2016年2月18日 卒論発表1
TRANSCRIPT
{100}<001>集合組織Cuを基材とした YBa2Cu3O7超伝導線材のためのチタニア系導電性中間層の開発
エネルギー応用工学コース 第六区分 B4 廣瀬勝敏
卒論発表 2016/2/18
高温超伝導物質 YBa2Cu3O7 (YBCO)● 高い Tc ≈ 92 K を持つ .● 臨界電流密度 Jc が結晶配向度に大きく依存し , 高い 2 軸配向性が求められる .
実用超伝導線材Nb-Ti (Tc = 9.5 K)Nb3Sn (Tc = 18.3 K)
高価・枯渇の恐れのある液体 He( 沸点 , 4.2 K)による冷却が必要 .
液体 N2( 沸点 , 77 K) で利用可能な超伝導線材の開発が必要 .
超伝導体 : 極低温 ( 臨界温度 : Tc 以下 ) で電気抵抗がゼロになる材料 . ( 実用例 : 超伝導リニア , 医療用 MRI)
医療用 MRIhttp://www.healthcare.siemens.co.jp/magnetic-resonance-imaging/3t-mri-scanner/magnetom-skyra
~研究背景①~
高温超伝導線材を作製するためには .
1 km にも及ぶ超伝導線材中で,全ての YBCO 結晶の a, b, c 軸の方向を同じ向きに揃える .
高温超伝導線材
YBCO 層を拡大
YBCO 結晶a 軸 b 軸
c 軸
Al2O3
ランダム配向ハステロイテー
プ
GdBa2Cu3O7
Y2O3IBAD-MgO
CeO2
AgCu
MgO(エピ成長 )
{100}<001>集合組織
Ni-Wテープ
CeO2
YBa2Cu3O7
AgCu
Y2O3
YSZ
イオンビームアシスト法 (IBAD法 )集合組織金属基板法 (RABiTS法 )
本研究では低製造コストが期待できる RABiTS法に着目 .
エピタキシャル成長:基板となる結晶の上に結晶成長を行い,下地の基板の 結晶面にそろえて配列する成長の様式 .
真空中でイオンビームを照射しながら成膜 .
圧延・熱処理により集合組織化 .
2 軸配向 YBCO 線材の作製方法(市販) .~研究背景②~
市販の超伝導線材の断面構造 .~研究背景③~
REBCOAgCu
絶縁性中間層金属基材
安定化層抵抗
電流を回避させる
Ni めっき層YBCO
{100}<001>集合組織 Cu テープ
導電性中間層 安定化層
金属基材
抵抗
SUS316
本研究で目指す新規超伝導線材の断面構造 .
金属基材に Cu テープ , 中間層に導電性物質を使用 .
② 安定化層追加形成不要の新構造 .① 安価な金属基材 Cu の使用 . 安価な超伝導線材が作製可能 .
金属基材 ( ハステロイ ,Ni-W),Ag→ 高コスト
酸素の拡散係数が小さい TiO2 に注目した .Nb をドープすることで導電性が上がる Ti1-xNbxO2(Nb-TiO2) の導電性中間層としての可能性を検討する .
導電性中間層としてSrTi0.95Nb0.05O3 (Nb-STO) を用いたところNi めっき層に NiO 層が確認された.
Ni めっき層への酸素の拡散を防ぐ必要がある.
NiO は絶縁体であるため、Cu に電流が回避しなくなる.
一瀬ら , H27 秋低温工学・超電導学会YBCO/Nb-STO/Ni/Cu 膜の断面 TEM 像
YBCO
Nb-STO
NiO
Ni
Cu
酸素拡散係数 (800 )℃ TiO2 ( ルチル型 ): (3.1-3.3) ×10-20 m2/sec SrTiO3 (STO): 1.5×10-15 -1.2×10-14 m2/sec A. E. Paladino et al, J. Phys. Chem. Solids 26(1965)391.
T. B. Gruenwald and G. Gordon, J. Inorg, Nucl. Chem. 33(1971)1151.
~目的・方針~
目的
配向 Cu テープ上に Nb-TiO2 薄膜を様々な条件で作製し、配向性、導電性、表面状態の観点から評価する .
