-coi委員・事務局向け- 医学系研究における coi …-基礎編-...
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- 基礎編 -
AMED研究者のための教育プログラム
- COI委員・事務局向け-医学系研究における
COI管理のあり方・進め方
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従前より、医学研究を実施する研究者は、研究の信頼性確保、研究対象者を保護するために、自らの利益相反への適切な対応が求められて参りました。また、2017年3月に成立した臨床研究法では、利益相反管理が義務化されたことで、医学研究に取り組む研究者には、これまで以上に利益相反への適切な対応が求められている状況にあります。本研究では、医学研究に取り組む研究者が、利益相反管理についての正しい知識、理解を得るためのe-learning教材を作成致しました。本編はその中の「COI委員・事務局向け医学系研究におけるCOI管理のあり方・進め方」を、紹介しています。この教材が、我が国の医学研究者の利益相反管理を行う際一助になりましたら幸いです。
2017年1月~2019年3月
日本医療開発機構 研究公正高度化モデル開発支援事業
研究開発課題名 『利益相反管理に関する理解と知識の充実を目指した教育プログラムの開発と普及』
研究代表者 国立大学法人 東京医科歯科大学 教授 飯田香緒里
はじめに
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はじめに
• 本教材は、二部構成です。• 全ての学習が完了したら、修了証が発行されます。
学習内容が表示され、画面右側に解説が表示されます。音声を聞きながら学習を進めてください。
1 2 3
45
本教材の構成
学習の方法 ‐学習ページ‐
① 音声を進めたり戻したりすることができます。② 音声ボリュームをコントロールすることができます。③ 早い音声で聞くことができます。④ 解説の文字のサイズを変更することができます。⑤ 表示されているページの学習が完了したら、【次へ進む】をクリックして進んでください。前のページに戻ることもできます。
※本教材の対応方法はあくまで一例であり、場面に応じて所属機関の委員会指示に従って対応して下さい。
第1章の学習COIとは?
第2章の学習COIマネジメントとCOI委員会
修了証発行
標準学習時間
(速聞き)
13分(11分)
20分(17分)
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はじめに
① 発行ページで大学名、氏名を入力してください。② 発行ボタンを押してください。③ 修了証が表示されるので、印刷するなどしてお持ちください。
修了証の発行
全ての学習が終了すると、修了証を発行することができます。
修了証発行
修了証を発行します。氏名を以下に入力してください。
修了証発行
1
2
氏名
大学
3
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- 基礎編 -
AMED研究者のための教育プログラム
医学系研究におけるCOI管理のあり方・進め方
(COI委員会委員・担当事務職員向け)
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はじめに(1/2) - COI委員会の機能
COI委員会の機能
研究者個人の活動又は研究機関における研究活動について、研究者の申告に基づき、COIによる研究へのバイアスリスクを適切に評価する
研究者個人の活動又は研究機関における研究活動について、COI上問題がある場合は改善を促し、COIによる研究へのバイアスリスクを適切に管理する
特に専門的な判断を要し、複雑かつ重大なリスクを伴う案件は、COI委員会において詳細に協議・検討を行う
COI委員会は、研究者の申告に基づき、COIによる研究へのバイアスリスクを適切に評価・管理する組織
COI委員会の機能
POINT
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はじめに(2/2) - COI委員会の役割
COI委員会の役割
【承認】申告内容について、公正・適正な判断が損なわれるおそれはないと判断できた場合、承認する
【ヒアリング】申告内容について、確認が必要な事項(問題点等)について、研究者へ質問する
【アドバイス】申告内容について、改善するよう研究者へ助言する(事象によっては、定期的にアドバイスを実施)
COI委員会は、研究者の申告に対して、「承認」・「ヒアリング」・「アドバイス」の3つの役割を担うPOINT
COI委員会の役割
本教材では、COI委員会委員の皆様に求められる役割や、必要となる基礎的な知識・姿勢について概説していきます。日々の委員としての活動のヒントとしていただければ幸いです。
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本教材の目次
第1章:COIとは?
