powerpoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群alp(u/l) 91 k(mmol/l) 4.83...

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1 臨床獣医師が知っておくべき 腫瘍随伴症候群 ~がんの動物に起きている様々な異変を理解する~ 埼玉動物医療センター 腫瘍科 林宝謙治 臨床獣医師のための腫瘍学徹底シリーズ 第6回 腫瘍随伴症候群とは・・・ Paraneoplastic Syndromes(PNSs) 腫瘍から離れたところで,腫瘍に関与し て見られる体調の変化,様々な異常 腫瘍随伴症候群を知っていると その兆候から腫瘍を疑うことが可能となる 鑑別診断リストの作成に有効 逆に知らないと 腫瘍を見逃す危険性あり 本講演の内容 腫瘍随伴症候群について 1. 消化器徴候 2. 内分泌学的徴候 3. 血液学的徴候 4. 神経学的徴候 5. 骨の変化 6. 眼の異常 7. 皮膚徴候 がんで見られる消化器徴候 がん性悪液質および食欲不振 蛋白漏出性腸症 胃十二指腸潰瘍 がん性悪液質 癌の動物は食べているのにやせてくる →これは癌によって栄養状態に異変が起きるから →この状態を「がん性悪液質」と言う がん性悪液質は獣医学領域で最もよく見られるがん に伴って起こる体の異変(腫瘍随伴症候群)である がん患者では癌性悪液質の臨床徴候が見られる前に すでに炭水化物,蛋白質,および脂質の代謝に異変 が起きている がん性悪液質の3つのステージ 第1段階:臨床症状なし しかし,高乳酸血症,高インスリン血症, アミノ酸,脂質代謝の異常あり 第2段階:体重減少,食欲低下,活動性の低下 第3段階:著しい衰弱,虚弱,低アルブミン血症

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Page 1: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

1

臨床獣医師が知っておくべき腫瘍随伴症候群

~がんの動物に起きている様々な異変を理解する~

埼玉動物医療センター 腫瘍科 林宝謙治

臨床獣医師のための腫瘍学徹底シリーズ 第6回

腫瘍随伴症候群とは・・・Paraneoplastic

Syndromes(PNSs)• 腫瘍から離れたところで,腫瘍に関与し

て見られる体調の変化,様々な異常

• 腫瘍随伴症候群を知っていると• その兆候から腫瘍を疑うことが可能となる• 鑑別診断リストの作成に有効

• 逆に知らないと• 腫瘍を見逃す危険性あり

本講演の内容

• 腫瘍随伴症候群について

1. 消化器徴候

2. 内分泌学的徴候

3. 血液学的徴候

4. 神経学的徴候

5. 骨の変化

6. 眼の異常

7. 皮膚徴候

がんで見られる消化器徴候

⚫がん性悪液質および食欲不振

⚫蛋白漏出性腸症

⚫胃十二指腸潰瘍

がん性悪液質⚫癌の動物は食べているのにやせてくる

→これは癌によって栄養状態に異変が起きるから

→この状態を「がん性悪液質」と言う

⚫がん性悪液質は獣医学領域で最もよく見られるがんに伴って起こる体の異変(腫瘍随伴症候群)である

⚫がん患者では癌性悪液質の臨床徴候が見られる前にすでに炭水化物,蛋白質,および脂質の代謝に異変が起きている

がん性悪液質の3つのステージ

第1段階:臨床症状なし

しかし,高乳酸血症,高インスリン血症,

アミノ酸,脂質代謝の異常あり

第2段階:体重減少,食欲低下,活動性の低下

第3段階:著しい衰弱,虚弱,低アルブミン血症

Page 2: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

2

この犬はどうでしょう? よーく顔を見て下さい

巨大な肝細胞癌 がん性悪液質からの脱出成功

術前 術後1カ月

がん性悪液質 第1-2段階 この犬はどうでしょう?

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がん性悪液質 第2-3の段階 がん性悪液質 第2-3の段階

がん性悪液質 第3段階 がん性悪液質 第3段階

蛋白漏出性腸症(PLE)

• 基礎疾患

• 蛋白が腸粘膜から吸収できなくなる

• 低蛋白血症(アルブミンの低下)

犬のPLEの主な基礎疾患

1. 消化管の腫瘍

– リンパ腫が多い

2. 慢性腸炎

– リンパ球形質細胞性腸炎

3. リンパ管拡張症

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リンパ管拡張症 犬のPLEのその他の基礎疾患

• 重度の消化管内寄生虫感染

• 腸重積

• パルボ

• 胃潰瘍からの出血

• 真菌感染(日本では稀)

胃十二指腸潰瘍

⚫胃十二指腸潰瘍の原因となる腫瘍

⚫ 肥満細胞腫

✓ ヒスタミン

⚫ ガストリノーマ

✓ ガストリン

ダリエ徴候

細胞診前 細胞診後

※細胞診の際は抗ヒスタミン剤を投与!

