特集 義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図る...

特集 1 特集 2 MONTHLY LINE UP 我が国の高等教育に関する将来構想について(諮問) / 運動部活動の運営 の適正化に向けて / 国のいじめ防止基本方針の改定等について ほか 義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図る ための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数 の標準に関する法律等の一部を改正する法律について 奨学金制度改革 文部科学省 編集 5 MAY 2017 No. 210

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Page 1: 特集 義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図る ための公立義務 … · 「義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育

特集1

特集2

◆MONTHLY LINE UP

我が国の高等教育に関する将来構想について(諮問) / 運動部活動の運営の適正化に向けて / 国のいじめ防止基本方針の改定等について ほか

義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律について

奨学金制度改革

文部科学省 編集

5MAY 2017No.210

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The Monthly Journal of MEXT

2017年 5月号/ No.210

特集1義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律について …… 1

文部科学省 初等中等教育局 財務課 初等中等教育企画課 参事官(学校運営支援担当)付生涯学習政策局社会教育課

「次世代の学校・地域」創生プラン等の策定 …… 1本改正法の具体的な内容 …… 3

特集2奨学金制度改革 ~経済的理由で大学等への進学を諦めないために~ …… 7

文部科学省高等教育局学生・留学生課給付型奨学金の創設 …… 7無利子奨学金制度の抜本的拡充 …… 9

我が国の高等教育に関する将来構想について(諮問) …… 12

運動部活動の運営の適正化に向けて …… 14

国のいじめ防止基本方針の改定等について …… 16

大学スポーツの振興に関する検討会議 最終とりまとめ~大学のスポーツの価値の向上に向けて~ …… 20

国際バカロレアアジア太平洋地区年次研究大会について …… 23

「まんが スポーツで地域活性化」事例集(全12巻)を発刊 …… 25

「Arts in Bunkacho~トキメキが、爆発だ~」の開催について …… 27

国宝(美術工芸品)の指定について …… 28

障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について …… 31

文部科学省「情報ひろば」において新たな企画展示を開始しました!~大学との共同企画広報~ …… 33

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﹁次世代の学校・地域﹂創生プラン等の策定

中央教育審議会の3つの答申(平成27年12月21日)

学校が直面する教育課題が複雑化・困難化していることに対

応するため、教育再生実行会議の提言等を踏まえつつ、中央教

育審議会で審議され、平成27年12月に答申(「これからの学校教

育を担う教員の資質能力の向上について」、「チームとしての学校

の在り方と今後の改善方策について」、「新しい時代の教育や地

方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後

の推進方策について」)が取りまとめられました。

これらの答申においては、養成・採用・研修を通じた不断の教

員の資質向上とともに、学校経営を支える事務職員の役割の見

直し、学校と地域の連携・協働による学校改革・地域創生など、

「チーム学校」を実現し、学校の組織力・教育力を高めることの

重要性が指摘されています。

「次世代の学校・地域」創生プラン

これらの提言や答申などを踏まえ、文部科学省では、平成28

年1月に「次世代の学校・地域」創生プランを策定しました。同

プランにおいて、文部科学省の目指す方向として、一億総活躍

社会の実現と地方創生の推進には、教職員定数の戦略的充実と

ともに、教員、事務職員、専門スタッフが適切に役割分担を行い、

校長のリーダーシップの下、学校を運営すること、学校と地域が

相互に関わり合い、学校を核として地域社会が活性化していく

ことが必要不可欠であるとの考えの下、学校と地域が一体となっ

た体系的な取組を進めていくこととしました(図1参照)。

義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律について

文部科学省初等中等教育局 財務課 初等中等教育企画課 参事官(学校運営支援担当)付生涯学習政策局 社会教育課

平成28年1月に策定された「次世代の学校・地域創生プラン」等を受け、「義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律」等が平成29年3月31日に公布、4月1日に施行されました。本特集では、今回の改正の背景や、その具体的な内容について紹介します。

特 集 1

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号1

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学校の組織運営改革(⇒チーム学校)

「次世代の学校」の創生に必要不可欠な教職員定数の戦略的充実

• 障害に応じた特別の指導(通級による指導)、日本語能力に課題のある児童生徒への指導、初任者研修、少人数指導等の推進のための基礎定数の新設(義務標準法の改正)

• 教職員定数の加配事由に「共同学校事務室」を明示(義務標準法の改正)

地域からの学校改革・地域創生(⇒地域と学校の連携・協働)

教員改革(⇒資質向上)

養成・採用・研修を通じた不断の資質向上

学校運営協議会

地域学校協働本部

中教審答申←教育再生実行会議第7次提言 中教審答申←教育再生実行会議第6次提言中教審答申←教育再生実行会議第7次提言

校長のリーダーシップの下

学校を運営

校長

教員

事務職員

保護者

子供

連携・協働

保護者・地域住民・企業・NPO等

法改正済:地方教育行政法

法改正済:社会教育法

法改正済:義務標準法等

法改正済:学校教育法、地方教育行政法法改正済:教特法、免許法、 教員研修センター法

現職研修改革・管理職研修の充実・マネジメント力強化

・チーム研修等の実施・英語・ICT等の課題

へ対応̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶

採用段階の改革・採用試験の共同作成・特別免許状の活用̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶

養成段階の改革・インターンシップの導入

学校現場や教職を早期に体験・教職課程の質向上̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶

←都道府県が策定

←国が大綱的に提示

・ミドルリーダー育成・免許更新講習の充実

「地域学校協働活動」の推進・郷土学習 ・地域行事 ・学びによるまちづくり・放課後子供教室・家庭教育支援活動 等

ベテラン段階

中堅段階

1~数年目

採用段階

養成段階

社会に開かれた教育課程

よりよい社会を作るという目標のもと教育課程を介して

地域社会とつながる学校

学校を核とした地域の創生次代の郷土をつくる人材の育成、まちづくり

教員をバックアップする多様なスタッフ

・学校運営の基本方針・学校運営や教育活動 等

・校長のリーダーシップを応援・地域のニーズに応える学校づくり

地域の人々が学校と連携・協働して、子供の成長を支え、地域を創生

校長のマネジメントを支える

※共同学校事務室により 学校の事務を効率化

スクールカウンセラー

地域学校協働活動推進員

→役割等の明確化

スクールソーシャルワーカー

・・・・・・

子供へのカウンセリング等に基づくアドバイス

校内研修の実施 等

子供への個別カウンセリングいじめ被害者の心のケア 等

授業等の学習指導生活指導・

保護者対応 等

困窮家庭への福祉機関の紹介

保護者の就労支援に係る助言 等

地域連携の中核を担う

教職員

教員としての資質の向上に関する「指標」

教特法等の改正により措置済(平成29年4月1日施行)

地方教育行政法の改正により措置済(平成29年4月1日施行)

学校教育法の改正により措置済(平成29年4月1日施行)

学校教育法施行規則の改正により措置済(平成29年4月1日施行) 社会教育法の改正により措置済

(平成29年4月1日施行)

地方教育行政法の改正により措置済(平成29年4月1日施行)

「指標」の策定に関する指針

→職務の 明確化

→努力義務化

図1 「次世代の学校・地域」創生プラン(平成28年1月 文部科学大臣決定)の実現に向けて

教育基本法を踏まえ、学校が直面する様々な教育課題に対応していくために、学校の機能強化を一体的に推進することが必要。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 2

