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「証券会社の倫理コードに関する研究会」報告書 2007 4 13 「証券会社の倫理コードに関する研究会」

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「証券会社の倫理コードに関する研究会」報告書

2007 年 4 月 13 日 「証券会社の倫理コードに関する研究会」

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「証券会社の倫理コードに関する研究会」委員等名簿

2007 年4月13日現在 座長 神田 秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科 教授

座長代理 淵田 康之 野村資本市場研究所 執行役

委員 大森 進 UBS 証券 社長 菊池 廣之 極東証券 代表取締役社長

草野 耕一 西村ときわ法律事務所 代表パートナー・弁護士 佐賀 卓雄 日本証券経済研究所 理事・主任研究員

柴田 拓美 野村アセットマネジメント 取締役兼執行役社長 白川 方明 京都大学公共政策大学院 教授 鈴木 茂晴 大和証券グループ本社 代表執行役社長

高橋 伸子 生活経済ジャーナリスト 高山 与志子 ジェイ・ユーラス・アイアール

マネージング・ディレクター 増井 喜一郎 日本証券業協会 副会長 松井 道夫 松井証券 代表取締役社長 横尾 敬介 みずほ証券 代表取締役社長

吉井 毅 新日本製鐵 顧問 若園 智明 日本証券経済研究所 主任研究員 オブザーバー 平田 公一 日本証券業協会 常務執行役

(敬称略・五十音順)

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目次

Ⅰ.倫理コードと本研究会の経緯 1.倫理コードとは 2.本研究会の経緯

Ⅱ.倫理コードに関する国内外の現状 1.証券監督者国際機構( IOSCO)の取組み 2.米国の動向:公開企業への要請と NASD ルール 3.英国金融サービス機構(FSA)における取組み 4.倫理コードに関するわが国会員証券会社の現状 Ⅲ.倫理コード等のあり方 1.証券会社の倫理に関する 2 つの観点 2.倫理コードが果たすべき 3 つの機能 3.協会の自主規制規則との関係 4.協会におけるモデル倫理コード Ⅳ.倫理コード等に関する具体的施策 1.協会のモデル倫理コードの項目 2.協会および会員証券会社等における倫理コードの制定 3.倫理コード等の実効性確保 4.行動規範の検討に関する会議体の設置 5.倫理文化の普及と啓発 Ⅴ.むすびにかえて 添付資料 資料1. IOSCO で採択された7つの行動規範原則

資料2. IOSCO Model Code of Ethics の概要 資料3.SOX 法 第 4 章 第 406 条 資料4.欧米主要金融機関の倫理コード・行動規範一覧 資料5.FSA Handbook「業務原則」 資料6.FSA Handbook「原則ステートメント」 資料7.「証券会社の倫理規程に関するアンケート調査」報告結果 資料8.協会 平成3年版「倫理綱領」 巻末添付資料.「モデル倫理コードおよび行動規範の位置付け」

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Ⅰ.倫理コードと本研究会の経緯 1.倫理コードとは 倫理コード(Code of Ethics)とは、倫理規範を体系的に記述したものである。倫理規範は、企業や私人が活動をする上での道徳的な行動の規範であるが、

営利企業の場合、倫理コードは、利潤の追求という企業の基本的な経済行動を

多くの利害関係者との間で社会的に容認できる水準内に抑制するという機能を

有するということができる。その位置づけは、法令や自主規制規則よりも根本

的な(上位の)規範であり、対象とする行為等はより広範となる。対象となる

行為等が法令や自主規制規則では判断できない行為であっても、倫理規範から

判断することは可能であり、この意味で、倫理コードには法令や自主規制規則

を補完する機能が期待される。もっとも、法令や自主規制規則の遵守は他律的

であるのに対し、倫理コードの遵守は基本的には良心に基づく自己の規律によ

る。そのため、自主的に遵守する強い意志が欠けているような場合には、倫理

を霧散させることが容易となる。また、法令や自主規制規則とは異なり、倫理

的基準は必ずしも普遍的なものではないため、適切かつ標準的な倫理的基準を

求める努力が不可欠であるということができる。 証券会社は、資本市場の参加者として、その業務を通じて経済発展に寄与し、

経済・社会に貢献するという資本市場における公共的な存在である。そのため、

証券会社の役職員には、一般的な道徳観や倫理に加えて証券業に関する職業倫

理の保有が求められる。その内容としては、プロフェッションに相応しい水準

であることが求められるが、そこには個々の証券会社の業務の特性や独自の企

業文化もが反映されることが望ましい。 また、証券会社における職業倫理は、証券会社の役職員がこれを個別に意識

するだけでは不十分である。経営トップによる主導の下で、役職員間で倫理に

関する認識が共通化され、それが具体的な行動にも反映されることが必要であ

る。そのためには、各証券会社において、明文化された倫理コードを保有する

ことが不可欠である。 さらに、倫理的行動を浸透させるためには、倫理コードの保有と合わせて、

倫理コードを実際に日々の業務のなかで遵守していく体制の導入と、倫理文化

を育成していく組織的な試みが求められる。この点に関連して、役職員による

遵守の宣誓だけではなく、各証券会社による対外的な宣言が自主的に行われる

ならば、各証券会社の社会的な信用が高まるだけでなく、関係する個々人のレ

ベルにおける倫理的な行動の実践を促す効果もあるものと考えられる。

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2.本研究会の経緯 信頼される資本市場を構築する上で、証券会社が担うべき適切な市場仲介機

能等に関する検討を目的として、金融庁において「証券会社の市場仲介機能等

に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)が開催され、2006 年 6 月 30 日に懇談会としての論点整理が公表された。 この懇談会においては、金融システム改革による一連の自由化により、証券

業務や商品の多様化および証券会社間の競争の進展が見られる一方で、資本市

場を巡るさまざまな課題が存在していることが指摘された。たとえば、インサ

イダー取引や相場操縦等の投資者による不公正取引、有価証券報告書の虚偽記

載等の発行体による不正行為、大規模誤発注といった証券会社のオペレーショ

ン上の問題や、証券会社の自己売買における利益相反問題等が代表例である。

そして、いうまでもなく、日本経済の発展にとって、資本市場の活用を通じた

資源配分は不可欠であるが、資本市場および証券市場の公正性と健全性の向上

が重要な課題となっているというのが今日の状況である。 このような公正で健全な資本市場を構築していく上で、証券会社が適切な市

場仲介機能を発揮することと、市場参加者として利用者保護を徹底した信頼性

の高い業務を遂行することは不可欠である。上記の懇談会においては、当局に

よる監督・検査・監視、法令の整備やエンフォースメントの強化と互いに補完

しあうものとして、証券界による自主的な取組みが必要であるとされ、日本証

券業協会(以下、「協会」という。)に対して、自主規制機能の活用とともに、

証券会社の自己規律を高めるための規範整備に関する検討が要請された。 協会の自主規制機能の活用という点については、誤発注の再発防止や引受け

等の審査強化などの課題について、すでに協会における議論と対応が鋭意進め

られている。そして、市場参加者としての証券会社の自己規律を高めるための

規範の整備については、社内方針や規則等の整備および内部管理体制の構築に

加えて、個々の証券会社による倫理コードの整備が求められているということ

ができる。 本研究会は、上記の懇談会の協会に対する要請を契機として、証券会社の自

己規律の維持とさらなる向上のためには、証券会社およびその役職員に対して

プロフェッションとしての高い倫理が求められるとの観点から、証券界および

証券会社の倫理コードに関して中立的立場から調査・検討を行うことを目的に

発足し、調査・検討を行った。

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Ⅱ.倫理コードに関する国内外の現状 1.証券監督者国際機構( IOSCO)の取組み