埼玉動物医療センターでは

⚫肥満細胞腫を診断したら

⚫ポララミン

⚫ガスター

⚫ステロイドは?

⚫術前には安易に投与しない

⚫外科マージンの設定に影響

⚫ダリエ兆候が重度の場合に使用

皮膚肥満細胞腫の胃穿孔

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胃穿孔部位の潰瘍病変 内分泌学的徴候

⚫高カルシウム血症

⚫低カリウム血症

⚫低血糖

高カルシウム血症

高Ca血症 鑑別診断リスト

腫瘍以外の原因• アジソン病

• 腎不全

• ビタミンD中毒

• 脱水

• 肉芽腫性疾患

• 骨髄炎

• 殺鼠剤中毒

• 若齢動物

• 検査エラー

腫瘍随伴症候群

• 悪性腫瘍随伴高Ca血症

• 悪性腫瘍の骨転移

• 上皮小体機能亢進症

(95%が良性腫瘍)

高Ca血症

⚫縦隔型リンパ腫

⚫胸腺腫

⚫肛門嚢アポクリン腺腺癌

⚫多発性骨髄腫

⚫上皮小体腫瘍

(95%が良性)

⚫甲状腺癌

⚫骨腫瘍

⚫扁平上皮癌

⚫ 犬,猫の高Ca血症の原因として最も多いのが「がん」

原因となる腫瘍

高Ca血症の発生機序その1

⚫破骨細胞の活性化✓多発性骨髄腫

• 破骨細胞活性化因子(OAF)の分泌

✓ 腎癌

• 腫瘍関連性プロスタグランジン

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正常な骨の仕組み• 骨は骨芽細胞が新しい骨を作り,

破骨細胞が古い骨を破壊することで形成

多発性骨髄腫

多発性骨髄腫 高Ca血症の発生機序その2

⚫ 上皮小体ホルモンの過剰分泌(PTH)

→原発性上皮小体機能亢進症(PHP)

⚫ 上皮小体ホルモン関連タンパク(PTH-rp)

→縦隔型リンパ腫,胸腺腫,肛門嚢アポクリン腺癌

※上皮小体ホルモンは,血液中のCa濃度を調整するホルモン

P H P の 原 因(犬)

• 腺 腫 86%

• 過形成 9%

• 癌 腫 5%

Feldman et al(1995)

上皮小体 エコー像(正常)

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上皮小体腫瘍 エコー画像 上皮小体腫瘍 エコー画像

上皮小体腫瘍 CT画像 上皮小体腺腫

上皮小体腺腫 原発性上皮小体機能亢進症

• 治療:上皮小体の摘出

• 術後の低カルシウムは必発

• 術後数日間は頻繁なCa値のモニター必要

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Case1 血中Ca値の推移

6

8

10

12

14

16

18

20

Ca (mg/dl)

VD3,Ca剤投与開始(9.9)

Ope (18.7)

4/24 4/25 4/26 4/27 4/28 4/29 4/30 5/1 5/2 5/3

ビーグル 10歳齢 雄 上皮小体腺腫

Case2 Ca値の推移

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

13.0

14.0

Ca(mg/dl)

0 1 2 5 10

Day

Ca製剤投与開始

3 4 6 7 8

ゴールデン・レトリーバー 7歳齢 雄 上皮小体腺腫

OPE

縦隔型リンパ腫 縦隔型リンパ腫

血液化学検査

TP(g/dl) 6.4 Glu(mg/dl) 87.5

Alb(g/dl) 3.3 BUN(mg/dl) 18.0

Glb(g/dl) 3.1 Cre(mg/dl) 0.8

ALT(U/l) 58 Ca(mg/dl) 15.9

AST(U/l) 37 Na(mmol/l) 144.0

ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83

Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1

※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

抗がん治療後Caは正常値へ回復

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抗がん治療後 縦隔型リンパ腫と似ている疾患

⚫胸腺腫

⚫以前は…胸腺腫の高Caは稀?とされていた

⚫近年の報告では34%(40/116)に高Caあり

⚫治療法や予後が異なるため,リンパ腫との鑑別重要

⚫リンパ腫:抗がん治療,長期予後は不良

⚫胸腺腫 :手術で摘出,多くは予後良好(転移しない)

⚫異所性甲状腺癌

⚫ケモデクトーマ

⚫鰓溝性嚢胞Cecilia SR.JAVMA2013

13 歳齢 柴犬 去勢雄

胸腺腫

胸腺腫とリンパ腫の鑑別

• 画像診断では区別は困難

• 細胞診でだいたいわかる?

