gravure & interview 3dモデルの新展開 - jst

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3Dモデルの新展開 3DデータからDTPDへ (Digital Technical Product Documentation) ソリッドワークス・ジャパン株式会社 Gravure & Interview 精密工学の最前線 図 3 3D–CAD に付加されるコミュニケーションツール群 図 1 ソリッドワークス・ジャパン の入る ThinkPark Tower の外観 図 2 20 階にあるソリッドワークス・ジャパンの フロアーにて 新しい形の図面を提供するソフトウエア 組み立て指示を行うソフトウエア 正確な検査表を作成するソフトウエア

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Page 1: Gravure & Interview 3Dモデルの新展開 - JST

3Dモデルの新展開3DデータからDTPDへ

(Digital Technical Product Documentation)ソリッドワークス・ジャパン株式会社

Gravure & Interview 精密工学の最前線

図 3 3D–CAD に付加されるコミュニケーションツール群

図1 ソリッドワークス・ジャパンの入るThinkPark Tower の外観

   図 2  20 階にあるソリッドワークス・ジャパンの フロアーにて

新しい形の図面を提供するソフトウエア

組み立て指示を行うソフトウエア

正確な検査表を作成するソフトウエア

Page 2: Gravure & Interview 3Dモデルの新展開 - JST

Gravure & Interview 精密工学の最前線

1 00001072 F Flush Self-Clinching Fastene 122 00013056 GEARBOX TO BRAKE COUP 13 00009554 M6 PEM INSERT PEMSERT S 44 00009816 POP RIVET .125" X .375" 25 00008620 SPACER M3 X 2MM 26 00015695 BULKHEAD CONNECTOR MO 17 00032916 FAST RIVET .125" AVDEL BR 28 04-00 PNEUMATIC BULKHEAD CO 49 E04-00 PNEUMATIC NUT 810 00013057 GEARBOX TO BRAKE COUP 111 00008935 SHUNT RESISTOR 212 00001625 Button Head Cap Screw, M3 x 413 00022102 PNEUMATIC MOUNTING PLA 114 00014983 TORSO INTERNALS SUPPOR 115 91290A336 Socket Head Cap Screw, M6, 216 96144A211 SHCS - M8 X 20MM CL12.9 417 PROTECTIVE GUARD PLATE 1

PDFファイル上でドラッグするとモデルが回転します.

(J‒STAGEの電子付録で3D‒PDFを体験できます)

図 4 3D–PDF 形式のデジタル製品技術文書情報(DTPD)

Page 3: Gravure & Interview 3Dモデルの新展開 - JST

精密工学会誌 /Journal of the Japan Society for Precision Engineering Vol.83, No.8, 2017 715

Q1 会社の沿革をお聞かせください.

1993 年にアメリカで,Jon Hirschtick氏がエンジニアのチームを結成し,

「3D–CAD をより使いやすく(Easy to Use)」という考えの下で開発が始まり,1995 年に最初のバージョンがリリースされました.この時から日本市場は重要視されていて,唯一の外国語版が日本語版でした.その後,1997年 に フ ラ ン ス の Dassault Systèmes S.A. が 株 式 を 取 得 し, ハ イ エ ン ドの CATIA とミッドレンジの SOLID WORKS の二つのソフトウエアをもつという市場戦略の下,SOLIDWORKSは,世界 80 カ国に 150 万人を超えるユーザをもつ CAD に成長しました.

Q2 3 次元モデルに情報を付加する技術についてお聞かせください.

DTPD が扱うデータ体系は,3 次元モデルを核に,製造に必要な情報に関して多岐にわたります.

弊社のソフトウエア群では,製造データには樹脂流動解析・板金加工の情報などを,解析データには公差解析・力学計算・熱流体解析などを,品質データには CMM データの取り込み・自動検証機能などを付加することができます.

さらに弊社では,「コミュニケーション」というくくりで,組み立て指示,MBD(Model Based Definition),検査を行うソフトウエア群を開発しました.それぞれ組み立て部門・加工部門・品質部門とのコミュニケーションを図るためのものです.これらのソフトウエアは,DTPD のデータ群のうち,製造データや品質データに該当します.

