地方公務員のメンタルヘルスと 公務能率の維持・確保について1 はじめに...

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平成28年度市町村課研修生卒業研究報告書 地方公務員のメンタルヘルスと 公務能率の維持・確保について 市町村課行政グループ 福永 倫史 平成 29 年(2017 年)3月

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平成28年度市町村課研修生卒業研究報告書

地方公務員のメンタルヘルスと

公務能率の維持・確保について

市町村課行政グループ 福永 倫史

平成 29年(2017年)3月

Page 2: 地方公務員のメンタルヘルスと 公務能率の維持・確保について1 はじめに 近年、住民ニーズの多様化、地方分権や行財政改革の進展等によって、地方公務員を取り

はじめに ................................................................ - 1 -

第1章 メンタルヘルス不調による長期病休者等の状況 ...................... - 2 -

第1節 長期病休者の状況 ................................................ - 2 -

(1) 健康状況等調査

(2) 精神及び行動の障害による長期病休者数の推移

(3) メンタルヘルス不調による長期病休者数の推移

第2節 分限処分者の状況 ................................................ - 4 -

(1) 分限処分

(2) 分限処分等状況調査

(3) 分限処分者数の推移

(4) メンタルヘルス不調による分限処分者数の推移

第2章 公務能率の維持・確保に向けた対策 ................................ - 8 -

第1節 メンタルヘルス不調による長期病休者等の状況から見る問題点 ........ - 8 -

(1) 心身の故障により職務に支障を生じる場合の身分取扱い

(2) メンタルヘルス不調の職員の発生による職場への影響

(3) 長期病休者等の増加から見る3つの問題点

第2節 問題点への対策 .................................................. - 9 -

(1) 公務能率の維持・確保

(2) 安全配慮義務

(3) 3つの問題点に係るそれぞれの対策

第3章 職員のメンタルヘルス不調の予防 .................................. - 13 -

第1節 安全衛生管理体制の整備 .......................................... - 13 -

(1) メンタルヘルス対策における安全衛生管理体制の役割

(2) 地方公共団体における安全衛生管理体制の整備状況

第2節 メンタルヘルス対策 .............................................. - 15 -

(1) メンタルヘルス対策の枠組みと取組み

(2) ストレスチェック制度

(3) 職場環境づくり

(4) 職員相談

(5) メンタルヘルス対策における留意点

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第4章 メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応 .......... - 21 -

第1節 病気休暇 ........................................................ - 21 -

(1) 病気休暇の制度の概要

(2) 地方公共団体における病気休暇の制度

(3) 病気休暇の繰返しの取得を防ぐために

第2節 心身の故障による分限休職処分 .................................... - 24 -

(1) 地方公共団体における分限休職処分の制度

(2) 国における分限休職処分の制度

(3) 分限休職処分に係る裁判例

(4) 病気休暇と分限休職処分による繰返しの休業を防ぐために

第5章 回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員への適正な対応 ........ - 29 -

第1節 分限免職処分の手続き ............................................ - 29 -

(1) 分限休職処分期間の満了

(2) 指定医師の診断

(3) 分限免職処分の手続きを誤った事例

第2節 円滑かつ適正な分限免職処分を行うために .......................... - 31 -

(1) 分限免職処分の手続きを進める上での問題とその解決

(2) 分限免職処分に至るまでの各対策の実施

おわりに ................................................................ - 37 -

参考文献・データ出典 .................................................... - 38 -

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はじめに

近年、住民ニーズの多様化、地方分権や行財政改革の進展等によって、地方公務員を取り

巻く環境は複雑かつ多様化しており、職員1人ひとりに求められる役割や責任がより一層高

まってきている。このような中、職員にかかるストレスが増大し、メンタルヘルス(心の健

康)に不調を生じ、療養を余儀なくされる職員も少なくない。そして、そのような職員は年々

増加傾向にある。

メンタルヘルス不調の職員の発生・増加は、個々の職員の職務遂行能力や職場の活力の低

下を招き、公共の福祉の増進という地方公共団体の役割の遂行に支障を来しかねない。地方

公共団体においては、職員の健康管理や安全配慮義務の履行、ひいては、公務能率の維持・

確保を図るため、職員のメンタルヘルス不調の予防等、職場のメンタルヘルス対策を講じる

必要がある。

一方で、地方公共団体は、心身の故障のある職員に対し、公務能率の維持・確保を目的と

して、休職や免職の分限処分を行うことができる。職員がメンタルヘルス不調により職務に

支障を生じる場合、その職員に対して分限処分を行うことも、公務能率の維持・確保を図る

ためには必要な措置となる。しかし、不利益処分である分限処分は訴訟リスクを孕み、手続

きや根拠を押さえた上で行われなければ、その違法性を問われることとなる。

つまり、地方公共団体において、メンタルヘルスに係る人事管理上の制度の観点から、公

務能率を維持・確保するためには、職場のメンタルヘルス対策を講じるとともに、処分事由

に該当する職員が現れた際、その職員に対し、円滑かつ適正に分限処分を行うことが求めら

れるということである。

《本稿の狙い》

本稿は、地方公共団体において、メンタルヘルスに係る人事管理上の制度の観点から、

いかにして公務能率を維持・確保するか、そのための対策の実施方法及び留意点を示すも

のである。

《本稿の構成》

第1章では、地方公共団体におけるメンタルヘルス不調による長期病休者等の状況を確

認し、第2章では、長期病休者等の状況から見る問題点及びその対策を示す。

第3章から第5章では、第2章で述べる3つの対策(第3章では職員のメンタルヘルス

不調の予防、第4章ではメンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応、第

5章では回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員への適正な対応)について、その

実施方法及び留意点を考察する。

なお、文中における意見部分については、筆者の私見であることを申し添えておく。

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第1章 メンタルヘルス不調による長期病休者等の状況

本章では、地方公共団体において、職員のメンタルヘルスの問題が深刻化している状況

を、メンタルヘルス不調による長期病休者及び分限処分者の状況から確認する。

第1節 長期病休者の状況

(1) 健康状況等調査

まず、地方公共団体における長期病休者の状況であるが、これは一般財団法人地方公務

員安全衛生推進協会(以下「安衛協」という。)が実施する調査「地方公務員健康状況等の

現況」(以下「健康状況等調査」という。)により確認できる。

平成 28年度実施分(平成 27年度の状況)の調査対象団体は、都道府県、政令指定都市、

特別区及び一定以上の人口規模を持つ市町村計 342 団体であり、調査対象職員は、主に首

長部局の一般職の職員約 77万人である。

健康状況等調査において、長期病休者とは、公務災害又は通勤災害によるものと認定さ

れた者も含め、疾病等により、病気休暇、分限休職処分等休業の種類を問わず、休業 30日

以上又は1か月以上の療養者としている。なお、長期病休者数は 10万人率で表されている。

(2) 精神及び行動の障害による長期病休者数の推移

メンタルヘルスに関する疾病として、「精神及び行動の障害(国際疾病分類ICD-101第

5章F)」がある。これは、脳の機能的な障害や器質的な問題によって生じるもので、代

表的なものには、統合失調症、躁うつ病、神経症性障害、精神障害等がある。

平成 27 年度中の職員 10 万人当たりの長期病休者数は、全疾病の総数で、図1のとおり

2,406.9人であった。このうち、精神及び行動の障害による長期病休者数は、図2のとおり

1,301.3 人であり、平成 26 年度と比較すると 61.8 人(4.99%)増加し、また、10 年前の

平成 17年度と比較すると約 1.6倍となっている。長期病休者の疾病分類別構成比は、図3

のとおり精神及び行動の障害の割合が 54.1%と最も高く、その割合は年々増加し、平成 24

年度から連続して 50%を超えて推移している。

1 疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and

Related Health Problems

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<図1>長期病休者数の推移

<出典>安衛協 平成 27年度健康状況等調査結果

<図2>主な疾病分類別の長期病休者の推移

<出典>安衛協 平成 27年度健康状況等調査結果

<図3>長期病休者の疾病分類別構成比の推移

<出典>安衛協 平成 27年度健康状況等調査結果

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(3) メンタルヘルス不調による長期病休者数の推移

ここで、メンタルヘルス不調と精神及び行動の障害の関係であるが、厚生労働省が定め

る「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成 18 年3月 31 日健康保持増進のた

めの指針公示第3号)によれば、メンタルヘルス不調は、「精神および行動の障害に分類

される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、

社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く

含むもの」と、広義の精神及び行動の障害として定義されている。

つまり、メンタルヘルス不調による長期病休者数には、精神及び行動の障害による長期

病休者数が含まれ、これも同様に増加しているということである。

第2節 分限処分者の状況

(1) 分限処分

次に、地方公共団体における分限処分者の状況であるが、そもそも、分限処分とは、公

務能率の維持及びその適正な運営を確保する目的で、職員の意に反して行われる不利益処

分であり、免職、降任、休職、降給の4種類がある。

地方公共団体において、各任命権者は、地方公務員法(昭和 25年 12月 13日法律第 261

号。以下「地公法」という。)第 27条第2項により、一定の事由がある場合に限り、分限処

分を行うことができ、このうち、免職及び降任は地公法で定める事由がある場合、休職は

地公法又は条例で定める事由がある場合とされている。この地公法で定める事由とは、地

公法第 28条で次のように規定されている。

① 免職(降任)

・勤務実績が良くない場合(第1項第1号)

・心身の故障の場合(第1項第2号)

・職に必要な適格性を欠く場合(第1項第3号)

・職制等の改廃等により過員等を生じた場合(第1項第4号)

② 休職

・心身の故障の場合(第2項第1号)

・刑事事件に関し起訴された場合(第2項第2号)

