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Vol.14,1 Obe-lisk オベリスク January 2009 LAIC 編集 オベリスク編集委員会 発行 ハムリー株式会社 広報室 〒306-0101茨城県古河市尾崎2638-2 2009年1月1日発行 通巻26号(31ページ)

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Vol.14,1

Obe-lisk

オベリスクJanuary 2009

LAIC

編集 オベリスク編集委員会

発行 ハムリー株式会社

広報室 〒306-0101茨城県古河市尾崎2638-2

2009年1月1日発行

通巻26号(31ページ)

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Obe-lisk

Vol.14,1

January 2009

■実験動物における環境エンリッチメントの付与・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(古藤 正男)

■AAALAC International 認証施設における動物管理と使用プログラム

~製薬企業における事例紹介~・・・・・・・・・・・・(藤掛 登)

■エコプロウォーターS60生成弱酸性水の抗菌効果

および飲水として用いた場合の宿主に与える影響・・(横山 久美、田爪 正氣)

■世界におけるAAALAC International の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(黒澤 努) ■AAALAC International の認定を得て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(樽本 保男)

■サル繁殖施設探訪記~ベトナム・カンボジア編~・・・・・・・・・・・・・・・・・・(清水 利行)

■ハムリープロダクツフェア2008開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(児矢野 紀彦)

■MPTP誘発一側性カニクイザルの

パーキンソン様症状発現と睡眠障害発現の相関・・・・・・・・・・(藤井 雅典)

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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実験動物における環境エンリッチメントの付与

古藤 正男

株式会社中外医科学研究所

はじめに

実験動物の飼育や動物実験の実施に当たって、実

験動物の人道的な取り扱いが強く求められるようになっ

てきています。3Rs とその実践という形で欧米では常識

となっていますが、本邦でも考慮され実践が進められて

います。また、2006 年には文部科学省、厚生労働省、

農林水産省、そして各省庁を横断する形で、日本学術

会議から「動物実験の適正な実施に向けたガイドライ

ン」が発表されました。このガイドラインは、大筋と構成

は米国 ILAR の「Guide」に類似しており、その内容は抽

象的であるものの、日本の基本姿勢が米国型であるこ

とを示しています。よく話題に上がるケージサイズに関

しては、具体的な数値目標は述べられていませんが、

ILAR の Guide は参考とする一つであると位置づけてい

ます。 ILARのGuideは1996年に第7版として改定され、「エ

ンリッチメント」という文言が登場するとともに、Guide の

隅々にその考え方が大きく反映されています。学術会

議のガイドラインでは、エンリッチメントという文言は現

われませんが、「種固有の生理・生態・習性‥」や「動物

間の社会的接触と序列・・・」といった表現がなされ、言

外にエンリッチメントについて、若干触れていると読み

取ることができます。

環境エンリッチメントとは「動物福祉の観点から、飼育

動物の良質な暮らしを少しでも改善するための具体策」

と言え、①本来の行動様式をできるだけ満たすようにす

ること、②行動時間配分をできるだけ本来のそれに近

づけるようにすること、だと考えられます。さらに飼育環

境でのストレスをできるだけ減らすことも重要と考えられ

ます。一方、ここで留意したいのは、良いストレスは悪い

ストレスを減じるということです。

環境エンリッチメントには、物理的なもの(ケージサイ

ズや構造、おもちゃ、テレビや音楽)、社会的なもの(群

飼育、群での運動、飼育者とのふれあい)、食べ物(採

食行動、味覚、齧る行動)などが試みられています。

ストレスが原因と思われる症候が多く見られるマカカ

属を例に、マカカ属サルを飼育するときの環境エンリッ

チメントについて話題を提供します。マカカ属サルは、

元来群れで生活し山林を食物を求めて移動し、一日に

8 時間づつを移動、採食、睡眠に費やし、樹上で過ごす

時間も長いです。サル同士は毛繕いを主とする社会的

行動をとります。すなわちエンリッチメントを与えるには、

可能な限り広く、立体的なケージで止まり木を設置して、

苦労を伴う採食行動を誘発して、群で飼育すれば良い

ことになります。しかし、実際の実験とのかかわりを考え

ると、環境エンリッチメント付与の可能な範囲はかなり

狭められるでしょう。

1.カニクイザル用のグループケージ

通常 3~5 頭をグループで飼育しています。とくに試

験を終了したサルや、次試験までの休止期間が長い場

合には、グループで飼育することにより、カニクイザル

は活き活きと、健康に活発に生活することができます。

ケージ内には、鏡、スリング、おもちゃ、パズルフィーダ

ーなどを設置して、ケージ内部での行動や生活に変化

を与えています。

2.グループケージ内のカニクイザル

サルは多くの時間を、ケージ内部の止まり木や棚の

上で過ごし、床に下りることは希です。本来の樹上生活

に近い環境を与えられています。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 環境エンリッチメントの付与

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3.連結可能な個別ケージ

個別ケージも連結が可能になっています。側面には

サルが十分に通過できる小窓が開いており、小窓の仕

切り板の有無や遮蔽板、アミ板などに交換することで、

仕切ったり行き来できるようにして、ペア飼育を可能に

したりしています。また、アミ板を用いることで視覚・嗅

覚・接触がとれる以外にも、ペアリングやグルーピング

に先立って、サル同士の相性を見ることもできるように

しています。また、ケージ内部を清掃したり、ケージ交換

のためにラックから外す際などには、片側にサルを追い

込んで作業することができ、サルに余分な捕獲ストレス

を与えることがありません。

4.鏡

鏡(金属製)はカニクイザルが好むおもちゃの代表的

なものです。自分を映して見たり、角度を変えて他のサ

ルや飼育者を見たりしています。カニクイザルもまた、ヒ

トを含む他の動物と同様に、おもちゃに対して、始めは

興味を示しよく遊びますが、やがて飽きてしまいがちで

す。幸い、鏡に対しては長い時間飽きずにいるようです。

5.おもちゃ

ゴム製のおもちゃ(コング)も比較的カニクイザルが好

んで噛みついているおもちゃの代表です。噛みついて

ボロボロにしてしまいますがよく遊びます。小さくなった

ら新しい物に交換します。当社では、鏡とコングを基本

として、すべてのカニクイザルに与えています。

6.給餌・採食方法の工夫

給餌の方法にも変化を与えています。本来のカニクイ

ザルは自ら餌を求めて採取し、皮を剥くなどしながら食

べています。旧世界ザル用の飼料であっても、サルが

取りづらい形状や方法を工夫すると良いでしょう。写真

のフィーディングボードでは、プラスチック人工芝の間に

小麦や細かく砕いた固形飼料、ドライフルーツなどを与

えます。また、ケージの天井のグリッド幅は比較的狭く、

当社で使用している固形飼料が通過できません。そこ

で天井の数か所にカニクイザルが手を出せる程度の穴

を広げ、天井に固形飼料を撒くという方法を行っていま

す。サルは指を器用に使ってホールから出した手が届く

距離まで固形飼料を移動して掴んで食べることができ

ます。食事に要する時間をかけさせることは、サルにと

っては良いエンリッチメントとなります。 主食は市販旧

世界ザル用固形飼料を用いていますが、補食として新

鮮な果物(バナナ、りんご、温州みかん、サツマイモ等)

を日常的に手渡しで与えています。また、ドライフルーツ

なども時々与えています。これらの給餌作業はサルと

飼育担当者の信頼関係を構築するのに役立ちます。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 環境エンリッチメントの付与

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またサルだけでなく、他の実験動物についても当施

設で試みている例を含めて紹介します。

7.イヌのグループ飼育

イヌもまたカニクイザルと同様に、社会性が必要な動

物です。可能な限り2頭以上で飼育するようにしていま

す。そのためケージは側面が開放でき、隣どうしを連結

することができるようにしています。試験に影響のない

限り、イヌは仲間と一緒に生活しています。

8.イヌの運動

イヌには運動(あそび)も重要なエンリッチメントです。

ケージから開放され、飼育者と遊ぶことを一番喜びます。

飼育者はそのときにイヌの身体に触れて健康状態を確

認することもできます。当社では運動場を確保できない

場合は、動物室内のケージ間の通路にイヌを出して遊

ばせています。

9.その他の実験動物

ミニブタも同様に、隣同士に見たりにおいを嗅いだり

できるように工夫し、ケージを清掃する際には通路に出

して遊ばせています。

マウスやラットをはじめとする小動物でも、グループ

飼育を基本として、単独で飼育する場合は営巣材(ネス

レットやティシューペーパー)を入れてあげたり、ナイラ

ボーンという噛むおもちゃなどを入れてあげています。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 環境エンリッチメントの付与

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おわりに

環境エンリッチメントを進めていくには、従来の科学

性優先主義の飼育から多少逸脱しても、大胆な発想と

アイディアを具体化して、勇気を持って実施していくと決

意することが重要で、飼育者の注意深い行動観察と、

動物本来の習性の十分な理解が必要です。環境エンリ

ッチメントを進めるには、コストや時間・手間、GLP、科

学目的との摺りあわせなど、障害となるものが多々あり

ます。しかし、実現することによってその恩恵は、動物た

ちのみならず、飼育スタッフや研究者に対しても与えら

れることになります。動物へできる限りのことをしてあげ

ていると感じる、仕事への満足感が増す、深い観察によ

り新しい発見をもたらす、などです。

実験動物の世界に、実験動物福祉学という領域が広

がってきていると感じています。試験成績への影響の有

無の検討や、ストレスマーカーとその評価方法などの、

新たな検討や試行、研究がより多くなされるべきであり、

一つでもあるいは小規模であってもやって見ること、実

施していくことが、飼育者と研究者に課せられている責

任であると思っています。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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AAALAC International 認証施設における動物管理と使用プログラム

~製薬企業における事例紹介~

藤掛 登

万有製薬株式会社 安全性研究所

医薬品の研究開発型企業にとって、動物を用いた研

究開発は必要不可欠です。しかしながら近年動物福祉

に関する法令・ガイドラインなどが各国で制定され、実

験動物の使用に関する規制は国際的にも明確化され

ました。その取り組みの一環として当社においても、研

究用動物を用いる場合、3R ‒ Replacement、Reduction

およびRefinementの原則を守ることを定めています。こ

れを体現するための一つの方法として米国メルク社は

世 界 の すべ て の動 物 施設 に お い て AAALAC

International(Association for Assessment and Accred-

itation of Laboratory Animal Care International) 認証取

得を社内基準として掲げ、現在ではすべての施設で認

証を取得しています。つくば事業所も数年前から

AAALAC International の認証に向けて準備を始め、

2006 年に認証を取得しました。

AAALAC International は、動物管理および使用プロ

グラムに対する唯一の国際的認証を提供する非政府

団体であり(3 年ごとに訪問し、継続審査する)、全世界

で多くの機関が既に AAALAC International 認証を取得

しているため(29 カ国で 700 施設以上:2006 年 9 月現

在)、認証は国際的に動物の使用を適正化し、適切な

規制と方針が守られていることを保証するものであると

見なされています。今回は AAALAC International 認証

までに、われわれが経験した主な事例を「動物の管理と

使用に関する所内委員会(IACUC)」の役割を示しなが

ら、認証取得のポイントについて紹介いたします。

動物管理と使用プログラムでは”実験動物の管理と

使用に関する指針(NCR 1996)1)”に記載されていること

を基本にして、機関長・IACUC・指定獣医師(IACUC メン

バー)・実験者の役割と責任を明確にし、それぞれの立

場から施設・設備・機器および動物管理と使用に関して

動物福祉および労働安全衛生の観点から、その役割を

果たしていく必要があります。

指針では IACUC の構成メンバーとして以下のもの

が求められています。

◎獣医師:実験動物に関する専門知識と経験を有す

るもの

◎研究開発における動物の果たす役割に関する知

識を有するもの

◎動物実験に直接従事しない社内の有識者

◎動物実験に携わらない社外の有識者

当社では社内の有識者として、労働安全衛生担当

者も加わってもらい、その情報も共有できるように

しています。

動物の管理と使用に関する所内委員会(IACUC)