第2章:COIマネジメントとCOI委員会
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- 基礎編 -第1章 COIとは?
AMED研究者のための教育プログラム
まずは、COI委員会が取り扱うテーマであるCOIそのものについて、基本的な考え方を確認していきましょう。
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COI(Conflict of Interest)利益相反
一般的なCOIの定義
外部との経済的な利益関係等によって、研究活動で必要とされる公正かつ適正な判断(公の利益)が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。
定 義
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アカデミア研究者にとってのCOI状態の定義
研究者と企業等との間に経済的利益関係がある状況において、社会や第三者から、研究開発活動の成果である公的な利益(公正かつ適正な判断)が損なわれているように「見られている」または「見られる可能性がある」状態。
アカデミアの研究者にとってのCOI状態
定 義
公の利益
民間の/私的な利益
第三者
この研究者はどっちを向いて研究しているん
だろう
公の利益が損なわれては
いないだろうか
※本教材における『企業等』には、民間企業および財団法人など、公的機関を除くあらゆる機関が含まれます。11
COI状態は悪いことなのか?(1/2)
なぜならば
医学系研究において、産学連携活動は不可欠(例:新薬や医療機器などの臨床開発)
産学連携の現場では、COI状態は「構造的に」発生
COI自体を避けることは、医学系研究の進展を大きく阻害する
COI自体は悪いことではないPOINT
COIを理解する上でのポイント1
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COI状態は悪いことなのか?(2/2)
COI状態を放置すると研究の信頼性・客観性や研究対象者の利益の保護が損なわれる可能性がある。
POINT
COIを理解する上でのポイント2
なぜならば
研究の結果やデータ等を、過大評価し、報告・発表する可能性 ネガティブな結果や有害事象等を、過小に評価する、又は時期を遅らせて発表する可能性 臨床研究において、研究対象者の利益・安全が軽んじられる可能性・・・など
COI状態を放置することは、研究者/研究活動に対して「潜在的なバイアス」をもたらす
COI委員会委員の皆様には、研究者/研究活動のCOI状態が孕む「潜在的なバイアス」の顕在化を防ぐために必要十分な措置を議論し、指導することが求められます。
(企業等や研究者個人の利益を重視するあまり・・・)
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研究活動に対するバイアスに繋がりやすい経済的利益(1/2)
所属研究機関における活動に伴う、企業等からの経済的利益の形態
企業等
所属研究機関における活動
カネ(受託研究費、奨学寄附金等)
モノ・技術(研究対象の薬剤・機器等)
ヒト(企業等からの研究生受入等)
サービス・役務(研究業務補助等)
産学連携活動の一環として…
企業等からの経済的利益 研究へのバイアスがかかるリスク
研究成果の信頼性・客観性が損なわれる
との懸念
研究データ改ざん・不正利用
等の懸念
所属研究機関における活動に伴う企業等からの経済的利益が過度に存在する場合、研究へ与えるバイアスリスクを評価(経済的利益と研究活動の関係性、経済的利益の多寡、等)POINT
COI委員会の視点
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研究活動に対するバイアスに繋がりやすい経済的利益(2/2)
企業等からの経済的利益 研究へのバイアスがかかるリスク
研究者個人としての活動に伴う、企業等からの経済的利益の形態
研究成果の信頼性・客観性が損なわれる
研究者の専門的知見へのアクセス等の対価として・・・
謝金等
企業の株式、新株予約権、出資金
兼業先からの給与報酬
特許・著作権使用に伴うロイヤリティ さらに
詳しく見る
研究者個人としての活動に伴う企業等からの経済的利益が過度に存在する場合、研究へ与えるバイアスリスクを評価(経済的利益と研究者個人との関係性、経済的利益の多寡、等)POINT
COI委員会の視点
企業等
研究者個人としての活動
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COIへの対応におけるCOI委員会の位置づけ
COI委員会は、研究者の申告に基づき、COIによる研究へのバイアスリスクを適切に評価・管理する
「研究の信頼性・公正性」「研究対象者の利益の保護」を担保するための中心的な機能を担う
企業等
研究機関
研究者個人
