(茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 october火星接近...

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2020 OCTOBER ひと月で 2 度、お月見 ブルームーン。英語の慣用句で「めったにない珍しいこと」を表す 言葉ということですが、最近は「ひと月に 2 度、満月がある」ことをこ う呼ぶのだとか(※諸説あります)。月の色が青くなるわけではありま せんので、あしからず。 それにしても、月の呼び名が注目される機会が増えたように感じま す。やはり月は私たちにとって身近な存在。日本人も古来、月と親しん できたことは言うまでもありません。10 月 1 日は中秋。旧暦 8 月 15 日に あたるお月見の日です。さらにひと月遅れのお月見、後の月と呼ばれる 十三夜は 10 月 29 日です。ひと月に 2 度、お月見ができますね。せっ かくだから風流な呼び名をつけて楽しんでみませんか。 天の赤道 黄道 M45 M31 M25 M39 M22 M34 M23 M33 M11 M8 M13 M21 M17 M16 M36 M20 M38 M15 M2 M29 M52 M28 M18 M81 M27 M82 M51 M57 M24 二重星団 北アメリカ星雲 N7293 N253 N288 アンドロメダ いて いるか うお うしかい おうし おおぐま おひつじ カシオペヤ かんむり ぎょしゃ きりん くじら ケフェウス けんびきょう こうま こぎつね こぐま こと さんかく たて ちょうこくしつ つる とかげ はくちょう ペガスス へび へびつかい ヘルクレス ペルセウス みずがめ みなみのうお やぎ りゅう わし へび ベガ カペラ 北極星 アルタイル アルデバラン フォーマルハウト デネブ 夏の大三角 秋の四辺形 ミラ 海王星 天王星 土星 木星 火星 西 0等 散開星団 1等 散光星雲 2等 惑星状星雲 3等 超新星残骸 4等 球状星団 5等 銀河 10月上旬 21:00頃 10月中旬 20:00頃 10月下旬 19:00頃 10月15日の 東京 20:00頃 大阪 20:20頃 福岡 20:40頃 名月とともに煌々と光る火星は、6 日に最接近。 月明かりがなければ、かすかな星ばかりのうお座を 探す目印として活躍してくれます。 秋の空は月夜も星夜もたっぷり楽しめそうです。 解説/渡辺真由子(茅野市八ヶ岳総合博物館) 月刊 星ナビ 2020 年 10 月号 19

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Page 1: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

2020 ● OCTOBER

ひと月で2度、お月見 ブルームーン。英語の慣用句で「めったにない珍しいこと」を表す言葉ということですが、最近は「ひと月に 2 度、満月がある」ことをこう呼ぶのだとか(※諸説あります)。月の色が青くなるわけではありませんので、あしからず。

 それにしても、月の呼び名が注目される機会が増えたように感じます。やはり月は私たちにとって身近な存在。日本人も古来、月と親しんできたことは言うまでもありません。10 月1日は中秋。旧暦 8 月15日にあたるお月見の日です。さらにひと月遅れのお月見、後の月と呼ばれる十三夜は 10 月29日です。ひと月に 2 度、お月見ができますね。せっかくだから風流な呼び名をつけて楽しんでみませんか。

天の赤道

黄道

M45

M31

M25

M39

M22

M34

M23

M33

M11

M8

M13

M21

M17M16

M36

M20

M38

M15

M2

M29

M52

M28

M18

M81

M27

M82

M51

M57

M24

二重星団

北アメリカ星雲

N7293N253N288

アンドロメダ

いて

いるか

うお

うしかい

おうし

おおぐま

おひつじ

カシオペヤかんむり

ぎょしゃ きりん

くじら

ケフェウス

けんびきょう

こうま

こぎつね

こぐま

こと

さんかく

たて

ちょうこくしつ

つる

とかげ

はくちょう

ペガスス

へび

へびつかい

ヘルクレス

ペルセウス

みずがめ

みなみのうお

やぎ

りゅう

わし へび

ベガ

カペラ

北極星

アルタイル

アルデバラン

フォーマルハウト

デネブ

夏の大三角

秋の四辺形

ミラ

海王星

天王星

土星 木星

火星

西

東 0等 散開星団 1等 散光星雲 2等 惑星状星雲 3等 超新星残骸 4等 球状星団 5等 銀河

10月上旬 21:00頃10月中旬 20:00頃10月下旬 19:00頃

10月15日の東京 20:00頃大阪 20:20頃福岡 20:40頃

名月とともに煌 と々光る火星は、6日に最接近。月明かりがなければ、かすかな星ばかりのうお座を

探す目印として活躍してくれます。秋の空は月夜も星夜もたっぷり楽しめそうです。

解説/渡辺真由子(茅野市八ヶ岳総合博物館)

月刊 星ナビ 2020年10月号 19

Page 2: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

2020 ● OCTOBER

火星接近 約2年2 か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないものの、「“準”大接近」とのこと。ネーミングのおかげで期待が高まりますね。各地で開かれる観察会にでかけてみましょう。望遠鏡で見る火星は見どころ盛りだくさんです。 名所といえば、黒っぽい模様として見える「大シルチス」と、火星の北極・南極に白っぽく見える「極冠」。どちらも赤い火星の大地に色が映える見どころです。しかも、いつも同じ様子ではないのが楽しみなポイント。大シルチスは火星の自転のため、見えたり見えなかったり。極冠は、火星の季節の変化のため、縮小したり拡大したりするのです。 2018 年は、大接近のチャンスだったにもかかわらず、模様を覆うダストストームが発生したために充分に観察できなかった人も多いようです。リベンジに燃える炎は火星色 ! ファイト !

