次世代地熱発電技術の全体像と その位置づけ -...
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次世代地熱発電技術の全体像とその位置づけ
米倉 秀徳
2016年6月3日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術戦略研究センター 再生可能エネルギーユニット
Technology Strategy Center
2
1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
Technology Strategy Center
組織概要
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構New Energy and Industrial Technology Development Organization
日本最大級の公的研究開発マネジメント機関• 職員数約900名(平成28年4月現在)• 平成28年度予算1,298億円
NEDOのミッション・エネルギー・地球環境問題の解決・産業技術力の強化
33
Technology Strategy Center
平成28年度NEDO予算額
4
技術シーズの発掘 実用化促進事業関連ナショナルプロジェクト関連
22億円
1,208億円
1億円
一般管理費67億円
25億円
NEDO 1,298億円 [1,319億円]
●京都メカニズムクレジット取得事業●地球温暖化対策技術普及等推進事業(再掲)
●新エネルギー分野431億円[462億円]
●電子・情報通信分野142億円[124億円]
●境界・融合分野 1億円 [1億円]
●バイオテクノロジー分野0億円[0億円]
●新製造技術分野20億円[0億円]
●材料・ナノテクノロジー分野135億円[118億円]
●環境・省資源分野23億円[25億円]
●省エネルギー分野108億円[97億円]
●ロボット技術分野65億円[44億円]
●国際展開支援70億円[207億円]
(地球温暖化対策技術普及等推進事業を含む)
●蓄電池・エネルギーシステム分野48億円[70億円]
●クリーンコールテクノロジー(CCT)分野166億円[68億円]
地球温暖化対策
[33億円] [1,215億円] [1億円]
※1 補正予算及び戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を除く。※2 端数処理の関係で合計と内訳が一致しない。
[69億円]
[31億円]提案公募(再掲)46
億円 [38億円]
※3 提案公募は、エネルギー・環境新技術先導プログラム、新エネルギーベンチャー技術革新事業の2事業。
[ ]:平成27年度予算
Technology Strategy Center
組織図
5平成28年4月時点
Technology Strategy Center
技術戦略研究センター長
川合 知二(大阪大学
産業科学研究所 前所長)
技術戦略研究センター(TSC)の概要
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技術戦略研究センター(Technology Strategy Center)は、調査・研究を通じて、「産業技術分野」と「エネルギー・環境技術分野」の技術戦略の策定、及び戦略に基づくプロジェクトの企画・構想等に取り組む研究機関。(平成26年4月設立)
調整課
企画課
プロジェクトマネジメント室
マクロ分析ユニット
標準化・知財ユニット
電子・情報・機械システムユニット
ナノテクノロジー・材料ユニット
エネルギーシステム・水素ユニット
再生可能エネルギーユニット
環境・化学ユニット
新領域・融合ユニット(IT・ロボット)(バイオ技術)
Technology Strategy Center
フェロー紹介
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専門領域:資源開発工学、環境海洋工学
産業技術総合研究所 理事
安永 裕幸専門領域:プロセス工学千葉大学 特任教授
沼口 徹専門領域:産業政策青山学院大学法学部教授
菊池 純一専門領域:イノベーション政策政策研究大学院大学政策研究課 教授
後藤 晃
専門領域:環境工学、大気汚染、触媒化学産業環境管理協会技術顧問
指宿 堯嗣専門領域:触媒産業技術総合研究所理事
島田 広道専門領域:材料科学、
環境科学製品評価技術基盤機構名誉顧問
安井 至専門領域:触媒化学、工業触媒アイシーラボ代表神奈川大学非常勤講師早稲田大学招聘研究員
