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リサーチフェロー 小林雅一 スマート・デバイスとHTML5、そのビジネス 2012413日(金) 株式会社KDDI総研

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第28回 HTML5とか勉強会 講演資料

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リサーチフェロー

小林雅一

スマート・デバイスとHTML5、そのビジネス

2012年4月13日(金) 株式会社KDDI総研

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1

1. スマート・デバイスとは何か、その全体的イメージ

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スマート・デバイスへの前哨:Siri

http://www.youtube.com/watch?v=ZWP8OUytprE

http://www.youtube.com/watch?v=KrTE6b_bJHE

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3

CES 2012: Internet (Smart) TV, LG

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4

手間のかからない直観的UI(Augmented Reality)

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5

Instant data processing with NFC

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6

Voice Control for automobile, Ford Sync Gen.2

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=cdgQpa1pUUE

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7

2. スマート・デバイスに至る歴史的背景

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スマート・デバイスの原点:1960年代に開始されたUI研究

J.C.R. Licklider

情報工学者

DARPA (国防高等研究計画局)

IPTO(情報処理技術部)部長

“Man–Computer Symbiosis(人のコンピュータの共生)”:1960年

人(ユーザー)とコンピュータの関係を著した論文

論文のポイント

①コンピュータの用途を、それまでの単なる数値計算から「統計的推論」、「行動方針の提案」、「決定理論」など多様な情報処理に拡張することを提案

②コンピュータと人間のinteraction(対話的操作方法)を提案

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情報機器のUI研究は、早い時期にAIとIAの2派に分れた

Douglas Engelbart

情報工学者

“A Conceptual Framework

for the Augmentation of

Men’s Intellect

(人の知能を増強するための概念的枠組み)”:1962年

「コンピュータはあくまでも人間の知的活動を支援するツールである」

研究予算を配分

「コンピュータはある種の知的能力において人間と対等の存在になり得る」

Artificial Intelligence(AI)

Intelligence Amplification(IA)

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IA派とAI派:対照的なアプローチ

• IA派の考え方:機械と人が互いに歩み寄る。機械を使い易くするために高度な技術開発もするが、人の方でも、その技術に適応する必要がある。つまりコンピュータとはツールである。

•=現実的なアプローチ

• AI派の考え方:人が機械に適応しようと努める必要はない。機械の方が、人に合わせて何でもしてくれる。つまりコンピュータとはロボットである。

•=SFユートピア的アプローチ

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これまではIA派が優勢だったが、これからはAIの時代

AI派

IA派

1962年 2012年

普及度

プロローグ推論マシン

第5世代プロジェクト

AIの冬 AIの冬

1980年

マウスの発明

ビットマップ・ディスプレイ

マルチ・ウィンドウ

ハイパーテキスト

デスクトップ・メニュ

ツール・バー

プルダウン・メニュ

GUIの完成

Siri(音声操作)

Google Goggles

(画像認識AR)

着実な発展の道を辿ってきたが、

これ以上、進化する余地はない

(そろそろ、限界)

最初から山あり、谷あり

長らく日陰の道を歩んで来たが、ここに来て運気がぐゎっと上がってきた

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なぜAI的アプローチが今、脚光を浴びているのか?

必要は発明の母

モバイル端末の普及によって、GUI(IA)の限界が露呈

機械(ロボット)が人間に合わせてくれる関係(AI)が本当に必要となってきた

IA(ツール):もう限界 AI(ロボット):楽ちん

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音声操作以外のAI事例:AR(Augmented Reality)

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3種類のAR:その実力は?

•①位置情報を使ったAR

•既に製品化されているが、商用化に耐え得るARシステムを構築するには位置情報だけでは無理。位置情報は、むしろ補助的に使う方がいい。

•②マーカーを使ったAR

•ビデオ・ゲームなどで既に製品化されている。

•③画像解析によるAR

• Googleやソニーなど一部の先端的企業が製品化しているが、本格的な商用化には、さらなる研究・開発が必要

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Google Goggles:画像解析とWeb集合知を融合させたAR

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スマート・デバイスを構成するAI以外の要素

ワンタッチの情報処理:人(ユーザー)の手をかけることなく、端末(機械)の方が面倒な仕事をしてくれる

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NFCとは何か

• NFC (Near Field Communication) : 13.56MHzの電磁波を使った近距離無線通信規格

•デバイス(端末)同士、あるいはデバイスとタグなどが近距離(数cm~70cm)でコミュニケーションするための技術

• NFCのデータ転送速度:106K/212K/424K/848K bps

•能動通信(両方が電源を持つ)と受動通信(片方が電源を持たない)の両方が可能

• NFCは非接触ICカードの無線通信部分の技術を規格化したもの

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非接触ICカードとNFCの関係

FeliCa ISO/IEC 14443 Type A

(Myfare) ISO/IEC 14443 Type B ISO/IEC 15693

近接型(10cm以下) 近傍型(70cm以下)