アレスとフォボス、ダイモス 火星は、ギリシア神話の戦いの神アレスの星。さそり座の 1 等星アンタレス(アンチ・アレス)は、「アレス(火星)に対抗するもの」という意味でしたね。せっかく比べようとしても夏の低空に位置するさそり座は、すでに沈んでいます。最接近している火星にはかなわないということかもしれません。火星の明るさはマイナス 2 等に達しています。煌 と々した光は、凛 し々い戦いの神の姿にぴったりです。 火星の周りには、2 つの衛星が回っていることが、1877 年の大接近の際に発見されました。フォボスとダイモスといい、どちらも小惑星のようないびつな形をしています。起源ははっきりしておらず、よそから来た小惑星が火星軌道に捕らえられた「小惑星捕獲説」や、巨大な天体が火星に衝突し形成された「巨大衝突説」などの仮説があります。これを明らかにするため日本の火星衛星探査計画MMXは、フォ

ボスとダイモスの観測、さらにはサンプルリターンを目指して現在進行中だそうです。 神話ではフォボスとダイモスは、アレスと恋人アフロディテの間に誕生した兄弟です。戦いから生まれる「恐怖」の化身ですから、不気味とも思える歪んだ形は、奇しくもぴったりのイメージだと思いませんか。

うお座の神話 オウィディウスの『祭暦』によると、女神アフロディテとその子エロスが恐ろしい怪物テュフォンから逃げ惑っていたときに 2 匹の魚が現れ、ふたりをそれぞれ背中に乗せて川を渡るのを助けました。この 2 匹の魚がうお座になったのだそうです。伝ヒュギヌスの『天文詩』によれば、テュフォンから逃げるときにアフロディテとエロス自身が魚に変身して難を逃れ、それがうお座になりました。牧神パンが半分魚の姿になって川に飛び込んだというやぎ座の神話とともに知られる物語です。 うお座は黄道 12 星座のひとつですから、きっと馴染みのある星座でしょう。けれども、3 等より明るい星がないので、実際の星空では見つけるのが難しい星座のひとつです。

天の赤道

黄道いて

いるか

うお

くじら

こうま

こぎつね

たて

ちょうこくしつつる

ペガスス

へびつかい

みずがめ

みなみのうお

みなみのかんむり

やぎ

わし

へび

アルタイル

フォーマルハウトミラ

ディフダ

南 西東

天頂

1日2日

3日

4日

20日

21日

22日

23日

24日

25日

26日27日

28日29日

30日

31日

海王星

天王星

土星

木星

火星

フォーマルハウトがぽつんと南に見えるころ、空気が澄んだ秋の空なら低空のつる座の星も案外たどれそう。木星・土星はいて座とともにいよいよ低くなっていく。一方、東の空で明るく目立つのが、最接近中の火星。そのあと昇ってきたくじら座の変光星ミラも極大光度(2等程度)と明るくなっているので見ておきたい。

火星の衛星フォボス(左)の大きさは約 21km、ダイモス(右)の大きさは約12kmで、火星に比べて非常に小さい。©NASA/JPL-Caltech/UniversityofArizona

10月 2日10月 10日10月 17日10月 23日10月 31日

満月下弦新月上弦満月

20 月刊 星ナビ 2020年10月号

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 天頂近くまで昇った秋の四辺形から星座探しをはじめると、四辺形の西側の辺を南に下ろして見つかる1 等星フォーマルハウトのところに、お魚発見 ! お ! うお座 !? と思った人は、星占いのイラストのうお座を思い出しましょう。フォーマルハウトが光っているのは、お魚 1 匹だけ。うお座は親子 2 匹の魚がちゃんと描かれているハズです。みなみのうお座でさらにイラストに描かれている2 匹の魚は尻尾どうしが結ばれています。空の四辺形の南側と東側に分かれた魚の星が見つけられなくても、尻尾を結ぶリボンのところの星々がちょうど四辺形の角を挟み込むように連なっているのがわかります。

黄道

アンドロメダ

うしかい

おうし

おおぐま

おひつじ

カシオペヤ

かんむり

ぎょしゃ

きりん

ケフェウス

こぐま

こと

さんかく

とかげ

はくちょう

へび

ヘルクレス

ペルセウス

りゅう

ベガ

カペラ

デネブ

北極星

北 東西

天頂

5日

6日

冬の大三角

こじし

りゅう

こぐま

ケフェウス

アンドロメダ

うお

おひつじ

カシオペヤ

きりん

おおぐま

りょうけん

しし

うみへび

とも

はと

エリダヌス

うさぎおおいぬ

こいぬ

ふたごかに

やまねこぎょしゃ

ペルセウス

おうし

オリオンくじら

北極星

カノープス

カペラ

アルデバラン

ベテルギウス

ポルックスカストル

レグルス

シリウス

リゲル

プロキオン

西

火星

金星

カシオペヤ座が高く昇って見やすくなった。北極星から天頂にかけてのあたりにケフェウス座も見つかる。東のアンドロメダ座やペルセウス座のちょっと複雑そうな並びもたどってみて。シンプル派にはさんかく座がおすすめ。こと座のベガがまだ高くに見える西の空では、ヘルクレス座とりゅう座の戦いがダイナミックに繰り広げられている。

時刻は東京を基準とした場合。大阪では約20分後、福岡では約40分後に、ほぼ同じ星空となります。

10月上旬 21:00頃10月中旬 20:00頃10月下旬 19:00頃

10月上旬 5:00頃10月中旬 4:00頃10月下旬 3:00頃

10月15日の東京 4:00頃大阪 4:20頃福岡 4:40頃

しだいに長くなる夜をゆっくり過ごせそうな秋。放射冷却が強まって、澄んだ星空が期待できそう。明け方の冷えと夜露にはしっかり備えて。火星を西まで追いかけ続けている間に、冬の大三角が南中し、

東には明けの明星が現れました。アレス(火星)とアフロディテ(金星)が名残惜しそうに、見つめあうように、いつまでも輝きを放っています。

みなみのうお座の切手(ツバル)