室井 高城
専門領域:半導体・ 集積回路システム
元株式会社半導体理工学研究センター 代表取締役社長
中屋 雅夫専門領域:化合物半導体
デバイス元住友電気工業フェロー
林 秀樹
専門領域:電気材料大阪大学産学連携本部副本部長
北岡 康夫
専門領域:エネルギーシステム・電力系統
東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター特任教授
荻本 和彦専門領域:エネルギー工学・
エネルギー政策エネルギー総合工学研究所研究部長
黒沢 厚志専門領域:人工知能はこだて未来大学理事長学長
中島 秀之専門領域:ロボット工学カーネギーメロン大学教授
金出 武雄専門領域:産婦人科学山口大学 名誉教授
加藤 紘専門領域:生化学産業技術総合研究所フェロー
湯元 昇
専門領域:金属材料(兼)東京大学 特任教授物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 拠点長補佐
出村 雅彦
平成28年4月現在 ( )内は専門領域
Technology Strategy Center
重要分野の技術戦略を策定するとともに、技
術戦略に基づくプロジェクトを企画・構想。
『TSC Foresight』 の公表及びセミナー等を通
じて、産学官の対話を促進。
我が国のイノベーションを牽引し、産業に橋
渡し。経済成長の加速を志向。
技術戦略研究センター(TSC)のミッション
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Technology Strategy Center
技術戦略の策定方針
「フォーキャスティング」と「バックキャスティング」及び「ポジション分析」を組み合わせた俯瞰的視点に基づく調査・分析により、重点的に取り組むべき技術分野を選定
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バックキャスティング
フォーキャスティング
技術開発課題抽出
技術分野抽出
社会課題抽出
重点課題抽出
社会的・産業的課題と要請
各ユニットに関わる重点課題
Technology Strategy Center
ポジション分析の視点
技術 市場
日本の政策(日本再興戦略、科学技術
イノベーション総合戦略等)
グローバル市場の動向(日本企業の国際競争ポジションに関する調査(NEDO)等)
先端技術の動向(学会、論文発表動向、産学とのワークショップ等)
企業・機関の動向(特許出願動向等) 重要分野
日本のエネルギー政策(エネルギー基本計画等)
社会・産業ニーズ
世界各国の政策動向(米国、EU、中国、韓国等)
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Technology Strategy Center
技術戦略の策定分野
調査結果の一部を『技術戦略研究センターレポート TSC Foresight』として公開。 (NEDO HP http://www.nedo.go.jp/introducing/foresight.html)
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ナノテクノロジー・材料分野
再生可能エネルギー分野
■ ナノカーボン材料■ 機能性材料
■ 太陽光発電■ 地熱発電
(平成28年 6月27日 公表予定)
新領域・融合分野
電子・情報・機械分野
■ コンピューティング/物性・電子デバイス■ パワーレーザー
■ ロボット(先端要素技術)■ 人工知能(AI)
平成27年11月12日(木) 第3回セミナーと同時に公表
平成27年10月19日(月)第1回セミナーと同時に公表
エネルギーシステム・水素分野
■ 水素■ 超電導■ 車載用蓄電池
■ 地球環境対策(フロン)
平成27年10月30日(金) 第2回セミナーと同時に公表
環境・化学分野
Technology Strategy Center
TSC Foresight の構成
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記載項目
1.技術の概要
2.技術の置かれた状況
・世界・国内市場規模、市場予測、シェア
・産業動向
・特許分析
・論文分析
・諸外国の研究開発動向
3.技術課題
・技術の体系化
・ポジション分析
・技術課題やブレークスルー要素
Technology Strategy Center
13
1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