COIによる研究への潜在的なバイアス
COI委員会による評価・管理
POINT
カネ モノ ヒト、サービス、役務
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- 基礎編 -第2章 COIマネジメントとCOI委員会
AMED研究者のための教育プログラム
ここからは、アカデミア研究の推進に際して必要となるCOIマネジメントのプロセスと、COI委員会に求められる機能・役割について学習していきましょう。
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COIマネジメントの分類(1/3)
COI委員会によるCOIマネジメントは、「研究者個人の活動全体の公正性」と「当該研究プロジェクトの公正性」の評価・管理に分類される。
POINT
AMED研究及び厚生労働科学研究が対象
「研究プロジェクト」に対するCOIマネジメント「研究者個人」に対するCOIマネジメント
COIマネジメント
所属機関における活動についての信頼性を確保するための
マネジメント(定期・随時COI申告等)
研究者:原則年1回申告所属研究機関:助言・指導
研究資金配分機関との契約に基づく研究の信頼性を
確保するためのマネジメント
人を対象とする臨床研究の信頼性を
確保するためのマネジメント(※)
(※)なお臨床研究法の対象となる臨床研究については、COI委員会によるマネジメントは必ずしも求められず、所属研究機関による当該研究プロジェクトに係るCOI状態の事実確認のみで足りる
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COIマネジメントの分類(2/3)
研究者個人の活動全体の公正性(例)企業等との間の経済的利益があることで、
所属研究機関における公的な責務が疎かになっていないか?
COI委員会によるCOIマネジメントは、「研究者個人の活動全体の公正性」と「当該研究プロジェクトの公正性」の評価・管理に分類される。
POINT
AMED研究及び厚生労働科学研究が対象
「研究プロジェクト」に対するCOIマネジメント「研究者個人」に対するCOIマネジメント
COIマネジメント
所属機関における活動についての信頼性を確保するための
マネジメント(定期・随時COI申告等)
研究者:原則年1回申告所属研究機関:助言・指導
研究資金配分機関との契約に基づく研究の信頼性を
確保するためのマネジメント
人を対象とする臨床研究の信頼性を
確保するためのマネジメント(※)
検討の視点
(※)なお臨床研究法の対象となる臨床研究については、COI委員会によるマネジメントは必ずしも求められず、所属研究機関による当該研究プロジェクトに係るCOI状態の事実確認のみで足りる
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COIマネジメントの分類(3/3)
当該研究プロジェクトの公正性(例)企業等との間の経済的利益があることで、
研究へのバイアスを生じさせないか?
(※)なお臨床研究法の対象となる臨床研究については、COI委員会によるマネジメントは必ずしも求められず、所属研究機関による当該研究プロジェクトに係るCOI状態の事実確認のみで足りる
AMED研究及び厚生労働科学研究が対象
「研究プロジェクト」に対するCOIマネジメント「研究者個人」に対するCOIマネジメント
COIマネジメント
所属機関における活動についての信頼性を確保するための
マネジメント(定期・随時COI申告等)
研究者:原則年1回申告所属研究機関:助言・指導
人を対象とする臨床研究の信頼性を
確保するためのマネジメント(※)
研究資金配分機関との契約に基づく研究の信頼性を
確保するためのマネジメント
検討の視点
COI委員会によるCOIマネジメントは、「研究者個人の活動全体の公正性」と「当該研究プロジェクトの公正性」の評価・管理に分類される。
POINT
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COI委員会の役割
COI委員会は、研究者の申告に対して、「承認」・「ヒアリング」・「アドバイス」の3つの役割を担う
POINT
COI委員会の役割
申告COI委員会による
審査
承認
ヒアリング 審査 アドバイス
必要に応じて、改善するよう研究者へ助言する
研究に対する公正・適正な判断が損なわれるおそれはない場合、承認する
確認が必要な事項(問題点、研究体制の見直しの可否、等)について、研究者へ質問する
研究者
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COI委員会の委員別の検討の視点
倫理審査併任
委員
産学連携担当
弁護士等
事務局
研究者(基礎/臨床)
各委員ごとの検討の視点委員共通の検討の視点
企業等との間の経済的利益があることで、所属研究機関における公的な責務が疎かになっていないか?