ファイル・システム

エア・プロトコル

(無線通信規格)

=NFC

FeliCa OS Myfare OS 何らかのOS 何らかのOS

NFCIP-1 (ISO/IEC 18092) NFCIP-2 (ISO/IEC 21481)

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NFCの応用事例:韓国SK Telecomの野球場サービス

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3. スマート・デバイスを巡る業界動向

(MWC2012の取材も交えて)

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スマート・デバイス(AI的アプローチ)をリードするApple

Multi touch data fusion

Contactless payment

Voice Control

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Siri:外部の既成技術を組み合わせるアップルの真骨頂

元々は米DARPA(国防高等研究計画局)の研究プロジェクト

CALO(Cognitive Assistant that Learns and Organizes)

ここで培われた技術を携えて起業したベンチャー企業Siriを、アップルが2010年に買収

SiriはAI(人工知能)とWeb集合知を組み合わせたサービス

背後でWolfram Alpha(http://www.wolframalpha.com/ )が大きく寄与している

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Mobile World Congress(MWC)2012

モバイル関連の国際見本市・会議としては世界最大のイベント。毎年バルセロナで開催

今回は2012年2月27日~3月1日まで開催

参加者は6万7000人

毎年MWC会場となる「Fira de Barcelona」

背後にある宮殿はカタルーニャ美術館 基調講演・パネル討議には、世界の主要通信キャリアやIT企業、端末メーカーなどのトップが参加する

見本市にも同じく、世界の主要ICT企業がブースを構える

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MWC2012: 通信キャリアからIT企業、韓国企業に主導権が移行

MWCは元々、欧米の通信キャリアが中心になって始めたイベントだが、最近は彼らよりもグーグルなどIT企業や韓国メーカーの存在感が強くなっている。

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MWC2012: 日本企業の存在感は今一つ

MWC 2012に出展した主な日本企業:

NEC, NTT DoCoMo, Gree, 富士通

日本の中小企業合同ブースも設けられた。

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MWC2012:スマートフォンとタブレット

LGの5インチ型のタブレット端末「Optimus Vu」 LGの Quad Coreプロセッサを搭載したLTE対応スマートフォン「Optimus 4X」

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MWC2012: デバイス単体での差別化は難しくなっている

ノキアの最高経営責任者(CEO)Stephan

Elop氏

HTCの最高経営責任者Peter Chou氏

スマートフォン搭載カメラの画素数を自慢するなど、スペック競争に終始

スマートフォンは早くもコモデティ化へ(基本仕様は同じ。価格と高スペックで勝負)

Nokia Lumia 610(189 Euro)

Nokia 808 PureView(4100万画素カメラ) MWC2012二日目のパネル討議「これからのスマートフォン・ビジネス」

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MWC2012: マイクロソフトもスペック重視

iPhoneかAndroid端末 v.s.

Windows Phoneとの他流試合

カメラ、メール、ソーシャル機能等、幾つかの項目に分けて性能を競い、もしも参加者の持っているスマートフォンがWindows Phoneを負かしたら、参加者は100ユーロの賞金をもらうことができる。

MicrosoftがMWC2012会場で作成した「スマートフォンのスペック比較表」

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MWC2012: 日本メーカーもデバイス差別化を工夫

富士通は会場の入り口に水を張った容器を置き、同社のアンドロイド搭載タブレットをそこに浸して防水性をアピールしていた。

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MWC2012:Eric Schmidt講演

“Chrome for Android”を披露するも、同社ビジネスにおけるChromeとAndroidの戦略的齟齬については言及せず

「アンドロイド・スマートフォンは2013年に10

0ドルを切る。値段はその後も下がり続け、70ドルを切ると、従来とは全く異なるスマートフォン市場が生まれるだろう」

「アンドロイドをスマートフォンだけでなく、テレビや自動車など、あらゆるデバイスに広げて行きたい。そのため自動車向けアプリなど、アンドロイド向けのアプリ配信システムを充実させて行きたい」

Eric Schmidt Keynote Speech:「これからのIT社会とグーグル」

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MWC2012: 総括

•スマートフォンは早くもコモデティティ化(価格破壊とスペック競争)

•グーグルや韓国メーカーはAIの導入によるスマート・デバイスに注力

•日本企業の存在感が薄れている。来場者を惹きつける尖端技術の展示が見られない

•デバイス単体での差別化は難しく、今後は家電や自動車など異業種をまきこんだネットワーク化が重要になっていく

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4. スマート・デバイス成功の鍵を握るHTML5

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マルチ・デバイス(マルチ・スクリーン)時代の到来

スマート・デバイスへのサービス

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音楽 動画

ゲーム

写真

個人情報

仕事情報

スマートフォン

電子ブック・リーダー タブレット

フォトフレーム

自動車

テレビ

活字 ネットブック PC

課題:異種デバイス間におけるコンテンツ共有

ウエブ・アプリ(HTML5)の必要性が認識される

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増税の前にやることがあるだろ

野田佳彦首相(54)が進める消費税増税に暗雲が立ち込めてきた。 官僚主導体制の打破、天下りや税金の無駄遣いを一掃するという当初の公約を全て反故にした民主党への国民の怒りは根強く、政権の運営は今後、さらに困難・・・