1990 年 11 月のサンチアゴ総会において、 IOSCO は「7つの行動規範原則」を採択し、公表した。2006 年 3 月に公開された IOSCO 専門委員会「市場仲介業者のコンプライアンス機能:最終報告書」(Compliance Function At Market Intermediaries : Final Report)においては、「市場仲介業者は、法律の条文の遵守だけではなく、高い倫理基準や投資家保護基準を尊重し、また、それを促

すような企業文化を醸成することも同時に重要である。」ことを指摘している。

さらに同年 6 月には、 IOSCO 自主規制機関委員会によって、倫理文化の発展

と金融サービス業を手引きするためのフレームワークとして、 IOSCO Model Code of Ethics が公表されている。(資料1)(資料2) この倫理コード・モデルは、単なる倫理原則項目の提示にとどまらず、倫理

的ジレンマを解消するために、4つの段階(①倫理的問題を解決する簡素モデ

ル、②困難な決断を行うための倫理面でのチェックリスト、③熟考された行動

を分析するための指針、④目標の設定と結果の予測)における行動モデルを提

示し、倫理文化の養成を目的とした2つの提言(①倫理文化の創始、②効果的

な倫理養成プログラム開発の推奨)を行っている。 IOSCO のモデルでは、倫理コードを通じて倫理文化を促進し、明確なルール

がない分野やルールの隙間に該当する分野において適切な行動が導かれること

が期待されている。

2.米国の動向:公開企業への要請と NASD ルール 米国においては、2002 年 7 月に成立した通称 SOX 法(The Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002)の 406 条が、証券取引所法(34 年法)の 13 条 (a)・15 条 (b)に該当する公開企業による倫理コードの開示に関連するルールの整備を米国証券取引委員会(SEC)に対して要請した。(資料3) SEC は SOX 法の要請にしたがい、公開企業に対して、財務関連の上級役職員を対象とする倫理コードの開示ないしは開示しない理由の開示を求める

(Comply or Explain)ファイナル・ルール(File No.S7-40-02)を制定し、2003年 3 月 31 日より適用している。 SEC の新ルールの制定を受けて、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダックは、それぞれ NYSE(NYSE Listed Company Manual Section 303A.10)およびナスダック(NASDAQ Rules 4350(n))の上場規則を改定し、公開会社

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に対して、すべての役職員までを対象として、SEC の Item406 of Regulations S-K に規定される倫理コードの遵守、違反に対する通報制度の確立等、実効性を確保する措置までも含めた行動規範(Code of Conduct)の適用を求めた。すなわち、NYSE やナスダックへの上場企業については、倫理コードを含めた行動規範の採用と開示が義務づけられており、SEC のファイナル・ルールが定める財務関連上級役職員だけでなく一般従業員までをも対象とした倫理コード

を保有しなければならないとされている。以上より、米国では、上場証券会社

は、上場規則に則り、倫理コードの制定・開示・運用が求められていることに

なる。(資料4) 証券会社の行為に関する倫理については、NASD が複数のルールを制定している。特に Rule2110 は単なる精神規定ではなく、Rule2110 への違反によって米国証券業協会(NASD)が会員に制裁を課すことが実際に生じている。また、IM-2310-2、Rule3010(a)、Rule3013 などには取引の公正性等の一般原則的な規定が盛り込まれている。また NASD は、2005 年 6 月より、証券業の倫理に関するコンファレンスを定期的に開催している。

3.英国金融サービス機構(FSA)における取組み 英国の証券会社は、FSA のルールに服する。FSA のハンドブックでは、業者

の適格性について規定する「高度な基準」(High Level Standard)において、「業務原則」(Principle for Business)と「原則ステートメント」(Statements of Principle and Code of Practice for Approved Persons)を規定し、証券会社等の倫理を定めている。「高度な基準」であるため、すべての業者に適用される

「業務原則」への違反は、FSA により規律的制裁が加えられる。また、承認された者が「原則ステートメント」を遵守しなかった場合には不正行為に問われ、

FSA は制裁金を課すことが可能である。(資料5)(資料6) この「高度な基準」の下にさらにプルデンシャル・スタンダード(健全性基

準)やビジネス・スタンダード(業務基準)等、より具体的な規定が定められ

ている。最近では、FSA は、プリンシプル・ベースの姿勢を強めていくと宣言しており、こうした高次のレベルのプリンシプルの違反ということだけでもエ

ンフォースメント・アクションを起こすようになっている。

4.倫理コードに関するわが国会員証券会社の現状 本研究会における調査の一環として、2006 年 10 月 17 日より同月 31 日にかけて、協会により、会員証券会社 308 社を対象として「証券会社の倫理規程に関するアンケート調査」が実施された。(資料7)

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倫理コードの保有に関して、回答があった 206 社の会員証券会社のうち、半数が保有していないことが判明した。33.1%の会員証券会社がアンケートへの回答を行っていないことを考慮すると、保有の実態はさらに低い可能性もある。

また、保有している会員証券会社のうち、1991 年に協会が制定した「倫理綱領」を用いているケースが 29%あったが、回答と合わせて各社から提出された倫理コードを見ると、協会の「倫理綱領」をそのまま使用するにとどまっているケ

ースも散見された。この「倫理綱領」は、証券会社に共通する基本的な倫理項

目を提示したものであって、各証券会社の個別業務や企業文化が反映されてい

るわけではない。協会の「倫理綱領」を参考としながらも、各社はその業務特

性、企業文化、ビジネス・モデル等を加味した倫理コードを作成・保有するこ

とが望ましい。(資料8) 各社が独自に作成している倫理コードの内容について見ると、漠然とした経

営理念にとどまるケースから、かなり詳細なケースまで見られ、多様である。

したがって、証券業における倫理を業界全体の問題と捉えた場合には、協会か

ら会員証券会社に対して、各社の業務や企業文化などを反映させた倫理コード

の作成・保有を推奨するとともに、基本的に満たすべき水準をモデル倫理コー

ドとして提示することが有益であると考えられる。すなわち、協会は、現在の

「倫理綱領」の内容を見直し、倫理コードのモデルとして提示し、会員証券会

社に対して、当該モデルに準拠しつつ、自社の個別状況を加味した倫理コード

の作成を求めることとするのが適当である。 前述したように、証券業において倫理を重視する傾向は、欧米においても見

られるところである。単に金融庁の懇談会からの要請に受動的に対応するとい

うことではなく、この機会に、わが国においても、諸外国の動向をも踏まえつ

つ、証券会社において倫理の重要性とその役割が再確認され、積極的に倫理コ

ードの整備と見直しが行われ、その運用と倫理文化の育成が進められることが

望ましい。

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Ⅲ.倫理コード等のあり方 1.証券会社の倫理に関する 2 つの観点 1991 年に協会によって作成された「倫理綱領」は、証券界共通の認識として、証券会社の業務遂行に関する基本的な心構えを整理し、その遵守を公約したも

