1.力のモーメントarakawa-lab/text2/text_all.pdf1-1 1.力のモーメント [目的 ]...
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1-1
1.力のモーメント
[ 目的 ]
実験を通して,力のモーメントに対する理解を深める。
[ 原理 ]
1.力のモーメント
図 1 のように,重さが無視できる棒の両端に質量 m1[kg],m2[kg]のおもりを
固定して,1点 O を糸でつるす場合を考える。質量 m1[kg]のおもりにはたらく
重力 m1g[N]は,点 O を中心として棒を反時計まわりに回転させようとし,重力
m2g[N]は,点 O を中心として棒を時計まわりに回転させようとする。
図 1 力のモーメント
力が棒を回転させようとする作用を力のモーメントと呼ぶ。力のモーメントの
大きさ M は,点 O から作用線までのばした垂線の長さ l [m](これを腕の長さ
いう)と力 mg[N]との積で表される。 M = m g l (1)
1-2
力のモーメントの単位はニュートンメートル(記号:Nm)である。図 1 の場合,
反時計まわりのモーメントは m1gl1[Nm],時計まわりのモーメントは
m2gl2[Nm]になる。 m1gl1 = m2gl2
のとき,棒を時計まわりに回そうとする作用と,反時計まわりに回そうとする
作用は打ち消し合い,この二つの力のモーメントは釣合い,棒が回転すること
はなく,棒は水平になる。 2.大きさのある物体(剛体)の釣合いの条件 大きさのある物体(剛体)に力が働いているにもかかわらず,並進運動(あ
る方向に物体が移動する動き)も,回転運動もしないとき,物体に働く力は釣
合っているという。
大きさのある物体(剛体)にはたらく力が釣合うための条件は
①物体にはたらく力の合力が 0 になる ②物体にはたらく力のモーメントの和が 0 になる
ただし,力のモーメントの符号は,ここでは,反時計まわりを正, 時計まわりを負と約束する。
の二つである。①は,物体を移動させないための条件であり,②は,物体を回
転させないための条件である。 図 1 において,物体(剛体)に働く力が釣合うための条件は ① 物体に働く力の合力は,鉛直下向きを正方向とすると m1g + m2g -F
であるから m1g + m2g - F = 0 ② 物体に働く力のモーメントの和は,m1gl1 +(-m2gl2)であるから m1gl1 +(-m2gl2)= 0 の二つである。
1-3
[ 使用機器 ]
・天秤の釣合い実験器 島津理化 JV-40(図2参照) ・ロードセル式電子天秤 ・分銅 ・バネ秤 ・割箸 ・糸
図 2 天秤の釣合い実験器の構成
[ 実験方法 ]
実験の準備
図 3 釣合いの調節 図 4 竿の釣合い
1-4
架台のねじをゆるめてから、竿を架台に取り付けて,水平に釣合わせる。竿
が傾くときは,図 3 に示すように、竿を左右に少しずつ動かして釣合わせる。
図 4 に示すように、目盛と指針の先が一致すると釣合ったことになる。 実験1.力のモーメント
図 5 皿の取り付け 図 6 力のモーメントの釣合い
(作用点:3 か所)
① 作用点が2か所の場合
(1)フックのねじをゆるめ、図 5 に示すように,フックと皿を取り付ける。
図 5 の左側の皿 L に 0.030kg の分銅をのせ,右側の皿 R に 0.015kg の分銅
をのせる。釣合うまで,左側または右側のフックの位置を移動する。釣合
った時の,支点から作用点までの距離を測定する。つりあった時の,フッ
ク+皿+分銅の質量をロードセル式電子天秤で測定する。 (2)図 5 の左側の皿 L に 0.025kg の分銅をのせ,右側の皿 R に 0.035kg の分
銅をのせる。釣合うまで,左側または右側のフックの位置を移動する。釣
合った時の,支点から作用点までの距離を測定する。釣合った時の,フッ
ク+皿+分銅の質量をロードセル式電子天びんで測定する。 ② 作用点が3か所の場合
図 6 に示すように,竿の左側には,2 か所にフックを取り付け,皿 L1,
L2 をかける。竿の右側には,1 か所フックを取り付け,皿 R をかける。右
側の皿に 0.020kg の分銅をのせる。次に,釣合うまで,左側の二つの皿に分
銅をのせる。場合によっては,フックの位置を移動する。釣合った時の,お
もりから支点までの距離を測定する。つりあった時の,フック+皿+分銅の
質量をロードセル式電子天びんで測定する。左まわりのモーメントを M L1,
M L2とし,右まわりのモーメントを M R とする。
1-5
実験2.力の釣合いと力のモーメントの釣合
い (1)割りばしの切れ目に糸の輪をかけ,図 7
に示すように,バネ秤L,R,Aを適当な
力で引き,釣合った状態にする。このとき,
割りばしと直角の方向にバネ秤を引く。 (2)釣合った状態でバネ秤 A,L,R の目盛を読
む。 (3)支点から a 点,支点から b 点までの距離
を測る。 (4)支点からの左右の長さを変えて,同様の
実験を合計2種類行う。
図 7 剛体のつりあい
[ 実験結果 ]
実験1.力のモーメント ① 作用点が2か所の場合の実験結果(1),(2)を表 1 に,② 作用点が3か
所の場合の実験結果を表 2 に示す。力のモーメント M は式(1)M = m g lを用い,重力加速度 g = 9.8m/s2として計算する。
表 1 力のモーメント(①作用点:2か所) (1) 質量 m [kg] 距離 l [m] 力のモーメント M [Nm]
左側 L 右側 R
(2) 質量 m [kg] 距離 l [m] 力のモーメント M [Nm] 左側 L 右側 R
1-6
表 2 力のモーメント(②作用点:3か所)
左側 質量 m L1
[kg]
距離 l L1
[m]
力のモーメ
ント M L1 [Nm]
質量 m L2
[kg]
距離 l L2
[m]
力のモーメ
ント M L2[Nm]
力のモーメン
ト M L1+ M L2 [Nm]
右側
質量 m R
[kg]
距離 l
R
[m]
力のモーメ
ント M R [Nm]
実験2.力の釣合いと力のモーメントの釣合い 実験結果を表 3,表 5に示す。表 3の単位を kgw から N に変換したものを表
4 に示す。力のモーメントの計算結果を表 6 に示す。
表 3 バネ秤 L,R,A の読み値 L の読み値 [kgw] R の読み値 [kgw] A の読み値 [kgw] 1 回目 2 回目
表 4 バネ秤 L,R,A の読み値の単位を kgw から N に変換 L の読み値 [N] R の読み値 [N] A の読み値 [N] 1 回目 2 回目
表 5 支点から a 点,b 点までの距離
支点から a 点までの距離[m] 支点から b 点までの距離[m] 1 回目 2 回目
表 6 力のモーメント 左まわりのモーメント[Nm] 右まわりのモーメント[Nm]
1-7
1 回目 2 回目
[ 考察 ]
(1) 天秤の釣合い実験器を用いた実験において 実験結果において,左まわりの力のモーメントと右回りの力のモーメント にどのような関係が成り立つか。 (2) 剛体にはたらく力の釣合いの条件の実験において
①力の釣合い バネ秤 L,R,A の値にどのような関係が成り立つか。
②力のモーメントの釣合い 支点から a 点までの距離,支点から b 点までの距離とバネ秤
L,R の値にどのような関係が成り立つか。
1-8
[ 補足説明 ]
1. 質点と剛体について 現実の物体は必ず大きさ,形の変形などの性質がある。これらの性質を初め