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本改正法の具体的な内容

これからの学校には、学校の指導・運営体制を

強化するとともに、地域住民等との連携・協働を

含めた学校運営の改善を図ることにより、学校の

機能強化を一体的に推進することが重要です。そ

のため、「次世代の学校・地域」創生プランなどを

踏まえ、本改正法では、公立義務教育諸学校の教

職員定数の標準を改正するとともに、義務教育諸

学校等の事務職員の職務内容を改めるほか、共同

学校事務室の制度化、学校運営協議会の設置の努

力義務化、地域学校協働活動の実施体制の整備等

の措置を講じています(図2参照)。以下、各法律

の具体的な改正内容を紹介します。

公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数

の標準に関する法律の一部改正

平成29年度予算において、これまで加配定数で

措置していた部分の基礎定数化が認められたこと

を受け、次のとおり義務標準法の改正を行いまし

た。

①�

障害に応じた特別の指導(通級による指導)のた

めの基礎定数の新設

発達障害等の障害のある児童生徒の数が増加傾

向にあり、障害に応じた特別の指導(通級による

指導)を受ける児童生徒は10年間で2・3倍に増

加しています。その一方で、通級による指導を担

当する教員については、これまで加配定数として毎

年度の予算の範囲内で措置していましたが、通級

による指導に必要な教員に関する市町村からの要

望のうち約2割に応えられていないなど、個に応

じた必要な指導が受けられていない児童生徒が相

当数いる実態がありました。

こうした課題を踏まえ、通級による指導を受け

る児童生徒13人につき、教員1人の割合で定数を

措置することとしています。

なお、へき地や対象児童生徒数の少ない障害種

への対応については、基礎定数化による自動的な定

数算定のみでは十分な数の教員が行き届かない可

能性があることから、現在措置している加配定数

の1割程度を引き続き確保し、地域や学校の実情

に応じて措置することとしています。

②�

日本語能力に課題のある児童生徒への指導のた

めの基礎定数の新設

日本語指導が必要な児童生徒は10年間で1・6

倍に増加しており、日本語能力に応じた特別の指

導を行うための教員を安定的に確保することが必

要です。一方で、日本語能力に応じた特別の指導

のための教員については、通級による指導の担当

教員と同様、加配定数として措置してきましたが、

こうした指導が必要な児童生徒のうち約2割が必

要な指導を受けることができていないという実態が

ありました。

こうした課題を踏まえ、日本語能力に応じた特

別の指導を受けている児童生徒18人につき、教員

1人の割合で定数を措置することとしています。

①同様、散在地域への対応のため、現在措置して

いる加配定数の1割程度を引き続き確保し、地域

や学校の実情に応じて措置することとしています。

③初任者研修のための基礎定数の新設

近年の教員の大量退職を受け、教員の採用者数

が増加していることから、初任者研修の対象者は、

この10年間で約1・5倍となっています。初任者研

修対象者が増加している中で、研修を担当する教

員の加配定数は近年据え置かれたままとなってい

ました。

こうした実態を踏まえ、初任者研修実施のため

の環境整備を図るため、初任者に対する研修を担

当する指導教員の数として、初任者研修を受ける

教諭等6人につき、教員1人を措置することとし

ています。

④少人数指導等の推進のための基礎定数の新設

平成5年以降措置され、ティームティーチングや

習熟度別少人数指導などに活用されている指導方

法工夫改善加配の一部について、すべての都道府

県に共通して配分されている部分の基礎定数化を

行いました。

これらの基礎定数化により、地方自治体にとっ

ては、安定的な採用・研修・配置が行いやすくなる

とともに、きめ細かな指導の充実や教員の質の向

上に必要な研修体制の充実に資するものと考えて

おります。

⑤�

教職員定数の加配事由に「共同学校事務室」を

明示

今回の制度改正において、共同学校事務室が制

度化されたことに伴い、複数校の事務処理の拠点

となっている共同学校事務室における体制の強化

を図る観点から、共同学校事務室が置かれている

場合に事務職員を加配することができるようにし

ています。

特 集 1

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号3

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※�

①〜③の定数については、10年かけて計画的に

基礎定数化することとしています。

義務教育費国庫負担法の一部改正

多様な課題を抱える児童生徒に対する就学の機

会を確保することは重要であることから、不登校

の児童生徒に対する特別の指導を提供する「不登

校特例校」や、様々な理由により十分な義務教育

を受けることができなかった者に対して、特別の時

間に指導を行う中学校等の「夜間学級」の設置を

促進することが必要とされています。一方で、これ

らの教育の提供に必要な教職員給与に要する経費

について、これまでは市町村が設置した場合にのみ

国庫負担の対象となっていました。しかし、これら

の学校における指導を必要とする者は都道府県内

の市町村に散在しているなど、都道府県単位で受

入れ態勢の整備を行うことが必要となっています。

そのため、都道府県が「不登校特例校」や「夜間学

級」を設置した場合の経費も国庫負担の対象とし、

各都道府県における教育機会の充実を図ることと

しています。

学校教育法等の一部改正

本改正法では、学校教育法等に定める事務職員

の職務規定を「事務をつかさどる」と改めました。

教育指導面や保護者対応等により学校組織マネ

ジメントの中核となる校長、教頭等の負担が増加

するなどの状況にあって、今回の改正では、学校

におけるマネジメント機能を十分に発揮できるよう

にするため、学校組織における唯一の総務・財務

等に通じる専門職である事務職員の職務を見直す

こととしました。このことにより、管理職や他の教

職員との適切な業務の連携・分担の下、その専門

性を生かして学校の事務を一定の責任をもって自

己の担任事項として処理し、より主体的・積極的

に校務運営に参画することを目指しています。例

えば、従前は、各種調査の対応や学校予算の編成・

執行などの事務については、校内の取りまとめや確

認作業等の細かな対応まで校長・教頭等が対応し

てきた場合も多いと思いますが、今後は、総務や

財務等に通じた事務職員が対応することなどが考

えられます。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律の

一部改正

①共同学校事務室の制度化

現在の小中学校の事務職員の配置状況は、1校

当たり約1人であり、前述した事務職員の職務規

定の改正も踏まえ、学校事務の効率化を更に図る

必要があります。これまでも学校事務の共同実施

については、各教育委員会において自主的に運用

されていました。しかし、実施に当たっての権限・

責任関係が明確でない、共同実施を行う業務の範

囲が曖昧であるといった課題がありました。これら

の点を踏まえ、本改正法等により、共同学校事務

室を制度化し共同実施を行う場合の服務監督に係

る責任・権限関係や業務範囲の明確化を図ること

としました。

具体的には、本改正法により、教育委員会は、

教育委員会規則で定めるところにより、その指定

する二以上の学校に係る事務を当該学校の事務職

員が共同処理するための組織として、当該指定す

る二以上の学校のうちいずれか一の学校に、共同

学校事務室を置くことができることとしました。

共同学校事務室には、室長及び所要の職員を置く

こととし、それぞれ事務の共同処理を行う各学校

の事務職員をもって充てるものとしています。共同

処理される事務は、政令において、教材、教具そ

の他の備品の共同購入や給与及び旅費の支給に関

する事務などが定められています。

共同学校事務室において複数の職員が業務を遂

行することで、ミスや不正の防止、学校間の事務

処理の標準化、OJTの実施による事務職員の育

成及び資質の向上などを通じた事務処理の更なる

効率化が期待されるところです。

②学校運営協議会の役割等の見直し

学校運営協議会(以下、協議会という。)は、保

護者や地域住民等が学校運営に参画する仕組みと

して平成16年に制度化されたものであり、平成28

年4月1日時点で、2、806校について設置さ

れています。協議会の設置により、地域と連携し

た取組を組織的に行うことができるようになった

といった成果が認識されている一方で、協議会の

設置率は、全公立学校の約7%にとどまっていま

す。複雑化・困難化している学校現場の課題を解

決するためには、地域住民等の協力を得て、社会

総がかりでの教育の実現を図っていく必要があり、

協議会の設置の更なる促進が求められていることか

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 4

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ら、今回の制度改正により、教育委員会に対し、

協議会の設置について努力義務を課すこととしてい

ます。併せて、左記の観点から制度の充実を図っ

ています。

1.学校を応援する役割の明確化

学校が抱える諸課題に対応するためには、教職

員だけで対応するのではなく、地域住民等の適切

な支援も受けつつ、教育活動を効果的に行ってい

くことが不可欠です。そのため、今回の改正では、

協議会が、これまでのように学校運営に関する協

議を行うだけでなく、学校が必要としている支援

に関する協議も行うよう、その役割を見直すこと

としています。併せて、社会教育法に規定してい

る地域学校協働活動推進員等の学校運営に貢献す

る者を協議会の委員に加えるほか、協議内容を広

く地域住民に提供するように努めることとしてい

ます。こうした改正を通じ、地域による学校支援

活動が、学校のニーズをより適切に把握したものと

なることが期待されます。

2.校長のリーダーシップの発揮

協議会の委員については、教育委員会が任命す

ることとなっています。しかし、協議会が承認した

基本方針を踏まえ、実際に学校運営を行う責任者

は校長であることから、校長が自校の状況を踏ま

え、運営改善に貢献する人を考えて教育委員会に

申し出ることは、校長のリーダーシップの発揮とい

う観点から必要だという指摘もありました。その

ため、校長が委員の任命に関する意見を教育委員

会に申し出ることができることとしています。

3.教職員の任用に関する意見の柔軟化

協議会の役割の中に、「教職員の任用に関する

意見を教育委員会に述べることができる」というも

のがあります。これは、教育目標を実現するため

の教職員の配置・充実が図られることが期待される

ため、協議会の役割として重要なものです。一方

で、協議会をまだ設置していない教育委員会の一

部では、人事が混乱するのではないかといった懸念

も見られ、協議会の設置促進の足かせになっている

という指摘があります。こうした指摘も踏まえる

と、教職員の任用に関する意見の対象となる事項

の範囲について、それぞれの地域の実情を踏まえ、

教育委員会が判断することが適当と考えられるこ

とから、今回の改正においては、協議会の教職員

の任用に関する意見の対象範囲について、教育委

員会規則で定めることとしています。

4.複数校対象の設置を可能に

これまで、協議会は学校ごとに置くものとなって

いましたが、中学校区内の複数の小中学校につい

て一体的な協議会の設置を促進することが有効で

あるといった指摘から、小中一貫教育などの密接

に連携している複数の学校において、一つの協議会

を置くことができることとしています。

社会教育法の一部改正

社会総掛かりで教育を行っていくためには、学

校運営協議会の役割の見直しだけでなく、学校と

の連携・協働により、地域全体で子供の成長を支

える体制の構築も重要です。そこで、今回の改正

では、地域住民の自主的な学びの成果を活用し、

学校と連携・協働して、子供たちの学びや成長を

支える「地域学校協働活動」が円滑かつ効果的に

実施されるよう、教育委員会が必要な措置を講ず

ることとしています。具体的には、教育委員会が、

保護者をはじめとする幅広い地域住民と学校との

連携協力体制を整備することや、地域学校協働活

動に関する普及啓発を行うこと等が挙げられます。

また、「地域学校協働活動」を円滑かつ効果的に

実施するためには、地域住民等と学校との相互の

意思疎通を図る人材の役割が非常に重要です。そ

のため、今回の改正では、地域住民と学校との情

報共有や、活動を行う地域住民に対する助言など

を担う「地域学校協働活動推進員」を教育委員会

が委嘱できることとしています。

終わりに

今回の改正により、学校運営に当たって、事務

職員や地域住民等がそれぞれの役割を担うことに

なることから、教員が本来担うべき授業や学級経

営、生徒指導等に専念できる環境の整備や、教員

が子供と向き合う時間の確保につながることが期

待されます。

特 集 1

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号5

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(図2) 義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律(平成29年法律第5号)の概要

趣  旨

義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るため、次の措置を講ずる。•基礎定数化に伴う教職員定数の標準の改正•事務職員の職務内容の改正及び「共同学校事務室」の規定の整備•学校運営協議会の役割の見直し、「地域学校協働活動」の実施体制の整備  等

この改正により、学校の指導・運営体制を充実し、地域との連携・協働を含めた学校運営の改善を図ることにより、複雑化・困難化する諸課題に対応する学校の機能強化を一体的に推進

概  要

公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正

学校の指導・運営体制の充実

•障害に応じた特別の指導(通級による指導)のための基礎定数の新設(児童生徒13人に1人)•日本語能力に課題のある児童生徒への指導のための基礎定数の新設(児童生徒18人に1人)•初任者研修のための基礎定数の新設(初任者6人に1人)•少人数指導等の推進のための基礎定数の新設(学校の児童生徒数に応じて算定)•教職員定数の加配事由に「共同学校事務室」を明示

義務教育費国庫負担法の一部改正都道府県が設置する義務教育諸学校のうち、①不登校児童生徒を対象とするもの、②�夜間その他特別な時間に授業を行うものの教職員給与に要する経費を国庫負担の対象に追加

学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、社会教育法等の一部改正

学校の運営の改善

•�学校の事務職員が主体的に校務運営に参画するよう職務規定の見直し等(学校教育法等の一部改正)•�学校事務を共同して処理する「共同学校事務室」の設置について制度化 � (地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正)•�教育委員会に対する学校運営協議会の設置の努力義務化、学校運営への支援について協議事項に位置付け、委員に 「地域学校協働活動推進員」を加えるなどの規定の見直し� (地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正)•�「地域学校協働活動」に関する連携協力体制の整備や 「地域学校協働活動推進員」に関する規定の整備� (社会教育法の一部改正)

施 行 期 日

平成29年4月1日

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 6

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特 集 2

奨学金制度改革~経済的理由で大学等への進学を諦めないために~

文部科学省高等教育局学生・留学生課

 子供たちは我が国の「未来」であり、経済的理由によって学びを諦めることがあってはなりません。子供の貧困の問題が深刻になる中、どんな家庭に生まれても、自らの希望を叶えることができる環境整備が急務です。大学等への進学のための経済的支援を図るため、これまで国においては貸与型奨学金事業を実施してきましたが、今般、返還する必要がない給付型奨学金を創設することとしました。今年3月に成立した「独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律」の内容とともに、奨学金制度全体の拡充内容について説明します。

給付型奨学金の創設

給付型奨学金創設の背景

我が国の奨学金制度は、昭和18年という戦時下

に創設された「財団法人大日本育英会」によって開

始されました。これまで多くの議論はあったもの

の、日本の奨学金は一貫して貸与制を保ってきま

した。70年以上の時を経て、返還の必要がない給

付型奨学金制度が創設されることは、歴史的な一

歩であると考えています。ここでは、給付型奨学

金が創設されることとなった経緯について説明しま

す。大

学等への進学率は年々向上しており、平成27

年度の学校基本調査によれば、高校等を卒業して

大学や専門学校等に進学した方の割合(現役進学

率)は7割を超えています。一方で、ひとり親世

帯では約4割、生活保護世帯では約3割、児童養

護施設の子供は約2割と、家庭の状況によって大

学等への進学率に差が現れており、家庭の経済的

背景と子供の学力や大学等への進学率に相関関係

が見られることが指摘されています。

文部科学省においては、意欲と能力のある若者

が経済的理由によって大学等への進学を断念する

ことがないよう、これまで独立行政法人日本学生

支援機構(以下、「機構」という。)が行う奨学金事

業の拡充など、学生の経済的負担の軽減に努めて

きました。しかしながら、機構が実施する奨学金

事業は貸与型であり、その返還負担を大きなもの

と捉えて、進学を躊躇・断念してしまう方も存在

していました。また、OECD諸国の中では、公

的機関による給付型奨学金が存在しないのは日本

とアイスランドのみ(2015年現在)であり、日

本においても給付型奨学金制度の創設が強く求め

られてきました。

政府としても、「誰もが活躍できる一億総活躍

社会」の実現に向け、大学等への進学のための教育

費負担の軽減に向けた議論が進められてきました。

昨年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プ

ラン」では、すべての子供が夢に向かって頑張るこ

とができる社会をつくるため、給付型奨学金につ

いて、「世代内の公平性や財源などの課題を踏まえ

創設に向けて検討を進め」ることが盛り込まれまし

た。さらに、昨年8月に閣議決定された「未来へ

の投資を実現する経済対策」では、給付型奨学金

について、「平成29年度(2017年度)予算編成

過程を通じて制度内容について結論を得、実現す

る」との方針が示されました。

こうした方針を踏まえ、文部科学省においても、

義家副大臣を座長とする「給付型奨学金制度検討

チーム」を設置し、有識者の参画も得ながら、半年

に渡り議論を重ね、昨年12月に議論のまとめを公

表しました。その上で、昨年末の予算編成を経て、

給付型奨学金制度が創設されることとなり、昨年

度末法律改正が行われました。

独立行政法人日本学生支援機構法改正の概要

平成29年3月31日、「独立行政法人日本学生支

特 集 2

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号7

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援機構法の一部を改正する法律」(平成29年法律

第9号)が成立し、同年4月1日から施行されて

います。改正のポイントは次の三つです。

一つ目は、独立行政法人日本学生支援機構の目

的及び業務に「学資の支給」を追加することです。

これまでは機構の目的等には学資金を「貸与」する

ことのみが位置付けられていましたが、新たに「支

給」することについても追加されました。

二つ目は、支給の対象者について、特に優れた

学生等であって高等教育での修学が経済的に極め

て困難であると認められる者に学資の支給を行う

ことです。具体的な基準などは、政令や省令、機

構の業務方法書等において定められます。他方で、

学生等の学業が著しく不良となった等の場合には、

学資支給金を返還させることができることとしてい

ます。

三つ目は、この学資の支給の業務に必要な費用

に充てるため「学資支給基金」を創設し、当該基

金を充てる業務について区分経理を行うことです。

この基金には、民間企業や一般の方からの寄付を

充てることも可能であり、寄附を行った場合には、

一定の税制優遇措置を受けることができます。

給付型奨学金制度の概要

前述の法律改正や政省令の改正によって、給付

型奨学金制度が創設され、具体的な制度として開

始されることとなりました。

本制度は、平成30年度以降の進学者を対象とし

て本格的に始まりますが、特に経済的に厳しい方

については、できるだけ早急に対応すべきとの観点

から、平成29年度の進学者を対象に、一部先行し

て実施します。ここでは、制度の概要について説明

します。

【平成29年度進学者】

平成29年度の一部先行実施の対象者は、次のと

おりです。対象人数は、約二千八百人を見込んで

います。

(1)私立自宅外生

私立の大学、短大、高等専門学校、専修学校専

門課程(以下、「大学等」という。)に進学する者で

あって、住民税非課税世帯出身の者のうち、十分

に満足できる高い学習成績を収めている者。

支給額は、月額4万円。

(2)社会的養護を必要とする者(児童養護施設退

所者等)