のであるが、これは当時の証券不祥事に対する真摯な反省に基づくものであっ

た。 その後のわが国資本市場における環境の変化等にかんがみると、証券会社に

おける倫理を考えるにあたっては、以下の2つの観点を再確認することが重要

である。第1は、個々の顧客に対する証券会社の情報面における優位性である。

このような情報面での相対的な格差のために顧客に不利益を与える可能性があ

り、したがって、潜在的な利益相反行為を防止し顧客の利益保護を徹底すると

いう観点が、証券会社の倫理を考える際の基本中の基本である。第2に、証券

会社は資本市場の参加者であり、証券会社の行為は、各社の業務の内容や規模

により程度は異なるものの、資本市場の公正性と健全性に重大な影響を与える

という点に留意する必要がある。証券会社のレピュテーションは、資本市場の

レピュテーションを構成する重要な要因である。資本市場の公正性や健全性を

阻害するような行為は防止されなければならず、こうした市場の機能の保護と

いう観点も、証券会社の倫理を考える際にきわめて重要である。証券会社の倫

理コードに関する検討を行うに際しては、証券業務におけるプロフェッション

である役職員の判断基準となることも前提としながら、上記の顧客との関係お

よび資本市場との関係という2つの観点を明示的によく意識する必要がある。 自由化の進展と共に、証券会社が営む業務内容(提供する商品・サービス等)

や規模等については、各社においてかなりの多様性が見られる。このような証

券会社の業務や規模等の多様性を考慮すると、上述したように、倫理コードは、

個々の証券会社がその自主的な努力によって作成・保有し実践すべきものであ

る。しかしながら、個々の証券会社のレピュテーションは証券界全体のレピュ

テーションに影響をおよぼすものであり、また倫理コードは法令および自主規

制の上位にあることから、協会において、各社が基本的に満たすべき倫理コー

ドの水準をモデルとして提示し、会員証券会社に対しては、そのモデルに準拠

しつつ、各社の個別状況を加味した倫理コードを作成・保有し実践するという

ことを求めることとするのが適当である。また、証券界全体における倫理文化

の育成ということも、協会を含めて、業界全体で促進すべき課題である。

2.倫理コードが果たすべき 3 つの機能

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金融システム改革による 1998 年 12 月 1 日の免許制から登録制への移行を経て、近年の証券業や資産運用業務への参入社数の増加は目覚ましい。2006 年の証券会社の新規登録は 35 社であり、同年末時点で証券会社数は 307 社にのぼっている。 このような自由化は、競争の促進や多種多様な商品とサービスをもたらし、

わが国資本市場の発展とわが国経済の活性化に貢献してきたものと評価するこ

とができる。その一方で、一部の証券会社において資本市場の公正性や健全性

を阻害する可能性がある行為が見受けられるのも事実である。前述した金融庁

の懇談会では、①自己売買に関連する行為、②株式引受けに関連する業務、③

証券化商品の販売に関連する行為、④SPC 等を利用した証券スキームの提案等などの分野において潜在的な利益相反等の問題を孕む事例が増大する状況にあ

ると指摘されている。 このような最近の指摘をも踏まえると、証券業における倫理コードが果たす

べき機能としては、以下の3点が挙げられる。第1に、各証券会社が倫理コー

ドやそれに基づき策定した規範に基づいて業務を運営することで、証券界、ひ

いては資本市場全体の信頼性が向上し、市場参加者全体の利益に資する。第2

に、倫理コードは、証券会社の業務に潜在するリーガル・リスクやレピュテー

ショナル・リスクに関する問題の防止機能を有する。すなわち、倫理コードに

は、法令や自主規制規則の違反を惹起することを未然に防止するとともに、自

由な競争を前提としながら、資本市場の健全な発展を阻害するような行為を未

然に防止するという役割が期待される。第3に、倫理コードは、新規に証券業

務に参入する業者に対するチェック機能を有する。登録制への移行以降、多く

の業者が証券業に参入した。その結果、顧客利益の保護や資本市場の果たす役

割の重要性についての認識が低い証券会社が存在することも指摘されている。

たとえば、協会は、新規に証券業務に参入する業者が協会への加入を申請する

際に、経営者の面接等を通して、その業者に対して、適切な倫理コードの提示

と説明、その遵守の宣誓を求めることとすれば、資本市場全体と証券界全体の

レピュテーションを維持するうえで有効であると考えられる。そして、以上に

述べた倫理コードの3つの機能を十分に発揮させるためには、協会による自主

規制機能の活用が不可欠であると考えられる。

3.協会の自主規制規則との関係 金融庁の懇談会における指摘等をも踏まえると、こうした倫理コードに関す

る取組みについては、証券会社の行動規範の一層の充実を通じた資本市場への

信頼性の向上という観点から、協会における自主規制機能の強化ということも

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検討に値する。この点で、金融商品取引法においては、従来証券取引法で「総

則」に規定されていた誠実公正義務が「業務」の節に移行しているなど、金融

商品取引業者の誠実・公正を確保するためのより具体的な取組みが期待されて

いることに留意すべきである。いまわが国の証券界には、こうした法の趣旨や

精神を具体化していく努力が求められているということができる。 この点に関連して、いわゆるプリンシプル・ベースでの対応を行うというこ

とが考えられる。一般に、ルール・ベースの対応は、業者にとっての予見可能

性の向上と対応の恣意性の排除という利点があり、プリンシプル・ベースの対

応は、業者の自主的な取組みの促進と経営の自由度の確保という利点があると

いわれている。最近では、こうしたルール・ベースの対応とプリンシプル・ベ

ースの対応は、二者択一ではなく相互補完的であるといわれている。したがっ

て、協会がプリンシプル・ベースによる対応を行うことは、既存のルール・ベ

ースの自主規制機能を補完するものであって、わが国資本市場への信頼性のさ

らなる向上のために意義のあることであると考えられる。 このような観点からは、各社が保有するいわば高次とでもいうべき倫理コー

ドを基に具体的事例を示したいわばプリンシプル・ベースの行動規範(いわゆ

るベスト・プラクティス)を協会において定めることが考えられる。なお、こ

の場合、ルール・ベースの対応と二重になったり過度になったりすることのな

いよう配慮する必要があることはいうまでもない。また、このような新たな取

組みは、証券界として守るべき原理原則を協会のレベルで規範化するものであ

るため、対象とする範囲は法令や既存の自主規制規則よりも広範となる。そし

て、倫理コードをもって防止できないような問題が生じた場合、協会は、従来

型のルール・ベースだけでなく、こうしたプリンシプル・ベースによっても対

処し、さらに必要があれば法令や自主規制規則の整備を求めるということにな

る。 こうしたプリンシプル・ベースの行動規範を作成する際の項目としては、上

記のように、誠実公正義務が遵守され、また、法の趣旨や精神が実現されるた

めに実効性のあるものとする必要がある。その際、「正直者が損をする」という

不公平感が生じないよう、できるかぎり具体的かつ明確なものであることが望

ましいが、一方で、あまりに詳細な項目を求めると抜け穴的存在が起きる可能

性があること、また、既存のルール等とのダブル・スタンダードを避ける必要

があること等を踏まえることが適当である。 協会においては、以上を実現する体制を整備するために、その検討を行う組

織を設けることが望まれる。すなわち、協会においては、会員証券会社により

検出された重大な事案や社会一般から不適切であると指摘された個別具体的な

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事項等について、倫理等の観点から迅速かつ公正な対応を検討するための組織

を構築することが適当である。その組織では、将来各社において作成した倫理

コードでは対応しきれないような事例が発生する場合をも想定し、個別具体的

な事項に関して、その取扱いについても検討することが望まれる。 そうした検討の結果、法令または具体的な自主規制規則とすべき事項につい

ては、関係者に対して法令または自主規制規則の制定・整備を積極的に呼びか

けることが望ましいが、法令または自主規制規則で律する必要性がないもので

あって、業界として一定の方向性を示し、それを推奨すべきとすることが適切

であるような事項である場合は、プリンシプル・ベースの行動規範の適用があ

る事項として当該事象を開示するとともに、その行動規範に従わない会員証券

会社があった場合には、その事由等も合わせて公表することとするなど、行動

規範についての実効性確保の方策を検討することが適当である。 なお、エンフォースメントのプロセスに関しては、その影響の大きさを踏ま

えて、会員証券会社等に不利益を与える措置を講じる場合については、判断の

透明性と公平性の向上を図ることが適当である。

4.協会におけるモデル倫理コード 前述のとおり、現在、協会が保有する「倫理綱領」は、1991 年の証券不祥事への反省に基づいて証券界共通の倫理として作成され、会員証券会社への周知