• 紛らわしいものは生検が必要

– ツルーカット

Case1 FNA

診断:胸腺腫を強く疑う

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病理組織検査

ツルーカット生検 摘出後 病理組織検査

病理組織診断:胸腺腫(上皮優位型)

Case2 FNA

診断:胸腺腫の可能性が高い

病理組織検査

ツルーカット生検 摘出後病理組織検査

診断:胸腺腫(リンパ球優位型)手術:胸骨正中切開

肛門嚢アポクリン腺癌

25-50%で高Caを発症!

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ミント11歳齢,チワワ,去勢雄

Ca: 15.1mg/dl

膀胱結石,排便困難あり

PTH-rp:17.8 pmol/l (0-1.5)

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Caの推移

15.114.3 14.2

10.59.8

10.29.4

10.2 10.4

9月2日 9月3日 9月4日 9月5日 9月6日 9月7日 9月8日 9月9日 9月10日

mg/dl治療前

手術直前

手術翌日

肛門嚢アポクリン腺癌• 腫瘍を摘出できればCaは通常下がる

• 術後に低Caになる症例もいる

• 原発巣が非常に小さいこともある!

• 内腸骨下リンパ節,下腹リンパ節,仙骨リンパ節は要チェック!

• 転移があれば摘出

• 手術できない場合は

– トセラニブ,放射線治療

症例:だん吉8歳齢,アメリカン・コーッカースパニエル,雄

• 前十字靭帯断裂で紹介受診

• 術前の術前の身体検査で肛門部に腫瘤発見

• 数ヶ月前から多飲多尿あり

• 数日前から食欲不振

• 高カルシウム血症:>16mg/dl

• PTH-rp:12.7pmol/l (0-1.5)

• リンパ節転移なし

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13

Caの推移

16

13.8

10.59.8

98.4

9.28.6

8.1

8月4日 8月7日 8月8日 8月9日 8月10日 8月11日 8月12日 8月13日 8月14日

mg/dl

治療前

手術直前

手術翌日 乳酸カルシウム開始

高Ca血症の発生機序その3

⚫広範囲な骨転移(骨が溶ける)• 前立腺癌,乳癌の骨転移など

骨転移

前立腺癌の骨転移 乳腺癌の骨転移

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乳腺癌の骨転移 腎腺癌の脊椎転移椎間板ヘルニアを疑われ紹介

高Ca血症 臨床徴候

⚫ 腎機能障害⚫多飲多尿

⚫脱水

⚫ 便秘,悪心,嘔吐

⚫ 高血圧

⚫ 膀胱結石

⚫ 衰弱

⚫ 沈鬱

⚫ 頻脈

⚫ 不安神経症状

⚫ 昏睡

高Caに伴う便秘(猫)

高Caに伴う膀胱結石(犬)

高Ca血症の対症治療

• 生理食塩水の輸液

• フロセミド

• カルシトニン

• ビスフォスフォネイト

• プレドニゾロン

※診断が確定するまでは使用しない

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低カリウム血症

低K血症の鑑別診断

⚫腎性喪失

⚫代謝性アルカローシス

⚫代謝性アシドーシス

⚫腎臓以外の原因

⚫下痢,熱傷

⚫インスリン投与

⚫K摂取不足

⚫腫瘍随伴症候群

⚫原発性アルドステロン症

⚫クッシング症候群

症例

• 10歳齢 不妊済み雌 雑種猫

主訴

• 体に力が入らない

• ふらつき

• 頭が下を向いてしまう

身体検査• 左上腹部に腫瘤を触知

血液化学検査

TP 7.1g/dl NH3 88μg/dl

Alb 2.7g/dl BUN 55.1mg/dl

Glb 4.4g/dl Cre 1.9mg/dl

ALT 73U/l CK >2,000U/l

AST 151U/l Ca 9.9mg/dl

ALP 71U/l Na 154.1mmol/l

Tcho 99mg/dl K 2.35mmol/l

Glu 130mg/dl Cl 113.1mmol/l

初診時の様子

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プロブレムリスト

• K低下

• 左副腎腫瘤

• CK上昇

• AST上昇

• BUN上昇

• Cre上昇

評価

• アルドステロン分泌性副腎腫瘍

• 低K血症

• 筋肉融解症

追加検査所見• 血圧:正常

• 血中アルドステロン濃度

110.9ng(正常猫平均値:3.6ng/dl)