から考慮して物体の運動を議論すると非常に複雑になる。たとえば,物体の異
なる点にいろいろな方向の力が働いた場合,回転運動をしたり,及ぼした力に
よる物体の変形が起こる。 そのため,運動している物体自身の大きさを無視して,その物体が軌道上を
どのように移動していくかという点だけ注目する立場,つまり物体を質量だけ
持ち大きさを持たない一つの点を考え,この仮想的な物体を質点とよぶことに
した。このことによって回転を考える必要がないため,物体の運動をきわめて
議論しやすくなった。実験テーマ「斜面上の力の働き」における台車は,質点
として扱っている。 これに対して,どんなに大きな力を受けても,形や体積が少しも変化しない
仮想的な物体を想定してこれを剛体と名付けた。現実に剛体というものは存在
しないが,作用する力があまり大きくなく,形や体積の変化が小さい物体は剛
体と考えてよい。剛体の運動を論じるときは回転も考慮しなければならないの
で,その運動は質点の運動より複雑になる。 物体を質点とみるか,剛体とみるかは運動の状態による。地球のような大き
な物体でも,太陽の周りの公転運動を考える場合には,自転のような回転運動
を無視して,地球全体を一つの質点とみなして差し支えない。しかし,分子の
ような小さなものでも,その回転運動のエネルギーなどが問題となるときは,
単なる質点とみなすことができない。 2.輪軸について
図 8 に輪軸を示す。輪と軸は相互に滑らないように固定され,両者一体とな
って,中心 O のまわりに自由に回転することができる。輪の半径 r1が軸の半径
r2の 2 倍だとし,それぞれに図 8(a)のように A,B のおもりをかける。A 及び Bのおもりにはたらく重力が 1N 及び 2N とする。この場合,O を支点とする左ま
わりのモーメントと右まわりのモーメントが等しくなるため,AとBが釣合う。 次に,図 8(b)のように,a 点と b 点に糸を固定し,C の方向に 1N の力で引き,
D の方向に 2N の力で引いた場合,O を支点とする左まわりのモーメントと右ま
わりのモーメントが等しくなる。この場合,図 8(a)のように二つの力の方向が
同じではないが,O を支点とする左まわりのモーメントと右まわりのモーメン
1-9
トが等しくなることにより,C と D が釣合う。 実験テーマ「5.モータ」の式(5)は,図 8(b)の力のモーメントの釣合いにより
求めることができる。
図 8 輪軸
2-1
2.たわみによるヤング率の測定
[ 目的 ]
ユーイングの装置を利用し,おもりによる金属棒のたわみを測定することに
よって金属棒のヤング率を求める。また,ダイヤルゲージの利用を通して,微
小な変化を拡大測定する手法を学ぶ。
[ 原理 ]
金属材料のように,外からある程度の力を加えると変形し,この力を取り除
くともとに戻るような固体を弾性体という。弾性体に外から加える単位面積あ
たりの力を応力という。また,弾性体の変形(長さや体積などの変化)を単位
長さや単位体積あたりに換算したものを歪という。弾性体の歪が小さいときに
は,応力は歪に比例する。これが弾性体の特性である。このときの比例定数を
弾性定数といい,ヤング率は弾性定数の一つである。
図 1 歪 図 2 試験棒のたわみ e
長さ L,断面積 Sの一様な棒材の両端を断面に垂直に大きさ Fの力で引っ張った場合,図 1 のように長さが⊿L だけ伸びたとする。この棒材のヤング率 Eは次式で与えられる。F/Sは応力,⊿L/Lは歪である。
L
LE
S
F ⊿= (1)
断面が一様に長方形の金属試験棒を,距離 l だけ離れた二つの水平エッジ上
に載せる。試験棒の中点Oに質量Mのおもりを掛けると,図 2のようにたわむ。試験棒の断面の厚さを a,幅を bとする。最も下がった中央部のたわみを e,重力加速度の大きさを g とすれば,試験棒のヤング率 Eは
2-2
bea
lME
3
3
4
g= (2)
と表される。(2)式の誘導は [ 補足 ] を参照のこと。
[ 使用機器 ]
・ユーイングの装置一式(ダイヤルゲージを含む)(図 3a参照) ・金属棒 2種類(鉄,真ちゅう) ・マイクロメータ ・1 m物差し
図 3a ユーイングの装置 図 3b ユーイングの装置側面
[ 実験方法 ]
(1)鉄および真ちゅうの製の 2種類の金属棒を試験棒とし,その厚さ a[m]および幅 b[m]をマイクロメータで,0.000001 m( = 0.001 mm )の桁まで測定する。
(2)鉄製の試験棒を図 3aのように 2つの水平エッジの上に,エッジに対して垂直に載せる。
試験棒
ダイヤルゲージ
水平エッジ
おもり
コ字形 エッジ
おもり受け
支柱
クランプと 蝶形固定ネジ
測定子
2-3
(3)水平エッジ間の距離 l[m]を 1 m物差しで測って求め,水平エッジの間の試料の中点 Oにコ字形エッジとおもり受けを吊す。
(4)図 3bのように支柱を台中央部のネジ穴にネジ込み固定し,クランプに固定したダイヤルゲージを支柱に固定する。
(5)ダイヤルゲージクランプの蝶形固定ネジをゆるめ,ダイヤルゲージを徐
徐に下げ,コ字形エッジの穴にダイヤルゲージの先端(測定子)を入れる。
先端が試料に接触した後もさらに下げ,ダイヤルゲージ目盛の値が約半分
(5 mm)のところで,蝶形固定ネジを締めて固定する。 <注意1> 測定子の位置が試験棒の中点になるよう確認すること。
(6)補助用として 1 個のおもり(0.200 kg)をおもり受けに乗せ,このときのたわみ(ダイヤルゲージの目盛)を e0[m]とする。
<注意2> 補助用のおもり 1 個は,おもり受けの安定のために使用するものであり,荷重とは見ない。
(7)さらにおもりを1個ずつ合計6個になるまで乗せ,荷重を加えた時のた
わみ e1,e2,…………,e5を順次読み取る。
(8)次におもりを1個ずつ減少した時のたわみ e5’,e4’,…………,e0’を読み取る。
<注意3> このとき,乗せたおもりの質量Mとたわみ ei,ei'の関係を,
リアルタイムで1枚のグラフ用紙に書きながら,ヒステリシスの状態を確認する。(図 4参照)
図 4 質量Mとたわみの関係(例:真ちゅう)
2-4
(9)ei ,ei' の平均値を ie とし, 0e と各 ie との差を⊿ ie とする。⊿ 5e とそのお
もりの質量および試験棒の各測定値を(2)式に代入してヤング率 E[Pa]を算出する。
(10)真ちゅう製の試験棒についても鉄と同様の実験を行なう。
[ 実験結果 ]
(1)水平エッジ間の距離および 2 種類の試験棒について,各部の測定値を以下に示す。
・水平エッジ間の距離 l[m]: ・試験棒の寸法 鉄, 真ちゅう
厚さ a[m]: , 幅 b [m]: ,
(2)2種類の試験棒について,おもりの質量とたわみの関係を表 1,表 2に示す。
表 1 おもりの質量とたわみの関係(試験棒:鉄)
i 質量 M [kg] たわみei[m] たわみei’[m] 平均値 [m] との差:⊿ [m]
0 0.0001 0.2002 0.4003 0.6004 0.800
5 1.000
ie0e ie
表 2 おもりの質量とたわみの関係(試験棒:真ちゅう)
i 質量 M [kg] たわみei[m] たわみei’[m] 平均値 [m] との差:⊿ [m]
0 0.0001 0.2002 0.4003 0.6004 0.800
5 1.000
ie0e ie
2-5
(3)表 1,表 2の⊿ 5e を eとし,そのときの質量(1.000 kg )および各部の
長さの値から,金属棒のヤング率 E[Pa]を算出する。ただし,重力加速度g = 9.80 ms-2 とする。