19世紀の星図に描かれたうお座

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月の

2020 ● OCTOBER

月の

日 曜 月齢 日出 日没 月出 月没 おもな天文現象

1日2日

3日4日5日6日7日

8日9日

10日

11日12日

13日14日

15日16日

17日

18日19日

20日

21日22日23日24日

25日26日

27日28日

29日30日

31日

土星木星水星

火星金星

天王星

海王星

●▼×:惑星出:惑星南中:惑星没

天体名 出 南中 没 等級 視直径 星座

水星 07:48 13:01 18:13 0.1 7.2″ おとめ

水星 07:30 12:37 17:44 0.9 8.9″ てんびん

水星 06:09 11:29 16:51 5.2 10.0″ おとめ

金星 02:27 09:03 15:38 -4.1 15.2″ しし

金星 02:45 09:09 15:32 -4.0 14.3″ しし

金星 03:03 09:14 15:25 -4.0 13.6″ おとめ

火星 17:06 23:23 05:46 -2.6 22.2″ うお

木星 12:33 17:26 22:20 -2.3 38.8″ いて

土星 12:56 17:54 22:52 0.5 16.7″ いて

天王星 17:47 00:35 07:19 5.7 3.7″ おひつじ

海王星 15:37 21:23 03:14 7.8 2.3″ みずがめ

水星

水星

水星

金星

金星

金星

火星

木星

土星

天王星

海王星

5日

15日

25日

5日

15日

25日

15日

15日

15日

15日

15日

午後4時 6時 8時 10時 午前0時 2時 4時 6時 8時

夕方日没宵空

真夜中

未明日出

16時 20時 0時 04時 08時

■月と惑星の位置

■惑星の出没表

新月

満月

満月

下弦

上弦

■軌道図の惑星の位置は15日のもので 1か月間の移動量を矢印で示している■惑星の出没データは東京での値■月齢カレンダーの時刻は月の出没時刻■赤道星図の月の位置は毎日21時のもの

■距離と大きさ1天文単位(au)=149,597,870.7km1光年=9.46×1012km1パーセク(pc)=3.26光年地球の半径=6378km(赤道)月の半径=1737km

■惑星の公転周期水 星:0.241年  金 星:0.615年火 星:1.881年  木 星:11.86年土 星:29.46年  天王星:84.02年海王星:164.8年

1 木 13.7 05:35 17:26 17:28 04:38 中秋の名月(十五夜) 2 金 14.7 05:36 17:24 17:53 05:34 みずがめ座T星が極大(7.0~14.2等、周期201日) 01時:233P/ラサグラ彗星が近日点を通過(周期5.3年) 01時06分:水星が東方最大離角(25.8°、0.1等、視直径6.8″) 06時05分:●満月 10時00分:月が赤道通過、北半球へ 3 土 15.7 05:37 17:23 18:19 06:29 月と火星が接近 とも座W星が極大(7.1~13.6等、周期120日) 08時06分:金星とレグルスが最接近(東京00°05′) 13時01分:月が火星に最接近(東京01°14′)(南大西洋で火星食) 4 日 16.7 05:37 17:21 18:46 07:25 さそり座RR星が極大(5.0~12.4等、周期281日) ヘルクレス座S星が極大(6.4~13.8等、周期304日) 02時22分:月の距離が最遠(1.057、40万6321km、視直径29.4′) 04時:218P/リニア彗星が近日点を通過(周期5.4年) 20時06分:月が天王星に最接近(東京03°41′) 5 月 17.7 05:38 17:20 19:16 08:21 04時04分:おひつじ座38番星(5.2等)の食(東京:暗縁から出現、高度49°) 6 火 18.7 05:39 17:19 19:48 09:18 ぎょしゃ座R星が極大(6.7~13.9等、周期458日) 02時56分:カシオペヤ座RZ星が極小 23時18分:火星が地球と最接近(0.414916天文単位、6207万0493km、-2.6等、視直径22.6″) 7 水 19.7 05:40 17:17 20:26 10:16 おとめ座R星が極大(6.1~12.1等、周期146日) 06時28分:小惑星パラスが東矩(わし座) 19時:311P/パンスターズ彗星が近日点を通過(周期3.2年) 22時17分:おうし座ι星(4.6等)の食(東京:暗縁から出現、高度20°) 8 木 20.7 05:41 17:16 21:09 11:13 04時55分:寒露(太陽黄経195°) 21時:10月りゅう座流星群が極大(出現期間10月4日~10月13日) 9 金 21.7 05:41 17:14 21:59 12:09 ヘルクレス座T星が極大(6.8~13.7等、周期165日) 22時05分:月が最北(赤緯+24°37.0′) 10 土 22.7 05:42 17:13 22:56 13:02 04時20分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 04時28分:ふたご座ω星(5.2等)の食(東京:暗縁から出現、高度72°) 09時40分:◎下弦 12時:おうし座南流星群が極大(出現期間9月9日~11月20日) 11 日 23.7 05:43 17:12 23:59 13:51 12 月 24.7 05:44 17:10 --:-- 14:35 02時21分:カシオペヤ座RZ星が極小 20時05分:おうし座λ星が極小 13 火 25.7 05:45 17:09 01:06 15:15 うみへび座S星が極大(7.2~13.3等、周期257日) 01時09分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 14 水 26.7 05:46 17:08 02:16 15:52 細い月と金星が接近 13時31分:水星が留(赤経14.54h) 13時31分:月が金星に最接近(東京03°19′) 15 木 27.7 05:47 17:06 03:27 16:26 04時54分:おとめ座ν星(4.0等)の食(札幌:暗縁から出現、高度17°) 06時06分:火星がうお座で衝(-2.6等、視直径22.3″) 15時25分:木星が東矩(いて座、-2.3等、視直径38.8″) 16 金 28.7 05:47 17:05 04:40 17:00 おおぐま座R星が極大(6.5~13.7等、周期302日) 08時31分:月が赤道通過、南半球へ 17 土 0.3 05:48 17:04 05:53 17:35 おおぐま座S星が極大(7.1~12.7等、周期226日) 04時31分:●新月 08時46分:月の距離が最近(0.928、35万6912km、視直径33.5′) 12時:P/2015 X6パンスターズ彗星が近日点を通過(周期4.6年) 18 日 1.3 05:49 17:03 07:08 18:12 06時44分:月が水星に最接近(東京06°03′) 18時46分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 19 月 2.3 05:50 17:01 08:22 18:54 20 火 3.3 05:51 17:00 09:35 19:41 07時38分:秋の土用(太陽黄経207°) 21 水 4.3 05:52 16:59 10:44 20:34 06時:378P/マクノート彗星が近日点を通過(周期16.1年) 15時:オリオン座流星群が極大(出現期間10月9日~11月5日) 19時26分:準惑星エリスが衝(くじら座、18.7等) 22 木 5.3 05:53 16:58 11:46 21:32 月と木星が接近 11時04分:月が最南(赤緯-24°42.5′) 20時31分:カシオペヤ座RZ星が極小 23 金 6.3 05:54 16:57 12:40 22:33 月と土星が接近 わし座R星が極大(5.5~12.0等、周期270日) 03時15分:月が木星に最接近(東京02°12′) 06時28分:土星が東矩(いて座、0.6等、視直径16.6″) 08時00分:霜降(太陽黄経210°) 11時03分:月が土星に最接近(東京03°10′) 22時23分:◎上弦 24 土 7.3 05:55 16:55 13:25 23:35 しし座R星が極大(4.4~11.3等、周期310日) 01時12分:カシオペヤ座RZ星が極小 25 日 8.3 05:55 16:54 14:03 --:-- アンドロメダ座R星が極大(5.8~15.2等、周期409日) 05時53分:カシオペヤ座RZ星が極小 23時36分:水星が内合(太陽の南01.0°、5.5等、視直径10.0″) 26 月 9.3 05:56 16:53 14:36 00:36 14時:184P/ロヴァシュ彗星が近日点を通過(周期7.4年) 27 火 10.3 05:57 16:52 15:06 01:35 21時40分:月が海王星に最接近(東京04°40′) 28 水 11.3 05:58 16:51 15:32 02:32 17時43分:うお座HIP 840(5.8等)の食(東京:暗縁から潜入、高度24°) 19時57分:カシオペヤ座RZ星が極小 29 木 12.3 05:59 16:50 15:58 03:28 十三夜(後の月) 月と火星が接近 16時17分:月が赤道通過、北半球へ 30 金 13.3 06:00 16:49 16:23 04:24 ヘルクレス座U星が極大(6.4~13.4等、周期404日) 05時11分:月が火星に最接近(東京02°54′) 06時01分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 21時03分:うお座ν星(4.5等)の食(東京:暗縁から潜入、高度52°) 31 土 14.3 06:01 16:48 16:50 05:19 03時45分:月の距離が最遠(1.057、40万6394km、視直径29.4′) 23時49分:●満月(本年最小の満月)