児童養護施設や自立援助ホームに入所している

者等及び里親等の下で養育されている者等のうち、

大学等に進学する者であって、大学等における学

修に意欲があり、進学後に特に優れた学習成績を

収める見込みがある者(大学等への進学時に児童養

護施設等を退所する者や里親等の養育から外れる

者についても対象となる)。

支給額は、国公立大学等に進学する場合は月額

3万円、私立大学等に進学する場合は月額4万円。

加えて、入学金相当額として24万円が別途支給さ

れる。なお、国立大学等で授業料減免を受ける場

合は、授業料を全額免除とした上で、毎月の支給

額を減額。

【平成30年度進学者】

平成30年度以降の本格実施以降の対象者は、住

民税非課税世帯出身の者のうち、各高校等が定め

る基準に基づき高校等の推薦を受けた方です。機

構が実施している貸与型奨学金と同様、高校3年

の春に予約採用を行います。高校等を通じ、機構

に申請を行うこととなっており、対象人数は、一

学年約2万人となります。

各高校には、推薦する生徒数の枠が割り振られ

ます。枠数については、まず全ての学校に1枠を

割り振った上で、残りを各学校の住民税非課税世

帯の貸与型奨学金採用者の実績に基づいて割り振

り、決定されます。

なお、浪人生の場合は卒業してから2年以内で

あれば、高校等を通じて申請することができます。

学力・資質の基準は、各高校等で定めることと

していますが、機構においてガイドラインを定めて

います。ガイドラインでは、次のいずれかの要件を

満たす者から推薦する方針を示しています。

①十分に満足できる高い学習成績を収めている。

②�

教科以外の学校活動等で大変優れた成果、教

科の学習で概ね満足できる成績を収めている。

③�

社会的養護を必要とする生徒等であって、特

定の分野において特に優れた資質能力を有し、

又は進学後の学修に意欲があり、進学後特に

優れた学習成績を収める見込みがある。

これらの基準は、給付型奨学金を支給するにふ

さわしい学生を対象にするという観点から、無利

子奨学金よりも高い学力・資質基準を課すことと

し、支給対象人数は一学年当たり2万人としてい

ます。

支給額は、国公立大学等へ、自宅から通う場合

は月額2万円、国公立大学へ親元から離れて自宅

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 8

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特 集 2

外から通う場合及び私立大学等へ自宅から通う場

合は月額3万円、私立大学等へ自宅外から通う場

合は月額4万円です。また、社会的養護を必要と

する学生に対しては、これらの月額に加え、入学

金相当額として24万円が別途支給されます。また、

給付型奨学金の対象となった生徒は、国立大学に

進学した場合は授業料が全額免除される予定であ

り、その場合、給付月額が自宅生は0円、自宅外

生は2万円となります。�

また、給付型奨学金の支給対象者は、貸与型奨

学金と同様に、毎年、奨学生としてふさわしいか

どうか確認するための適格認定を行うこととして

います。卒業延期が確定するなど、著しい成績不

振の場合には支給が打ち切られ、更に特段のやむ

を得ない理由もない場合は、当年度の奨学金の返

還が求められます。また、学校の懲戒処分の対象

となるなど、奨学生として適当でないと認められ、

その処分の内容が著しい場合も返還が求められる

場合があります。給付型奨学金の対象者として採

用された学生は、その自覚を持ってしっかり勉学に

励むことが求められます。

無利子奨学金制度の抜本的拡充

成績基準の実質的撤廃と残存適格者の解消

この度の奨学金制度改革では、給付型奨学金の

創設のほか、無利子奨学金についても抜本的な拡

充を行いました。ここでは、その概要について説明

します。

大学等奨学金事業は、「有利子から無利子へ」の

流れを加速すべく、これまでも無利子奨学金の拡

充を図ってきました。こうした中、一億総活躍社

会の実現に向けた検討の中で、低所得世帯の子供

の進学を後押しする方策として、無利子奨学金に

ついて、低所得世帯の子供に係る成績基準を大幅

に緩和することとなりました。具体的には、住民

税非課税世帯の生徒について、無利子奨学金の評

定平均値3・5以上という基準を平成29年度進学

者から実質的に撤廃しました。

また、これまで、予算上の制約により、無利子

奨学金の貸与要件を満たしているにもかかわらず

貸与を受けられていなかった学生(残存適格者)が

存在していました。この残存適格者について、平成

29年度予算において全て解消することとし、必要

な費用を計上しています。

所得連動返還型奨学金制度

これらの無利子奨学金の抜本的拡充により、必

要とするすべての学生に対して無利子奨学金の貸

与が可能となりました。さらに、平成29年度から

は「所得連動返還型奨学金制度」が導入されること

となり、更なる負担軽減が図られます。ここでは、

所得連動返還型奨学金制度について、概要を説明

します。

所得連動返還型奨学金制度は、平成27年度に制

度検討のための有識者会議が設置され、制度設計

が開始されました。当時、我が国では、「子供の貧

困」が社会的課題となっており、今もその状況は続

いています。また、近年平均給与が減少傾向にあ

り、学生生活費における家庭からの給付(仕送り)

も減少しています。加えて、非正規雇用の割合が

若年層で上昇する傾向が続いています。このよう

な社会的背景の中、奨学金の役割はますますその

重要性を増してきましたが、前述のとおり、保護

者や学生の中には、奨学金返還の負担を大きなも

のと捉え、進学を断念してしまう方や、奨学金の

申請を躊躇していた方も存在していました。こう

した中、教育の機会均等を図るため、奨学金制度

に対する不安を低減し、安心して貸与を受けられ

る制度とすることが求められていました。

これまで、奨学金の毎月の返還額は、大学等の

象私立自宅外生 児童養護施設退所者等

大学、短期大学、高専(4・5年)専門学校の学生・生徒(高校3年次に予約採用)

給付基準

【学力・資質】十分に満足できる高い学習成績を収めている

【家計】住民税非課税世帯

【学力・資質】大学等における学修に意欲があり、進学後に特に優れた学習成績を収める見込み

【家計】   -

【学力・資質】各高校等が定める基準に基づき推薦

(成績基準の目安等はガイドライン※を作成)※以下のいずれかの要件を満たす者から推薦①十分に満足できる高い学習成績を収めている② 教科以外の学校活動等で大変優れた成果、教科の学習で

概ね満足できる成績を収めている③ 社会的養護を必要とする生徒等であって、特定の分野にお

いて特に優れた資質能力を有し、又は進学後の学修に意欲があり、進学後特に優れた学習成績を収める見込みがある

【家計】�•�住民税非課税世帯

給付月額

4万円 ①国公立 3万円②私 立 4万円

①国公立(自宅) 2万円②国公立(自宅外) 3万円③私 立 (自宅) 3万円④私 立 (自宅外) 4万円

※ 児童養護施設退所者等には入学金相当額(24万円)を別途給付※国立で授業料減免を受けた場合は減額

給付型奨学金制度概要

平成29年度先行実施

平成30年度本格実施対象拡大

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号9

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在学期間中に貸与を受けた総額により決定され、

所得に関わらず、毎月一定の額を返還することと

なっていました。有識者会議における検討の結果、

平成29年度以降の進学者を対象として、卒業後

の所得に連動して返還月額が決定される方式であ

る「所得連動返還型奨学金制度」が導入されるこ

ととなりました。この制度では、所得が低い状況

でも無理なく返還することが可能となります。例

えば、私立大学に自宅から通う場合、貸与月額は

5万4千円であり、毎月定額を返還する方式では、

卒業後に1万4千4百円を返還することになりま

す。所得連動返還型制度では、所得が低い場合の

返還月額は最低2千円となり、大幅に負担が軽減

されることとなります。なお、返還方式は選択制

であり、これまでと同様に毎月一定額を返還する

方式を選択することも可能です。

また、奨学金制度では、その返還を保証するた

め「機関保証」又は「人的保証」のいずれかを選択

する必要があります。所得連動返還型制度では、

所得が低い返還者は返還期間が長期化することか

ら、人的保証である連帯保証人の返還能力が返還

終了まで確保されないケースが増えることが懸念

されるため、機関保証に移行すべきであることが、

有識者会議において示されました。また、その際、

保証料の引下げについても併せて検討すべきとされ

ました。これを踏まえ、所得連動返還型制度の導

入にあわせて、機関保証の保証料率を約15%分引

き下げることとしました。機関保証制度は、連帯

保証人や保証人を立てることなく、学生が自らの

意思と責任において大学等で学ぶことを可能にす

る制度であるとともに、奨学生全体で保証を分担

するという互助会的な仕組みです。今後も、機関

保証制度の安定的運用を図りつつ、運用状況を見

ながら適切な保証料となるよう検討を進めていく

こととしています。

減額返還制度の拡充

給付型奨学金制度を含め、これまで解説してき

た制度については、平成29年度以降の進学者を対

象とした制度です。一方、既に奨学金の貸与を受

けている方や、大学等を卒業した方についても、奨

学金の返還負担を図ることとしています。

様々な事情により、卒業後厳しい経済状況に置

かれ、奨学金の返還が困難な方については、従来、

毎月の返還額を減額する「減額返還制度」や、一

定期間返還を猶予する「返還期限猶予制度」によ

る救済策を講じてきました。平成26年度からは、

経済困難を理由とする「返還期限猶予制度」の年

数制限を5年から10年に延長するとともに、延滞

減額返還制度の拡充

○ 概要:減額返還制度について、現在の1/2の減額に加え、新たに1/3に減額することを可能とする減額幅の拡充を行うとともに、適用期間を10年から15年間に延長する【平成29年度から(既返還開始者を含む)】

現行の減額返還制度経済的理由により返還が困難になっている者のうち、当初の割賦金額を減額すれば返還可能となる者について、一定期間、当初割賦金額を2分の1に減額し、返還期間を延長することにより返還者の負担軽減を図る。適用期間は最長10年。

平成29年度新規貸与者から無利子奨学金に所得連動返還型制度が導入される一方、所得連動返還型の適用を受けない者について、返還負担の軽減を図るため、減額幅を拡充

新制度 当初の割賦金額の2分の1と3分の1から選択可能とし、適用期間を通算して15年に延長。

※ 返還期限猶予制度も活用可 本人の年収が300万円以下の場合、申請により通算10年間、返還猶予可能(奨学金申請時に家計支持者(保護者等)の年収が300万円以下の場合は、猶予の期間制限なし)。

新制度の適用対象 適用条件(現行どおり)◆ 既に返還を開始している者及び現在貸与を受けてい

る者(平成28年度以前採用者)(無利子及び有利子貸与者)

◆ 平成29年度以降採用者のうち定額返還方式により返還する者

◆ 年間収入金額325万円以下の者(給与所得者の場合の目安)

◆延滞中でない者◆ 「個人信用情報の取扱いに関する同意書」を提

出している者

【第一種奨学金】 【第二種奨学金】(私立大学・自宅通学の場合) (月額8万円貸与の場合)

貸与月額 54,000円 貸与月額 80,000円貸与月数 48か月 貸与月数 48か月貸与総額 2,592,000円 貸与総額 3,840,000円月賦額 14,400円 固定金利 0.15%の場合1/2 7,200円 月賦額 約16,300円1/3 4,800円 1/2 約8,150円

1/3 約5,430円

(現行)5年

(1/2)10年 15年

15年 20年

20年

20年

5年

3年 3年 14年

(1/3)15年 15年

14年

25年

30年

29年

15年(変更後:パターン例1)

(変更後:パターン例2)

(1/3)9年(1/2)6年

本人の年収が300万円以下の場合、申請により返還猶予が可能

(通算10年 )

02,000

100(0) (62) (119) (179) (246) (313)144

200

4,700円

8,900円

13,500円

所得の9%

18,500円

23,500円

300 400 500 600 年収(所得)(万円)

14,400円

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

返還月額(円)

最低返還月額

所得連動返還型奨学金制度

減額返還制度の拡充(イメージ)

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 10

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特 集 2

金の賦課率を10%から5%へ引き下げるなど、救

済措置の充実を図ってきました。今般、救済措置

を更に拡充させることとし、「減額返還制度」につ

いて、これまでの2分の1の減額に加えて、新たに

3分の1に減額することを可能とする減額幅の拡

充を行い、適用期間も、10年から15年に延長する

こととしました。この減額制度の拡充は、平成29

年4月から運用を開始しており、無利子奨学金と

有利子奨学金の貸与者いずれにも適用されます。

こうした制度の改善を通じて、既卒者等で奨学

金の返還が困難となっている方に対しても、更なる

支援を行っていきます。

奨学金事業の周知・情報公開

これまで解説してきた奨学金制度を含め、進学

のための資金計画についてアドバイスを行う「スカ

ラシップ・アドバイザー」の派遣・養成も平成29年度

から新たに始まります。金融面の専門的知見を持

つスカラシップ・アドバイザーは、各高校等が生徒・

保護者や教員を対象に開催する奨学金の説明会等

で、相談や助言を行います。

また、平成29年4月には、奨学金に関する学校

毎の貸与及び返還に関する情報が公開されました。

奨学金の延滞率は改善傾向にあるものの、いまだ

延滞は一定数発生しており、特に返還救済策の認

知度が低い状況です。このため、奨学生の返還意

識の涵養や、返還が困難になった際の救済措置の

理解促進が重要であり、今回の公開は各学校にお

けるこれらの取組を促進するとともに、より効率

的な取組を行う上での参考になるものと考えられ

ます。

終わりに

奨学金事業は、政府が責任を持って取り組むべ

き重要な教育施策であり、経済的理由により修学

に困難がある優れた学生等に対し、教育の機会均

等及び人材育成の観点から実施しているものです。

出身家庭がどのような経済状況にあっても、意欲

のある若者が自らの夢や希望を叶えるため、高等

教育を学ぶことができる環境をつくることは文部科

学省の使命です。

今般の給付型奨学金制度は、経済的理由により

高等教育への進学を断念せざるを得ない方の進学

を後押しするため、様々な議論を経て創設されま

した。希望する進学を叶え、自らの可能性を広げ

ることは、人生を豊かにするものです。誰もが希

望すれば将来の夢に向かってチャレンジできる社会

を作っていくことは、これからの日本にとって最も

重要な課題の一つです。意欲と能力のあるすべて

の人が、高等教育への進学という選択肢を選ぶこ

とができる、そのような環境を整備するためにも、

引き続き、教育費負担の更なる軽減に取り組んで

いきます。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号11

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平成29年3月6日、「我が国の高等教育に関す

る将来構想について」を中央教育審議会に諮問し

ました。

「第4次産業革命」の進展や本格的な人口減少社

会の到来など経済社会の大きな変化の中で、高等

教育機関が求められる役割を真に果たすことがで

きるよう、おおむね2040年頃の社会を見据え

て、これからの時代の高等教育の将来構想につい

て、総合的な検討を要請しています。

今回はこの諮問の概要を紹介します。

本諮問の背景

我が国社会のあらゆる側面において、かつて経

験したことのないスピードで大きな変化が進行し

ています。経済社会の変化やグローバル化の急速

な進展、本格的な人口減少社会の到来の中で、一

人一人の実りある生涯と我が国社会の持続的な成

長・発展を実現し、人類社会の調和ある発展に貢

献していくためには、人材育成と知的創造活動の

中核である高等教育機関が一層重要な役割を果た

すことが求められます。とりわけ、今後の人材育

成においては、新たな知識・技能を習得するだけ

でなく、学んだ知識・技能を実践・応用する力、

さらには自ら問題の発見・解決に取り組む力を育

成することが特に重要となっています。このこと

を通じて、自主的・自律的に考え、また、多様な

他者と協働しながら、新たなモノやサービスを生

み出し、社会に新たな価値を創造し、より豊かな

社会を形成することのできる人を育てていかなけ

ればなりません。

このような社会的、経済的な様々な変化や、初

等中等教育における学習指導要領の改訂や高大接

続改革の動向、さらには、地方創生や働き方改革

といった政府全体の取組など高等教育を取り巻く

状況の変化も踏まえて、これからの時代の高等教

育の将来構想について総合的な検討を行う必要が

あることから、おおむね2040年頃の社会を

見据えて、目指すべき高等教育の在り方やそれを

実現するための制度改正の方向性などの高等教育

の将来構想について、次の四つの事項を中心に、

中央教育審議会へ審議を要請しました。

1各高等教育機関の機能の強化に向け早急に

取り組むべき方策について

第8期の中央教育審議会大学分科会においてま

とめられた「今後の各高等教育機関の役割・機能

の強化に関する論点整理」の中で、各高等教育機

関の今後の機能強化の方向性とその実現のために

検討すべき事項が示されました。この論点整理を

踏まえ、大学、大学院、短期大学、高等専門学

校、専門学校それぞれの機能の強化に向けて、教

育課程や教育方法の改善、学修に関する評価の厳

格化、社会人学生の受入れ、他の機関と連携した

教育の高度化などの様々な観点から、早急に取り

組むべき具体的施策や制度改正について検討をお

願いしています。

2変化への対応や価値の創造等を実現するた

めの学修の質の向上に向けた制度等の在り

方について

かねてから学問の進展や社会の変化に対応した

教育や学生本位の視点に立った学修を実現してい

くためには、学位を与える課程(「学位プログラ

ム」)に着目した在り方をより重視していく必要

我が国の高等教育に関する将来構想について(諮問)