IACUC の役割と責任は、動物管理と使用プログラ

ム全体の監督と評価であり、すべての実験動物を用い

た研究活動は IACUC の監督下に置かれます。具体的

な役割と責任の主なものを以下に示し、それぞれにつ

いて解説します。

◎動物の管理と使用計画書のレビュー

◎指針1)に基づいた定期的な動物管理と使用プロ

グラムのレビュー

◎動物飼育施設・実験施設の調査:各種法規制お

よび規則に従っているか

◎機関長に提出する調査報告書の作成

◎動物の管理と使用に関連する事項のレビューお

よび変更の手順を確立する

◎多くの場合、各種規定・基準の策定

○動物福祉・動物の健康管理・動物施設の適

正な運用管理

○労働安全衛生

○災害時対応などの計画

◎動物福祉・適正な動物実験:啓蒙・教育指導・相

談窓口

1) 動物の管理と使用計画書のレビュー

計画書のレビューの基本は、実験操作内容が所内

規則などに基づいて適正であることを確認し、必要に応

じて申請者に指導・助言を行うことであります。所内規

則などは先ほど示した指針、関係法規 2), 3), 4), 5)、ガイドラ

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 AAALAC 認証施設における動物管理

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イン 6)および一般的に受け入れられている文献などをも

とに IACUC によって作成されたものです。ここではレビ

ュ ーの ポ イ ン ト を 3Rs (Replacement, Reduction,

Refinement)の視点に別けて列記示します。なお、労働

安全衛生に関する項目は後述します。

◎Replacement/Reduction

○動物を使用する理論的根拠と目的

○代替法の有無を吟味されているか

○不必要な繰り返し試験に当たらないか

○動物種の選択が適切か

○必要最小限の適切な動物数を選択しているか

◎Refinement

○試験従事者が適切なトレーニングを受け、技術

が保障されているか

○投与容量・採血量が適切であるか 7), 8)

○給餌・給水制限を行っているか

○疼痛やストレスを伴うことが予想される場合は、

それを最小限にし、適切に鎮痛薬や麻酔薬を使

用する。当該の薬剤の使用ができない場合は、

科学的妥当性を吟味する。また、Pain/Stressの

程度をカテゴリー化する 9)

○身体の拘束の有無

・拘束の定義: 指針1)に示されている一次囲い

以下の場所に一定時間以上収容

○麻酔薬・鎮痛薬・鎮静薬が適切に選択されてい

るか

・代表的な薬剤をリスト化し推奨すると便利であ

る 10)。エーテル麻酔については労働安全衛生

上の観点から推奨されておらず、また、動物

種にかかわらず、外科処置の前後には鎮痛

薬の使用が原則になる。

○外科処置を分類し、適切に操作が記述されてい

るか

・術後覚醒させる存命手術か、術後覚醒前に安

楽死させる非存命手術かを確認し、存命手術

の場合は術後に適切なモニターが計画されて

いるか確認

・大規模(開腹・開胸・開頭術等)か小規模(血管

カニュレーション・皮下切開等)かを確認し、大

規模の場合は基本的に手術室で行う(げっ歯

類等はその限りではないが無菌操作・滅菌機

材を使用)

○瀕死動物の安楽死判断基準の設定(humane

endpoint)

・体重減少(数日で 20%減少等)6)

・外観・行動異常: 起立不能(横臥状態)、呼吸

困難、重篤な下痢・嘔吐の持続、摂餌・摂水

困難など

・臨床病理データの変化: 肝機能・腎機能など

○安楽死方法: American Veterinary Medical

Association(AVMA)から出されているガイドラ

イン11)を参考に、その方法を検討する

実験内容が所内で定められた基準の範囲を超えた

場合は、科学的妥当性について申請者と十分に話し合

い、必要に応じてIACUCを召集して申請内容を検討し、

動物福祉の観点から対応を吟味します。

2) 定期的な動物飼育施設・実験施設の調査

定期調査では、動物福祉および労働安全衛生の観

点から、プログラム全体を網羅し調査します。調査の一

般的な例として、1)進行している試験が承認された計

画書通りに行われていること、2)すべての関係者(試

験担当者・飼育業務担当者等)に分かるように計画書

番号が表示されていることを確認します。

動物の収容状況について、①定められている基準

に沿って動物が収容されているか、②収容匹数が基準

内であるか、③ケージ交換の頻度が妥当であるか、な

ど 1)。実験中の場合その担当者の習熟度も確認しま

す。

飼料の管理について、期限切れの餌の使用を防ぐ

ために、一袋ごと使用期限を明記して、一袋ごとに台帳

管理を行っていることを確認します。飼料保管室はとく

に清掃状況および保管状況について詳しく調べます。

労働安全衛生に関して、通常企業や団体で行われ

ている活動と変わりませんが、とくに動物施設特有な事

項に関しては”実験動物の管理と使用に関する労働安

全衛生指針(米国実験動物資源協会著 12))”が参考に

なります。また、IACUC が労働安全衛生に関連する委

員会などと協力して活動することにより、より効果的な

成果が得られます。動物施設での活動は、通常の労働

安全衛生活動と同様に、五感で感じられる、騒音・目や

鼻の刺激・化学物質のにおいや建物や機材表面への

付着などに注意を払い、整理整頓状況を確認すること

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 AAALAC 認証施設における動物管理

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から始まります。大型のオートクレーブ・ラックウォッシャ

ーなどは、脱出装置などの安全装置の確認、安全キャ

ビネットなどは定期点検状況の確認、吸入麻酔装置に

ついては吸着器・排気装置の設置状況の確認などを行

います。ケミカル・バイオハザード対策については法令13), 14)や文献 15), 16)をもとに基準を作り、その基準に従って

いることを確認します。アレルギー対策については、動

物施設や実験施設におけるアレルゲンを完全になくす

ことは不可能ですが、その飛散を極力押さえ、暴露を最

小限にする工夫を行い、保護具の妥当性を吟味して使

用することが重要な対策になります。

3) 基準・規定などの策定

基準・規定などの策定は、IACUC の審査基準に客観

性をもたらすばかりでなく、問題がフォーカスされること

により審査業務の効率化にもつながります。基準・規定

の例を以下に示します。

◎動物福祉および動物実験指針

◎IACUC 要領

◎動物実験審査規程

◎動物施設における災害対策計画

◎採血量ガイドライン

◎投与量ガイドライン

その他 IACUC メンバーは①動物福祉に関する質問・

相談を受け、②動物福祉および適正な動物実験を啓蒙

し、③動物実験従事者に対して助言・指導を行うことが

求められています。また、IACUC は定期的に会議を行

い、その活動を機関長に報告し、必要に応じて改善す

べき事項に対して提案を行います。

指定獣医師

指定獣医師は IACUC メンバーとして活動し、とくに

以下のように獣医学的管理を適切に行います。

◎術後の生存を目的とした外科的処置、その他強度

の苦痛を与える可能性がある実験審査に加わる。

○術式、術後管理、無菌操作、麻酔・鎮痛方法に

ついて確認し、試験開始以降も必要に応じて指

導・助言を行う。

◎飼育動物の健康状態に異常が発生した場合や、

試験担当者より依頼があった場合、羅患動物の治

療・処置判断を試験責任者と相談のうえ行う。

○小さな異常であっても指定獣医師に報告する。

また、休日の対応についても整備する。診察・治

療記録などは必ず残す。

◎長期飼育している動物の定期健康診断を行い、す

べて記録を残す。

機関長

機関長は最終的な動物の管理と使用プログラムの

最終的な責任者です。機関長は IACUC を任命し、

IACUC からの報告および提言をレビューします。そして

コンプライアンスの観点から、その活動が円滑に運営さ

れていることを確認し、IACUC の提言に対して運営を実

施する権限を有します。

以上、動物管理および使用プログラムの基幹となる

IACUC の活動を中心に述べましたが、これは一例であ

ります。それぞれの施設は関係法規、ガイドライン、ガイ

ドなどに基づいて所内の規則を作り、それぞれの施設

に合った方法を選択され、運営されると良いと考えま

す。

最後に、われわれはAAALAC International の認証に

より、その施設が動物の使用を適正化して、適切な規

制と方針が守られていることを国際的に認められるば

かりでなく、その施設で行われた動物実験が、科学的に

妥当で質の高い結果が得られていることを、国際的に

も認知されていると考えております。

参考資料

1) ILAR (Institute for Laboratory Animal Research) ‒

NRC (National Research Council) Guide for the

Care and Use of Laboratory Animals (7th edition),

National Academy Press. 1996 (邦訳 鍵山直子、

野村達次監訳、実験動物の管理と使用に関する

指針、ソフトサイエンス社、1997)

2) 動物の愛護及び管理に関する法律(平成17年 6月

22 日一部改定)

3) 実験動物の飼養及び保管に苦痛の軽減に関する

基準(平成 18 年 4 月 28 日 環境庁公示)

4) 厚生労働省の所轄に関する実施機関における動物

実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1

日 厚生労働省告示)

5) 実験動物に関する指針(昭和 62 年 日本実験動物

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 AAALAC 認証施設における動物管理

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学会)

6) 実験動物の適正な実施に向けたガイドライン(2006

年 6 月 1 日策定 日本学術会議)

7) European Federation of Pharmaceutical Industries

Associations/European Centre for the Validation

of Alternative Materials (EFPIA/ECVAM),

Feb-2000

8) K-H. Heinz et al. A Good Practices Guide to the

Administration of Substances and Removal of

Blood, Including Routes and Volumes, J. Appl.