(2) 分限処分等状況調査

地方公共団体における分限処分者の状況については、総務省が実施する調査「地方公務

員の分限処分者数、懲戒処分者数及び刑事処分者数等に関する調」(以下「分限処分等状

況調査」という。)により確認できる。分限処分等状況調査の対象は、都道府県、政令指定

都市、特別区、市町村、一部事務組合及び広域連合に属する一般職の職員となっている。

分限処分等状況調査では、同一年度中に同一の者が複数回にわたって分限休職処分に付

された場合、その者を1人として計上しており、また、2以上の事由により分限処分に付

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された場合は、主たる事由により計上している。

(3) 分限処分者数の推移

平成 27 年度中の分限処分者数は4種類の総数で、表1のとおり 24,334 人であり、平成

26年度と比較すると 88人(0.36%)減少した。

① 分限休職処分者数の推移

このうち、分限休職処分者数が 24,048人と分限処分者数全体の 98.8%を占めており、平

成 26 年度と比較すると 26 人(0.11%)増加している。分限休職処分者のうち、処分の事

由別では、心身の故障による分限休職処分者数が、23,854 人と分限休職処分者数全体の

99.2%を占め、また、図4のとおり平成 17 年度から平成 20 年度までは増加傾向にあるも

のの、それ以降はほぼ同水準で推移している。

<表1>分限処分者数の状況(事由別・種類別)

区 分 免 職 降 任 休 職 降 給 合 計

勤務実績が良くない場合 24 (21)

21 (23)

- - 45 (44)

心身の故障の場合 18

(28)

37

(41)

23,854

(23,806) -

23,909

(23,875)

職に必要な適格性を欠く場合 24

(20)

44

(63)

68

(83)

職制等の改廃等により 過員等を生じた場合

115 (203)

0 (0)

- 115

(203)

刑事事件に関し起訴された場合 - - 79

(105) -

79 (105)

条例に定める事由による場合 - - 115

(111) 3 (1)

118 (112)

合 計 181

(272) 102

(127) 24,048

(24,022) 3 (1)

24,334 (24,422)

<出典>総務省 平成 27年度分限処分等状況調査結果

<図4>分限休職処分者数の事由別推移

(単位:人)

(注)( )

内の数字

は、前年度

の人数を示

す。

18,258 20,530

21,926 23,232 23,510 23,803 24,052 23,900 23,462 23,806 23,854

68

85 56

73 83 86 73 83 76 105 79

234

308 305

267 248 222 195 153 150 111 115

18,560

20,923 22,287

23,572 23,841 24,111 24,320 24,136 23,688 24,022 24,048

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27

条例に定める事由による場合

刑事事件に関し起訴された場合

心身の故障の場合(人)

(年度)

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② 分限免職処分者数の推移

一方、分限免職処分者数は、図5のとおり、職制等の改廃等により過員等を生じた場合

(いわゆる行政整理によるもので年度により大きく変動)を除き、いずれの事由において

も少数かつほぼ同水準で推移している。

<図5>分限免職処分者数の事由別推移

(4) メンタルヘルス不調による分限処分者数の推移

心身の故障には、精神の故障のみならず身体の故障も含まれることから、分限処分等状況

調査からは、定義上、精神の故障であるメンタルヘルス不調による分限処分者数のみを読み

取ることができない。

そこで、メンタルヘルス不調による分限処分者数について、健康状況等調査の長期病休者

数及び心身の故障による分限処分者数の推移から考察する。

① メンタルヘルス不調による分限休職処分者数の推移

まず、メンタルヘルス不調による分限休職処分者数についてである。図2のとおり、メン

タルヘルス不調以外の疾病、つまり、身体の故障による長期病休者数は減少傾向にあるが、

メンタルヘルス不調による長期病休者数は増加傾向にある。

また、心身の故障による分限休職処分者数は、図4のとおり、平成 17 年度から平成 20

年度までは増加、それ以降はほぼ同水準で推移し、減少傾向にはない。

このことから、心身の故障による分限休職処分者数のうち、メンタルヘルス不調によるも

のは、メンタルヘルス不調による長期病休者数と同様に増加傾向にあるのではないかと考え

られる。

26 38 25 25 29 20 35 23 29 20 2430 33 29 33 29 26 23 27 29 28 1831 35

20 35 20 26 29 27 30 21 24

85

437

150

737

893

368

457

862

329

203

115

172

543

224

830

971

440

544

939

417

272

181

0

200

400

600

800

1,000

17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27

職制等の改廃等により過員等を生じた場合

勤務実績が良くない場合

心身の故障の場合

職に必要な適格性を欠く場合

(年度)

(人)

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② メンタルヘルス不調による分限免職処分者数の推移

《全国の数値》

次に、メンタルヘルス不調による分限免職処分者数についてである。図5のとおり、心

身の故障による分限免職処分者数は、1年度につき 20人から 30人程度と少数かつほぼ同

水準で推移している。

このうち、メンタルヘルス不調によるもの及びメンタルヘルス不調以外の疾病によるも

のの推移について、それぞれが増加傾向か減少傾向にあるとしても、総数として少数であ

ることから、その増減の数も微々たるものだろう。

つまり、メンタルヘルス不調による分限免職処分者数の推移についても、少数かつほぼ

同水準で推移しているのではないかと考えられる。

《大阪府内市町村の数値》

ここで、大阪府内市町村(政令指定都市を除く。以下同じ。)における心身の故障による

分限免職処分者数であるが、これは、平成 22年度から平成 27年度までの期間において、

表2のとおりとなっている(分限処分等状況調査に基づく独自の調査による)。

対象期間中、大阪府内市町村 41団体のうち、メンタルヘルス不調による分限免職処分

の実績があるのはわずか4団体で、ほとんどの団体で実績がない。また、実績のある団体

においても1年度に2人が最大となっている。

大阪府内市町村以外の各地方公共団体におけるメンタルヘルス不調による分限免職処

分者数についても、全国の数値から見て、大阪府内市町村と同様の状況だろう。

<表2>心身の故障による分限免職処分者数

(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。))

H22 H23 H24 H25 H26 H27 合 計

(ⅰ)メンタル

ヘルス不調

2人

(2団体)

0人

(0団体)

2人

(1団体)

0人

(0団体)

1人

(1団体)

0人

(0団体)

5人

(4団体)

(ⅱ)(ⅰ)以外 0人

(0団体)

0人

(0団体)

0人

(0団体)

1人

(1団体)

1人

(1団体)

1人

(1団体)

3人

(2団体※)

合 計 2人

(2団体)

0人

(0団体)

2人

(1団体)

1人

(1団体)

2人

(2団体)

1人

(1団体)

8人

(6団体※) ※重複を除く

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第2章 公務能率の維持・確保に向けた対策

第1章では、地方公共団体において、メンタルヘルス不調による長期病休者数及び分限休

職処分者数が増加傾向にあり、メンタルヘルス不調による分限免職処分者数はほぼ同水準で

推移している状況を確認した。本章では、この状況から見る問題点及びその対策を示すこと

とする。

第1節 メンタルヘルス不調による長期病休者等の状況から見る問題点

(1) 心身の故障により職務に支障を生じる場合の身分取扱い

まず、職員が心身の故障により職務に支障を生じる場合の身分取扱いについて確認してお

く。身分取扱い上の措置としては、①病気休暇、②分限休職処分、③分限免職処分又は分限

降任処分の3種類に大別される。

それぞれの詳細は、第4章及び第5章で述べることとするが、一般的には、短期間の療養

によって回復する見込みがあるときは病気休暇、長期間の療養を要するときは分限休職処分、

回復の見込みがないか治療に極めて長期間を要するときは、他の職に適当なものがあれば分

限降任処分、そうでなければ分限免職処分により、それぞれ措置される。

つまり、措置の順序は、症状の継続・悪化に伴い、第1段階の病気休暇、第2段階の分限

休職処分、最終手段の分限免職処分へと移行する。

(2) メンタルヘルス不調の職員の発生による職場への影響

次に、メンタルヘルス不調の職員の発生による職場への影響についてであるが、これを表

す用語で「プレゼンティイズム」と「アブセンティイズム」というものがある。

プレゼンティイズムは、職員が出勤しているもののメンタルヘルス不調により職務遂行能

力が低下している状態を意味し、アブセンティイズムは、メンタルヘルス不調の職員が病気

休暇や分限休職処分等により休業している状態を意味する。

つまり、メンタルヘルス不調の職員の発生は、職場において、職務遂行能力の低下や休業

による労働力の損失に加え、周囲の職員への負担増大という影響を及ぼす。

(3) 長期病休者等の増加から見る3つの問題点

上記のことを踏まえて、第1章で述べた状況から見る問題点であるが、次の3つがあげら

れる。

《問題点A》 メンタルヘルス不調を発症する職員の増加

《問題点B》 病気休暇・分限休職処分を繰り返す職員の増加

《問題点C》 回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員の発生・増加

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《問題点A》 メンタルヘルス不調を発症する職員の増加

メンタルヘルス不調による長期病休者数の増加からは、メンタルヘルス不調を発症する

職員の増加が窺える。これは、職場におけるプレゼンティイズムの拡大を意味するもので

ある。そして、職員のメンタルヘルス不調の症状が悪化すれば、B、Cの順に問題が生じ

ていくこととなる。

《問題点B》 病気休暇・分限休職処分を繰り返す職員の増加

メンタルヘルス不調により療養を要する職員は、その症状の度合いにより、病気休暇を

付与され、又は分限休職処分に付されることとなる。一旦メンタルヘルス不調を発症する

と回復に長期間を要することが多く、仮に良くなったとしても再発するケースが往々にし

てある。

これについて、社員 1,000人以上の大企業等 35社を対象に、平成 14年度から平成 19

年度までの6年間にうつ病と診断され、病気休暇を取得した後に復帰した社員 540人の経

過を調べた厚生労働省研究班の調査がある2。

本調査では、うつ病を再発して病気休暇を再取得した者の割合は、復帰から1年で全体

の 28.3%、2年で 37.7%、5年以内で 47.1%であり、休業期間では1回目の平均 107日

に対し、2回目は同 157日と 1.47倍に長くなっているとの結果が示されている。

つまり、メンタルヘルス不調による長期病休者数及び分限休職処分者数の増加は、病気

休暇・分限休職処分を繰り返す職員の増加を示唆するものである。この問題点は、休業か

らの職場復帰後はプレゼンティイズム、休業期間中はアブセンティイズムの2つの側面を

持つ。

《問題点C》 回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員の発生・増加

メンタルヘルス不調による分限免職処分者数は、ほぼ同水準で推移している状況である。

しかし、メンタルヘルス不調による長期病休者数及び分限休職処分者数が増加し、上記よ

り病気休暇・分限休職処分を繰り返す職員の増加が示唆されることから、今後、回復の見

込みがないか治療に極めて長期間を要するメンタルヘルス不調の職員、つまり、分限免職

処分の処分事由に該当する職員が発生・増加することも見込まれる。

この問題点も、プレゼンティイズム及びアブセンティイズムの2つの側面を持つもので

ある。ただ、回復の見込みがないか治療に極めて長期間を要するという点から、問題点B

よりもアブセンティイズムの側面が強いといえる。

第2節 問題点への対策

(1) 公務能率の維持・確保

問題点への対策を示す前に、地方公共団体においてこれらの問題点に対応すべき必要性に

ついて確認する。

2 河内敏康「うつ病休暇 半数が再取得『企業は配慮を』厚労省研究班」『毎日新聞』(2017.1.8)

