hpciを活用したfmo創薬技術の開発 - ssken.gr.jp ·...

21
2018/10/25 サイエンティフィック・システム研究会 科学技術計算分科会@神戸 星薬科大学 福澤薫 HPCIを活用したFMO創薬技術の開発 医薬品開発においてFMO量子化学計算が目指すもの ◎リード探索 薬の種となる化合物(リード化合物)を探す。 ◎リード最適化 リード化合物を元に、薬効,安全性,体内動態が最 適となる化合物をデザインする。 1つの薬を出すのに約2万化合物の合成が必要 課題:医薬品の開発プロセスの短縮 ⇒ インシリコ創薬による貢献 現在主流の古典力学的扱いでは精度が足りない 量子化学計算による「電子の挙動」に基づく設計が必要 手法の確立・汎用性の検証、大規模データ、スパコンの活用などが急務 2~3年 リード 探索 リード 最適化 前臨床 試験 臨床 試験 新薬 申請 ターゲット 決定 ターゲット 妥当性 評価 疾患・ ターゲット 選択 3~5年 3~7年 インシリコ創薬 形状認識と静電ポテンシャル、 ドナーアクセプター結合などの 古典的扱いが主流 効率化のためには?

Upload: others

Post on 31-Oct-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 2018/10/25

    サイエンティフィック・システム研究会

    科学技術計算分科会@神戸

    星薬科大学

    福澤薫

    HPCIを活用したFMO創薬技術の開発

    医薬品開発においてFMO量子化学計算が目指すもの

    ◎リード探索薬の種となる化合物(リード化合物)を探す。

    ◎リード最適化リード化合物を元に、薬効,安全性,体内動態が最適となる化合物をデザインする。

    1つの薬を出すのに約2万化合物の合成が必要

    課題:医薬品の開発プロセスの短縮 ⇒ インシリコ創薬による貢献

    現在主流の古典力学的扱いでは精度が足りない 量子化学計算による「電子の挙動」に基づく設計が必要 手法の確立・汎用性の検証、大規模データ、スパコンの活用などが急務

    2~3年

    リード探索

    リード最適化

    前臨床試験

    臨床試験

    新薬申請

    ターゲット決定

    ターゲット妥当性評価

    疾患・ターゲット

    選択

    3~5年 3~7年

    インシリコ創薬

    形状認識と静電ポテンシャル、

    ドナーアクセプター結合などの古典的扱いが主流

    効率化のためには?

  • 1 2 3

    4 5 6

    7

    8

    PB2 PB1 PA HA NP NA M1 M2NS1 NEP

    Hemagglutinin (HA)

    Neuraminidase(NA)

    Membrane Protein 2(M2)

    Matrix Protein (M1)Lipid Bilayer

    Nucleoprotein (NP)Polymerase

    (PB1,PB2,PA)

    RNA

    NEP

    Nature News 2012/1/20より

    NA-シアル酸複合体構造 受容体タンパク質と化合物の相互作用

    SBDD: Structure Based Drug Designリガンドと標的タンパク質との立体構造および相互作用を考慮した論理的創薬手法

    疎水性ポケット

    負電荷

    正電荷

    SBDDの例:インフルエンザNAとリレンザ・タミフル

    NH2 NH

    O

    O H

    O H

    O H

    OO–

    O

    NH

    NH2+

    リレンザ

    グアニジル基

    タミフル(活性体構造)

    疎水基

    OH

    O

    O H

    O H

    O H

    O

    O–O H

    O

    NH

    シアル酸

    グリセロール

    カルボキシル基

    タンパク質の立体構造データベース:Protein Data Bank

    構造のID

    ファイルをダウンロード

    高輝度放射光施設(SPring-8)

    世界中で解析された情報が集約されており、誰でもアクセスできる。2018.10.2 時点で 144,682 構造

  • 生体高分子の計算:古典力学(MM)と量子力学(QM)