Toxicol. 21: 15-23 (2001)

9) 鍵山直子、動物実験の倫理指針と運用の実際、日

薬理誌 131: 187-193 (2008)

10) Frecknell, P. Laboratory Animal Anesthesia (2nd

edition), Academic Press Limited, 1996 (邦訳 倉

林譲監修、 ラボラトリーアニマルの麻酔、学窓社、

1998)

11) AVMA (American Veterinary Medical Associattion),

2000 report of the AVMA panel on euthanasia,

JAVMA 218 (5): 669-696

12) U.S. National Research Council, Occupational

Health and Safety in the Care and Use of Research

Animals, 1997 (邦訳 日本実験動物環境研究会

編、黒澤努・佐藤浩監訳、実験動物の管理と使用

に関する労働安全衛生指針、アドスリー、2002)

13) 遺伝子組み換え生物等の使用の規制による生物

の多様性の確保に関する法律: 平成 15 年 6 月

18 日公布

14) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に

関する法律: 平成 19 年 6 月 1 日公布

15) B. Naumann et al. Performance-Based Exposure

Control Limits for Pharmaceutical Active

Ingredients, AIHA Journal 57: 33-42 (1996)

16) S. Tahara and K Watanabe, Construction of

Design Procedure for Chemical Hazard Facilities,

Pharm Tech Japan 15: 1441-1450, 1619-1630,

1769-1780 (1999)

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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エコプロウォーターS60 生成弱酸性水の抗菌効果

および飲水として用いた場合の宿主に与える影響

横山 久美 1)、田爪 正氣 2)

1)東京医療保健大学、2)東海大学健康科学部

Ⅰ はじめに

電気分解で得られる強酸性水(pH 2.2~2.7)は殺菌

作用、殺ウイルス作用、殺真菌作用を示すことが知ら

れている 1。強酸性水の殺菌メカニズムは、電気分解に

より生成された次亜塩素酸を主体とする塩素関連物質

によるものであり、溶液中の次亜塩素酸は pH3.5~6.0

の間で安定した形で存在している 2。ハムリーが開発し

た流水生成方式のエコプロウォーターS60Ⓡは pH4.5~

5.0 で、安定した次亜塩素酸含有の弱酸性水を得ること

ができる。

一方、動物の飲水には通常水道水が用いられている

が、細菌とくに緑膿菌の増殖を抑えるために、飲水に次

亜塩素酸ナトリウム溶液を添加している場合が多い。し

かしながら、この飲水が動物に与える影響の報告は少

ない。

そこで、われわれはエコプロウォーターS60Ⓡで生成さ

れた弱酸性水(pH4.5、塩素濃度 4 および 10 ppm)の各

種細菌に対する抗菌効果、マウスに飲水として弱酸性

水を与えた場合の体重、腸内フローラおよび抗体産生

細胞数に対する影響について検討した。

Ⅱ 材料と方法

1. 弱酸性水の抗菌効果

ハムリーが開発した流水生成方式のエコプロウォータ

ーS60Ⓡで生成された弱酸性水(pH4.5、塩素濃度 4 およ

び 10 ppm)およびハートインフュージョン寒天培地(HI、

日水製薬)によって抗菌効果を検討した。実験に用いた

供 試 菌 は Esherichia coli ATCC25922 、 Klebsiella

pneumoniae 13883 、 Staphylococcus aureus

ATCC25923 および臨床分離株の methicillin-resistant

S. aureus、enterohemorrhagic E. coli O-157、Salmonella

enteritidis、Pseudomonas aeruginosa の 7 菌種である。

各供試菌は、HI 寒天培地に培養後集菌し、燐酸緩衝

生理食塩水(PBS)で洗浄後、105 colony forming unit

(cfu)に調整して実験に用いた。調整された菌液と弱酸

性水を 1:10 の割合で混和し、経時的(30 秒~10 分)に

0.1 ml ずつ取り出し、平板寒天培地上に塗抹して、37℃、

48 時間培養後、生菌数のカウントを行った(図1)。なお

予備実験により弱酸性水の持ち込みによる影響は無視

できる結果が得られた。

2. マウスに弱酸性水を飲水として与えた場合の影響

ICR 系 SPF マウス(4 週齢、日本チャーリスリバー)の

飲水としてエコプロウォーターS60Ⓡで生成された弱酸性

水(pH4.5、塩素濃度 10 ppm)を与えて、体重、糞便中に

おける総菌数および腸内細菌科に属している細菌の菌

数を経時的に毎週計測した。培地は総菌数用として HI

寒天培地、腸内細菌科に属している細菌の菌数用とし

て DHL 寒天培地(日水製薬)を用いた。また、弱酸性水

を 3 カ月、6 カ月飲み続けたマウスにおける抗体産生細

胞数のカウントを行った(図 2)。

図1.抗菌効果測定方法

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 S60 生成水の抗菌効果と飲水影響

12

10%ヒツジ赤血球(SRBC)

マウスの腹腔に投与(0.2 ml)

3 日後、脾臓摘出

脾臓細胞を107/ml に調整

脾臓細胞 0.1 ml+20%SRBC 0.1 ml+補体

プラーク数

図2.抗体産生細胞の測定方法

Ⅲ 結果および考察

1. 弱酸性水の抗菌効果

各供試菌(菌数:105 cfu)に対する抗菌効果の成績を

表1に示した。これらの成績から、塩素濃度 4 および 10

ppmの弱酸性水は各供試菌に対して抗菌作用を示すこ

とが判明した。また、この結果およびわれわれの以前の

報告 3から、塩素濃度の高い弱酸性水ほど短時間で抗

菌力を示すことが明らかになった。したがって、エコプロ

ウォーターS60Ⓡで生成された弱酸性水(pH4.5、塩素濃

度 4および10 ppm)は in vitro において優れた抗菌力を

示すことが明らかにされた。

表1.各種供試菌の生菌数 105 cfu に対する抗菌効果

2. マウスに弱酸性水を飲水として与えた場合の体重変

マウスにpH4.5、塩素濃度10 ppmの弱酸性水を飲水

として与えた場合の体重の経時的変動を図3に示した。

これらの成績から、酸性水群は滅菌水道水を飲水とし

て与えた対照群に比して著しい変動は認められなかっ

た。したがって、エコプロウォーターS60Ⓡで生成された

弱酸性水をマウスに飲水として与えても、順調に成長す

ることが明らかになった。

図3.体重の経時的変化

10秒 30秒 1分 1分30秒 2分 3分 4分 5分 7分30秒 10分4ppm 1.5×104 1.9×104 1.6×103 3.0×102 2.0×102 <102 <102 <102

10ppm 1.0×102 2.6×103 6.7×103 4.3×103 1.5×103 1.0×103 9.3×102 1.1×104 5.9×102 2.0×101

対照 2.2×108 2.9×108 3.0×108 3.0×108 2.1×108 2.7×108 3.5×108 2.2×108 1.7×108 1.3×108

4ppm 2.2×105 2.9×104 1.7×104 1.8×104 3.4×103 2.6×103 2.5×102 1.0×1010ppm 8.5×104 9.9×103 1.8×104 1.2×104 1.4×103 2.0×101 1.0×101 <10 <10 <10対照 1.9×108 1.8×108 1.9×108 2.3×108 2.5×108 1.9×108 2.5×108 2.6×108 3.2×108 1.7×108

4ppm 9.2×103 3.4×103 3.4×103 1.1×103 3.0×102 5.9×103 <102 <102

10ppm 1.0×103 1.0×102 1.0×102 1.3×103 4.3×103 2.0×102 6.0×102 <102 <10 <10対照 2.4×108 3.3×108 2.9×108 3.3×108 3.0×108 3.8×108 3.6×108 2.6×108 4.2×108 5.2×108

4ppm 2.0×102 1.2×104 8.1×103 8.8×103 5.6×103 3.8×103 1.3×103 1.0×103

10ppm 5.8×103 7.6×103 1.6×103 6.5×102 6.0×10 <10 <10 <10 <10 <10対照 3.2×108 3.1×108 3.0×108 3.8×108 2.1×108 2.7×108 2.9×108 2.5×108 3.4×108 3.1×108

4ppm 8.7×107 7.1×107 5.8×107 5.4×107 3.7×107 2.8×107 1.3×107 8.4×106

10ppm 2.0×104 3.4×105 1.4×104 1.0×103 <103 <102 <10 <10 <10 <10対照 5.1×108 4.0×108 4.1×108 4.4×108 3.5×108 3.7×108 4.8×108 4.4×108 2.6×108 1.7×108

4ppm 9.6×106 1.0×107 1.1×107 6.0×106 1.5×106 9.6×104 3.5×103 1.1×103

10ppm 6.0×102 7.2×104 <102 <102 <10 <10 <10 <10 <10 <10対照 3.5×108 3.3×108 3.1×108 3.7×108 3.9×108 2.7×108 3.3×108 2.7×108 3.9×108 4.5×108

4ppm 1.1×105 1.0×105 1.3×105 2.0×105 9.8×104 5.9×104 6.1×104 2.5×104

10ppm 9.9×104 3.8×104 3.8×104 9.4×103 2.9×103 2.0×102 2.4×103 1.0×102 1.0×102 1.0×102

対照 1.5×108 2.3×108 1.9×108 1.5×108 1.2×108 2.0×108 1.6×108 1.3×108 1.1×108 1.2×108P.aeruginosa

試験液採取時間(秒)

K.pneumoniae

EHEC O-157

S. enteritidis

S.aureus

MRSA

E. coli

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 S60 生成水の抗菌効果と飲水影響

13

3. マウスに弱酸性水を飲水として与えた場合の糞便中

の総菌数および糞便中の腸内細菌科に属する細菌

の菌数

マウスに弱酸性水(pH4.5、塩素濃度 10 ppm)を飲水

として与えた場合の糞便中の総菌数を図4、および糞

便中に生息している腸内細菌科に属する細菌の菌数を

図5に示した。これらの成績から、酸性水群における糞

便中の総菌数および腸内細菌科に属する細菌の菌数

は滅菌水道水を飲水として与えた対照群に比して著し

い変動は認められなかった。したがって、エコプロウォ

ーターS60Ⓡで生成された弱酸性水を飲水としてマウス

に給水しても腸内フローラに対して影響を与えていない

ことが判明した。

図4.糞便中における総菌数の経時的変化

図5.糞便中における腸内細菌科に属する細菌数の経

時的変化

4. マウスに弱酸性水を飲水として与えた場合の抗体産

生細胞数

マウスに弱酸性水(pH4.5、塩素濃度 10 ppm)を飲水

として与えた場合のヒツジ赤血球(SRBC)に対する抗体

産生細胞数を図 6に示した。これらの成績から、弱酸性

水群は滅菌水道水を飲水として与えた対照群に比して、

著しい差は認められなかった。したがって、マウスにエ

コプロウォーターS60Ⓡで生成された弱酸性水を飲水とし

て給水しても、抗体産生細胞数に対して影響を与えて

いないことが判明した。以上の結果から、pH4.5、塩素

濃度 10 ppmの弱酸性水は、マウスの飲水として使用で

きる可能性が示唆された。

今後の課題として、弱酸性水(pH4.5、塩素濃度 10

ppm)を飲水としてマウスに与えた場合の細胞毒性、血

清中の生化学的性状や、病理組織学的検討が必要で

ある。

図6.ヒツジ赤血球に対する抗体産生細胞数(n=5)

謝辞

本研究にご協力頂いた大木保先生(東海大学)に深

謝いたします。

文献

1. 岩沢篤郎、中村良子、水野徳次:臨床分離株に対

するアクア酸化水の効果、環境感染、8;11~16、

1993。

2. 米森重明、三宅晴久:電子スピン共鳴(ESR)法

による酸性電解水中のフリーラジカルの解析、機

能水シンポジウム ’95 京都大会予稿集;28~29、

1995。

3. 石坂富美、田爪正氣、築地真実、糠信憲明:弱性

電解水(pH4.5)の抗微生物効果、機器・試薬、24;

