コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受...

28
中央大学商学部演習論文大会草稿 1 コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受容プロセス ―最寄品における顧客ロイヤルティ構築の是非― 土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒 中央大学商学部久保知一研究室第 3 期生 要約:近年、日本では最寄品を中心にコーズ・リレイテッド・マーケティング (CRM) 行う企業が増えてきたことを背景として、CRM の研究が行われるようになってきた。 しかし、研究の現状は、その実施効果について本質的に解明されたとは言い難いまま である。本論では、消費者の CRM 受容とそれによる顧客ロイヤルティ構築を説明する 因果モデルを構築し、実証分析を行う。 キーワード:コーズ・リレイテッド・マーケティング 顧客ロイヤルティ 期待不一 致モデル 多属性態度モデル 共分散構造分析 1. はじめに 近年、消費者の社会貢献に対する意識の変化を背景に、コーズ・リレイテッド・マーケテ ィング (Cause-related Marketing: CRM、以下 CRM と表記) を行う企業が見られるようになっ た。 コーズとは「良いことなので援助したくなるような対象」のことである (世良, 2004)そして CRM とは、特定の主義・主張に対する企業の貢献と、顧客が直接または間接的に関 わる企業との営利的な取引を結び付けるマーケティングである (Kotler, 2008)CRM は売上 の増加・企業イメージ・従業員モラル・非営利団体の認知度の向上と様々な特徴があり (, 1998)Cone and Roper (1998) は、長期的には顧客のロイヤルティの構築につながると述 べている。 現在、日本で CRM が多く行われているのは、水、ビール、アイスクリーム、トイレット

Upload: others

Post on 22-Jun-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

中央大学商学部演習論文大会草稿

1

コーズ・リレイテッド・マーケティングの

消費者受容プロセス ―最寄品における顧客ロイヤルティ構築の是非―

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

中央大学商学部久保知一研究室第 3 期生

要約:近年、日本では最寄品を中心にコーズ・リレイテッド・マーケティング (CRM) を

行う企業が増えてきたことを背景として、CRM の研究が行われるようになってきた。

しかし、研究の現状は、その実施効果について本質的に解明されたとは言い難いまま

である。本論では、消費者の CRM 受容とそれによる顧客ロイヤルティ構築を説明する

因果モデルを構築し、実証分析を行う。

キーワード:コーズ・リレイテッド・マーケティング 顧客ロイヤルティ 期待不一

致モデル 多属性態度モデル 共分散構造分析

1. はじめに

近年、消費者の社会貢献に対する意識の変化を背景に、コーズ・リレイテッド・マーケテ

ィング (Cause-related Marketing: CRM、以下 CRM と表記) を行う企業が見られるようになっ

た。 コーズとは「良いことなので援助したくなるような対象」のことである (世良, 2004)。

そして CRM とは、特定の主義・主張に対する企業の貢献と、顧客が直接または間接的に関

わる企業との営利的な取引を結び付けるマーケティングである (Kotler, 2008)。CRM は売上

の増加・企業イメージ・従業員モラル・非営利団体の認知度の向上と様々な特徴があり (世

良, 1998)、Cone and Roper (1998) は、長期的には顧客のロイヤルティの構築につながると述

べている。

現在、日本で CRM が多く行われているのは、水、ビール、アイスクリーム、トイレット

Page 2: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

2

ペーパーといった最寄品である1。しかし、最寄品は価格弾力性が通常は大きいため、実際

に CRM が顧客ロイヤルティを構築するのかは疑問である。そこで本論では、主に CRM の

属性に注目してきた先行研究とは異なり、消費者が CRM を受容するプロセスを、基本属性

との関係も含めて解明することで、これを検証する。

本論は以下のように構成される。まず第 2 節においては、既存研究のレビューを行う。具

体的には、モデル構築の理論的背景となる Oliver の期待不一致モデルと Fishbein の多属性態

度モデルを検討する。第 3 節においては、以上の 2 つのモデルを統合して、消費者の CRM

受容のオリジナルモデルを構築し、仮説を提唱する。理論分析に続いて行われるのは実証分

析である。第 4 節では調査方法に言及し、第 5 節では構造方程式モデルの分析結果を検討す

る。最終節ではこの分析結果への考察を行い、本論の限界及び今後の研究課題に言及し、次

なる研究への橋渡しを行う。

2. 先行研究のレビュー

本節では、CRM 実施製品の消費者の再購買意思決定モデルを構築するために、CRM、顧

客ロイヤルティと顧客満足に関する研究、および期待不一致モデルのレビューを行う。

○CRM の定義とその特徴

近年、消費者の社会貢献に対する意識変化を背景に CRM が広がってきている。日本での

火付け役となった代表例としてはミネラルウォーターの「ボルヴィック」が始めた「1ℓ for

10ℓ」キャンペーンが挙げられる2。このキャンペーンは、社会貢献したいが何をしたら良い

かわからない消費者と社会貢献活動を橋渡しする役目を果たした。一般的に CRM という言

葉は、アメリカン・エクスプレス社が 1983 年に行った活動3が起源であると認識されている。

コーズとは良いことなので援助したくなるような対象のこと (世良, 2004) であり、CRM を

定義している代表的なものに世良 (2004) や Kotler (2008) がある。世良 (2004) ではコーズ

の担い手との協力関係のもと、企業がコーズを支援することにより、マーケティング全般の

目標達成を促進させるための戦略であると定義されており、Kotler (2008) では、特定の主義

主張に対する企業の貢献と、顧客が直接または間接的に関わる企業との営利的な取引を結び

付けるマーケティングであると定義している。

1 詳しくは、日経 MJ (流通新聞) 2009 年 8 月 5 日 p.1. 参照のこと。 2 詳しくは、日経 MJ (流通新聞) 2009 年 8 月 5 日 p.1. 参照のこと。 3 その活動内容は、アメリカン・エクスプレス社が、アメリカン・エクスプレス・カードが使用され