文部科学省高等教育局高等教育企画課

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 12

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があるとの指摘がなされています。こうした「学

位プログラム」の位置付けや学生と教員の比率の

改善、ICTの効果的な利活用など、学修の質を

向上させるための課題について、設置基準、設置

審査、認証評価、情報公開の在り方を含めた総合

的かつ抜本的な検討をお願いしています。また、

学位等の国際的な通用性の確保、高等教育機関の

国際展開、外国人留学生の受入れや日本人学生の

海外留学の促進、地域の産業界等との連携による

人材育成、社会に出た者が何度でも学び直せる環

境の整備、高等教育機関間あるいは企業等との間

での教員・学生の流動性の向上、効果的な運営の

ための高等教育機関間の連携などの在り方につい

ても検討をお願いしています。

3今後の高等教育全体の規模も視野に入れた、

地域における質の高い高等教育機会の確保

の在り方について

我が国の高等教育機関への主たる進学者であ

る18歳人口の推移を見ると、2005年に約

137万人であったものが、2016年には約

119万人にまで減少しており、2040年に

は現在のおよそ4分の3まで減少するという推計

もあります。また、地域によって、進学率など高

等教育の置かれている状況は異なっています。こ

うした状況等を踏まえ、特に、既存の学部・学科

等の構成や教育課程の見直しを促進するための方

策はもとより、高等教育機関間、さらには、高等

教育機関と地方自治体・産業界との連携の強化に

関する方策も含め、地域における質の高い高等教

育機会を確保するための抜本的な構造改革の在り

方について検討をお願いしています。

4高等教育の改革を支える支援方策の在り方

について

厳しい財政状況の中、各機関においては、十分

な人件費や研究費の確保が困難となり、教育研究

活動に大きな影響を与えかねない問題が生じてい

るとの指摘があります。第一から第三までの検討

事項も踏まえ、教育研究を支える基盤的経費・競

争的資金の充実、透明性の確保の観点も踏まえた

配分の在り方等について、また、学ぶ機会の保障

のため、学生への経済的支援の充実など教育費負

担の在り方に関して検討をお願いしています。

なお、2016年12月に閣議決定された「まち・

ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」に

おいて、地方大学の振興、東京における大学の新

増設の抑制や地方移転の促進等についての対策を

教育政策の観点も含め総合的に検討し、本年夏を

目途に方向性を取りまとめることとされており、

この点についても併せて検討を要請しています。

今後、中央教育審議会において十分に御審議い

ただいた上で、結論を出していただきたいと考え

ています。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号13

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運動部活動の運営の適正化に向けて

スポーツ庁政策課学校体育室

平成28年度に実施した運動部活動に関する調査

結果及び部活動指導員の制度概要などについて紹

介します。

運動部活動の現状

スポーツ庁では、平成28年4月から7月にかけ

て、中学校における運動部活動に関する生徒の活

動時間や休養日の設定状況等について、初めての

全国悉しっ

皆かい

調査を行いました。

その結果、一週間の活動時間は、全国平均で男

女ともに平日1日当たり約2時間弱、休日1日当

たり約3時間強であること、また、学校の決まり

として休養日を設けていない学校が22・4%で、休

養日は設けているが、休日に1度も休養日を設け

ていない学校の25・9%と合わせ、42・6%の学校

が休日に一度も休養日を設けていないことが明ら

かとなりました。(表1、図1及び図2)

適切な休養を伴わない行き過ぎた活動は、教員、

生徒ともに様々な無理や弊害をもたらすものと考

えられることから、本年1月、都道府県及び指定

都市教育委員会等の関係機関に対し、学校の決ま

りとして休養日を設定すること等を通じて、運動

部活動の適切な運営を図ることを要請しました。

部活動指導員の創設

他方、競技経験がない教員が顧問となり、専門

的な指導が困難となるケースが見られることから、

これまで地域のスポーツ指導者等の活用を促進して

きましたが、競技大会への参加や練習試合等を行

うため、生徒を学校外へ引率する場合や、事故が

起こった際の責任の所在等に大きな課題がありま

した。

運動部活動は、生徒にとってスポーツに親しむと

ともに、学習意欲の向上や、責任感、連帯感の涵かん

養よう

等に資する重要な活動として教育的側面での意

義が高いことから、学校教育法施行規則に新たに

中学校及び高等学校等における部活動指導員につ

いての規定が設けられ、本年4月1日に施行され

ました。

部活動指導員は、学校の教育計画に基づき、生

徒の自主的、自発的な参加により行われるスポー

ツ、文化、科学等に関する教育活動(教育課程と

して行われるものを除く。)である部活動において、

校長の監督を受け、技術的な指導に従事すること

を職務としています。

部活動指導員の配置については、学校設置者に

おいて、地域の実態や学校のニーズ等を踏まえ、適

表1 運動部活動における1週間の活動時間数(中学2年) (単位:分)

男  子平日(月~金) 休日(土日) 合 計

時間数 1日当 時間数 1日当 時間数 1日当全体平均 569.4 113.9 365.7 182.9 935.1 133.6国立平均 421.4 84.3 239.7 119.9 661.1 94.4公立平均 579.2 115.8 373.1 186.5 952.3 136.0私立平均 383.9 76.8 229.9 115.0 613.8 87.7

女  子平日(月~金) 休日(土日) 合 計

時間数 1日当 時間数 1日当 時間数 1日当全体平均 572.9 114.6 375.7 187.9 948.6 135.5国立平均 398.5 79.7 201.4 100.7 599.8 85.7公立平均 583.1 116.6 383.9 192.0 967.0 138.1私立平均 375.3 75.1 224.1 112.1 599.4 85.6

(注)合計時間数は、平日と休日の合算と一致しないことがある。

■ 週に1日以上■ 週に2日以上■ 週に3日以上■ その他■ 設けていない

■ 月に1日以上■ 月に2日以上■ 月に3日■ 月に4日以上■ 設けていない

54.2%

12.1%

11.4%

5.9%

28.0%

42.6%

14.1%2.9%

6.4%

22.4% ■ 週に1日以上■ 週に2日以上■ 週に3日以上■ その他■ 設けていない

■ 月に1日以上■ 月に2日以上■ 月に3日■ 月に4日以上■ 設けていない

54.2%

12.1%

11.4%

5.9%

28.0%

42.6%

14.1%2.9%

6.4%

22.4%

図1 部活動の休養日を設定している学校の割合

図2 土日の休養日を設定している学校の割合

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 14

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切に人材の確保を行う必要があるとともに、部活

動指導員の身分、任用、職務、勤務形態、報酬・

費用弁償、災害補償、服務及び解職等に関する必

要事項を整備する必要があります。

また、学校設置者及び学校は、部活動指導員に

対し、事前及びその後の定期的な研修を行い、部

活動の位置付けと教育的意義、生徒の発達の段階

に応じた科学的な指導、生徒の人格を傷つける言

動や体罰の禁止等について十分に理解させる必要

があります。

このことから、スポーツ庁では、平成29年度にお

いて、運動部活動の運営の適正化に向けて、練習

時間や休養日の設定、指導の在り方、部活動指導

員の活動などについての留意事項をまとめた「運動

部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(仮

称)」を作成することとしています。

作成に当たっては、運動部活動に関する詳細な

実態調査や生徒の発達段階や学校生活への影響に

関する医科学的な調査研究を行うとともに、民間

活力による新たな運動部活動の仕組みを構築する

ための課題を探り出し、その解決策についての実践

研究を行うこととしており、それらの結果を踏ま

えて有識者による検討を行うこととしています。

岡山県による取組事例

「運動部活動支援員派遣事業」

このほか、岡山県では、運動部活動の指導者の

派遣に関する取組を行っていますので、その概要を

紹介します。

【事業概要】

教員の負担軽減のため、教員に代わって、学校

の方針・計画に沿って運動部活動指導を行う非常

勤職員(支援員)を派遣する。

【派遣する指導者】

学校長の面談により適格と認められた者(資格

の有無は問わない)で、学校からの申請に基づき県

教育委員会が審査し決定する。決定後、県教委主

催の研修会を受講する。

【教員との関わり】

校内の活動や練習試合等で、顧問教員が立ち会

わなくても指導できる。※必ずしも顧問教員を設

置する必要はない。

【派遣種目】

運動部活動として活動している種目を対象とす

る。

【派遣期間等】

原則1校につき1部活(1名)、1年間を通じて

必要な期間(週3〜4日・1日2時間程度、1部

活動について最長3年まで)。※期間内に、学校内

で当該部活動に係る負担軽減対策を講ずる。

【部活動支援員の職務】

運動部活動の指導及び練習試合等に係る生徒の

引率(平成29年度から県中体連主催の大会への支

援員の監督・引率が可能。)

【派遣の流れ】

【平成28年度実施報告事例(和気町立和気中学校

剣道部)】

顧問の教諭は2名とも未経験者であり、専門的

な技能指導や心構えを説くことができず忸じく

怩じ

たる

思いであったが、支援員が技能面でのつまずきや良

い点を的確に指導することにより、生徒の練習に

取り組む意識が向上し、技能の習得ができた。

また、地区大会では、対戦相手に合わせた実践

的なアドバイスを受けることができ、団体戦で女

子が2位、男子が5位で県大会出場となったほか、

段級審査では、部員全員がそれぞれの技能に応じ

た段級に合格することができた。

顧問教諭一人当たり週4時間の業務軽減ができ

た。

部活動支援員による技術指導の様子

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号15

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国のいじめ防止基本方針の改定等について

文部科学省初等中等教育局児童生徒課

平成29年3月、文部科学省は、「いじめの防止

等のための基本的な方針(平成25年10月11日文部

科学大臣決定。以下「基本方針」という。)」の改定

及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライ

ン」の策定を行いました。

国の基本方針において、今般、新たに追加等さ

れた部分について、その概要を説明します。

1いじめの認知

基本方針において、単に、いじめから「けんかは

除く」としていた記載を、「けんかやふざけ合いで

あっても、見えない所で被害が発生している場合も

あるため、背景にある事情の調査を行い、児童生

徒の感じる被害性に着目し、いじめに該当するか

否かを判断すること」としました。

2いじめ防止基本方針

(1)学校のいじめ防止基本方針

法第十三条の学校のいじめ防止基本方針(以下

「学校基本方針」という。)に基づく取組の実施状

況を学校評価の評価項目に位置付けるよう求める

こととしました。学校基本方針において、いじめの

防止等のための取組(いじめが起きにくい・いじめ

を許さない環境づくりに係る取組、早期発見・事

案対処のマニュアルの実行、定期的・必要に応じた

アンケート、個人面談の実施、校内研修の実施等)