71~75、2001

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

3カ月 6カ月

水道水酸性水アルカリ水

プラーク数/10 脾臓細胞   

6

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

14

世界における AAALAC Internationalの現状

黒澤 努

大阪大学大学院医学系研究科

はじめに

わが国おけるAAALAC International に関する情報は

実験動物関連学協会の集会などで10年以上も前から

流布されていて、さらに最近ではインターネットを通じて

AAALAC International の 英 文 で の 情 報

( http://www.aaalac.org/ )だけでなく、和文の情報

(http://www.aaalac.org/japanese/index.jp.cfm)も容易

に入手可能である。従ってわが国での AAALAC

International への理解は相当に進んでいるものと思わ

れる。 しかし 、依然としてわが国には AAALAC

International に関して誤った情報が流れている場合も

多い。さらに AAALAC International の国際的な活動に

関しては誤解も多いようである。

わが国でも動物実験を行う研究機関など第3者認証

を求める動きが強くなっていることから、AAALAC

International に関する正しい最新の情報を記載し、また

その活動に関しての解説をこころみる。

AAALAC International に関する記述はできるだけ事

務局が公表している資料に基づくが、和文の資料に関

しては一部に誤訳も見つかっており、適宜意訳して記載

する。当然記載内容はAAALAC International の公式見

解などではなく、私の個人的な見解も多く含まれるが、

著者は2008年6月にアジア人としては3人目となる評

議員に推挙されたこともあり、できるだけ AAALAC

International を代弁できるように努める。

わが国の動物実験体制査察

わが国における動物実験は欧米先進国に比較し、法

的に規制されることは少なかった。さらに学問の自由、

研究の自由が技術立国を目指す国是と合致していると

され、動物実験は極めて自由に施行可能であった。一

部の動物実験反対運動家のいう“わが国ではいつでも、

何処でも、誰でもが動物実験をやることが可能である”

という意見は相当に正しかったし、現在でもその方がよ

り良いと考える研究者は多数存在する。実際、動物実

験を行うに当たって、種々の規制などがあると研究の進

展が妨げられると考える研究者は多い。しかし、各種の

研究活動においても全く法的な拘束を受けずにいつで

も、何処でも、誰でもができる適切な研究というのは極

めて希である。さらにその研究活動が、公衆衛生学的

な見地から国民に悪影響をもたらす可能性がある場合

には、自由に行えることはわが国全体の利益を損なうこ

ととなる。また動物愛護の観点から、動物実験は常に

議論の対象となることが多いが、国民の多数が適切な

動物実験の施行を望むのであれば、当然何らかの規制

は必要となる。実際、欧米先進国では動物愛護の観点

からの国民の要望に応える形で、動物実験の規制法が

整備されてきた。極端な規制は確かに研究進展の障害

となる可能性はあるが、すでに欧米先進国で行われて

いる程度の規制に関しては、同じ条件で研究を行うよう

になるだけであり、とくにわが国だけがなにか別の方法

を持つ必要は考えられない。とくに科学データは国際的

に使われることとなるので、わが国だけの特殊な事情を

ことさらに説明して、欧米先進国とは別であると言いつ

のる必要性は感ぜられない。

動物実験が適正に行われているかの監視は欧米先

進国では当然のように行われている。そのための査察

制度も充実しているが、それにしても不必要な査察を行

うほど各国政府とも予算を計上することはなく、常に予

算の範囲内で専門家を確保して、適当な頻度で査察を

行って、重大な法律違反を取り締まる体制となっている。

既にこうした制度がすっかり定着した欧米先進国では、

動物実験反対運動家の密告などがあったとしても、重

大な法律違反はほとんど見つかっていない。従って査

察官も、わずかに法律に抵触する可能性のある事例や、

法解釈の仕方によっては疑義が持たれるような事例を

報告しているにすぎない。

こうした事例を過大に宣伝する動物実験反対運動グ

ループが米国には存在する。米国では、伝統的に動物

福祉法にはマウス、ラット、トリは含まれていないことか

ら、その動物実験使用に反対するグループが連邦裁判

所に訴え出た。確かにマウス、ラットを動物福祉の観点

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 世界における AAALACの現状

15

から、法的に規制しないというのは合理性に欠けるので

はないかと思われた。しかし、その際の議論でも、まず

そうした実験小動物までも農務省が査察を行うのは、予

算の無駄遣いとなるという指摘があり、さらに米国の多

くの研究機関は、既に AAALAC International の認証を

得ているので、これが国の査察を補完しているとして、

動物福祉法によりマウス、ラットの実験使用を規制する

必要はないこととなった。

こうして欧米先進国での動物実験規制にも種々のや

り方があり一様ではないが、AAALAC Internationalの活

動が、動物愛護の観点から国の機関の機能を補完され

ている、とされたことでその権威は一段と高まった。こう

した動きもあり、わが国では動物愛護の観点からとして、

国の機関による動物実験の査察などは行うことはない

が、それに代わり得る動物実験施行の第3者認証が必

要であるとの見解が一般化した。

動物愛護法改正前後の動き

わが国で動物実験の規制を行いそうな法律は、197

3年に制定された“動物の保護及び管理に関する法律”

