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1 ソリューション ACQUITY UPLC ® Xevo ® TQ MassLynx™ ソフトウェア TargetLynx™ アプリケーション マネージャ キーワード RADAR™ スキャンテクノロジー、 マトリックス効果 TargetLynx Matrix Calculator: 頑健な分析メソッドを構築するためのツール はじめに 生体試料中薬物濃度測定における分析技術には、感度および選択性の観点から、 LC/MS/MSが選択されます。 LC/MS/MSを用いた生体試料の定量分析メソッドの 開発は、マトリックス効果のため、すなわち目的成分のレスポンスがマトリックス の種類によって大きく異なる可能性があるため、複雑になっています。 1 しかし結果 が長期的に完全であると確信できるような堅牢なメソッドを開発することが必要 です。 イオン化の過程における帯電が競合する、同時溶出マトリックスによるマトリックス 効果は、シグナルの抑制または促進として現れます。マトリックス効果は、以下の ような多くの要因によって引き起こされます。: n リン脂質 n 被験者間差 n 不純物 これら全てが、生体試料分析の真度および精度上のエラーを引き起こす原因とな る可能性があります。 2 メソッドバリデーションの過程のどこかで、マトリックスによるイオン抑制を測定し、 マトリックスファクターを算出する必要があります。これは、時間がかかる工程で あり、 MS データを外部のソフトウェアプログラムに出力しなくてはならない場合が 多くなっています。このアプリケーションノートでは、マトリックスファクターを自動 で予測するための簡単なアルゴリズムの使用について、ご紹介いたします。 TargetLynx Matrix Calculator について TargetLynx アプリケーションマネージャを用いる際に、サンプルリスト上で以下の 3種類の中からサンプルタイプを指定します。 : n Analyte – 目的の1化合物(必要に応じて内部標準)をカラム分析し、保持時間 を特定 n Solvent – 目的成分と内部標準物質をポストカラムでインフュージョンしなが ら、溶媒ブランクをカラム分析 n Matrix blank – 目的成分と内部標準物質をポストカラムでインフュージョンし ながら、マトリックスブランクをカラム分析 利点 TargetLynx Matrix Calculatorは、生体試料分析 メソッド開発中にマトリックスファクターを算出 することのできる便利な機能です。これはメソッド の長期的な堅牢性に影響を与える可能性のある、 マトリックスの影響を受けやすいメソッドかどう かを確認するのに役立ちます。 n 同時溶出する代謝物 n 製品の分解

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Page 1: TargetLynx Matrix Calculator - Waters Corporation...TargetLynx Matrix Calculator について TargetLynx ア プ リケ ーショ ンマネ ジャを用いる際に、サ ル スト上で以下の

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ソリューションACQUITY UPLC®

Xevo® TQ

MassLynx™ ソフトウェア

TargetLynx™ アプリケーション マネージャ

キーワードRADAR™ スキャンテクノロジー、 マトリックス効果

TargetLynx Matrix Calculator: 頑健な分析メソッドを構築するためのツール

はじめに生体試料中薬物濃度測定における分析技術には、感度および選択性の観点から、 LC/MS/MSが選択されます。LC/MS/MSを用いた生体試料の定量分析メソッドの 開発は、マトリックス効果のため、すなわち目的成分のレスポンスがマトリックスの種類によって大きく異なる可能性があるため、複雑になっています。1 しかし結果が長期的に完全であると確信できるような堅牢なメソッドを開発することが必要です。

イオン化の過程における帯電が競合する、同時溶出マトリックスによるマトリックス効果は、シグナルの抑制または促進として現れます。マトリックス効果は、以下のような多くの要因によって引き起こされます。:

n リン脂質

n 被験者間差

n 不純物

これら全てが、生体試料分析の真度および精度上のエラーを引き起こす原因となる可能性があります。2

メソッドバリデーションの過程のどこかで、マトリックスによるイオン抑制を測定し、マトリックスファクターを算出する必要があります。これは、時間がかかる工程で あり、MSデータを外部のソフトウェアプログラムに出力しなくてはならない場合が多くなっています。このアプリケーションノートでは、マトリックスファクターを自動で予測するための簡単なアルゴリズムの使用について、ご紹介いたします。