    古典(経験的)力場計算: Molecular Mechanics (MM)従来用いられてきた経験パラメタに基づく方法

    ○ 計算コストが安価である。計算スピードが速い

    ○ 露に取り込まない効果が入る

    × 精度はパラメタに依存、固定電荷利用※

    × 「ばねで繋がった集合体」以上の議論は難しい※

    安定構造の予測、動的挙動解析など

    量子化学(第一原理)計算: Quantum Mechanics (QM)量子論に基づき、分子の電子状態を得る

    × 計算量が膨大(HFでN4に比例)○ 精度良く分子間力の評価ができる

    静電力、ファンデルワールス力、電荷移動力・・・

    ○結合の生成開裂(化学反応)、光励起、電子移動など電子の挙動を扱える

    対象は酵素反応、光合成、分子認識等、生体高分子で重要な問題ばかり

    マイクロ秒スケールの分子動力学計算も可能

    分子動力学計算はせいぜいピコ秒

    106の格差

    フラグメント分子軌道(FMO)法

    FMO法とは?

    1999年に北浦和夫教授(現神戸大学)により提案された full QM手法

    巨大分子をフラグメントに分割し、部分エネルギーを集積することで、系全体の高速電子状態計算を実現

    相互作用解析に適している

    インシリコ創薬におけるFMO計算

    Structure Based Drug Design (SBDD)へ量子化学計算を適用し、タンパク質と化学物質の結合様式を理解し、その結合性を予測する

    タンパク質-リガンド系全体の量子化学(電子状態)計算を高速・高精度に実現 演算量O(N4)→O(N2) ~O(N1)

    エネルギー指標による、リガンドー残基間の相互作用の定量的評価⇒ イオン結合、水素結合、弱い分子間力(vdW,CH/, /など)⇒ 精密な評価には電荷移動(CT)や電子相関の考慮が重要⇒ 官能基単位、主鎖/側鎖ごとの評価が可能

    電子密度解析や分子軌道(フロンティア軌道)解析も可能

    FMO本CRC press, 2009

  • 全エネルギー:

    フラグメント分子軌道(FMO)法と相互作用解析

    部分の集積によって系全体の電子状態を構築

    周辺のフラグメントからの影響は、環境静電ポテンシャルとして取り込む

    ほぼO(N)、数kcal/mol以内の全エネルギー誤差

    巨大分子をフラグメントに分割H2N

    R1HN

    O R2

    O

    NH

    HN

    R3

    O

    NH

    R4

    O R5

    O

    OH

    北浦教授らが1999年に提案した日本発のfull QM手法

    分子内・分子間の相互作用を定量的に解析できる

    フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE, PIE):

    LKJI

    IJKLKJI

    IJKJI

    IJI

    I EEEEE~~~

    total ・・・

    IJE~

    FMOでは電子的な挙動まで考慮した相互作用解析が可能 ⇒ 創薬への応用に期待

    ΔE (IFIE)=ΔEES+ΔEEX+ΔECT+ΔEDI

    I IJ

    エネルギー成分分割 (PIEDA):さらにエネルギー成分に分けて解釈できる

    IJ

    IK K

    J

    I

    IJ

    IK K

    J

    I

    FMO法の主な実装系

    産総研 Fedorov、神戸大 北浦ら ⇒ GAMESS/FMO

    長崎大 石川ら ⇒ PAICS

    立教大 望月、国立衛研 中野ら

    ⇒ ABINIT-MP/BioStation 純国産プログラム

    ABINIT-MP/BioStation ABINIT-MP: FMO計算専用エンジン BioStation Viewer: ABINIT-MP専用GUIプログラム

    配布形態:東大公開版ダウンロード(無償)

    http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/riss/dl/download/index.php

    ポスト京課題6 オープン版 (望月先生)