学生さんたちの 3D–CAD の用途はモデリングが多いので,MBD があれば,モデルが最終的に何の意味とつながってくるのかということをお伝えできると思います. それがなかなか難しいのです(笑).組み立て・品質に関する実習をしてもピンと来る学生が少ないというのが実感

ですね.確かに,学生たちの CAD の世界は,モデルを作るところで止まっていると思います.

Q3 MBD と は ど の よ う な も の でしょうか?

MBD は,「モデルを基礎とした定義」と訳すことができます.3 次元モデルにサイズ公差,幾何公差,3 平面データム,表面性状といった,これまで 2 次元図面が果たしてきた部品の定義を,3 次元モデルを基礎として行います.

現在でも,意外に多くの会社では,公差情報のない 3 次元モデルと,公差情報を含んだ 2 次元図面を併用するという慣習があります.MBD はそれに置き換わる,開発 – 製造間の「コミュニケーションツール」として開発されました.

左ページの図 4がその一例です.MBD でも,2 次元図面で設計者が部品を表現するために,どの投影図・断面図を描くべきかを考えるのと同じ作業をします.つまり,どこに注目して情報の伝達をするのかを選択します.情報の受け手である製造の担当者は,SOLIDWORKS をおもちでなくても,弊社提供の無償閲覧ソフトあるいは PDF 閲覧ソフトで,設計・開発者の作った情報を受け取ることができます.図 4の右上に 3 つの小さな投影図があります.これが,2 次元図面での

詳細図や断面図に相当します.このいずれかをクリックすると,左中の枠の中に投影図が現れます.3D–PDF ですので,ドラッグして回転させたり,断面を切ったりすることができます.さらに,3D モデルのジオメトリ(3D の形そのもの)のデータをこの PDF ファイルの中に埋め込むこともできます.そして,注記に関しては,従来の 2 次元図面と同様に確認することができます.

また,さらに,3D–PDF(図 5)では,アセンブリと部品表で構成されていて,アセンブリ中の部品をクリックすると,部品表中の該当する部品がハイライトされます.逆に,部品表をクリックすると,アセンブリ中の該当する部品がハイライトされます.もちろん 3D–PDF ですので,表示されているモデルは,回転させたり,断面を切ったりすることができます.

Q4 苦労話がありましたらお聞かせください.

DTPD の前に,3D モデル上にすべての寸法を配置するという単独図面が注目されたことがありました.しかし,日本でもアメリカでも,その操作ができるユーザがほとんどいなくて非常に困りました.3D モデルに寸法を配置する手段が広まっていなかったことをわれわれがまったく知らなかったのです.それもあって,セミナーが大好評

3Dモデルの新展開 3DデータからDTPDへ(Digital Technical Product Documentation)

インタビュア/

長野高専 鈴木 伸哉口絵グラビア参照

ソリッドワークス・ジャパン株式会社

技術部 部長吾郷 直樹 氏 (右)

営業技術部 東日本営業技術課 主任アプリケーションエンジニア大坪 陽介 氏 (左)

Page 4: Gravure & Interview 3Dモデルの新展開 - JST

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で,今ではMBDのトレーニングマニュアルとして完備されるようになりました.そして,現在では,寸法を記入する機能などが大幅に強化され,使い勝手が向上しました.

Q5 将来の展望をお聞かせください.

MBD や 3D モデルへの寸法記入なども含め,弊社では,ユーザの使い勝手“Easy to Use”が,大きな特徴の

ひとつだと思っています.ですので,これからもユーザの声を基に使い勝手を強化していきます.外資系企業は,とかく本社からのトップダウンで,現地法人はそれに従わなければならないと思われがちですが,弊社では,本社が決めたことを基本にしておいて,日本の市場に合わせるよう裁量が与えられます.そして,日本で起きている問題や,日本で求められている要望に対して,本社が理解し聞き入れようとする,良い風潮があります.

 創業時からの“Easy to Use”の精神が今も生きていて,それが多くの会社に受け入れられ,そして学生たちは何の違和感もなく 3D–CAD を受け入れ,まさに「ツール」になっているのですね. ご紹介いただきましたモデルを基礎とした定義(MBD)や,3D–PDF は,図面の世界に新しい風が吹く予感を強く感じさせるものでした. ありがとうございました.

Gravure & Interview 精密工学の最前線

図 5 3D–PDF に埋め込まれたアセンブリと対応する部品表(アセンブリ中の部品は部品表と対応をとることができる)

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