88P/ハウエル 8等(夕)C/2020 P1(ネオワイズ) 9等(明)C/2017 T2(パンスターズ) 11等(夕)C/2020 F3(ネオワイズ) 12等(夕)29P/シュヴァスマン-ヴァハマン 13等(夕~明)C/2020 M3(アトラス) 13等(深夜~明)

今月の明るい彗星10月 6日 太陽極域軌道探査機ユリシーズ(米欧)打ち上げ(1990年)10月10日 VLA(超大型干渉電波望遠鏡群)が完成(1980年)10月19日 S.チャンドラセカール(天文学者、印・米)生誕110年10月20日 月探査機ゾンド8号(ソ)打ち上げ(1970年)10月22日 金星探査機ヴェネラ9号(ソ)金星に着陸(1975年)10月22日 K.ジャンスキー(物理学者、米)生誕115年10月25日 金星探査機ヴェネラ10号(ソ)金星に着陸(1975年)10月31日 M.コリンズ(宇宙飛行士、米)生誕90年

今月の記念日

■月齢は正午の値を示しています。■今月のおもな天文現象の中で赤い文字で書かれているのものは次ページからの「注目の天文現象」にくわしい解説があります。■表の時刻は、とくに指定がない場合は東京の値です。

27 28 29 30 1 2 3

4 5 6 7 8 9 10

11 12 13 14 15 16 17

18 19 20 21 22 23 24

25 26 27 28 29 30 31

1 2 文化の日    3 4 5 6 7

日 月 火 水 木 金 土

15:24 00:41 16:01 01:42 16:33 02:42 17:01 03:41 17:28 04:38 17:53 05:34 18:19 06:29

18:46 07:25 19:16 08:21 19:48 09:18 20:26 10:16 21:09 11:13 21:59 12:09 22:56 13:02

23:59 13:51 --:-- 14:35 01:06 15:15 02:16 15:52 03:27 16:26 04:40 17:00 05:53 17:35

07:08 18:12 08:22 18:54 09:35 19:41 10:44 20:34 11:46 21:32 12:40 22:33 13:25 23:35

14:03 --:-- 14:36 00:36 15:06 01:35 15:32 02:32 15:58 03:28 16:23 04:24 16:50 05:19

17:18 06:15 17:49 07:12 18:25 08:10 19:06 09:08 19:54 10:05 20:48 10:58 21:47 11:48