  • 2018/10/310

    Open Ver.1 Rev. 10 (2018年2月公開)

    http://www.cenav.org/abinit-mp-open_ver-1-rev-10/ ポスト「京」重点課題6の支援の下で望月らが開発中

    ABINIT-MPの開発に伴う応用系の発展2004年 2010年

    核内受容体(ER, RXR)HIVプロテアーゼ~300残基

    計算レベル

    電荷、溶媒効果

    古典MDサンプリング

    構造最適化PDB一点計算/モデル埋め戻し

    ONIOM(QM/MM)

    FMO-MP2部分opt

    解析 IFIE IFIE mapCAFIFILM BSSE

    高次電子相関法MPnスケーリング法

    水和DNA12塩基対+2500wtr

    インフルエンザHA抗原抗体系~1000残基

    Mulliken ESP, RESP NPA

    MP2

    インフルエンザNAタミフル~400残基

    CIS CIS(D)

    EGFRチロシンキナーゼ

    CRP11塩基対+200残基

    mFruites

    2014年

    FMO4-IFIE

    PB

    2008年

    励起エネルギー

    インフルエンザHA3量体抗原抗体系~2400残基

    リガンド水和10Åwtr

    結晶-ペプチド複合系~(SiO2)250-6残基-wtr

    PIEDA

    2012年

    FMO4FMO3FMO2多体FMO

    モデルタンパク質ER ~50残基

    HF/STO-3G

    2000

    電子密度解析

  • スパコンを駆使した超並列計算と分子設計(ABINIT-MP)

    2008年 地球シミュレータインフルエンザウイルスのHAタンパク質単量体(約1000アミノ酸残基)FMO-MP2計算が53.4分で完了!

    2010年 地球シミュレータ2HA3量体のFMO-MP3計算

    NA-タミフル複合体のFMO-MP3計算

    ウイルス変異予測とタミフル作用模擬計算

    2012年 地球シミュレータ2創薬分子設計の新手法を発表(右記)

    2013年 FOCUSスパコンナノバイオ系への初の適用例

    インプラントの設計などに期待

    2014年 京コンピュータ1万ノードを用いた計算

    インフルエンザNAのFMO4計算 1.2時間

    2015年からは、FMO創薬コンソーシアムを母体として「京」産業利用課題を推進 (2011,日経産業)

    PCクラスタ(128コア)でも約250残基のFMO2-MP2/6-31G*計算が4時間程度

    FMO創薬コンソーシアムの活動(2014.11.1~)

    FMO法に基づくインシリコ創薬手法を、実用的な技術として発展させるための集まり

    FMO Drug Design Consortium (FMODD)

    代表:福澤薫(星薬科大)副代表:本間光貴(理研)

    鶴田宏樹(神戸大)

    http://eniac.scitec.kobe-u.ac.jp/fmodd/index.php

    メンバー:アカデミア14、製薬企業14、IT企業4 (100名以上) 年2回の全体会議、年2回のリーダー会議、他 FMO法利用ノウハウの共有 新規研究テーマの検討 HPCIの利用 IFIEデータベースの構築

  • 2年連続で「京」利用課題の優秀成果賞を受賞

    「HPCIを活用したFMO創薬プラットフォームの構築」(課題番号hp160103)

    K computer

    FMO創薬コンソーシアムhp170183

    産学官連携で実用的なFMO創薬技術を開発する「HPCIを活用したFMO創薬プラットフォームの構築」(課題番号hp180147)

    500複合体

    1,000複合体

    平成27年度 平成28年度 平成29年度FMO計算を実施した複合体構造数

    FMO計算を実施した複合体構造数

    K computer

    ABINIT-MP開発機関

    国立衛研、医薬基盤研、理研、産総研、大阪大学、近畿大学、東京大学、他

    計算プログラムの提供

    成果のフィードバック

    評価指導

    HPCI戦略プログラム(分野4)、ポスト京プロジェクト(重点課題6)

    東京大学生産技術研究所東京大学・立教大学

    FMODDによる「京」産業利用課題の推進 (2015~)FMODDによる「京」産業利用課題の推進 (2015~)