• 血漿レニン活性

0.4g/ml/hr(正常猫平均値:2ng/ml/hr)

L

診 断

• 原発性アルドステロン血症

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術中所見

副腎

左腎

病理組織学的検査

術後経過

• 術後1日目

K製剤の添加なしで血清K値は正常

• 術後10日目

一般状態良好

血清K値正常

退院

術後 5日目の様子

アルドステロン症とは• 原発性アルドステロン症

– 副腎皮質球状帯から産生されるアルドステロンの過剰

– 腎臓から分泌されるレニンが負のフィードバックにより低下

– アルドステロン↑,レニン↓

• 続発性高アルドステロン血症

– 細胞外液減少や腎血圧低下によるレニンの増加

– 基礎疾患:CKDや心臓病など

– アルドステロン↑,レニン↑

猫の原発性アルドステロン症

• 猫の原発性高アルドステロン症は1983年に初めて報告

• 稀な疾患とされてきた

• 近年本疾患の報告は増加傾向

• 周術期を乗り越えた場合,完治あるいは長期延命が可能

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猫の原発性アルドステロン症

臨床兆候• 低K血症による以下の症状が全頭(n=10)で

確認

• 頸部の腹側への屈曲

• 運動失調,虚弱

• 80%で高血圧

Lo et al. JVIM 2014

低血糖

低血糖症の症状

• 脱力

• 見当識障害

• 発作

• 昏睡

低血糖症 鑑別

⚫インスリノーマ

⚫膵島以外の腫瘍

⚫副腎皮質機能低下症

⚫飢餓

⚫敗血症

⚫肝機能障害

⚫エラー

(血清分離の遅れ等)

低血糖症の発生機序◆インスリノーマ(膵臓β細胞腫瘍)

血中インスリンが高値

◆膵外腫瘍多くは血中インスリンは低値・腫瘍の糖消費増加

・肝における糖の分解,糖新生の減少

・インスリン様成長因子の分泌

インスリノーマの診断• 血糖値, 血清インスリン濃度

• 超音波検査:検出率約40%(28-75%)

• CT検査:検出率約70%

• 病理組織学的検査

Robben JH et al. J Vet Intern Med 2005Goutal CM, et al., J Am Anim Hosp Assoc. 2012

Fukushima K. et al., J Vet Med Sci. 2016

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チョコトイ・プードル 11歳齢 避妊雌

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肝臓にしか病変が確認できなかった症例

11歳齢,フレンチ・ブルドック 雌

インスリノーマの治療

内科療法

外科療法

化学療法

• ステロイド (0.5-4mg/kg/day)

• グルカゴン (5-13ng/kg/min)

• ジアゾキシド(5-40mg/kg, BID)

• オクトレオチド(20-40μg/kg, q8-12hr )

• 食事管理 (少量, 頻回)

• ブドウ糖 (緊急時)

• 膵部分切除

• ストレプトゾトシン(500mg/m2, q2-3week)

ストレプトゾトシン vs インスリノーマ

糖尿病群

非糖尿病群

ストレプトゾトシン投与群(500mg/m2, q2week; 1-5回投与)

無進行期間

糖尿病群 :280日(91-840, n=8)非糖尿病群 :139日(20-553, n=11)

Northrup NC. J Vet Intern Med. 2013.

有意差なしP=0.15

副作用が使用の大きな障害になる

• 糖尿病 (42%)• 悪心 (37%)• 腎障害 (11%)

ストレプトゾトシン• β細胞のGLUT2を介してに取り込まれ,

殺細胞効果を発揮• 膵臓、消化管内分泌腫瘍に有効

効果的な投与方法の検討が望まれる

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治療法と予後

内科療法

化学療法308 days (n=19)

(range; 20-1404)Northrup NC. J Vet Intern Med. 2013.

外科療法

±外科

外科単独

785 days (n=19)

(95%CI; 190-1380)Polton GA. J Small Anim Pract. 2007.

196 days (n=8)

(95%CI; 0-549)Polton GA. J Small Anim Pract. 2007.

365-395 days (Review)

Goutal CM. J Am Anim Hosp Assoc. 2012.