・鉄 bea
lME
3
3
4
g= =
( )( ) ( ) ( )
=×××
××3
3
4
80.9000.1 ×10□ Pa
・真ちゅう bea
lME
3
3
4
g= =
(4)各金属棒のヤング率 Eの測定値について,理科年表に記載されている真値との誤差率(%)を求める。
誤差率 = 真値
測定値-真値 × 100(%)
・鉄・・・( ) ( )
( )- × 100 = %
・真ちゅう・・・
[ 考察 ]
(1)各金属棒のヤング率 Eの測定値について,誤差が生じた原因を考察せよ。 (2)ヤング率の大小と材料の特徴の関係を述べよ。
2-6
[ 補足 ]
図 5 金属棒のたわみと中層 図 6 片持ち梁の中層
一様な金属棒を図 5 のように曲げると,棒の上部側では伸び,下部側では縮むが,その中間には伸縮のない中層が存在する。伸縮のない中層の微小長さ dxの部分に注目し,中層 OO'の曲率の中心を C,それを見込む角を dθ,曲率半径(OC = O'C)を rとする。ここで,棒の厚さの方向に中層から距離 zの位置にある,厚さ dzの層を考えると,その断面 dSの平行層の伸びの割合は
( )r
z
r
rzr=
−+
θθθ
d
dd (3)
である。また,この層に加わる張力を dFとすれば,ヤング率の定義より,
Szr
EF
r
zS
F
E dddd
=∴= (4)
従って,断面に加わる曲げモーメント Lは,
∫∫ ===SS r
EISz
r
EzFL dd 2 (5)
ここで, SzIS
d2∫= は,断面 Sの中層との交線の回りの慣性モーメントを表す。
次に図 6のように,長さ lの片持ち梁の中層を考える。一端 Oを固定し,他端 P に質量 M のおもりを掛けることにより,O から x の距離の微小な長さ dxの部分が曲率半径 rの湾曲をなす。このときの端 Pの微小な降下を deとすると,
2-7
de = (l-x)dθ = (l-2)r
dx (6)
となる。このとき,曲げモーメント Lは
L = r
EI= Mg (l-x) (7)
になることから,式(6),(7)より曲率半径 rを消去すると,
de = ( )EI
lMxxl
EI
M
3d
32
0
gg=−∫ (8)
ここで,厚さ a,幅 bの角棒を図 2のように,距離 lの水平エッジ間でささえ,
中央におもり M を掛けた際の中点降下として,式(8)の l の代わりに2
lを,Mg
の代わりに2
gMを,I=
12
3baと置くと,中点降下 eは,
bEa
lM
baE
lM
e3
3
3
3
412
3
22 gg
=⎟⎠
⎞⎜⎝
⎛
= (9)
となる。したがって,金属棒のヤング率 Eは,(2)式の通りとなる。
bea
lME
3
3
4
g= (2)
3-1
3.比熱
[ 目的 ]
この実験では,比熱と熱量保存の法則を理解する。
[ 原理 ]
熱はエネルギーの一種であり,熱量の単位には J(ジュール)が用いられる。
単位量の物質の温度を 1K 上げるのに必要な熱量をその物質の比熱という。比熱
の小さい物質は熱しやすく,また,冷めやすいといえる。比熱の単位には,J/(kg・
K) が用いられる。
また,物体の温度を 1K 上げるのに必要な熱量をその物体の熱容量という。熱
容量の単位には J/K が用いられる。したがって,比熱 c [J/(kg・K)],質量 m [kg]
の物体の熱容量 C [J/K] は C = m c となる。また,温度が T [K] 上がったと
きに吸収する熱量,または,下がったときに放出する熱量 Q [J] はつぎのよう
に与えられる。
Q = C T = m c T (1)
ここで (1) 式は,ある物体を暖めよう(または,冷やそう)とするには,その
物体の質量 m,比熱 c,および,上がった温度(下がった温度)T に比例したエ
ネルギーが必要であることを表している。
ところで,高温の物体 Aと低温の物体 Bとを接触させると,物体 Aから物体 B
ヘエネルギーが移っていく。この現象を熱伝導という。また,両者を接触させ
てしばらくすると,温度が等しくなりそれ以上は熱が移動しない。このような
状態になったとき,これらは熱平衡状態にあるという。両者の接触によって,
物体 A が失った熱量 Q を物体 B が受け取るので,ニつの物体の熱量の合計は,
変わらない。これを熱量保存の法則という。
いま,比熱 cA,質量 mA,温度 TAの物体 A と比熱 cB,質量 mB,温度 TBの物体 B
の二つの物体が断熱された状態で置かれている場合を考える。この二つの物体
を接触させて十分時間が経ったときの状態,すなわち,熱平衡状態での二つの
物体の温度 T ’を求めてみる。まず,二つの物体を接触させる前の全体の熱量
Q1は,つぎの式で与えられる。
Q1 = mA cA TA + mB cB TB (2)
一方,熱平衡状態での全体の熱量 Q2は,つぎの式で表される。
Q2 = mA cA T’+ mB cB T’ (3)
3-2
熱量保存の法則によると,二つの物体を接触させる前の全体の熱量 Q1 と熱平衡
状態での全体の熱量 Q2 には変化がないため,つぎの関係式が成り立つ。
Q1 = Q2 (4)
すなわち,
mA cA TA + mB cB TB = mA cA T’+ mB cB T’ (5)
が成り立つ。(5)式から T’について解けば熱平衡状態における二つの物体の温
度を求めることができる。また,片方の物体の比熱と熱平衡状態の温度がわか
っている場合には,(5)式から,もう一方の物体の比熱を求めることができる。
例えば,物体 B の比熱 cB が未知の場合には,(5)式を変形して
cB = ( )( )BB
AAA
TTmTTcm
−
−
'' (6)
として求めることができる。
[ 使用機器 ]
・ 水熱量計(図 1参照)
・ 温度計×2本
・ 被検物(金属ブロック×2種類)
・真ちゅう
・アルミニウム
・ 電子天秤
・ 水浴(プラ容器)大小各1個
・ 氷(製氷機中)
・ 電気ポット
・ ストップウオッチ ・ ピンセット
図 1 水熱量計
[ 実験方法 ]
(1)電子天秤で,真ちゅうブロックおよびアルミニウムブロックの質量(mB)
を測定する。
(2)横軸を時間(t ),縦軸を水の温度(T )にとったグラフを作成し(図 2
参照),測定値をリアルタイムでプロットするための準備をする。・・・実
験終了後に作成してはいけない。
3-3
図 2 水温の時間変化
(3)氷水を入れた水浴に,真ちゅうブロックおよびアルミニウムブロックを
入れ,1O 分間放置する。
(4)別の水浴に,質量が約 0.15Okg,温度が約 5O℃の水を用意する。だたし,
温度は 5O℃以下になるように調整する。
(5)(4)で調整した水を水熱量計の断熱槽に中注ぎ入れ,電子天秤で測定し
ながら,質量(mA)を正確に測定する。次いで,正確な水の温度(TA)を測
定する。
(6)氷水の真ちゅうブロックの温度(TB)を測定したうえで,ピンセットを使
ってブロックを水浴から取り出す。ブロックを手早く断熱槽の水の中に入
れると同時に,ストップウオッチで時間を測り始める。
(7)真ちゅうブロックを入れてから 5 分間,水の温度を測定する。ただし,
はじめの 1分間は 3O 秒ごとに,それ以後は 1分ごとに測定する。
また,測定値の記録と同時にその値をグラフにプロットする。なお,実
験中は絶えず,水をかき混ぜ棒でかき混ぜる。
(8)同様にして,アルミニウムブロックの場合についても,(4)以降の実験
を行なう。
(9)水および金属ブロックの比熱をそれぞれ cA,cB とし,測定値を (6) 式に