である。この法律は動物実験そのものを規制する法律

ではないが、動物実験に用いられる実験動物自体の飼

養保管については緩やかに規制するものであった。そ

の法律は2000年に改正され、“動物の愛護及び管理

に関する法律”となったが、実験動物の規制に関して改

訂はなかった。しかし、5年後には再検討するとの注釈

がついて施行されていた。その2005年が近づくにつれ、

動物愛護団体、動物実験反対運動家は一斉に活動を

開始し、法律を主管する環境省に陳情を繰り広げた。そ

れに対して日本学術会議実験動物研連は、過剰な動

物実験の法的規制が科学の発展の障害となることを防

ぐため、“動物実験に対する社会的理解を促進するた

めに”という提言を行った。その中で、1)動物実験の倫

理原則を実行に移すときの基準を示す国内で統一され

た動物実験ガイドラインを制定することと、2)当該ガイ

ドラインの実効を担保するための第三者評価システム

を構築することを提言した。

実際の動物愛護法の大きな改正は、動物実験に関し

ては3Rsの動物実験代替法の概念が盛り込まれるだけ

となり、科学者が懸念した過剰な規制は行われることは

なかった。しかし、各省が動物愛護法の改訂を受けて、

傘下の研究機関などに出した通達では日本学術会議

の提言の内容を踏まえて、第3者評価を促した。このた

め厚労省では HS財団に新たな任務を課し、動物実験

実施施設認証センターを設立した。また文科省は、国

立大学法人動物実験施設協議会および公私立大学実

験動物施設協議会が共同して、各施設が行った自己評

価を相互検証する制度を整備中である。また農水省系

では、日本実験動物協会の中に、実験動物福祉調査・

評価委員会規程を制定し、実験動物生産業者に対する

評価を行うこととしている。こうしてわが国では、これま

で他人が入ってくることのなかった研究機関に、動物愛

護の立場から、名前は区々ではあるが、査察員が立ち

入ることとなった。

わが国の査察に対する考え方

わが国では、これまで査察というのは国の機関が権

威を持って立ち入り調査を行うことから、その権限は絶

大で、査察官の機嫌を損ねないようにという観点から、

多大な努力を払ってきた。とくに公的な査察においては

どうしても“お目こぼし”が必要な場合が多々あったよう

である。そこで査察にともなって、“袖の下”あるいは“接

待”がつきものとなってしまった。これは欧米の公的な

機関の査察では未だに続く悪弊である。実際そのような

経費があるのであれば、実験動物福祉のために使用す

ることがすすめられるが、こうした悪弊を続ける機関は、

概ね本来の目的である実験動物の福祉に対する予算

は削減しがちである。従って折角の費用をかけながら、

本来の目的を達成することなく形骸化しがちであった。

これは AAALAC International の機関訪問とは大きく異

なる。とくに訪問者の専門性、中立性、倫理性はボラン

ティア団体が行うということもあって、極めて厳格である

ことと対照的である。またそうした専門家の教育訓練な

どに関しても、AAALAC International は多大な費用と時

間をかけてきていて、長年の蓄積も多い。その一方、わ

が国は、これから各制度を始めようとしているのである

から、査察員の資質および教育などはいかにして達成

するのかが懸念される。

AAALAC International とは

AAALAC International は、自主的な審査と認証プロ

グラムを通して、科学における動物の人道的な管理を

促進する民間非政府組織である。ちなみに、AAALAC

International は、 「 Association for Assessment and

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 世界における AAALACの現状

16

Accreditation of Laboratory Animal Care International

(国際実験動物愛護評価認証協会)」の略である。すで

に世界中で750以上の研究機関の認証を行っている

が、その機関は、実験動物の管理と使用に対して責任

を持ち、さらに関連地域法、国内法および国際的な基

準などの遵守実証の証しとして認証を受けている。責

任ある実験動物の管理と使用に関しては、米国ILARの

実験動物の管理と使用に関する指針に詳細が述べら

れているが、各国で制定された法律の遵守と基準など

に従っていることが認証の要件である。

AAALAC International の歴史

AAALAC International は、米国実験動物学会内の相

談から、一般市民にも実験動物使用は専門家により適

正に行われていることを確信してもらう目的で1965年

に 設 立 さ れ た the American Association for

Accreditation of Laboratory Animal Care (AAALAC)を

前身としている。この協会は1963年に発刊された米国

NIHの基準に従って各研究機関が適切な動物実験を

行っていることの認証を行うために設立された。このた

め未だに AAALAC International をこの前身と同様と誤

解し、米国の法律や米国の指針の遵守だけが認証に

求められると誤解している方も多い。1965年にコーエ

ン博士を議長として最初の評議会が開催され、機関訪

問者の使用する様式、申請用紙と評議員を助けるコン

サルタントが選任された。1996年には名称を the

Association for Assessment and Accreditation of

Laboratory Animal Care International (AAALAC

International)と変更した。この名称変更は、本協会の活

動が他の国々にも認められ、国際的な生命科学と実験

動物管理の質の向上を目指すことを使命とした反映で

ある。国際化を受け、AAALAC International の組織も変

更されている。

AAALAC International の組織

AAALAC International の最高決定機関は理事会で

あり、AAALAC International を支援する学協会から代

表者が一名づつ理事として審議に参加する。これら学

協会には、生物医学研究の前進と科学における動物の

福祉に関心を持つ、一流の学会が参加している。国際

組織として ICLAS, FELASAなどの実験動物関連協会だ

けでなく、米国医学会、全米病院協会、全米医科大学

協会、米国糖尿病学会、米国心臓病学会などの医学

系学協会も支援団体である。また米国獣医学会、全米

獣医科大学協会などの獣医学系学協会も参加してい

る。

世界的に実験動物の管理と使用に関する専門家や

科学者から構成される評議会が設けられている。この

評議会が、実際の機関訪問などを行い、各機関のプロ

グラムを評価し、認証の決定を行う。現在、北米に3部

とヨーロッパに1部の4部会で構成されている。1部会は

約10名の評議員(Council)で構成されている。現在環太

平洋(アジア地区)に新部会を設置する計画が進行中

である。これは現在アジア各国から5名の評議員を中

心に構成されることとなっていて、さらなる評議員の発

掘が求められている。

実際の認証の審議は、機関訪問をした評議員が機

関が提出したプログラムに従って実情を説明し、自分の

見解を開陳することから始まる。ただし、この訪問評議

員の見解は、予め他の4名の評議員により査読が行わ

れている。それに対して、他の評議員から質問があり、

それらに訪問した評議員が応戦するという形で審議が

進む。従って、訪問した評議員と査読をした評議員の間

で熱心な議論が交わされることとなる。が、いずれにせ

よ訪問評議員が機関認証の趨勢の鍵を握っているとも

いえる。

機関訪問を行う専門家として臨時専門家(ad hoc

Consultant/Specialist)が任命されている。全世界に約

200名弱が評議会により任命されている。臨時専門家

の中には従来からの実験動物の専門家だけでなく、特

別な分野の専門家も含まれている。この専門家が訪問

に参加することにより、その内容がより幅広く、より深く

なることが期待されている。

実際の臨時専門家の多くは認証を受けた機関の担

当者であり、既に自身の機関のプログラムを記載した

経験があり、さらに機関訪問も受けた経験者であり、す

でに機関訪問がどのように行われているのかの知識が

十分あることとなる。また他の機関の訪問においても、

客観的にそのプログラムを見ることにより、自身の機関

のプログラムの改善にも役立つこととなる。また評議員

のほとんどが臨時専門家の中から任命されていること

から、この役職は評議員の養成の意味合いも持つもの

となっている。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 世界における AAALACの現状

17

AAALAC International の機関認証

AAALAC International の認証のプロセスはすでに確

立されており、画一的に行われる。またこれらのプロセ

スの個々の要素の締め切り日は、年に3回開催される

評議会の開催日に間に合うよう、かなり厳格に予め決

められている。従って申請機関としてはこの締め切り日

に 間 に 合 わ せ る よ う 書 類 の 整 備 と AAALAC

International とのやりとりを行うことが求められる。ここ

は極めてたんたんと物事が進行するので、わが国の常

識である、締め切りを多少すぎてもなんとかなるのでは

ないか、との幻想は持たない方がよいものと思われる。

遅れると次回の評議会に回され、認証が4カ月遅れる

こととなる。

また認証は、AAALAC International の認証規則に基

づいて行われることから、その内容を知っておくことは

認証成功の秘訣ともいえる。強調すべきは、AAALAC

International の認証にともなう情報は、極めて厳格に守

秘される点である。臨時専門家に就任する場合も評議

員に就任する場合も、この守秘義務規定の遵守を宣誓

することが求められる。当然評議員間ではこれらの情

報は共有されるが、それ以外の者に対して情報が漏れ

ることはない。とくに営利企業においてはこの点は極め

て重要な点であり、施設訪問を安心して受けて頂ける

鍵でもある。また AAALAC International の認証の是非

は、極めて民主的に審議しようとしていることから、申請

機関の上訴はすべて評議会に開陳される。これもわが

国ではなじみの薄い習慣であり、あまりしつこく言うと、

審査に不利に働くのではないかと思いがちであるが、誤

った判断をしないためにも、上訴にはより真摯に向かう

ことが慣例となっていることから、欧米のやり方に従って、

言うべき事は遠慮なく言うことが認証への近道といえよ

う。

AAALAC International 認証の維持

AAALAC International の完全認証は3年ごとに見直

しがある。認証を受けてから3年の間にプログラム内容

に大きな変更があった場合には、認証が一時差し止め

られる場合もある。また認証機関は毎年報告書の提出

が求められている。その年次報告書の中に大きな変更

が認められたときには再度機関訪問が行われる。

実際の評議会での年次報告書に基づく審議では、紛

糾することは極めて希である。ごく希に年次報告の内容

に疑義があった場合に、当該機関に問い合わせを行う

ことで多くは解決している。

また認証3年後は再度施設訪問が行われるが、これ

は初回と全く同様の手順で行われる。強いていえば、訪

問時の機関代表者との面談において、AAALAC

International の活動内容あるいは認証の意義について

の説明が、評議員から初回には入念に行われるが、更

新申請時には、この部分が相当に割愛されることが異

なる点となるだけである。

表1 AAALAC International の認証のプロセス

申請方法

プログラムの記載

記載事項

認証プロセス

機関訪問

機関代表者面談

プログラム記載事項の説明、確認

追加資料確認

意見交流昼食(動物実験委員を含む)

施設見学

見学後意見交換

機関訪問チーム会議

訪問チームの見解表明

機関訪問後意見交換

プログラム記載事項の査読

認証評議会

認証の種類

表2 AAALAC International 認証規則

定義

基準

手数料と手順

機関訪問と訪問者

認定と否認

認証資格

聴聞と上訴

認定証

記録の守秘

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 世界における AAALACの現状

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AAALAC International 認証の現状

AAALAC International の完全認証機関は全世界に

拡大しており、30の国ないし地域の約750機関が完全

認証を受けている。またこれ以外にも数十機関が現在

申請中でその審議がなされている。

わが国ではすでに5つの機関が完全認証されており、

また数機関が審議中となっている(本稿執筆時点では、

新たにCROのハムリー、アステラス製薬加島事業所が

完全認証されている)。しかし、中国ではすでに11の機

関の完全認証が公表されており、さらに次回評議会で

は、数機関がさらに完全認証を受けることが予想されて

いる。また審議中の機関も多数に上っている。また韓国

ではすでに国の機関を含む7機関の完全認証が公表さ

れていて、さらに数機関が申請直前まできていると聞き

及んでいる。韓国では本年から厳格な動物愛護法が施

行され、動物実験を行う研究機関の第3者認証が法律

で規定されていて、わが国よりさらに厳格な体制となっ

ている。このため AAALAC International の認証への関

心がさらに高まっている。

アジアではシンガポール、インドなどの経済発展国で

の申請が増加しており、ごく最近では経済発展国のロ

シアからの申請も認証されている。

動物実験を必要とするバイオメディカルサイエンスは

高度な工業的な発展のうえに築かれるものであることを

考えると、AAALAC International の認証機関がまず欧

米で先行し、その後、他の経済発展を遂げた地域に拡

大して行くことは良く理解できるところである。それに対

してすでに世界の先進国とされた日本が、他のアジア

の国々の後塵を拝しているのは、国民の持つ動物愛護

の精神の違いによるのではないかとさえ思いたくなるほ

どである。その一方、すでに完全認証されたわが国の

機関は、その動物実験の施行において、先進的な位置

を占めている現われであり、とりわけ動物愛護の観点

からは、他の機関の模範となるべき機関であるといえる。

今後も AAALAC International の完全認証を維持するよ

う日々改善を重ねられることを期待したい。

また、わが国でも日本学術会議の提言を受け、種々

団体がそれぞれの方法で第3者認証を企画している。

動物愛護の精神に沿ったこうした動きは歓迎すべきも

のであるが、かくも種々の国内認証がどれほどの意味

を持つのかについてはいささか疑念を持たざるを得な

い。AAALAC International の50年の歴史に習って最初

の一歩を踏み出しただけであるといえばその通りかもし

れないが、これだけ国際化が進んだ現在、国内の、そ

れもある特定の団体にだけ行われる第3者認証の意義

については、今後も検証を続ける必要がありそうである。

とくにわが国では国際認証組織である AAALAC

International の臨時専門家でさえ、わずかに4名しかい

ない現実では、他の国内認証組織ではその査察員の

専門性をどのように維持するのであろうかが極めて関

心のもたれるところである。AAALAC International の関

係者の教育システムならびに評議員、臨時専門家の選

任システムいずれをとってもそう容易に構築できるもの

とは思われない。できることであれば、動物実験にかか

る第3者認証は、国際的に権威のある団体に集約して

ゆくことがより適切な方向ではなかろうかと思われる。

実際、筆者も長らく AAALAC International の活動の

普及に汗を流してきたが、AAALAC International の担

当している関係者の実験動物福祉に関する見識の高さ

を考えるとき、AAALAC Internationalの国際的権威はま

すます揺るぎのないものとなって行くものと期待される。

また こうした国際的な動きにわが国の関係者が少しで

も 貢 献 で き る よ う に と の 考 え か ら 、 AAALAC

International アドバイザリーグループ日本を最近立ち上

げた。これは AAALAC International の情報の多くは英

語であることから、もっと気楽に AAALAC International

の情報を日本語で交換しようとするものである。とくに日

本語であれば、すでに完全認証を受けた機関の方々か

らも次に続く方々への適切な、またかゆいところに手の

届くようなアドバイスができるのではないかと考えたから

である。AAALAC Internationalの事務局と相談の上、日

本語を解する AAALAC International の臨時専門家と評

議員、さらに完全認証をすでに取得した機関の関係者

を組織化した。このグループの日本語による情報発信

により、つぎつぎと AAALAC International の認証を得る

機関が増え、わが国の実験動物福祉の立場に立った、

より適切な国際水準での動物実験施行の後押しができ

ることを期待している。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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AAALAC International の認定を得て