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地公法第1条では、地公法を制定する目的を規定しており、その目的は、地方公共団体の

人事機関及び地方公務員の人事行政に関する根本基準の確立による地方公共団体の行政の

能率的な運営の保障等にある。そして、行政の能率的な運営は、財政運営、財産管理及び人

事管理が適切に行われることにより図られる。

地公法に基づく人事行政は、この人事管理であり、地方公共団体は、地公法上、人事管理

による行政の能率的な運営、つまり、公務能率を維持・確保することが要請される。

しかし、メンタルヘルス不調の職員の発生は、前節で述べたとおり、職場において、職務

遂行能力の低下や休業による労働力の損失に加え、周囲の職員への負担増大という影響を及

ぼす。つまり、地方公共団体におけるメンタルヘルス不調の職員の発生は、公務能率の低下

を招くものである。

公務能率の低下は、地公法の目的の達成、ひいては、公共の福祉の増進という地方公共団

体の役割の遂行に支障を来しかねない。地方公共団体においては、メンタルヘルスに係る人

事管理上の制度の観点から、公務能率の維持・確保という地公法の目的を達成するため、前

節で述べた問題点に対応する必要がある。

(2) 安全配慮義務

公務能率の維持・確保に併せて、留意すべきは安全配慮義務である。安全配慮義務とは、

事業者が労働者に負っている労働契約上の債務で、事業者が労働者に対し、施設管理又は労

務の管理に当たって、労働者の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務であ

る。

判例においては、事業者に対して、①労働者の心身の健康状態を常に把握すること、②健

康状態に問題がある労働者には就業上の措置を行い、業務による健康状態の増悪を防ぐこと

の2点を求めており、事業者が健康状態の把握やそれに基づく業務軽減措置を怠ったことに

より労働者が疾病に罹患したような場合は、安全配慮義務違反となるとされている(最高裁

平 12・3・24判決(二小))。

従って、事業者である地方公共団体においても、メンタルヘルスを含めた健康管理に関し

て適切な措置を講じることが必須であり、安全配慮義務の観点からも、前節で述べた問題点

に対応する必要がある。

また、労働安全衛生法(昭和 47年6月8日法律第 57号。以下「安衛法」という。)第 69

条第1項においても、事業者は、労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的か

つ計画的に講ずるよう努めなければならないとしている。

(3) 3つの問題点に係るそれぞれの対策

上記のことを踏まえて、前節で述べた問題点への対策であるが、次の3つがあげられる。

対策Aは問題点Aに、対策Bは問題点Bに、対策Cは問題点Cにそれぞれ対応する。

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《対策A》 職員のメンタルヘルス不調の予防

《対策B》 メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応

《対策C》 回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員への適正な対応

① 3つの対策

《対策A》 職員のメンタルヘルス不調の予防

まず、問題点A「メンタルヘルス不調を発症する職員の増加」に対しては、安全配慮義

務の観点から、職員の健康状態を把握の上、職員がメンタルヘルス不調を発症しないよう

未然に防止すること、また、休業を要しないまでも軽度のメンタルヘルス不調を発症した

職員の症状の回復を図ることが求められる。

これにより、メンタルヘルス不調の職員の発生を抑制し、また、これを減少させること

が、メンタルヘルスに係る人事管理上の制度の観点から公務能率の維持・確保を実現する

ための第一手となる。

《対策B》 メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応

職員のメンタルヘルス不調の予防に係る対策を講じたとしても、その発症や症状の継

続・悪化を完全に防止できるわけではない。メンタルヘルス不調により休業を要する職員

が現れた場合、その職員に病気休暇を付与し、又は分限休職処分を行うこととなる。ただ、

制度上、病気休暇及び分限休職処分の期間にはそれぞれ上限があり、その期間内で療養を

図る必要がある。

問題点B「病気休暇・分限休職処分を繰り返す職員の増加」に対しては、病気休暇又は

分限休職処分による療養や職場復帰後のケアをとおして、プレゼンティイズムの改善を図

りながら、病気休暇又は分限休職処分が繰り返されることで、アブセンティイズムが続く

ことのないよう、適正な休業期間の運用により、公務能率の維持・確保を図る必要がある。

《対策C》 回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員への適正な対応

病気休暇及び分限休職処分による療養を図ってもなお、メンタルヘルス不調の回復の見

込みがない職員が現れた場合、その職員に分限免職処分を行うことでアブセンティイズム

を解消し、公務能率の維持・確保を図る必要がある。

つまり、問題点C「回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員の発生・増加」に対

しては、分限免職処分を行うに当たっての根拠・手続きを押さえることで、処分事由に該

当する職員が現れた場合、円滑かつ適正に処分が行えるよう備えておかなければならない。

② 各対策の進行

各対策は、メンタルヘルス不調の症状が継続し、また、悪化するにつれ、A、B、Cの順

に進行することとなる。このことから、全ての問題点を解決するには、対策Aの段階から、

対策B、ひいては対策Cの実施を見据えた対応を行う必要がある。

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つまり、各対策を一連のものとして進めることが、メンタルヘルスに係る人事管理上の制

度の観点から公務能率の維持・確保を実現することとなる。第3章から第5章では、各対策

について、その実施方法及び留意点を考察する。

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第3章 職員のメンタルヘルス不調の予防

対策A「職員のメンタルヘルス不調の予防」の狙いは、職場におけるメンタルヘルス対

策を講ずることにより、メンタルヘルス不調の職員の発生の未然防止及び減少を図ること

であり、また、対策を講じながらも、メンタルヘルス不調の症状が継続・悪化する職員に

対しては、その身分取扱い上の措置を円滑かつ適正に行えるよう備えておくことである。

本章では、対策Aの実施方法及び留意点を考察する。

第1節 安全衛生管理体制の整備

(1) メンタルヘルス対策における安全衛生管理体制の役割

メンタルヘルス対策の実施に当たっては、安全衛生管理体制の整備が前提となる。安全

衛生管理体制とは、安衛法上、事業場の業種及び規模に応じ、その選任・設置が義務付け

られている各種管理者等及び組織のことをいう。メンタルヘルス対策における安全衛生管

理体制とその役割については、次のとおりである。

① 衛生管理者 … メンタルヘルスに関して、教育研修の企画及び実施、職場環境

等の評価と改善、相談ができる雰囲気や体制づくりを行う。

② 産業医 ……… 職場環境等の改善、教育・相談その他労働者の健康の保持増進

を図るための措置のうち、医学的専門知識を必要とするものを

行う。

③ 衛生委員会 … 衛生管理者や産業医等により構成され、労働者のメンタルヘル

スの保持増進を図るための対策等を調査審議する。

(2) 地方公共団体における安全衛生管理体制の整備状況

① 各種管理者等及び組織の選任・設置率

地方公共団体における安全衛生管理体制の整備状況については、総務省が例年実施する

「勤務条件等に関する調査」(以下「勤務条件等調査」という。)により確認できる。

平成27年度(平成28年3月31日現在)の調査結果は、表3のとおりである。全団体の合

計で見ると、各種管理者等及び組織のうち、メンタルヘルス対策に係るものの選任・設置

率は、衛生管理者が97.9%、産業医が98.2%、衛生委員会が96.3%となっている。

また、大阪府内市町村等の状況は表4のとおりで、衛生管理者が95.4%、産業医が95.9%、

衛生委員会が88.3%となっており、いずれも全国に比べて選任・設置率が低くなっている。

これらは安衛法上の義務であることからも、本来100%でなければならない。しかし、産

業医に至っては、全国、大阪府内ともに平成26年度よりも選任・設置率が低くなっている。

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<表3>安全衛生管理体制の整備状況(団体区分別)(全国)

<出典>総務省 平成27年度勤務条件等調査結果

<表4>安全衛生管理体制の整備状況(団体区分別)

(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。)等)

② 選任・設置率の維持・向上に向けて

選任・設置率が100%に満たない理由として、衛生管理者については、特定の有資格者(都

道府県労働局長の免許を受けた者等)の確保が難しいこと等があげられる。衛生管理者の

選任率向上には、衛生管理者試験講習会等を活用することで、計画的に有資格者の確保を

図ることが求められる。

産業医については、引き受けてくれる医師がいない等人材の不足があげられ、地域の医

師会からの紹介・情報提供や嘱託医の選任を検討することが求められる。

衛生委員会については、構成委員である衛生管理者や産業医の人材確保に努めることで、

設置率も併せて高まるものと考えられる。

各地方公共団体においては、安全衛生管理体制がメンタルヘルス対策を行う役割も担う

ことを十分に認識し、各種管理者等及び組織の選任・設置率の維持・向上に努めるととも

に、実効性のある対応を図るため、各種管理者等に各々が持つ役割をしっかりと認識させ

ることが重要である。

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第2節 メンタルヘルス対策

(1) メンタルヘルス対策の枠組みと取組み

次に、メンタルヘルス対策についてであるが、これは、一般に一次予防対策(実態の把

握、予防的対策)、二次予防対策(早期発見、早期対応)及び三次予防対策(職場復帰、

再発の防止)に区分される。

対策A「職員のメンタルヘルス不調の予防」としては、発症の予防の観点からは一次予

防対策、症状悪化の予防の観点からは二次予防対策が重点となる。一次予防対策の目的は、

個々の職員のメンタルヘルスを把握し、そのフィードバックを計画的に実施することであ

り、二次予防対策の目的は、職員のメンタルヘルス不調を早期に発見し、その治療及び解

決につなげることである。

そして、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルスケアの具

体的実施方向として、次の「4つのケア」をあげている。

① セルフケア

職員によるストレスへの気付きと対処

② ラインによるケア

日常的に職員と接する職場の管理監督者(上司その他労働者を指揮命令する者)