るたびに 1 セントを、同カードの新規発行 1 件ごとに 1 ドルを、自由の女神の修繕のために寄付をす

るというものである (Varadarajan and Menon, 1988)。

Page 3: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

3

CRM にはいくつかの特徴が挙げられる。まず、世良 (1998) が述べているように、CRM

には売上の増加・企業イメージ・従業員モラル・非営利団体の認知度の向上と様々な特徴が

ある。具体的には、店舗内想起率を高めて店頭で当該ブランドを選択されやすくする効果が

挙げられるが、この効果については本論では扱わないこととする。

次に、Cone and Roper (1998) は CRM の特徴として、長期的には顧客ロイヤルティの構築

につながるとしている。しかし、現在 CRM の対象となっている製品は水、ビール、アイス

クリーム、トイレットペーパーと最寄品が多い。最寄品は低価格であり需要の価格弾力性が

大きいため、消費者は品質より価格を重視する。そのため CRM 製品を販売していても他社

が価格を下げれば、消費者は他社の製品を購買してしまうと考えられる。また、消費者は最

寄品の買い物に時間や労力を費やさない。関与が低く、ブランド間知覚差異が大きい場合、

バラエティ・シーキングが生起し、消費者はブランドのスイッチを繰り返すと言われる

(Assael, 1987)。以上のことから、最寄品を対象に CRM を実施しても再購買や顧客ロイヤル

ティの構築にはつながらないと考えられる。したがって、CRM が顧客ロイヤルティの構築

につながるという Cone and Roper (1998) の主張には、問題があるといえるだろう。そこで本

論では、CRM によって顧客ロイヤルティが構築されるか否かを解明することを目的とする。

また、以下でも述べるが、既存研究では消費者が CRM 実施製品を購買する要因は、CRM

によるものか、あるいはその製品の基本属性によるものかは明らかにされていない。よって

本論の 2 つ目の目的として、消費者が CRM 実施製品を購買する際、CRM と基本属性のどち

らが影響を及ぼしているのかを解明する。

○顧客ロイヤルティ

先行研究では、顧客ロイヤルティの定義付けを、①行動的観点、②態度的観点、③総合的

観点の 3 つから行っている。

行動的観点とは、顧客ロイヤルティを顧客の購買行動を観察したもの (行動的ロイヤルテ

ィ) として捉えるものである。Flavian, Martrines and Polo (2001) は、顧客ロイヤルティを

「顧客がある一定の期間に特定の製品およびサービスに表する反復的な購買性向である」と

定義している。行動的ロイヤルティは、顧客の購買結果から測定するものであるため、比較

的測定が容易である。しかし行動的観点は、顧客の購買行動に至るまでに影響した条件、い

わゆる欲求、状況や制約などの「反復行動の隠れた要因」を無視しており、反復購買とそれ

を測定する尺度に偏っているということが問題点として指摘されている4。

4例えば、Jacoby and Chestnut (1978) は、限られた操作的定義ばかりに注目されていることから、行動

的観点の理論的な探索の欠如を指摘、非難した。

Page 4: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

4

態度的観点とは、顧客ロイヤルティを、情緒的要素によって形成されるもの (態度的ロイ

ヤルティ) として捉えるものである。Shoemaker and Lewis (1999) は、顧客の態度面を抜きに

して、「本当」の顧客ロイヤルティを構築し、維持することは困難であると行動的ロイヤル

ティによる観点を批判し、態度的属性および観点を重視することを主張している。しかし態

度的観点は、選好やコミットメントという心理・態度的側面を正確に測ることは難しく、不

確実である点を指摘されている。顧客が特定の製品やサービスに対して好ましい感情を抱い

たとしても、必ずしもその製品やサービスを購買もしくは再購買するとは限らないように、

態度的ロイヤルティが行動へ転換されると断言できないのである。したがって態度ロイヤル

ティのみでは、顧客ロイヤルティを説明することは困難である。

総合的観点は、別々に行われてきた 2 つの行動的観点と態度的観点の両方の観点から顧客

ロイヤルティを捉えるものである。つまり既述のとおり、行動的観点は反復購買という行動

的側面から、態度的観点は他の選択肢より好ましいという心理的側面から、それぞれ顧客ロ

イヤルティを捉えているが、総合的観点は両方に焦点を当て、さらに合わせるべきだという

考えにもとづいている。Oliver (1999) は、顧客ロイヤルティを「現在、選好している製品や

サービスを将来的にも一貫して再購買・再利用しようとする顧客の強いコミットメントであ

り、また周囲の状況や競合企業等のマーケティング活動にもかかわらず、同一ブランドない

し同一カテゴリー内のブランド集合の反復購買行動を引き起こすもの」と定義している。ま

た顧客ロイヤルティを、①認知的ロイヤルティ、②感情的ロイヤルティ、③行動意欲的ロイ

ヤルティ、④行動的ロイヤルティと、段階的に捉えており、態度的ロイヤルティが行動的ロ

イヤルティの前提にあるものであると概念化した。

Dick and Basu (1994) は、反復購買行動という行動的観点から捉えたものを反復的購買愛

顧 (repeat patronage) とし、他の対象 (ブランド/サービス/店舗/販売員) との比較におい

て選好するという態度的観点から捉えたものを相対的態度 (relative attitude) とし、その両者

を組み合わせて、顧客ロイヤルティの分類・概念化を行っている。

まず、行動的ロイヤルティと態度的ロイヤルティを同時に伴う場合、つまり選好が行動に

反映されている場合は、①本当のロイヤルティがあるといえる。態度と行動のいずれかひと

つが弱い場合は、②見せかけのロイヤルティ、もしくは③潜在的ロイヤルティである。前者

は、感情的な選好をしていなかったとしても当該製品やサービスを利用し、再購買・再利用

するという行動的ロイヤルティが働く。後者は、感情的な選好はしていても、反復的な再購

買・再利用には至らない場合である。④非ロイヤルティとは、態度的ロイヤルティも行動的

ロイヤルティも弱い場合のことを指す。

Page 5: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

5

○CRM の既存研究

既存研究では、さまざまな評価尺度を用いて CRM による消費者の態度や購買意図への影

響を検証している。