と対外的な公表が行われたものであるが、会員証券会社に対して倫理コードの

作成を求めたものではない。協会が会員証券会社に対して倫理コードの作成を

求めることとする場合には、協会自身が基本的に満たすべき倫理項目を定めた

モデル・コードを作成し提示するということが適当である。そのようなモデル・

コードは、会員証券会社が作成・保有する倫理コードが適切か否かを判定する

基準としての役割も果たすことができる。 協会のモデル倫理コードの内容については、現在の「倫理綱領」は倫理に関

する基本的な原理原則を述べたものであり、これをそのままモデル・コードと

して活用することも可能である。しかしながら、たとえば免許制から登録制へ

の移行や、インターネットに代表される情報・通信技術の普及など、証券業を

取り巻く環境は当時とは大きく変化している。したがって、企業倫理に関する

近年の考え方の進展をも加味して、現在の「倫理綱領」の項目を見直すことが

望ましい。また、各項目について補足説明を加えるなど、記載の充実をはかる

ことも考えられる。そして、一般公開を前提とするのであれば、消費者や投資

者から見てわかりやすいモデル倫理コードとすることが望ましい。 協会の会員証券会社は、このような協会のモデル倫理コードに準拠しつつ、

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それぞれが各社の業務上の特徴を加味して、個別に適切な倫理コードを作成し

保有することが望ましい。そして、前述した倫理コードの機能を有効に発揮さ

せるためには協会の自主規制機能の活用が必要であり、具体的には、協会が定

める自主規制規則において、会員証券会社に対して、①倫理コードの作成・保

有・提示および遵守の宣言、②倫理コードの運用体制の構築、③倫理文化を促

進する努力を求めることが望ましい。

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Ⅳ.倫理コード等に関する具体的施策 以下において、本研究会で検討を行った倫理コード等の整備に関する具体的

な施策を列挙することとする。なお、以下に示すもののうち、倫理コードの内

容となる項目の例およびその説明については、さまざまな考え方があるところ

であって、以下に示したもののうちで、項目の説明については、本研究会のメ

ンバーの間で意見の集約がなされたわけではない。しかし、今後、協会および

証券会社各社において倫理コード等の見直しの作業を進めていくうえでの参考

になるものと考え、例示として示すこととした。

1.協会のモデル倫理コードの項目 協会が制定・保有するモデル倫理コードの項目としては、次のものが考えら

れる。これらの項目は、①企業としての最低限必要な倫理である「共通する基

礎的項目」に加え、証券業者として遵守すべき項目として、②顧客利益の保護

を目的とした「仲介者として」、③資本市場の健全性と信頼性の確保を目的とし

た「資本市場の参加者として」に大別することができる。

①「共通する基礎的項目」 a)国民から信頼される職業人としての倫理意識と専門性の保持 証券会社の役職員一人ひとりが、職業人として国民から信頼される健全

な社会常識と倫理感覚を常に保持し、求められる専門性に対応できるよう、

不断の研鑚に努める。 b)法令等の遵守 一般的な社会規範の遵守を始めとして、投資者の保護や取引の公正性を

確保するための法令や規則等、証券取引に関連するあらゆるルールを正し

く理解し、これらを厳格に遵守する。また、社会的な評判や信頼性を低下

させる行為をしない。 これら法令等の遵守は、すべての業務および行為における基本とする。

c)利益相反の防止 会社の利益のために行動し、業務において私的な利益を求めない。また、

会社の施設や情報等あらゆる資産は、適切な目的の下で有効に使用する。 会社における地位や権限、情報等を用いて、反倫理的ないし反社会的と

思われるような個人的な不正な利益を得ることはしない。 d)守秘義務の遵守と情報の管理 法定開示情報など、情報開示に関する規定によって開示が認められる情

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報を除き、業務上知り得た情報の管理に細心の注意を払い、機密として保

護する。また、法令や社内規則に照らし、業務や財務、顧客に関する情報

などを適切に管理し、所定の期間保存する。 e)人権の尊重 良き市民として互いを尊重し、国籍や人種、性別、年齢、信条、宗教、

社会的身分、身体障害の有無等を理由とした差別的発言や種々のハラスメ

ントを排除し、防止する。 f)社会秩序の維持と社会的貢献の実践

社会秩序の安定と維持に貢献する。反社会的な活動を行う勢力や団体等

に毅然たる態度で対応し、これらとの取引を一切行わない。 良き企業市民として、社会の活動へ積極的に参加し、社会の健全な発展

や環境の維持保全に貢献する。

②「仲介者として(顧客利益の保護)」 g)顧客利益を重視した行動 投資に関する顧客の能力、経験、財産、目的などを十分に把握し、これ

らに照らした上で、常に顧客にとって最善となる利益を考慮して行動する。

顧客の利益は、自社および自己の利益に優先する。 h)顧客の立場に立った誠実かつ公正な業務の執行 仲介者として、常に顧客のニーズや利益を重視し、顧客の立場に立って、

誠実かつ公正に業務を遂行する。 会社での権限や立場、利用可能な比較優位情報を利用することにより、

特定の顧客を有利に扱うことはしない。また、適切な投資勧誘と顧客の自

己判断に基づく取引に徹することにより、自己責任原則の確立に努める。 i) 顧客に対する助言行為 顧客に対して投資に関する助言行為を行う場合、専門性のある中立的立

場から、合理的な調査分析結果等による根拠を持って行う。また、事実と

見解を明確に区別した助言をする。 関連する法令や規則等のもとで、投資によってもたらされる価値に影響

を与えることが予想される内部情報等の非公開情報を基に、顧客に対して

助言行為を行うことはしない。 j)受託者責任の完遂 顧客との間で受託者責任が生じる場合、常に誠実な仲介者として行動し、

法令や社内規則、締結された契約に基づき、顧客の利益に対して決められ

た義務を完遂する。

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③「資本市場の参加者として(市場の公正性と健全性の確保)」 k)資本市場の担い手として社会的使命の自覚

資本市場における証券取引に関するあらゆるルールと、資本市場の公正

性と健全性について正しく理解し、資本市場の健全な発展を妨げる行為を

しない。また、資本市場の健全性維持を通して、果たすべき社会的使命を

自覚して行動する。 l)資本市場における行為

法令・自主規制規則に定めのないものであっても、社会通念や市場仲介

者として求められるものに照らして疑義を生じる可能性のある行為につい

ては、自社の倫理コードと照らし、その是非について判断する。 関連する法令や規則等のもとで、投資によってもたらされる価値に重要

な影響を与えることが予想される内部情報等の非公開情報を基に行動をし

ない。 m)資本市場の健全性・信頼性を損なうおそれのある行為の防止 たとえば、会計操作や脱税の防止の観点から著しく不適切な金融商品を

組成・販売等する行為や、他の証券会社の誤発注を明らかに認識しながら

株式の買付けをする行為、既存株主の利益の著しい希薄化によって証券会

社自らが利益を得るような行為、その他証券会社および証券業界に対する

信頼を損ないかねない著しく不適切な行為などをしない。

2.協会および会員証券会社等における倫理コードの制定

a)協会は、1991 年に制定した「倫理綱領」を見直し、本研究会における検討の結果等を参考として、証券業の特性を考慮に入れた業界の標準的なモ

デルとなるモデル倫理コードを作成し、当該コードを会員証券会社が作

成・保有する倫理コードのモデルとして位置づける。 b)協会は、会員証券会社および今後協会への加入を申請する証券会社(以下、「会員証券会社等」という。)に対して、各社の業務特性や企業文化を