内科療法

ステージと予後

Stage 病変中央生存期間※

(日)95%CI※(日)

n

1 膵臓に限局 785 117 - 1453 19

2 リンパ節転移あり 547 70 - 1024 3

3遠隔転移あり

(肝臓に多い)217 0 - 644 5

Polton GA. J Small Anim Pract. 2007.

※ 内科療法 ± 外科療法の場合

インスリノーマの治療まとめ

• 治療法を組み合わせることで長期の延命が期待出来る• 進行は緩徐だが完治が困難な悪性腫瘍

• 外科療法:肉眼病変の除去, 腫瘍の減容積• 化学療法:切除困難な症例,残存病変の破壊• 内科療法:多様な作用機序を用いた糖の補充

低血糖症

膵臓以外の腫瘍

肝細胞癌

リンパ腫

血管肉腫

平滑筋肉腫

平滑筋腫

口腔内悪性黒色腫

形質細胞腫

唾液腺腫

低血糖を示した肝細胞癌(犬) 子宮平滑筋腫9歳齢,雑種,雌

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22

子宮平滑筋腫12歳齢,雌,ポメラニアン

巨大な平滑筋腫10歳齢,ボーダーコリー,雌

血液学的徴候

血液学的徴候

1. DIC

2. 貧血

3. 血小板減少症

貧 血

貧 血◆貧血は腫瘍で非常によく見られる

腫瘍随伴症候群

ヒトのがん患者 : 20−25%

動物のがん患者 : 不明

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腫瘍に伴う貧血:なぜ起こる

⚫ 慢性炎症に伴う貧血(ACD)

⚫ 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

⚫ 細血管障害性溶血性貧血(MAHA)

⚫ 出血

⚫ 骨髄癆

⚫ 骨髄低形成

慢性炎症の貧血

⚫炎症やがんを患った患者ではサイトカインが過剰産生

⚫サイトカインが造血機能を障害する

⚫腎臓でのエリスロポイエチンの産生低下

⚫鉄代謝の異常

免疫介在性溶血性貧血IMHA

⚫自己免疫(抵抗力)の異常により自分の赤血球を破壊してしまう貧血

⚫腫瘍以外でも発症

⚫よく発症する腫瘍

⚫リンパ腫,組織球性肉腫,肥満細胞腫

⚫腫瘍が原因の場合は,腫瘍の治療が第一

⚫免疫抑制治療はほとんど意味をなさない!

細血管障害性溶血性貧血

※DICに伴う貧血

• 微小血栓が血管に詰まる

• 血管の内腔が狭くなる

• 赤血球がぶつかる

• 赤血球が壊れる

骨髄瘻⚫ 正常な骨髄ががん細胞などに置き

換わってしまう状態

➢ 白血病

➢ 腫瘍の骨髄浸潤(リンパ腫など)

Page 24: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

24

多発性骨髄腫の骨髄

• 形質細胞の異常な増殖が認められる(20−70%を占める)

猫の骨髄性白血病

組織球性肉腫の骨髄浸潤血球貪食像

急性リンパ芽球性白血病(犬)

骨髄検査 化学療法後の骨髄

Page 25: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

25

骨髄低形成

⚫骨髄の細胞全体が少なくなってしまう状態

⚫貧血だけでなく,好中球や血小板も減少

⚫骨髄底形成を起こす代表的な腫瘍

⚫犬のセルトリ細胞腫

⚫エストロゲン過剰症による

腹腔内のセルトリ細胞腫

腹腔内のセルトリ細胞腫 捻転した精巣腫瘍(精巣捻転)

犬の骨髄低形成(骨髄吸引) 確定診断にはコア生検!

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26

同症例の血液塗抹

血小板減少症

腫瘍に関連する血小板減少症

⚫ DIC(血管肉腫など)

⚫ 腫瘍細胞の骨髄浸潤

⚫ 白血病

⚫ 免疫介在性血小板減少症(リンパ腫など)

⚫ セルトリ細胞腫(エストロゲン)

腫瘍と血小板減少症の発症率

⚫ がん患者の血小板減少症の発症率(犬)