による職場環境等の改善、個別の相談対応

③ 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業保健スタッフ(産業医等、衛生管理者等及び事業場内の保健師等)、心の健

康づくり専門スタッフ(精神科・心療内科等の医師、心理職等)及び人事労務管理

スタッフ等による職場環境の改善、個別の相談対応や相談紹介、セルフケアの支援、

教育研修

④ 事業場外資源によるケア

事業場外資源(事業場外でメンタルヘルスケアヘの支援を行う機関及び専門家)

による直接サービスや支援の提供、ネットワークへの参加

では、一次予防対策及び二次予防対策の具体的な取組みについてであるが、4つのケア

の観点から主要なものについて、次の3つがあげられる。(2)以降では、各取組みにつ

いて述べていくこととする。

① ストレスチェック制度 … 一次予防対策

② 職場環境づくり ………… 一次予防対策

③ 職員相談 ………………… 二次予防対策

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(2) ストレスチェック制度

① 制度の概要・目的

職員のメンタルヘルスの実態把握の手法としては、平成 26年の安衛法改正により、スト

レスチェック制度が新たに創設されたところである。ストレスチェック制度とは、ストレ

スチェック、その結果に基づく集団ごとの集計・分析(集団分析)及び医師による面接指

導の一連の取組全体を指すもので、事業者にその実施が義務付けられている3。

この制度の目的は、ストレスチェックにより、職員のストレスの程度を把握し、職員自

身のストレスへの気付きを促すこと、集団分析の結果を職場改善につなげ、働きやすい職

場環境づくりを進めること、高ストレスの職員の申出に応じて面接指導を行い、必要に応

じて就業上の措置を講ずることである。

また、ストレスチェック制度において、衛生管理者等はストレスチェック制度担当者(実

務担当者)、産業医等は面接指導医師、衛生委員会は制度導入時の実施方法、継続的な実

施のための審議の場として位置付けられている。このことからも、安全衛生管理体制の整

備がメンタルヘルス対策の前提にあるといえる。

なお、ストレスチェック制度と直接関係しないが、医師による面接指導については、安

衛法により、月の時間外労働が 100時間超の職員等が申し出た場合にも、その実施が義務

付けられている。

② 制度の留意点

職員にはストレスチェックを受検する義務はないが、ストレスチェック制度による職員

や職場の状況の把握、高ストレスの職員の早期発見には、職員全員がストレスチェックを

受検することが望まれる。

しかし、職員全員の受検を促したとしても、ストレスチェックを実施するに当たり、職

員が自身の状況をありのままに答えなければ、職員や職場の状況を正しく反映しない結果

となり、また、高ストレスの職員が安心して面接指導の申出ができなければ、その職員が

そのまま放置されることとなる。

つまり、制度のより効果的な実施には、職員全員の受検を促すとともに、職員全員がス

トレスチェックを受検する意義及び制度の目的を理解することが重要といえる。

(3) 職場環境づくり

職場環境づくりの目的は、まず第一に、職場における職員のストレス要因を軽減するこ

と、そして、メンタルヘルス不調を発症し、又は発症するおそれのある職員の相談・面接

指導を促すことである。

3 労働者数 50人未満の事業場は当分の間努力義務

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① 職場管理上の措置

職場における職員のストレス要因を軽減するには、職場管理上の措置を講ずることであ

る。具体的には、職員の能力、適性に合わせた職務内容の変更や人事配置のほか、時間外

勤務の削減、年次休暇等の取得促進等により、過度な長時間労働、疲労、ストレス又は責

任等が生じないようにすることである。

措置の内容を検討するに当たっては、ストレスチェックの集団分析結果に加え、管理監

督者による日常の職場管理で得られた情報、職員からの相談や意見聴取で得られた情報及

び産業保健スタッフによる職場巡視で得られた情報等も勘案して、職場環境を評価すると

ともに、勤務形態又は組織の見直し等、様々な観点から職場環境を改善するための措置を

講ずることが望ましい。

② 相談窓口の設置

次に、職員の相談・面接指導を促すことであるが、まず前提として、適時・適切に産業

保健スタッフ等による相談ができる相談窓口を設けておく必要がある。

窓口の利用のしやすさ、プライバシー保護の観点から、他の職員から見られないよう相

談を行う場所・時間帯等について配慮するとともに、窓口設置の際は、相談窓口が職員本

人のみならず、職員の上司や管理監督者、同僚、家族、職場の健康管理者、人事労務管理

部門等に広く活用されるものであることから、その周知を十分に行うことが求められる。

③ 職員研修

更に、職員の相談・面接指導を促すには、職員研修により、職員がメンタルヘルスに関

する知識を習得することである。これにより、まず職員自らがストレスに気付き、健康に

不安を感じたときの自発的な相談を促し、また、職員全員がメンタルヘルス不調の職員へ

の対応を認識することで、相談しやすい雰囲気をつくることにもつながる。

管理監督者に対しては、職場における上司として部下職員のメンタルヘルスと密接に関

連する立場にあることから、カウンセリング・マインドに重点を置いた研修を行うことで、

職員相談の効果的な実施につなげることができる。

また、メンタルヘルスに関する知識に併せて、ストレスチェック制度の意義についても

理解を深めることで、職員の受検を促し、制度の効果的な実施につなげることができる。

(4) 職員相談

職員相談の目的は、相談に応じて、勤怠上の問題の解決、メンタルヘルス不調の発症の

予防や症状の治療に適切につなげることである。相談には管理監督者又は産業保健スタッ

フ等が対応することとなる。職員相談におけるそれぞれの役割については、次のとおりで

ある。

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① 管理監督者

《職場のシグナルへの対応》

管理監督者は、職員一人ひとりの健康な通常状態の把握に努め、その基準から外れる

ような変化に気付く必要がある。変化に気付いた場合、その職員への声かけをしっかり

と実行し、相談を受けるきっかけをつくることが勤怠上の問題の早期解決につながる。

問題の要因が疾病か否かの判断は、産業保健スタッフ等の専門家に仰ぐこととなるため、

声かけを行う前に状況を説明して産業保健スタッフ等に意見を聴いておくこともいい。

また、相談に対応する際は、事実よりも相手の感情に焦点を当てて、本心を理解しよ

うと傾聴し、そこから必要に応じて、職場管理上の措置を講じ、問題の解決を図ること

が求められる。

《産業保健スタッフ等との相談につなげる》

管理監督者が職員から相談を受けた際、問題の要因が疾病にある又はそのおそれがあ

る等、職員本人や管理監督者のみでは十分な解決が困難と考えられる場合は、産業保健

スタッフ等の専門家との相談につなげる必要がある。

相談をつなげる場合の留意点は、問題点を事実に基づいて整理しておくことである。

問題点、つまり、職場における職員の態度・言動等の情報は、産業保健スタッフ等が疾

病の有無等を判断するに当たっての材料となる。

また、産業保健スタッフ等との相談の際は、本人の同意を得た上で、管理監督者が同

席するか、別に管理監督者と産業保健スタッフ等と話す機会をつくることで、職員の健

康管理情報を共有し、その後の対応を連携して検討していくことが望ましい。

② 産業保健スタッフ等

産業保健スタッフ等は相談担当者として、職員本人や管理監督者、場合によっては、人事

労務管理部門からの申出等により相談に対応することとなる。

職員相談を医師が直接担当しない場合、相談担当者は相談内容を医師に伝え、その話し合

いの結果を踏まえて、相談者一人ひとりに対する個別の対応を行う。メンタルヘルス不調の

大まかな判断は産業医レベルで行い、産業医が疾病である可能性があると判断した者につい

ては、精神科、心療内科等を専門とする医師に紹介することにより、診断・治療のレールに

乗せる。精神科又は心療内科の医師等を職場内に配置できない場合は、地域の専門医(事業

外資源)に診断・治療を任せることとなる。

医療機関を受診した結果、就業上の措置が必要と判断された場合には、治療を担当する医

師からその旨を証明する診断書が発行され、人事労務管理部門により就業上の措置がとられ

る。就業上の措置としては、一定の期間休業させることが多く、メンタルヘルス不調の症状

に応じて、病気休暇を付与し、又は分限休職処分を行うこととなる。

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(5) メンタルヘルス対策における留意点

① 各取組みの関係

以上、3つの取組みについて述べたが、ここで念頭に置くべきは、3つの取組みがそれぞ

れ密接に関連しているということである。ストレスチェック制度は、その結果を職場環境づ

くりに活用し、高ストレスの職員を職員相談につなげるものであり、職場環境づくりはスト

レスチェック制度の効果的な実施に寄与し、職員相談の申出や管理監督者による相談を促す

ものである。そして、職員相談により個々の職員が抱える問題の解決方法を探り、メンタル

ヘルス不調の職員の発生の未然防止及び減少が図られる。

各取組みの中でも核となるのは職場環境づくりである。職員のメンタルヘルスへの理解が

なければ、職員相談の消極化を招くこととなる。また、メンタルヘルス不調により休業を要

する職員や職場復帰後の職員に対する周囲のケアもままならず、メンタルヘルス不調の発症

や症状の悪化を助長しかねない。

つまり、職員のメンタルヘルスの予防を徹底するには、職場環境づくりを重点に置きなが

ら、3つの取組み全てを機能させることが求められる。そのためには、各取組みにおける管

理監督者、産業保健スタッフ及び人事労務管理部門等の役割について述べたとおり、それぞ

れが連携し、組織全体でメンタルヘルス対策に取り組まなければならないということである。

② 職員の態度・言動等に関する記録

また、メンタルヘルス対策のうち、一次予防対策(①ストレスチェック制度、②職場環

境づくり)を講じたとしても、職員がメンタルヘルス不調を発症するケースは往々にして

ある。そこで、二次予防対策(③職員相談)以降において、メンタルヘルス不調の職員の

職場における態度・言動等に関する記録を残すことが、次に示すとおり重要となる。

《記録を残す目的》

記録を残す目的は、第1に診断・治療に円滑につなげること、第2に分限処分を行う

判断の裏付けとすることにある。

まず、第1の目的について、職員相談においても述べたが、産業保健スタッフ等へ相

談をつなげる際、職場における職員の普段の態度・言動等の情報を提供することとなる。

これを記録により伝えることで、産業保健スタッフ等は、疾病の有無や症状の進行状況

の判断をより円滑に行うことができる。そこから、相談における対応の方向性も検討し

やすくなり、その後の診断・治療においても、現にどのような症状が現れているのか医

師が確認するための資料となる。

そして、第2の目的についてであるが、第2章で述べた問題点から、地方公共団体に

おいては、メンタルヘルス不調の職員に対する分限処分の検討を迫られる場面が、今後

ますます増加していくものと考えられる。しかし、不利益処分である分限処分は、訴訟

に発展するリスクがある。

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詳しくは第4章及び第5章で述べることとするが、心身の故障を事由に分限処分を行