TSC Renewable Energy Unit
従来型地熱発電
表層もしくはマグマ等から供給された水分が、高温の地層内のキャップロック下等に蓄積した場所を地熱貯留層といい、現在実用化している地熱発電はこれらの天然の蒸気・熱水資源を活用したもの。
14出典:地熱資源開発の現状(経済産業省, 2012)
TSC Renewable Energy Unit
EGSの定義(NEDO地熱技術戦略内用)
15
脆性域高温岩体利用
• 岩盤内(脆性岩体領域)に水圧破砕等により人工的に貯留層を新たに造成
人工涵養
• 既存の貯留層に水を注入
貯留層拡張・透水性改善
• 坑井刺激により既存の貯留層の拡張、透水性の改善、周辺の天然貯留層との連結等を行う
超臨界流体利用
•マグマ起源の超臨界流体を利用
マグマ熱の直接利用
•マグマの熱を熱交換等で直接利用
水の注入のみ 坑井刺激有り 場合によって水圧破砕/水圧刺激有り
既存熱水系(貯留層)利用 新規貯留層造成 既存熱水系(超臨界流体)利用
熱水系利用無し(熱のみ利用)
水圧破砕/水圧刺激技術別路線
超高温対応
水の注入
貯留層モデル
主な技術的差異
天然地熱貯留層利用
• 既存の地熱貯留層から吹き出る蒸気・熱水をそのまま利用
水の圧入無し(還元井のみ)
人工涵養
延性域高温岩体利用
•延性岩体領域に孤立型の貯留層を新たに造成
超臨界流体対応発電システム
別路線
蒸気発電 or バイナリー発電エ
ネルギー変換技術
資源開発技術
トータルフロー発電
深部地熱資源利用(脆性-延性境界以深の地熱利用)
高温
度低
従来型地熱発電涵養型EGS
(EGS Type1)能力増進型EGS(EGS Type2)
脆性域高温岩体発電(EGS Type3)
超臨界地熱発電(EGS Type5)
マグマ発電(EGS Type6)
蒸気発電
バイナリー発電
EGS(Engineered / Enhanced Geothermal System)
延性帯での貯留層造成高温対応
延性域高温岩体発電(EGS Type4)
類似
浅部地熱資源利用(脆性-延性境界以浅の地熱利用)
出典:NEDO技術戦略研究センター作成(2015)
TSC Renewable Energy Unit
EGSの定義(イメージ)
16
基板岩(硬質で透水性が低い岩盤)
1.5~2km200~350℃
2.5~5km
3~ km350℃
3~6km400~600℃
延性領域
Type1:涵養型EGS(涵養注水)ガイザース柳津西山
天然熱水系
Type3:脆性域高温岩体発電(高透水性)肘折,雄勝
Type3:浅部高温岩体発電(低透水性)
既存亀裂(透水性有)
既存亀裂(低透水性)
Type4:延性域高温岩体発電
(延性領域での人工貯留層造成)
Type5:超臨界地熱発電(プレートテクトニクス起源の超臨界流体の利用)
キャップロック
Type2:能力増進型EGS(天然熱水系との接続)Desert Peak
堆積岩変成岩
Type3:浅部高温岩体発電(堆積岩中での亀裂造成)Groß Schönebeck
出典:産業技術総合研究所作成資料を基にNEDO技術戦略研究センター作成(2015)
TSC Renewable Energy Unit
涵養型EGS(EGS Type1)
涵養型EGSとは、涵養井を用いて人工的に涵養することで、生産井からの蒸気・熱水資源生産量を回復・向上させることを目指した技術。
蒸気・熱水の生産量低下の原因には、①水の減少、②貯留層内の構造変化(目詰まり等)及び③温度の低下等があるが、涵養型EGSは①水の減少による生産量低下に効果的な手法。これまでに、ガイザーズ(米国)、柳津西山(日本)等でその効果の検証が進められている
17
出典:JOGMEC資料
※ 涵養(かんよう)地表の水が、地下の地層(帯水層または貯留層)に浸透する現象
出典:地熱発電技術研究事業に関する資料(JOGMEC, 2013)掲載図を参考にNEDO 技術戦略研究センター作成(2016)
涵養型EGSのイメージ図
TSC Renewable Energy Unit
能力増進型EGS (EGS Type2)
能力増進型EGS とは、高圧の水等を用いて坑井刺激(水圧破砕あるいは水圧刺
激等)を行い、既存貯留層の透水性を改善したり、周辺の貯留層と連結することで貯留層を拡大したりする技術。能力増進型EGSでは、地下の地熱貯留構造の改善を図ることにより、失敗井の
活用や、生産量・還元量が低下した坑井の改善効果などが期待されている。これまでに、デザートピーク(米国)等でその効果の検証が進められている。