    アドバイス機関

    大学・研究所 11機関製薬企業 15社IT企業 4社

    FMO創薬コンソーシアム

    1,800 タンパク質/複合体2,000 ぺプチドサンプル

    キナーゼWGキナーゼWG

    プロテアーゼWGプロテアーゼWG

    核内受容体WG核内受容体WG

    タンパクータンパク相互作用WG

    タンパクータンパク相互作用WG

    開発WG開発WG

    KBDD連携WGKBDD連携WG

  • 研究活動の流れ

    X線結晶解析NMR 前処理

    化合物の合成

    解析統計処理

    FMO計算

    前処理 解析 統計処理 データベース化

    結晶水末端処理・プロトン化欠損部位力場構造最適化

    相関解析特異値分解リガンド分類静電項のスケーリング

    (全)PDB構造の計算FMOデータベース

    創薬研究に必須のツールへ

    1年目(2015) 2年目(2016) 3年目(2017)

    半自動化プロトコル IFIE-DB

    FMOの創薬での活用について

    リガンド結合エネルギーと活性値との相関を見る(X線結晶構造を用いる)

    フラグメント単位の相互作用を解析する(IFIE、PIEDA)

    相互作用情報に基づいたデータ解析を行う

    計算結果を集約したデータベースを作る

    構造生物学、創薬化学との連携

    -250

    -200

    -150

    -100

    -504 6 8 10 12

    13

    105 12

    11

    9 6

    48

    1

    27

    pIC50

    15

    16

    18

    20

    17

    1922

    21

    Total

    IFIE

    (kca

    l/mol

    )

    O

    CO HO

    HO

    HNN

    C

    NHC

    OH2N

    NH2

    NH

    H2O

    Arg394

    Glu353

    Leu387

    His524EST

    hydrophobic residues

    hydrophobic residues

    Phe404

    +)( ligandreceptorcomplexbind EEEE

  • 事例:セリン・スレオニンキナーゼPim1の阻害活性予測

    A typical example of “activity cliff”

    原子1個の違いで活性が200倍!

    Watanabe et al., J. Chem. Inf. Model. 57, 2996 (2017)

    水素結合 CH/ 結合

    FMO計算結果と実験値(pIC50)との相関 高難度の活性予測FMO計算結果と実験値(pIC50)との相関 高難度の活性予測

    Watanabe et al., J. Chem. Inf. Model. 57, 2996 (2017)

    結晶構造そのもの 結晶構造をMM最適化 結晶構造をQM最適化

    pIC50

    QM/MM-Opt[HF/6-31G*:UFF]

    QM領域

    構造をQMで最適化すれば活性予測の精度も向上

    溶媒なし

    溶媒あり

    QM構造最適化と水和の考慮によって activity

    cliff を再現

  • PIEDA成分解析と実験値(pIC50)との相関 高難度の活性予測PIEDA成分解析と実験値(pIC50)との相関 高難度の活性予測

    Watanabe et al., J. Chem. Inf. Model. 57, 2996 (2017)

    EFMO2 (kcal/mol)

    DI0+5 -5-5

    ES

    Phe49s

    Asp186S

    Ile185S

    Leu174S

    Arg122M

    Leu44SVal52S

    Lys67S

    Ile104S

    Glu121S

    Glu89S

    Pro123

    Ala65S

    Leu120S

    Cpd IC50(nM) Total ES CT DI

    1 2 –466.0 –447.8 –36.9 –69.5

    2 2 –471.2 –451.3 –37.8 –68.9

    3 3 –473.3 –451.6 –36.2 –68.8

    4 53 –461.1 –443.1 –36.6 –68.6

    5 92 –464.7 –446.9 –36.7 –68.6

    6 447 –460.0 –441.6 –36.2 –68.2

    R2 with pIC50 0.68 0.74 0.29 0.74

    水素結合 → ES + CT

    CH/ 結合 → DI

    強い水素結合の形成

    弱いCH/結合による調節

    Tyr143とのIFIE –12.5 2.8ES -12.4 6.1DI -10.6 -6.2

    ビタミンD受容体とリガンドの特異的相互作用

    Ligand 2(EC50(nM) = 0.31)

    Ligand 1(EC50(nM) = 0.006)

    Matsuo, et al., J. Steroid Biochem. Mol. Biol., 144 (2014) 201.