代入して真ちゅうとアルミニウムの比熱を求める。ただし,水の比熱を 4.18
kJ/(kg・K) とする。
3-4
[ 実験結果 ]
(1)各測定値を以下に示す。
Ⅰ)真ちゅうの実験
断熱槽中の水の質量: mA kg
金属の質量 : mB kg
断熱槽中の水の温度: TA ℃(金属投入直前の温度)
氷水中の金属の温度: TB ℃
熱平衡状態の温度 : T’ ℃(グラフから判断する)
表1 ブロックを入れらからの水の温度変化
時間 t [min] 0.0 0.5 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
温度 T [℃]
Ⅱ)アルミニウムの実験
断熱槽中の水の質量: mA kg
金属の質量 : mB kg
断熱槽中の水の温度: TA ℃(金属投入直前の温度)
氷水中の金属の温度: TB ℃
熱平衡状態の温度 : T’ ℃(グラフから判断する)
表2 ブロックを入れらからの水の温度変化
時間 t [min] 0.0 0.5 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
温度 T [℃]
(2)各金属ブロックの比熱ついて,(6) 式の計算および値を以下に示す。
cB = ( )( )BB
AAA
TTmTTcm
−
−
'' (6)
真ちゅう :cB = ( )
( )−×
−×× 18.4
= kJ/(kg・K)
アルミニウム:cB = ( )
( )−×
−×× 18.4
= kJ/(kg・K)
3-5
(3)以下の真値に対する各実測値の誤差率を求める。(式 7参照)
)(理論値
実測値-理論値誤差率= %100× (7)
[ 考察 ]
(1)水が失った熱量QA [J]と金属ブロックが得た熱量QB [J]を,真ちゅう
およびアルミについてそれぞれ計算し,QAとQBが一致するか確認せよ。
一致しない場合はその理由を述べよ。ただし,QA,QBは次式で表される。
・水が失った熱量 QA = mA cA ( TA - T’) (8)
・金属ブロックが得た熱量 QB = mB cB ( T’- TB ) (9)
(2)[実験結果](3)で,実測値に誤差が出た理由を述べよ。
(3)この実験から分かったことを述べよ。
比熱の真値
真ちゅう :0.387 kJ/(kg・K)
アルミニウム:0.882 kJ/(kg・K)
4-1
4.オシロスコープ
[ 目的 ]
オシロスコープで直流と交流の電圧波形を観測し、電圧の大きさ、周期を求
めることにより,オシロスコープの基本操作を学ぶ。
[ 原理 ]
1.直流,交流とは
電圧を e (t )と表す。e (t )は,電圧 eが時間 t の関数であることを表す。 ( ) 51.=te V を図に書くと図 1のようになる。図 1の水平軸(=横軸)は時間,垂直軸(=縦軸)は電圧を表す。
時間が経っても,電圧の大きさ
は変わらない。1.5V一定である。これは乾電池の電圧を表す。こ
の乾電池のように,大きさと向 きが時間的に変わらない電圧を 図 1 e (t )=1.5 Vの電圧波形 直流という。 次に
( ) tte π1202100 sin= [V]
を図に書くと,図 2のようになる。図 2の水平軸は時間,垂直軸は電圧を表す。電圧の大きさと方向が周期的に変化している。電圧の大きさと方向が周期的に
変化する電圧を交流という。 図 2 の電圧波形は、電圧の最大値が 100 2 V(≑141V),周期が 1/60 秒の正弦波交流電圧を表す。これは,一般家庭のコンセントから得られる、周波数 60Hz(地域によっては 50Hz)、実効値 100Vの正弦波交流電圧である。
0
1
2
0 1 2 3 4 5 6 7
電圧
e[V
]
時間 t [s]
4-2
図 2 ( ) tte π1202100 sin= [V]の電圧波形
2.オシロスコープによる波形観測 オシロスコープは,図 1,図 2に示されるような電圧の時間的変化を実時間でディスプレイの画面上に表示することができる。 図 1,図 2の電圧をオシロスコープで観測した場合の画面は,図 3,図 4のようになる。図 3,図 4の水平軸(=横軸)は時間,垂直軸(=縦軸)は電圧を表す。オシロスコープは,電圧の波形を観測できるだけでなく,電圧の大きさと
時間を求めることができる。図 3では,電圧の大きさを求める計算方法を示し,図 4では,時間を求める計算方法を示している。 図 3,図 4 では,DIV が使われているが,DIV は,オシロスコープ特有の単位で,1 DIVは,ひとますの大きさを表す。図 4の 8.3DIVは,8.3ますを表し, 水平軸感度 2ms / DIVは 1DIV(ひとます)が 2msであることを表す。したがって,周期(図 2参照)は
2ms / DIV × 8.3DIV = 16.6ms で計算することができる。 図 3,図 4の GND(グランド)は,基準レベル(0V)を表す。
4-3
図 3 オシロスコープで図 1の電圧を観測した場合の画面
図 4 オシロスコープで図 2の電圧を観測した場合の画面
[ 使用機器 ]
・オシロスコープ
・低周波発振器(ファンクションジェネレータ)
・ディジタルマルチメータ
・乾電池
4-4
[ 実験方法 ]
資料 1-6~1-9の「1.輝線の表示と画面の調整」「2.信号の接続」「3.校正用電圧波形の観測およびプローブ位相の調整」の操作を行い,
・輝線が水平であること ・校正用電圧波形の振幅が 0.6V,周波数が 1kHzであること ・プローブ位相が正常であること
を確認してから,以下の実験を行う。 1.直流電圧の測定 乾電池の電圧をディジタルマルチメータ(DCVに設定)で測定する。 オシロスコープを用いて,以下の手順で単一の乾電池の電圧の大きさを求
める。表1に測定条件を示す。 (1)プローブのアースリードを電池ホルダーの-端子(黒色リード線)
に接続し,プローブの先端(フック)を電池ホルダーの+端子(赤 色リード線)に接続する。プローブのスライドスイッチは×10と する
(2)GNDの位置は,図3の GNDの位置と同様,中央に合わせる。 (3)垂直軸感度(VOLT/DIV)は,50mV/DIVとし,入力結合は DC結
合とする。 (4) 水平軸感度(TIME/DIV)は 1ms/DIVとする。
表1 直流電圧の測定条件
乾電池 垂直軸感度 (VOLTS / DIV)
水平軸感度 (TIME / DIV)
入力結合 プローブ
単一 50mV / DIV 1ms / DIV DC結合 ×10 (5)ページ 1-8に示すように,オシロスコープで観測した電圧波形を
1mm方眼紙にスケッチし,垂直軸感度(VOLTS / DIV),水平軸感 度(TIME / DIV),プローブ(×1または×10)を読み取り記入 する。GNDの位置も示す。
(6)次に,電圧の大きさを求める。電圧の大きさは,図 3に示すよう に,電圧が何 DIVかを読み取り、式(1)で算出し、ページ 1-8に示 すように 1mm方眼紙に記入する。
電圧[V] = 垂直軸感度(VOLTS / DIV)[V / DIV] × 測定電圧の長さ[DIV] × プローブの減衰量の逆数(1または 10) (1)
4-5
2.交流電圧の測定 オシロスコープを用いて,以下の手順で交流の電圧と周期を測定する。
(1)出力ケーブル(赤,黒)を用いて,プローブのアースリードを低周波 発振器の出力端子 OUT PUT(黒)に接続し,次にプローブの先端(フ ック)を出力端子 OUT PUT(赤)に接続する。
(2)発振器の設定を,表2の設定とする。発振器の取り扱いは資料 3に示 す。