反映させた倫理コードの作成・保有と、役職員による当該コードの遵守の

宣誓を自主規制規則において義務づける。その際に、協会が制定するモデ

ル倫理コードを提示する。 c)協会は、会員証券会社等に対して、各社が作成・保有する倫理コードの提出を義務づけるとともに、一般への公表を求める。

d)協会は、倫理コードを作成・保有しない、または協会への倫理コードの提出を行わない会員証券会社に対しては、適切な措置を講じるとともに、

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各社の倫理コードに協会の定めたモデル倫理コードと照らして不足が認め

られるような場合には、その理由等の説明を求める。 e)協会は、会員証券会社等から提出された倫理コードを、モデル倫理コードと照合し、提出された倫理コードが基準を明らかに満たさないと認められ

るような場合には、改善を求めるとともに適切な指導を行う。 f)協会は、協会への加入を申請する証券業を営む証券会社に対し、2の b)・

c)・ d)・ e)に関する事項を加入の条件とし、その際、たとえば、経営者自身による自社の倫理コードの精神と内容の説明を加入申請時に求めるな

ど、証券業への新規参入時における倫理に関する新たなチェック体制を整

備する。

3.倫理コード等の実効性確保

a)協会は、本研究会における検討の結果等を参考として、会員証券会社等に対して、倫理コードの遵守の実効性を確保する体制の導入を自主規制規

則において義務づける。ここでいう社内体制とは、単なる管理運用にとど

まらず、役職員の行為が倫理コードに抵触し、または抵触する恐れがある

と判断された場合における社内における報告体制(運用管理責任者の設置

を含む)、その行為に関する対応の場の設置、およびこれらの内容の記録と

その保持、そして重大な事項に関する協会への報告までをも含むものとす

るのが適当である。 b)協会は、会員証券会社に対して、倫理に反すると思われる重大な事案が判明した場合について、協会への報告を義務づける。これら協会への報告

が必要な事案については、倫理コードのうち、「仲介者として」または「資

本市場の参加者として」に掲げられた項目に反するようなものが想定され

る。 c)協会は、会員証券会社の倫理コードの制定状況および会員証券会社において上記の体制が適切に導入・運営されているかを定期的に確認する。

d)協会は、会員証券会社およびその役職員の行為に関して、倫理に反すると思われる重大な事案が生じたような場合には、当該会員証券会社の社内

における対応を踏まえ、当該証券会社に説明を求め、必要に応じて、協会

として必要な調査と検討を行うとともに、行動規範に照らし、当該行為の

適切性について判断する。この場合、協会は、判断の結果とそれに至った

理由を当該証券会社に通知する。 e)協会は、3 の c)・d)項に対応するため、監査等を通じた適切な確認体制を構築することが望ましい。

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4.行動規範の検討に関する会議体の設置

a) 協会は、上記3の b)項に基づき報告を受けた事項および社会一般的に不適切であると指摘された個別具体的な事項等について、倫理等の観点か

らその適否を検討するための「行動規範委員会」(仮称)を会長の諮問機関

または理事会の下部機関として設置する。この行動規範委員会は、法令・

自主規制規則に直接定めのない事項について、行動規範によって対応する

会議体であり、証券会社の役職員の他、弁護士・有識者等により構成され

ることが適当である。 b)行動規範委員会では、これらの個別具体的事項について検討を行い、法令または諸規則を整備して対応すべき事項については、証券戦略会議に対

し金融庁や証券取引所等へその旨申請するよう建議を行う。また、協会の

自主規制規則で対応すべき事項については、自主規制会議に対して自主規

制規則の制定・見直し等を行うよう建議する。 c) 法令および自主規制規則等で対応すべき事項でない場合であって、証券業界として一定の方向性を示し、業界として望ましい行動や慣行等を示し

て対応すべきものである場合には、行動規範委員会が行動規範の作成を検

討し、自主規制会議および証券戦略会議において行動規範をとりまとめる

よう要請する。 d)上記により取りまとめた行動規範は、会員証券会社等に対して通知するとともに、対外的に公表する。

e)このような行動規範は、行動が義務化されるものではなく、また、これに反する場合であっても定款上の罰則が課されることになるものではない。

行動規範委員会が、行動規範に基づき行動できない、または行動しない会

員証券会社等であると判断した場合は、その事実を理由とともに開示する

など適切な対応を行う。 f)行動規範委員会は、協会が保有するモデル倫理コードを見直す機能をも合わせ有する。

g)以上について、協会は、会員証券会社とともに、当局による対応に至る以前に、行動規範委員会の機能を含めた自主規制機能を十分に発揮させ、

証券界内における自主的な対応を迅速かつ柔軟に機能させる。

5.倫理文化の普及と啓発 協会は、証券界における倫理文化の普及と啓発を目的として、たとえば 2005

年 6 月から NASD が開催している倫理コンファレンスのように、セミナー等の

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開催を通じて、会員証券会社に対して証券業の倫理について理解を深める場を

提供し、証券界における倫理文化を育成する。

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Ⅴ.むすびにかえて 本研究会では、わが国資本市場の公正性と健全性を高めることを通じて資本

市場への信頼を一層高めるためには証券会社における自己規律を高めることが

重要であるとの認識に立って、証券会社における倫理コードのあり方について

検討と提言を行った。各証券会社が作成し保有すべき倫理コードは、一定のモ

デルに準拠しながらも、各社の個別特性を加味した各社ごとに異なる内容のも

のであるのが適当である。そして、そうした倫理コードには、2つの観点が求

められ、また、3つの機能が期待される。すなわち、前者は、顧客の利益保護

と市場の機能の保護という内容であり、後者は、市場への信頼性確保、法令違

反行為等の未然防止、そして新規参入業者の健全性の確保という機能である。

こうした証券会社の自己規律による対応を意味のあるものとするためには、協

会において、現在の倫理綱領を見直してモデル倫理コードを作成し、会員証券

会社等に対しては、それに準拠したうえで各社の倫理コードを定めることを求

めるとともに、さらに、個別事例に証券界として適切に対応するために、協会

においてプリンシプル・ベースの行動規範を定めて対応することとするのが適

当である。 本研究会における検討の成果等を参考として、わが国の証券界がその自己規

律の向上に努め、わが国資本市場とわが国経済の将来の発展において、一層重

要な役割を果たしていくことが望まれる。

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「証券会社の倫理コードに関する研究会」報告書添付資料

資料1.IOSCOで採択された7つの行動規範原則1990年11月:サンチアゴ総会1.誠実・公平  業者は、その業務にあたっては、顧客の最大の利益及び市場の

  健全性を図るべく、誠実かつ公正に行動しなければならない。

2.注意義務  業者は、その業務にあたっては、顧客の最大の利益及び市場の

  健全性を図るべく、相当の技術、配慮及び注意をもって行動

  しなければならない。

3.能力  業者は、業務の適切な遂行のために必要な人材を雇用し、手続

  きを整備しなければならない。

4.顧客に関する情報  業者は、サービスの提供にあたっては、顧客の資産状況、投資

  経験及び投資目的を把握するよう努めなければならない。

5.顧客に対する情報開示  業者は、顧客との取引にあたっては、当該取引に関する具体的

  な情報を十分に開示しなければならない。

6.利益相反  業者は、利益相反を回避すべく努力しなければならない。

  利益相反が回避できないおそれがある場合においても、全ての

  顧客の公平な取扱いを確保しなければならない。

7.遵守  業者は、顧客の最大の利益及び市場の健全性を図るため、その

  業務に適用される全ての規則を遵守しなければならない。

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資料2.IOSCO Model Code of Ethicsの概要(2006年6月公開)(倫理文化の発展と金融サービス業を手引きするためのフレームワーク)

