kpi・開示・ガバナンスの観点から~³‡料6...

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資料6 バイオベンチャーと機関投資家の 対話促進に向けて KPI・開示・ガバナンスの観点から~ 平成30年2月19日 経済産業省 生物化学産業課

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資料6

バイオベンチャーと機関投資家の対話促進に向けて

~KPI・開示・ガバナンスの観点から~

平成30年2月19日

経済産業省 生物化学産業課

Page 2: KPI・開示・ガバナンスの観点から~³‡料6 バイオベンチャーと機関投資家の 対話促進に向けて ~KPI・開示・ガバナンスの観点から~

1. 機関投資家の運用手法と評価ポイント

2. バイオベンチャーの開示のあり方

3. バイオベンチャーのガバナンス

目次

2

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委員会や米国ヒアリングにおける運用手法や評価ポイントに関する御指摘(抜粋)

“トップクオリティ投資家、キャピタルからの資金調達は透明性が重視される。米国では投資家自体はすぐに見つかるが、良質な投資家でない場合には、すぐに株が売られるので値下がりする。良質な投資家は株で儲けるのが目的ではなく、将来的なバリューのために株を保有する。”

“米国におけるバイオ専門の投資家は、企業の現在の価値ではなく、パイプラインが上市された際の価値を見込んでバリュエーションをしているため、上市品がなくても投資することがある。”

“投資の意思決定とバリュエーションを左右するのは、CEO・CSOの名前と実績、VCの実績、対象疾患/市場規模、ビジネスモデル。特に、ガバナンス(ヒト)の要素は大きい。コアメンバーとVCのラインナップだけで、大体の市場価値が予想できる。”

“投資判断の際には、現時点で黒字かどうかではなく、将来的なバリューで判断する。バリューを決定する際には、製品、ビジネスプラン、開発状況、コストファイナンシャル、競合状況、ランドスケープ、パートナーシップなどを主な指標としている。”

“投資基準は基本的には人とパイプライン。VCなどアーリーな段階の投資ではパイプラインがほとんどないので人を見るしかない。上場してレイトステージになるほど、パイプライン重視の評価に変わる。”

“機関投資家の運用がTOPIXベースに縛られていることが根本的な課題。他方で、最近のアクティブ運用は、厳格なベンチマーク運用を強いるのではなく、参考指標として使うケースが多いのではという見方もある。”

“パイプラインの評価に当たっては、知財のバリュエーションが重要だが、米国でも難しく、バイオベンチャー自身が知財戦略をどう考えるか(知財の出願国数、運用・管理のあり方など)を示す必要がある。”

3

業績予想とバリュエーションのあり方

“良いパイプラインを有するバイオテックであれば、赤字であっても何年間もホールドする場合がある。現時点での利益ではなく、キャピタルへのアクセスがあることを重要視している。”

機関投資家の運用手法

国内機関投資家の運用の硬直性を招く要因

“バイオベンチャーは赤字がほとんどで、信用懸念銘柄として運用プロセスを考える最初の段階で除外されてしまい、スクリーニング対象にすらならないのが現状。”

“リアルオプションの考え方は、ボラティリティが高いほど価値が上がるため、バイオ企業の評価に向いている。

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バイオベンチャーは多様な投資家へのアプローチが求められる

上場(IPO)

資金調達(PO)製品開発段階

製品上市安定成長段階

VC

クロスオーバー投資家(機関投資家、事業会社等)

パブリック投資家(アクティブ)

パブリック投資家(パッシブ)

投資銀行(バンカー) アナリスト

VC

クロスオーバー投資家(不足)

パブリック投資家(アクティブ/不足)

パブリック投資家(パッシブ/インデックスなし)

米国ではすべての段階を網羅する厚いインベストメントチェーンを形成

規制で禁止されているバンカー↔アナリストを除いて、ほぼ全てのプレーヤー間で情報を交換

日本では特にIPO前後で継続的に投資を行うクロスオーバー投資家が不足

アクティブ投資家が不足していることに加え、比較的層の厚いパッシブ投資家もインデックスに含まれないバイオは対象外

投資銀行(バンカー) アナリスト

バイオベンチャーの成長段階に応じた投資家変遷の日米比較

出所:経済産業省作成4

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米国では、上場前後で株式を保有し続ける「クロスオーバー投資家」が企業価値向上に寄与