表2 発振器の設定 設定 WAVE FORM(波形) (正弦波交流) AMPLITUDE(電圧の大きさ) つまみを目盛の最大にする。 FREQ.(周波数) つまみと押しボタンで決める
10kHz
ATTENUATOR(減衰率) 0dB(=減衰しない) (3)オシロスコープの画面の GNDの位置は,図4の GNDの位置と同様,
中央に合わせる。 (4)CH1の垂直軸感度,水平軸感度,入力結合は,表3の設定値に合わせ
る。 表3 交流電圧の測定条件
垂直軸感度 (VOLTS / DIV)
水平軸感度 (TIME / DIV)
入力結合 プローブ
500mV / DIV 20μs / DIV DC結合 ×10 (5)図 4、ページ 1-9を参照しながら,1mm方眼紙に電圧波形をスケッ
チし,垂直軸感度(VOLTS / DIV),水平軸感度(TIME / DIV),プロ ーブ(×1または×10)を読み取り記入する。GNDの位置も示す。
(6)次に,観測した画像から,ピークピーク値および周期を求める。計算 式を用いて,ピークピーク値から実効値,周期から周波数を求め、ペ ージ 1-9に示すように 1mm方眼紙に記入する。
4-6
図 5 ピークピーク値 V P-P
ピークピーク値の求め方 ピークピーク値は,画面左下から読みとった VOLTS / DIVの値,画面から読みとったピークピーク値 [DIV],プローブのスライドスイッチの示す値(1または 10)を、式(1)に代入して求める。(ピークピーク値については図 5参照)
実効値の求め方 正弦波の実効値 Vr msは,正弦波のピークピーク値 VP-Pを式(2)に代入して
求める。
22PP
smrVV −= (2)
図 6 周期 T 周期の求め方 周期 T [s]は,ディスプレイの画面左上から水平軸感度 TIME / DIVを読み 取り,画面から周期が何 DIVかを求め,式(3)から算出できる。
4-7
時間[s] = 水平軸感度(TIME / DIV)[s / DIV] × 測定時間の長さ[DIV] (3)
たとえば,図 4の場合 TIME / DIV(水平軸感度)の値=2 ms / DIV
測定時間のディスプレイ画面上の長さ=8.3 DIV したがって,図 4の周期は,式(3)を用いて次式で求められる。 2 ms / DIV × 8.3 DIV = 16.6 ms 周波数の求め方 周波数 f [Hz]は,式(4)に周期 T [s]を代入して求める。
T
f 1= (4)
たとえば,周期 Tが 16.6msの場合,周波数 f は
f 246010616
113
..T
=×
==−
Hz
となる。
4-8
[ 実験結果 ]
1.直流電圧の測定 測定対象
垂直軸感度(VOLTS/DIV) 水平軸感度(TIME/DIV) プローブのスイッチ (×1または×10)
スケッチした電圧波形から,式(1)を用いて電圧を算出する。 ディジタルマルチメータで測定した電圧の大きさ ディジタルマルチメータの測定値を真値とみなし,誤差率を求める。
4-9
2.交流電圧の測定 測定対象
垂直軸感度(VOLTS/DIV) 水平軸感度(TIME/DIV) プローブのスイッチ (×1または×10)
式(1)を用いて,ピークピーク値 VP-Pを算出する。 式(2)を用いて,ピークピーク値 VP-Pから実効値 Vrmsを求める。 式(3)を用いて周期 Tを求める。
式(4)を用いて,周期 Tから周波数 f を求める。
4-10
[ 考察 ]
1.直流電圧の測定 オシロスコープの観測により得られた電圧の大きさとディジタルマルチメ ータの電圧測定値と比較検討せよ。
2.交流電圧の測定 ファンクションジェネレータの周波数指示値と波形観測により算出した周 波数の値と比較検討せよ。
4-11
[ 補足説明 ]
A.波形表示の原理 図 7は,静電偏向形ブラウン管(CRT)の構造を示す図である。陽極と陰極の間に直流高電圧(加速電圧)を加えると,陰極からの電子は加速され,高速
の電子流を生じる。陽極の中央に小穴をあけておくと,電子流は小穴を通り直
進し,これが蛍光面に衝突すると,その部分が発光する。この点を輝点という。 この輝点に波形を描かせるために,図 7に示すように電子流をはさんで垂直方向偏向板(電子流を垂直方向に偏向させるための2枚の金属板)と水平方向偏
向板(電子流を水平方向に偏向させるための2枚の金属板)をもうける。この
とき,垂直方向偏向板の V1,V2間に電圧を加えると,2枚の偏向板の間に電界
が生じ、電子流が電界の中を通過するとき電子流は上または下に進行方向を変
える。水平方向偏向板の H1,H2間に電圧を加えると,2枚の偏向板の間に電界
が生じ、電子流が電界の中を通過するとき電子流は左または右に進行方向を変
える。
図 7 静電偏向形ブラウン管の構造 図 8のように水平方向偏向板の H1,H2間に直流電圧を加えた場合,2枚の水
平方向偏向板の間に右方向(図 8において)の電界が生じ、電子は負の電荷を帯びているため輝点は中心より左にくる。 図 9のように水平方向偏向板の H1,H2間に,のこぎり波電圧を加えると,ブ
ラウン管面に現れる図は一本の直線になる。
4-12
図 8 水平方向偏向板に,直流電圧を加えた場合
図 9 水平方向偏向板に,のこぎり波電圧を加えた場合
図 10のように垂直方向偏向板に正弦波交流,水平方向偏向板に同じ周期ののこぎり波を加えると,ブラウン管面に現れる図は正弦波となる。 ブラウン管面の水平軸は時間軸となっており,垂直軸は電圧軸となっている。
水平方向偏向板は,電子銃によって作られた輝点をブラウン管面の左から右へ
一定速度で移動させているが,このことを「掃引する」という。
4-13
図 10 水平方向偏向板にのこぎり波電圧,垂直方向偏向板に,
正弦波を加えた場合
B. [実験方法] 1.直流電圧の測定 (2) (3) (4)の操作手順 (2)GNDの位置は,図3の GNDの位置と同様,中央に合わせる。
操作手順 ・資料 1-3の図 3の<12>GNDを押すことにより,画面下部に
GNDマーク を表示させる。このとき,輝線は GNDライン
を示す。 ・資料 1-3の図 3の<9>POSITIONを回すことにより輝線を上
下に移動し中央に合わせる。 (3)垂直軸感度(VOLT/DIV)は,50mV/DIVとし,入力結合は DC
結合とする。 操作手順 ・資料 1-3の図 3の<12>GNDを押すことにより,画面下部に
GNDマーク が消えた状態にする。(=GND 解除)
・資料 1-3の図 3の<10>VOLTS / DIV(垂直軸感度)を回して, 画面下部の表示を 50mVとする。 (ⅰ)画面下部の表示が 1: 50mV
であれば,CH1の入力結合が DC結合で,垂直軸感
4-14
度が 50mV/DIVである。 (ⅱ)画面下部の表示が
1: 50mV~ (単位 Vの上に が表示) であれば,CH1の入力結合が AC結合であるため, DC結合に変える必要がある。資料 1-3の図 3の <13>DC/ACを押すことにより,画面下部の表示を
1: 50mV に変える。
(4)水平軸感度(TIME/DIV)は 1ms/DIVとする。 操作手順 ・資料 1-4の図 4の<24>TIME/DIVを回すことにより,画面 上部の表示を 1msとする。
C. [実験方法] 2.交流電圧の測定 (3) (4)の操作手順 (3)オシロスコープの画面の GNDの位置は,図4の GNDの位置と
同様,中央に合わせる。 操作手順 ・資料 1-3の図 3の<12>GNDを押すことにより,画面下部に
GNDマーク を表示させる。このとき,輝線は GNDライン