う際は、原則、医師の診断が必要となり、また、これが分限処分を行う上での根拠とな

る。そして、根拠を押さえて分限処分を行うことが訴訟リスクへの対策となる。

職員の態度・言動等に関する記録は、職場における症状の現れを示すものであり、医

師の診断の裏付けとなるということである。

《記録を残す事項》

では、具体的にどのような事項を記録として残すかである。職場において、メンタル

ヘルスの問題として取り上げられるきっかけは、職員に変化が現れた場合であり、変化

の例としては、次のようなものがあげられる。

○ 遅刻、早退、欠勤が増える

○ 休みの連絡がない(無断欠勤がある)

○ 残業、休日出勤が不釣合いに増える

○ 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する

○ 業務の結果がなかなかでてこない

○ 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)

○ 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)

○ 不自然な言動が目立つ

○ ミスや事故が目立つ

○ 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

<出典>厚生労働省、独立行政法人労働者健康福祉機構

『職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~』

これらの場合、疾病がないか、あっても二次的であれば、職場管理上の問題として、

まず管理監督者が対応することとなる。

職員の職場における態度・言動等に関する記録を残すということは、産業保健スタッ

フ等との職員相談へとつなげていく際、また、それ以降において、この変化の具体的な

内容、特に欠勤や業務ミス、周囲の職員とのトラブル等を記録として残していくことで

ある。

そして、目的においても述べたとおり、メンタルヘルス対策を講じながら、対象の職

員の記録をとり続けていくことが、治療方針の検討や身分取扱い上の措置を、円滑かつ

適正に進めるための備えとなる。

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第4章 メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応

対策B「メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応」の狙いは、適正

な休業期間の運用により職員の療養を図ること、そして、療養を図ってもなおメンタルヘ

ルス不調の症状が継続・悪化する職員に対し、その休業期間に応じて病気休暇から分限休

職処分、そして分限免職処分へと身分取扱い上の措置を円滑かつ適正に進めることである。

本章では、対策Bの実施方法及び留意点を考察する。

第1節 病気休暇

(1) 病気休暇の制度の概要

① 病気休暇の承認

まず、病気休暇の制度の概要について触れておく。病気休暇は、負傷又は疾病のために

勤務に服することができない職員に対し、医師の診断等に基づき、最小限度必要と認めら

れる期間、その治療に専念させることを目的とする有給の休暇である。

「負傷又は疾病」とは、身体的に不健康に陥っている状態、心身に故障のある状態をい

い、これにメンタルヘルス不調が含まれるのは第1章で述べたとおりである。

地方公共団体において、給与、勤務時間その他の勤務条件は地公法第24条第5項により

条例で定めることとなる。ただ、国や他の地方公共団体との均衡を失しないように考慮し

なければならず(同条第4項)、病気休暇についても国の制度に準ずるのが通常である。

なお、病気休暇又は分限休職処分からの職場復帰後のリハビリテーションを受けるよう

な場合も、その期間を病気休暇と承認し得、これにより勤務軽減措置が図られることとな

る。

② 病気休暇の期間

《上限期間》

病気休暇の期間は、国においては、人事院規則15-14第21条第1項により、除外日(生

理日の就業が著しく困難である場合、公務災害若しくは通勤災害の場合又は人事院規則

10-4に基づく勤務の軽減措置を受けた場合における病気休暇を使用した日等)を除き、

連続して90日(週休日等を含む。)を超えることができない。

しかし、当初の病気休暇とは明らかに異なる負傷又は疾病のため療養する必要がある

場合は、同規則第21条第3項又は第4項により、当初の病気休暇とは別に、病気休暇を

取得することができる。この場合においても、取得可能期間は、当該明らかに異なる負

傷又は疾病に罹った日から連続して90日を超えることはできない。

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《クーリング期間制度》

病気休暇を取得していた職員の病状が回復して職務に復帰したが、病気が再発して再

び病気休暇を取得することとなった場合、復帰した日数によってはクーリング期間制度

が適用される。

この制度は、病気休暇を断続的に繰り返して取得するという濫用を防止するためのも

ので、具体的には、連続する8日以上の期間の病気休暇を取得した職員が、その病気休

暇の期間の末日の翌日から、実勤務日数が20日に達するまでの間(クーリング期間)に、

再び病気休暇を取得したときは、前後の病気休暇期間を通算するというものである。

同規則15-14第21条第2項により、再度の病気休暇がクーリング期間内であれば、前

後の病気休暇の期間は引き続いているものとして日数を通算し、クーリング期間外であ

れば再び病気休暇を取得した日から改めて日数をカウントすることとなる。

③ 病気休暇期間における給与の取扱い

国においては、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年4月3日法律第95号。以下

「給与法」という。)附則第6項及び人事院規則9-82第5条により、病気休暇が承認され

た日を起算日として、病気により勤務しない状態が引き続いて90日を超えるに至った場合

は、給料が半減される。

例えば、疾病Aにより病気休暇を取得した職員が90日を超える前に、連続して疾病Bに

より勤務しない状態が続いた場合、疾病Aによって病気休暇を承認された日から起算して

90日を超えるときから、給料が半減されることとなる。

(2) 地方公共団体における病気休暇の制度

前述の病気休暇の制度の概要は、国におけるものである。では、地方公共団体における

病気休暇の制度の状況であるが、これについても勤務条件等調査(休暇の制度等の状況に

ついて一部事務組合等は調査対象外)により確認できる。

① 1回の病気休暇の上限期間

1回の病気休暇の上限期間の状況について、平成28年4月1日現在の調査結果は、表5

のとおりである。全団体の合計で見ると、国と同じ団体が1,556団体(87.0%)、国と異な

る団体が232団体(13.0%)となっている。また、大阪府内市町村の状況は表6のとおり、

国と同じ団体が29団体(70.7%)、国と異なる団体が12団体(29.3%)となっており、全

国に比べて国と異なる団体の割合が高い。

そして、この国と異なる団体の多くは、「必要最小限度の期間」等として上限を設けて

いない。そもそも、国の病気休暇の上限期間が原則連続90日とされたのは、平成23年の制

度改正によるもので、従前は必要最小限度の期間として上限が設けられていなかった。つ

まり、国と異なる制度の団体は、おおよそ、平成23年の制度改正の際に国と同様の改正を

行っていない団体と考えられる。

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23

<表5>1回の病気休暇の上限期間の状況(全国) (単位:団体)

区 分 団体数 国と同じ 国と異なる

都道府県 47

40

(85.1%)

7

(14.9%)

指定都市 20

10

(50.0%)

10

(50.0%)

市区町村 1,721

1,506

(87.5%)

215

(12.5%)

合 計 1,788

1,556

(87.0%)

232

(13.0%)

<出典>総務省 平成27年度勤務条件等調査結果

<表6>1回の病気休暇の上限期間の状況

(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。)) (単位:団体)

団体数 国と同じ 国と異なる

41

29

(70.7%)

12

(29.3%)

② クーリング期間制度

次にクーリング期間制度の状況であるが、大阪府内市町村の状況は表7のとおり、制度

ありが31団体(75.6%)、制度なしが10団体(24.4%)となっている。この制度も国にお

いて平成23年の制度改正により設けられたものである。つまり、上限期間の設定と同じく、

制度なしの団体は、平成23年の制度改正の際に制度を導入していない団体と考えられる。

<表7>クーリング期間制度の状況

(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。)) (単位:団体)

団体数 制度あり 制度なし

41

31

(75.6%)

10

(24.4%)

(3) 病気休暇の繰返しの取得を防ぐために

① 上限期間の設定

前述のとおり、病気休暇は最小限度必要と認められる期間、その治療に専念させること

を目的とする休暇である。そして、国においてその取得日数に上限が設けられた趣旨は、

長期にわたる病気休暇を取得する職員の割合が増加傾向にあり、欠員補充が可能となる分

限休職処分(休職者は条例定数外とすることが通例)との役割分担を明確化するためであ

る。

つまり、上限を設けず病気休暇を付与することは、国の現行制度の趣旨を逸し、併せて、

病気休暇によるアブセンティイズムの長期化を招くということである。

裁判例においては、病気休暇の残日数がある中で行われた分限休職処分を適法としてお

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24

り、判決では「職員が病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休養を要することが明らか

な場合に、病気休暇の承認をしないで休職処分をしたとしても、法の趣旨に反するもので

はない」としている(鹿児島地裁平19・5・22判決)。

本事例は規程(本事例では条例に基づく規則)による上限期間の設定が前提とされてい

ることから、上限期間の設定は、病気休暇から分限休職処分へ移行する際の判断基準及び

その根拠となり得る。規程により上限期間を設定しないまま、運用で分限休職処分移行の

判断を行うには基準が曖昧になりかねない。

そして、病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休業を要することが明らかな場合には、

その時点から分限休職処分へと移行すべきである。

② クーリング期間制度の導入

メンタルヘルス不調による病気休暇は繰り返して取得されるケースが多い。クーリング

期間制度が導入されていない場合、断続的に病気休暇が取得されると、その状況が延々と

繰り返されることとなる。

つまり、病気休暇の上限期間を設定したとしても、クーリング期間制度が導入されてい

なければ、通算で上限期間を超える病気休暇を取得している又はしようとしている職員に

対して、分限休職処分を行う機会を逸することとなる。

このような状況に陥ることを防ぐためにも、上限期間の設定に併せて、クーリング期間

を導入することが望ましい。なお、一部の団体では運用によりクーリング期間制度を設け

ている団体も見られるが、前掲の裁判例からも、規程によりクーリング期間制度を設ける

べきだろう。

第2節 心身の故障による分限休職処分

(1) 地方公共団体における分限休職処分の制度

次に、第2段階の身分取扱い上の措置となる分限休職処分についてであるが、分限休職処

分とは、職員に職を保有させたまま一定期間職務に従事させない処分をいう。

地方公共団体において、任命権者は、地公法第 28条第2項第1号により「心身の故障の

ため、長期の休養を要する場合」は、その職員に対して分限休職処分を行うことができる。

病気休暇と同様、心身の故障にメンタルヘルス不調が含まれるのは第1章で述べたとおりで

ある。

① 分限休職処分の判断

心身の故障のある職員に対して、病気休暇と分限休職処分のいずれによるか、また、病気

休暇で療養中の職員をいつ分限休職処分とするかであるが、裁判例においては、「(地公法

第 28条)第2項第1号に定める私傷病休職の場合の処分事由が被処分者の状態等に関する

一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく休職処分につ

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き、任命権者には当該趣旨・目的に照らして合理的な裁量が認められるというべき4」とし