企業等との間の業務兼任により、勤務時間や労務の配分から、所属研究機関における活動に支障が出ていないか?
COIマネジメントにおいて、COI委員会の委員に求められる検討の視点は、「委員共通」の検討の視点と、それぞれの専門性に基づく「各委員ごと」の検討の視点に区別されます。POINT
研究者
研究者
研究機関と企業等との産学連携スキームは、適正か?
法務・会計・内部管理等の専門性、及び社会一般の視点から、研究の公正性は担保されているか?
社会一般の視点から、研究の公正性は担保されているか?
責務相反の有無の検討を含む
専門性を持つ医学研究者の視点から、研究の公正性は担保されているか?
倫理審査委員会の視点から、研究の公正性は担保されているか?
特に研究対象者の利益の保護
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COIマネジメントの在り方(1/2)
研究へのバイアスが発生していると見られ易い状況
研究へのバイアスリスクが高いと認められる場合、COI委員会は研究者に対するアドバイス、必要に応じて継続的なモニタリングを実施
POINT
当該研究と関係ある企業等との間の個人的利益について 当該研究と関わりのある企業等からの個人的利益が大きい(多額の収入を獲得) 当該研究と関わりのある企業等との関係が深い(役員就任・株式保有、等)
当該研究への企業等の関与について 研究費や研究に使用するモノを企業等が提供しているか 企業等に所属する人材(研究生含む)の研究への関与があるか
「研究者個人」に対するCOIマネジメントの場合
個人的利益について 個人的利益が大きい(多額の収入を獲得) 当該研究と関わりのある企業等との関係が深い(役員就任・株式保有、等)
「研究プロジェクト」に対するCOIマネジメントの場合
産学連携活動状況について 一社と複数の産学連携活動が存在(一社から共同研究費・奨学寄附金を受領 等) 同一のテーマで複数企業と共同研究を実施 等
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COI委員会による対応例
COIマネジメントの在り方(2/2)
アドバイスの実施①研究計画・実施体制の変更
研究への関与方法の変更、等
②当該研究と関係ある企業における兼業の実施方法に関する助言 業務の切り分け・兼業先の時間管理に関する助言 研究成果の取扱いに関する助言 所属研究機関又は当該企業における決裁の関与に関する助言、等
③経済的利益関係の変更
バイアスへの懸念を払拭するための管理を継続 研究や状況自体を継続的にモニタリング
研究へのバイアスリスクが高いと認められる場合、COI委員会は研究者に対するアドバイス、必要に応じて継続的なモニタリングを実施
POINT
※本教材では、対応例について、臨床研究法COI管理基準に準拠した管理方法(マネジメント方法)として紹介しています。 24
アドバイス等がなされる場面と対応(1/4)
公的資金を用いた研究の事例 ①
「学生であっても企業の身分を持つ人材が、研究に参加することは、「企業等の業績を上げるために良い成果を出すように研究結果を操作する可能性が考えられます。」
【申告内容】公的資金を用いて実施する研究について、研究内容と関係のある企業等の研究者が大学に社会人大学院生として所属していて、当該研究に参加する。
企業等
研究内容と関係のある企業等
企業所属の社会人学生
AMED厚労省 等
社員
教授A大学
研究に参加
研究を実施【事例イメージ】
「企業所属の社会人学生の受け入れは、企業の人材育成を含めて企業との長期的な関係構築の手段になり得る一方、研究へのバイアスリスクは適切に管理しなければいけません。」
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
COI委員の視点①
COI委員の視点②
COI委員会における検討例(※)
共同研究
研究資金
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アドバイス等がなされる場面と対応(1/4)
公的資金を用いた研究の事例 ①【申告内容】公的資金を用いて実施する研究について、研究内容と関係のある企業等の研究者が大学に社会人大学院生として所属していて、当該研究に参加する。
企業等
研究内容と関係のある企業等
企業所属の社会人学生
AMED厚労省 等
研究資金
社員
教授A大学
共同研究
研究に参加
研究を実施【事例イメージ】