上場前の資金調達額

出所: “The Biotech Cross-Over Phenom: Biomarker Of Quality?”, Bruce Booth, Forbes, Nov 7 (2014). より作成

0

50

100

150

200

250

300

350

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

-20%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

上場前の資金調達額と上場時の調達額の比率

上場後の株価伸び率[$M]

IPO時にクロスオーバー投資家が入っていた企業(N=24)

クロスオーバー投資家不在の企業(N=70)

(注1)2013年1月~2014年10月にIPOした企業94社を対象。各数値は平均値。(注2)クロスオーバー投資家:IPO前からバイオ企業に投資をしている非VC系投資家を指す。

本記事中では、Adage, Brookside, Deerfield, Fidelity, Foresite, RA Capital, OrbiMed, Wellingtonが最もアクティブなクロスオーバー投資家の例として挙げられている。

5

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(参考)「クロスオーバー投資家」が果たす役割の考察

米国W社の上場前後の投資家構成の推移と米国有識者のコメント

株主Form S-1/A(2015/8/15時点の構成) Form 10-K/A(2016/4/15時点構成) DEF 14A(2017/7/22時点の構成)

保有株数 保有割合 保有株数 保有割合 保有株数 保有割合

RA Capital Healthcare 5,213,651 22.2% 7,088,651 32.89% 7,088,651 25.6%

Fidelity Management and Research 1,212,477 5.2% 2,057,632 9.55% 1,893,756 6.8%

Foresite Capital Fund III 1,333,725 5.7% 1,410,689 6.55% - -

IPO(2015/11/11)102M$調達

PO(2017/4/12)93.4M$調達

“フィデリティーなどのmutual fundは、プライマリー投資もセカンダリー投資もできるので、IPO時には既に入っている同一ファンドから買い増す。IPOマーケットの良い時には例えば100M$をブックするIPOをする場合、既存VC、そしてクロスオーバーの投資家だけで、ブックの2-3倍の引き合いがある。その状況で担当投資銀行が機関投資家を周る。一通り企業の内容を説明した後、投資家に「今回のIPOの応募倍率は?」と聞かれると、最初の一件目の投資家から「既に2-3倍です」となる。情報がすぐに伝達し、どんどん倍率が上がる。”(米国著名キャピタリスト)

“クロスオーバー投資家(プライベートとパブリック双方で投資を実行する)の顔ぶれによるIPO価格の感応度分析をしたら、Top10くらいの顔ぶれがいる場合、100M$くらいIPO時の企業価値が上がっているとの結果が出た。投資銀行による差は少なかった。”(米国著名キャピタリスト)

“W社でいえば、RA Capitalなどのクロスオーバー投資家に恵まれた。また、自社も情報提供をしている他、投資銀行も非上場企業と機関投資家のコミュニケーションを促進している。これらのエコシステムの深さがあり、機関投資家もIPOに参加することができる。”(W社)

“クロスオーバー投資は例えばノルウェーの年金基金などが資金の出し手。ファンド期限の決まっているプライベート投資(VC投資)と基本的に期限のないパブリック投資が両立できるのは、年金など超長期の資金だから。通常のファンドとタイムホライゾンが異なる。”(著名長期投資家)

出所:各種HP、ヒアリング結果より作成

第2回研究会資料

6

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米国では、企業の成長とともにヘッジファンドは退出、アクティブ投資家を中心に、インデックス投資家も参入

NBI構成企業の時価総額に応じた主な投資家構成の変化(運用手法別)

18.9

14.0

26.9

50.5

10.6

15.5

43.6

19.9

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1B$ 未満

1B$ 以上

ヘッジファンド

アクティブ型機関投資家

インデックス型機関投資家

機関投資家以外

7

(注1)NBI構成銘柄197社のうち、データ取得可能な184社を対象。(注2)アクティブ型機関投資家=(機関投資家率全体)-(ヘッジファンド率+インデックス投資家率)として算出。(注3)データベース上、機関投資家が複数の運用手法のファンドを保有している場合には、いずれかのファンドの運用手法が反映されている点に留意が必要。

出所:データベースFactsetをもとに作成。

時価総額

時価総額

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(参考)時価総額別にみたバイオ投資を支える機関投資家の主な例

会社名

NBI構成銘柄の保有総額

[$M]