    ~X線結晶構造解析とFMO計算の融合~

    EC50値測定 ⇒ 活性値が大きく(約50倍)異なるX線結晶構造解析 ⇒ 構造は殆ど同じ

    環構造の僅かな違いによる活性値の劇的な変化をFMO計算により明らかにする

    核内受容体 WG

    FMO結合エネルギー –162.1 –158.0

    Tyr143

    (kcal/mol)

    水素結合CH/π 結合

    Takeda, et. al., J. Steroid Biochem. Mol. Biol., 171,75 (2017).

  • ブロモドメイン阻害剤:ペプチドリガンドから化合物への最適化

    Nature 2009, 461, 664-668

    ペプチドリガンド

    Ser1 - Gly2 – Arg3 – Gly4 – Aly5 – Gly6 –Gly7 – Aly8 – Gly9 – Leu10 – Gly11- Ala12

    Aly ⇒ アセチル化Lys

    NH

    N

    O

    Br

    NH

    N

    O

    SNH

    O O

    NH

    N

    O

    SNH

    O O

    NH

    N

    O

    SNH

    O O

    O

    8 23uM 12 4.8uM 14 4.4uM

    J. Med. Chem 2012, 55, 9831フラグメント化合物(Pfizer社)

    IFIE解析では、Aly5, 8の寄与が大きい

    PPI WG

    ~FBDD (Fragment Based Drug Design) へのFMOの応用~

    ヒット化合物 リード化合物

    17 0.22uM

    from HIT to LEAD

    フラグメントの拡大に伴うIFIEの変化

    -30

    -25

    -20

    -15

    -10

    -5

    0

    8

    -30

    -25

    -20

    -15

    -10

    -5

    0

    12

    -30

    -25

    -20

    -15

    -10

    -5

    0

    13

    -30

    -25

    -20

    -15

    -10

    -5

    0

    14

    -30

    -25

    -20

    -15

    -10

    -5

    0

    17

    -30

    -25

    -20

    -15

    -10

    -5

    0

    Pep

    (8) (12) (13)

    (14) (17) (Pep)

    フラグメントの拡大につれてIFIEが大きくなり、ペプチドのIFIEに似てくる⇒ フラグメント化合物がペプチドの相互作用

    を模している様子を再現

    PPI WG

    M. Ozawa, T. Ozawa, and K. Ueda, J. Mol. Graph. Model. 74, 73-82 (2017).

  • キナーゼWG ~ p38活性値との相関88複合体構造全体

    ⇒全構造では、ほぼ無相関

    リガンドタイプ別

    特異値分解などの解析手法も開発

    R² = 0.8115

    ‐140

    ‐120

    ‐100

    ‐80

    ‐60

    ‐40

    ‐20

    00.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00

    IFIE‐SUM

    pIC50 (Median)

    アミドビフェニルグループ 中性

    [kcal/mol]

    R² = 0.6634

    ‐140

    ‐120

    ‐100

    ‐80

    ‐60

    ‐40

    ‐20

    00.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00

    IFIE‐SUM

    [kcal/m

    ol]

    pIC50(Median)[nM]

    その他 中性

    キナーゼ WG

    Sheng, et. al., Comp. Struct. Biotech. J., submitted.

    p38 MAP kinase ~特異値分解~

    �����������

    ���

    構造変化により機能に影響を与えるアミノ酸を抽出できた

    キナーゼ WG

    第�特異ベクトル以降のピーク位置は、����平均値のピーク位置とは一致しない⇒ 第�ベクトル以降の持つ意味を考察

    無相関

    相関あり

    Maruyama, et. al., Comp. Theor. Chem, 1132, 23-34 (2018).