に係る達成目標を設定し、学校評価において目標

の達成状況を評価することが必要です。各学校は、

評価結果を踏まえ、学校におけるいじめの防止等

のための取組の改善を図ることとなります。なお、

教育委員会等は、いじめの有無やその多寡のみを

評価するのではなく、日常の児童生徒理解、未然

防止や早期発見、いじめが発生した際の迅速かつ

適切な情報共有や組織的な対応等が評価されるこ

とを教職員に周知徹底することが求められます。

(2)地方いじめ防止基本方針

地方基本方針は国の基本方針と学校基本方針の

結節点となるものであって、各学校のいじめの防止

等の取組の基盤となるものであり、地域内の対策

の格差を生じさせない観点からも、特に、教育委

員会にあっては特段の理由がある場合を除き、地

方基本方針を策定することが望ましい旨を明記し

ました。なお、都道府県教育委員会にあっては、

策定に向けて検討している区域内の市区町村(例・

人的体制が不十分)を支援することにより、地方

基本方針の策定を促進することが求められます。

3学校におけるいじめの防止等の対策のため

の組織

法第二十二条においては、学校におけるいじめ

の防止等の対策のための組織(以下「学校いじめ

対策組織」という。)は「当該学校の複数の教職員、

心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者そ

の他の関係者により構成される」とされているとこ

ろ、「当該学校の複数の教職員」については、学校

の管理職や主幹教諭、生徒指導担当教員、学年主

任、養護教諭、学級担任、教科担任、部活動指導

に関わる教職員、学校医などから、組織的対応の

中核として機能するような体制を、学校の実情に

応じて決定し、また、可能な限り、同条の「心理、

福祉等に関する専門的な知識を有する者」として、

心理や福祉の専門家であるスクールカウンセラー・

スクールソーシャルワーカー、弁護士、医師、警察

官経験者等の外部専門家を当該組織に参画させ、

実効性のある人選とするよう求めることとしまし

た。4

いじめに対する措置

(1)いじめに係る情報の共有

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 16

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法第二十三条第一項は、「学校の教職員、地方

公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じ

る者及び保護者は、児童等からいじめに係る相談

を受けた場合において、いじめの事実があると思わ

れるときは、いじめを受けたと思われる児童等が

在籍する学校への通報その他の適切な措置をとる

ものとする。」としており、学校の教職員がいじめ

を発見し、又は相談を受けた場合には、速やかに、

学校いじめ対策組織に対し当該いじめに係る情報

を報告し、学校の組織的な対応につなげなければ

なりません。学校の特定の教職員が、いじめに係

る情報を抱え込み、学校いじめ対策組織に報告を

行わないことは、同項の規定に違反し得ることを

基本方針に明記しました。

学校いじめ対策組織において情報共有を行った

後は、事実関係の確認の上、組織的に対応方針を

決定し、被害児童生徒を徹底して守り通すことが

求められます。

(2)いじめの解消に係る判断

いじめが「解消している」状態とは、少なくとも

次の二つの要件が満たされている必要があることを

明記しました。ただし、これらの要件が満たされて

いる場合であっても、必要に応じ、他の事情も勘

案して判断するものとしました。

①いじめに係る行為が止んでいること

被害者に対する心理的又は物理的な影響を与え

る行為(インターネットを通じて行われるものを含

む。)が止んでいる状態が相当の期間継続している

こと。この相当の期間とは、少なくとも3か月を

目安とする。ただし、いじめの被害の重大性等か

ら更に長期の期間が必要であると判断される場合

は、この目安にかかわらず、学校の設置者又は学

校いじめ対策組織の判断により、より長期の期間

を設定するものとする。学校の教職員は、相当の

期間が経過するまでは、被害・加害児童生徒の様

子を含め状況を注視し、期間が経過した段階で判

断を行う。行為が止んでいない場合は、改めて、

相当の期間を設定して状況を注視する。

②被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと

いじめに係る行為が止んでいるが解消しているか

どうかを判断する時点において、被害児童生徒が

いじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認

められること。被害児童生徒本人及びその保護者

に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面

談等により確認する。

学校は、いじめが解消に至っていない段階では、

被害児童生徒を徹底的に守り通し、その安全・安

心を確保する責任を有します。学校いじめ対策組

織においては、いじめが解消に至るまで被害児童

生徒の支援を継続するため、支援内容、情報共有、

教職員の役割分担を含む対処プランを策定し、確

実に実行する必要があります。いじめが「解消して

いる」状態に至った場合でも、いじめが再発する可

能性が十分にあり得ることを踏まえ、学校の教職

員は、当該いじめの被害児童生徒及び加害児童生

徒については、日常的に注意深く観察することが

求められます。

(3)国立大学に附属して設置される学校、私立学

校及び高等専門学校と教育委員会等との連携

国立大学に附属して設置される学校、私立学校

及び高等専門学校における、いじめの問題への対

応について、必要に応じて、教育委員会からのス

クールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、

弁護士等の外部専門家・関係機関の紹介や、研修

機会の提供等の支援が受けられるよう、日常的に、

国立学校の設置者は国及び教育委員会との連携確

保、都道府県私立学校担当部局及び高等専門学校

の設置者は、教育委員会との連携確保に努めるこ

とを明記しました。

5学校における「いじめの防止」「早期発見」

「いじめに対する措置」のポイントの改定

次のとおり、いじめに対する指導上の注意点を

明記しました。

○発達障害を含む、障害のある児童生徒がかかわ

るいじめについては、教職員が個々の児童生徒の障

害の特性への理解を深めるとともに、個別の教育

支援計画や個別の指導計画を活用した情報共有を

行いつつ、当該児童生徒のニーズや特性、専門家の

意見を踏まえた適切な指導及び必要な支援を行う

こと。

○外国人児童生徒は、言語や文化の差異から、学

校での学びにおいて困難を抱える場合も多いことに

留意し、それらの差からいじめが行われることがな

いよう、教職員、児童生徒、保護者等の外国人児

童生徒に対する理解を促進するとともに、学校全

体で注意深く見守り、必要な支援を行うこと。

○性同一障害や性的指向・性自認に係る児童生徒

に対するいじめを防止するため、性同一性障害や

性的指向・性自認について、教職員への正しい理解

の促進や、学校として必要な対応について周知す

ること。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号17

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○東日本大震災により被災した児童生徒又は原子

力発電所事故により避難している児童生徒(以下

「被災児童生徒」という。)については、被災児童生

徒が受けた心身への多大な影響や慣れない環境への

不安感等を教職員が十分に理解し、当該児童生徒

に対する心のケアを適切に行い、細心の注意を払

いながら、被災児童生徒に対するいじめの未然防

止・早期発見に取り組むこと。

これらの児童生徒を含め、学校として特に配慮

が必要な児童生徒については、日常的に、当該児

童生徒の特性を踏まえた適切な支援を行うととも

に、保護者との連携、周囲の児童生徒に対する必

要な指導を組織的に行うことが求められます。

第2 

重大事態ガイドラインの内容に係る概要

1重大事態を把握する端緒

(1)重大事態の定義

法第二十八条第一項においては、いじめの重大

事態の定義は「いじめにより当該学校に在籍する児

童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた

疑いがあると認めるとき」(同項第一号)、「いじめ

により当該学校に在籍する児童等が相当の期間学

校を欠席することを余儀なくされている疑いがある

と認めるとき」(同項第二号)とされています。改

めて、重大事態は、事実関係が確定した段階で重

大事態としての対応を開始するのではなく、「疑い」

が生じた段階で調査を開始しなければならないこ

とを認識する必要があります。

(2)重大事態の発生に係る被害児童生徒・保護者

からの申立てにより疑いが生じること

被害児童生徒や保護者から、「いじめにより重

大な被害が生じた」という申立てがあったとき(「児

童生徒間でトラブルがあり学校に行きたがらない」

といった申立てや、人間関係が原因で心身の異常

や変化を訴える申立て等の「いじめ」という言葉を

使わない場合を含む。)は、その時点で学校が「いじ

めの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえな

い」と考えたとしても、重大事態が発生したものと

して報告・調査等に当たる必要があります。

2被害児童生徒・保護者等に対する調査方針

の説明等

学校の設置者又は学校は、調査実施前に、被害

児童生徒・保護者、加害児童生徒及びその保護者

に対して、①調査の目的・目標、②調査主体(組

織の構成、人選)、③調査時期・期間(スケジュール、

定期報告)、④調査事項(いじめの事実関係、学校

の設置者及び学校の対応等、調査対象(聴き取り

等をする児童生徒・教職員の範囲))、⑤調査方法

(アンケート調査の様式、聴き取りの方法、手順)、

⑥調査結果の提供(被害者側、加害者側に対する

提供等)の事項について、適切に説明を行う必要が

あります。

特に、被害児童生徒・保護者に対し、あらかじめ、

個別の情報の提供については、各地方公共団体の

個人情報保護条例等に従って行うことを説明して

おくことが求められます。

3調査結果の説明・公表

(1)調査結果の報告

重大事態の調査結果を示された学校の設置者及

び学校は、調査結果及びその後の対応方針につい

て、地方公共団体の長等に対して報告・説明しな

ければなりません(法第二十九条から第三十二条

まで)。その際、公立学校の場合は、教育委員会

会議において議題として取り扱い、総合教育会議

において議題として取り扱うことも検討するよう

求めました。また、私立学校の場合についても、

総合教育会議において議題として取り扱うことを

検討するよう求めました。

(2)被害児童生徒・保護者に対する情報提供及び

説明法

第二十八条第二項は「学校の設置者又はその

設置する学校は、前項の規定による調査を行った

ときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及

びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の

事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する

ものとする。」と規定しており、被害児童生徒・保

護者に対して調査に係る情報提供及び調査結果の

説明を適切に行うことは、学校の設置者又は学校

の法律上の義務となっています。被害児童生徒・

保護者に対する情報提供及び説明の際は、このこ

とを認識して行う必要があります。

学校の設置者及び学校は、各地方公共団体の個

人情報保護条例等に従って、被害児童生徒・保護

者に情報提供及び説明を適切に行わなければなり

ません。

(3)調査結果の公表、公表の方法等の確認

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 18

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いじめの重大事態に関する調査結果を公表する

か否かは、学校の設置者及び学校として、事案の

内容や重大性、被害児童生徒・保護者の意向、公

表した場合の児童生徒への影響等を総合的に勘案

して、適切に判断することとし、特段の支障がな

ければ公表することが望ましい旨明記しました。

学校の設置者及び学校は、被害児童生徒・保護者

に対して、公表の方針について説明を行う必要が

あります。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号19

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文部科学省は、本年3月に「大学スポーツの振

興に関する検討会議」における議論を「最終とりま

とめ~大学のスポーツの価値の向上に向けて~」

として取りまとめました。

「大学スポーツの振興に関する検討会議」に

ついて

文部科学省は、教職員、運動部指導者、学生ア

スリート等の大学の貴重な人材や運動施設等の大

学が有するスポーツ資源が、社会貢献、経済活性

化、地域貢献等の点から大きな潜在力を有してい

ると認識しており、そのような潜在力を有する大

学スポーツの振興に向けた方策等について検討を行

うことを目的として、平成28年4月に文部科学大

臣の下に「大学スポーツの振興に関する検討会議」

を設置いたしました。

検討会議においては、①大学トップ層への理解の

醸成、②大学スポーツの収益力の向上、③スポーツ

教育・研究の充実、④学生アスリートのデュアルキャ

リア支援、⑤大学スポーツの地域貢献という個別

課題について議論を行いました。

この度、同会議における議論を踏まえ「最終と

りまとめ〜大学のスポーツの価値の向上に向けて

〜」として取りまとめましたので、概要を紹介しま

す。最

終とりまとめの概要

〈1〉大学スポーツの振興に受けた基本的考え方

(方針)について

○大学スポーツ振興の意義

� 

大学におけるスポーツの振興には、国民の健康

増進や地域・経済の活性化等に資する可能性を

有するなど、公共的役割を担う可能性。

� 

大学には、アスリートや指導者等の貴重な人

材、体育・スポーツ施設が存在。

○�

大学スポーツ資源の潜在力を発揮するための方

向性

� 

スポーツの社会的効用を理解することは社会

発展を促進に資することから、大学においてス

ポーツ分野を学ぶことが重要。

� 

大学や学生競技連盟(以下「学連」という。)

を核とした大学横断的かつ競技横断的統括組織

(日本版NCAA)の創設に向けた議論が必要。

〈2〉個別テーマの目標・達成に向けた取組について

1.大学トップ層の理解の醸成

大学が部活動を含めて大学スポーツに関与する

ことを推進するため、大学トップ層の理解の醸成を

図ることが重要。

2.スポーツマネジメント人材育成・部局の設置

各大学におけるスポーツ分野の取組を戦略的に

推進するため、スポーツ分野を一体的に行う部局

や当該部局を担う人材(大学スポーツ・アドミニス

トレーター)の配置を進めることが必要。

3.大学スポーツ振興の資金調達力の向上

「する・観る・支える」の好循環を大学スポーツで

も形成し、その振興のための資金調達力を向上す

ることが重要であり、民間資金等を活用した大学

スポーツ施設の充実を図るほか、大学部活動の管

理体制の明確化と会計等の透明性を確保すること

が重要。

4.スポーツ教育・研究の充実や小学校・中学校・

高等学校等への学生派遣

大学体育の充実と学生スポーツの環境の整備、

スポーツ科学研究の促進と成果の社会還元、学校

への学生派遣を推進することが必要。

5.学生アスリートのデュアルキャリア支援

学業とスポーツを両立するための修学上の配慮

をするとともに、キャリア形成支援を行うことが重

要。

6.スポーツボランティアの育成

大学スポーツの振興に関する検討会議

最終とりまとめ

~大学のスポーツの価値の向上に向けて~

スポーツ庁参事官(地域振興担当)

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 20

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大学におけるスポーツボランティアへの関心を一

層高め、大学が組織的に学生の活動の機会を拡充

することが必要。

7.大学スポーツ資源を活用した地域貢献・経済活

性化

� 

総合型地域スポーツクラブ等との連携や合宿

等を活用したスポーツツーリズムの推進、スポー

ツ施設の開放を進めることが重要。

〈3〉大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版

NCAA)の在り方

○�

大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版

NCAA)の方向性

1.現状・課題

▽�

社会的諸課題への解決を求められる大学にお

いて、人格の形成や地域コミュニティの形成

等に寄与する大学における運動部活動等のス

ポーツに期待される役割は大きい。また、「観

る」スポーツとしての可能性も高い。

▽�

運動部活動は、学生を中心とする自主的・自

律的な課外活動とされ、大学の広報等に寄与

する一方、大学の関与は限定的な場合が多い。

▽�

大学の競技団体(学連)は、競技・地域ごとの

組織で、法人格を有しない組織も存在。

学生アスリートの学業環境への支援、運動部局

の運営(指導者や資金の確保、責任体制、事故・

事件時の対応)、大学の教育・研究との連携、学連

間の連携等の課題が山積し、抜本的な改革が求め

られており、大学スポーツ全体を統括し、その発

展を戦略的に推進する組織が必要。

2.日本版NCAAの在り方

▽�

理念

スポーツを通じた学生の人格形成を図るととも

に、母校や地域の一体感を醸成し、地域・経済の

活性化や人材の輩出に貢献する。

•�

学生アスリートの学業環境の充実を図るとと

もに、学業とスポーツの両立を目指し、大学

スポーツの発展を実現する。

•�

事故防止など運動部活動の安全性を向上さ

せ、本人や関係者にとって安心できるものと

する。

大学スポーツの振興に関する検討会議最終とりまとめ 概要

〈1〉大学スポーツの振興に向けた基本的考え方(方針)について

大学スポーツ振興の意義▷ 大学におけるスポーツの振興には、国民の健康増進や地域・経済の活

性化等に資する可能性を有するなど、公共的役割を担う可能性▷ 大学には、アスリートや指導者等の貴重な人材、体育・スポーツ施設が

存在

大学スポーツ資源の潜在力を発揮するための方向性▷ スポーツの社会的効用を理解することは社会発展の促進に資すること

から、大学においてスポーツ分野を学ぶことが重要▷ 大学や学生競技連盟を核とした大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の創設に向けた議論が必要

〈2〉個別テーマの目標・達成に向けた取組について

1.大学トップ層の理解の醸成トップ層の理解醸成により大学スポーツへの組織としての関与を推進

2.スポーツマネジメント人材育成・部局の設置学内にスポーツ分野を一体的に行う部局や当該部局を担う人材(大学スポーツ・アドミニストレーター)の配置を進めることが必要