①基本的な倫理原則の提示

②倫理的な問題が生じた場合に必要な判断と踏むべき手順

③倫理文化の育成とプログラム等

Ⅰ.Guiding Ethical Principal(倫理原則の案内)「望まれる6つの倫理原則」

①Integrity and Truthfulness(統一性と誠実さ)

②Promise Keeping(約束の順守)

③Loyalty ‒ Managing and Fully Disclosing Conflicts of Interest

(忠誠-利益相反の管理と充分な開示)

・所属企業と顧客に対する忠誠

・企業と顧客との間で利益相反が生じた場合、当該企業は充分、

 公平、正確、即時かつ解りやすい形での開示を最小限の行為として行う

④Fairness to the Customer(顧客に対する公平性)

⑤Doing No Harm to the Customer or the Profession

(顧客や所属する企業(Profession)の利益保護)

・顧客資産を毀損し、信頼を失う行為の回避

⑥Maintaining Confidentiality(機密の維持)

Ⅱ.Models for Resolving Ethical Dilemmas(倫理的ジレンマを解消するモデル)A.Concise Model for Resolving Ethical Disputes(倫理的問題を解決するための簡潔なモデル)①合法であるか?、②バランスはとれているか?(公平性から)、

③(マネージャーが)どの様に思うか?

B.Ethics Checklist for Making Difficult Decisions(困難な決断行うための倫理面でのチェックリスト)①事実は?、②深刻な問題点は何か?、③利害関係者は誰か?、④代案は?、

⑤代案の倫理的含意は何か?、⑥意志決定者は、正当な複数の案があるの

かを判断しなければならない

C.Guidelines for Analyzing a Contemplated Action(熟考された行動を分析するための指針)①意志決定者の観点から問題点を考え、明確にする、②熟考された行動によって誰が

損害を被るのかを認識する、③逆の観点から問題点を考える、④意志決定者は熟考さ

れた行動を、投資家、自社のCEOや取締役会等に自ら進んで報告するべきかを問う、

⑤意志決定者は、投資家フォーラムや他の一般フォーラムに先駆けて、その問題に関

して自ら進んで報告すべきかを問う、⑥事実と代案について考慮し、熟考された行動

を取るべきか決定する

D.Goal Setting and Outcome Predicting(目標の設定と結果の予測)①問題について述べる、②問題の取扱いに関して目標(goal or objective)の設定を行

う、③その状況の事実と関連する要因を限定する、④それぞれの行動手法に対する結

果を予想し、行っている間の利益が最も大きく利害関係者に与える負の影響が最小と

なるような目標を最も上手く達成し、かつ、適法である行動を選択する

Ⅲ.Ethics Training(倫理の養成)A.Creating an Ethical Culture(倫理文化の創始)B.Recommendations for Developing an Effective Ethics Training Program(効果的な倫理養成プログラム開発の推奨)①上手く倫理を養成する為の基本的なアプローチ

②倫理コードの構築に続く戦略

③解りやすい倫理の養成プログラムを展開させる実践的アドバイス

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資料3.The Public Company Accounting Reform and Investor      Protection Act of 2002(SOX法)第4章 財務開示の強化第406条 上級財務担当役員の倫理コード(a)倫理コードの開示

 委員会は各発行者に対して、1934年証券取引所法の第13条(a)または第15条(d)に基 づく定期報告書とともに、当該発行者が上級財務担当役員のための倫理コードを採択 したか、および採択していない場合には、その理由を開示することを義務づける規則 を公布しなければならず、また、その倫理コードは、主要財務担当役員およびコント ローラーもしくは主要経理担当役員、またはこれらと同等の職務遂行者に適用される ものとする。

(b)倫理コードの変更 委員会は、フォーム8-K(または後継のもの)上において迅速な開示を要求される事項 に関する規則を修正し、そこにおいて、発行者が、当該フォームによる提出やインタ ーネットを通じた配布、その他の電子的方法によって、上級財務担当役員のための倫 理コードの変更または免除について即時開示することを義務づけなければならない。

(c)定義 本条において「倫理コード」とは、以下を促進する上で合理的に必要とされる基準を 意味するものとする。 (1)個人的および職業的関係における事実上または明白な利益相反を倫理的に処理する

  ことを含む、誠実かつ倫理的な行動

 (2)発行者が提出すべき定期報告書を、完全、公正、正確、かつ適時に理解できる形式

  により開示すること、および

 (3)適用される政府規則・規制の遵守。

(d)規則制定の期限 委員会は、 (1)本条を施行するための規則を、本法の制定日から90日以内に提案し、かつ、

 (2)本条を施行するための最終規則を、本法の制定日から180日以内に公布するものと

  する。

(注)「委員会」とは、米国証券取引委員会(SEC)を意味する。

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資料4.欧米主要金融機関の倫理コード・行動規範一覧Ⅰ.Merrill Lynch & Co., Inc.「Guidelines for Business Conduct: Merrill Lynch’s Code of Ethics for Directors, Officers and Employees」 1.Conflicts of interest

 2.Corporate opportunities

 3.Confidentiality obligations

 4.Fair dealing

 5.Respect for the individual

 6.Safeguarding Merrill Lynch information, assets and property

 7.Compliance with law

 8.Merrill Lynch written and electronic communications

 9.Commitment to promoting ethical conduct: ethics hotline and confidential reporting

 10.Conclusion

 11.Merrill Lynch principles

Ⅱ.Lehman Brothers「Code of Ethics」 1.Understanding the code of ethics; accountability

 2.Reporting violations; protection against retaliation

 3.Personal conflict of interest

 4.Safeguarding firm and client property

 5.Compliance with laws, rules and regulations

 6.Equal employment opportunity

 7.Fair dealing

 8.Full, fair, accurate, timely and understandable disclosure

 9.Waives and amendments

Ⅲ.Morgan Stanley「Code of Ethics and Business Conduct」 1.Follow both the letter and the sprit of the law and Morgan Stanley policies

 2.Act in the best interests of clients, the firm, and the public

 3.Advance and protect the firm’s interests

 4.Prevent the misuse of inside information

 5.Be honest and fair in your communications with the public

 6.Maintain accurate books and records

 7.Treat others with dignity and respect

 8.Promote a sage and healthy working environment

 9.Enforcement and administration of the code of ethics

 10.Your personal commitment

Ⅳ.UBS Group「Code of Business Conduct and Ethics of the UBS Group」 1.Compliance with laws, rules and regulatons

 2.Confidentiality

 3.Integrity and conflicts of interest

 4.Competition and fair dealing

 5.Corporate opportunities

 6.Protection and proper use of UBS’s assets

 7.Reporting any violations of the code

 8.Waivers of this code

 9.Compliance procedure

Ⅴ.Citigroup「Code of Conduct」 1.Responsibilities to Citigroup

 2.Workplace responsibilities

 3.Presenting Citigroup to consumers and other external constituencies

 4.Privacy/ Confidentiality

 5.Investments and outside activities

 6.Other key legal/ Compliance rules and issues

 7.Useful address and telephone numbers

Ⅵ.Credit Suisse Group「Code of Conduct」 1.Our 12 core values as employee of Credit Suisse Group