• 化学療法を行う前:36%

• リンパ球系腫瘍:58%

• セルトリ細胞腫では血小板減少症が多い

⚫ リンパ腫の猫の20%で発症

Ruslander D.Vet Surg.1995Jordan HL.JVIM.1993

好酸球増加症

好酸球増加症

⚫ 動物の腫瘍においては稀

⚫ 機序はよくわかっていない

犬 :乳腺腫瘍,線維肉腫,肥満細胞腫

猫 :リンパ腫,肉腫,肥満細胞腫,膀胱腫瘍

※肥満細胞が好酸球を誘導

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27

末梢血WBC 32 600 /μL

Seg 10 610 /μL

Eos 19 375 /μL

犬の肥満細胞腫の好酸球増加症神経学的徴候

⚫重症筋無力症

⚫胸腺腫,骨肉腫,胆管癌

⚫ニューロパチー

⚫間脳症候群

※胸腺腫の犬116頭中20頭(17%)に重症筋無力症の徴候

Cecilia SR.JAVMA2013

重症筋無力症(MG)

⚫ 神経筋接合部間(アセチルコリン)の伝達障害⚫ 先天性異常と後天性(免疫異常)

⚫ MGの臨床症状⚫ 運動不耐性,嚥下障害,巨大食道症

⚫ 診断:臨床症状⚫ テンシロンテスト(アセチルコリンの分解を阻害)

⚫ AchRe抗体の測定

動画提供:金園晨一先生

重症筋無力症

動画提供:金園晨一先生

重症筋無力症 テンシロンテスト 重症筋無力症の食道拡張

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28

重症筋無力症の食道拡張 胸腺腫に随伴した食道拡張症

写真提供:織間博光先生

骨の異常

肥大性骨症Hypertrophic osteopathy (HO)

⚫ 肥大性骨症を起こす腫瘍

原発性肺腫瘍,腫瘍の肺転移,膀胱横紋筋腫,食道腫瘍

腎芽細胞腫(犬),腎乳頭癌(猫)

⚫ 腫瘍以外の原因

糸状虫症,心疾患,局所性無気肺,妊娠,肺炎

悪性・非悪性疾患に反応して,長骨骨幹に沿った新骨を形成する骨膜増殖を特徴とする症候群

⚫ 臨床症状

跛行

四肢は熱感,腫脹

時に肋骨,骨盤も侵される

⚫ 診断:X線検査

肥大性骨症(HO) 肺腫瘍の犬

写真提供:織間博光先生

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29

肥大性骨症

写真提供:織間博光先生

肥大性骨症

写真提供:織間博光先生

前立腺癌の肺転移アッシュ 14717

前立腺癌の肺転移アッシュ 14717

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30

発症メカニズム⚫ はっきりとした原因は不明

⚫ 四肢への血流増加→骨膜の増殖

⚫ 肺病変などによる迷走神経刺激

変化に富んだX線像⚫ 断崖状の激しい骨膜反応を示すもの

⚫ 層状に,平滑に近い骨膜反応を示すもの

⚫ 迷走神経刺激の強さや発症からの時間による

肥大性骨症(HO)

肥大性骨症の対症治療

• 各種鎮痛/消炎剤

• ビスホスホネート

• 緩和的放射線治療眼の異常

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31

リンパ腫に随伴したぶどう膜炎 ぶどう膜炎→前眼房出血

猫の消化器型リンパ腫に随伴したぶどう膜炎

ぶどう膜炎で失明したリンパ腫の犬

皮膚徴候

⚫ 皮膚脆弱症

⚫ 壊死融解性移動性紅斑

✓ グルカゴノーマ(膵臓腫瘍)