ている(大阪地裁平 26・11・19判決)。

前節で述べたとおり、病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休業を要することが診断書

等で明らかになった場合等は、アブセンティイズムの解消の観点から、速やかに分限休職処

分を行うべきである。

② 地方公共団体における分限休職処分の手続き及び期間

地方公共団体において、分限に関する手続き及び効果は地公法第 28第3項により条例で

定めることとなる。そして、各地方公共団体においては、基本的に、国から示された条例案

(昭 26・7・7地自乙発第 263号別表1。以下「分限条例案」という。)に基づき、分限に関

する手続き及び効果が定められている。

分限条例案における分限休職処分の手続き及び期間に係る規定については、次のとおりで

ある。ただ、当該規定は、国における制度と異なる点がある。この点については、(2)で

述べることとする。

《分限休職処分の手続き》

分限条例案第2条第1項では、心身の故障による分限休職処分の手続きについて、「医

師2名を指定してあらかじめ診断を行わせなければならない」とされている。

医師の診断を要件とする趣旨は、心身の故障の認定を医師の医学的見地からの所見に基

づく客観的判断に依拠させることによって、任命権者の恣意を排除し、職員の身分保障を

図るためである。また、医師については、診断の信憑性の問題から、本人が任意に依頼す

るのではなく、任命権者が指定することとなる。

《分限休職処分の期間》

分限条例案第3条第1項では、心身の故障による分限休職処分の期間について、「休養

を要する程度に応じ、3年を超えない範囲内において、それぞれ個々の場合について、任

命権者が定める」とされている。分限休職処分に付された職員は、予め指定された期間が

終了した際、当然に職務に復帰しなければならない。

メンタルヘルス不調については、継続的な治療を要するものであるが、適切な治療の継

続により、その症状を相当程度安定化させ、治癒することも可能とされている。従って、

任命権者としては、分限休職処分期間が3年に至る間は、分限休職処分に付し、治療に当

たらせることができる。

分限休職処分期間に上限が設けられている趣旨は、回復の見込みがないか治療に極めて

長期間を要する場合にまで職員の身分を保障すると、公務能率を大きく阻害することとな

るからである。

4 最高裁昭 48・9・14判決(二小)参照

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③ 分限休職処分期間における給与の取扱い

心身の故障による分限休職処分者の給与について、国においては、給与法第 23条第3項

により、原則として給料及び一定の手当の 100分の 80が1年間支給され、地方公共団体に

おいても、地公法第 24条第5項に基づく条例によりそれに準じた内容が定められていると

ころである。つまり、最長期間3年のうち、有給であるのは1年間のみで残余の期間は無給

となる。

(2) 国における分限休職処分の制度

① 国における分限休職処分の手続き

国において、心身の故障による分限休職処分の手続きについては、人事院事務総長通知(昭

54・12・28 任企第 548 号)第5条関係第1項により「原則として医師の診断の結果に基づ

いて行うこと」とされている。

つまり、分限条例案第2条第1項の規定とは異なり、医師の人数までは定められておらず、

医師1名の診断をもって、分限休職処分を行うことができる。また、分限休職処分の更新及

び分限休職処分期間満了前の復職に当たっても同様である(前掲人事院事務総長通知第5条

関係第1項及び第6条関係第2項)。

② 国における分限休職処分の期間

国における分限休職処分の期間は、国家公務員法(昭和 22年 10月 21日法律第 120号。

以下「国公法」という。)第 80条第1項に基づき、人事院規則 11-4第5条第1項で定めら

れている。

同項では、心身の故障による分限休職処分の期間について、分限条例案第3条第1項の規

定に加えて、その後段に「休職の期間が3年に満たない場合においては、休職にした日から

引き続き3年を超えない範囲内で更新することができる」と規定されている。これが、分限

条例案における分限休職処分の期間に係る規定と異なる点である。

また、この人事院規則 11-4第5条第1項後段については、前掲人事院事務総長通知第

5条関係第2項で、「休職の期間は、同一の休職の事由(根拠条項)に該当する状態が続く

限り、その原因である疾病の種類、従事する業務の内容等が異なる場合においても、引き続

き3年(中略)を超えることができない」と示されている。

(3) 分限休職処分に係る裁判例

① 分限休職処分の手続きについて

前述のとおり、心身の故障による分限休職処分の手続きについて、分限条例案第2条第1

項では指定医師2名の診断を要件としているのに対し、国における制度では医師の人数の定

めがない。

裁判例においては、規程により指定医師2名の診断が要求されていない場合、指定医師1

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名のみの診断書をもって行われた分限休職処分の手続きに違法性はないとしている(東京地

裁平 17・10・27判決)。

つまり、規程次第では、分限休職処分を行うに当たって、必ずしも指定医師2名の診断が

必要となるわけではない。地方公共団体においても、分限休職処分の手続きの簡素化を図る

のであれば、特段、指定医師の人数の規定まで設ける必要はないだろう。

② 分限休職処分の期間について

前述のとおり、心身の故障による分限休職処分の期間について、分限条例案第3条第1項

には、(ア)人事院規則 11-4第5条第1項後段及び(イ)前掲人事院事務総長通知第5

条関係第2項の規定が欠けている。

裁判例においては、(ア)の規定について、「一旦復職可能との判断から復職が認められ

たとしても、その結果、依然として通常の勤務が可能な状態にはないことが判明した場合に

は、従前の休職期間から休職事由が継続していたとして、休職期間を通算する休職期間の更

新の一つとして再度休職処分を行うことも(中略)許容していると解するのが相当」とし(前

掲大阪地裁平 26・11・19判決)、また、(イ)の規定に基づく分限休職処分に違法性はな

いとしている(大阪地裁平 15・7・30判決)。 つまり、(ア)及び(イ)の規定は、疾病の種類が異なったか否かを問わず、同一の休職

の事由(根拠条項)に該当する状態が続く限り、その復職の前後の分限休職処分期間を通算

するものといえ、分限休職処分期間の通算規定となり得る。地方公共団体においても、延々

と分限休職処分が繰り返されることのないよう、規程上(ア)及び(イ)の規定を定めてお

くべきである。 ただ、分限休職処分期間の通算規定については、病気休暇のクーリング期間制度と異なり、

復職の前後の期間を通算するか否かを判断するに当たってのその復職日数の具体的な基準

がない。復職の前後の期間を通算するか否かは、職員の職場における態度・言動や医師の診

断等から「依然として通常の勤務が可能な状態にはないこと」を判断する必要があるだろう。

(4) 病気休暇と分限休職処分による繰返しの休業を防ぐために

① クーリング期間制度と分限休職処分期間の通算規定

これまでに述べてきたとおり、メンタルヘルス不調は、一旦その症状が治まったとしても、

再発するケースが往々にしてある。分限休職処分後に復職した職員が、再度同様の症状に陥

り休業を要することとなった場合、制度上、再度病気休暇を付与することもできる。

危惧すべきは、病気休暇の取得、その後の分限休職処分という一連の休業が、延々と繰り

返されることである。

もし、病気休暇のクーリング期間制度及び分限休職処分期間の通算規定が設けられていな

い状況で、メンタルヘルス不調の症状が継続する職員により、断続的な休業が繰り返されれ

ば、その休業の都度、病気休暇及び分限休職処分の期間のカウントがリセットされ、この一

連の休業がいつまでも繰り返されることとなる。

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そして、本来、分限免職処分の事由に該当する職員に対して、処分が行うことができない

事態に陥ることとなる。繰返しの休業に歯止めをかけ、長期的なアブセンティイズムの解消

を図るためにも、病気休暇のクーリング期間制度の導入に加えて、分限休職処分期間の通算

規定を設けることが重要といえる。

② 分限休職処分後の病気休暇の不承認

また、分限休職処分後に復職した職員が再度休業を要することとなった場合、その要する

期間が短期間であっても、その職員に対して病気休暇を付与せず、分限休職処分を行うこと

ができるか否かであるが、裁判例においては、病気休暇を認めず、従前の分限休職処分に引

き続いて行われた分限休職処分を適法としている(前掲大阪地裁平 26・11・19判決)。

判決では、「明文の規定がなくとも、過去の休職状況や、復職後の実勤務期間の長さ、そ

の間の勤務状況(職場での言動や行動、欠勤の有無)、本人の病状(これまでの経過や現在

の病状)などを総合的に勘案し、産業医の意見も踏まえた上で、疾病による休職から復職後、

社会的に見て通常勤務が可能な状態に至らず、疾病が継続していると判断される場合には、

依然として休職事由が先の分限休職処分期間から継続しているとして、療養休暇を認めず、

地方公務員法 28条及び分限条例に基づき、従前の休職処分と引き続く休職処分とすること

は、その考慮する要素の内容、(中略)分限処分の趣旨・目的に照らすと、任命権者の合理

的な裁量の範囲内というべきである」としている。

ここで、留意すべきは、疾病が継続しているか否かの判断の一要素に、職員の勤務状況が

含まれていることである。この際、第3章で述べた「職員の態度・言動等に関する記録」が

活用されることとなる。職場において疾病の症状と見られる態度・言動があり、それが記録

として残っていれば、病気休暇を承認せず分限休職処分を行う判断の裏付けとなる。また、

この考えは、復職の前後の分限休職処分期間を通算するか否かの判断にも適用できるだろう。

以上から、療養を図ってもメンタルヘルス不調の症状が継続・悪化する職員については、

公務能率の維持・確保の観点から、その症状に応じて病気休暇ではなく分限休職処分を行い、

その期間を通算していくことで、病気休暇と分限休職処分による繰返しの休業を防ぐことが

できる。

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第5章 回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員への適正な対応