TargetLynx Matrix Calculator についてTargetLynx アプリケーションマネージャを用いる際に、サンプルリスト上で以下の3種類の中からサンプルタイプを指定します。:

n Analyte – 目的の1化合物(必要に応じて内部標準)をカラム分析し、保持時間を特定

n Solvent – 目的成分と内部標準物質をポストカラムでインフュージョンしながら、溶媒ブランクをカラム分析

n Matrix blank – 目的成分と内部標準物質をポストカラムでインフュージョンしながら、マトリックスブランクをカラム分析

利点TargetLynx Matrix Calculatorは、生体試料分析 メソッド開発中にマトリックスファクターを算出することのできる便利な機能です。これはメソッドの長期的な堅牢性に影響を与える可能性のある、マトリックスの影響を受けやすいメソッドかどうかを確認するのに役立ちます。

n 同時溶出する代謝物

n 製品の分解

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2 Analysis of Intact Lipids from Biologics Matrices by UPLC/Ion Mobility TOF-MS

溶媒およびマトリックスブランクを複数回注入し、解析したデータのCV値を算出します(図1)。

図1. マトリックスファクターの実験3種類の模式図

図2はマトリックスファクター計算のためのワークフローを示したものです。サンプルのマトリックスファクターの算出については、図5に示しました(MF=マトリックスファクター, A =面積値)。この計算式がマトリックスカリキュレータに組み込まれており、3種類のLC/MRMの実験データを解析し、MFおよびISで補正されたMFが自動計算されます。

AN および ISをカラム分析

2)溶媒ブランク を注入

3)マトリックス  ブランクを注入

LCカラム

1)目的成分の プロファイルを確認

AN および ISをポストカラムインフュージョンしながら溶媒ブランクを分析

AN および ISをポストカラムインフュージョンしながらマトリックスブランクを分析

MRM シグナル

AN および IS をTeeで合流

AN = AnalyteIS = Internal standardMRM = Multiple reaction monitoring

ST EP 1 (図1)目的成分、溶媒ブランクおよび

マトリックスブランクのLC/MS/MS分析

ST EP 2 (図3)A. TargetLynx method editorの「Multiple Traces」を選択

B. 通常通り、サンプルリストからデータ解析を実行

ST EP 3「Solvent」および「Matrix」の

クロマトグラムの各データポイントを「Analyte」のクロマトグラムの

各データポイントのレスポンスに乗算

STEP 4: 結果画面 (図4)マトリックスファクターまたは

内部標準物質があれば補正されたマトリックスファクターを表示

図2.マトリックスファクター算出のワークフロー

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3Analysis of Intact Lipids from Biologics Matrices by UPLC/Ion Mobility TOF-MS

図3. TargetLynx メソッドエディタ

図4. サンプルマトリックスファクターレポート

図5. 目的成分のマトリックスファクターの算出

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4 Analysis of Intact Lipids from Biologics Matrices by UPLC/Ion Mobility TOF-MS

結果および考察

Matrix Calculatorについて血漿中のプロピオン酸フルチカゾンの分析を行いました。アセトニトリル(2:1)を用いて血漿の除タンパクを行いました。0.70分の短時間グラジエント、および2分の長いグラジエントの2種類の試験系を用いそれぞれのメソッドにおける、フルチカゾンの溶出プロファイルを決定しました。フルチカゾンおよび内部標準物質(D3)は、ポストカラムでインフュージョンして、溶媒ブランク(n=5)およびブランク 血漿サンプル(n=5)を分析しました。データ解析および各LC条件によるマトリックス効果を自動計算するために、TargetLynxを用いています。

O

O

OH

CH3

H

CH3

F

F

H

CH3

OS

F

O

CH3

図6. プロピオン酸フルチカゾンの構造

分析条件

LC 条件ポンプ: Waters ACQUITY UPLC Binary Solvent Manager

オートサンプラ: Waters ACQUITY UPLC Sample Manager

カラム: ACQUITY UPLC BEH C18

1.7 µm, 2.1 x 50 mm

カラム温度: 45℃

サンプル温度: 4℃

注入量: 5 µL

流速: 0.6 mL/min

移動相 A: 0.1% アンモニア水

移動相 B: メタノール

グラジエント 1: 5% ~ 95% B(0.7分間)