 2.Purpose of the code of conduct

 3.General principles

 4.Employment practices

 5.Responsibility of employees

 6.Risk and capital management

 7.Sustainability

 8.Significant business issues

 9.Communication and supervision

 10.Reporting of violations

 11.Disciplinary measures

 12.Exceptions

 13.Continuous improvement

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資料5.FSA Handbook 「業務原則」1.統一性:認可業者は統一性をもってその事業を遂行しなければならない。2.技能、責任および注意義務:認可業者は十分な技能、責任および注意義務を  もってその事業を遂行しなければならない。3.管理および統制:認可業者は、十分なリスク管理システムを備えた上で、  確実かつ効果的にその業務を組織し、統制するよう合理的配慮を払わなけれ  ばならない。4.財務の健全性:認可業者は十分な財務資源を保持しなければならない。5.市場行為:認可業者は適切な市場行為基準を遵守しなければならない。6.カスタマーの利益:認可業者は、カスタマーの利益に十分配慮し、公正に  対応しなければならない。7.クライアントとの通信:認可業者はクライアントが必要としている情報に  十分配慮し、明確、公正かつ誤解を招かない方法で情報を伝えなければならない。8.利益相反:認可業者は、業者自身とカスタマー間、およびカスタマーと  クライアント間における利益相反を公正に管理しなければならない。9.カスタマーとの信頼関係:認可業者は、業者の判断を信頼するカスタマーに  対して、常に適切な助言および裁量的判断を行なうよう合理的配慮を払わ  なければならない。10.クライアントの資産:認可業者は、クライアントの資産に対する責任が  ある場合には、その資産を保護するための十分な措置を講じなければならない。11.規制機関との関係:認可業者は、規制機関と率直で協力的な関係を築き、  かつFSAが合理的に通知を期待している当該業者に関する事項を適宜FSA  に開示しなければならない。(注)顧客は一般顧客(private customer)、法人顧客(intermediate customer)、   金融機関(market counterparty)に分類され、その中でクライアントには   金融機関が含まれるが、カスタマーには含まれない。   各顧客の定義はFSA Handbookの第8節を参照。(出所)日本証券経済研究所『2005年版 図説イギリスの証券市場』第10章。

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資料6.FSA Handbook「原則ステートメント」1.承認された者は、その管理職務を遂行するに当たって、  統一性をもって行動しなければならない。2.承認された者は、その管理職務を遂行するに当たって、十分  な技能、責任および注意義務をもって行動しなければならない。3.承認された者は、その管理職務を遂行するに当たって、  適切な市場行為基準を遵守しなければならない。4.承認された者は、規制機関と率直で協力的な関係を築き、  かつFSAが合理的に通知を期待している情報を適宜FSAに  開示しなければならない。5.重大な影響を及ぼす職務を遂行する承認された者は、その者に  管理職務上の責任がある業務を効率的に管理できるよう組織化  する合理的な措置を講じなければならない。6.重大な影響を及ぼす職務を遂行する承認された者は、その者に  管理職務上の責任がある業務を十分な技能、責任および  注意義務をもって管理しなければならない。7.重大な影響を及ぼす職務を遂行する承認された者は、その者に  管理職務上の責任がある業務に対して課されている規制要件  および基準を遵守するよう合理的な措置を講じなければならない。(出所)日本証券経済研究所『2005年版 図説イギリスの証券市場』第10章。

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資料7.「証券会社の倫理規定に関するアンケート調査」結果報告 平成18年11月17日

[回答のあった証券会社数] 国内証券会社 外資系証券会社※

全 体 244社 64社

回答者数 (回答率)

160社 (65.6%)

46社 (71.9%)

※外資系証券会社には、外国証券業者を親会社等として有する本邦証券会社を含む

[調査概要] アンケート期間:平成18年10月17日~10月31日

回 答 方 法:FAXまたはメール

対象証券会社数:308社(平成18年10月17日現在)

回 答 社 数:206社(回答率66.9%)

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[調査結果] 質問内容:(Q1)倫理規定の有無についてお聞きします。

選 択 肢:①ある

②ない

回答結果とその内訳

①あり ②なし

全 体 103 103

国 内 66 94

外 資 37 9

Q1 回答結果(全体)

②なし10350%

①あり10350%

Q1 回答結果(国内)

①あり

66

41%

②なし

94

59%

Q1 回答結果(外資)

①あり

37

80%

②なし

9

20%

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(Q2)倫理規定のある会員への質問 質問内容:(1)倫理規定の名称は何ですか。

選 択 肢:①倫理規定

②倫理綱領

③行動規範

④その他の名称

回答の内訳 注:複数回答を含む。

①倫理規定 ②倫理綱領 ③行動規範 ④その他

全 体 11 12 28 59

国 内 8 8 13 42

外 資 3 4 15 17

(1)回答結果(全体)

③行動規範

28

25%

④その他

59

54%

①倫理規定

11

10%

②倫理綱領

12

11%

(1)回答結果(国内) ①倫理規定

8

11%

②倫理綱領

8

11%

③行動規範

13

18%

④その他

42

60%

(1)回答結果(外資)

④その他

17

44%

③行動規範

15

38%

①倫理規定

3

8%②倫理綱領

4

10%

その他の名称の例(抜粋)

国内

• コンプライアンスマニュアル、又はこれに近い名称:16社

• 社名の入るもの(例:ABC証券綱領):14社

• ①~③に酷似する名称(例:従業員倫理規程、倫理行動規範):5社

外資

• ①~③の英訳、又は酷似する名称(例:Code of conduct、倫理規範):9社

• コンプライアンスマニュアル、又はこれに近い名称:3社

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質問内容:(2)倫理規定の位置付けは何ですか。

選 択 肢:①社内規則

②その他

回答結果とその内訳 注:複数回答を含む。

①社内規則 ②その他

全 体 72 34

国 内 45 22

外 資 27 12

(2)回答結果(全体)

①社内規則

72

68%

②その他

34

32%

(2)回答結果(国内)

②その他

22

33%

①社内規則

45

67%

(2)回答結果(外資)

①社内規則

27

69%

②その他

12

31%

その他の回答例(抜粋)

• 社内規定の上位:2社

• コンプライアンスマニュアル、又はこれに近いもの:4社

• グループ会社共通の規則、規範:4社

• 経営姿勢や経営理念

• 業務、社内マニュアル

• グループ会社共通の規則、ポリシー:5社

• グローバルでの規則・ポリシー:3社

• コンプライアンスマニュアル、又はこれに近いもの:3社

• 基本規定の一つ

• 行為規範

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質問内容:(3)倫理規定の様式はどのようになっていますか。

選 択 肢:①独立した一個の規定

②コンプライアンス・マニュアル等、以下に掲げる他の社内規則・内規に含められている。

③その他

回答結果とその内訳

①独立 ②規則の一部 ③その他

全 体 55 46 2

国 内 35 30 1

外 資 20 16 1

(3)回答結果(全体)

①独立

55

53%

②規則の

一部

46

45%

③その他

2

2%

(3)回答結果(国内)

①独立

35

53%

③その他

1

2%

②規則の

一部

30

45%

(3)回答結果(外資)

①独立

20

54%

②規則の

一部

16

43%

③その他

1

3%

②の回答例(抜粋)