  • -250

    -200

    -150

    -100

    -504 6 8 10 12

    13

    105 12

    11

    9 6

    48

    1

    27

    pIC50

    15

    16

    18

    20

    17

    1922

    21

    Total

    IFIE

    (kca

    l/mol

    )

    FMO計算値と活性値との比較

    実験値と計算結果の相関関係を指標に多くの事例を検証

    Total

    IFIE

    (kca

    l/mol

    )

    -250

    -200

    -150

    -100

    -504 6 8 10 12

    13

    105

    12

    11

    9

    6

    4

    8

    1

    14

    3

    27

    15

    16

    19 22

    2120

    17

    18

    結晶水あり

    R² = 0.6484 R² = 0.8696

    結晶水の考慮

    IFIE (kcal/mol)

    -14.0

    -12.0

    -10.0

    -8.0

    -6.0

    -210.0-200.0-190.0-180.0-170.0IFIE (kcal/mol)

    ∆Hとの相関R= 0.897

    ∆H

    (kca

    l/mol

    )

    -12.0

    -11.0

    -10.0

    -9.0

    -8.0

    -7.0

    -6.0

    -220.0-210.0-200.0-190.0-180.0-170.0

    ∆G

    (kca

    l/mol

    ) ∆Gとの相関

    プロテアーゼ WG

    PPI WG

    結晶水なし

    熱力学的データの選択

    KBDDとの連携~MDとQMの融合

    情報交換・意見交流の必要性

    古典MD と FMO(QM) から得られる結果・データは相補的。 インシリコ創薬アプローチとして、相互利用の流れをつくるとユーザ

    ビリティが向上する。

    静的な電子状態精密な相互作用

    動的な構造情報精密なΔG値

    KBDD

    IFIE, PIEDA

    結合ポーズ

    順位付け

    動的構造

    活性値との不一致

    KBDD連携WG

    ※ 2017年10月に合同公開シンポジウムを開催(CBI学会年次大会期間中、参加者200名程度)

    データ連携事例の作成

    CDK2, ERK2を共通のターゲットとした計算を実施。 FMOによるドッキングポーズの推定、統計解析、溶媒効果等の

    方法論の開発に繋げたい。

  • 実験値ΔGexpと計算値の相関(初期構造)

    ΔGexp vs ΔE(MM-PBSA)

    ΔGexp vs total IFIE

    R2=0.063

    R2=0. 690

    X線最適化構造に対するFMO1点計算でも良い相関が得られる

    ΔE

    Σ IFIE

    ΔGexp

    (in kcal/mol)

    ΔGexp

    KBDD連携WG

    CDK2: J. Chem. Inf. Model. 2016, 56, 2445-2456計11種のリガンドに対してFMO計算を実施

    IFIE(MP2) ES

    CT+mixDI

    ブロモドメイン111残基(111フラグメント)

    ②水

    素最

    適化

    構造

    のIF

    IE/P

    IED

    A

    ①スナップショット構造のIFIE/PIEDA

    FMO計算に使用した構造① MDスナップショットそのもの

    (180/200構造完走)② 水素のみ構造最適化

    (200/200構造完走)