方針
ターゲットヒーター
基材
レーザー
ガス導入管
●成膜方法Pulse Laser Deposition (PLD) 法
PLD 装置の模式図
成膜温度(˚C)(Ts)
800 550, 700, 790
ターゲット YBa2Cu3O7Ti1-xNbxO2 (Nb-TiO2) (x=0.04,0.06, 0.08)
膜厚 (nm) 200 100
雰囲気 O2 98% Ar +2% H2
ガス圧 (Pa) 35 1.3 × 10-2
成膜条件
●評価方法4 端子法
走査型電子顕微鏡(SEM)
X 線回折装置 (XRD)
表面観察配向度
抵抗率測定
~実験方法~
KrF エキシマレーザー( 波長 :248 nm, エネルギー密度 :1.3J/cm2)
r = 31.25 W ・ cm
Ts=790℃ r > 130 W ・ cm (T=300 K)
(T=300 K)
Ti1-xNbxO2 /MgO 基板の抵抗率測定
・ Ts=550 ,℃ x=0.06 で抵抗率は最も低い値を示した . (T=77 K において r = 2.1×10-2 W ・ cm)
Ts=550℃
Ts=700℃
~実験結果 MgO基板上への Nb-TiO2成膜~
・成膜温度が低温になるほど抵抗率は低い値となる傾向を示した .
77 K
Ts=700℃
(x=0.04, 0.06, 0.08)
(x=0.04)
0 50 100 150 200 250 30010-2
10-1
100
101
102
103
x=0.08 x=0.06 x=0.04
r(W
cm)
T(K)
~実験結果 STO単結晶および配向 Cuテープ上への Nb-TiO2成膜~
550℃ 成膜→ 二軸配向せず 790℃ 成膜
(101)Nb-TiO2 極点図
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.00010.0020.0030.0040.0050.0060.0070.0080.00
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.0003.0256.0509.07512.1015.1318.1521.1824.20
Ni めっき Cu テープ上
STO 単結晶基板上
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.00064.00128.0192.0256.0320.0384.0448.0512.0
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.00023.3146.6369.9493.25116.6139.9163.2186.5
550℃ 成膜 790℃ 成膜→ 二軸配向
Nb-STO/Ni/Cu上に Nb-TiO2 を成膜 .
Cu
Nb-TiO2
Nb-STONi
イメージ図
a
b
a
b
a
b
a
b
a: あおり角b: 回転角
~実験結果 Nb-STO/Ni/Cu上への Nb-TiO2成膜~(101)Nb-TiO2 極点図
表面 SEM 像550℃ 成膜
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.00024.1348.2572.3896.50120.6144.8168.9193.0
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.0006.40012.8019.2025.6032.0038.4044.8051.20
0
20
40
60
800
30
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
80
0.0008.57517.1525.7334.3042.8851.4560.0368.60
700℃ 成膜 790℃ 成膜
550℃ 成膜 700℃ 成膜 790℃ 成膜
→ 配向度が最も高いのは 550℃ 成膜 .
→700 , 790℃ ℃ 成膜では白色析出物があるが、 550℃ 成膜では見られない .
Nb-TiO2 成膜条件→Nb ドープ量 x=0.06, 成膜温度550℃
a
b
a
b
a
b
~実験結果 Nb-TiO2/Nb-STO/Ni/Cu上への YBCO成膜~ (102)YBCO 極点図
0
20
40
60
030
60
90
120
150180
210
240
270
300
330
0
20
40
60
0.35001.7813.2134.6446.0757.5068.93810.3711.80
表面 SEM 像
5 mm
・表面には多数の白色の絶縁性析出物 が見られた .
a
b
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.00.0
0.2
0.4
0.6
0.8
電圧
(V)
電流(mA)
I-V 曲線 ・二軸配向を達成した .
r=8.0 W ・ cm ・現状、 Cu に電流は回避しなかった . (Cu:r=2.0×10-7 W ・ cm (77 K) )Ic=0 A
77 K, self-field
Nb-TiO2 が導電性中間層として有望であることがわかった .
~まとめ~
Nb-TiO2 は Ni めっき Cu テープ上に直接成膜した場合、二軸配向しなかった .Ni めっき Cu テープ上に Nb-STO を介して成膜することにより二軸配向を示す Nb-TiO2 膜を作製することに成功した .YBCO/Nb-TiO2/Nb-STO/Ni/Cu では YBCO の二軸配向に成功し、 Nb-TiO2 が導電性中間層として有望であることを明らかにした .
今後 Cu に電流が回避し、高 Jc を実現できるような線材構造を検討する
基材 : {100}<001>Ni めっき Cuテープ導電性中間層 :Nb-TiO2
NiO 生成を抑制した低コスト YBCO 超伝導線材の開発の検討 .電気抵抗率は 550℃ で成膜した Nb0.06Ti0.94O2 薄膜が最も低く、 T=77 K において r = 2.1×10-2 W ・ cm であっ
た .