グラジエント 2: 5% ~ 95% B(2分間)

MS 条件MS システム: Waters Xevo TQ

イオン化モード: ESI ポジティブ

キャピラリー電圧: 1.0 kV

化合物: プロピオン酸フルチカゾン 501 > 293

コーン電圧: 18 V

コリジョンエネルギー: 20 eV

化合物: プロピオン酸フルチカゾン–D3 504 > 293

コーン電圧: 18 V

コリジョンエネルギー: 20 eV

化合物: リン脂質 184 > 184

コーン電圧: 75 V

コリジョンエネルギー: 4 eV

RADAR:定性用スキャン スキャン範囲 100~900 amu

スキャン速度: 10,000 amu/s

イオン源温度: 150℃

脱溶媒ガス温度: 450℃

脱溶媒ガス流量: 1000 L/hr

サンプル抽出血漿タンパクをアセトニトリル(2:1)で除タンパク処理

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5Analysis of Intact Lipids from Biologics Matrices by UPLC/Ion Mobility TOF-MS

グラジエント条件 1: 5~95% メタノール(0.70分)図7のLC/MS/MSクロマトグラムから、フルチカゾンの保持時間が0.97分であることが確認できます。さらに フルチカゾンおよび内部標準物質の混合溶液のポストカラムインフュージョンを行いながら、血漿ブランク サンプルをLCインジェクターより注入して、両者のクロマトグラムを重ね合わせたところ、フルチカゾンが溶出する領域では、イオン化抑制が起こっていることがわかります。

図8に示すように、計算されたマトリックスファクターである0.34は、大きなマトリックス効果を反映するものですが、重水素ラベル体を内部標準物質に用いて補正した結果は、0.99となっています。インフュージョンのクロマトグラムから、大きな影響を与えるマトリックスと同じ保持時間に、目的成分が溶出することが確認できます。

Time0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40

%

1

FluticasoneFast gradient

Plasma blank with post-columninfusion

図7. 高速グラジエントによるLC/MS/MSクロマトグラム。フルチカゾンのピークとフルチカゾンおよび内部標準物質をポストカラムでインフュージョンし、ブランク血漿を カラム分析したクロマトグラムの積み重ね表示。

図8. グラジエント条件1に対するマトリックスファクターレポート

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6 Analysis of Intact Lipids from Biologics Matrices by UPLC/Ion Mobility TOF-MS

グラジエント条件 2: 5~95%メタノール(2分)2分のグラジエントを用いた場合、フルチカゾンのピークの保持時間は、1.95分(図9)でした。図10のマトリックスファクターレポートにおける計算値は0.91となり、内部標準で補正された値は1.01でした。目的成分とイオン化抑制の原因成分がクロマトグラム上で分離したことがわかります。

Xevo TQ MSは、同時にMSおよびMSMSデータを取り込むRADAR(デュアル‐スキャン/MRM)取り込み機能を搭載しています。RADARを用いることで、定量のためのMRMデータを取り込みながら、バックグラウンドをモニターすることが可能です。3

Time1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00 2.20 2.40 2.60

%

1

Fluticasone2.00-min gradient

Plasma blank with post-columninfusion

図9. 2分のグラジエントによるLC/MS/MSクロマトグラム。 フルチカゾンのピークとフルチカゾンおよび内部標準物質をポストカラムでインフュージョンし、ブランク血漿をカラム分析したクロマトグラムの積み重ね表示。

図10. グラジエント条件2に 対するマトリックスファクターレポート

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7Analysis of Intact Lipids from Biologics Matrices by UPLC/Ion Mobility TOF-MS

クロマトグラムのコンディションによって、潜在的にマトリックス効果を引き起こすあるいは試験の堅牢性を 低下させる可能性のある内因性のマトリックスや代謝物が、目的成分と同時溶出することがあります。MRMだけを用いる場合、特定のプレカーサーイオン > プロダクトイオンだけのモニターとなりますが、定性的なRADARでは、MSスキャン範囲全ての質量を確認できます。