を示す。 ・資料 1-3の図 3の<9>POSITIONを回すことにより輝線を上
下に移動し中央に合わせる。 . (4)CH1の垂直軸感度,水平軸感度,入力結合は,表3の設定値
に合わせる。 操作手順 ・資料 1-3の図 3の<12>GNDを押すことにより,画面下部に
GNDマーク が消えた状態にする。(=GND 解除)
・資料 1-3の図 3の<10>VOLTS / DIV(垂直軸感度)を回して, 画面下部の表示を 500mVとする。 ・資料 1-4の図 4の<24>TIME/DIVを回すことにより,画面上 部の表示を 20μsとする。
5-1
5.ダイオード
[ 目的 ]
ダイオードの静特性を測定して,基本動作である整流作用を確認し,動作原
理を理解する。併せて,発光ダイオードの動作も確認する。
[ 原理 ]
(1) 半導体 純粋のシリコン(Si)は,ダイヤモンド構造(図 1 参照)と呼ばれる周囲の等間隔で等距離の位置に 4個の原子からなる結晶構造を持っている。
図 1 ダイヤモンド構造 図 2 半導体のエネルギー準位
Si原子の最外殻には 4個の電子があって,たがいに隣の Si原子の電子と対をなして,共有結合と呼ばれる結合によって結晶を構成している。このように多数
の原子が集まって結晶を構成する場合,この結晶中の電子は,電子が存在でき
ない禁制帯で隔てられたいくつかの許容帯と呼ばれるエネルギー準位のエネル
ギーしか持つことができない。また,この許容帯のなかには決められた数の電
子しか存在できない。そして,電子は,エネルギー準位の低い許容帯から順次,
充満されていく。半導体は最外殻が電子で充満されている充満帯と,その上に
ある伝導帯とのエネルギーの差,すなわち禁制帯のエネルギーギャップが1eV程度で比較的小さい(図 2参照)。このことが半導体の原点ともいえる重要な特徴である。このために,室温程度の熱エネルギーによって充満帯の電子が伝導
帯へわずかであるが上がる(励起)ことができる。この充満帯の電子が伝導帯
へ励起されると,充満帯には電子の抜けた孔(穴),すなわち正(+)の電荷を
5-2
持った正孔(ホール)ができることになる。そして,この伝導帯の電子を自由
電子という。 この自由電子や充満帯の正孔は容易に移動することができる。半導体は温度
が上がると,電気抵抗が小さくなるのはこのためである。室温における伝導帯
の自由電子や充満帯の正孔の数は極めて少ないので,純粋なシリコン(Si)の単結晶からなる半導体(真正半導体)の電気抵抗は極めて大きくなる。とはい
っても,半導体は,導体というには抵抗が大きすぎるし,絶縁物というには無
視できないほどの電流が流れる。そのため,半導体と名付けられたのである。 (2) 不純物半導体 この真性半導体の電気抵抗を実用的なレベルにまで小さくするために,不純
物を加えたものが不純物半導体である。不純物としてホウ素,アルミニウム,
インジウムなどの+3価の原子(アクセプタ)やリン,ヒ素,アンチモン,窒素などの+5価の原子(ドナー)を極微量加えたものである。前者は p型半導体,後者は n型半導体と呼ばれている(図 3参照) p型半導体では,不純物原子の最外殻の電子は Siの電子に比べて 1個少ないために,正の電荷をもつホールが不純物原子の周りに 1個できる。また,n型半導体では,逆に不純物原子の最外殻の電子は Siの電子に比べて 1個多いために,不純物の周りに自由電子が 1 個できる。これらのホールや自由電子は,室温程度の熱エネルギーで不純物原子の束縛から開放されて,結晶内を自由に動き回
ることができる。したがって,これらの半導体に電圧を加えると,p型半導体ではホールが電圧の高い方から低い方へ,また,n型半導体では自由電子が電圧の低い方から高い方へ流れることになる。つまり,この n 型半導体と p 型半導体なる 2 種類の不純物半導体をいろいろ組み合わせ,また構造を工夫してできたのが,ダイオード,トランジスタなどの各種半導体デバイスである。
図 3 不純物半導体
5-3
(3) 電子と正孔の pn 接合面での役割 p型および n型半導体を接合したものを pn接合と呼ぶ。この接合面にきわめて近い領域(近傍)では,拡散現象によって,p 型領域から正孔が n 型領域へ,一方,n 型領域から電子が p 型領域へ流れ込む。これらの流れ込んだ正孔および電子は,それぞれ,そこに存在する電子および正孔と結合して消滅する。
このため,接合面近傍では電子や正孔のキャリアが存在しない領域が形成され
る。この領域を空乏層という。 この空乏層では,イオン化して不純物原子によって,n型領域から p型領域に向けての電界が生じる。この電界による電位差(電位障壁)は,拡散現象によ
るキャリアの一定以上の移動を抑制して平衡状態となる。この状態を熱的平衡
状態という(図 4参照)。この pn接合の状態をエネルギー準位で表したのが図5である。つまり,この電位障壁こそ,一方通行の仕掛け人である。
図 4 pn接合の熱的平衡状態 図 5 pn接合のエネルギー準位 (4) pn 接合面に順方向バイアスを加える場合 ここでは,ダイオードの整流作用をエネルギー準位図を使って説明する。ただ,
pn接合面への電圧(バイアス)の加え方が 2通りあるので,それぞれ別々に考えてみる。 つまり,順方向バイアスと逆方向バイアスがある。まず,順方向バイアスから
考える。p型領域に正(+)の,n型領域に負(-)の電圧(順方向)を加えると,この電圧が電位障壁を低くするように作用し,p 型領域の正孔が n 型領域へ,また n 型領域の自由電子が p 型領域へ,それぞれ空乏層領域を乗り越えて移動する。なお,電流は p型領域から n型領域へと流れる(図 6(a):順方向バイアス 参照)。これを順方向電流という。この順方向電流は電圧 Vに比例するのではなく, 式(1)に表されるように指数関数的に増加する(図 7参照)。 I = Is [exp(eV/kT)-1] (1) ここで,式(1)の記号は,e:電子の電気量,k:ボルツマン定数,T:絶対温度,Is:逆飽和電流を表す。また,T = 300[K]のとき,e/kT ≒ 39[V-1]となる。
qφ
5-4
図 6 pn接合の整流作用
図 7 pn接合の電流-電圧特性
(5)pn 接合面に逆方向バイアスを加える場合 p型領域に負(-)の,n型領域に正(+)の電圧(逆方向)を加えると,それぞれの領域のキャリアは空乏層領域と反対方向に移動する。したがって,空
乏層領域は広がり,電位障壁はさらに高くなる。この場合,真性半導体として
両領域に微量に存在する少数キャリアには,空乏層領域は電位障壁にならず容
易に乗り越えて移動することができる。 この電流は逆方向飽和電流とよばれて,式(1) で V →‐∞ の電流値‐Isとなり,小さな値である。実際には,逆方向電圧を大きくすると,ある値(ツェ
ナー電圧)で急激に電流が流れ始める。これは,降伏現象と呼ばれる。この現
象が顕著なダイオードをツェナーダイオードと称し,定電圧電源に利用されて
いる。 このように,ダイオードは順方向には電流を流すが,逆方向にはほとんど電
流を流さない,すなわち整流作用(電流の一方通行)の特性を持っている。
p型 n型 p型 n型 q(φ-V) q(φ+V)
qV qV
e = 1.602×10-19 C k = 1.3806×10-23 J/K 300[K]で kT = 25.9 meV
5-5
(6)発光ダイオードについて: 発光ダイオードは,半導体を用いた pn接合と呼ばれる構造で作られている。 発光はこの中で電子の持つエネルギーを直接,光エネルギーに変換することで