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
COI委員会による最終的な方針
研究の実施体制の変更研究の公正性を確保するため、当該研究者の研究での役割を限定する、または、研究への参加自体を控えてもらうことを要請する。
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アドバイス等がなされる場面と対応(2/4)
公的資金を用いた研究の事例 ②【申告内容】自らが研究代表者を務める、公的資金を用いた研究の一部を、自らが代表取締役を務めるベンチャー企業と共同で実施する。
研究に参画(研究代表者)
代表取締役就任
教 授A大学
ベンチャー企業
共同研究
【事例イメージ】
AMED厚労省 等
研究資金
COI委員会における検討例(※)
教授がベンチャー企業側の立場で共同研究に参画すると、共同研究において本来大学の研究成果となるはずのものが、いたずらにベンチャー企業に流出する可能性があるのではないでしょうか。
共同研究契約の締結に際して、教授が大学側の決裁ラインに入ると、ベンチャー企業の代表取締役としての意向が大学側の意思決定の過程で大きな影響を与えるのではないでしょうか。
COI委員の視点①
COI委員の視点②
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
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アドバイス等がなされる場面と対応(2/4)
公的資金を用いた研究の事例 ②【申告内容】自らが研究代表者を務める、公的資金を用いた研究の一部を、自らが代表取締役を務めるベンチャー企業と共同で実施する。
研究に参画(研究代表者)
代表取締役就任
教 授A大学
ベンチャー企業
共同研究
【事例イメージ】
AMED厚労省 等
研究資金
COI委員会による最終的な方針
オプション1:研究の実施体制の変更共同研究において、教授は大学の研究者としてのみ参画し、ベンチャー企業側の立場で関与しないことを要請する。また、共同研究契約について、大学、企業双方の決裁プロセスから外れるように要請する。
オプション2:経済的利益関係の変更会社の事業成長に応じて、代表取締役から、代表権のない取締役や技術アドバイザー等へ変更していくことを要請し、経過をフォローアップする。
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
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アドバイス等がなされる場面と対応(3/4)
臨床研究の事例 ①【申告内容】手術手技の有効性安全性を評価する研究において、市販されているA社の医療機器を用いる。A社との間に個人的な経済的利益関係がある。
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
COI委員会における検討例(※)
教授がA社から多額の講演料を受領し、かつ、A社株式を保有しているので、A社にとって良い結果となるよう、研究にバイアスをかけるおそれがあるのではないか。
COI委員の視点①
本研究は、手術手技の有効性安全性を評価するにあたって、一般的に使用される企業A社の製品を利用するにすぎず、当該研究において、教授と企業Aの個人的利益を背景に研究にバイアスがかかる可能性は低いのではないか。
COI委員の視点②
【事例イメージ】
企業A医療機器の製造販売
教 授X大学
手術手技の有効性安全性を
評価する研究を実施する
個人的な経済的利益関係あり(多額の講演料の受領、及び株式の保有)
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アドバイス等がなされる場面と対応(3/4)
臨床研究の事例 ①【申告内容】手術手技の有効性安全性を評価する研究において、市販されているA社の医療機器を用いる。A社との間に個人的な経済的利益関係がある。
【事例イメージ】
企業A医療機器の製造販売
教 授X大学
手術手技の有効性安全性を
評価する研究を実施する
個人的な経済的利益関係あり(多額の講演料の受領、及び株式の保有)
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
COI委員会による最終的な方針
オプション1:研究の実施体制の変更共同研究において、教授は大学の研究者としてのみ参画し、ベンチャー企業側の立場で関与しないことを要請する。また、共同研究契約について、大学、企業双方の決裁プロセスから外れるように要請する。