樽本 保男

ハムリー株式会社

当社はこの度、本年 3 月 31 日の Site visit に基づい

て6月13日付でAAALAC International [Association for

Assessment and Accreditation of Laboratory Animal

Care International(国際実験動物管理公認協会)]の完

全認定(Full Accreditation)を受けました。2005 年 4 月

に開始した準備から、3 年余りを経て辿りついたことで

あり、今後はさらに、いかに永くこの認定状態を継続し

ていくかに力を注ぎたいと考えています。その意味では

今がゴールではなく、出発点との思いでこれから先を見

つめていきたいと思っています。

認定の意義

さて、今改めて認定の意義について考えてみますと、

AAALAC International の目的が「実験動物の管理と使

用に関する指針」(Guide for the Care and Use of

Laboratory Animals、 以下「Guide」と略)に基づき、認

定事業を通じて「実験動物管理の質を高め、動物福祉

を推進し、生命科学の研究と教育を向上させること」とし

ていることを考えれば、認定は「動物の管理と使用が科

学的・倫理的に適正な水準に達していることの証明で

ある」といっても過言ではないと思われます。

米国では、NIH の研究補助金の交付を受ける条件で

あったり、FDA申請時の動物飼育関連部門査察の免除

などの実利的な意義もあるようですが、何よりも大きな

意義は、われわれの施設で作業に従事するスタッフが、

動物への思いやりに対する満足感と自信を持てるよう

になり、さらに、より深い動物観察の大事さを認識でき

るようになったことではないかと思います。

認定の経過

認定を受けるには、まずAAALAC International 事務

局に申請資料(Description of Institutional Animal Care

and Use Program)を作成し、送付する申請手続きから

始まりますが、申請資料へのすべての記載事項が既に

社内規定やSOPの文章になり、実際に行われている場

合は「Guide」との整合性の確認が必要です。そうでない

場合は、新しい規定やSOPの作成から始めなければな

りません。いったん申請手続きを行うと、次のステップの

Site visit までは年 3回の申請締め切り期日(夏期:4 月

1 日、秋期:8 月 1 日、冬期:12 月 1 日)から 3~4 カ月

の期間しかないため、申請手続きはほぼ準備が終了し

た後に行うのが適切といえます。

当社の申請手続きは第1回目を2005年11月に行い、

2006年 3月にSite visit を受けましたが、2006年 6月に

届いた評価委員会の評価結果は「Withhold Status(保

留状態)」でした。この結果に対して改善方針をたて、

2006 年 9 月に米国での評価委員会に出席して口頭上

告 し 、 具 体 的 な 改 善 計 画 と 当 社 の AAALAC

International認定に対する熱意と姿勢をアピールしまし

た。その結果、評価は「Provisional Status(暫定状態)」

と1ランクアップし、1 年以内に 2回目の再申請手続きと

Site visit を受ける指示を受けました。後に聞いた話で

は評価委員会の口頭上告に出席して施設アピールを

行った施設はこれまで米国以外にはなく、当社が初め

てであったそうです。この 1 回目の申請において良い評

価が得られなかった原因は、一言でいえば準備と認識

の不十分さであったといえます。しかし「Withhold

Status」、いわば不合格の評価を受けたことにより、反

面より多くの認定のためのノウハウを得、AAALAC

International の考え方を身につけることができ、2 回目

の Site visit 対応の準備ができたことも事実です。

認定の改善点

Site visit 或いはコンサルタントによって示された施設

の改善点は大きく5つの課題に分類できます。すなわち

① IACUC ( Institutional Animal Care and Use

Committee:動物の管理及び使用に関する所内委員

会)活動、②獣医学的管理、③労働安全衛生、④飼育

環境、⑤飼育方法の不備、に対するものです。言うなれ

ば認定を得るための根幹ともいうべき全分野に及んだ

ものでした。

IACUC 活動では動物実験審査方法、実験計画審査

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 AAALAC の認定を得て

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書内容、苦痛分類方法、動物再使用、安楽死の基準化

などが上げられ、すべてガイドに沿う形で規定やSOPと

して定め、実施に移しました。

獣医学的管理では、管理獣医師による実際的な獣

医学的管理の実施、例えば動物の診断・治療、安楽死

の決定、動物の健康管理、苦痛緩和処置、動物の健康

記録・履歴の管理、スタッフからの動物健康情報収集お

よび動物用医療器具・医薬品の準備を行うことが指摘

され、専任管理獣医師を置いて日常的に臨床的な健康

管理も行えるようにしました。

労働安全衛生では、危険物質取り扱い、疾病予防、

被験物質暴露予防のためのルール作りや、ルールの

実践を行い、とくに疾病予防においては、当社の特色で

あるサルとの関係において、咬傷時のヒト、サルの検査

体制および定期的ツベルクリン検査体制の確立、保護

具の完全着用、健康管理計画に対する医師の関与な

どについて改めました。

飼育環境では、環境エンリッチメントの充実化と動物

の社会的接触の増大化、飼育方法ではケージの洗浄

方法および細菌モニター、洗浄前後の器材の分離保管

などについて改善をはかりました。

AAALAC International 認定証

認定の継承と今後

認定の継承は 3年ごとの AAALAC International の

Site visit により更新されます。一度の認定よりも、認定

を永年継承していく方がより困難であることは容易に想

像できます。しかし、かつての GLP 制度がそうであった

ように、無から有になり、有である状態を長く続ければ、

自然とその状態が当然であるとの感覚が備わってくる

であろうという楽観的な考えも一方では持っています。

今後もスタッフ一同とともに、AAALAC International

認定の継承を目指すことにより、動物の福祉推進を高

め、ひいては試験を委託されるユーザーの皆様に、心

身ともに健康な動物を提供し、また健康な動物を用いた

実験によって、良質のデータを提供できるようになると

強く信じています。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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サル繁殖施設探訪記

~ ベトナム・カンボジア編 ~

清水 利行

ハムリー株式会社

ベトナムのサル繁殖施設

2008 年 1月 22日から 26日に、弊社の鈴木照雄社長

とVANNYグループ日本事務局大久保英紀取締役の

案内で初めてベトナムの NAFOVANNY の施設(写真 1)

と、今後、日本にサルの供給を目指している VANNY

BIO RISEARCH(COMBODIA)CORP.,LTD(写真 2)と、現

在建設中のPursat にあるカニクイザル繁殖施設を視察

してきた。

写真1

写真2

写真3

ベトナム・ホーチミン空港に到着、空港から出ると驚く

ばかりのバイクと人の数であった(写真 3)。空港から車

で約1時間ほどの距離にあるNAFOVANNYの2カ所の

繁殖施設を視察した。NAFOVANNY・1とNAFOVANNY・

2 の施設である。1 と 2 といっているが、1は No1 に No2

を増設して本来は2つの施設が一つになった。2は次い

でNo3の施設ではあるが、No1 と No2をNAFOVANNY・

1、No3 を NAFOVANNY・2 といっている。現在、次の施

設も計画中である。

NAFOVANNY・1は1993年建設、従業員約125人(内

獣医師9名で中国4名・ベトナム 5 名)とのことである。

サルの収容規模は約15,000頭で検疫数は1,300頭(日

本国許可数は約 707 頭)である。NAFOVANNY・1 で年

間 4,000 から 5,000 頭を出荷している。NAFOVANNY・2

もほぼ同じ規模であった。NAFOVANNY・1から2へは車

で 5 分程度のごく近い距離にある。ベトナムからの日本

への輸入は、ベトナムの施設から空港までが近いことと

ベトナム航空が毎日直行便を飛ばしていることで比較

的短時間で行えることから、サルへの負担は少ないと

思われる。施設内の写真撮影が厳しく制限されている

ことから、繁殖施設入口の写真(写真 4)でご紹介しま

す。

施設内は、緑地とサルの居住エリアが明確に区別さ

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 サル繁殖施設探訪記

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れ、通路はすべてコンクリート舗装されていた。通路な

どには小さなゴミ一つ落ちていなかった。また、繁殖施

設は1日 4回の清掃を行い、清潔さを維持しているとの

ことであった。この考えは VANNY 経営者の強い考え方

である。

サルを見た弊社鈴木と私の感想ですが、体形はフィ

リピンやインドネシアなどのカニクイザルと比べると小柄

という印象で、グループ飼育されているサルが穏やかな

印象を強く受けた。

写真4

カンボジアのサル繁殖施設

続いてホーチミン空港から 80 人乗り程度のプロペラ

機でカンボジアのプノンペン空港へは約 1時間弱のフラ

イトである。

プノンペン空港から約 30 分、プノンペン市内からも車

で約 30 分のところに VANNYBIORESEARCH(COMBODI

A)CORP,LTD のサル繁殖施設がある。この施設は 1997

年設立、2003 年に施設を立ち上げた。サルの収容数は

約 13,000 頭、検疫数は 1,280 頭で繁殖棟、検疫棟、病

棟、人口哺育棟の構成からなる。生産数は約 3,600/年

である。従業員数は106名で獣医10名(中国4名・カン

ボジア 6 名)とのことである。ここも写真撮影は厳しく制

限されている。施設運営は、ベトナムの施設と全く同じ

形式の運営である。

次にプノンペンから約 180km(車で 4~5 時間:舗装

はされてはいるがガタボコ道)の Pursat にある、現在建

設中の施設を視察に行った。東南アジア最大のトンレ

サップ湖を挟んで、反対側はかの有名なアンコールワッ

トの遺跡がある。Pursat の施設は建設の最中で、約 3

~4 割り程度できているというところであった。建築工事

中のため特有の赤土が泥濘となり大変な現場であった

(写真 5)。

私達が訪れた時も大型トラックが泥濘でスタックして

いた。ここの施設は完成すると最大約 110,000 頭の収

容能力を有する世界最大の施設となる。既にこの施設

への種ザル供給のための施設が稼動しており、カンボ

ジア政府から 15,000 頭/年の野生カニクイザルの捕獲

許可を取り、その種動物のストックと繁殖を進めてい

る。

最終的に 2012 年には軌道に乗せたいとのことで完

成が楽しみである。しかし、カンボジアから日本への輸

入に際してはいくつかの問題もある。まずは、日本国の

輸入対象国の指定を受けることは第一であるが、輸送

の問題も避けては通れない。

現在、カンボジアと日本の直行便がなく、少なくても

日本の輸入対象国となっているベトナムを経由しなくて

はならないと思われる。カンボジアとベトナム間の航路

も大型の航空機が就航していないため、陸路となるとか

なりの時間を要し、サルへの負担が危惧されるところで

ある。

写真5

今回、ベトナムとカンボジアの VANNY の施設を駆け

足ではあるが視察してきたが、施設運営に関しては、

VANNY 経営陣の考え方がしっかりしているため、衛生

管理などは非常に良い環境という印象を強く受けた。こ

れからの VANNY グループの、実験用サルの供給計画

を聞くと、世界で使用されているカニクイザルのほとん

どを供給可能な数になると思われる。

ハムリーとしてもユーザーのニーズに合わせたサル

類の供給において、大きな前進であると考えている。

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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ハムリープロダクツフェア 2008 開催

児矢野 紀彦

ハムリー株式会社

開催経緯としましては、ハムリー㈱は 2008 年さらなる

成長を成し遂げるため、そして、業界・社会全体に大き

くアピールする場を設けたいと考えると共に、新しいチャ

レンジをとの思いから、業界初のイベント「ハムリープロ

ダクツフェア 2008」を開催することを決意しました。

また、日頃よりお世話になっておりますユーザーの皆

様に感謝とお礼の意味を込めて、「ハムリーのこれから

を」目で見て、耳で聞いて頂ける機会を作り、その会場

にお越し頂くご来場者の方々に、ハムリー㈱とはどんな

会社なのか、どんな利用方法があるのか、どんな相談

に応じることができるのかなど、疑問と期待を持って頂く

ことと、まだまだ発展途上ではありますが、元気なハム

リー㈱を見て頂くことを目的とし、今年 2008 年 2 月 15

日(金)東京・浅草にある東京都立産業貿易センター台

東館 6階にて開催いたしました。

ハムリープロダクツフェア2008では、日本および世界

の動物福祉に関する情報として、関連セミナーやそれ

にかかわる開発製品の展示、輸入商品の紹介。また、

各種協力企業(図1)の参加やコラボレーションなど、さま

ざまなハムリー㈱をご覧頂けるセミナーと展示会にする

ことで、ご来場者の皆様に 1 日中楽しんで頂けるようい

ろいろな工夫をしました。

図1 各協力企業

見 ど こ ろ と し ま し て は 、 動 物 福 祉 ( AAALAC

International)に関する実践セミナーを国内から3演題、

海外から 1 演題(図 2)を用意し、昼食時も継続し聴講し

て頂けるようランチョン形式(写真1)を取り、また展示コ

ーナーでは、動物実験施設に見立てた展示ブース10カ

所(図 3)を準備しました。

図2 ハムリープロダクツフェアセミナー7演題

・世界における AAALAC の現状

大阪大学医学部 黒澤 努先生

・環境エンリッチメントの付与

株式会社中外医科学研究所 古藤 正男先生

・製薬企業における AAALAC の取得の具体的事例

万有製薬株式会社 藤掛 登先生

・麻酔機プレゼンテーション

VET EQUIP Inc. Bob Schrock

・睡眠科学研究所の取り組み

東京医科歯科大学 本多 和樹先生

・エコプロウォーター

東海大学健康科学部 田爪 正氣先生

・SCS(小動物用個別換気ケージ)