22 月刊 星ナビ 2020年10月号

Page 5: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

月の

2020 ● OCTOBER

月の

日 曜 月齢 日出 日没 月出 月没 おもな天文現象

1日2日

3日4日5日6日7日

8日9日

10日

11日12日

13日14日

15日16日

17日

18日19日

20日

21日22日23日24日

25日26日

27日28日

29日30日

31日

土星木星水星

火星金星

天王星

海王星

●▼×:惑星出:惑星南中:惑星没

天体名 出 南中 没 等級 視直径 星座

水星 07:48 13:01 18:13 0.1 7.2″ おとめ

水星 07:30 12:37 17:44 0.9 8.9″ てんびん

水星 06:09 11:29 16:51 5.2 10.0″ おとめ

金星 02:27 09:03 15:38 -4.1 15.2″ しし

金星 02:45 09:09 15:32 -4.0 14.3″ しし

金星 03:03 09:14 15:25 -4.0 13.6″ おとめ

火星 17:06 23:23 05:46 -2.6 22.2″ うお

木星 12:33 17:26 22:20 -2.3 38.8″ いて

土星 12:56 17:54 22:52 0.5 16.7″ いて

天王星 17:47 00:35 07:19 5.7 3.7″ おひつじ

海王星 15:37 21:23 03:14 7.8 2.3″ みずがめ

水星

水星

水星

金星

金星

金星

火星

木星

土星

天王星

海王星

5日

15日

25日

5日

15日

25日

15日

15日

15日

15日

15日

午後4時 6時 8時 10時 午前0時 2時 4時 6時 8時

夕方日没宵空

真夜中

未明日出

16時 20時 0時 04時 08時

■月と惑星の位置

■惑星の出没表

新月

満月

満月

下弦

上弦

■軌道図の惑星の位置は15日のもので 1か月間の移動量を矢印で示している■惑星の出没データは東京での値■月齢カレンダーの時刻は月の出没時刻■赤道星図の月の位置は毎日21時のもの

■距離と大きさ1天文単位(au)=149,597,870.7km1光年=9.46×1012km1パーセク(pc)=3.26光年地球の半径=6378km(赤道)月の半径=1737km

■惑星の公転周期水 星:0.241年  金 星:0.615年火 星:1.881年  木 星:11.86年土 星:29.46年  天王星:84.02年海王星:164.8年

1 木 13.7 05:35 17:26 17:28 04:38 中秋の名月(十五夜) 2 金 14.7 05:36 17:24 17:53 05:34 みずがめ座T星が極大(7.0~14.2等、周期201日) 01時:233P/ラサグラ彗星が近日点を通過(周期5.3年) 01時06分:水星が東方最大離角(25.8°、0.1等、視直径6.8″) 06時05分:●満月 10時00分:月が赤道通過、北半球へ 3 土 15.7 05:37 17:23 18:19 06:29 月と火星が接近 とも座W星が極大(7.1~13.6等、周期120日) 08時06分:金星とレグルスが最接近(東京00°05′) 13時01分:月が火星に最接近(東京01°14′)(南大西洋で火星食) 4 日 16.7 05:37 17:21 18:46 07:25 さそり座RR星が極大(5.0~12.4等、周期281日) ヘルクレス座S星が極大(6.4~13.8等、周期304日) 02時22分:月の距離が最遠(1.057、40万6321km、視直径29.4′) 04時:218P/リニア彗星が近日点を通過(周期5.4年) 20時06分:月が天王星に最接近(東京03°41′) 5 月 17.7 05:38 17:20 19:16 08:21 04時04分:おひつじ座38番星(5.2等)の食(東京:暗縁から出現、高度49°) 6 火 18.7 05:39 17:19 19:48 09:18 ぎょしゃ座R星が極大(6.7~13.9等、周期458日) 02時56分:カシオペヤ座RZ星が極小 23時18分:火星が地球と最接近(0.414916天文単位、6207万0493km、-2.6等、視直径22.6″) 7 水 19.7 05:40 17:17 20:26 10:16 おとめ座R星が極大(6.1~12.1等、周期146日) 06時28分:小惑星パラスが東矩(わし座) 19時:311P/パンスターズ彗星が近日点を通過(周期3.2年) 22時17分:おうし座ι星(4.6等)の食(東京:暗縁から出現、高度20°) 8 木 20.7 05:41 17:16 21:09 11:13 04時55分:寒露(太陽黄経195°) 21時:10月りゅう座流星群が極大(出現期間10月4日~10月13日) 9 金 21.7 05:41 17:14 21:59 12:09 ヘルクレス座T星が極大(6.8~13.7等、周期165日) 22時05分:月が最北(赤緯+24°37.0′) 10 土 22.7 05:42 17:13 22:56 13:02 04時20分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 04時28分:ふたご座ω星(5.2等)の食(東京:暗縁から出現、高度72°) 09時40分:◎下弦 12時:おうし座南流星群が極大(出現期間9月9日~11月20日) 11 日 23.7 05:43 17:12 23:59 13:51 12 月 24.7 05:44 17:10 --:-- 14:35 02時21分:カシオペヤ座RZ星が極小 20時05分:おうし座λ星が極小 13 火 25.7 05:45 17:09 01:06 15:15 うみへび座S星が極大(7.2~13.3等、周期257日) 01時09分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 14 水 26.7 05:46 17:08 02:16 15:52 細い月と金星が接近 13時31分:水星が留(赤経14.54h) 13時31分:月が金星に最接近(東京03°19′) 15 木 27.7 05:47 17:06 03:27 16:26 04時54分:おとめ座ν星(4.0等)の食(札幌:暗縁から出現、高度17°) 06時06分:火星がうお座で衝(-2.6等、視直径22.3″) 15時25分:木星が東矩(いて座、-2.3等、視直径38.8″) 16 金 28.7 05:47 17:05 04:40 17:00 おおぐま座R星が極大(6.5~13.7等、周期302日) 08時31分:月が赤道通過、南半球へ 17 土 0.3 05:48 17:04 05:53 17:35 おおぐま座S星が極大(7.1~12.7等、周期226日) 04時31分:●新月 08時46分:月の距離が最近(0.928、35万6912km、視直径33.5′) 12時:P/2015 X6パンスターズ彗星が近日点を通過(周期4.6年) 18 日 1.3 05:49 17:03 07:08 18:12 06時44分:月が水星に最接近(東京06°03′) 18時46分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 19 月 2.3 05:50 17:01 08:22 18:54 20 火 3.3 05:51 17:00 09:35 19:41 07時38分:秋の土用(太陽黄経207°) 21 水 4.3 05:52 16:59 10:44 20:34 06時:378P/マクノート彗星が近日点を通過(周期16.1年) 15時:オリオン座流星群が極大(出現期間10月9日~11月5日) 19時26分:準惑星エリスが衝(くじら座、18.7等) 22 木 5.3 05:53 16:58 11:46 21:32 月と木星が接近 11時04分:月が最南(赤緯-24°42.5′) 20時31分:カシオペヤ座RZ星が極小 23 金 6.3 05:54 16:57 12:40 22:33 月と土星が接近 わし座R星が極大(5.5~12.0等、周期270日) 03時15分:月が木星に最接近(東京02°12′) 06時28分:土星が東矩(いて座、0.6等、視直径16.6″) 08時00分:霜降(太陽黄経210°) 11時03分:月が土星に最接近(東京03°10′) 22時23分:◎上弦 24 土 7.3 05:55 16:55 13:25 23:35 しし座R星が極大(4.4~11.3等、周期310日) 01時12分:カシオペヤ座RZ星が極小 25 日 8.3 05:55 16:54 14:03 --:-- アンドロメダ座R星が極大(5.8~15.2等、周期409日) 05時53分:カシオペヤ座RZ星が極小 23時36分:水星が内合(太陽の南01.0°、5.5等、視直径10.0″) 26 月 9.3 05:56 16:53 14:36 00:36 14時:184P/ロヴァシュ彗星が近日点を通過(周期7.4年) 27 火 10.3 05:57 16:52 15:06 01:35 21時40分:月が海王星に最接近(東京04°40′) 28 水 11.3 05:58 16:51 15:32 02:32 17時43分:うお座HIP 840(5.8等)の食(東京:暗縁から潜入、高度24°) 19時57分:カシオペヤ座RZ星が極小 29 木 12.3 05:59 16:50 15:58 03:28 十三夜(後の月) 月と火星が接近 16時17分:月が赤道通過、北半球へ 30 金 13.3 06:00 16:49 16:23 04:24 ヘルクレス座U星が極大(6.4~13.4等、周期404日) 05時11分:月が火星に最接近(東京02°54′) 06時01分:ペルセウス座β星アルゴルが極小 21時03分:うお座ν星(4.5等)の食(東京:暗縁から潜入、高度52°) 31 土 14.3 06:01 16:48 16:50 05:19 03時45分:月の距離が最遠(1.057、40万6394km、視直径29.4′) 23時49分:●満月(本年最小の満月)