BlackRock Fund Advisors 2,586

Fidelity Management & Research Company

2,056

The Vanguard Group, Inc. 1,593

New Enterprise Associates LLC 792

Wellington Management Company LLP 727

SSGA Funds Management, Inc. 675

OrbiMed Advisors, L.L.C. 606

Third Rock Ventures LLC 433

Franklin Advisers, Inc. 409

Perceptive Advisors LLC 345

(注)NBI構成銘柄197社が対象。

出所:データベースFactsetをもとに作成。

会社名

NBI構成銘柄の保有総額

[$M]Fidelity Management & Research Company

10,153

BlackRock Fund Advisors 8,422

The Vanguard Group, Inc. 7,606

Wellington Management Company LLP 3,868

SSGA Funds Management, Inc. 3,387

T. Rowe Price Associates, Inc. 3,364

Baker Bros. Advisors LP 2,132

OrbiMed Advisors, L.L.C. 1,308

Thomas H. Lee Partners LP 1,098

Advent International Corp. 977

会社名

NBI構成銘柄の保有総額

[$M]

The Vanguard Group, Inc. 46,535

BlackRock Fund Advisors 36,164

Fidelity Management & Research Company

34,256

SSGA Funds Management, Inc. 25,807

T. Rowe Price Associates, Inc. 20,052

Capital Research And Management Company (Global Investors)

16,601

Wellington Management Company LLP 14,328

PRIMECAP Management Company 13,010

Baker Bros. Advisors LP 7,244

Baillie Gifford & Co. 7,030

時価総額 1B$未満の企業 時価総額 1~5B$の企業 時価総額 5B$以上の企業

8

NBI構成企業の保有総額からみた、主要な投資家上位10社

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他方、日本のバイオベンチャーは国内外の機関投資家からの関心が小さい

各マーケットにおけるバイオセクター/各企業の投資家構成

第1回研究会資料

60%15%

24%

30%

3%66%

12% 2%

85%

77%

14%

8%

26%

2%69%

18%0%

6%

75%

21%

76%

37%

2%

61%

10%

89%

9

60%

15%

24%

NBI Growth INDEX Value/YIELD/GARP Others機関投資家

出所:各種データベースをもとに作成

39%

11%

50%

上場バイオ企業平均 時価総額4,000億円級 時価総額2,000億円級ナスダックバイオ156社(Top4社除く) Agios Pharma Novocure

欧州バイオ81社 Swedish Orphan Evotec

韓国バイオ42社

適切な企業なし

Medy-Tox

日本バイオ30社 ペプチドリーム そーせいグループ

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(参考)機関投資家の運用スタイル

運用スタイルの定義

大分類 小分類 定義

Growth

Growth

まず、1-Year Revenue Growth レートでスクリーニングされます。Aggressive Growth スタイルに分類されない機関投資家で、マーケットの売上高成長率を上回って、資産の40%以上を株式で所有している機関投資家がGrowthスタイルの候補となります。その後、株式はP/Eレシオでスクリーニングされ、マーケットのP/Eレシオを上回って、資産の40%以上を株式で所有しているポートフォリオのみがGrowth スタイルに分類されます。

Aggressive Growth

まず、1-Year Revenue Growth レートでスクリーニングされます。マーケットの売上高成長率を上回って、資産の75%以上を株式で所有する機関投資家がAggressive Growthの候補になります。その後P/Eレシオでスクリーニングされ、マーケットのP/Eレシオを上回って資産の50%以上を株式で所有しているポートフォリオのみがAggressive Growth スタイルに分類されます。

Index Indexこの投資スタイルは、ファンドマネージャーから直接受け取った情報や目論見書、各種報告書や年次/半期レポートをもとにリサーチアナリストがファンド毎に分類します。

Value

Value

まず、P/B レシオでスクリーニングされます。Yield にもDeep Valueスタイルにも分類されない機関投資家で、マーケットのP/Bレシオを下回って資産の70%以上を株式で所有している機関投資家が、Valueスタイルの候補になります。その後株式は、P/E レシオでスクリーニングされ、マーケットのP/Eレシオを下回って、株式で資産の70%を株式で所有しているポートフォリオのみがValue スタイルに分類されます。

Deep Value

まず、Price-to-Book (P/B)レシオでスクリーニングされます。Yield スタイルに分類されない機関投資家で、マーケットのP/Bレシオを下回って資産の90%以上を株式で所有している機関投資家がDeep Valueスタイルの候補になります。その後株式はPrice-to-Earnings (P/E) レシオでスクリーニングされ、マーケットのP/Eレシオを下回って、株式で資産の90%以上を保有しているポートフォリオのみがDeep Value スタイルに分類されます。