ハムリー株式会社 関口 冨士男

写真1 セミナー・ランチョン風景

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 ハムリープロダクツフェア 2008

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展示ブースでは、小動物からサル類までの「飼育ゾ

ーン」。試験・P-Ⅲ施設・睡眠科学研究などの「試験ゾー

ン」。飼育管理室・洗浄・消毒室では、消毒、殺菌、洗浄

機器の現状と未来というコンセプトで「テーマ展示」を

個々のエリアを設け展示しました。あるブースでは、展

示品および業務紹介だけでなく実演(図 4)なども行いま

した。そしてご来場者の皆様に楽しんで頂けるよう、す

べての催しは[ポイントシールラリー]を行い、終演の抽

選会時も楽しいプレゼントをご用意し楽しんで頂けたの

ではないかと思います。

図3 会場レイアウト図

図4 弊社内各業務紹介及び実演内容

当日のご来場者数は188名(写真 2)・(写真 3)であり、

遠方からのお客様も多数会場に足を運んで頂き、弊社

側の予想以上のご来場者数に成果があったのではな

いかと実感しております。

この度、ご来場頂きました皆様、ご多忙の中、お越し

頂きまして誠にありがとうございました。社員一同心より

お礼申し上げます。

写真2 開催当日ご来場者受付風景

写真3 各ブースご来場風景

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オベリスク Vol.14,1 January 2009

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MPTP 誘発一側性カニクイザルの

パーキンソン様症状発現と睡眠障害発現の相関

藤井 雅典

ハムリー株式会社

序論

サルやラットに1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydro

pyridine(MPTP )あるいは6-hydroxy-dopamine(6-OHDA

)を投与して、ドーパミン神経を変性させたパーキンソン

病動物モデルや、遺伝子変異によるモデルマウスにつ

いて研究されているが、随伴する睡眠障害についての

知見は十分得られていない。パーキンソン病の早期診

断や早期治療の観点から、こうした動物モデルを用い

た研究による知見が期待されている1)。実験動物を用い

た脳波の研究が行われて、改良が進められてきた。実

験には多くの困難が伴い、例えば脳波電極から送信機

へ通じるリード線を正しく装着するためには、動物の自

由を制限しなければならない。このような拘束下でも、ヒ

トに近縁であるサル類を用いた実験データは非常に有

用であり、多数の研究報告がある 2,3,4)。しかし近年、拘

束条件による脳波への影響も懸念されるようになり、ヒ

ト 5,6)や動物 7,8)で拘束による睡眠開始時間の遅延や、夜

間の覚醒時間増加などが報告されている。アカゲザル

においては24時間モンキーチェアーに拘束したことによ

る体重減少も報告されている 9)。テレメトリー(遠隔測定

法)を採用することにより、無拘束条件下で測定するこ

とが可能となる。この方法では 24 時間無拘束下で測定

できるため、概日リズムのような24時間周期のデータも

収集可能である。しかし、テレメトリーを活用したサル類

の基礎データの蓄積は十分とはいえず 10)、ヒトとの比較

や病態モデルへの適用例はほとんどない。

本研究では、健康なカニクイザルと、MPTP 投与で作

製したパーキンソン病病態モデルの脳波をテレメトリー

により測定することで、基礎データの提示と病態モデル

動物への応用例として行った実験データを提示する。

実験材料および方法

中国産のカニクイザル雄 4頭を用いた。年齢は

MPTP 投与した時点で 8才 2 カ月~9才 0 カ月、体重

6.85~7.40kg の健康な動物を用いた。

脳 波送信機はテレ メ ト リ ーシステムの送信機

(TL10M3-D70-EEE、Data Sciences International Inc)

に各電極のリード線をハンダづけした後、送信機を腹腔

内に埋め込んだ。電位の誘導は、脳波、眼球運動およ

び筋電図を双極で誘導した(図 1)。

MPTPはヘパリンナトリウムを含む生理食塩水を用い

て溶解し 0.6mg/kg の用量で 1個体当たり 40mLの投与

容量で、左の総頸動脈からインフュージョンポンプを用

いて 2mL/min の流速で 1日 1回投与した。投与は 1個

体当たり合計 2 回持続注入した。

パーキンソン病様症状のスコアリングは Ovadia ら 11)

のスコアー表を一部修正して利用し L-DOP Abeserazide

を用いて行動評価を実施した。L-DOPA は設定用量に

応じて 10-20mg/0.2mL の濃度になるように必要量を秤

量した。さらに、その 1/4 量(W/W)の beserazide を添加

し、生理食塩水で溶解した。L-DOPA の投与用量は第 1

クール、第 2クールとも 0、10 および 20mg/0.2mL/kg とし

た。投与部位は大腿四頭筋とした。

脳の摘出および病理組織標本の作製は、麻酔下に

て頚動脈から放血し脳を速やかに摘出し、ホルマリンに

て固定後、常法に従ってパラフィン切片を作製。パラフィ

ン切片は 5μm 厚とし、切片作製後冷蔵保存した。TH

(チロシンハイドロキシラーゼ)免疫染色および HE(ヘマ

トキシリン・エオジン)染色による黒質の染色領域はサ

ル脳図譜 12)を参照した。

図 1.サル・テレメトリーシステム概略

EEG

EMG

EOG

Dataquest A.R.T

データ取得・解析システム

受信ボード

データ変換マトリクス

大気圧校正装置

APR-1CQ2240

LAN or Media

睡眠データ処理・解析

SleepSign

RMC-1

サル飼育室

サル防音ケージ

モニター室

データ分析室

EEGEOGEMGBPHR

DEM

ビデオカメラ

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 パーキンソン病モデル動物

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結果および考察

1.無処置のカニクイザル脳波の 24 時間測定

カニクイザル 4頭のMPTP投与前の 24時間における

ヒプノグラム(睡眠経過図)を図2と3に示す。24時間の

経過観察では、4 頭とも明期に覚醒して暗期に眠ること

が示された。暗期は睡眠状態のうち深い睡眠の時間が

最も長かった。24 時間に占める各睡眠状態の割合を、

明期・暗期に別けて個体別に図示した図4から、明期は

覚醒、暗期は深い睡眠状態が全体の半分以上を占め

ることが分かる。無処置のカニクイザルでは睡眠状態に

個体差がほとんどないことが分かった。

マカカ属のアカゲザル(Macaca Mulatta)の無拘束下

の報告でも同様の結果が報告されている 10)。同報告書

によると、暗期の睡眠時間は 463.8~573.4 分(約 7.5~

9.5 時間)であった。本試験では 558.3~696.3 分(約 9.3

~11.6 時間)と若干長い傾向が確認された。動物種に

よる特徴なのかデータの蓄積が待たれるが、カニクイザ

ルにおいてもヒトと同様、明期に覚醒、暗期に眠るとい

う概日リズムが示された。しかも、個体差は小さいようで

ありモデル動物として非常に有用と考えられる(図 4)。

2.MPTP 投与後のパーキンソン病様症状の経日変化

動物番号の#1 および#2 ではいずれも破壊側の方が

一時的に重い症状を示したが、破壊側と非破壊側の違

いは小さくなり、最終的には、それぞれ重度と中度の両

側性モデルになった。

図 2.MPTP 投与前の 24 時間睡眠経過図

図 3.MPTP 投与前の 24 時間睡眠経過図

図 4.MPTP 投与前の各睡眠パラメータの総時間

覚醒(Wake)、うとうと状態(Drowsy)、浅い睡眠(Light Sleep)、深

い睡眠(Deep Sleep)およびレム睡眠(REM)の出現時間(午前 7:

00 から 24 時間解析)、明期(L)と暗期(D)総時間の比較(個体

別)。

3.MPTP 投与後の脳波の 24 時間測定

MPTP 投与後のヒプノグラムを図 5 に示した。#1、#2

ともに明期と暗期での傾向が接近しており、明期に眠っ

ている時間が増加していた。パーキンソン病様症状の

強く発現した#1では、覚醒と睡眠を24時間繰り返し、そ

れぞれの持続時間は非常に短かった。明期と暗期の睡

眠状態が異常を示し、概日リズムは崩れていた。24 時

間測定した各睡眠状態の出現時間を明期と暗期に別

けて個体別に示した図 6から、MPTP投与前と比較して、

明期と暗期における睡眠状態の違いはあきらかに小さ

くなっていた。

#1 (98C0995)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間 (分/12時間)

L12hD12h

#2 (982183)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間 (分/12時間)

L12hD12h

#3 (989453)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間 (分/12時間)

L12hD12h

#4 (98C0233)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間 (分/12時間)

L12h

D12h

MPTP投与前

#1(98C0995)明期

7:00-19:00

暗期19:00-7:00

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

#2(982183)

MPTP投与前

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

13:00-18:00

19:00-0:00

1:00-6:00

12:307:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

7:00-12:00

13:00-18:00

19:00-0:00

1:00-6:00

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

DrowsyLight

Deeply

REM

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

DrowsyLight

Deeply

REM

19:00-0:00

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

WAKE

Drowsy

Light

Deeply

REM

1:00-6:00

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

WAKE

Drowsy

Light

DeeplyREM

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

Drowsy

Light

Deeply

REM

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

DrowsyLight

Deeply

REM

19:00-0:00

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

WAKE

DrowsyLight

Deeply

REM

1:00-6:00

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

WAKE

DrowsyLight

Deeply

REM

#3(989453)

#4(98C0233)

MPTP投与前

MPTP投与前

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsy

LightDeeplyREM

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

7:00-12:00

13:00-18:00

19:00-0:00

1:00-6:00

7:00-12:00

13:00-18:00

19:00-0:00

1:00-6:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

Drowsy

Light

Deep

REM

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

DrowsyLight

Deep

REM

19:00-0:00

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

WAKE

DrowsyLightDeep

REM

1:00-6:00

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

WAKE

DrowsyLightDeepREM

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

Drowsy

Light

Deep

REM

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

Drowsy

Light

Deep

REM

19:00-0:00

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

WAKE

Drowsy

Light

Deep

REM

1:00-6:00

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

WAKE

Drowsy

Light

Deep

REM

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 パーキンソン病モデル動物

27

パーキンソン病患者における睡眠の最も顕著な特徴

の一つに「浅い眠りと睡眠の断片化」が上げられている15,16)。ヒトの睡眠の断片化自体は、覚醒または目覚めの

増加および集合型睡眠の欠乏として現われ、REM 睡眠

の短縮を伴う例が大半を占める 16)。#1のMPTP投与前

と投与後の REM 睡眠時間を比較すると、MPTP 投与後

に減少傾向が見られた(図 4、6)。中度のパーキンソン

病モデル動物になった#2 では、極端な睡眠の断片化は

見られなかったが、REM睡眠の減少傾向が同様に確認

された(図 4、6)。暗期の脳波を測定した Almirall ら 3)