世良 (2007) では、CRM のサンプリング促進効果を検討している。この研究では、サンプ

リングの中でも試乗を調査対象としている。試乗距離が伸びるたびに企業からの寄付金額が

増えるという CRM の仕組みにより、試乗しても購入しない場合の心理的負担を軽減し、試

乗を促す効果が期待できるという仮説を立てている。その結果、コーズ支援とサンプリング

を連動させることにより、CRM を通したサンプリング促進効果があることが確認されてい

る。世良 (2008) は、寄付表記上の相違点が購買意図にもたらす影響を「消費者と支援先コ

ーズの関係」の要素を加えて検証している。この研究では、支援先コーズに対して関心があ

る人に対しては寄付率の高低が購買意図へ影響するが、関心がない人に対しては寄付率の高

低は購買意図へ影響を与えないということが確認された。また、企業・商品・消費者属性を

CRM 評価に影響を与える要因と捉えて、Strahilevitz (2003)、Strahilevits and Myers (1998)、Ross,

Patterson and Stutts (1992) が研究を行っている。彼らの研究からは、①CRM を通して、倫理

的に中立な評価を受けていた企業がイメージを改善することができる、②商品を娯楽品と実

用品に分けて調査を行った場合、娯楽品を消費することによる罪悪感に起因して、チャリテ

ィーによるインセンティブは実用品よりも娯楽品においてより働く、③性別で分けると男性

よりも女性の方が CRM に対して高く評価する、という結果が導き出されている。そして、

CRM を通したブランド構築については Brown and Dacin (1997) が考察を行っている。彼らは、

CRM は企業が提供するさまざまな属性を補完することが可能であることを示した。

「消費者と支援先コーズの関係」が CRM を通した消費者の製品に対する態度形成に影響

を与えるとしている研究としては、Berger, Cunningham, and Kozinets (1996)、Lafferty (1999)、

世良 (2004) が挙げられる。Berger et al. (1996) では、CRM の広告において強力な支援先を

提示することで、消費者の興味を引き付け、広告に対する関与度が増し、消費者の CRM を

提供している会社への態度が改善されるという結果が出ている。Lafferty (1999) では、支援

先コーズの親しみ度が CRM 評価へ与える影響を調査しており、その結果、支援先コーズに

対して親しみを覚えれば覚えるほど支援先コーズと連携後のブランドに対する態度へ、より

大きな影響を与えるという結果を導出している。世良 (2004) では、コーズ支援している旨

を伝達している CM を被験者に見せた場合、そのコーズとの関係が薄い消費者は、通常の

CM に比べ、CM を見たあとの製品に関する好感度が低下していることが判明している。

次に、「消費者と支援先コーズの関係」の購買意図への影響に言及した研究を検討する。

Webb (1999) は、消費者の支援先コーズへの関与が購買行動に重大な影響を与えるとしてい

Page 6: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

6

る。Landreth (2002) と Lafferty (1997) は支援先コーズの消費者にとっての「重要性」が製品

に対する態度や、購買意図に影響を与えるとしている。そして Cornwell and Coote (2005) と

Carr (2005) は支援先コーズに対する消費者との「共感」が購買意図へ影響するとしている。

Vaidyanathan and Aggarwal (2005) では、被験者に事前に支援先コーズに関する情報を与え、

それを支持するかどうかを尋ねたうえで、そのコーズと関連付けた CRM 広告を被験者に見

せ、その反応を検証している。その結果、消費者の支援先コーズに対するコミットメントが

そのコーズを支援している CRM 広告を通しての購買意欲に影響を及ぼすという結果を出し

ている。

一方で、「消費者と支援先コーズの関係」が消費者の態度形成に影響を与えないという調

査結果もある。Fiske (1997) では人気のある支援先 (赤十字) と、あまり関心を持たれてい

ない支援先 (絶滅に瀕したフクロウ救済活動) の消費者のブランドに対する態度について調

査を行ったところ、両者の間に差異は見られなかった。また、Lafferty and Goldsmith (2005) で

は、「支援先コーズとの親しみ度」の程度にかかわらず、支援先コーズと企業の提携はブラ

ンドに対する態度に正の影響があるとしている。これら 2 つの研究によると「消費者と支援

先コーズの関係」は CRM の有効性とは無関係ということになる。

このように先行研究では結果が異なる場合がある。この要因としては支援先コーズの内容

の違いによるものが大きいと考えられる。

○既存研究の問題点

以上の既存研究から問題点が 3 つ挙げられる。第 1 に、研究の範囲に関して、既存研究で

はCRMのみを対象にしており、基本属性との関係を考慮していない点、第 2に消費者がCRM

実施製品をどのような要因で購買しているかが不明確な点、そして第 3 にコーズの支援内容

に対して消費者の関与に左右される CRM 属性の尺度を使用している点である。

これらの中で、2 つ目の問題点の購買促進要因が不明確であるとは、プロモーション効果

5を検討していないことを意味している。つまり、消費者は、CRM を享受して製品を (再) 購

買するのか (インセンティブ的プロモーション)、それとも企業の発信する情報との接触のみ

が影響して (再) 購買するのか (コミュニケーション的プロモーション) が不明確なのであ

る。したがって顧客ロイヤルティを考える際、行動的観点からではなく、その前提を成す、

態度的観点から検討する必要がある。以上から、本論のアプローチとして、態度的観点の有

効性が主張できる。

以上の問題点から本論では、CRM 属性と基本属性 (品質、価格) との関係を考慮した包括

5 詳しくは、奥瀬 (2000) を参照のこと。

Page 7: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

7

的プロセスを構築することで CRM の戦略的妥当性を検討する。

○顧客満足6

顧客満足の概念は、研究者によってそれを規定する評価基準が異なっている。消費者行動

論において顧客満足は、「顧客の購買体験を元にして形成される肯定的な態度もしくは感情

を集約したもの」であると考えられる (Giese and Cote 2000; Oliver 1980)。また Oliver (1980)