Yield Yieldこの投資スタイルでは、配当利回りのみを特性値に使用してポートフォリオを選別します。保有株式資産の90%以上が、広範市場 (ブロードマーケット) の配当利回りを上回る投資家がこのスタイルに分類されます。

Others Others 上記分類にあてはまらないもの。

出所:Factset データベース資料をもとに作成 10

第1回研究会資料

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出所:各種HP、ヒアリング結果より作成11

機関投資家の評価ポイントのイメージ(案)

財務情報を合せた企業評価非財務情報中心の企業評価

創業 上場 安定黒字化

非財務指標

財務指標

コアメンバーの実績、経歴(≒上場前のガバナンス)

保有する技術・特許

研究開発の進展

対象疾患・競合状況

セルサイドアナリストのカバレッジ

パートナーシップ状況

利益

資金調達能力

既に入っているVC

売上成長

← 多くの日本のバイオベンチャー → ← 多くのTOPIX企業 →

上場後のガバナンス

ESG

VC、クロスオーバー投資家 機関投資家(アクティブ) 機関投資家(パッシブ)

機関投資家がバイオ企業を評価する基準は企業の発展段階に応じて変化する

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機関投資家の評価は基本的には開発パイプラインに基づく業績予想による

出所:各種HP、ヒアリング結果より作成

投資プロセスの大枠 詳細

業績予想

現在の会社の損益計算書や開発品目を参考に、将来的な売上高の予想を作成するプロセス。医薬品開発企業であれば「患者数×薬価×普及率×開発成功確率×(ロイヤルティ率)」といった計算をパイプラインごとに行い、それらを集計

いわゆる・・・●年後の利益が●億円

バリュエーション

基本的に業績予想に基づき、現在妥当だと考えられる時価総額(株価)を割り出すプロセス。大きくはマルチプル法とDCF法が存在

マルチプル法は特定の指標(PER,PBR,PSR,EV/EBITDA)の業界平均値などを基準とし、場合によってプレミアムを付与する。DCF法は将来のキャッシュフローをディスカウントし現在価値に直す。何年先までを合計するか、資本コストをどの程度にするかなどが論点

いわゆる・・・目標株価●●円

投資判断

基本的には目標株価から下に乖離している銘柄は「買い」、上に乖離している銘柄は「売り」となる 一方、実際の投資でガバナンスやESGなどによるスクリーニング、さらに売買タイミングなども重要視される(例:計算上の企業価値は高いが、株価の上昇タイミングも先になりそうな場合など)

いわゆる・・・「買い」「中立」「売り」

12

伝統的機関投資家が株を売買するまでの検討プロセス

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出所:各種HP、ヒアリング結果より作成13

10年間のDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法による企業評価イメージ

フリーキャッシュフロー

1期目 2期目 3期目 4期目 5期目 6期目 7期目 8期目 9期目 10期目

10年目以降(永続価値)

・・・

永久成長率xx%

DCF法では企業の永続価値(DCF法での予想の最終年度以降)が現在の企業価値に占める割合が大きく、中長期での企業成長を織り込むモデルとなる

10年間の業績予想に基づく価値

業績予想

バリュエーション

×(割引率)の期数乗(1期目なら1乗、2期目なら2乗)

10年目の予想の延長に基づく価値

バイオ企業で頻用されるバリュエーション「DCF法」の場合、中長期の視点が企業価値を左右

=企業価値●●億円(発行済み株数で割ると理論株価)

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1. 機関投資家の運用手法と評価ポイント

2. バイオベンチャーの開示のあり方

3. 日米欧のバイオベンチャーのガバナンスの比較

目次

14

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委員会や米国ヒアリングにおけるバイオベンチャーの開示に関するご指摘(抜粋)

“SECでは黒塗りにした契約書そのものを開示していることもあり、日本でもこれくらいの情報開示がされると、より適正なバリュエーションが可能になるだろう。”

“バイオベンチャーの開発スケジュールについて、期間を区切って目標設定をする際は、ある程度レンジを区切り到達可能な目標にする必要がある。”

“開示についてSECによる規制はあるが、実際にはその中身をアナリストがどのように判断・評価するかが投資家の投資行動に結びついていると感じる。”