オプション2:経済的利益関係の変更会社の事業成長に応じて、代表取締役から、代表権のない取締役や技術アドバイザー等へ変更していくことを要請し、経過をフォローアップする。
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アドバイス等がなされる場面と対応(4/4)
臨床研究の事例 ②【申告内容】薬剤Aが標準療法の一つとなっている疾患Bの患者群について、薬剤Aのメーカーから研究費等を受け取っている医師が、後ろ向きにカルテを調査して、治療法の有効性や安全性を評価する観察研究を実施。別途、企業Aより契約関係のない奨学寄附金を受領している。
研究費
企業A薬剤Aの製造販売
奨学寄附金の受領(契約関係なし)
【事例イメージ】
教 授X大学
薬剤Aが標準療法の一つとなっている疾患Bの患者群について、後ろ向きにカルテを調査して、治療法の有効性や安全性を評価する
COI委員会における検討例(※)
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
契約関係のない不透明な奨学寄附金の受領は、研究へのバイアスが生じる、または生じているのではないかと見られるため、是正する必要があるのではないか。
教授と企業Aの経済的利益関係を背景に、研究結果にバイアスがかかるおそれがあるため、申告者の研究への参加自体を見直す必要があるのではないか。
COI委員の視点①
COI委員の視点②
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COI委員会による最終的な方針
研究の公正性及び研究対象者の利益の保護に向けて研究の公正性及び研究対象者の利益の保護を確保するため、申告者に、データ管理、モニタリング、統計・解析以外の業務、つまり、研究者の薬剤の評価への関与を回避することを要請する。
アドバイス等がなされる場面と対応(4/4)
臨床研究の事例 ②【申告内容】薬剤Aが標準療法の一つとなっている疾患Bの患者群について、薬剤Aのメーカーから研究費等を受け取っている医師が、後ろ向きにカルテを調査して、治療法の有効性や安全性を評価する観察研究を実施。別途、企業Aより契約関係のない奨学寄附金を受領している。
研究費
企業A薬剤Aの製造販売
奨学寄附金の受領(契約関係なし)
【事例イメージ】
教 授X大学
薬剤Aが標準療法の一つとなっている疾患Bの患者群について、後ろ向きにカルテを調査して、治療法の有効性や安全性を評価する
(※)COI委員会における検討例は、あくまでも一般的に想定される事例になります。最終的には、各研究機関のCOI委員会における検討・判断が求められますのでご留意ください。
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本教材のまとめ(1/2)
COIとは?:
アカデミア研究者にとってのCOI状態とは、研究者と企業等との間に経済的利益関係がある状況において、社会や第三者から、研究開発活動における公正かつ適正な判断が損なわれているように「見られている」または「見られる可能性がある」状態を言います。
COI状態が存在すること自体は悪いことではないが、企業等からの過度な経済的利益により研究へのバイアスリスクが生じる場合は、適切に管理することが求められます。
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本教材のまとめ(2/2)
COIマネジメントとCOI委員会:
COIマネジメントは、「研究者個人」に対するCOIマネジメントと、「研究プロジェクト」に対するCOIマネジメントに分類されます。
COI委員会は、研究者の申告に対して、「承認」・「ヒアリング」・「アドバイス」の3つの役割を担い、COIによる研究へのバイアスリスクを適切に評価・管理することが求められます。
なお、さらにケーススタディをベースに、様々な事案の対応方法を確認されたい方は、別資料【医学研究COIマネジメントプロトタイプ(https://coi.tmd-tlo.jp/)】を参照されることをおすすめいたします
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お疲れ様でした
お疲れ様でした。
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