19出典:地熱発電技術研究事業に関する資料(JOGMEC, 2013)掲載図を参考にNEDO 技術戦略研究センター作成(2016)
能力増進型EGSのイメージ図
TSC Renewable Energy Unit
脆性域高温岩体発電(EGS Type3)
高温の岩体に人工的に水を圧入して亀裂を発生させ、人工的に地熱貯留層を造成。地熱資源開発に必要とされた、①熱源、②貯留構造、③水の内、②地質構造と③水の2つを人工的に作ることが可能となるため、そのポテンシャルも多いと考えられている(NEDOが資源調査をした地点の合計値で29,000MWe。全体のポテンシャルに係る正確な数値は不明)。
過去に肘折・雄勝(日本)や、フェントンヒル(米国)等で検証実験が行われている。
21
地熱貯留層
• 高温岩体発電で利用可能
• 涵養型EGSで利用可能
• 能力増進型EGSで利用可能
• 従来型地熱発電で利用可能• 涵養型EGS/能力増進型EGSで経済性が向上
TSC Renewable Energy Unit
NEDOにおける高温岩体発電関連プロジェクト(1984~2003)
各種要素技術開発及び山形県(肘折)での実証試験を実施。実証試験では、約2000m深の坑井を計4本(注入井2本、生産井2本)掘削し、深さの異なる2段の人口貯留層を造成、水の循環試験を行った。1年半の長期循環実験を行い、最大で10MWt(熱ベース)の熱を抽出。小規模な発電機(50kWe)を設置し、発電実験も行った。
22出典:熱水利用発電プラント等開発 高温岩体発電システムの技術開発(要素技術の開発) 総括成果報告書(NEDO, 2003)
肘折高温岩体発電システムの概念図バイナリ―発電設備
TSC Renewable Energy Unit
延性域高温岩体発電(EGS Type4)
延性域高温岩体は、延性領域(より深く、高温)で行う高温岩体発電。水の回収率を抜本的に改善できる(逸水がほぼなくなる)可能性があるとともに、その岩石の物性から、亀裂造成時の振動を伝えにくいと考えられている 。現在は基礎研究段階で、実証試験等は行われていない。
24
Type4:深部高温岩体発電
(延性領域での人工貯留層造成)
基板岩(硬質で透水性が低い岩盤)
2.5~5km
3~6km400~600℃
延性領域
水の回収率が低い
熱量が小さい
亀裂造成時の振動
低逸水 高温発生しない
(?)
TSC Renewable Energy Unit
超臨界地熱発電(EGS Type5)
26
基板岩(硬質で透水性が低い岩盤)
1.5~2km200~350℃
2.5~5km
3~ km350℃
3~6km400~600℃
延性領域
Type1:涵養型EGS(涵養注水)ガイザース柳津西山
天然熱水系
Type3:浅部高温岩体発電(高透水性)肘折,雄勝
Type3:浅部高温岩体発電(低透水性)
既存亀裂(透水性有)
既存亀裂(低透水性)
Type4:深部高温岩体発電
(延性領域での人工貯留層造成)
Type5:超臨界地熱発電(プレートテクトニクス起源の超臨界流体の利用)
キャップロック
Type2:能力増進型EGS(天然熱水系との接続)Desert Peak
堆積岩変成岩
Type3:浅部高温岩体発電
(堆積岩中での亀裂造成)Groß Schönebeck
我が国を代表とする沈み込み帯の延性域(マグマに近い領域)では、プレートテクトニクスによって地下に引き込まれた海水に起因する水分が、マグマの周辺に高温・高圧(超臨界状態)で賦存していると考えられている。超臨界地熱発電は、この地熱資源を活用しようというもの。NEDOのエネルギー・環境新技術先導プログラム(平成26年度~27年度)にて、基礎的な検証を開始。2016年6月27日NEDO TSCフォアサイトセミナーにて、結果の一部を紹介予定
TSC Renewable Energy Unit
なぜ次世代地熱発電なのか(地熱発電特有の課題)
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課題 詳細
(1)開発リスク
地熱資源を確認するには、一連の事前調査・開発プロセスが必要であり、蒸気・熱水が得られなかった場合にはこの期間の費用は、無駄になるリスクを秘めている 。また、他の再エネに比べて開発期間が長いことも課題の一つ。
(2)減衰リスク
地下の貯留層内の蒸気・熱水は生産と供給のバランスがとれなくなると減衰し、圧力の低下(水・熱の減少)、温度の低下(熱の減少)、貯留層内沸騰過熱化(水の減少)等が発生する場合がある。貯留層や坑井内にスケールが蓄積することによって内部につまりが発生し、減衰する(せざるを得ない)こともある。