15

“バイオ企業のバリューは無形資産、特許、人にあり、財務指標だけを基準にするのは適していない。しかし投資判断をできるだけの非財務情報が開示されていないのも現状である。”

“ガバナンス状況、ビジネスモデルの持続性、KPIは重視される点。これらのバランスを機関投資家に示してアピールする必要がある。”

“上場後は成長に応じてだんだんビジネスモデルが変遷して事業も多角化する結果、収益メカニズムも複雑化する。企業側は、それに応じた適切な開示ができておらず、機関投資家、長期保有の株主からの理解が得られにくい状況があるのではないかと感じている。”

“バイオベンチャーにおいて、ボラティリティが大きいことはマイナス面ばかりではない。アッパーサイドも常にあるが、そこがなかなかフォーカスされない。事業を始めてからの各ステップにおいて、各企業がインダストリーとして情報発信をきちんとする必要がある。”

“どのようなタイミングで開発フェーズ1、2、3が進んでいって、どのタイミングで上市するのかといったスケジュールについて、現在は各社各様の開示をしている状況。その結果、一般投資家も含めて公正な判断が難しくなる。統一的に開示をするだけでも正確な投資判断につながっていくのでは。”

バイオベンチャーの開示の課題

バイオベンチャーの望ましい開示のあり方

米国SECの開示に関して

“フェーズ3試験をした場合、米国の企業は結果の多くを開示するが、日本では大企業でもあまり開示していないことがある。共有しても英語版がないことも多い。必要な開示情報は企業の規模にもよるが、実験の経緯と、現在に至るまでのデータは重要。”

”米国のバイオテックは学会で発表済みのポスターをウェブに公開することが多い。日本企業もコンファレンスコールやプレスリリースを英語版も含めて、投資家向けに情報発信してはどうか。“

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財務情報

具体的な契約内容は相手企業との契約上、あるいは企業の競争戦略上開示しにくい面もある一方で、投資家が投資判断を行う際の重要な指標となりえる。日本企業の場合、通常はロイヤルティ率は開示されない場合がほとんど

16

売上高の背景にある契約情報について可能な範囲での開示を実施

自社ロイヤルティの開示例

自社マイルストーン金額の開示例

提携先企業パイプライン(対象領域)

開発ステージ ロイヤルティ次に見込まれる

イベント

A社 パイプラインA(神経系) Pre-NDA 3.0% NDA申請

B社 パイプラインB(腎臓病) Phase 2/3 9.0% Phase 3 準備開始

C社 パイプラインC(腫瘍/婦人病) Phase 2/3 6.0-10.0% Phase 2 試験開始

D社 パイプラインD(循環器疾患) Phase 2/3 2.0-3.0% Phase 2b データ取得

E社 パイプラインE(腫瘍) Phase 2 1.5-3.0% Phase 2 データ取得

F社 パイプラインF(糖尿病) Phase 2 十数% 臨床試験の進展

マイルストーン 対象地域第4選択薬として

第3選択薬として

第2選択薬として

販売承認申請の受領

米国 受領済み 1,000万ドル 1,500万ドル

欧州国主要国 受領済み 500万ドル 1,000万ドル

日本 500万ドル 500万ドル 1,000万ドル

販売承認

米国 受領済み 3,000万ドル 6,000万ドル

欧州国主要国 1,500万ドル 1,500万ドル 3,000万ドル

日本 1,500万ドル 1,500万ドル 3,000万ドル

出所:各種公表資料より作成

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17

企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン(製薬協)

Sunshine Act(医療改革法)

開示が推奨される項目

公開対象項目

業務委託費(コンサルティングフィー等)

物品提供

研究費

知財(特許料・ライセンス料)

寄付・謝礼

株・ストックオプション

旅費

贈答・食事・接待費 など

開示が義務づけられている項目

出所:「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」, 日本製薬工業協会(2015)および各種資料をもとに作成

(参考)日米の情報開示規定の比較

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市場分析

対象患者数について、日本では非開示か上記のピラミッド下段に相当する過大なポテンシャルが開示されるケースが散見される。一方で、これには日本では薬価が対象患者数で決まるという側面も関係しており、一概にバイオベンチャーに非があるわけでもない。