3.大学スポーツ振興の資金調達力の向上民間資金等を活用した大学スポーツ施設の充実を図るほか、大学部活動の管理体制の明確化と会計等の透明性を確保することが重要

4. スポーツ教育・研究の充実や小学校・中学校・高等学校等への学生派遣大学体育の充実と学生スポーツの環境の整備、スポーツ科学研究の促進と成果の社会還元、学校への学生派遣を推進することが必要。

5.学生アスリートのデュアルキャリア支援学業とスポーツを両立するための修学上の配慮、キャリア形成支援

6.スポーツボランティアの育成大学におけるスポーツボランティアへの関心を一層高め、大学が組織的に学生の活動の機会を拡充することが必要

7.大学スポーツ資源を活用した地域貢献・地域活性化総合型地域スポーツクラブ等との連携や合宿等を活用したスポーツツーリズムの推進、スポーツ施設の開放を進めることが重要

〈3〉大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の在り方

▷ 大学や競技の枠に縛られず、大学スポーツ全体を統括し、抱える様々な問題を解決し、発展を戦略的に推進していく組織が必要である。

▷ 組織の理念は、スポーツを通じた学生の人格形成、母校や地域の一体感の醸成、地域・経済の活性化や人材輩出に貢献すること。

▷ 事業として学生アスリートの育成、学生スポーツ環境の充実、地域・社会・企業との連携に資する役割を担っていくことが期待される。

〈4〉今後の進め方

▷ 「学産官連携協議会」を設置し、日本版NCAAの具体的な制度設計を進め、平成30年度中の日本版NCAAの創設を目指す。

▷ 関係者の意識の醸成や大学内の体制整備、大学間・学連間の連携、スポーツ団体との連携の強化を図る。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号21

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•�

我が国のスポーツの文化、歴史を尊重しつつ、

大学、学連等が協調・連携するためのプラット

フォームとしての役割を担う。

•�「観る」スポーツとしての価値を高め、収益を

大学・スポーツに還元する好循環を創造し、我

が国全体の雇用の創出、経済成長につなげる。

•�

競技種目、大学の立地、性別、障害の有無な

どにより不利益を被ることがないように取り

組む。

▽�

期待される役割

①�

学生アスリートの育成(学業成績要件の統一、

デュアルキャリア支援、インテグリティ教育等)

②�

学生スポーツ環境の充実(スポーツ活動への支

援、保険制度の充実、不祥事・勧誘等に係る

ルール作り等)

③�

地域・社会・企業との連携(地域貢献活動の

総括、会計等のガイドライン整備・相談窓口、

権利関係の調整等)

▽�

組織体制

•�

民間の法人として設立し、民間資金による運

営を基本とする。

•�

原則大学、学連の自主参加(任意)とする。

•�

大学、学連が加盟のメリットを実感できるもの

とする。

•�

大学、学連等の従来の活動を阻害せず、調和

のとれたものとする。

•�

安定した収入源を得るため、様々な手法の開

拓を図る。

•�

当初は実行可能な分野、規模からスタートす

る。

今後の進め方について

関係者の意識の醸成、大学内の体制整備、大学

間・学連間の連携強化、スポーツ団体との連携の推

進に向け取り組んでいきます。

また、日本版NCAAについては、最終とりま

とめにおける方策を具体的に進めるため、平成29

年度において、大学、学連を中心として、スポーツ

団体、民間企業等の関係者と連携して「学産官連

携協議会」を設置し、制度設計及び優先的に取り

組むべき課題について検討を進め、平成30年度中

の日本版NCAA創設を目指しています。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 22

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国際バカロレアアジア太平洋地区年次研究大会について

文部科学省大臣官房国際課

秋篠宮同妃両殿下の御臨席のもと、3月29日

(水)~3月31日(金)に「国際バカロレアアジア太

平洋地区年次研究大会」がパシフィコ横浜において

開催されました。

国際バカロレアとは

国際バカロレア(ⅠB)は、1960年代にスイ

スで開発された教育プログラムです。元々は、世界

各国の外交官や国際機関職員などの子供たちがイ

ンターナショナルスクールを卒業した後、母国の大

学に進学するための資格を付与する目的で開発さ

れました。教育制度の異なる国々において受け入

れられる必要がありますので、ひとつの国の制度や

内容に偏ることのない、世界標準の教育プログラム

として発達したと言えます。

文部科学省では「グローバル人材の育成」「国際

的通用性の確保」「初等中等教育の質の向上」を目

的とし、日本におけるIB導入の推進に向けた取

組を行っています。

今回の大会は、アジア太平洋地区で毎年1回開

催される大会で、日本では初めての開催となりま

した。33の国・地域から1000名を越える参加

者を迎え盛大に開催されました。

日本で開催される意義について

大会の日本開催に御尽力されたⅠB日本アンバ

サダーの坪谷ニュウエル郁子氏は、以下のような点

を本大会の意義として挙げています。

•�

日本の教育関係者と世界の教育関係者による情

報交換の場となること。

•�

世界で初めて、欧米語以外の言語での卒業試験

が日本で実施されたことを紹介することで、他

の国々の先行事例を提示すること。

•�

日本の教育の特徴を各国の教育関係者が知る良

い機会とすること。

•�

日本の大学においてIBを活用した入学者選抜

が導入されていることを紹介することで、学部か

らの日本留学を各国の教育関係者が知る良い機

会とすること。

大会の主な内容

◇おことば

秋篠宮殿下

国際バカロレアが遂行する「全人教育」の理念の

重要性を述べられるとともに、理念実現に向け尽

力している教育関係者への労いと、本大会への期待

のおことばを頂きました。

結びに、世界の平和と人々の幸福に向けて貢献

する多くの若者が育つことを祈念され、おことばと

されました。

◇挨拶

文部科学大臣政務官 

樋口�

尚也氏

世界で活躍する人材の育成について、これまでの

我が国における教育の成果を確認した上で、これ

からの不確実性の大きい時代を生きるための教育

改革の重要性と、文部科学

省の取組について述べられ

ました。

また、グローバル人材育

成に向け、文部科学省と

して引き続きIBを推進し

ていくことを表明されまし

た。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号23

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◇挨拶

神奈川県知事 

黒岩�

祐治氏

全人教育に軸足を置くIB教育の理念と、児童

生徒の人間的成長を重視する日本教育の親和性に

ついて述べられ、これらの融合が、よりすばらしい

教育を生むものであると強調されました。

◇学生パフォーマンス

IB認定校であるサニーサイドインターナショナ

ルスクール(学校法人渡辺学園:岐阜県岐阜市)の

20名の子供たちが、生演奏と囃子にのせて、岐阜

県郡上八幡に伝わる伝統的な盆踊りである「郡上

踊り」を披露しました。踊りの前には、囃はやし子

と日

本の原風景の映像を

背に、子供たちによ

る日本語及び英語の

スピーチもあり、秋

篠宮同妃両殿下を含

めた会場を大いに沸

かせました。

◆分科会

教育関係者、研究者、IB関係者等により3日

間で計88の分科会が開催されました。

29日には文部科学省もN

otable�characteristics�

of�school�education�in�Japan

をテーマに分科会

を開催しました。

分科会では、まず森本浩一・国際統括官より

日本の教育制度、グローバル人材育成の必要性と

IB教育を日本で普及させる意義について説明し

たあと、渋谷真樹教授(奈良教育大学)よりIB

のプログラムを日本語で提供する「日本語DP」の

開発意義について、さらには、来栖真梨枝教諭(東

京学芸大学附属国際中等教育学校)から学校現場

におけるIB授業の取組についてそれぞれ説明・報

告がありました。

分科会には約100名が参加し、日本の教育制

度やIBに係る国の取組についての関心の高さがう

かがえました。

◆その他

このほかにも各日基調講演が行われ、30日には

国立情報学研究所の新井紀子教授による講演もあ

りました。また、日本の大学による特別セッション

やブース展示等も行われました。

文部科学省の取組

文部科学省では、このたびの大会の成功を一つ

の契機として、これまで以上に国内におけるIB

普及を目指してまいります。

具体的な推進方策の一つとして、教育政策を俯ふ

瞰かん

し、日本におけるIBの役割を再構築するとと

もに、日本語DPをはじめとする現在の取組の意

義と課題を整理し、関連施策との連携を含む必要

な方策を検討するための「国際バカロレアを中心と

したグローバル人材育成を考える有識者会議」を本

年3月に立ち上げました。

4月28日には第4回会議も実施され、中間取り

まとめに向けた議論がされたところです。

(写真提供:国際バカロレア機構)

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 24

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「まんが

スポーツで地域活性化」事例集(全12巻)を発刊

スポーツ庁参事官(地域振興)

このほど、スポーツ庁は「まんが

スポーツで地域

活性化」事例集(全12巻)を発刊しました。日本生命

保険相互会社及びスズキ株式会社の支援・協力を得

て、5月以降、両社が寄贈者となって順次、全国の

中学校、高等学校等(約2万校)の学校図書館に寄

贈されています。

完成お披ひ

露ろ

目め

会の開催

事例集の完成お披露目会が4月19日に文部科学

省13F1会議室にて開催されました。同会には、

協賛企業である日本生命保険相互会社及びスズキ

株式会社の社長、発行元である大日本印刷株式会

社の役員、事例選定委員会及び作者選定委員会の

委員、12の事例先、まんがの作者ら100名近い

関係者が集まり、事例集の完成を祝いました。

各巻紹介

事例集の企画の概要及び背景については、1月

号で述べましたので、今号では各巻の紹介と本企

画の特徴についてお伝えします。

今回、スポーツ庁は全国よりスポーツで地域を活

性化することに成功した12の事例を採り上げ“まん

が”にしたわけですが、各巻の内容は、合宿誘致、

スポーツ施設の効率的運営、既存の自然環境を活

かした誘客、プロチーム設立時の苦労、国際大会

開催に至るまでの経緯など様々です。各事例の今

日に至るまでの「山あり谷あり」を是非お読みいた

だきたいと思います。(表1)

企画の特徴

この企画は、スポーツ庁だけでなく、事例先、

描き手(短大・専門学校等の学生(一部卒業生含

む))、協賛企業、出版社など、様々な関係者の協

力・連携によって成り立っています。(図1)

この企画を実現するに当たり、スポーツ庁は、

なるべく関係者すべてがWin-

Winとなる関係

を目指しました。

協賛企業から多大なる支援・協力を得る以上、

なるべく1冊も無駄にしない、1冊が何回転もす

る枠組みを目指しました。寄贈する事例集を「ま

んが」にしたのは、学校図書館におけるまんがの回

転率の高さに着目してのことです。

事例の近隣に所在する短大・専門学校等の学生

たちを描き手に登用したのは、彼ら自身が実際に

事例先に取材に行き、現場を見て、関係者から今

日に至るまでの「山あり谷あり」を実際に聴いた方

が、より良い作品になると判断したためです。本

事例集は、ISBN(国際標準図書番号)コードを

付けて出版もされました。学生たちにとってはもち

ろん初めての経験です。

また、各巻の表紙には作画に当たった学生たち

の名前だけでなく、学生たちが所属する学校の名

前を記載することとし、学校の先生方には作画指

導に当たっていただきました。

本事例集の発行元となる大日本印刷株式会社

は、出版前の段階で既に2万部以上冊子を制作し

ています。大日本印刷株式会社は官庁の刊行物と

写真1 �日本生命保険・筒井社長、スズキ・鈴木社長から事例集を贈呈される鈴木スポーツ庁長官

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号25

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しては過去に例にない規模でPR活動を実施する

こととしています。

各巻はまんが50ページと資料編8ページで構成さ

れています。学生の皆さんにはまずはまんがを読ん

でいただき、興味を持たれた際は更に後掲の資料

編も読んでいただきたいと思います。

事例集に採り上げた方々の熱い生き様を知って

もらうことで、次代の地域を担う若者たちに「次は

自分たちの番だ」「自分のミッションは一体何なん

だ」と考える契機の一つになることを期待していま

す。

表1�各巻の紹介

図1�「まんが�スポーツで地域活性化」事例集(全12巻)� 制作・寄贈・出版の枠組み(概要)

取材先(スポーツによる地域活性化

の優良事例)

「まんがスポーツで地域活性化」事例集(全12巻)制作・寄贈・出版の枠組み(概要)

・取材手配

・取材協力・関連データの提供

スポーツ庁 短大・専門学校等の学生(漫画家の卵)

・まんが制作依頼

・まんがの制作及び提供

・取材

・取材協力・写真等データの提供

出版社(大日本印刷)

協賛企業(日本生命・スズキ)

・制作協力

・まんが冊子(事例集)制作の協力依頼 .