図11では、リン脂質と目的物質の溶出が近接していることを確認できます。このレベルのリン脂質によるマトリックス効果が、結果に大きく影響することが報告されてきました。

図12の血漿ブランクでのRADARによるスキャンから、目的物質を1.95分に溶出させる方が、マトリックスピークと目的ピークの分離が良好であることがわかります。これは、matrix calculatorで得られるデータによって裏付けられています。

図11. 0.70分のグラジエントのLC/MS/MSクロマトグラム。(a) フルチカゾンおよび (d) リン脂質のMRMクロマトグラム。(b) ブランク溶媒および (c) 血漿マトリックスのRADARによるスキャンデータ

Time0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2.25

%

0

0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2.25

%

1

0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2.25

%

4

0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2.25

%

0

0.97

1.081.61

0.831.171.29

1.271.17

1.00

1.791.56 1.97 2.23

0

1

0

1

4

0

4

0

Phospholipids184>184

RADARPlasma blank

RADARSolvent blank

Fluticasone501> 293

0.70-min gradient

Time0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

%

0

0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

%

1

0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

%

4

0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00%

1

1.95

2.792.32

2.19

1.65 2.36

2.29 2.60 2.962.78

%

0

%

1

%

4

%1

%

0

%

1

%

4

%1

Phospholipids184>184

RADARPlasma blank

RADARSolvent blank

Fluticasone501> 293

2.00-min gradient

図12. 2分のグラジエントのLC/MS/MSクロマトグラム。(a) フルチカゾン および (d) リン脂質のMRMクロマトグラム。(b) ブランク溶媒および (c) 血漿 マトリックスのRADARによるスキャンデータ

(a)

(b)

(c)

(d)

(a)

(b)

(c)

(d)

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Waters および ACQUITY UPLC は Waters Corporation の 登録商標です。Xevo、RADAR、および The Science of What’s Possible は Waters Corporationの商標です。その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

まとめnTargetLynx Matrix Calculatorは、メソッド開発の過程でマトリックスファクターを求める便利な手法です。これは、メソッドの長期的な堅牢性に影響を与える マトリックスの影響を受けやすいメソッドを識別するのに役立ちます。

nXevo TQ では、定量のためのターゲットMRMデータと同時に、スキャンデータの取り込み(RADAR)が可能であり、バックグラウンドおよび不特定の化合物を モニターすることができます。3

nRADAR取り込みをTargetLynx Matrix Calculatorと組み合わせることで、堅牢な 生体試料中薬物濃度測定法を開発するための、非常に有用なツールとなります。

nメソッド開発が進んだ段階では、ロットの異なる血漿サンプルを用いてマトリックスファクターを算出するスクリーニング分析が容易になります。

nメソッドバリデーションを行う段階でも、溶媒ブランクおよびマトリックスブランクに目的成分を添加してカラム分析を行うことで、TargetLynx Matrix Calculatorによるマトリックスファクターの算出が可能です。

参考文献1. Tang P, Tang L. Anal. Chem. 1993; 65: 972A–986A.

2. Chambers E, Diehl, DM, Lu Z, Mazzeo JR. Journal of Chromatography B. 2007; 852: 22–34.

3. Dual Scan MRM Mode: A Powerful Tool for Bioanalytical LC/MS/MS Method Development. Waters Application Note. 2009; 720003039en.

日本ウォーターズ株式会社 www.waters.co.jp東京本社 140-0001 東京都品川区北品川1-3-12 第 5小池ビル TEL 03-3471-7191 FAX 03-3471-7118大阪支社 532-0011 大阪市淀川区西中島5-14-10 サムティ新大阪フロントビル11F TEL 06-6304-8888 FAX 06-6300-1734ショールーム 東京 大阪テクニカルセンター  東京 大阪 名古屋 福岡 静岡

このISO9001認証登録ロゴは、Waters Corporationのものです。

適用規格:JISQ9001:2008(ISO9001:2008)登録番号:JMAQA-331 登録日:1999年05月31日審査登録範囲:理科学機器(液体クロマトグラフ・質量分析装置・データ管理システム等)の輸入・販売から保守業務 までのトータルサポート及び保守プランの設計・開発

©2010 Waters Corporation. Produced in Japan. March 2011 720003580JA PDF