行なわれ,巨視的には熱や運動の介在を必要としない。電極から半導体に注入
された電子と正孔は,異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ,pn接合付近にて禁制帯を超えて再結合する。再結合時に,禁制帯幅(バンドギャップ)
にほぼ相当するエネルギーが光として放出される。その模様を図 8に示す。放
出される光の波長は材料のバンドギャップによって決められ,基本的に単一色
で自由度は低いが,青色または紫外線を発する発光ダイオードの表面に蛍光塗
料を塗布することで,白色や電球色などの様々な中間色の発光ダイオードも製
造されている。
図 8 電子・正孔の分布模式図
[ 使用機器 ]
・ 直流安定化電源 1台 ・ 直流電流計 1台 ・ 直流電圧計 1台 ・ ブレッドボード 1台 ・ ワイヤキット 1セット ・ ダイオード 1個 ・ 発光ダイオード 1個 ・ 抵抗(2kΩ) 1個
5-6
2kΩ
[ 実験方法 ]
実験1.ダイオードの順方向電圧‐電流特性の測定 図9の回路によって電圧‐電流特性を測定する。直流電流計,直流電圧計の
接続に注意すること。測定に際しては,電圧を 0.05V 間隔で変化させ,電流が約 10mA程度になるまで測定する。約 0.6V付近から電流が急激に増加するので電圧の加え方に注意すること。
図 9 順方向特性の測定回路
図 10 逆方向特性の測定回路
実験2.ダイオードの逆方向電圧‐電流特性の測定 逆方向の電圧‐電流特性の測定は,流れる電流が微弱なため,図10に示す
測定回路によって測定する。直流電流計,直流電圧計の接続については,順方
向の電圧‐電流特性の測定の場合とは異なることに注意すること。測定は電圧
を 2V間隔で 0Vから‐10Vまで測定する。 実験3.発光ダイオードの電圧‐電流特性の測定 発光ダイオードについても順方向,逆方向とも上述の電圧‐電流特性の測定
法と同様である。ただし,発光ダイオードにおいては,逆方向耐電圧が 5V程度
10V レンジ
ダイオード: 1V レンジ 発光ダイオード: 3V レンジ
10mA レンジ
5-7
と低いため,本実験では,逆方向電圧-電流特性の測定時には逆方向印加電圧は最大 3Vとする。
[ 実験結果 ]
実験1,実験2および実験3で得られた結果を,それぞれ,ダイオードにつ
いては表 1 および表 2 に,また,発光ダイオードについては,それぞれ,表 3および表 4に記入する。 表 1 ダイオードの電圧‐電流特性(順方向)
VF [V] 0 0.05 0.10 … 0.40 0.50 0.60 IF [mA] 2.0 5.0 8.0 10.0
表 2 ダイオードの電圧‐電流特性(逆方向)
VR [V] 0 -2.0 -4.0 -6.0 -8.0 -10.0 IR [mA]
表 3 発光ダイオードの電圧‐電流特(順方向)
VF [V] 0 1.0 ・・・
IF [mA] 2.0 5.0 8.0 10.0 表 4 発光ダイオードの電圧-電流特性(逆方向)
VR [V] 0 -1.0 -2.0 -3.0 IR [mA]
さらに,表1~表4のデータをもとに,それぞれ,ダイオードおよび発光ダ
イオードの電圧‐電流特性のグラフを作成せよ。なお,グラフの作成に際して
は,横軸を電圧値,縦軸を電流値とせよ(参考資料 1,2のグラフ参照)。
[ 考察 ]
(1) 本実験で何が分かったか述べよ。
(2) ダイオードおよび発光ダイオードの違いについて述べよ。
5-8
参考資料 1 ダイオードの電圧・電流特性グラフ
(ただし,本実験ではツェナーダイオードは対象外のため無視してよい。)
5-9
参考資料 2 発光ダイオードの電圧・電流特性グラフ
6-1
6.太陽電池
[ 目的 ]
昨今,自然エネルギーとして話題となっているソーラーパネル,即ち,太陽
電池を身近に認識し,半導体としての太陽電池の電圧・電流特性を実験を通し
て調査する。
[ 原理 ]
太陽電池とは光エネルギーを電池エネルギーに変換する素子である。一般に
光エネルギーを電気エネルギーへ変換する半導体を光‐電気変換素子と言う。
この中には太陽電池のほかに,光信号を電気信号に変えて光検出器として利用
されるものもある。 pn接合に禁制帯幅より光子エネルギーが大きい光が入ると,起電力を生じる場合がある。その性質を光の検出に用いるものをフォトダイオードと呼ぶ。光
を受けて電気エネルギーを取り出すものを太陽電池と呼んでいる。 pn 接合 pn接合とは,一部が p型半導体,他の部分が n型半導体になった半導体結晶のことである。pn接合のダイオードは半導体デバイスを理解する上で基礎として重要であるだけでなく,整流器,可変コンデンサ,光電池などに幅
広く活用されている。p型半導体,n型半導体それぞれのエネルギー準位を図1に示す。
図 1 接合していない pn型半導体のエネルギー準位図
6-2
p型半導体では価電子帯すぐ上の不純物準位(アクセプタ準位,アプセプタとはaccepter,受け入れるという意味,すなわち電子を受け入れる。)に電子が励起(上がり)して,電子の抜けた後が「正孔」(図 1の白抜き丸)として移動できる。一方,n型半導体では伝導帯すぐ下の不純物準位(ドナー準位,ドナーとはdonor,提供するという意味,すなわち電子を提供する。)から電子が励起し,その電子(図 1の黒抜き丸)が伝導帯を移動する。 pn接合のエネルギー構造を見てみる。図 2に光が当たっていない場合を示す。この状態で禁制帯幅を超える光のエネルギーが入ると光励起により電子と正孔
が発生する。そして図 3 に示すように n 型半導体部には電子が,p 型半導体部には正孔が集まる。これにより起電力が生ずる。
図 2 pn接合 光照射がない場合
図 3 pn接合に光があたった場合 太陽電池 さて,本実験で用いる太陽電池は図 4に示すようにシリコン(Si)単結晶基板(n型半導体)にホウ素(硼素:B, Siと比して電子不足)を熱拡散することで pn接合したものである。表面に出ている部分が p型部である。太陽電池は乾電池などは異なり負荷抵抗の大小により定電圧電源から定電流電源
に変化する。電気的規格は図 4に示す負荷抵抗が R=∞ における電圧,すなわち開放電圧と,R=0 で流れる電流,すなわち短絡電流で表現される。更に出力が最大になる値を求めるために負荷抵抗 R を変えて,電圧および電流を測
6-3
定する。電圧電流曲線(図 5)で囲まれる長方形から最大面積(長方形の面積 E×I は電力)のものを求めることで得られる(図 5の点線部と 式(1)), 最大出力=最適動作電圧×最適動作電流 (1) また照度と入射エネルギーの関係は,式(2) 入射エネルギー 1[W/m2] =120[lx] (2)
図 4 pn接合太陽電池の構造
図 5 太陽電池の電圧電流特性曲線
[ 使用機器 ]
・ 太陽電池パネルユニット(図 6) 1台 (単結晶シリコン太陽電池を使用)
・ ディジタルマルチメータ(アドバンテスト,型名 R6441A) 1台 (直流電流計として使用)
・ ディジタルマルチメータ(IWATSU,型名 VOAC86) 1台 (直流電圧計として使用)
・ 光源:白熱電球 1台 ・ ルクス計(図7) 1台 ・ 抵抗(5.1Ω~360Ω) 13個 ・ ものさし 1個
6-4
図 6 太陽電池パネル 図 7 ルクス計
[ 実験方法 ]
1.出力特性の実験 (1)図 8の回路を接続する。
図 8 出力特性測定回路 (2)実体図を結線する。
図 9 実体図
ディジタルマルチメータ(電圧計) ディジタルマルチメータ(電流計)
6-5
(3)ディジタルマルチメータの電源を入れ,ファンクションスィッチを押し