・まんが冊子(事例集)購入

・まんが冊子(事例集)の受渡し

・幅広くPR

一般の読者、図書館等

全国の中学校、高校、高専、専門学校、大学等図書館(約2万校)

学生=将来の地域の担い手 .○学生たちが読書(1冊が何回転もする)○やる気次第、アイデア次第で地域は活性化することを学ぶ

・まんが冊子(事例集)を寄贈

グループ書店(丸善、。ジュンク堂、文教堂等)

(図1)

印刷・出版

巻数、地域、タイトル ストーリー

vol.1 北海道網走市ラグビー合宿の聖地へ~北のスポーツ基地 網走~

ソウル五輪の事前合宿をきっかけに、ラグビーを中心にスポーツ合宿で地域活性化に取り組むことを決めた網走市。合宿の受入れ要請やグラウンド整備に職員は奔走する。今では合宿の聖地となり、グラウンドは

“日本一の芝”と言われるまでになったその理由とは‥

vol.2 岩手県紫波町日本初のバレーボール専用体育館・オガールベース~スポーツを通じて次世代のリーダーを育てる~

公民連携で駅前の遊休地が生まれ変わった。マルシェ、図書館、医院、学習塾、スポーツ施設などが集積。人口3万人の町に今、年間90万人が訪れる。「バレーボール専用体育館」を建てた狙いとそこに込められた想いとは…

vol.3 秋田県バスケで秋田を元気に~ゼロからの挑戦~

大学進学で秋田に来た水野は県民のネガティブ思考に愕然とする。そんな秋田を“スポーツで元気に“とプロバスケットチームの設立に向けて水野は走り始める。否定的な意見もある中、「動けば変わる!」と仲間と活動を続ける水野。果たして秋田の未来は‥

vol.4 群馬県みなかみ町世界が注目するアウトドア天国・みなかみ

バブル崩壊で温泉客・スキー客が減少。観光の町・みなかみの経済は活気を失う。そんな中、利根川源流の自然環境の価値に1人のニュージーランド人が気付く。「ここは世界に通じるアウトドア天国になる!」。彼の狙いどおり本当に外国人客は来るのか…

vol.5 新潟県長岡市市民が主役の交流拠点・アオーレ長岡~アリーナを含む公民一体型スペース~

長岡市の活性化のため誕生した新交流拠点「アオーレ長岡」。スポーツやコンサート、市民発のイベントが多数行われ、運営を担うながおか未来創造ネットワークは「市民のやりたいこと」の実現のため奔走していた。そんな中、アリーナが新潟アルビレックスBBの本拠地に決まり…

vol.6 長野県松本市サッカーで地域を盛り上げる~松本山雅FCの歩み~

平均13000人を超えるJ2では驚異的な入場者数を誇る松本山雅FC。老いも若きもスタジアムに集い、スタンドが緑に染まる。“サッカー不毛の地“長野県の一地方都市で何故このような奇跡が起こったのか。そこには男たちの熱いドラマがあった。

vol.7 三重県熊野市マリンスポーツでまちおこし~自然を活かしたスポーツ集客~

新たな観光誘客のため、熊野マリンスポーツ推進委員会が穏やかな新鹿湾や熊野灘の絶景を活かし、SUPやシーカヤックを楽しめるまちづくりに挑戦! 熱意と地域愛を武器に、各所への協力要請、天候との闘いを経て、ついにビーチ・マリンスポーツフェスティバルが開催となるが…

vol.8 島根県出雲市「自立と連携」 スポーツを核に地域に雇用を生む~出雲スポーツ振興21~

スポーツを振興し、地域のスポーツを支える組織を目指して、2000年より活動スタート。でもスポーツだけではない、大事なのは“地域づくり”!「自立と連携」をキーワードに、地域を元気にする事業を幅広く展開。スポーツを核に20人もの正職員を雇用するNPOに。

vol.9 愛媛県瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会~瀬戸内しまなみ海道をサイクリストの聖地へ~

「しまなみ海道で国際サイクリング大会をやる!」「高速道路を通行止めにして‥」前例のないイベント開催を命じられた県庁職員の奮闘が始まる。国内外から多くの観光客・サイクリストが訪れる契機となった国際サイクリング大会の経緯を描く。

vol.10 福岡県飯塚市Japan Open 飯塚国際車いすテニス大会~アジア最高峰の国際車いすテニス大会の始まり~

車いす使用者がスポーツを行うことにまだまだ理解が得られなかった1980年代。そんな風潮に敢然と立ち向かった男たちがいた。彼らが社会復帰のリハビリのために採り入れた車いすテニスは、やがて車いすテニス世界6大大会の1つ、Japan Openへと発展していく。

vol.11 佐賀県スポーツコミッションで合宿誘致

「スポーツコミッションを立ち上げる!」。知事から新たな指令が下った。フィルムコミッションからの異動を命じられた県庁職員。知名度の低い佐賀にスポーツ合宿を誘致する…。新たなミッションに彼は応えることができるのか。

vol.12 大分県大分国際車いすマラソン大会~世界最高峰の車いすマラソン大会~

「別大マラソンに参加したい」。車いす使用者の訴えは聞き入れられなかった。ならば…。「世界初の車いす単独マラソン大会」の実現を目指して1人の医師が立ち上がった。彼の熱い思いはやがて世界最高峰の車いすマラソン大会へとつながっていく。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 26

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「Arts in Bunkacho ~トキメキが、爆発だ~」の開催について

文化庁長官官房政策課

※全国芸術系大学コンソーシアム東京藝術大学が事務局を担い、国内の芸術系大学が連携・協力して、文化芸術

に係る教育及び研究の更なる充実を図るとともに、相互協力の下、行政や全国の芸術大学のネットワーク。2020年東京大会に向けた文化プログラム等を芸術系大学として連携して盛り上げ

るため、平成28年7月設立。現在56大学(うち国立4・公立10・私立42)が参加。

士生の若手芸術家36名の作品を展示するとともに、新進気鋭の音楽家たちによる木管五重奏、弦楽、声楽等の演奏会も3月に計4回実施しました。「トキメキが、爆発だ」というタイトルには、若い芸術家たちの情熱と自由な発想が古い文化庁の殻を打ち破ってくれる、そんな期待も込めています。

文化庁と全国芸術系大学コンソーシアムの主催(損保ジャパン日本興亜協賛)により、平成29年3月9日から6月30日まで「Arts�in�Bunkacho 〜トキメキが、爆発だ〜」を開催しています。本プロジェクトは、国の登録文化財である文化庁庁舎を展示空間として活用し、全国芸術系大学コンソーシアムに加盟している芸術系大学の学部、大学院生、卒業生・修

主催者・協賛社によるテープカット

弦楽四重奏演奏会

旧大臣室展示作品を視察する松野大臣

声楽演奏会

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号27

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国宝(美術工芸品)の指定について

文化庁文化財部美術学芸課

文化庁では、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、

古文書、考古資料、歴史資料の七つの分野で国宝・

重要文化財の指定を毎年行っています。今年3月

には彫刻、書跡・典籍、古文書、考古資料の4分

野で国宝指定が決定しました。その概要を紹介し

ます。

3月10日に開かれた文化審議会文化財分科会に

おいて、「銅造釈迦如来倚像」(深大寺)、「木造�

大日如来坐像/木造不動降三世明王坐像」(天野

山金剛寺)、「木造維摩居士坐像」(光明宗法華寺)、

「法華経(久能寺経)」(個人)、「宋版一切経」(醍

醐寺)、「平城宮跡出土木簡」(奈良文化財研究

所)、「奈良県東大寺山古墳出土品」(東京国立博

物館)の国宝指定が決定しました。美術工芸品で

は879〜885件目の国宝ということになりま

す。以下、それぞれの案件を御紹介します。

「銅造釈迦如来倚像」(東京都 深大寺)

両足を垂下して坐る如来の像で、微笑する明る

い表情や、衣が密着して肉身の起伏をあらわす点

にいわゆる白鳳彫刻の特徴が表れ、後者にはグプタ

彫刻の影響を受けた初唐様式が反映されています。

作風が共通する像として法隆寺観音菩薩像(通称

夢違観音、国宝)などがありますが、同像に比べ

て肉付けや各部の形が単純で、側面観に扁平な趣

があるのは深大寺像が先行することを示し、両像

間の違いには平面や浮彫を主体とした唐風受容が

次第に立体表現として成熟していく過程がうかが

えます。初唐様式を受容しつつ独特の清新な表現

に到達した飛鳥時代後期彫刻の特色をよく示す作

例です。

「木造維摩居士坐像」(奈良県 光明宗法華寺)

法華寺本堂に安置され、8世紀後半の一時期に

同寺で行われていたことの知られる維摩会の本尊と

して造られたとみられます。維摩会が興福寺に復

した後、西面していた像が興福寺の方角に向き直っ

たという伝説があり、鎌倉時代には霊験あらたか

な像として知られていました。その造形は8世紀

美術の特質の一つである写実性に、力強く起伏に

富んだ平安初期的表現により生動感を加味したも

ので、奈良時代末期の肖像彫刻の遺品として評価

され、この種の霊験像への注目が鎌倉彫刻様式の

形成に与えた影響を考える上でも見逃し難い存在

といえます。

「木造大日如来・不動降三世明王坐像」(大阪府

野山金剛寺)

高野山出身の真言僧、阿観が八条院暲子の帰依

を得て造営した河内金剛寺の金堂本尊で、金剛界

大日如来を中心とし不動・降三世明王像を配する

三尊像です。大日如来は3メートルを超える巨像

で、繊細、優美な形姿から金堂建立と伝える治承

2年(1178)の完成とみられます。光背に金剛

界三十七尊を付け、台座に八獅子を並べる図像は

空海の構想になるとみられる東寺講堂本尊像(現

銅造釈迦如来倚像

木造維摩居士坐像

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 28

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存像は室町時代の再興像)に由来します。三尊の

構成は円珍請来とされていた曼荼羅に基づくもの

で、両脇侍は天福2年(1234)に快慶の弟子、

行快によって造られました(銘文)。この間に光背・

台座が順次整備されたとみられます。このように

本三尊像は約半世紀をかけて造立されたもので、

曼荼羅的構成になる巨像群が、それらを安置する

堂内空間とともにおおむね完成時の様相をとどめ

て今に伝わるのは壮観といえます。

「宋版一切経」(醍醐寺)

本一切経は、重

ちょう

源げん

が建久6年(1195)に寄

進し、もと上醍醐の経蔵に収められていました。

共に福ふくしゅう州で開版された開か

元げん

寺じ

版ばん

と東と

禅ぜん

寺じ

版ばん

から

なっています。

北宋の能書家蘇そしょく軾

が書写したものをそのままに

印刻した写しゃ

刻こく

本ほん

も四帖あり、その筆者を明らかに

するものもあります。

附つけたりの

経箱のうち言箱の内側には慶元4年

(1198)銘があり、醍醐寺本は建久6年にすべ

てが施入されたのではなく、数次にわたって揃えら

れたことが知られます。

このように、醍醐寺伝来になる宋版一切経は、

南宋版経の整然たる姿をとどめる代表的遺品であ

り、かつ最も多くの員数を有する点など、宋版一

切経史上貴重な存在です。

「法華経(久能寺経)」(個人)

本経は久能寺経の通称をもつ装飾法華経で、鳥

羽上皇(1103〜5�

6)、皇后の待た

賢けん

門もん

院いん

璋しょうし子、

女御の美び

福ふく

門もん

院いん

および彼等の側近が結縁して書写

されたものです。法華経二十八品を一巻ずつに書

写した一品経に開結経である無むりょう量

義ぎきょう経

と観か

普ふ

賢げん

経きょうを

加えた三〇巻構成としたものです。

久能寺経は、当初の書写による二六巻が現存し

ていますが、今回、国宝に指定された四巻だけに

当初の表紙が残っています。

久能寺経は、まとまった巻数の残る装飾法華経

の遺品として最古であり、平安時代後期の装飾

経の中でも群を抜く出来栄えです。また、著名な

人々が結縁していることが知られていて、我が国の

文化史上、極めて貴重です。

不動明王大日如来降三世明王

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号29

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「平へ

城じょう

宮きゅう

跡せき

出しゅつど土木も

簡かん

」(奈良文化財研究所)

平城宮跡出土木簡は、「地下の正倉院」といわれ

る平城宮跡から出土した木簡のまとまりです。六りっ

国こく

史し

などに伝えられていない奈良時代の社会、経

済などを詳細に知りうる古代史料群です。

「関々司前解」で始まる著名な過か

所しょ

木簡は、官

人や百姓等が国を越えて移動する場合の通行証明

書です。この木簡は左京小治町の阿あきの伎

勝すぐり「

伊い

刀と

古こ

麻ま

呂ろ

」と「大お

宅や

女め

」の2人が、近お

うみの江

国くに

蒲がもう生

郡ぐん

阿あきのり

伎里

にいた同族の元から左京に帰るときに使われまし

た。長さ65・6糎と大型で、片側が割り裂いたま

まであることから、同文を左右に併記し、縦に割っ

て二片とした一方の割符であったと推定されていま

す。木

簡は、平城宮の全体像の解明につながる史料

として極めて学術的価値が高いものです。

「奈良県東大寺山古墳出土品」(東京国立博物館)

東大寺山古墳は奈良県天理市櫟本町に所在する

前方後円墳(全長約130メートル、古墳時代前

期後半)で、本件はその埋葬施設(粘土槨)などか

ら出土した金きん

錯さく

銘めい

花はながた

形飾環か

頭とう

大た

刀ち

一口、花は

ながた

形飾

環かん

頭とう

大た

刀ち

二口、家い

えがた

形飾環か

頭とう

大た

刀ち

二口、金属製品

249点、石製品102点、玉59点、有機質製

品残欠2点に、附とした銅鏃残欠9点、石製品残

欠一括、埴輪残欠4点にて構成される一括です。

特筆すべきは中国後ご

漢かん

の年号「中ち

ゅうへい平

」銘のある

金錯銘花形飾環頭大刀で、刀身の棟に24文字が金

象嵌されています。これは、現在確認できる国内

最古の象嵌銘文であり、「中平□□五月丙午造作

文刀百練清□(釗ヵ)上應星宿□□□□(下辟不

祥ヵ)」と釈読されます。刀身は中国製とみられま

すが、柄つかがしら頭に付く青銅製の花形飾環頭は国内製で

あり、このことは本刀の来歴や性格を考える上で

興味深い事実といえます。

また、家形飾環頭には竪たて

穴あな

住じゅうきょ

居を表現したとみ

られる装飾が付き、この装飾は、奈良県佐さ

味み

田だ

宝たから

塚づか

古墳出土の家屋文鏡にみられる文様の一つと意

匠を同じくします。この他、50点を超える腕輪形

石製品(鍬形石・車輪石・石釧)、13点ある坩かん

形がた

製品、200点を超える銅鏃のほか、鏃形石製品

や巴ともえがた形

銅器、筒形石製品、素そ

環かん

頭とう

大た

刀ち

、鉄製剣・

槍など、多種多量の副葬品が揃います。

このように本件は、国内現存最古の暦年代を表

す金石文遺例である金錯銘花形飾環頭大刀を含む

とともに、古墳時代前期後半の古墳副葬品一括を

代表する多量かつ良質の金属製品・石製品があり、

国宝とするにふさわしい内容をもっています。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 30

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障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について