は、「期待不一致」概念を用いて、モデルの定式化を行っている。

○期待不一致モデル

期待不一致モデルのフレームワークは以下のとおりである。先ず、消費者は、特定の製品

ないしサービスに対する最初の期待、つまり事前態度を形成する。次に消費者は、製品ない

しサービスを消費する。そして、その購買経験にもとづいて、その製品ないしサービスのパ

フォーマンスについての知覚、つまり成果を形成する。そして消費者は、成果と最初の期待

を算定 (確認) し、事後態度を形成する。期待が成果を上回った場合では負の不一致が起こ

り、反対に成果が期待を上回った場合には正の不一致が起こる。正の不一致もしくは期待と

成果が同等であった場合、消費者は満足を形成する。また満足には期待も影響を及ぼす。こ

れは、評価が曖昧にしか下せないような製品やサービスにおいては期待が満足に直接影響し、

反対に客観的に評価できる場合には、期待と成果を照らし合わせて満足に影響する、という

違いのためである (高橋, 2008)。満足した消費者は再購買意図を形成し、満足しなかった消

費者は購買を止める。このように、期待不一致モデルは購買経験による満足によって再購買

意図が形成されることを示すものである。このように満足は、消費者のロイヤルティを形成

し、そして保持するための重要な概念であると考えられる。

図1 期待不一致モデル

Oliver (1997), p.120.を筆者により一部加筆修正。

6 例えば、藤村 (1993) のように、「消費者満足」と「顧客満足」の概念の違いを主張しているものも

あるが、本論では、どちらも同義のものとみなす。

成果

期待

確認 満足 再購買意図

Page 8: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

8

ここまで既存研究のレビューを行ってきたが、そこから 3つの問題点が分かった。第 1に、

研究の範囲に関して、既存研究では CRM のみを対象にしており、基本属性との関係を考慮

していない点、第 2 に消費者が CRM 実施製品をどのような要因で購買しているかが不明確

な点、そして第 3 にコーズの支援内容に対して消費者の関与に左右される CRM 属性の尺度

を使用している点である。これらの問題点を解消するために、本論では、顧客ロイヤルティ

を態度的観点から捉え、CRM 属性と基本属性との関係を考慮した包括的プロセスを構築し

ていく。さらに、消費者の関与に左右されない尺度として、客観的に評価することができる

正当性という尺度を採用する。これらを踏まえて以下では、消費者が CRM を受容し、再購

買に至るまでのモデルを構築していく。

3. 仮説の提唱およびモデル構築

本節では、消費者の CRM 実施製品の再購買の是非を問うために、Oliver (1997) の期待不

一致モデルと Fishbein (1967a; 1967b) の多属性態度モデルを統合し、因果モデルを構築する。

○期待不一致モデルによる CRM 属性の影響の解明

本論では、CRM の属性が消費者に受容され、再購買意図を築く過程を検討する。既述の

とおり、再購買 (意図) は、顧客満足を起因とするものであるため、期待不一致モデルを採

用する。まず、消費者は購買前に企業が提示する CRM の情報に対して期待を形成する。そ

の後、消費者は製品を消費し、その購買経験に基づいて製品に対する成果を形成する。そし

て消費者は、期待と成果を算定 (確認) するのである。その際に、期待が成果を上回った場

合は負の不一致が起こり、反対に成果が期待を上回った場合は正の不一致が起こる。正の不

一致もしくは期待と成果が同等であった場合、消費者は満足を形成することになる。また、

高橋 (2008) が述べているように、評価が曖昧にしか下せないような製品やサービスにおい

ては期待が満足に直接影響を及ぼす。その後、満足した消費者は再購買意図を形成するので

ある。以上の議論から、以下の仮説を提唱する。

仮説 1:CRM 効果の期待は、CRM 効果の確認に負の影響を与える。

仮説 2:CRM 効果の成果は、CRM 効果の確認に正の影響を与える。

仮説 3:CRM 効果の確認は、CRM に対する満足に正の影響を与える。

仮説 4:CRM 効果の期待は、CRM に対する満足に正の影響を与える。

仮説 5:CRM に対する満足は、CRM 実施製品の再購買意図に正の影響を与える。

Page 9: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

9

次に、製品の基本属性について検討する。現行の CRM は、新製品ではなく、既存製品に

おいて行われている。つまり、CRM は、新製品の初期段階におけるマーケティング戦略と

して用いられるのではなく、既存製品の顧客ロイヤルティを構築するためのマーケティング

戦略として用いられているのである。したがって調査においては、回答者が既に製品の消費

経験を済ませていることが前提であるので、態度とそれを構成する基本属性との間に、期待

不一致モデルのような時間の流れを必要としない。そこで、本論では多属性態度モデルを採

用する。

○多属性態度モデル

多属性態度モデルとは、Fishbein (1967a; 1967b) によって定式化された態度構造モデルで