(3)経済性 現在の我が国における地熱発電の発電コストは、現在普及している蒸気発電型(30MWモデルプラント)で約11円/kWh程度。発電コストは地点によって異
なり、発電コストの高い地域への導入を進めるためには、発電コストを低減させていくことが重要。
(4)導入可能量
導入ポテンシャルは2,370万kWに及ぶが、資エ庁の試算*では、「環境規制の
緩和を想定した開発を見込み、中・小規模開発について、今後も開発が順調に進行すると想定した場合」でその導入可能量は140万kW(既設含む) となる。
(5)社会受容性
地熱ポテンシャルの約8割が国立公園内に賦存。また、地熱発電資源がある
場所の周辺は温泉地となっている場合もあり、地熱発電の導入に当たっては、自然環境や地元産業との共存を図っていく必要がある。
*第4回長期エネルギー需給見通し小委員会配付資料
TSC Renewable Energy Unit
なぜ次世代地熱発電なのか(減衰リスクへの対応)
地熱発電所の発電量は1997年のピーク時に比べ約3割減少高度貯留層評価技術、スケール対策技術に加え、涵養型EGSや能力増進型EGS技術もこれらの減衰リスク低減に貢献しうる。
28
約3割減
出典:NEDO再生可能エネルギー技術白書
TSC Renewable Energy Unit
なぜ次世代地熱発電なのか(導入可能量)
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基板岩(硬質で透水性が低い岩盤)
1.5~2km200~350℃
2.5~5km
3~ km350℃
3~6km400~600℃
延性領域
Type1:涵養型EGS(涵養注水)ガイザース柳津西山
天然熱水系
Type3:浅部高温岩体発電(高透水性)肘折,雄勝
Type3:浅部高温岩体発電(低透水性)
既存亀裂(透水性有)
既存亀裂(低透水性)
Type4:深部高温岩体発電
(延性領域での人工貯留層造成)
Type5:超臨界地熱発電(プレートテクトニクス起源の超臨界流体の利用)
キャップロック
Type2:能力増進型EGS(天然熱水系との接続)Desert Peak
堆積岩変成岩
Type3:浅部高温岩体発電(堆積岩中での亀裂造成)Groß Schönebeck
出典:産業技術総合作成資料をもとにNEDO技術戦略研究センター作成(2016)
脆性域高温岩体発電
2,900万kW(一部)
延性域高温岩体発電 / 超臨界地熱発電
???万kW
従来型地熱発電
ポテンシャル
2,350万kW既存地熱発電所
52万kW
TSC Renewable Energy Unit
次世代地熱発電技術の位置づけ
30
従来型地熱発電が抱え
る課題
従来型地熱発電技術をベースとした改善(共通基盤技術)
涵養型EGS 能力増進型EGS 高温岩体発電(脆性/延性)
超臨界地熱発電
抜本的新要素技術小規模低温利用
(ⅰ)開発リスクの低減
○
•調査・探査・掘削技術の高度化によってある程度のリスクを低減可能
•調査・探査・環境アセス短縮を通じてリードタイムの低減が可能
◎
•既湧出の未利用蒸気・熱水を利用するためリスク低
○
・掘削後、熱水資源量を改善出来るため、開発リスクが低減。
○
•掘削後、熱水資源量及び貯留構造を改善できるため、開発リスクが低減。
○
•貯留層を高精度にコントロールできれば開発リスクは低減。••掘削の結果、予定していた岩盤構造と異なっていた場合などのリスクが残る。
-
・より高度な探査技術が必要となる。
革新的高精度探査・モニタリング技術
◎
•地下構造をほぼ確実に把握可能な技術。開発リスク低減に大きく寄与。現時点で技術シーズ無し。
(ⅱ)減衰リスクの低減
○
•貯留層モニタリング技術の高度化及び生産・還元技術の高度化(スケール対策含む)によって減衰リスクを低減可能
-
(利用する熱源に依って異なる)
◎
•地熱流体採取による減衰に効果有り
◎
•貯留層の透水性悪化等に効果有り。
○
•貯留層管理が厳密に行える技術が確立すれば◎ -
天然の地下の超臨界水を利用するため、従来型同様減衰リスクが発生する可能性がある。
(ⅲ)経済性の向上(発電コストの
低減)
○
•開発コストの低減及び減衰の防止等による生産量増大によって発電コストの低減が可能
•掘削機器の稼働率の向上によって掘削コストを低減可能•(再掲)リードタイムの短縮により低減可能
-
•低減余地はあるが大規模地熱の水準まで下がる見込みは乏しい
○
•減衰率の低下により、経済性が向上が期待される(ただし、投資額以上の効果が出るよう技術開発が必要)
○
•減衰率の低下により、経済性が向上が期待される(ただし、投資額以上の効果が出るよう技術開発が必要)
?
