色は低 下 し,強 度は向上

し,漂 白性は悪 くなる。樹種に ようて可成 りの相違が

第3表  N・L材GP比 較表

昭 和34年7月 125

552 奥 杏 一 で

あるが,一 般雑木のCAPは フーネス150~200(c.s)

程度で赤松GP程 度 の強度を有し,シ ー トの密度が大

き く,不 透明度が低 い。椈その他樹種によってはスペ

ックが多い欠点があ る。漂粉又は過酸化物に よって中

性亜硫酸曹法チ ップGPと 同様に,白 色度60~70%

に漂白出来る。最近,米 国では過酸化物 とジンクハ イ

ドロサルファイ ト塩 との2段 晒で白色度75%以 上に漂

白 している例 もあ る。

第4表 に丸太法及 びチ ップ法CGPの 比較例を示 し

た。

3.SCP

SCPに は化学処理 に使用する薬品によって,第1表

に示すよ うに,NSCP,ASCP,KSCP,そ の他があ り,

それぞれ特徴を有す る。この内,NSCPが 最 も一般的

なSCPで あるか ら,主 としてこの品質について述べ

る。

NSCP蒸 解は リグニ ンに選択的に作用 し,セ ル ロー

ズを変質する ことが少な く,ヘ ミセル ローズも30%前

後 しか溶出 しないので,通 常,歩 留は70%程 度であ る。

未晒パルプの白色度は 樹種にもよるが,全 般 に 未晒

N・SPよ り低 く,繊 維は疎剛であ り,剛 度 の高い紙

となる。易水和 性ペ ン トザ ンが多いため,叩 解速度が

早 く,同 時に透明で,耐 脂性に成 り易 く,緊 った バ リ

付いた紙質を与え る。強度は未叩解で比較 的弱いが,

適当に叩解す るとヘ ミセル ローズの膠着作用に よって

紙力が向上 し,同 一樹種 のSPよ り強 く,KPに 匹敵

す る。通常,3~4段 晒が行なわれ るが,晒 パルプの品

質は蒸解,漂 白条件等に よるが,一 般に漂白に よって

リグニンが除去 され ると共に,マ ンナン,ガ ラクタ ン

等のヘクソザ ンも除 かれ,ペ ン トザ ン,ウ ロン酸等は

殆んどそのまま残存す るため,水 和性が極めて強 く,

攪拌のみでフ リーネスが低下する程であ る。叩解に よ

って,フ リーネスの急低下 と共に強度が著 しく向上 し,

同一樹種のB・SPは もとよ り,B・KPよ りも 強 く

なる。(第5表 参 照)塵及 び透明性,バ リ付 きの点にや

や問題がある。亜 硫酸ア ンモニヤに、よるNSCPも 本

州製紙その他で採 用 されてい るが,パ ルプ品質は亜硫

酸 ソーダの場合 と大差ない。

ASCPは 王子製紙で製造 され ているが,未 晒白色度

がNSCPよ り高いので未晒のまま使用する場合に有

利である。強度はNSCPと 大差 ないか,若 干低い。

NSCPも 数社で 採用 されているが,未 晒 白色度が

KPと 同様低 く,リ グニン含有量が多 く漂白は困難で

あ り,紙 力 もやや低い。

4.高 歩留パルプ

高歩留SP(Caベ ース)は カナダ等において工業 的

に実施せ られ,我 国において も戦後一時操業せ られた

が,未 晒白色度が低 く,塵 が多 く,褪 色し易い等パル

プ品質的には好 ましくない。

高歩留KPはKSCPと 同様 の性質であ る。

5.CP

CPの 主要なものはSPとKPで あるが,こ の両

者の化学的並 に機械的性質には可成 りの相違がある。

これは主 として,酸 加水分解作用を主 とす るSP蒸 解

と,ア ル カ リ存在下の酸化作用を主 とするKP蒸 解 と

の差に よるものと考え られ る。 即ち,SPの 場合には

セル ローズの溶 出は少な く,リ グニンの除去に続いて

ベ ン トザ ンが極 めて選択的に除去 され るのに反 して,

KPの 場合にはセルローズの溶 出がやや多 く,リ グニ

ンの除去に伴 って低分子の易溶性ヘ ミセル ローズのみ

が除かれる。

N・SPは 一般的に未晒 白色度が高 く,漂 白も容易

である。叩解性 も比較的良好 で,強 度は中程度である。

繊維は柔軟で,紙 層形成性が優 れている。赤松SPは

多年の研究に よってその品質は著 しく向上 したが,そ

れで も白色度,強 度,塵 等の点で北洋材SPよ りは劣

る。特に ピッチの点に問題があ る。

普通L材 はSPに は適 さないが,最 近では各社でL

材を単独又はN材 と混合 して蒸解 している。白樺SP

は白色度 も高 く,漂 白も容易であ り,ヘ ミセル ローズ