は、自ら動けないほど重度のパーキンソン病様症状を

発現した 2 例の雄カニクイザルで、モンキーチェアー拘

束下ではあるが、深い睡眠と REM 睡眠の減少を報告し

ている。パーキンソン病における睡眠の断片化は、夜

間無動症、ドーパミン欠乏、ドーパミン療法および睡眠

中の周期性四肢運動障害、夜間頻尿、呼吸器障害とい

った随伴症状など、睡眠を妨げる個別の要因の総和と

して起ると考えられている。16)

中度のパーキンソン病様モデル動物となった#2 では、

明期と暗期の覚醒時間および睡眠時間の差が小さく、

概日リズムが崩壊しており(図 2、5)、明期における睡

眠時間の増加と暗期における覚醒時間の増加を特徴と

する(図 4、6)。しかし、ヒトで指摘されている REM 睡眠

の減少に伴う睡眠の断片化と、浅い睡眠の増加のうち、

#2 では浅い睡眠の増加は確認されていない。#1 では、

深い睡眠は減少し、浅い睡眠が増加しており(図 6)、

Almirall ら 3)の重度パーキンソン病モデル動物の症状

と一致していることから、進行したパーキンソン病の特

徴と考えられる。

図 5.MPTP 投与後の 24 時間睡眠経過図

図 6. MPTP 投与前の各睡眠パラメータの総時間

覚醒(Wake)、うとうと状態(Drowsy)、浅い睡眠(Light Sleep)、深

い睡眠(Deep Sleep)およびレム睡眠(REM)の出現時間(午前 7:

00 から 24 時間解析)、明期(L)と暗期(D)総時間の比較(個体

別)。

4.L-DOPA 投与による脳波への影響

#1 に溶媒を投与したときは、投与前後覚醒と睡眠傾

向に変化はなかったが、L-DOPA を投与したときは、明

期と暗期いずれについても覚醒状態が終日続いた(図

7、9) 。L-DOPA に対する反応は通常は 2~4 時間で終

了するが、#1 では L-DOPA 投与から終日覚醒した。

#1 は重度パーキンソン病モデルのため、L-DOPA に対

する反応が異なるのかもしれない。Almirall ら 3)は、重

症化したパーキンソン病様モデル動物では、2 例のうち

1 例で暗期の覚醒が全体の 60%以上を占めることを報

告している。重症モデルに関する文献が大変少ないた

め、本現象についてはさらにデータを蓄積して検討した

い。

#2 は、溶媒投与と比較して L-DOPA 投与時の覚醒時

間が増加するのが特徴である。少量のL-DOPA投与は

眠気を誘発する(D2 様作用)17) が、大量の L-DOPA投

与は興奮作用を有し、Non REM 睡眠・REM 睡眠を抑制

する(D1 様作用)。L-DOPA 大量投与による覚醒時間

の増加は、D1 様作用によると考えられる(図 8、10)。

パーキンソン病に見られる睡眠・覚醒障害は、ドーパ

ミン補充療法により誘発されると考えられる。パーキン

ソン病の進行とドーパミン補充療法が、覚醒と睡眠の調

節に関与する神経伝達物質(コリン・セロトニン・ドーパ

ミン作動系)のバランスに何らかの影響を与えるためと

考えられている 18) が、そのメカニズムは解明されてい

#1 (98C0995)

0

100

200

300

400

500

600

700

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間(分/12時間)

L12hD12h

#2 (982183)

0

100

200

300

400

500

600

700

Wake Light Deep REM

総時間

(分/1

2時間

)

L12h

D12h

MPTP投与後(Day25)

MPTP投与後(Day55)

#1(98C0995)

MPTP投与後(Day25)

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

#2(982183)

MPTP投与後(Day55)

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKEDrowsyLightDeeplyREM

WAKE

Light

Deeply

REM

WAKE

Light

Deeply

REM

WAKE

Light

Deeply

REM

WAKE

Light

Deeply

REM

7:00-12:00

13:00-18:00

19:00-0:00

1:00-6:00

7:00-12:00

13:00-18:00

19:00-0:00

1:00-6:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

Light

Deeply

REM

Drowsy

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

Light

Deeply

REM

Drowsy

19:00-0:00

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

WAKE

Light

Deeply

REM

Drowsy

1:00-6:00

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

WAKE

Light

Deeply

REM

Drowsy

7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

Light

Deeply

REM

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

Light

Deeply

REM

19:00-0:00

19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30

WAKE

Light

Deeply

REM

1:00-6:00

1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

WAKE

Light

Deeply

REM

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 パーキンソン病モデル動物

28

ない。#2 の結果は、カニクイザルのパーキンソン病モデ

ル動物は、こうした睡眠障害の究明にも有用であること

を示唆している。

図 7.溶媒および L-DOPA20㎎/kg 投与時の

24 時間睡眠経過図

図 8.溶媒および L-DOPA20㎎/kg 投与時の

24 時間睡眠経過図

図 9. 溶媒および L-DOPA 投与時の

各睡眠パラメータの総時間

覚醒(Wake)、うとうと状態(Drowsy)、浅い睡眠(Light Sleep)、深

い睡眠(Deep Sleep)およびレム睡眠(REM)の出現時間(午前 7:

00 から 24 時間解析)、明期(L)と暗期(D)総時間の比較(個体

別)。

図 10. 溶媒および L-DOPA 投与時の

各睡眠パラメータの総時間

覚醒(Wake)、うとうと状態(Drowsy)、浅い睡眠(Light Sleep)、深

い睡眠(Deep Sleep)およびレム睡眠(REM)の出現時間(午前 7:

00 から 24 時間解析)、明期(L)と暗期(D)総時間の比較(個体

別)。

#1 (98C0995)

0

100

200

300

400

500

600

700

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間(分/12時間)

L12hD12h

#1 (98C0995)

0

100

200

300

400

500

600

700

Wake Drowsy Light Deep REM

総時間(分/12時間)

L12hD12h

MPTP投与後(Day28)

Control(saline)

MPTP投与後(Day37)

L-DOPA20mg/kg

#2 (982183)

0

100

200

300

400

500

600

700

Wake Light Deep REM

総時間(分

/12時間

)

L12hD12h

#2 (982183)

0

100

200

300

400

500

600

700

Wake Light Deep REM

総時間(分

/12時間

)

L12hD12h

MPTP投与後(Day56)

Control(saline)

MPTP投与後(Day65)

L-DOPA20mg/kg

#1(98C0995)7:00-12:00

7:00 7:30 8:00 8:30 9:00 9:30 10:00 10:30 11:00 11:30 12:00 12:30

WAKE

Light

DeepREM

Drowsy

13:00-18:00

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00 17:30 18:00 18:30

WAKE

Light

DeepREM

Drowsy

19:00-0:00

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DeepREM

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1:00-6:00

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WAKE

Light

DeepREM

Drowsy

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

溶媒投与(午前10:00、Day28)

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

L-DOPA 20m/kg 投与(午前10:00、Day37)

:L-DOPA投与後の持続的覚醒

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7:00-12:00

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1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 5:00 5:30 6:00 6:30

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19:00-0:00

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1:00-6:00

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WAKE

Light

DeepREM

Drowsy

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

明期7:00-19:00

暗期19:00-7:00

溶媒投与(午前10:00、Day56)

L-DOPA 20m/kg 投与(午前10:00、Day65)

:L-DOPA投与後の持続的覚醒#2(982173)

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WAKE

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オベリスク Vol.14,1 January 2009 パーキンソン病モデル動物

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5.TH 免疫染色および HE 染色による黒質の病理学的

解析

図 11に示すように、MPTPを投与していない対照動物

では、両側の黒質にTH陽性細胞が観察された。 一方、

パーキンソン病様症状を強く発現した#1 では、TH 陽性

細胞が両側とも完全に消失していた。両側に中度のパ

ーキンソン病様症状を発現した#2 では、両側ともに TH

陽性細胞は減少していたが、一部残存していた。重度

のパーキンソン病モデル動物になった#1 では、スコアリ

ングおよび L-DOPA による反応とも一致した。両側とも

に重度の障害が発現した原因も、TH 陽性細胞の消失

で説明される。中度のパーキンソン病モデル動物になっ

た#2 においても、外見所見と一致する結果となった。左

右の違いはなく、同程度の障害を示したスコアリングと

対応している。

図 11.TH 免疫染色および HE 染色による黒質の

病理組織

6.新規発見

本研究から得られた結果から、カニクイザルはヒトに

似た睡眠状態をとり、パーキンソン病モデル動物として

睡眠障害に関する研究に有用であることがあきらかに

なった。また、テレメトリーシステムにて 24 時間無拘束

下に脳波を測定することで、より自然条件に近い条件

で評価が可能となり、パーキンソン病に伴う睡眠障害の

治療法開発へ貢献が期待される。

謝辞

本論文作成に際し、有益なご助言とご高閲を賜わり

ました(独)産業技術総合研究所環境安全管理部ライフ

サイエンス実験管理センター・大和田一雄先生に深謝

いたします。

多大なるご指導とご鞭撻を賜わりました大正製薬株

式会社医薬動態・安全性研究所理事奥山茂博士、大

正製薬株式会社医薬動態・安全性研究所 阪川隆司

博士に心より深く御礼申し上げます。終始ご支援を賜

わりました元東京医科歯科大学・生体材料工学研究所

教授、現ハムリー株式会社・睡眠科学研究所所長 本

多和樹博士に謹んで感謝いたします。

本研究の機会を与えて頂きましたハムリー株式会社

鈴木照雄社長、鈴木信夫副社長、試験研究所樽本保

男所長に謹んで感謝いたします。さらに、本研究は申し

上げるまでもなく、多数の共同研究者の絶大なるご協

力により初めて成し得たものであります。本研究の遂行

に際し、ご協力を下さいました山形大学医学部附属動

物実験施設の伊藤恒賢先生始めスタッフの皆様、ハム

リー株式会社試験研究所、動物技術研究所、睡眠科学

研究所の同僚各位に心より深謝いたします。

参考文献

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activity of the stress system:a preliminary study.J

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left rightBar=1mm

個体#1

HE

TH

対照

個体#2

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2008 年 10 月より ヒト由来がん細胞を用いた、 試験受託業務を始めました。

 

制がん剤の初期スクリーニングで、動物実験支援を通じて探索、 研究開発での評価のお手伝いをさせて頂いております。(非GLP) 

受託試験項目

免疫不全動物(ヌードscidマウス、ヌードラット等)を用いた

○抗腫瘍効果試験(腫瘍増殖に対する影響確認試験)

○薬物動態試験(担がん動物)

○薬物耐性腫瘍株、転移株の作製

○移植検討試験(新規臨床株の移植確認はP-3施設で実施)

○がん細胞の継代維持、増殖

特徴 バリア環境下の試験実施です。 お客様からの提供によるがん細胞株の受託が可能です。 移植は皮下だけでなく、由来するヒトの臓器と同部位への移植も可能です。 レンタルラボでのご依頼にも対応可能です。

*弊社では、AAALAC Internationalの指針を遵守した動物福祉を推進目標に掲げ動物試験を 

実施しています。  

本社営業所 TEL:0280(76)4477 E‐mail:[email protected] 

東京営業所 TEL:03(5828)4477 E‐mail:[email protected] 

大阪営業所 TEL:06(6306)4477 E‐mail:[email protected]