ある。これは、単一次元で表現される消費者の製品 (もしくは) ブランドに対する感情を、

個々の消費者によって知覚された多次元の属性間の「顕著度」によって加重された属性7に

対する信念から構成される認知構造として捉えるものである (中西, 1978)。数学的には、以

下のように示される。

n

iiiaBAo

1

ただし、Ao は対象 o に関する態度、Biは対象 o が属性 i と結びついている確からしさ (信念

i の強さ)、aiは属性 i の評価、n は対象 o の属性の数を示す。式の左辺は、対象 o に対する

個々の消費者の全体的態度を単一次元の態度尺度で要約したものである。態度はマーケティ

ング研究においては、対象 o に対する「好き-嫌い」を意味するものとされる (阿部, 1978)。

式の右辺は、対象 o がある属性 i を持つことに対する信念の強さと、その属性 i に関する評

価の積和として表現されている。つまり、対象と信念の結びつき、その信念に対する積和が

全体的態度を引き出すということを導いたものである。

消費者は、態度を形成し、その強さが高まると行動を選択する8。また Berger and Mitchell

(1989) の研究から、過去の経験にもとづいて形成された態度と、強い動機づけによって導か

れた態度は、ほぼ同等の効力を持つということが導かれた。つまり、既存製品に対する態度

は、行動意図を引き起こすものと考えられる。

次に態度を形成する属性を検討する。本論では、基本属性として、品質属性と価格属性を

7 製品は複数の属性の組み合わせであり、消費者は各属性への評価にもとづいて製品を選好する (Lancaster, 1991)。 8 詳しくは、清水 (1999) を参照のこと。

Page 10: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

10

採用する。この背景には、ヘドニック・アプローチ (Rosen, 1974) がある9。これは経済分析

において、製品およびサービスの全体的品質を、その機能・性能をもたらす各種の「特性」

の合成であると考えるものである。つまり、製品の諸特性の水準を 1 つの指標に統合し、そ

れを価格によって評価するものである。

また、本モデルは再購買意図の形成を求めることを目的とするので、行動意図をより適切

な再購買意図という変数名に変更する。以上の議論から、以下の仮説を提唱する。

仮説 6:態度は、再購買意図に正の影響を与える。

仮説 7:品質属性は、態度に正の影響を与える。

仮説 8:価格属性は、態度に正の影響を与える。

次に、満足と態度の関係について検討する。両者の関係は諸説あるが10、本論では、両者

は、以下のような関係にあると考えた。

図2 CRM 実施による態度の変化

態度 (t1) :CRM 実施前の製品に対する態度

態度 (t2) :CRM 実施後の製品に対する態度

Oliver (1980)に基づき、筆者により修正。

Oliver (1980) は、再購買意図は、事前態度、満足そして事後態度の和であると述べている。

つまり、消費者は、既存製品の属性、CRM に対する満足そしてそれらの経験に基づいて構

成される態度によって、CRM 実施製品の再購買意図を形成すると考えられる。以上の議論

から以下の仮説を提唱する。

仮説 9:CRM に対する満足は、CRM 実施製品への態度に正の影響を与える。

9 詳しくは、白塚 (1997) を参照のこと。 10 詳しくは、Yi (1990) を参照のこと。

態度 (t1) 再購買意図 態度 (t2)

CRM の満足

Page 11: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

11

ここまで提唱された仮説は、以下の図表にまとめることができる。本論では、このモデルを、

CRM 実施製品再購買意図モデルと呼ぶ。

図3 統合モデル (多属性態度モデル+期待不一致モデル)

*:CRM 実施製品初回購買後の態度の場合。

4. 調査方法

モデルの経験的妥当性をテストするため、都内の私立大学生を対象に質問紙調査を行った。

学術的・実践的に価値のあるデータを収集するためには、街頭調査や大学生へのアンケート

などの作為抽出では統計的に不十分ではある。しかし、CRM はまだ一般的に馴染みがない

ため分かりにくい概念である。したがって、エリアサンプリング11などを行った場合、CRM

について理解できない人がでてくる可能性がある。したがって、回答にあたって CRM につ

いての説明を行うために、大学の講義に出席している大学生を調査対象とする便宜サンプリ

ングを採用した。

調査には、最寄品として「三ツ矢サイダー」と「カルピス」を用いた。さらに、この両製

品が架空の CRM を実施していると仮定し、回答者には両製品を実際に購入したと想定して

質問に答えてもらった。今回の調査に飲料を用いた理由は、「ボルヴィック」のように、実

11 エリアサンプリングとは、国勢調査区を無作為に抽出したのち、その地点内の世帯を住宅地図で無

作為に抽出し、世帯調査であればその世帯を、個人調査であればその世帯内の個人を対象とする調査

対象の抽出方法である (平松, 2006)。

H6 (+)