対策C「回復の見込みのないメンタルヘルス不調の職員への適正な対応」の狙いは、分

限免職処分の処分事由に該当する職員を看過することなく、処分を行うに当たっての根

拠・手続きを押さえた上で、当該職員に対して円滑かつ適正に処分を行い、アブセンティ

イズムの解消を図ることである。本章では、対策Cの実施方法及び留意点を考察する。

第1節 分限免職処分の手続き

(1) 分限休職処分期間の満了

心身の故障を事由に分限休職処分に付された職員について、分限休職処分期間が通算し

て3年を経過してもなお、病状に回復が見られない場合、再び同一事由により分限休職処

分に付すことは、当該期間に上限が設けられている趣旨を鑑みれば妥当ではない。

この場合において、当該職員が職務に復帰できないのであれば、分限免職処分を検討す

る必要がある。

ここで、処分事由に係る規定であるが、これは第1章で述べたとおり、地公法第28条第

1項2号で定められている。同号では「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又

はこれに堪えない場合」とされており、任命権者は、同号に該当する職員に対して、分限

免職処分のほかに分限降任処分を行うことができる。

同号の規定により、当該職員が上位の職であって、その下位の職や一般の職員としてな

らば職務遂行に堪えうる場合は分限降任処分を、現に就いている職務に限らず、他の職務

を含めて考慮しても、職務遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合は分限免職処分を

行うこととなる。

従って、職員が上位の職、特に管理職以上の職である場合、当該職員に対しては、分限

免職処分を検討する前に、分限休職処分期間の満了を待つことなく、早期の段階で分限降

任処分を検討すべきである。なお、判例において、分限降任処分は、分限免職処分に対し、

裁量的判断を加える余地が比較的広く認められている(前掲最高裁昭48・9・14判決(二小))。

そして、分限降任処分に加え、職場管理上の措置を講じた上、それでもなお、職員の病

状に回復が見られず、分限休職処分期間が通算して3年を経過する場合、同号に該当する

ものとして、当該職員に対する分限免職処分を検討することとなる。

(2) 指定医師の診断

① 国及び地方公共団体の規定

国における分限免職処分の手続きは、人事院規則11-4第7条第3項で定められている。

同項では、「任命権者が指定する医師2名によって、長期の療養若しくは休養を要する疾

患又は療養若しくは休養によっても治癒し難い心身の故障があると診断され、その疾患若

しくは故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないことが明らかな場合」と

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30

されている。

また、地方公共団体においては、分限条例案第2条第1項で、「医師2名を指定してあ

らかじめ診断を行わせなければならない」とされており、分限条例案上、分限休職処分と

同様の規定となっている。

つまり、分限免職処分を検討するに当たっては、分限休職処分期間の満了の前に、対象

の職員に対して、指定医師の受診勧告を行う必要がある。

なお、規定上、指定医師の診断次第では、分限休職処分期間が通算して3年に至るのを

待つことなく、分限免職処分を行うことができるものと解される。しかし、メンタルヘル

ス不調が往々にして回復と再発が繰返される性格のものであることを考えれば、早期の段

階で「長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治癒し難い

心身の故障がある」と診断されるようなケースは極稀だろう。

② 指定医師の人数

分限休職処分の手続きについては、第4章で述べたとおり、分限条例案上、指定医師2

名の診断を要するとされているが、規程次第では指定医師1名の診断のみで足り得る。で

は、分限免職処分についても同様の見解が成り立つか否かである。

判例では、「公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において大きな差異

があることを考えれば、免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、

慎重であることが要求される」としている(前掲最高裁昭48・9・14判決(二小))。

この点を考慮すれば、より一層の客観性及び公平性の担保を図るためにも、分限免職処

分は、指定医師2名の診断をもって行われるべきであり、規程においてもそう定めるべき

である。

③ 受診命令

分限免職処分を検討するに当たっては、対象の職員に対して、指定医師の受診勧告を行

う必要があるが、分限免職処分を避けようとする趣旨から、受診を勧めても職員がこれを

拒むことがある。

ここで、当該職員に対する受診命令であるが、まず、当該職員に対し、受診自体は本人

の健康状態を医学的見地から客観的に確認することを第一義とするものであることを説明

し、指定医師の診断を受けるよう繰り返し説得することが求められる。

この説得を繰り返してもなお、当該職員が指定医師の受診勧告を拒否し続ける場合には、

指定医師の診断を受けるよう命ずるべきである。任命権者が、公務能率の維持・確保の必

要性から、職員に対して、職務遂行能力の有無を把握し、地公法第28条第1項第2号に定

める分限免職処分の要件を充たすか否かを判断するため、特定の医師を指定して受診を命

じることは、地公法第32条の職務命令に該当するものと解される5。

なお、受診命令は記録として残すためにも文書により行うことが望ましい。

5 最高裁昭 61・3・13判決(一小)参照

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(3) 分限免職処分の手続きを誤った事例

第1章で述べたとおり、ほとんどの地方公共団体は、メンタルヘルス不調による分限免職

処分の実績がなく、そのノウハウが乏しい状況と考えられる。これを裏付ける事例として、

メンタルヘルス不調と推認される職員への分限免職処分が違法とされた裁判例がある。

これは、分限免職処分の事由となる問題行動が統合失調症を中心とする精神疾患に起因す

るものであると推認される場合に、直ちに地公法第 28条第1項第1号及び第3号、つまり、

勤務実績不良及び適格性欠如の事由に該当するとして、指定医師の診断を経ないまま分限免

職処分を行ったものである(東京高裁平 25・2・20判決)。

本事例では、任命権者側が当該職員の問題行動が精神疾患に起因するものであると認識し

ていたにもかかわらず、当該職員に対して受診命令を発したり、分限休職処分を促したりす

る等、疾病に対する配慮をした事実が全く窺われなかった。

つまり、このような事情の下、上記の手続きを踏まず、勤務実績不良又は適格性欠如の事

由により分限免職処分を行うことは、法上許されないのである。この点は、回復の見込みの

ないメンタルヘルス不調の職員の発生・増加が見込まれる中、しっかりと念頭に置く必要が

ある。

第2節 円滑かつ適正な分限免職処分を行うために

(1) 分限免職処分の手続きを進める上での問題とその解決

では、分限免職処分の処分事由に該当する職員に対し、いかにして円滑かつ適正に処分を

行うかであるが、その考察に当たり、心身の故障による分限免職処分の手続きを進める上で

の問題を確認する。

図6は、上記の心身の故障による分限免職処分の手続きをスキーム化したものである。こ

の図から考えられる問題は、職員による「① 受診命令の拒否」、そして、(ア)指定医師

の診断及び(イ)主治医・指定医師からの意見聴取における「② 医師の診断又は意見の相

違等」である。

次では、この2つの問題の解決による円滑かつ適正な処分の遂行について考察する。

<図6>心身の故障による分限免職処分の手続きのスキーム

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① 受診命令の拒否

《心身の故障の認定》

まず、任命権者が受診命令を発してもなお、職員が受診を拒否する場合である。分限免

職処分を行うに当たり、指定医師の診断を要するとの条件が、一切の例外を許さないもの

とすると、診断を拒否し続けた職員は分限免職処分を免れることとなり、不公平かつ不合

理な結果を招く。

このような状況を避けるためにも、職員が正当な理由なく受診命令を拒否する場合、当

該職員の主治医又は指定医師に対して、診断に代わる医学的見地からの意見を求め、心身

の故障を認定する必要がある。これが上記のスキームにおける「(イ)主治医・指定医師

からの意見聴取」となる。

裁判例において、医師の意見に基づいて行われた分限免職処分を適法としたものがある。

本事例は、職員が指定医師の受診命令を拒否したため、職場における言動目撃報告書等を

もとに、当該職員の主治医及び2名の指定医師に対して病状及び職員としての適性等につ

いて意見を求めたところ、いずれの医師からも、職務の遂行に支障があり、また、これに

堪えないものと判断される旨の意見があったことから、地公法第 28条第1項第2号に基

づき、分限免職処分を行ったものである(東京地裁平 5・3・30判決)。

つまり、医師の意見に基づいて、同号に該当すると判断される場合には、指定医師の診

断を経ずに分限免職処分を行うことができる。

《適格性欠如の認定》

これまでにも述べたとおり、任命権者は心身の故障のほか、地公法第 28条第1項第3

号に基づき、職員がその職に必要な適格性を欠く場合、その職員に対して分限免職処分を

行うことができる。

ここで、職員が正当な理由なく受診命令を拒否している場合、これを適格性欠如と捉え、

分限免職処分を行うことができるか否かである。ただ、正当な理由のない受診命令拒否は

適格性欠如の一徴表に過ぎず、これをもって直ちに適格性欠如に当たると解することは、

前節で述べたとおり妥当ではない。

裁判例では、心身の故障があると疑われる職員で、次の(ⅰ)及び(ⅱ)の要件を充た

す職員は、(ⅰ)aについて指定医師2名の診断がない場合であっても、簡単に矯正する

ことのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因して、その職務の円滑な遂行に

支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められるとき、同号の「その職に必要な

適格性を欠く」職員にも当たるとしている(大阪高裁平 12・3・22判決)。

(ⅰ)適格性欠如の要件

a 長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治癒し

難い心身の故障があると認められ、その疾患又は故障のため職務の遂行に支障が

あり、又はこれに堪えないこと。

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b このaに加え次の(ⅱ)の事由などの行動、態度に徴表される一定期間にわた