18

対象となるマーケットセグメントの明確化

医薬品による治療中

OTC医薬品による治療中

発症しているが治療の意思なし

170万人

~600万人

~1,200万人

市場ポテンシャル *2

~140億ドル/年

患者数 2017年のターゲット市場 *1

市場規模 10億ドル/年~

*1 米国医薬品統計データに基づく売上実績 *2 現在の薬価に基づく推計

自社パイプラインの対象患者の開示例①

出所:各種公表資料より作成

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市場分析

ベンチャーではないが、大手製薬企業では自社製品の対象となる患者数を定期的に独自調査、公開している例も存在する。

19

(参考)自社製品の患者数データの定期的かつ詳細な開示

自社パイプラインの対象患者の開示例②

244,100 229,900 223,000 218,500

36,500 15,300

253,800 240,800 233,600 226,600

34,000 8,800

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

2015年時推計患者数(人)

対象患者数

(適応症:HER2+ 乳がん)

米国

欧州5カ国

44,500 40,900 31,200

91,300

82,200

25,800

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

mCRC 1L 総患者数 mCRC 1L 服薬中 mCRC 2L 化学療法中

2015年時推計患者数(人)

対象患者数

(適応症:大腸がん(CRC))

米国

欧州5カ国

第1選択123,100人

第2選択57,000人

~71,000人

* 1L・2L:それぞれ第1選択・第2選択(疾患に対して1番目・2番目に選択される薬)を表す。

出所:各種公表資料より作成

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20

日本の創薬型バイオ企業は海外の投資家への情報提供が不十分なおそれ

70%

47%40%

27%

50%

40%

3% 3%

20%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

英語版HP 英文IRニュース 決算資料・報告書等

英語版がない 更新が遅い、簡易版しかない 英語版がある

出所:各社公表資料をもとに作成

日本の創薬型バイオ企業30社で英語の開示情報を公開している企業

第1回研究会資料

情報アクセス

Page 21: KPI・開示・ガバナンスの観点から~³‡料6 バイオベンチャーと機関投資家の 対話促進に向けて ~KPI・開示・ガバナンスの観点から~

開発状況

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今後起こりうるイベントタイムラインの明瞭な整理

自社パイプラインの開発スケジュールの開示例

~ 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 ~

▼2016年2Q X社へライセンスアウト

パイプラインAX社へ導出済み

Phase 1臨床試験

ロイヤリティ収入IND承認

非臨床試験

▼マイルストーン収入 ▼Y社へライセンスアウト▼マイルストーン受領済

パイプラインBY社と提携中

IND承認

Phase 1臨床試験

Phase 2臨床試験

非臨床試験ロイヤリティ収入

パイプラインD 非臨床試験実施中

研究開発IND申請

Phase 1臨床試験

▼マイルストーン収入

パイプラインCZ社と提携中

研究開発IND申請

Phase 1臨床試験

Phase 2臨床試験

非臨床試験

▼マイルストーン収入

疾患領域①

疾患領域②

疾患領域③

研究開発の進捗見込みについて、明確に開示している日本のバイオベンチャーは少ない

出所:各種公表資料より作成

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出所:SASBウェブサイトをもとに作成

SASBでは投資家の欲するサステナビリティ情報と実際の開示情報との落差を埋めるため、セクター毎にESG評価項目を選定、「SASBスタンダード」として公開している。SECとも密接に意見交換をしており、SASBスタンダードをSEC開示規則に含めることを目指している。

産業界・投資家・公益団体(Industry Working Group)

当該セクターについて、産業界・投資家・公益団体(中間的立場)、それぞれからなるWGを結成。開示項目に含めるべきESG課題を洗い出す。

会計基準委員会(Standards Board)

WGで得られた開示項目案の精査、レビューを行う。

一般国民(Public Comment)

決定前の開示項目案にパブリックコメントをつける。

3年ごとに見直し

SASB

SEC

• SEC Filingに含める非財務情報について、セクターごとに「SASBスタンダード」(具体的な開示項目とKPI)案を作成• 2018年中頃、最終版「SASBスタンダード」公開予定(暫定版は公開済み)

• 2010年、「気候変動に関連する開示に係る解釈指針」の公表• 2013年、「紛争鉱物に係る開示規則」の適用開始

ESG

22

米国の非営利団体SASBでは、業種別のESGの評価指標を策定

SASB(Sustainability Accounting Standards Board)によるESG開示の基準化

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SASBスタンダードにおけるバイオテクノロジーセクターの評価項目

サステナビリティの課題となる項目重要度

ランキング(注)