•天然熱水系を利用するものよりも容量を小さくせざるを得ない可能性があること等から、経済性に優れるかどうか、検証が必要。
?
•経済性に優れるかどうかの検証が必要。
革新的低コスト掘削技術
◎
•初期コストを大幅に低減可能な技術。現時点で技術シーズ無し。
(ⅳ)設置可能容量の増
加△
•強酸性対策技術の確立により、利用できなかった坑井が利用可能になる。ただし増加分は微量 △
•件数は増加するが容量としての増加分は微量
- - △
•コンセプト的には貯留層の改善によって設備容量が増加可能。ただしどの程度使えるかは見定めが必要
?(◎)
•高温岩体に適した地点がどの程度あるか検証が必要。 ?
(◎)
•膨大な量のエネルギー資源が存在する可能性もあるが、未だ未確認。 - -
(ⅴ)社会受容性の向上
○
•環境影響評価技術、環境に配慮した機器開発、環境保全対策技術の高度化等によって環境影響の低減及び社会受容性の向上が可能。
◎
•既湧出の未利用蒸気・熱水を利用することで新規開発に伴うトラブルを防止可能。
-
•地下微少振動原理の解明と対策に向けた研究が必要
-
•地下微少振動原理の解明と対策に向けた研究が必要
-
•地下微少振動原理の解明と対策に向けた研究が必要
?
•環境影響について調査・研究が必要。
- -
【期待度(従来技術との比較)】◎:大幅に改善 ○:改善可能 △:効果は小さいが改善/場合によって改善 -:改善効果無し./ 不明 ?:現時点では判断不能
+約100万kWの実現(導入可能量の精緻化)
~従来型改善+涵養・能力増進EGS技術~更にその先へ(導入ポテンシャルの推定)
~地熱フロンティアへの挑戦~既導入量:52万kW
2030年
Technology Strategy Center
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1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
TSC Renewable Energy Unit
各国の地熱発電取り組み状況
ポテンシャル(資源量)【MW】
累積設備容量(2015年)
2010年からの設備容量増加量 設備容量/ポテ
ンシャル【%】EGS関連研究開発実施状況 タイプ分け
順位 【MW】 順位 【MW】
アメリカ 30,000 ① 3,450 ② 352 12 涵養型EGS、能力増進EGS、浅部高温岩体 C
フィリピン 6,000 ② 1,870 -34 31 - A インドネシア 27,790 ③ 1,340 ⑤ 143 5 - A
メキシコ 6,000 ④ 1,017 59 17 - A ニュージーランド 3,650 ⑤ 1,005 ④ 243 28 - A
イタリア 3,267 ⑥ 916 74 28 涵養型EGS C アイスランド 5,800 ⑦ 665 90 11 深部高温岩体、超臨界地熱発電 C
ケニア 7,000 ⑧ 594 ① 392 8 - A 日本 23,470 ⑨ 519 -16 2 涵養型EGS、能力増進EGS、深部高
温岩体、 超臨界地熱発電 C トルコ 4,500 ⑩ 397 ③ 306 9 - A ドイツ - 27 20 - 能力増進EGS/浅部高温岩体 B
フランス - 16 - - 能力増進EGS/浅部高温岩体 B オーストラリア - 1 1 - 浅部高温岩体 B
韓国 - 0 - - 浅部高温岩体 B スイス - - - - 浅部高温岩体 B
32
A:現在従来型地熱の導入を大きく推進しており、今後もまずは従来地熱の導入を進める。B:従来地熱ポテンシャルに乏しいため、EGSにより地熱発電の導入を進める。C:従来型地熱についても導入を進めるが、それに加えてEGSについても研究開発を進め、更なる導入量拡大を目指す。
出典: Geothermal Power Generation in the World 2010-2014 Update Report (Bertani, 2015)等をもとにNEDO技術戦略研究センター作成
TSC Renewable Energy Unit
各国の取り組み(米国)
米国では、従来型地熱発電の導入に限らず、EGSに関する取り組みも積極的に行われている。
33既存のEGSプロジェクトとInfield、Nearfieldのイメージ
(出典: DOE説明資料)