88P/ハウエル 8等(夕)C/2020 P1(ネオワイズ) 9等(明)C/2017 T2(パンスターズ) 11等(夕)C/2020 F3(ネオワイズ) 12等(夕)29P/シュヴァスマン-ヴァハマン 13等(夕~明)C/2020 M3(アトラス) 13等(深夜~明)

今月の明るい彗星10月 6日 太陽極域軌道探査機ユリシーズ(米欧)打ち上げ(1990年)10月10日 VLA(超大型干渉電波望遠鏡群)が完成(1980年)10月19日 S.チャンドラセカール(天文学者、印・米)生誕110年10月20日 月探査機ゾンド8号(ソ)打ち上げ(1970年)10月22日 金星探査機ヴェネラ9号(ソ)金星に着陸(1975年)10月22日 K.ジャンスキー(物理学者、米)生誕115年10月25日 金星探査機ヴェネラ10号(ソ)金星に着陸(1975年)10月31日 M.コリンズ(宇宙飛行士、米)生誕90年

今月の記念日

■月齢は正午の値を示しています。■今月のおもな天文現象の中で赤い文字で書かれているのものは次ページからの「注目の天文現象」にくわしい解説があります。■表の時刻は、とくに指定がない場合は東京の値です。

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4 5 6 7 8 9 10

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18 19 20 21 22 23 24

25 26 27 28 29 30 31

1 2 文化の日    3 4 5 6 7

日 月 火 水 木 金 土

15:24 00:41 16:01 01:42 16:33 02:42 17:01 03:41 17:28 04:38 17:53 05:34 18:19 06:29

18:46 07:25 19:16 08:21 19:48 09:18 20:26 10:16 21:09 11:13 21:59 12:09 22:56 13:02

23:59 13:51 --:-- 14:35 01:06 15:15 02:16 15:52 03:27 16:26 04:40 17:00 05:53 17:35

07:08 18:12 08:22 18:54 09:35 19:41 10:44 20:34 11:46 21:32 12:40 22:33 13:25 23:35

14:03 --:-- 14:36 00:36 15:06 01:35 15:32 02:32 15:58 03:28 16:23 04:24 16:50 05:19

17:18 06:15 17:49 07:12 18:25 08:10 19:06 09:08 19:54 10:05 20:48 10:58 21:47 11:48

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Page 6: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

月の注目

2020 ● OCTOBER

 2018年の火星接近は、15年に1度の超大接近だった。ただ、最接近に合わせるかのように火星で大規模な砂嵐が発生したため、火星の模様を詳しく見ることができず、いささか残念な結果となった。 あれから2年2か月が過ぎ、再び火星接近の年がめぐってきた。今年の最接近は10月6日、火星はうお座にあって、高度は比較的高い。超大接近の直後だけに、まだまだ大きな火星を楽しめる準大接近となる。

●火星接近は2年2か月ごと 火星は、地球のすぐ外側の軌道を回っていながら、直径が地球の半分ほどしかないため、地球と火星が軌道上で隣どうしに並ぶときでないと視直径が大きくならず、表面の詳しい観測ができない。 地球と火星が接近する周期は、もし火星の公転周期が地球の2倍の730日だった

6月6日

7月6日

8月6日

9月6日

10月6日

11月6日くじら

おひつじ

うお

ペガスス

黄道

12月6日

2021年1月6日

2月6日

赤道

(毎月1日の位置)