H5 (+)

H9 (+)*

H8 (+)

H7 (+)

H2 (+) H3 (+)

H4 (+)

H1 (-)

CRM 効果の

期待

CRM 効果の

成果

CRM 効果の

確認

価格属性

品質属性

態度

CRM 効果の

満足

再購買意図

Page 12: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

12

際に CRM を実施している飲料が販売されているので、CRM を知らない消費者でもイメージ

しやすいためである。また、数ある飲料の中から両製品を選出した理由としては、両製品は

共に歴史がある製品である12ので、消費者は一度は飲んだ経験があり、馴染みがあるものと

考えられるためである。

架空の CRM の支援内容と支援結果は「ボルヴィック」の例を参考にして作成した。支援

内容は、「売上 1ℓ ごとに 10ℓ の安全な水をアフリカに寄付する」として、支援結果は、「11

億 1500 万 ℓの清潔な水が供給された」とした。「三ツ矢サイダー」は水にこだわりをもって

いる製品であるため、この支援を行うことは正当性があると考えられる。対照的に「カルピ

ス」は乳酸菌にこだわりをもっている製品のため、正当性がないと考えられる。

また、期待・成果・確認を測定するために、質問票は時間経過が分かるように構成された。

まず、製品に対する質問、次に、CRM の支援内容を明示した上での質問、その後、支援結

果を明示した上での質問、最後に以上を踏まえた上での質問、といった具合である。

質問票の作成は、CRM 効果への期待、CRM 効果の成果、CRM 効果の確認、および CRM

に対する満足は、Oliver (1980; 1997) と Ellen, Mohr and Webb (2000) を参考にして作成した。

品質属性と価格属性はSoutar (2004)、態度はFishbein and Ajzen (1975)、再購買意図はBaker and

Churchill (1977) を参考にして作成した。以上の項目は、CRM 実施製品にも援用可能な項目

に改良された。本調査を行う前に、都内の私立大学の学生を対象にプリテスト (n=31) を行

い、さらなる検討を行った。

本調査の回収数は 295 で、回収された質問紙から、欠損値のあるものや著しく回答に隔た

りがあるものを除くと、有効回答は 275 (有効回答率 93.2%) であった。

5. 分析結果

CRM 実施製品再購買意図モデルを正当性がある場合と正当性がない場合の 2 回に分けて

分析を行った。既に述べたように、正当性がある場合を三ツ矢サイダーのケースとし、正当

性がない場合をカルピスのケースとした。

まずは、正当性がある場合について検討する。図 3 に示された因果モデルを、統計ソフト

SPSS Inc PASW Statistics 17 および Amos 17.0 を用いて共分散構造によって経験的にテストし

た。まず、潜在変数の信頼性分析を行ったところ、クロンバックの係数は以下の表 1 のよ

うな結果となった。CRM 効果の期待の係数はやや低かったが、その他の潜在変数の係数

は十分に高かった。

12 「三ツ矢サイダー」は 1884 年発売 (毎日新聞 2009 年 10 月 25 日 朝刊)。「カルピス」は 1919 年発

売 (毎日新聞 2009 年 10 月 11 日 朝刊)。

Page 13: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

13

妥当性のチェックのため、確認的因子分析を行った。2値は 283.293 で、自由度は 120、

有意確率は.000 であった。適合度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は各々.907 お

よび.868 で、高い適合度を示している。平均二乗誤差平方根 RMSEA は.070 であり、データ

がこのモデルに適していることを示している。

続いて、構造方程式を共分散構造分析によって推定した。まず、モデルの全体的評価を行

うと、このモデルに対する2値は 306.624、自由度は 123、有意確率は.000 であった。適合

度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は各々.900 および.861 で、高い適合度を示し

ている。平均二乗誤差平方根 RMSEA は.074 であり、データがこのモデルに適合しているこ

とを示している。

表 1 観測変数と信頼性係数 (n=275)

潜在変数 観測変数(質問項目:全て 1-5 の 5 点尺度) クロンバックの係数

品質属性 さわやかな味わいだと思う。

飲みやすいと思う。 .783

価格属性 価格は妥当だと思う。

適切な価格だと思う。 .935

CRM 効果の期待 良いと思う。

利他的であると思う。 .644

CRM 効果の成果 社会貢献できたと思う。

支援できたと思う。 .953

CRM 効果の確認

上記の結果は自分が思っていたものよりも良くない結

果だった。(反転)

供給された水の量は自分が思っていたより少なかった。

(反転)

.847

CRM に対する満足

満足だった。

良いと思った。

正しかった。

.835

態度 CRM を実施しているこの商品を飲みたいと思う。

CRM を実施しているこの商品が好きだ。 .818

再購買意図

CRM を実施しているこの商品をもう一度試してみたい

と思う。

CRM を実施しているこの商品をまた買いたいと思う。

.900

続いてモデルの部分的評価を行う。まず、期待不一致モデルに準拠した仮説 1 から仮説 5

に関しての評価を行う。CRM 効果の期待は CRM 効果の確認に対して有意かつ正の影響を与

えており (=.202, t=2.683, p<0.01)、仮説 1 は支持されなかった。これは、消費者が高い事前

期待を知覚しても、それよりも高い成果を知覚した場合には、高い正の不一致を知覚するこ

Page 14: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

14

とを示している。次に、CRM 効果の成果は CRM 効果の確認に対して有意かつ正の影響を与

えていた (=.110, t=1.807, p<0.10)。これは、高い成果を知覚するほど高い正の不一致を知覚

する傾向があるという仮説 2 を支持する結果である。次に、CRM 効果の確認は CRM 効果の

満足に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.169, t=2.451, p<0.05)。これは、高い正の不