文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課障害者学習支援推進室

4月7日(金)、松野文部科学大臣が「特別支援

教育の生涯学習化」と題したメッセージを発信し、

併せて地方公共団体等への協力を依頼する通知を

発出しました。障害のある方々が、生涯を通じて

教育やスポーツ、文化に親しむ機会を持てるよう、

省を挙げて支援に取り組んでまいります。

文部科学省では、これまで学校教育を中心に展

開されてきた特別支援教育施策を、就学前や学校

卒業後も含めた総合的な取組として展開していく

ことが必要であるとの認識のもと、昨年12月に「文

部科学省が所管する分野における障害者施策の意

識改革と抜本的な拡充」を公表しました。

 さらに、4月7日(金)、障害者の生涯にわたる

多様な学習活動の充実を期して、別添のとおり「特

別支援教育の生涯学習化に向けて」と題する大臣

メッセージを公表しました。あわせて、平成29年度

から生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」

を設けるとともに、福祉、保健、医療、労働等の

関係部局と連携した進学・就職を含む切れ目ない

支援体制の整備、障害のある子供の自立や社会参

加に向けた主体的な取組を支援する特別支援教

育、障害者スポーツや障害者の文化芸術活動の振

興等に総合的に取り組むこととし、地方公共団体

等への協力等を依頼する通知を発出しました。

 当該通知のポイントは以下のとおりです。

①�

障害者の多様な学習活動を総合的に支援するた

め、地方公共団体における関係機関との連携や

取組の推進を行う部署の明確化など、体制の整

備・充実

②�障害者の生涯学習を支える活動に係る文部科学

大臣表彰のための適切な候補の推薦

③�

障害者スポーツ振興を総合的に推進するための

体制整備

④�

全国の特別支援学校においてスポーツ、文化、

教育の祭典を開催する「Special

プロジェクト

2020」の推進に向けた、都道府県の関係部

署や関係団体等が連携した体制の構築

⑤�

障害者の個性と能力の発揮、社会参加の促進、

相互理解につながる文化芸術活動の充実

⑥�

特別支援教育におけるスポーツ・文化芸術活動

等の取組の充実。障害のある子供たちが円滑に

次のステージに進めるような取組の充実

⑦�

小学校等における障害者に対する理解を促進す

る取組の充実

⑧�

大学等における障害のある学生の修学支援の在

り方について、検討結果を取りまとめた「第二次

まとめ」に関する周知、取組の充実

障害のある方々が、生涯を通じて教育やスポー

ツ、文化に親しむ機会を持てるよう、省を挙げて

支援に取り組んでまいります。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号31

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特と く

別べ つ

支し

援え ん

教きょう

育い く

の生しょう

涯が い

学が く

習しゅう

化か

に向む

けて

平へ い

成せ い

29年ね ん

4月が つ

7日に ち

文も ん

部ぶ

科か

学が く

大だ い

臣じ ん

 松ま つ

野の

博ひ ろ

一か ず

私わたし

はかねてより、障しょう

害が い

のある方か た

々が た

が、この日に

本ほ ん

の社し ゃ

会か い

でどうしたら夢ゆ め

や希き

望ぼ う

を持も

って活か つ

躍や く

していく

ことができるかを考かんが

えてきました。その中な か

でも印い ん

象しょう

的て き

だったのが、特と く

別べ つ

支し

援え ん

学が っ

校こ う

での重お も

い知ち

的て き

障しょう

害が い

と身し ん

体た い

障しょう

害が い

のある生せ い

徒と

とその保ほ

護ご

者し ゃ

との出で

会あ

いです。その生せ い

徒と

は高こ う

等と う

部ぶ

3年ね ん

生せ い

で、春は る

に学が っ

校こ う

を卒そ つ

業ぎょう

する予よ

定て い

であり、保ほ

護ご

者し ゃ

によれば、卒そ つ

業ぎょう

後ご

の学ま な

びや交こ う

流りゅう

の場ば

がなくなるのではないかと大お お

きな不ふ

安あ ん

持も

っておいででした。他ほ か

にも多お お

くの保ほ

護ご

者し ゃ

から同ど う

様よ う

の御ご

意い

見け ん

を頂いただ

きました。

これまでの行ぎょう

政せ い

は、障しょう

害が い

のある方か た

々が た

に対た い

して、学が っ

校こ う

を卒そ つ

業ぎょう

するまでは特と く

別べ つ

支し

援え ん

学が っ

校こ う

をはじめとする

「学が っ

校こ う

教きょう

育い く

施し

策さ く

」によって、学が っ

校こ う

を卒そ つ

業ぎょう

してからは「福ふ く

祉し

施し

策さ く

」や「労ろ う

働ど う

施し

策さ く

」によって、それぞれ支し

援え ん

を行おこな

ってきました。しかし、これからは、障しょう

害が い

のある方か た

々が た

が、学が っ

校こ う

卒そ つ

業ぎょう

後ご

も生しょう

涯が い

を通つ う

じて教きょう

育い く

や文ぶ ん

化か

、スポーツなどの様さ ま

々ざ ま

な機き

会か い

に親し た

しむことができるよう、教きょう

育い く

施し

策さ く

とスポーツ施し

策さ く

、福ふ く

祉し

施し

策さ く

、労ろ う

働ど う

施し

策さ く

等と う

を連れ ん

動ど う

させながら支し

援え ん

していくことが重じゅう

要よ う

です。私わたし

はこれを「特と く

別べ つ

支し

援え ん

教きょう

育い く

の生しょう

涯が い

学が く

習しゅう

化か

と表ひょう

現げ ん

することとしました。

文も ん

部ぶ

科か

学が く

省しょう

では、このような観か ん

点て ん

から昨さ く

年ね ん

12月が つ

に「文も ん

部ぶ

科か

学が く

省しょう

が所し ょ

管か ん

する分ぶ ん

野や

における障しょう

害が い

者し ゃ

施し

策さ く

の意い

識し き

改か い

革か く

と抜ば っ

本ぽ ん

的て き

な拡か く

充じゅう

」を公こ う

表ひょう

しました。併あ わ

せて、省しょう

内な い

の体た い

制せ い

を確か く

立り つ

するために「特と く

別べ つ

支し

援え ん

総そ う

合ご う

プロジェクト特と く

命め い

チーム」を設せ っ

置ち

しました。さらに、今こ ん

年ね ん

度ど

から生しょう

涯が い

学が く

習しゅう

政せ い

策さ く

局きょく

に「障しょう

害が い

者し ゃ

学が く

習しゅう

支し

援え ん

推す い

進し ん

室し つ

」を新し ん

設せ つ

しました。

今こ ん

後ご

、この「障しょう

害が い

者し ゃ

学が く

習しゅう

支し

援え ん

推す い

進し ん

室し つ

」を中ちゅう

心し ん

に、全ぜ ん

省しょう

的て き

に「Sス ペ シ ャ ル

pecialプロジェクト2020」や特と く

別べ つ

支し

援え ん

学が っ

校こ う

等と う

における地ち

域い き

学が っ

校こ う

協きょう

働ど う

活か つ

動ど う

の推す い

進し ん

、卒そ つ

業ぎょう

後ご

も含ふ く

めた切き

れ目め

ない支し

援え ん

体た い

制せ い

の整せ い

備び

の促そ く

進し ん

障しょう

害が い

のある学が く

生せ い

への大だ い

学が く

等と う

における支し

援え ん

体た い

制せ い

の充じゅう

実じ つ

等と う

に取と

り組く

んでいきます。

 

各か く

地ち

方ほ う

公こ う

共きょう

団だ ん

体た い

におかれては、障しょう

害が い

のある方か た

々が た

がそれぞれのライフステージで夢ゆ め

と希き

望ぼ う

を持も

って生い

きていけるよう、生しょう

涯が い

にわたる学が く

習しゅう

活か つ

動ど う

の充じゅう

実じ つ

を目め

指ざ

し、生しょう

涯が い

学が く

習しゅう

や特と く

別べ つ

支し

援え ん

教きょう

育い く

、スポーツ、文ぶ ん

化か

、福ふ く

祉し

、労ろ う

働ど う

などの関か ん

係け い

部ぶ

局きょく

の連れ ん

携け い

の下も と

、国く に

と共と も

に取と

り組く

んでいただきますようお願ね が

いいたします。

今こ ん

週しゅう

(4月が つ

2日に ち

~8日に ち

)は発は っ

達た つ

障しょう

害が い

啓け い

発は つ

週しゅう

間か ん

です。

改あらた

めて、国く に

と地ち

方ほ う

公こ う

共きょう

団だ ん

体た い

、企き

業ぎょう

に加く わ

えて地ち

域い き

の皆み な

様さ ま

と共と も

に、障しょう

害が い

のある方か た

々が た

が分わ

け隔へ だ

てなく、

互た が

いに尊そ ん

重ちょう

し合あ

いながら共きょう

生せ い

する社し ゃ

会か い

の実じ つ

現げ ん

を目め

指ざ

していきたいと強つ よ

く願ね が

います。

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 32

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文部科学省「情報ひろば」において新たな企画展示を開始しました!~大学との共同企画広報~

①静岡県立大学短期大学部及び静岡県立大学◆テーマ・概要

1. 「子供と医療をつなぐためのツール開発「ホスピタル・プレイ」」2. 「脱水症状を推察する新しい紙おむつの開発(脱水による

突然死から救命できる可能性を探る!!)」1.�ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS)は病児や障害児が医療プロセスにおいて感じる恐怖や不安などを“遊び”の力を用いて軽減する専門職です。本学では、全国で初となるHPS養成事業に着手し遊びを使って病児や障害児を支援する教育・研究活動を行っています。医療を理解するためのツール、治療に参加するためのツールなど、遊びをベースにした病気や障害を持つ子供の顔がみえる特色あるツールを御紹介します。2.�日本毛繊株式会社と共同で『脱水症状を推察する新しい紙おむつ』の開発に取り組んでおります。これは『少しでも早く「脱水症状」を推察することで、より多くの人の手助けになるような商品として提供していきたい』をコンセプトにしており、今回はこの紙おむつのサンプル等を御紹介します。

【主な展示物】●実物展示1.�メディカルかるた、ディストラクションツール「宝さがし」、プレパレーションカード「かんたん!検査・処置せつめいカード」2.�おむつサンプル、新しいケトン体検査ディバイス

②秋田県立大学◆テーマ・概要

「栽培環境制御による機能性野菜の栽培法の開発に関する研究と実用化までの道筋」 近年、植物工場は安定供給や高い安全性、高い生産性などの点から注目されている一方で、その運営にかかるランニングコストが問題になっており、植物工場でしか栽培できない高機能性を持つ作物生産が求められています。こうした期待に応えるため、秋田県立大学で開発した栽培環境制御による以下の高機能性野菜の栽培方法をわかりやすく御紹介します。

•腎臓病透析患者のための「低カリウム含量野菜」•�骨折関節疾患予防のための「高カルシウム、高マグネシウム含量野菜」

•鉄欠乏性貧血予防、改善のための「鉄高含量野菜」 等

【主な展示物】●映像•低カリウム野菜で元気に!●パネル•栽培環境制御による機能性野菜とは

文部科学省では、この度、「情報ひろば」において大学の新たな企画展示を開始しましたのでお知らせします。是非、お越しいただき企画展示を御覧ください。

■展示機関:①静岡県立大学短期大学部及び静岡県立大学 ②秋田県立大学 ③東京海洋大学 ④近畿大学■開催期間:平成29年4月~平成29年7月末予定■開催場所:情報ひろば「企画展示室」

皆さん!「情報ひろば」を知っていますか?

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号33

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情報ひろばホームページへGO!⇒ http://www.mext.go.jp/joho-hiroba/

皆様のお越しをお待ちしています。是非、お気軽にお立ち寄りください。情報ひろばホームページへGO!⇒ http://www.mext.go.jp/joho-hiroba/

皆様のお越しをお待ちしています。是非、お気軽にお立ち寄りください。

③東京海洋大学◆テーマ・概要

「最新鋭練習船による教育・研究~練習船神鷹丸4世~」東京海洋大学では、地球表面の71%を占める海洋について、水産、海事等の側面から実習教育、調査研究を行っています。平成28年3月31日竣工した「神鷹丸4世」は、東京海洋大学及びこれを利用する他大学・他機関の学生及び研究者が、広く、水産、海洋環境、海洋資源、海洋生物及び船舶の運航に関する教育、研究を行うことを目的とした練習船です。今回の展示では、神鷹丸4世を中心とした実習教育と研究活動、低環境負荷次世代水上交通システム「らいちょうN」、「燃料電池船の開発」、「長距離Wi-Fi通信を用いた遠隔操船システムの開発」等を御紹介します。

【主な展示物】●実物展示•練習船神鷹丸模型、らいちょう1模型●映像•練習船「神鷹丸」建造●パネル•乗船漁業実習4

④近畿大学◆テーマ・概要

「近畿大学が挑む、全国的“地方創生”」近畿大学は6つのキャンパスに14学部48学科を擁し、日本

各地の研究所、実験場等で最先端の研究を行うほか、学園として幼稚園から大学院まで質の高い学びを提供する一大教育機関です。多岐にわたる研究テーマ全てに共通するのは、建学の精神であ

る「実学教育」です。全国に広がるネットワークを生かし、地域の活性化と雇用促進で地方創生に貢献しています。本学の地方創生への取組について、企画展示を行います。本

学の地方創生活動を広く周知することで、学内外で新たな地方創生活動が生まれることを期待します。

【主な展示物】●実物展示•バイオコークス等●パネル•地方創成に関する取組をまとめたパネル

情報ひろばINFO所 在 地 : 〒100─8959 東京都千代田区霞が関3─2─2交通案内 : 銀座線「虎ノ門駅」11番出口 直結 千代田線「霞ヶ関駅」A13番出口 徒歩5分開館時間 : 月曜~金曜10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで ※土曜日、日曜日、祝日、年末・年始休館入 館 料 : 無料

〈お問合せ・団体見学申込先〉  文部科学省大臣官房総務課広報室事業第2係TEL:03─6734─2170 Email:[email protected]

情報ひろば 案内図

1Fの直通エレベーターで3F展示室へ

文部科学広報 No.210 平成 29年 5月号 34

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文部科学広報 平成29年5月号 No.210

(発行・著作)文部科学省大臣官房総務課広報室〒100–8959�東京都千代田区霞が関3–2–2TEL:�03–5253–4111(代表)URL:�http://www.mext.go.jp/E-mail:�[email protected]