1月

1月

2月

2月

3月

3月

4月

4月 5月

5月6月

6月

7月

7月

10月6日

9月9月

8月8月

11月

11月

12月 12月

火星

最接近10月6日

太陽

地球

4月1日光度0.8等視直径6.4″

5月1日光度0.4等視直径7.6″

6月1日光度0.0等視直径9.3″

7月1日光度-0.5等視直径11.4″

9月1日光度-1.8等視直径18.8″

8月1日光度-1.1等視直径14.5″

11月1日光度-2.2等視直径20.1″

12月1日光度-1.1等視直径14.7″

10月6日光度-2.6等視直径22.6″

火星が最接近

10月6日深夜

10月は満月が2回ある。いわゆるブルームーンで、大接近中の火星と満月が2回並ぶことになる。

ブルームーンの月明かりのもとでオレンジ色の火星を観望するのも一興だ。

構成/浅田英夫(あさだ考房)

秋の夜長に最接近の火星を堪能しよう

■火星は、みずがめ座からうお座に入り、9月10日には留となって、逆行に転じ10月6日に最接近、10月15日に衝を迎える。そして11月16日に再び留となり順行に戻る。

■8月1日には地球と火星の距離は約9600万kmもあり視直径は約15秒しかないが、ここからぐんぐん距離が縮まり、9月1日には約19秒、そして10月6日には距離6207万km、視直径22.6秒と最大になる。11月1日でも視直径は20秒あるが、その後はじりじり遠ざかり12月1日には15秒を切ってしまう。

24 月刊 星ナビ 2020年10月号

Page 7: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

ら、ほぼ2年ごとに軌道上の同じ位置で出会うことになるが、実際の火星の公転周期は、2倍より短い約687日なので、およそ2年2か月ごとに接近することになる。地球と火星が出会う軌道上の位置も、接近のたびに2か月分ずつずれていくことになる。 ところで、接近時ならば必ず視直径の大きな火星が見られるかというとそうではない。地球の軌道が真円に近いのに対し、火星の軌道は離心率0.093で、楕円の度合いが大きい。そのため、軌道上のどこで地球と隣どうしになるかによって、地球と火星との距離は5600万kmから1億kmと大きく変化してしまうのだ。大接近は火星が太陽に最も近づく近日点の近くで衝になるとき、つまり、7月から8月に火星がやぎ座からみずがめ座にあるときに起こる。

●今年は、うお座で準大接近! 火星の視直径が25秒に迫る大接近は、15 ~ 16年に一度しか巡ってこない。2018年がそんな年だったが、今回の最接近時の10月6日の視直径は22.6秒角だ。2016年の接近のときは18.6秒角だったので、それより2割ほど大きく、前回に比べても7%ダウンにしかならない。この大きさならば大接近といってもいいぐらいだ。前々回2016年の接近時の火星の大きさを覚えている人は、今年も充分大きいと納得できるはずである。 地球のすぐ外側を周期687日で公転するだけあって、火星の動きは木星や土星に比べるとめまぐるしい。6月下旬には、みずがめ座からうお座に入り、明るい星のない秋の星座の中でひときわ目立つ0等級で輝いていた。8月4日には光度-1等、視直径は15秒角を超え、中口径望遠鏡の観望対象になってきた。 9月に入ってからはスピードを緩めながら東に進み、9月10日に、うお座のα星のすぐ北で留となって順行から逆行に転じる。このときの光度は-2等で、視直径は20秒角に乗り、いよいよ小口径望遠鏡での火星ウオッチングチャンスがやってきた。 9月24日には、火星は木星とほぼ同じ-2.4等まで増光し、視直径は22秒台に乗る。そして、10月6日に最接近を迎え、

視直径22.6秒角になる。この後、11月1日までは20秒台の視直径が続く。 うお座で最接近となった火星はその後も逆行を続け、11月16日に留となって再び順行に戻る。急成長した火星像は衰退も早い。11月末には光度-1等級、視直径は15秒角を切ってしまう。そして2020年の終わりとともに火星準大接近も幕となる。

●前回よりも南中高度が高い 前回の超大接近はやぎ座で起こったため、南中高度は東京で約30度と低かっ

た。比較的大気が安定している夏とはいえ、気流の影響を受ける夜が少なくなかった。視直径が25秒を超えたにもかかわらず、良像を見るチャンスにあまり恵まれなかったという人も多かっただろう。 しかし今回は南中高度が60度で、ずっと高くなる。10月上旬は気流がやや不安定になることが多いが、これだけの高度があればその影響は少ない。前回よりもいい像が見られるチャンスに恵まれるのではないかと思われる。また、今回の接近では、前回のような砂嵐が発生しないことを祈りたい。

2020年10月6日距離:6207万km視直径:22.6″等級:-2.6等

2022年12月1日距離:8148万km視直径:17.2″等級:-1.8等

2018年7月31日距離:5759万km視直径:24.3″等級:-2.9等2016年5月30日

距離:7528万km視直径:18.6″等級:-2.1等

2029年3月29日距離:9686万km視直径:14.5″等級:-1.3等

2027年2月19日距離:1億0146万km視直径:13.8″等級:-1.2等

2025年1月12日距離:9612万km視直径:14.6″等級:-1.4等

やぎ座

うお座

おうし座

かに座

しし座

おとめ座

てんびん座

2018年

7月31日5759万km-2.9等24.3秒角

2020年

10月6日6207万km-2.6等22.6秒角

2022年

12月1日8148万km-1.8等17.2秒角

最接近日地心距離等級視直径

火星最接近の比較

■火星の公転周期は687日、地球は365日なので、2年2か月ごとに地球が火星に近づくことになる。火星の軌道は離心率0.093の楕円なので、接近が火星の近日点付近で起こるか遠日点付近で起こるかで、その距離は大きく変化する。今回は、前回に引き続き好条件の準大接近となる。

■2018年、2020年、2022年の最接近時の火星の視直径を比較してみると、今回は2018年の超大接近には及ばないものの、充分に大きな火星が見られることがわかる。

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Page 8: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