⚫ 脱毛

⚫ 紅潮

⚫ 結節性皮膚線維腫

消化器型リンパ腫に随伴した皮膚脆弱症

腰背部外観

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消化器型リンパ腫に随伴した皮膚脆弱症

• 頚背部皮膚裂傷

• 皮膚菲薄化

• 出血,疼痛なし

消化器型リンパ腫に随伴した皮膚脆弱症

• わずかな張力で裂け,縫合不可能

• 消毒と包帯処置

• 第41病日死亡

皮膚脆弱症:発症メカニズム

⚫がん性悪液質

⚫低栄養状態

⚫肝障害

⚫脂肪肝

⚫腫瘍細胞の肝臓浸潤

⚫免疫学的異常

グルカゴノーマに随伴した壊死融解性移動性紅斑

8歳齢,不妊雌,ビーグル

写真提供:小林哲也先生

グルカゴノーマに随伴した壊死融解性移動性紅斑

写真提供:小林哲也先生

壊死性遊走性紅斑• グルカゴノーマ:グルカゴンを過剰に分泌

• グルカゴンは肝臓のグリコーゲンをグルコースに分解

血糖値が上昇し糖尿病発症

• グルカゴンはアミノ酸をグルコースに変換する作用もあるので低アミノ酸血症も生じる

皮膚で水泡やびらん,壊死の症状が起こる

Page 33: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

33

「遊走性」とは?• 皮膚症状が出た場所が治った頃に別の場

所に皮膚症状が出る

• あたかも移動しているかのようにみえる

症例

プロフィール• 9歳齢• 未避妊雌• シー・ズー

主訴• 2時間の重積発作

現病歴• 2か月前に発作の初発, 抗けいれん薬の投薬を開始• 1週間前から投薬を中断

低血糖 22mg/dl 血液検査

鑑別診断

追加検査

インスリノーマ, 肝臓腫瘍,リンパ腫非定型アジソン病

血清インスリン濃度レントゲン検査, 超音波検査CT検査, MRI検査

身体検査 体重6.0kg, 体温41.2℃,全般性発作, チアノーゼ

プロブレムリストと鑑別診断

血清インスリン濃度• 高値:431pmol/L

(基準値 36-288)

追加検査と暫定診断

CT検査• 膵右葉に2cm大の結節

MRI検査• 発作性脳損傷• 脳浮腫

暫定診断:インスリノーマおよび低血糖性発作

病理組織診断:インスリノーマ, リンパ節転移あり

治療

膵右葉および膵リンパ節の外科的切除

22

139 144

319

153

107 108

0

50

100

150

200

250

300

350

初診時 術前 術後1日目 4 8 10 15(退院)

血糖値 (mg/dl)

尿糖

経過:周術期

インスリン投与

Page 34: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

34

109

67 62

187

3648

99

39

111

56 6047

37

95

39

0

50

100

150

200

107

360

498

572

580

601

744

769

772

773

774

775

779

782

788

793

799

803

804

814

880

881

その後の経過

術後(日)

800

600

400

200

インスリン濃度(pmol/L)

血糖値(mg/dl)

肝臓結節

Pre(1-0.25mg/kg/day)

ストレプトゾトシン(500mg/kg/m2)

グルカゴン(5-15ng/kg/min)

ジアゾキシド(5-15mg/kg/BID)

流動食(食道チューブ:6回/day)

156

842

274

術後881日目

急性の呼吸不全、胸水貯留心肺停止

剖検(全身臓器)

・肝臓, 膵リンパ節, 心臓:インスリノーマ

・肺:気管支腺癌

症例

プロフィール• 10歳齢• 未避妊雌• パグ

主訴• 排尿困難, 食欲低下

現病歴• 4日前から• 他院にてX線, 超音波検査を実施したが原因不明

鑑別診断

追加検査

・膣腫瘤による尿道閉塞・インスリノーマ, 平滑筋肉腫,非定型アジソン病

身体検査体重9.7kg, 体温37.7℃膀胱内に重度の蓄尿尿道開口部付近に膣腫瘤あり

特異所見なし

尿検査X線検査超音波検査血液検査 低血糖 50mg/dl

血清インスリン濃度CT検査

プロブレムリストと鑑別診断

血清インスリン濃度• 高値:406pmol/L

(基準値 36-288)

追加検査と暫定診断

CT検査• 膵リンパ節の腫大• 膣壁に不整な肥厚

低血糖の暫定診断:インスリノーマ

試験開腹膵左葉および膵リンパ節の外科的切除

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35

病理組織診断:インスリノーマ

リンパ節転移, 周囲脂肪組織への播種あり

会陰切開:膣腫瘤の切除

病理組織診断:膣過形成

経過:周術期

5020 24

3920 24

40

212

83

34

95108

0

50

100

150

200

250

血糖値 (mg/dl)

Pre(1mg/kg/day)

ストレプトゾトシン(500mg/kg/m2)

グルカゴン(5-15ng/kg/min)

505 481

>600

500

350 350 360

180176

212

0

100

200

300

400

500

600

700

22 29 36 40 231 414 792 1166 1288 1363

その後の経過:糖尿病血糖値

(mg/dl)

術後(日)

6.0

5.0

3.0

1.0

4.0

2.0

7.0

ケトン尿

インスリン投与

62

279

119

245

5528 22 22

7050

38

70

28

40

210

50

100

150

200

250

300

1411 1457 1468 1630 1664 1690 1709 1712 1715 1718 1720 1727 1734 1742 1751 1767

肝臓結節

その後の経過

術後(日)

血糖値(mg/dl)

CRIストレプトゾトシン(500mg/kg/m2)

グルカゴン(5-15ng/kg/min)

ジアゾキシド(6mg/kg/BID)

頻回の食事

Pre(1-0.25mg/kg/day)

Im / sc

急変永眠

インスリン濃度(pmol/L)