って継続している状態により、当該職員が官職に必要な適格性を欠くこと。

c 現に就いている職務に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮しても、なお、

当該職員の疾患又は故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない

こと。

(ⅱ)受診命令拒否の要件

a 任命権者が、心身の故障があるとの合理的な疑いがある職員に対し、職務遂行

能力の有無を把握し、分限免職の要件を充たすか否かを判断するために、特定の

医師を指定して受診を命じていること。

b 当該職員が正当な理由がなく受診命令を拒否していること。

従って、正当な理由のない受診命令拒否に加えて、一定の適格性欠如の要件を満たす場

合には、同項第3号にも該当するものとして分限免職処分を行うことができる。

また、本事例では処分を行う際、当該職員の主治医から意見を聴取し、(ⅰ)の要件を

充たすことを確認した経緯がある。つまり、同号に基づき分限免職処分を行う場合であっ

ても、医師からの意見聴取が前提となる。

なお、心身の故障及び適格性欠如の認定どちらの場合においても、医師から意見を聴取

する際、第3章で述べた「職員の態度・言動等に関する記録」を提供することが効果的で

ある。これにより、医師が職員の職場における症状の現れについて確認することができ、

その円滑かつ適正な判断に寄与することとなる。

② 医師の診断又は意見の相違等

《主治医と指定医師の診断又は意見の相違》

次に、受診勧告若しくは受診命令による(ア)指定医師の診断又は受診命令拒否による

(イ)主治医・指定医師からの意見聴取における問題であるが、この際、医師の診断又は

意見が分かれることが往々にしてある。

例えば、主治医から職場復帰可能との診断又は意見があったのに対し、指定医師から職

場復帰不可との診断又は意見があった場合である。この場合、指定医師の診断又は意見に

基づき分限免職処分を行うことができるか否かである。

(ア)指定医師の診断

これについて、職場復帰可能とする職員の主治医の診断を採用せず、職場復帰不可とす

る指定医師の診断を採用して行われた分限免職処分を適法とした裁判例がある(東京地裁

平 27・2・18判決)。

本事例では、任命権者側が、指定医師2名に職員の職場における態度・言動等、従前の

経歴・経過等に関する内容を記載した資料(比較的簡易な業務を遂行するに際しても支障

があり、それが十分に改善されない状況が見受けられるもの)を提供し、その上で、指定

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医師2名が職場復帰不可との診断を行ったのに対し、主治医は主に職員本人の申告内容を

重視して、職場復帰可能との診断を行った。

判決では、指定医師2名の診断を採用し、主治医の診断内容を採用しないものとした判

断には、一定の合理性が認められ、職場における職員の態度・言動等に照らしても不合理

なものとはいえないとしている。

(イ)主治医・指定医師からの意見聴取

また、職員の受診命令拒否によりその主治医及び指定医師に意見を聴取した場合におい

ても、主治医の診断を採用せず、指定医師の意見を採用して行われた分限免職処分を適法

とした裁判例がある(東京地裁平 17・10・27判決)。

本事例は、主治医が心理テスト等の結果に基づき当該職員の精神病状態を認めず、出勤

が可能との診断を行ったのに対し、指定医師が統合失調により当該職員の職場復帰は不可

能との意見を呈したものである。この指定医師の意見についても、上記(ア)の事例と同

様、任命権者側が提供した職場における行動記録等の資料に基づくもので、判決では、当

該資料に基づき相当の考察が行われたとして、主治医の診断よりも指定医師の意見に信用

性を認めている。

以上のことからも、職員の態度・言動等に関する記録の重要性が確認できる。記録は医

師の診断又は意見の裏付けにもなり、円滑かつ適正な処分を進める上で、医師への記録の

提供は必要不可欠といえる。

《主治医の診断に対する留意点》

ここで、主治医の診断に対する留意点である。主治医が職員の職場復帰を判断する際、

診断書の中に「職場復帰に当たり業務負荷を軽減する」といった意見が記載されることが

ある。このような診断は、当該職員の職務内容を認識した上で記載されたものではないこ

とが多い。

通常、職場復帰に当たっては、病気休暇等による勤務軽減措置、職務内容や人事配置の

変更が行われるべきであるが、分限免職処分の検討は、分限休職処分期間の満了が前提に

あることから、分限免職処分の検討の時点においては、既にこのような措置が図られた後

と考えられる。

このことから、主治医の意見をそのまま受け入れるのではなく、当該職員の同意を得た

上で、主治医に対して意見を聴取するとともに、当該職員の態度・言動等に関する記録を

提供し、その職務内容(最低限必要な職務)を説明すべきである。また、この説明は指定

医師に対しても同様に行っておくべきである。

これにより、そもそも、主治医と指定医師、場合によっては指定医師同士の診断・意見

に相違が生じることを防ぐことができるだろう。

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③ 2つの問題の解決による円滑かつ適正な処分の遂行

以上から、職員が受診命令を拒否する場合、指定医師の診断を経ずとも分限免職処分を

行うことは可能であり、また、その適法性の判断に当たっては、指定医師の受診の説得、

主治医及び指定医師からの意見聴取等により、職員の意向に配慮し、慎重に健康状態の把

握に努めたかが問われることとなる。

また、任命権者側として、主治医の診断に疑義があれば、客観的な診療記録に基づく根

拠を尋ねた上で指定医師に意見を求める等その信用性を確認するとともに、任命権者側が

指定医師に対して、職員の態度・言動等に関する記録により、職員の職場における実状等

の情報を提供することが重要である。

このことが、円滑かつ適正な分限免職処分の遂行を実現し、アブセンティイズムの解消

を図ることにつながるのである。

(2) 分限免職処分に至るまでの各対策の実施

① 公務災害の認定と分限免職処分の効力

ここまで、円滑かつ適正な分限免職処分の遂行について、処分の手続きを進める上での

留意点について触れたが、これのみを踏まえることで、処分の適法性が確保されるわけで

はない。

分限免職処分の処分事由となったメンタルヘルス不調が、公務が原因で発症したとして

公務災害に認定された場合、労働基準法(昭和 22年4月7日法律第 49号)第 19条の解雇

制限の規定が適用されることとなる。これにより、職員が療養のために休業する期間及び

その後 30日間は分限免職処分を行うことができず、また、解雇制限の規定に違反した分限

免職処分は無効となる。なお、分限免職処分後に公務災害が認定された場合においても、

同様に当該処分は無効となる。

地方公務員災害補償基金理事長通知(平 24・3・16地基補第 61 号)では、対象疾病を精

神及び行動の障害(頭部外傷、脳血管疾患、中枢神経変性疾患等の器質性脳疾患に付随す

る疾病、化学物質による疾病等を除く。)としており、また、認定の要件については、次の

(ⅰ)及び(ⅱ)を満たすものとしている。

(ⅰ)対象疾病発症前のおおむね6か月の間に、業務により強度の精神的又は肉体的

負荷を受けたことが認められること。

ここで、「業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたこと」とは、具体的

に、次のa又はbのような事象を伴う業務に従事したことをいう。

a 人の生命にかかわる事故への遭遇

b その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象

(ⅱ)業務以外の負荷及び個体側要因により対象疾病を発症したとは認められないこ

と。

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このうち、(ⅰ)bの具体的な内容については、発症直前の1か月に概ね 160 時間を超

えるような時間外勤務等を行ったと認められる場合、機構・組織等の改革又は人事異動等

による急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合や職場でひ

どい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合等があげられる。

② 安全配慮義務の履行と分限免職処分に至るまでの各対策との関係

公務が原因で職員がメンタルヘルス不調を発症した場合、公務災害認定と併せて留意す

べきは、安全配慮義務である。第2章で述べたとおり、事業者である地方公共団体には、

職員の心身の健康状態を常に把握すること、健康状態に問題がある職員には就業上の措置

を行い、公務による健康状態の増悪を防ぐことが求められている。

そして、職員が安全配慮義務違反による損害を受けた場合、地方公共団体は、民法(明

治 29年4月 27日法律第 89号)415条により、債務不履行に基づく損害賠償義務及び国家

賠償法(昭和 22年 10月 27日法律第 125号)第1条により、公権力の行使に伴う地方公共

団体の不法行為責任を追求される可能性がある。また、この場合において行われた分限処

分についても、その違法性を問われるおそれがある。

メンタルヘルスの観点からは、第3章で述べた職員のメンタルヘルス不調の予防として、

職員の心身の健康状態の把握に努めたか、第4章で述べたメンタルヘルス不調により休業

を要する職員への適正な対応として、健康状態に問題がある職員には就業上の措置を行い、

公務による健康状態の増悪を防ぐことに努めたかが問われ、これらの対策の実施が安全配

慮義務を履行することとなる。

つまり、これらの対策が実施されていないにもかかわらず行われた分限免職処分は、安

全配慮義務を欠くものとして、その違法性を問われるおそれがあり、円滑かつ適正な処分

の実施に支障を来すということである。

このことから、第3章から第5章で述べた3つの対策の1つでも欠ければ、第2章で述

べた3つの問題点全てを解決することはできない。3つの対策全ての実施が、メンタルヘ

ルスに係る人事管理上の制度の観点から、公務能率の維持・確保を実現するために、必要

な措置となるということである。

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おわりに

以上、本稿では、地方公共団体において、メンタルヘルスに係る人事管理上の制度の観

点から、公務能率をいかにして維持・確保するかについて考察した。

近年、メンタルヘルス不調に係る問題は、マスメディアでも大きく取り上げられ、官公

庁、民間企業関係なく社会的な問題となっている。中でも代表的な疾病であるうつ病は、

罹患者の自殺という最悪の事態を招きかねない。

この意味でも、メンタルヘルス不調の予防に係る対策を講じ、そもそもメンタルヘルス

不調を発症する職員を出さないこと、次いで、メンタルヘルス不調を発症した職員に対し

ては休業による療養等をとおして、その症状の回復を図ることが重要なのである。

一方で、メンタルヘルス不調が職員の職務遂行能力の低下や周囲の職員への負担増大と

いう影響を及ぼし、公務能率の低下を招くことにも留意しなければならない。繰り返しに

なるが、メンタルヘルス対策を講ずるとともに、職員の症状の程度に応じて、適正かつ円

滑に分限処分を行うことが、公務能率の維持・確保を図る上で必要となる。

そして、最終的には、職員への分限免職処分の検討を迫られることもあり得る。分限免

職処分は職を失わせる最も重い処分であり、人事労務管理部門においては、その判断に苦

慮することだろう。ただ、この処分の遂行を疎かにし、回復の見込みのない職員を抱え込

むことで、公務能率が阻害されるようなことはあってはならない。

つまり、地方公共団体は、メンタルヘルスに係る一連の対策を進めることにより、文中

で述べた3つ全ての問題点の解決を図ることが求められるのである。地方公共団体におい

ては、公共の福祉の増進という役割を全うする義務があることを第一義に考え、各対策を

実施し、公務能率の維持・確保に努めていただきたい。

最後になるが、本稿が、地方公共団体における今後の執務上、役に立つところがあれば

幸いである。

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