企業への経済的インパクト

重要項目 (E)環境資本 エネルギー・水・廃棄物の効率 7 低

(S)社会的資本

安全性と副作用 1 高

臨床試験参加者の安全性 2 高

マーケティングの倫理性(適応外使用の防止)

3 低

医薬品へのアクセシビリティ 4 低

公正で現実的に購入可能な価格設定

5 中

偽薬 - 中

(G)ガバナンス 汚職・贈収賄 6 中

製造とサプライチェーン管理 - 高

人的資本 雇用者の募集・教育・保持 8 低

雇用者の健康・安全 - 低

新規に注目すべき項目

(E)環境要因 自然環境における医薬化合物 9 ー

天候の変化による健康への影響

10 ー

出所:”Biotechnology Research Brief” (SASB) をもとに作成

Industry Working Groupでのアンケート調査等をもとに項目を策定する。なおSASBの検討対象はESG関連の項目のみ。知財などの伝統的なビジネスドライバーとは重複せず、補完する位置づけとしている。

セクター サブセクター

ヘルスケア バイオテクノロジー

金融 医薬化合物

テクノロジー及びコミュニケーション

医療機器・医療用品

再生不能資源 物流(ヘルスケア)

運輸 販売店(ヘルスケア)

サービス マネージドケア

資源加工

消費財 (I, II)

再生可能資源、代替エネルギー

インフラ

SICSセクター分類(2013.7公表版)

• 企業に経済的インパクトがある• 企業規模を問わず、当該セクターに属する全企業に関係することが重要項目の必須条件。

ESG

23

バイオセクターにおけるESGの評価指標は以下のとおり

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1. 機関投資家の運用手法と評価ポイント

2. バイオベンチャーの開示のあり方

3. バイオベンチャーのガバナンス

目次

24

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委員会におけるガバナンスに関する御指摘(抜粋)

“日本のバイオベンチャーの給与は低く、海外の人材を呼び込めない。”

“日本の研究の内容は世界レベルにあるが、それをビジネス化するには人材不足。特に事業開発やIRの専門人材が不足しており、人材の流動化が必要。ベンチャー間やベンチャーと投資家間もそうだが、製薬企業出身者がもっと増えればよい。”

25

機関投資家としてはリターンを得ることに加えて、議決権の行使という面も重要。各社が持っている議決権行使のガイドラインに従って、システマチックに、赤字期間が長いことをもって経営者の留任に反対の議決権を行使するケースも想定されるが、これは双方にとって無益である。

“経営者の質は資金調達における大きな判断要素。米国と比べて人材の流動性が小さい日本において、人材確保は長期的課題。”

経営陣やマネジメント人材の質の確保

経営陣やマネジメント人材の継続性の担保

ガバナンスは重要なファクター。とりわけバイオベンチャーは技術力に強みを持つ立派な創業者が引っ張っているケースが多い。他方、ガバナンスは、社外取締役のモニタリング機能であり、両者のバランスが難しい。米国のシリコンバレーでもガバナンスの議論は活発。力のある経営者がいなくなった途端に企業が崩壊することがあり、機関投資家は難しい判断を迫られている。

国内機関投資家の議決権行使とガバナンスの関係

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出所:経済産業省 平成 22 年度産学連携人材育成事業 「バイオテクノロジー産業の発展を担う人材育成のあり方に関する調査」 『具体事例から学ぶ創薬系バイオベンチャー経営の要点』 をもとに作成 26

【事例1】 目的意識のミスマッチ

当社は東京オフィスから B 大学のインキュベーション施設に研究員を 3 人派遣し、Y 教授との連携の下、開発をスタートした。・・・Y 先生は X 社長の開発計画について口出しをしない、ということだったはずが、実は社長のいないところで、開発の指示を出すどころか、自分の研究の興味を優先した実験を指導し、さらには研究室の論文セミナーへの出席や大学院生の指導などもさせているということが次々に明るみに出ることとなった。

大手製薬企業 D 社ライセンス部の Z 氏は、大学発バイオベンチャーの「研究者経営者」には、「ビジネス」の認識がずれている先生が多いと指摘する。 ・・・Z 氏によると、P 先生は「少しでも早く論文発表したい」とのことで、特許出願の前に論文発表してしまったことがあったという。