2020 ● OCTOBER

●火星の模様を見る 今回の接近は、南極地方から南半球の模様がよく見えるチャンスだ。そこで火星南半球表面の模様の見どころを、火星の経度にそって探訪してみることにしよう。基本的に火星の模様も月と同じように、オレンジ色の明るい部分を「陸」、薄黒い部分を「海」にたとえている。南極冠 火星を望遠鏡で観たときにまず目に入るのが、火星の南端に見える白く輝く部分だ。これは南極を覆うドライアイスや水の氷で、南極冠と呼ばれている。火星の自転軸は、25.2度傾いているため、火星でも地球と同じように季節変化がある。その変化が顕著に現れるのが極冠の変化だ。火星が接近する9月から11月は、火星の南半球の季節は春から夏へと移っていく時期に当たっているので、継続して観望すると南極冠が小さくなってほとんど消えてしまうようすが見られる。経度0°付近 「大シルチス」から西に向かって突き出した半島は「サバ人の湾」。その先端は少し膨らんで北方が二つに分かれているように見える。ここが「子午線の湾」、または「アリンの爪」とも呼ばれる。名前か

らもわかるように火星の経度は、この「子午線の湾」を0°としている。「子午線の湾」の西に広がる薄黒い地形は「真珠の海」だ。その北方には「アキダリアの海」が広がる。

「真珠の海」の西に続くのが「オーロラ湾」である。経度60°付近 「オーロラ湾」から横に突き出すように、楕円形の「太陽湖」(ソリス湖)が見える。なんとなく人の横顔に似ていなくもない。

「太陽湖」の北には東西に「マリネリス峡谷」が伸びている。これは長さ2000km以上、幅100 ~ 200km、深さ8kmにもおよぶ火星最大の峡谷だ。 経度120°付近 「太陽湖」を過ぎるあたりから赤道付近には目立つ地形がなくなり、しばらく大平原が続く。小型望遠鏡では中央やや南に「シレーンの海」の薄黒い地形が見えるだけで、あまりおもしろくないところだ。しかし火星探査機によってさまざまな地形が発見されたところである。まず

「シレーンの海」の北には「タルシス三山」と呼ばれる巨大火山が並び、さらにその西には太陽系最大の火山といわれる「オリンポス山」がそびえている。これらの山が火星で夜明けを迎えるタイミングに火星を見ると、山にかかった霞が白っぽ

く見えることがある。経度180°付近 大平原を過ぎると、再び中央付近に斜めに伸びた薄黒い地形が見えてくる。「キンメリア人の海」だ。その北に見える東西の筋が「ケルベルス」である。経度240°付近 「キンメリア人の海」に続いて「チュレニーの海」が見えてくる。「チュレニーの海」の先端の三角形の模様は「小シルチス」。その西側には「大シルチス」が姿を見せている。経度300°付近 いよいよ火星で最も目立つ地形の登場だ。中央から北へ伸びる黒々とした逆三角形の地形が「大シルチス」である。「大シルチス」の南方に広がる明るい部分は

「ヘラス盆地」。ここは隕石が落下してできた巨大クレーターだといわれている。

「大シルチス」の西には「サバ人の湾」が連なる。

火星は、24時間37分で自転しているので、毎晩同じ時間に観望すると約40日で火星全面を見ることができる。また1時間あたり火星経度が約15°ずつずれていくので、6時間観望すると火星の4分の1の模様を見ることができる。

180°240°300°0°90°N

90°S

60°N

60°S

30°N

30°S

180° 120° 60° 0°

子午線の湾

ノアキス

サバ人の湾

ヘラス盆地エリダニア

イシディス平原

ユートピア平原

エリシウム山

ケルベルス大シルチス

小シルチス

アラビア

イスメヌス湖

チュレニーの海キンメリア人の海

マリネリス峡谷

アスクラエウス山 ルナ湖

オーロラ湾

タルシス山地

シレーンの海太陽湖

パエトーン

真珠の海

アキダリアの海

クリュセ平原

アルバ山

パボニス山

アルシア山

オリンポス山

火星に見える模様の名前を調べよう■火星探査機バイキング1号、2号による火星面の展開図

26 月刊 星ナビ 2020年10月号

Page 9: (茅野市八ヶ岳総合博物館)...2020 OCTOBER火星接近 約2年2か月おきに地球との接近を繰り返す火星。前回、2018年7 月が「大接近」だったので、今回はそこまでの接近距離ではないも

9月1日

9月11日

9月21日

10月1日

10月11日

10月21日

11月1日

11月11日

11月21日

12月1日

0時 3時 6時15時 18時 21時 9時

12月11日

12月21日

1月1日

中央経度0°

中央経度60°

中央経度120°

中央経度180°

中央経度240°

中央経度300°

アキダリアの海

アキダリアの海

子午線の湾(アリンの爪)

オーロラ湾

オーロラ湾

シレーンの海

オリンポス山

ケルベルス

ケルベルス

キンメリア人の海

キンメリア人の海

ヘラス盆地

太陽湖

シレーンの海

シレーンの海

大シルチス

ヘラス盆地

大シルチス

小シルチス

小シルチス

ヘラス盆地

太陽湖

子午線の湾(アリンの爪)

(すべて上が北)

中央経度0°

中央経度0°

中央経度60°

中央経度60°

中央経度120°

中央経度180°

中央経度180°中央経度120°

中央経度0°

中央経度60°

中央経度60°

中央経度180° 火星南中

火星没

火星出

中央経度120°

中央経度240°

中央経度300°

中央経度240°

中央経度300°

中央経度0°

中央経度240°

中央経度300°

大シルチスが見やすい

大シルチスが見やすい

大シルチスが見やすい薄明

日中

日中

薄明

■最接近の頃の火星面。右の図から観測時の中央経度を読み取り、それに近い火星面と見比べれば、火星面に見えている模様の名前がわかる。

■火星の中央経度は上の図から読み取ることができる。たとえば10月11日の深夜(12日0時)には火星が南中に近く、そのときの中央経度は約60度であることがわかる。10月21日20時から23時頃は大シルチスが地球側にあって見やすい。

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