Type2
Type2
Type2
Type1
Type3
TSC Renewable Energy Unit
各国の取り組み(アイスランド)
アイスランドのクラフラにおいては、IDDP(The Iceland Deep Drilling Project)と呼
ばれる、従来型地熱に比べ高温な深部地熱資源を利用して、安い電力を大量に作ることを目的とした実証事業が実施されている。現在、これに続くプロジェクトとして、IDDP2の計画が検討されている。
34
IDDPプロジェクト事業概要(出典:Orkustofnun社HP)
IDDP1より高温の蒸気が噴出している様子(出典:WGC2015要旨集、Guðmundur Ómar Friðleifsson氏)
TSC Renewable Energy Unit
各国の取り組み(欧州)
フランスのソルツにおいては、1987年から調査が始められ、1995年に天然の貯留層をもとに水圧破砕による貯留層の造成に成功。その後循環試験を経て、2008年からは1.5MWのバイナリー発電での発電を実施している。
スイスのバーゼルにおいては、天然の貯留層を利用せずに、水圧破砕による貯留層造成を実施したが、その際に誘発地震が発生したため2006年に計画を中止。その後住民投票が行われ、ザンクトガ
レンにて計画が再開されたが、予定した程の熱が取れず事業は中断した。その後も検討は続けられており、現在もEGSに関する研究開発が行われている。
35スイスの地熱発電成長シナリオ
(出典:WGC2015要旨集、Roland Wyss and Katharina Link氏)
フランス ソルツ(Soultz-Sous-Forets)のEGSプロジェクト(出典:GEIE(欧州経済利益団体(European Economic Interest Group))
Exploitation Miniére de la Chaleur HP)
TSC Renewable Energy Unit
各国の取り組み(オーストラリア)
オーストラリアにおいては、クーパーベイズン、パララナ等で浅部高温岩体発電の実証事業が行われた(循環試験及び発電試験まで実施済み)。現在もいくつかの実証事業が進行中だが、未だ商用段階には至っていない。
36Habanero地熱発電所外観
(出典:WGC2015要旨集、Robert A Hogarth and Daniel Bour氏)
TSC Renewable Energy Unit
各国のEGS関連の取り組み状況
37
従来型(小規模低温利用含む)
涵養型EGS 能力増進EGS高温岩体発電(脆性領域)
高温岩体発電(延性領域)
超臨界発電(延性領域)
マグマ発電
アメリカ◎ ◎
実証事業ありe.g.ガイザ-ス
◎実証事業あり
e.g.デザートピーク
◎実証事業あり
e.g.ニューベリー
× × ×
オーストラリア
◎天然の高温地熱貯留
層無し、熱の直接利用は盛ん
× × ◎実証事業あり
e.g.クーパーベイズンパララナ
× × ×
フランス×
小規模には存在
× ◎実証事業あり
e.g.ソルツ
× × ×
ドイツ×
小規模には存在
× ◎実証事業ありe.g.ランダウ
× × ×
スイス×
天然の高温地熱貯留層無し、
熱の直接利用は盛ん
× × ◎実証事業ありe.g.バーゼル
× × ×
アイスランド
◎熱のカスケード利用
が発達
× × × × ◎実証事業あり※
e.g.クラフラ
×
韓国
×天然の高温地熱貯留
層無し、熱の直接利用は盛ん
× × ◎実証事業あり
e.g.ポハン
× × ×
日本◎
JOGMEC、NEDOにおいて技術開発を実施
◎実証事業ありe.g.柳津西山
〇過去に民間レベルでの取り組みあり
○実証事業ありe.g.肘折、雄勝
△ △NEDOエネ環境PG
×
◎:PJ実施中・稼働中、 ○:過去PJを実施、 △:検討中、 ×:PJ未実施、未検討
※マグマ付近に存在する超臨界流体を取り出して発電するため、超臨界地熱発電に分類しているが、本戦略で定義した超臨界発電とは蒸気の起源が一致しない。 (本戦略での定義:プレートテクトニクス由来、アイスランドでの超臨界発電:海水由来)また、現状発電には至っておらず、蒸気を噴気させるところまでに留まる。
Technology Strategy Center
