応力腐食割れとは?応力腐食割れの発生例 davis-besse 発電所(米国...
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応力腐食割れとは?
応力腐食割れ要因
環境側因子不動態化性の環境(不安定な不動態被膜)ハロゲンイオンの存在(孔食の発生)特定の電位域(腐食電位、水素発生)
金属側因子特定合金組成(不動態化しやすい、粗大すべりしやすい組成)不純物偏析粒界析出物、粒界溶質欠乏域加工誘起マルテンサイト
応力側因子引張応力(圧縮応力側ではSCCは生じない!)極めて遅い変形速度(腐食速度、水素拡散速度より遅い)応力集中を起こしやすい構造
応力腐食割れの発生要因
水中での放射線反応入射放射線が電子と相互作用して水分子をイオン化と励起を短時間(~10-16秒)で生じる。
高エネルギー放射線の場合には水中を通過する飛跡に沿ってイオン化と励起はとびとびに起こりイオンや励起状態の固まりとして形成。
→スパー(spur)の形成
スパーおよびその周辺部で次の反応が発生。H2O+ → H+ + OHH2O* → H + OH (10-13~10-12秒)H2O* → H2 + O
同時にイオン化、励起化による電子の熱化により、水和電子eaq
-を形成。
スパー内でeaq-,OH,H,H+を形成、10-6秒までに以下の反応により多くの生成物が発生。
eaq- + eaq
- → H2 + 2OH-, eaq- + H+ → H, eaq
- + OH → OH-, eaq- + H → OH- + H2,
OH + OH → H2O2, OH + H → H2O, H + H → H2プライマリー生成物: eaq
- , OH, H, H2O2, H2, H+ , これから最終生成物を形成。
応力腐食割れの発生例
Davis-Besse発電所(米国2003報告)他 上部管台のニッケル基合金に割れが発生 漏洩したホウ酸水(PWR一次系環境水による腐食に
よって圧力容器が腐食 管台部及び溶接部で粒界割れが発生
国内の原子力発電所における応力腐食割れの発生例
応力腐食割れ発生条件(溶存酸素濃度と電位)
塩素イオンは常時0.15ppm以下を設定
腐食電位は -200mV以下に設定
溶存酸素濃度は0.2ppmでSCC発生を抑制とする。PWR基準では0.005ppm以下とされる。
応力腐食割れ発生条件(腐食電位)
照射の有無によらず腐食電位は -200mV以下に設定
溶存酸素濃度は0.2ppmでSCC発生を抑制とする。PWR基準では0.005ppm以下とされる。
応力腐食割れ進展速度線図
原子力保安院により炉内水環境中のステンレス鋼の応力腐食割れ進展速度の関係を定義。
鋭敏化材(粒界溶質欠乏帯を持つSUS鋼)ではより速いき裂進展速度を提案。
応力腐食割れ発生・進展過程
SCCき裂はき裂進展速度のK依存性が小さく、き裂寸法が小さくても進展速度は大きい場合が多い。
供用中検査によってき裂が発見されそれが進展しつつある応力腐食き裂であれば予測は役に立たない。
↓
SCC寿命予測技術開発が重要な課題
応力腐食割れ発生の過程①潜伏期間 → ②食孔/腐食すきま生起 → ③食孔/腐食すきま成長→ ④食孔/腐食すきま先端からの微小き裂発生 → ⑤微小き裂進展→ ⑥微小き裂合体
照射誘起応力腐食割れ要因
照射は材料側要因と見なせる
照射誘起応力腐食割れ加速試験では1025n/m2
の中性子線量を境に照射誘起粒界破壊型応力腐食割れが発生。
応力腐食割れ予防保全
水素注入によるSCC予防策
軽水炉原子炉冷却水では強いγ線および中性子照射を受け、BWRでは通常運転時の炉水中では約200ppbの溶存酸素濃度と約10ppbの水素濃度が存在。
水素注入は、炉水中の水素添加により、水の放射線分解により生じた、酸素や過酸化水素などの賛成成分と水素の再結合反応を促進し酸化性成分濃度を低下する。
1ppm程度の水素添加で1ppb以下に低減が可能。1979年にスエーデンのオスカーシャム2号炉で最初に実施。以後欧米でBWRに短期および長期の水素注入試験を実施。
水素注入効果
水素注入時には主蒸気系の放射線率が上昇。
放射性窒素の主蒸気系の移行による。水素注入による硝酸イオンのアンモニアへの変化に伴う蒸気系への移行。
スエーデンForsmark-1におけるインプラントき裂進展試験結果。溶存酸素300ppb→20ppbでき裂進展が抑制。日本でもATR「ふげん」で同様の結果が得られている。
レーザーピーニングによる応力腐食割れ抑制
表面の残留応力改善を目的として、部材表面にピーニングを施す方法。ピーニングの方法には、レーザによるもの、高圧力水(ウォータージェット)によるものなどがある。その結果、応力腐食割れの「応力因子」である引張残留応力の低減が期待できる。
磨き加工による応力腐食割れ抑制
表面の残留応力改善を目的として、合成繊維に高分子接着剤で砥石を付着させたブラシで金属表面を研磨することにより表面層に微少な塑性変形を与える方法。ピーニングの施工が困難な狭隘部などに対して有効な方法。その結果、応力腐食割れの「応力因子」である引張残留応力の低減が期待できる。
水中溶接による応力腐食割れ抑制
水冷溶接は、図44 に示すように配管溶接時の2又は3層目以降に配管内面に通水やスプレーで冷却しながら施工する方法で、管板厚内で温度差を生じさせ、これによる熱応力によって応力腐食割れの「応力因子」である溶接部管内表面付近の引張残留応力を低減させる。水冷溶接では、図45 にて確認できるように内表面軸方向の残留応力は圧縮応力となり、応力腐食割れの発生の抑制となる因子である応力改善が期待できる。
高周波加熱による応力改善法から応力腐食割れ抑制
IHSI とは、図46 のように材料の板厚方向に、所定の温度差が生じるよう、内面を冷却しながら外面側を高周波誘導加熱で昇温した後加熱を停止して、板厚方向がほぼ均一な室温近くの温度となるまで内面を冷却する方法である。その結果、応力腐食割れの「応力因子」である引張残留応力を低減又は圧縮側とする応力改善が得られる(図47)
原子力発電所の容器・配管等の検査・診断技術
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超音波探傷試験(手探傷)の方法
探触子ロボットを用いた一次冷却材管自動超音波探傷法の開発
これまで国内の8箇所の加圧水型原子力発電所においてプラント検証試験を実施
炉内構造物の点検技術 - 水中ロボット(ROV) HITACHI
レポート
1. 応力腐食割れの発生要因を示せ。
2. 応力腐食割れの予防策について示し、その内容を各項目毎に二~三行で示せ。
3. 応力腐食割れによる割れの検査方法について示し、その内容を各項目毎に二~三行で示せ。