200

300

100

200

2症例のまとめ

症例1 症例2

腫瘍の発生状況膵右葉 + リンパ節 2cm大

(Stage 2)

膵全域 1-2mm大, 散在性リンパ節 0.7cm大

(Stage 2)

外科療法の効果一過性の高血糖後

正常血糖へ微小病変の残存低血糖の持続

化学療法の効果 ー ◯ 糖尿病へ

奏効期間 498日 1411日

再発時の化学療法(投与時のStage)

効果なし(Stage3:肝転移)

効果なし(Stage3:肝転移)

内科療法の期間 383日 356日

生存期間 881日 1767日

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36

症例

◆プロフィール◆雑種◆避妊メス◆12歳齢

◆主訴◆多飲多尿(3年程前から)◆低カリウム血症(2年程前から)◆頭部下垂,ふらつき(数週間前から)◆副腎腫瘤(数日前に発見)

紹介受診

身体検査所見(第1病日)

◼体重:16.9.kg◼聴診:異常なし◼身体検査:異常なし

血液検査(第1病日)

• リンパ球減少症(279/μl)

• 低カリウム血症(2.3mmol/l)

• 血液凝固・線溶検査:異常なし

超音波検査(第1病日)

◼ 腹部超音波検査

左副腎の腫大φ14.5㎜

右副腎が確認できない

血圧・心電図(第1病日)

◼異常なし

尿検査

◼尿比重:1.005◼PH:7.0

レニン活性・アルドステロン濃度

アルドステロン(ng/dL)

レニン活性(ng/mL/h)

本症例 8.3 <0.2

正常犬1 11.8 1.5

正常犬2 8.7 3.4

正常犬3 6.7 2.8

正常犬4 18.4 6.9

正常犬5 11.3 7.0

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37

ACTH刺激試験

Pre(μg/dl) Post

コルチゾール 1.26 2.79

低容量デキサメタゾン抑制試験

Pre 4時間後 8時間後

コルチゾール 1.25 1.04 0.88

治療方針①アドレスタンの試験的投与

②尿崩症の試験

③副腎腫瘤摘出

→①を選択アドレスタン 1mg/kg po SID 開始

アドレスタン投与後の治療反応

◼尿比重:1.002

◼カリウム:3.1mmol/L

◼飲水量:2430~3060ml(投与前:3410~3950ml)

第99病日

◼カリウム:2.96mmol/L

◼USG1.006

◼飲水量:1620~1970ml

◼腹部超音波検査

左副腎の腫大φ17.7㎜(増大傾向)

→再度,左副腎摘出を提案

第120病日:左副腎腫瘤摘出

病理組織診断:副腎皮質腺癌

カリウムの推移

2.32.55

3 3.1

2.592.55

3.082.82 2.9

3.57

4.494.674.53

4.12

4.564.424.12

3.86

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

1 43 51 65 113 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 139 169

カリウム(mmol/L)

1mg/kg SID

フロリネフ 5.8μg/kg BID

↑2.9μg/kg BID

1.5μg/kg BID

↑1.5μg/kg SID

(mmol/L)

(病日)

アドレスタン

🔺手術

11.7μg/kg BID↑

Page 38: PowerPoint プレゼンテーション - 腫 瘍 随 伴 症 候 群ALP(U/l) 91 K(mmol/l) 4.83 Tcho(mg/dl) 268 Cl(mmol/l) 107.1 ※犬の縦隔型リンパ腫の25-50%で高Ca血症

38

飲水量の推移

2000

34103950

2430

3060

11251003736

1013

443734723670

450420590370570630550

300

800

1300

1800

2300

2800

3300

3800

4300

1 46 47 62 64 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138

飲水量…

1mg/kg SID

フルドロコルチゾン 5.8μg/kg BID

↑2.9μg/kg BID

1.5μg/kg BID

(mL/日)

(病日)

アドレスタン

🔺手術

11.7μg/kg BID

レニン活性

レニン活性(ng/mL/h)

術前 <0.2

術後 4.3

ACTH刺激試験

コルチゾール Pre(μg/dl) Post

第1病日 1.26 2.79

第122病日(手術翌日)

1.68 1.80

第169病日 3.51 4.76

まとめ• がん患者には,がんに関連した様々な症

状が発現する

• 動物を注意深く観察し,検査データも細かくチェックする必要あり

• 腫瘍随伴症候群の知識がないと診断や治療が違った方向に向かってしまう可能性もあり

• 腫瘍随伴症候群は,確定診断の手がかりになる