含有量が多いので適 当に叩解を行えば,赤 松SPに 優

るとも劣 らぬ紙力を示すが,椈 その他雑木SPは 白色

度も,強 度も低 く,湿 紙強度,表 面強度も劣 る。しか

し,L・SPは 不透 明性が良好であ る。SPの 場合はL

第4表  椈材丸太及 びチ ップCGP比 較例

第5表  雑木L材 パ ルプ比較 例

126 紙パ技協誌 第13巻 第100号

N.L材 のGP及 びCPの 性質553

材を用いても脂肪酸系の ピッチが多 く。 トラブルを起

こす ことがあ る。

KPは 一般に未晒 白色度が低 く,漂 白に多量 の薬品

を必要 とす る。繊維 は損傷を受けることが少ないので,

強靱で,や や難 叩解性で ある。ペ ン トザ ン含有量 が多

く,粘 状叩解に成 り易 く,強 度は高い。

N・KPは 繊維長が長 く,水 切れは良好で,嵩 高の

美 しい紙肌を与え るが,叩 解度が低い場合には地合が

とりに くい傾 向が ある。

L・KPはN・KPに 較べて,繊 維長は短いが,ベ

ン トーザ ン含有量 は更 に多 く,適 当に粘状叩解を行 な

えばN・SPに 匹敵 する強度を示す。水切れは良 く,

地合は とり易い。嵩高で,不 透明性が良好であ る。表

面強度,湿 紙強度はやや低いが,適 当に叩解をすれ ば

問題のない程度に向上す る。

第6表 に赤松及びL材 のB・SPとB・KPの 化学

分析 と強度の比較例を示 したが,B・KPはB・SPよ

りもペ ン トザ ン含有量が多 く,特 にL・B・KPは 多い。

粘度はSPの 方が高いに もかかわ らず,強 度はKPの

方が高い。 これはJayme(1)も 認めてい る処で,同 一 リ

グニン含有量 のスプルースのSPとKPに ついて,残

存ヘ ミセル ローズの型及び分布状態を 研究 して,SP

はポ リウロナイ ドが多 く,ペ ン トザ ン及 び αセル ロー

ズが少ない。 しか も,繊 維 の表面に リグニンが多 く,

かつ低重合度ヘ ミセルローズが存在 してい るため,膨

潤,粘 状化 し易 く,強 度が低いが,KPは ペ ソ トザ ン

が多 く,し か もリグニン反応及びヘ ミセルローズが繊

維全体に均一に分布 されているため,繊 維表面 のフィ

ブ リルが強 く,や や叩解は難 しいが紙力 は高いと報告

している。なお,B・KPは 全般 に樹 脂分が少な く,

夾雑物 も少ない。

その他の硝酸法或いはハ イ ドロ トロピック法等に よ

るCPは 何れ も特徴ある性質を有す るが,未 だ研究の

域を 出ない。

(V)総 括

以上,GP,CGP,SCP,及 びCP等 の製紙用木材

パルプの性質について,そ の概要を述べたが,Klemm

(2)はこれ等の各種パルプの主要性質を比較 して,第7

表 の如 きデ ーターを示 している。 又,Hagglund(3)は

N及 びL材 の各種SCP並 びにCPの 晒 パルプの性質

を比較 して,第1~3図 のよ うな結果を発表 してい る。

なお,広 葉樹利用,高 歩留パルプの製造,連 続パル

プ化等の立場か ら,最 近各種の各溶性ベ ースSP,更 に

Magnefite法,Arbiso法,或 いは種 々の2段 蒸解法

及びいろいろのCGP法 が試験又は操 業せ られ,そ れ

ぞれ特徴のある性質を発表 しているが,本 報において

は これ等のパルプについては割 愛 した。

参 考 文 献

1) G.Jayme;TAPPI Vol.41,No.11,(1958)

2) K.H.Klemm;P.T.J.142,25,38,(June 23,

1958)

3) E.Hagglund;S.P.T. Nr.17,(15,Sept.,1953)

第6表  N.L材SP,KP性 質比較例

第7表  各 種 パ ル プ 主 要 性 質 比 較

*ド イ ツ規格

昭 和34年7月 127

554 奥 杏 一

紙 パ 技 協 誌 第13巻 第7号

(非 売 品)

昭 和34年7月10日 印 刷昭 和34年7月10日 発 行

編 集 兼発 行 人 佐 藤 猛

印刷人 北 川 武 之 輔東京都中央区銀座西6ノ2

印 刷 所 株式会社 細 川 活 版 所

東京都中央区銀座西6ノ2

発 行 所 紙 ・パルプ技術協会東京都中央区銀座東3ノ4(紙 パ ル プ 会 館 内)電話東銀座(54)8204.直 通

東銀座(54)1431~9

第 1 図

第 2 図

第 3 図

128 紙パ技協誌 第13巻 第100号