    FMO計算(MP2/6-31G*) が完走した180構造×6105ペアでIFIE/PIEDA比較

    R=0.997 R=0.991

    R=0.991R=0.997

    AMBER12(ff99SB)で100nsシミュレーション

    10nsごとのスナップショット

    → 6105個のIFIEペアデータ

    MDからの構造サンプリング方法の検討~スナップショットvs.水素原子最適化~

    開発WG

  • 開発WG

    FMO自動計算プロトコールによる京での計算

    ※FMO database登録済み

    構造種類 タンパク質種類固有

    PDB数モデリング

    構造数FMO計算

    実行数

    X線結晶構造Apo構造 202 203 203※

    p38-MAP kinase 85 100 100※

    Renin 34 64 64

    NMR構造 TrpCage 1 76 76※

    MDサンプリング構造

    polyQ 1 1000 1000TrpCage 1 1000 991※

    Bromodomain 1 1000 902(KBDD連携)ドッキング構造

    CDK2 15 160 160ERK2 9 77 77

    世界初のタンパク質の量子化学計算値データーベース世界初のタンパク質の量子化学計算値データーベース

    相互作用情報に基づく様々な用途

    生命現象の解明

    FMO力場の開発

    医薬品設計(新しい置換基の提案)

    半自動化プロトコルによるFMO計算

    将来的には全PDBデータを格納し、世界中の構造生物学者に用いられるDBを目指す

    「薬らしさ」の評価

    AI創薬

    構造生物学との連携

    開発WG

    H29年度末で約1740構造X-ray: 673NMR: 76MDサンプリング: 991(PDB: 約14万構造)

    2017年度に内部公開を開始

    AMED-BINDSプロジェクトでwebインターフェイスを整備

  • FMO相互作用解析の依頼 構造生物学 創薬化学 計算化学

    インシリコスクリーニングの依頼がん、糖尿病、自己免疫疾患、急性骨髄性白血病、等

    AMEDの創薬支援プロジェクトとの連携@インシリコユニット

    構造インフォマティクスとFMO計算を融合したインシリコスクリーニング支援研究

    ドラッグ・デリバリー・システム

    ~FMO-DPD法を用いたDDS製剤設計~

  • ベシクルの大きさ・形状・膜厚

    ベシクルの大きさ・形状・膜厚・脂質間距離

    微粒子の設計における物性評価

    小角X線散乱 (SAXS)

    Cryo-TEM

    分子シミュレーション

    脂質分子分布・分子の微細構造

    サイズ

    小小

    大大

    脂質微粒子の形成メカニズムを予測するための分子シミュレーション手法の確立

    (20 nm~)

    (0.5 nm~300 nm)

    (0.05~0.5 nm)

    μm

    Å~nm

    nm~sub μm

    微粒子の構造情報

    E. Shinsho, et. al., J. Comp. Chem. Jpn., in press.

    モデル脂質膜の調整と評価

    DPPC (1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)

    DOTAP (1,2-Dioleoyl-3-Trimethylammonium Propane)

    正電荷脂質

    リン脂質

    組成比 (モル比)DOTAP/DPPC(%)= 0%, 25%, 50%, 75%, 100%

    DOPC (1,2-di-(9Z-octadecenoyl)-sn-glycero-3-phosphocholine)

    上記の組成比で実験 (SAXS, Cryo‐TEM)及びシミュレーションを行った。

    ※SAXS (BL10C)は高エネルギー加速器研究機構にて測定、Cryo‐TEM (JEM‐2100F)は千葉大学にて測定

  • A B C

    D E F

    W

    水を含めた7成分間、21ペア

    ・溶媒効果(Poisson-Boltzmann)を取り入れた二分子モデル計算・計算レベル:FMO2-MP2-PB/6-31G†、各ペア2000配座

    分子内を小分子に分割 ⇒ 「部品」として再利用可能

    POPC:頭部にコリンを有する代表的なリン脂質

    F ED

    D A

    B C

    A A

    A B

    B

    散逸粒子動力学(DPD)シミュレーション

    ・パラメータ算定法: Okuwaki et al., J. Phys. Chem. B 122 (2018) 338-347.・POPCでの解析例: Doi et al., Chem. Phys. Lett. 684 (2017) 427-432.