毎朝新聞.com

官僚の税金無駄遣いや天下りを放置して増税を訴える首相

ゲーム

ワープロ

表計算

従来のHTMLを使うと・・・ これからのHTML5を使うと・・・

ウエブ・サイト=何かを見るためのホームページ ウエブ・サイト=何かをするためのプラットフォーム

(Platform for Dynamic Application program)

HTML5でウエブはどう変わるか

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HTML5の本質 • ブラウザがアプリケーションのプラットフォームになる

• HTML5のオフライン機能

• Device API:内部部品(カメラ、センサー等)へのアクセス機能等々・・・

•ブラウザとOSの境界線が消える、ブラウザがOSになる

•Browser ≒ OS

•ブラウザーが情報処理のプラットフォームになる

ネイティブ・アプリ

ウエブ・アプリ

これまで これから

OS Platform = OS

Platform = Browser

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ブラウザとOSの一体化:Boot to Gecko at MWC2012

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HTML5が注目されるのは何故か:その背景

• スマート・デバイスを巡る米IT列強のプラットフォーム対抗戦

• ユーザーとコンテンツ・プロバイダーを囲い込むClosed Platform

アップル製端末

iPhone, iPad, iPod,

iTV・・・

iTunes in the Cloud

アップルが提供するコンテンツは

アップル製端末でしか使えない

Apple

Android搭載端末

(スマートフォン、タブレット、スマートTV・・・

Google Play

Googleが提供するコンテンツはAndroid端末でしか使えない

Google

Kindle, Kindle Fire

Amazon Cloud Drive

アマゾンが提供するクラウドは

アマゾン製端末でしか使えない

Amazon

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MWC2012: FacebookのHTML5戦略

ウエブ・アプリ:3つの問題

①「中小のソフト開発業者が製作したウエブ・アプリは、ユーザーの目にとまりにくいこと」

②「(異なるブラウザに応じて)動き方にバラつきが生まれるフラグメンテーション」

③「課金システムなどマネタイジングが整備されていないこと」である。

Facebookは同社の「Open Graph」と呼ばれるモ

バイル端末向けのソーシャル・グラフを中小のソフト開発業者に開放し、①の問題を解決する。

またW3Cと協力し、「ringmark」と呼ばれるベンチ

マーク・テストを実施し、異なるブラウザの互換性を向上させ、②の問題を解決する。

さらに世界各国のキャリアと提携して、キャリア決済の仕組みをウエブ・アプリ市場に導入することで③の問題を解決するという。

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通信キャリアのHTML5への取り組み

WAC(Wholesale Applications Community) One API by GSMA

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Verizon Telematics: HTML5 + LTE

CES2011で著者が撮影 http://www.youtube.com/watch?v=aPCpqXyFA8U

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MWC2012: Aurasma(ARとHTML5の連携)

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米IT列強に伍すため日本企業がとるべきHTML5戦略

アップル製端末

iPhone, iPad, iPod,

iTV・・・

iTunes(App store)

アップルが提供するコンテンツは

アップル製端末でしか使えない

アップル

B社のコンテンツ

配信システム

C社のコンテンツ

配信システム

A社製の各種端末

スマートフォン、

タブレット、

ウエブTV・・・

B社製の各種端末

スマートフォン、

タブレット、

ウエブTV・・・

C社製の各種端末

スマートフォン、

タブレット、

ウエブTV・・・

日本メーカーが提供するコンテンツは

どのメーカーの端末でも使える

日本メーカー

A社のコンテンツ

配信システム

どっちにしようかなあ・・・

コンテンツに互換性のある日本製のほうが得かなあ・・・

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HTML5が日本企業にもたらすチャンス

W3Cが共同管理するこの部分に、

日本企業は口出しできる

OS = アプリ・プラットフォーム

(基本的にWindows)

ブラウザ=アプリ・プラットフォーム

OS

(iOS, Android, Windows・・・)

これまで これから

マイクロソフトが単独で所有するこの部分に、

メーカーをはじめ日本企業は口出しできなかった

米IT各社が個々に所有するこの部分に、

日本企業は相変わらず口出しできない

この2層は

いずれ一体化する

経済的な価値を生み出すのは、各種アプリの花が咲くプラットフォームの方だ 。

アプリ・プラットフォームが上位層(ブラウザ)に移行することで、日本企業にもチャンスが生まれる。

(詳しい説明は「日本企業復活へのHTML5戦略」(光文社、4月17日発売)で)