て電圧計および電流計にセットする。
図 10ディジタルマルチメータの接続とセレクタスィッチ (4)ルクス計を裏面の手順に従ってスィッチを ON にして,校正する。つぎ
に,太陽電池を設置する位置にものさしを充てて決め,光源用ランプを点
灯する。この位置の照度を測定して,その値を表1に記録する。この位置
に正しく太陽電池を配置する。光源用ランプは高温になるので火傷をしな
いよう注意すること。なお,照度を測定する位置は素子の中央近傍とする。
また,光源を素子に近づき過ぎないよう注意する。
図 11 太陽電池と光源の位置関係図
(5)負荷抵抗の値を変化させて,その抵抗に対応する電圧・電流を表1に記
録する。 2.グラフの作成とデータ処理計算 (1)測定データを用いて以下の 2種類のグラフを描く(次ページの図 12およ
び添付グラフ例を参照)。 ①横軸を電圧値,縦軸を電流値としたグラフ ②横軸を抵抗値,縦軸を電力値としたグラフ
6-6
図 12 電圧・電流特性グラフ例
(2)最適動作電圧および最適動作電流の選定
× × ×
×
×
図 13 最適動作電圧・電流の選定例
測定データの値の中に必ずしも最大値があるとは限らないので,グラフ
上から電圧×電流の値が最大になる点を予測して(ヒント:面積最大)
グラフ上に最適動作電圧および最適動作電流を記し,表2の該当欄に記
入する。
最適値予測点 プロットした点ではない場合もあ
る。
6-7
[ 実験結果 ]
(1)測定データを用いて表1を作成する。
表 1 電圧,電流および電力の測定結果 データ1 照度 lx
R [Ω] 0 5.1 10 20 30 51 75 82 V [V]
I [mA] VI [mW]
R [Ω] 100 130 150 240 300 330 開放 V [V]
I [mA] VI [mW]
(2)表 1をデータを用いて,横軸を電圧,縦軸を電流としてグラフを描く。 (3)同様に,横軸を抵抗,縦軸を電力とするグラフを描く。 (4)入射エネルギー密度の計算
入射光強度は,1 [W/m2] = 120 [lx] であるから 入射エネルギー密度=照度/120 [W/m2] により計算して表 2に記入する。
(5)出力エネルギー密度の計算 太陽電池の受光素子部分の面積を測定する。 S = A×B×2 = [m2] 出力エネルギー密度 = 最大出力/受光素子の面積 = [W/m2]
(6)エネルギー変換効率の計算 エネルギー変換効率=(出力エネルギー密度/入射エネルギー密度)×100 = [%]
(7)最適負荷抵抗の計算 最適負荷抵抗 R0 = 最適動作電圧/最適動作電流 = [Ω]
6-8
(8)太陽電池測定結果集計表(表 2)の作成
表 2 太陽電池測定結果集計表
照度 lx 照度 [lx] 開放電圧 [V] 短絡電流 [A] 最適動作電圧 [V] 最適動作電流 [A] 最適負荷抵抗 [Ω] 最大出力 [W] 入射エネルギー密度 [W/m2] 出力エネルギー密度 [W/m2] 変換効率 [%]
[ 考察 ]
(1) 本実験で何が分かったか述べよ。
(2) 太陽電池の変換効率について考察せよ。
表 3 太陽電池の変換効率(参考:2010年度 NEDO資料を元に作成) 太陽電池の種類 変換効率(%) 結晶 Si ~16 薄膜 Si ~11
CIGS系 ~11 化合物系 ~25
6-9
参考資料 1 太陽電池の電圧・電流特性グラフ例
6-10
参考資料 2 太陽電池の抵抗・電力特性グラフ例
7-1
l B l
I
7.モータ
[ 目的 ]
電磁力でモータの回転子が回転することを確認し,電流と磁界の相互作用に
より発生する電磁力を定量的に測定し,モータの原理を理解することを目的と
する。
[ 原理 ]
(1) 電磁力 いま,図 1のように,磁束密度 Bの一様な磁場の中に磁場の方向と垂直
図 1 電磁力 に長さ l の一本の導線が置かれている場合を考える。このとき,導線に
流れる電流を Iとすると,導線には 式(1) で表される力 Fが働く。 F=IBl (1) このとき,磁場 B,電流 I,力 F の向きは,図 1 に示すようになる。これをフレミングの左手の法則という(図 2参照)。
F
7-2
図 2 フレミングの左手の法則
図 3 モータの原理図 次に,モータの回転子が回転する原理について説明する。いま,図 3のように,磁束密度 Bの一様な磁場の中で一巻きの長方形のコイル abcd(ab=L1,bc=L2)
が,磁場に垂直な Z軸のまわりに回転できる場合を考える。ここで,コイルに電流を流すとコイルの辺 abおよび cdには,フレミングの左手の法則によって,力 Fが図 2に示す方向に働く。 力 Fによって,コイルにモーメントが生じ,コイルが回転する。辺 abおよび辺 cdでは大きさが同じで向きが異なる電流が流れ,各辺に働く力の向きが異なるため,コイルにモーメントが生ずる。これが,モータの回転子が回転する原
理である。
磁場 B
電流 I
力 F
7-3
[ 使用機器 ]
・ 電磁誘導実験装置 1セット ・ 磁束計 1台 ・ 直流電流計 1台 ・ バネばかり 1台 ・ 接続コード(バナナ―バナナ)
赤/黒 各1本
[ 実験方法 ]
(1) 磁束計を用いて,二つの磁石の間の磁束密度 Bを測定する。 (2) 図 4に示すように,ハンドル(図 4参照)を回して角度θが 0度にな
るようにする。
図 4 モータ実験装置外観
(3) 電池を電池ボックスに装着する。 (4) 図 3に示す回路になるように配線する。このとき電流が測定できるよ
うに直流電流計を接続する。 (5) ハンドルを回して角度θが 90 度になるようにする。このとき,角度
θを 90 度に保とうとすると,ハンドルに力を必要とすることを体感する。この状態で電流を測定する。
(6) ハンドルに必要な力の接線方向成分 f 測 を,バネばかりで 5回測定する。ただし,後述の実験結果(1)の説明を読んだ後測定を行うこと。
7-4
(7) つぎに,ハンドルにかかる力f理 を以下に述べる要領で計算で求める。 図 3の abにかかる力Fは,(式1)より F=IB×(abの長さ) (2) 図 3の cdにかかる力Fは,(式1)より F=IB×(cdの長さ) (3) コイルの巻き数をnとすると,コイルにかかる力Fは F=nIBL1 (4)
ここで,L1 =(abの長さ)=(cdの長さ) (図 5参照) ただし,n = 200とする。 力 Fとそれと釣り合うハンドルの力 f 理との関係は,摩擦を無視すると次式で表される。
2F =f理 ×h2×h
4
h1×h
3
(5)
従ってハンドルにかかる力fは,式(5) を変形して
f理= 2F×h1×h
3
h2×h
4
(6)
ただし,n=200,h1=40mm,h2=8mm,h3=32mm,h4=35mm L1=80mm,L2=80mm
図 5 歯車のギア比
[ 実験結果 ]
(1)磁束密度および導線に流れる電流を下記にまとめる。 磁束密度 B [T] 電流 I [mA]
7-5
(2)ハンドルにかかる力を表1にまとめる。
表 1 ハンドルにかかる力f測の測定値 測定回数 1 2 3 4 5 平均 平均 力f測[gw] [gw] [N]
1000[gw]= 9.8[N]
(3)実験方法(7)で求めた理論値 f理は; ハンドルにかかる力f理 [N]
[ 考察 ]
(1) ハンドルにかかる力fに関して,計算値f理と測定値f測を比較検討せよ。
また,計算値f理と測定値f測に差があればその原因について考察せよ。
(2) 電流,磁束および電磁力はそれぞれベクトル量であるが,それらの量お
よび方向における関係について考察せよ。