一致を知覚するほど満足の度合いが高まるという仮説 3 を支持する結果である。次に、CRM

効果の期待は CRM 効果の満足に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.547, t=5.849,

p<0.01)。これは、高い事前期待を知覚するほど、満足の度合いが高まるという仮説 4 を支持

する結果である。次に、CRM 効果の満足は再購買意図に対して有意かつ負の影響を与えて

おり (=-.093,t=-1.669, p<0.10)、仮説 5 は支持されなかった。これは、満足の度合いが高ま

っても、再購買にはつながらないということを示している。

続いて、行動意図モデルに準拠した仮説 6 から 8 に関しての評価を行う。態度は再購買意

図に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.981, t=12.950, p<0.01)。これは、その製品に

対して好意をもつほど、再購買したい気になるという仮説 6 を支持する結果である。次に、

品質属性は態度に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.344, t=4.449, p<0.01)。これは、

品質に対する評価が高いほど CRM 製品への態度を高めるという仮説 7 を支持する結果であ

る。次に、価格属性は態度に対して有意かつ正の影響を与えておらず (=-.057, t=-.846,

p>0.10)、仮説 8 は棄却された。消費者は価格に対する評価だけでは態度を形成しないという

ことが考えられる。

最後に仮説 9 に関しての評価を行う。CRM 効果の満足は態度に対して有意かつ正の影響

を与えていた (=.522, t=7.657, p<0.01)。これは、CRM に対する満足が高いほど CRM 製品へ

の態度を高めるという仮説 9 を支持する結果である。

表 2 構造方程式モデルの推定結果

仮説 変数名 変数名 符号仮説 推定値 t 値

H1 CRM 効果の期待 → CRM 効果の確認 (-) .202 2.683***

H2 CRM 効果の成果 → CRM 効果の確認 (+) .110 1.807*

H3 CRM 効果の確認 → CRM 効果の満足 (+) .169 2.451**

H4 CRM 効果の期待 → CRM 効果の満足 (+) .547 5.849***

H5 CRM 効果の満足 → 再購買意図 (+) -.093 -1.669*

H6 態度 → 再購買意図 (+) .981 12.950***

H7 品質属性 → 態度 (+) .344 4.449***

H8 価格属性 → 態度 (+) -.057 -.846

H9 CRM 効果の満足 → 態度 (+) .522 7.657***

Page 15: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

15

図 4 CRM 再購買意図モデル分析結果 (正当性あり)

以上の分析から、まず有意になった仮説について考える。CRM 効果の満足に影響を与え

る CRM 効果の期待、CRM 効果の確認の 2 つの変数のうち、CRM 効果の期待の方が強い影

響を与えていた。また、再購買意図に影響を与える CRM 効果の満足、態度の 2 つの変数の

うち、態度の方が強い影響を与えていることが分かった。

次に、統計的には有意だが符号仮説が逆の結果になった仮説について考える。CRM の期

待は CRM の確認に負の影響を与えるとしたが、実際には正の影響を与えていた。これは、

清水 (1999) でも述べられているように、期待不一致モデルの、尺度の測定方法の確立、測

定された得点の解釈、また期待と成果測定時の状況要因の考慮などの課題が残されているた

めであると考えられる。また、CRM に対する満足は、CRM 実施製品の再購買意図に正の影

響を与えるとしたが、実際には負の影響を与えていた。しかし、CRM の満足は再購買意図

に対して、直接的には負の効果を与えるけれど、態度を経由して間接的に正の効果を与えて

いる。このことから、CRM は製品属性の 1 つとして見なされているのであり、CRM 自体が

直接的な効果をもっているわけではないと考えられる。

.981***

-.093*

.522***

-.057

.344***

.110* .169**

.547***

.202***

CRM 効果の

期待

CRM 効果の

成果

CRM 効果の

確認

品質属性

態度

CRM 効果の

満足

再購買意図

価格属性

2=306.624 (d.f.=123), p<.001

GFI=.900, AGFI=.861

RMR=.177, RMSEA=.074

***:1%水準で有意、**:5%水準で有意、*:10%水準で有意。

実線:有意、破線:非有意、点線:符号仮説が逆の結果。

Page 16: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

16

最後に、非有意になった仮説について考える。価格は態度に対して正の影響を与えるとし

たが、統計的に非有意になってしまった。これは、質問紙上で製品の価格を明確に示さなか

ったので、回答者が価格をイメージすることが困難だったためだと考えられる。

棄却されたパスを削除し、改めて分析をしたモデルが図 5 である。本論ではこの修正型

CRM 再購買意図モデルを最終モデルとして提示する。

図 5 修正型 CRM 再購買意図モデル分析結果 (正当性あり)