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1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
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美しい星への行動(ACE)2.0
2015年11月に開催されたCOP21において、安倍総理から「美しい星への行動(ACE)2.0」を発表。
途上国支援に加え、イノベーションの推進に向け、「エネルギー・環境イノベーション戦略」の策定について言及。
39出典:地球温暖化対策推進本部(第31回)(首相官邸, 2015)
図 美しい星への行動 2.0 (Actions for Cool Earth : ACE 2.0)
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エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)
平成28年4月19日にエネルギー・環境イノベーション戦略が策定された。本戦略では、2030年迄の取り組みに加えて、2050年のさらなる排出量削減のための革新技術として7つの個別技術+横断技術を取り上げたもの。うち、再生可能エネルギーでは太陽光と地熱発電が選定された。
地熱発電については、次世代地熱発電技術として高温岩体発電と超臨界地熱発電が取り上げられている。
40出典:総合科学技術・イノベーション会議(第18回)配布資料(内閣府, 2016)
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エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)
41出典:総合科学技術・イノベーション会議(第18回)配布資料(内閣府, 2016)
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本文抜粋
②次世代地熱発電地熱資源はマグマが比較的浅部に存在する火山国に多く、活火山数が世界第3位の火山大国である日本は、世界でもトップレベルの地熱資源ポテンシャルを有し ている。天侯や時間帯に左右されずに出力が安定しており、水力と同様、ベースロー ド電源として位置付けられる数少ない再生可能エネルギーであり、その有効利用が期待されている。 しかし、現在の地熱発電は、地下1~3km 程度に存在する地熱貯留層の位置 を正確に特定することが難しく、地熱発電所を建設するためには地質調査・物理探 査等に長期間を要し経済的リスクが高い等の課題がある。このため、世界全体でも、 地熱発電は全発電電力量の1%未満に留まっている状況にある。 こうした地熱発電の持つ様々な課題を克服でき、既存の発電方式では活用困難 な地熱資源を用いた、新世代の地熱発電システムを開発する。日本は他国と比較 して浅部(4~5km)に高温地熱資源がある可能性があり、優位な立場にある。
以下に、次世代地熱発電の具体例を記載する。・・・・・・・
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http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui018/siryo1-2.pdf
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まとめ
次世代地熱発電技術には、短中期的に実用化が望まれる技術と、長期的な視点で2030年以降の実用化を見据えたものなど様々な種類が存在する。
次世代地熱発電技術(EGS技術)は、①従来型地熱発電の導入促
進(減衰対策、リスク低減)及び②導入ポテンシャルの飛躍的増大の観点で、有用な技術となる可能性を秘めている。
EGS技術については、各国で研究開発~実証段階が実施されているが、海外で検討されているものはType1~3がほとんどであり、Type4、5について検討している(適用しうる)のは日本のみ。
2030年以降の非連続的な技術として、高温岩体発電及び超臨界地熱発電への関心が高まりつつある。
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