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URBAN KUBOTA NO.20|1
アーバンクボタ NO.20 MARCH 1982 株式会社クボタ
●目次
特集=地すべり
1日本の代表的な地すべり
谷地 寺川俊浩 ______________________________________________2
松之山 湊元光春 ____________________________________________4
茶臼山 望月巧一 ____________________________________________6
胡桃・五十谷 絈野義夫 ______________________________________8
大涌谷・早雲山 黒田和男 __________________________________10
亀の瀬 藤田崇 ____________________________________________12
森遠 藤田崇 ______________________________________________14
鷲尾岳・平山 大八木規夫 __________________________________16
2地震と地すべり
牧内 望月巧一 ____________________________________________20
見高入谷 大八木規夫 ______________________________________21
3その他の特徴的な地すべり
奈良尾 斎藤豊 ____________________________________________ 22
清水山 望月巧一 __________________________________________ 24
長者 藤田崇・竹内篤雄 ____________________________________ 26
福知 藤田崇 ______________________________________________ 27
4開発と地すべり
北ーの沢 黒田和男 ________________________________________ 28
鳴子ダム 大八木規夫 ______________________________________ 29
小泊 西田彰一 ____________________________________________ 30
岩殿山 奥園誠之 __________________________________________ 31
阿部倉 山口眞一 __________________________________________ 32
雄琴串林 竹内篤雄 ________________________________________ 33
5地すべりをめぐって ______________________________________34
外国の地すべりと日本の地すべり 西田彰一
日本の地すべりと地質構造 黒田和男
地すべりの構造 大八木規夫
計測にもとづく地すべりの予知 山口眞一
6地すべりの理学
地すべりをどう観るか _____________________________________52
URBAN KUBOTA NEWS
地すべり抑止用遠心力鋼管抗・Gパイル _____________________56
発行所=株式会社クボタ
大阪市浪速区敷津東1丁目2番47号
発行日=1982年3月
第5刷=2000年2月
編集製作=秋本・原田+国東照幸
印刷=大日本印刷株式会社大阪工場
主要図版作製=スタジオ・ツノ
●表紙カラー写真①~④
①谷地地すべり
この写真は谷地地すべりを斜め上方から撮影したものである。
最上部に小沼・大柳沼の2つの湖沼があり,これらより本地
すべりの主誘因である地下水が涵養されている。この直下に
ほぼ北東から南西に走る断層にそって生じた1,000mにおよぶ滑
落崖は、地肌をむきだしにしているのが判る。
滑落崖から末端部成瀬川までの約1,300m は,かなり規則正し
い配列をなす数多くの陥没・隆起部が地すべりによって形成
されている。末端部は成瀬川と比高30m の急崖で接し,一部
は川越え地すべりとなって右岸側に小さく隆起し、成瀬川は
著しく蛇行し荒廃している景観が判読できる。(寺川)
(写真提供:秋田県砂防課)
③清水山地すべり
この地すべり地は長野県の北西部にあり、糸魚川─静岡構造
線に沿って北流する姫川の右支川中谷川の右岸山脈に発生し
ている。
標高8lOm の峠から中谷川河床(標高550m)の間がすべる長
大なものである。中谷川は写真の右下から左下へ流れており、
この写真は中谷川左岸の立山の山腹から撮ったものである。
弓なりになった左端のブロックがⅠブロックであり、これに
右上方からⅢ、Ⅳ、Ⅴブロックが合流している形態がわかる。
Ⅱブロックは見えない。 山腹の森林になっている所は大体不