    FMO法による相互作用パラメータの算定⇒ FMO‐DPD法

    ・構造作成・ペア配置生成

    ペア座標リスト(各2000配置)

    相互作用エネルギーリスト

    ABINIT-MP

    配向リスト Metropolis MC

    配向情報の取得

    ペア間平均相互作用 Eij異方性の指標(Sf )

    配置生成モジュール

    Z(配位数)◆異方性の指標(Sf)の導入:・特定の配向で強い相互作用を示す系:平均相互作用を過大評価・MC法採用配置の配向の偏りから相互作用をスケーリング

    ◆配置生成からパラメータ算出処理までの自動化

    ⇒単純な二成分系の相転移臨界温度が実験と良好な一致

    FMO計算に基づくパラメータ算定のワークフロー

    Okuwaki et al., J. Phys. Chem. B, 122 (2018) 338. / 奥脇ら, J. Comp. Chem. Jpn., 17 (2018) 102.

    ワークフローを汎用システムとして公開済み (名称はFCEWS)

    【立教大学望月研】

  • 脂質二重膜 ベシクルの形成

    脂質二重膜・ベシクルの形成シミュレーション:親水基 :疎水基

    シミュレーション: 69.5Å2

    実験値: 72.5 Å2[2]

    シミュレーション: 67.8Å2

    実験値: 63 Å2[1]

    [1] N. Kučerka et al., Biophys. Acta ‐ Biomembr., vol. 1808, No. 11, 2011, pp. 2761–2771.

    膜面積の算定

    [2] H. I. Petrache et al ,Biophysical Journal, Vol. 86, No. 3, 2004, pp. 1574‐1586.

    DPPC

    DOPC

    流動性:低

    流動性:高

    混合比率がベシクル形状に及ぼす影響

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    1.2

    0 25 50 75 100

    SAXS(実験値) DPD(計算値)

    X_shape =1 : 球X_shape

  • 脂質二重膜の表面形状と分布の評価

    DOTAP (%)50% 75% 100%25%

    まとめと今後の課題

    ~FMO創薬の実現にむけて~

    産学官連携のFMO創薬コンソーシアムを母体として実用化を目指す。結合性/活性/選択性の評価など、分子設計に有用な情報を提供できる。統計解析、溶媒効果が依然として課題である。

    FMOデータベース (FMO-DB) はHPCI利用成果の集約である。世界最大級のタンパク質の量子化学計算データを保持しており、今年度中の一般公開を予定している。

    FMO-DBは構造生物学者や合成化学者にも有用な基盤データである→ 各種データベースとの連携により世界のスタンダード化を目指す。

    さらに、機械学習やAI創薬への基盤データとなる。

    KBDDとの連携、AMED-BINDSとの連携、ポスト京PJとの連携等を通じて、オールジャパン体制での実用的な創薬基盤の構築を進める。

    FMO相互作用パラメタに基づくFMO-DPDシミュレーションはナノ粒子等の物性評価にも有用。今後あらゆる生体分子への拡張に期待。

  • 謝辞

    FMO創薬コンソーシアム(FMODD)本間光貴、渡邉千鶴、高谷大輔、永瀬駿平、神坂紀久子(理研)、

    田中成典、渡邉博文、鶴田宏樹、森一郎(神戸大)、

    沖山佳生(国立衛研)、栗田典之(豊橋技科大)、矢城陽一朗(岡山理科大)。

    高木達也(阪大) 、川下理日人(近畿大)、鷹羽健一郎(旭化成ファーマ)

    小沢知永(キッセイ薬品工業)、上村みどり(帝人ファーマ)

    FMODD参加企業・大学・アドバイザーの皆様

    ABINIT-MP/BioStation、FMO-DPDの開発望月祐志、奥脇弘次、土井英男(立教大)、中野達也(国立衛研)、

    古明地勇人(産総研)、みずほ情報総研株式会社

    ポスト京HPCI戦略プログラム(分野4)、 ポスト京プロジェクト(重点課題6)

    KBDDコンソーシアムからのデータ提供

    ファンド・計算機「京」産業利用枠「HPCIを活用したFMO創薬プラットフォームの構築」 (課題番号hp180147)