国内

• コンプライアンスマニュアル、又はこれに近いもの:20社

• 従業員服務規程、従業員規則など:9社

• 経営理念

外資

• コンプライアンスマニュアル、又はこれに近いもの:6社

• 従業員服務規程

• 経営理念、企業方針

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質問内容:(4)倫理規定の内容について

選 択 肢:①証券業協会の「倫理綱領(平成3年8月23日)」に準じた内容

②当社独自の倫理規定

③グループ又は親会社等の倫理規定

④その他

回答結果とその内訳 注:複数回答を含む。

①協会の綱領 ②独自 ③グループ ④その他

全 体 34 44 33 7

国 内 29 30 12 3

外 資 5 14 21 4

(4)回答結果(全体)

①協会の綱領

34

29%③グループ

33

28%

④その他

7

6%

②独自

44

37%

(4)回答結果(国内)

②独自

30

41%

③グループ

12

16%

④その他

3

4%

①協会の

綱領

29

39%

(4)回答結果(外資)

②独自

14

32%③グループ

21

48%

④その他

4

9%

①協会の

綱領

5

11%

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質問内容:(5)役職員への周知徹底の方法はどのように行っていますか。

選 択 肢:①入社時に説明のうえ、宣誓書を入れる。

②定期的に社内で研修・説明会等を開催する。

③その他

回答結果とその内訳 注:複数回答を含む。

①入社時宣誓 ②定期研修 ③その他

全 体 48 39 39

国 内 23 27 31

外 資 25 12 8

(5)回答結果(全体)

①入社時宣誓

48

38%

③その他

39

31%

②定期研修

39

31%

(5)回答結果(国内)

③その他

31

39%

②定期研修

27

33%

①入社時

宣誓

23

28%

(5)回答結果(外資)

②定期研修

12

27%

①入社時

宣誓

25

55%

③その他

8

18%

その他の回答例(抜粋)

国内

• 社内やイントラネットへの掲示

• 規則集の配付

• 記載されたカードの配付と、その常時携帯

外資

• 定期的な配付、通読

• イントラネットへの掲載

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質問内容:(6)倫理規定に違反した場合のペナルティ(社内処分等)はありますか。

選 択 肢:①ある(具体的内容: )

②ない

回答結果とその内訳

①あり ②なし

全 体 69 34

国 内 42 24

外 資 27 10

(6)回答結果(全体)

①あり

69

67%

②なし

34

33%

(6)回答結果(国内)

①あり

42

64%

②なし

24

36%

(6)回答結果(外資)

②なし

10

27%

①あり

27

73%

処分の具体的内容

国内、外資系証券ともに、「事例ごとに就業規則や懲罰規定に従い処分」という旨の回答が大多数。

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質問内容:(7)倫理規定を公表していますか。

選 択 肢:①公表している。(具体的方法: )

②公表していないが、求められた場合には掲示する。

③公表しない。(公表しない理由: )

回答結果とその内訳

①している ②してもよい ③しない

全 体 17 55 31

国 内 14 35 17

外 資 3 20 14

(7)回答結果(全体)①している

17

17%③しない

31

30%

②しても

よい

55

53%

(7)回答結果(国内)

①している

14

21%

③しない

17

26%

②しても

よい

35

53%

(7)回答結果(外資) ①している

3

8%

③しない

14

38%

②しても

よい

20

54%

公表方法

国内、外資系証券ともに、ホームページ、または店頭に掲示が大多数。

公表しない理由

国内、外資系証券ともに、「内部関係者向けの規定であるため」という旨の回答が大多数。

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(Q3)倫理規定のない会員への質問 質問内容:(1)倫理規定を有していない理由は何ですか。

選 択 肢:①証券業協会の「倫理綱領(平成3年8月23日)」があるから。

②法令・規則を遵守するための社内規則で足りるから。

③その他

回答結果とその内訳 注:複数回答を含む(回答①と②を同時に選択した場合は除く)。

①協会の綱領 ②社内規則 ③その他 回答①②

全 体 38 50 7 11

国 内 35 44 7 11

外 資 3 6 0

(1)回答結果(全体)

①協会の綱領3836%

③その他77%

②社内規則5047%

①②両方1110%

(1)回答結果(国内)

③その他

7

7%

①②両方

11

11%

①協会の

綱領

35

36%

②社内規則

44

46%

(1)回答結果(外資)

②社内規則

6

67%

①協会の

綱領

3

33%

その他の回答例(抜粋、国内証券)

• 設立して間もない会社であり、現在作業中であるため

• 極めて少人数の組織であり、コンプライアンス管理が可能なため。

• IOSCOの行為規範原則があるため

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質問内容:(2)今後、倫理規定を策定する予定はありますか。

選 択 肢:①現在、検討中である。

②近く、検討を開始する予定。

③今後、証券業協会が策定する「倫理規定」を踏まえ、対応を検討する。

④対応する予定はない。

⑤その他

回答結果とその内訳

①検討中 ②近く検討 ③今後検討 ④予定なし ⑤その他

全 体 5 4 76 18 0

国 内 5 3 72 14 0

外 資 0 1 4 4 0

(2)回答結果(全体)

④予定なし

18

17%

①検討中

5

5% ②近く検討

4

4%

③今後検討

76

74%

(2)回答結果(国内)

④予定なし

14

15%

①検討中

5

5%

②近く検討

3

3%

③今後検討

72

77%

(2)回答結果(外資)

②近く検討

1

11%

③今後検討

4

45%

④予定なし

4

44%

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資料8. 平成3年版:倫 理 綱 領

日 本 証 券 業 協 会

(平成 3 年 8 月 23 日)

我々は、証券界が証券市場の仲介機能という重い責任を負託されていることを十分に認識し、証券

会社の業務遂行に関する基本的な心構えとして倫理綱領を定め、その遵守を宣言することとする。

第1 証券市場の担い手としての社会的使命の自覚

国民経済における資金の運用・調達の場である証券市場の担い手としての証券会社の社会的使

命を再認識し、証券市場の健全な発展に努力する。

第2 顧客の立場に立った誠実・公正な業務遂行

常に顧客のニーズ、利益を重視し、顧客の立場に立って、誠実かつ公正に業務を遂行する。

第3 個人投資家を大切にする営業姿勢

証券市場における個人投資家の重要性に鑑み、その投資目的、知識、資産状況等に適合した投

資勧誘を行うとともに、個人投資家が不利な立場に置かれないよう、正確な情報・データに基づく客

観的な投資情報の提供に努力する。

第4 証券取引ルールの遵守

投資者の保護や取引の公正性を確保するための法令・規則等証券取引ルールを厳格に遵守す

る。また、適切な投資勧誘と投資者の自己判断に基づく取引に徹することにより、自己責任原則の

確立に努める。

第5 国民から信頼される職業人としての倫理意識

証券会社の役職員一人ひとりが、職業人として国民から信頼される健全な社会常識と倫理感覚を

常に保持できるよう、不断の研鑚に努める。

第6 証券市場の国際化に対応した意識改革の推進

我が国証券市場を透明性のある、真に国際的に通用する市場に高めるため、役職員の意識改革

を推進する。

第7 自主的な内部管理監視機能の確立

証券取引ルール遵守の徹底のため、会社自らの自浄作用を最大限発揮しうるよう、内部管理体

制や業界の自主的な監視機能を確立し、ルール違反等に対し厳しく対応する。

参考資料

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【巻末添付資料】 モデル倫理コードおよび行動規範の位置付け

【現行】

【本報告書】

平成 3 年倫理綱領

法令

社内規則

倫理規程

自主規制規則

モデル倫理コード

a~m

法令 自主規制規則

倫理コード

a~m

社内規則

行動規範

協会 証券会社

自己規律により判断が求め

られる部分