動地区であり、耕地や草地となっている所が滑動している所
である。 渦動地区周辺のわずかな平地や尾根筋に集落ができ
ているが地すべりにより被害を受ける家が後を絶たない。19
60年61年の大滑動以後中屋敷部落(Ⅰブロックの中間部の右
にある部落)、清水山部落(Ⅳブロックの右にある部落)で8
戸の民家が被害を受け取り壊されている。(望月)
②亀の瀬地すべり
この写真は亀の瀬地すべり地西南部上空から撮影したもので、
中央部の2条の道路が走る緩斜面が地すべり地である。 この地
は大和川(写真右側)が生駒~金剛山系を横断する所にあ
り、峡谷をなしている。写真の左側方向(北側)に信貴山、
生駒山がつらなり、南側は明神山、二上山へとつながる。な
お、大和川の右側(南)にほほ平行して国道25号線とトンネ
ルをくぐりぬける国鉄関西線が通っており、右上部の市街地
は奈良県王寺町である。
地すべり地は、大きく2つのブロックに分かれる。その一つ
は清水谷地区であり、写真の左側(下側)の道路の走る帯状
の一帯で、緑地の少ない凹状地の部分である。昭和42~43年
に大きな変動があり、写真左側のトメシヨ山の南側斜面に滑
落崖が生じたが、その後排土工が施工された。写真の白い横
線の見える斜面がそれである。この地区は現在も防止工を施
工中であるため、裸地が多い。
昭和6~7年に大きな滑動をしたのが峠地区で、清水谷地区
の東側(写真では上側になる)に位置する。数万年前からく
り返された地すべり変動により、変動部である厚さ30~70m
のドロコロ溶岩体が大和川に向かって押し出し、このため大
和川は南側(右側)に流路を曲ける破目となり、峡谷を形成
した。地すべり地末端部の一部は大和川をこえている。ちょ
うど国鉄関西線のトンネルの大和川の河岸部がそれにあたり、
昭和42~43年の地すべりで国道25号線は延長150mにわたって
約1.5mの隆起があった。なお、ドロコロ溶岩の上面には峠部
落があり、その北側で深礎工が施工されている。(藤田)
(写真提供:近畿地建大和工事事務所)
④茶臼山地すべり
長野市中心部の南西約1Okmにある茶臼山地すべり地は善光寺
平に望んで細長く、異様な姿を見せている。地すべり地の北
(写真の向って右)に標高730mの茶臼山北峰があるが昔はこ
の南に標高720mの南峰があった。この南峰の山体の東側が地
すべりこより崩れ去ったものである。山麓には戸数285戸の岡
田部落があり、早くから対策が問題になってきた。近年よう
やく安定化をとり戻し、植物園としての整備が進められてい
る。
地すべり地の境界は明瞭であり、上部の右岸側は垂直状の滑
落崖によって境されている。地すべり地の北側(写真の向っ
て右側)の山地は流紋岩質凝灰岩から成り、けわしい壮年期
の地形を呈するが、南側は砂岩泥岩層から成り、古い地すべ
りの跡地で、耕地として利用されている。右下に見える部落
は山新田および三軒家部落で、これらは古い地すべり崩土の
上に乗っている。
写真の上方に見える山地は犀川沿川の第三紀層から成る山々
で、地すべりの集中的な発生地帯であるが山地内の集落がよ
く発達し、耕地も多い。なおこの写真は1976年10月撮影した
ものであり、地すべり地内には工事用の道路が幾筋も見られ
る。植物園はまだてきていない。(望月)
●扉カラー写真○A~○C
○A鷲尾岳地すべりのすべり面
写真は、長崎県で掘削した鷲尾排水隧道に露われた C37c 炭
層と、この中に発達したすべり面を斜め下から見上げたもの
である。画面中央部を左右に延びる暗褐色の部分がすべり面
の上盤側で、その上盤の凝灰質泥岩は手前にせりだしている。
すべり面には、地すべりの移動方向と一致する NNW 方向の条
線が明瞭に認められた。黒灰色部は破砕した炭層、淡褐色部
は凝灰岩起源の粘土層である。写真上で最下位の炭層とその
下位のシルト岩との境界にも不明瞭ながらすべり面が発達し
ている。(大八木)
○B亀の瀬地すべりのすべり面
<峠地区深礎工15-12号。地表面下約27m〉
写真上半部の左から右方向に傾いている黒色の部分がドロコ
ロ溶岩で、これが渦動している。下半部の黄褐色の部分が含
礫凝灰質砂岩で、ここにいくつかのすへり面がみられる。両
者の境界部にも厚さ2~10cm の褐色の粘土層があり、モンモ
リロナイトを多量に含む。とくに境界面付近は、高含水比の
粘土があってすべり面となっており、大和川の方向(南側)
に30°~40°の勾配で傾いている。(藤田)
○C亀の瀬地すべりのすべり面の鏡肌
<峠地区深礎工15-12号、地表面下約27m〉
写真中央部の暗褐色の部分が、含礫凝灰質砂岩中に形成され
た厚さ数cmの粘土層にみられる主すべり面で、みごとな鏡肌
をなしている。この面も大和川に向かって約20°の勾配で傾斜
しており、その方向に条線がみられる。このすべり面はドロ
コロ溶岩の下位約1~1.5mのところに形成されたものである。
●カラー写真⑧は、裏表紙カラー写真⑦と連続するもので、解説は裏表紙裏面に収載。