【事例2】論文と特許の優先順位の違い

アカデミアの研究者と、ベンチャー企業家との間には、実験データの捉え方に大きなギャップがある。このギャップに泣かされたバイオベンチャーG 社の R 社長はこう語る。・・・「経営会議では、広く浅くポジティブデータが示されて、あれもこれも『できるかもしれない』という話ばかり。・・・もっと問題なのは、臨床的に重要なネガティブデータがなかなか上がってこないことです。」

【事例3】実験データに対する認識の違い

アカデミアとバイオ企業のすれ違いによる失敗事例

バイオ企業はしばしば、研究と経営のバランスをとった意思決定が課題となる

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(注1)取締役人数には、委員会設置会社か否かなど経営体制の影響が含まれる。(注2)日本はバイオ企業44社、米国はNBI構成銘柄197社、欧州はFactsetデータベースにより Biotechnology カテゴリに分類される企業82社が対象。(注3)本資料はあくまでも社外取締役の人数を示したものであり、実際の経営上は社外取締役の質が重要である点に留意が必要。

出所:データベースFactset、各種情報をもとに作成。

4.6 4.5

2.5

4.2

2.6 2.5

1.1

2.55.0

2.3

4.8

6.2

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

日本 欧州 米国 日本 欧州 米国

1B$ 未満 1B以上

時価総額

社内取締役数 [人]

社外取締役数 [人]

日本は取締役の人数が少なく、社外取締役の占める割合が低い

日本・欧州・米国のバイオ企業における社内外の取締役の人数

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バイオベンチャーの経営者はPhD/MDの保有率が高い

(注)日本は創薬型バイオ企業30社、米国はNBI構成銘柄197社、欧州・韓国・台湾はFactsetデータベースにより Biotechnology カテゴリに分類される企業(それぞれ82社、43社、34社)を活用。時価総額2B$以下の企業のうち、時価総額が高いものを順に、上位10社の企業を抽出。

平均時価総額[$M] 952 1,884 1,180 736 743

出所:データベースFactset、各種情報をもとに作成。 28

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

日本 米国 欧州 韓国 台湾

該当なし MD MD・PhD PhD

各地域におけるバイオ企業トップのPhD/MD保有率

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(注)対象の企業は前頁と同じ。PhD/MD保有率とビジネス経歴を共に満たすサンプルも存在する点(重複可能性)に留意。

出所:データベースFactset、各種情報をもとに作成。 29

平均時価総額[$M] 952 1,884 1,180 736 743

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

日本 米国 欧州 韓国 台湾

該当なし 製薬企業出身 製薬企業出身・MBA MBA

バイオベンチャーの経営者は製薬企業出身者やMBA取得者が多く存在

各地域におけるバイオ企業トップのビジネス経歴

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(参考)日本の薬学系学科卒業者の主な進路

(注1)集計対象は全国の薬系大学院修士および博士課程修了者(平成29年度)。なお非就職者は除外している。(注2)修士卒業者全てと博士卒業者の一部は、制度上、薬剤師国家試験の受験資格を持たない点に留意。(注3)「アカデミア」には教育・研究職と進学者が含まれる。

出所:一般社団法人薬学教育協議会「就職動向調査結果報告書」をもとに作成。 30

修士(4年生学科卒)

薬局・医局 企業(製薬) その他企業(化学・食品) アカデミア

博士(4年生学科卒)

910人 180人

薬学系学科卒業者の主な進路

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0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

(注)日本はバイオ企業44社、米国はNBI構成銘柄197社のうちデータが得られた企業174社が対象。

出所:データベースFactsetをもとに作成。

米国平均2.5 [$M]

日本平均0.3 [$M]

31

18.1

役員報酬[$M]

日米のバイオ企業における取締役の平均報酬(ストックオプション等含む)

日本のバイオ企業の役員報酬は、米国と比較して低い

日本企業米国企業

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*大手製薬企業:Eli Lilly、Bristol-Myers Squibb、Johnson & Johnson、Pfizer、AbbVie、Merck & Coの6社平均出所:データベースFactset、各種情報をもとに作成。

32

6%

16%

26%

65%

29%

26%

13%

27%

24%

15%

28%

23%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

NASDAQ平均

大手製薬平均

NBI平均

(全企業)

R&D 製造原価 販管費(R&D除く) 営業利益

米国企業の平均的な損益計算書の構造と配当実施の有無

配当がある企業の割合

100%

26%

3%

バイオ企業は、配当ではなく研究開発投資による企業価値向上を重視