次に、正当性がない場合について検討する。まず、潜在変数の信頼性分析を行ったところ、

クロンバックの係数は以下の表 1 のような結果となった。CRM 効果の確認の係数はやや

低かったが、その他の潜在変数の係数は十分に高かった。

妥当性のチェックのため、確認的因子分析を行った。2値は 432.748 で、自由度は 118、

有意確率は.000 であった。適合度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は各々.849 お

よび.781 であった。平均二乗誤差平方根 RMSEA は.099 であった。

続いて、構造方程式を共分散構造分析によって推定した。まず、モデルの全体的評価を行

うと、このモデルに対する2値は 287.513 で、自由度は 124、有意確率は.000 であった。適

合度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は各々.900 および.863 で、高い適合度を示

している。平均二乗誤差平方根 RMSEA は.069 であり、データがこのモデルに適合している

.536***

.989***

.304***

-.104*

.584***

.177** .312***

.185**

CRM 効果の

期待

CRM 効果の

成果

CRM 効果の

確認

品質属性 態度

CRM 効果の

満足

再購買意図

2=241.725 (d.f.=80), p<.001

GFI=.905, AGFI=.858

RMR=.163, RMSEA=.086

***:1%水準で有意、**:5%水準で有意、*:10%水準で有意。

実線:有意、破線:非有意。

Page 17: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

17

ことを示している。

表 3 観測変数と信頼性係数(n=275)

潜在変数 観測変数(質問項目:全て 1-5 の 5 点尺度) クロンバックの係数

品質属性

おいしいと思う。

良い味わいだと思う。

良い甘さだと思う。

.882

価格属性

価格は妥当だと思う。

適切な価格だと思う。

手頃な価格だと思う。

.948

CRM 効果の期待 期待できる。

望ましいと思う。 .849

CRM 効果の成果 社会貢献できたと思う。

支援できたと思う。 .942

CRM 効果の確認

上記の結果は自分が思っていたものよりも良くない結

果だった。(反転)

供給された水の量は自分が思っていたより少なかった。

(反転)

.651

CRM に対する満足 満足だった。

良いと思った。 .874

態度 CRM を実施しているこの商品が好きだ。

CRM を実施しているこの商品を飲むことは望ましい。.755

再購買意図 CRM を実施しているこの商品をまた買いたいと思う。

CRM を実施しているこの商品をまた飲みたいと思う。.959

続いてモデルの部分的評価を行う。まず、期待不一致モデルに準拠した仮説 1 から仮説 5

に関しての評価を行う。CRM 効果の期待は CRM 効果の確認に対して有意かつ負の影響を与

えていた (=-.185, t=-1.869, p<0.10)。これは、高い事前期待を知覚するほど、低い正の不一

致、もしくは負の不一致を知覚する傾向があるという仮説 1 を支持する結果である。次に、

CRM 効果の成果は CRM 効果の確認に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.449,

t=4.748, p<0.01)。これは、高い成果を知覚するほど、高い正の不一致を知覚する傾向がある

という仮説 2 を支持する結果である。次に、CRM 効果の確認は CRM 効果の満足に対して有

意かつ正の影響を与えていた(=.481, t=5.339, p<0.01)。これは、高い正の不一致を知覚する

ほど、満足の度合いが高まるという仮説 3 を支持する結果である。次に、CRM 効果の期待

は CRM 効果の満足に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.417, t=6.553, p<0.01)。これ

は、高い事前期待を知覚するほど、満足の度合いが高まるという仮説 4 を支持する結果であ

る。次に、CRM 効果の満足は再購買意図に対して有意かつ負の影響を与えており (=-.150,

Page 18: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

18

t=-2.537, p<0.05)、仮説 5 は支持されなかった。これは、満足の度合いが高まっても、再購買

にはつながらないということを示している。

続いて、行動意図モデルに準拠した仮説 6 から 8 に関しての評価を行う。態度は再購買意

図に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.992, t=10.911, p<0.01)。これは、その製品に

対して好意をもつほど、再購買したい気になるという仮説 6 を支持する結果である。次に、

品質属性は態度に対して有意かつ正の影響を与えていた (=.333, t=5.378, p<0.01)。これは、

品質に対する評価が高いほど CRM 製品への態度を高めるという仮説 7 を支持する結果であ

る。次に、価格属性は態度に対して有意かつ正の影響を与えていた(=.144, t=2.560, p<0.05)。

これは、価格に対する評価が高いほど CRM 製品への態度を高めるという仮説 8 を支持する

結果である。

最後に、仮説 9 に関しての評価を行う。CRM 効果の満足は態度に対して有意かつ正の影

響を与えていた (=.533, t=7.527, p<0.01)。これは、CRM に対する満足が高いほど CRM 製品

への態度を高めるという仮説 9 を支持する結果である。

表 4 構造方程式モデルの推定結果

仮説 変数名 変数名 符号仮説 推定値 t 値

H1 CRM 効果の期待 → CRM 効果の確認 (-) -.185 -1.869*

H2 CRM 効果の成果 → CRM 効果の確認 (+) .449 4.748***

H3 CRM 効果の確認 → CRM 効果の満足 (+) .481 5.339***

H4 CRM 効果の期待 → CRM 効果の満足 (+) .417 6.553***

H5 CRM 効果の満足 → 再購買意図 (+) -.150 -2.537**

H6 態度 → 再購買意図 (+) .992 10.911***

H7 品質属性 → 態度 (+) .333 5.378***

H8 価格属性 → 態度 (+) .144 2.560**

H9 CRM 効果の満足 → 態度 (+) .533 7.527***

以上の分析から、まず有意になった仮説について考える。CRM 効果の満足に影響を与え

る CRM 効果の期待、CRM 効果の確認の 2 つの変数のうち、CRM 効果の確認の方が強い影

響を与えていた。また、再購買意図に影響を与える CRM 効果の満足、態度の 2 つの変数の

うち、態度の方が強い影響を与えていることが分かった。

Page 19: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

19

図 6 CRM 再購買意図モデル分析結果 (正当性なし)

次に、統計的には有意だが符号仮説が逆の結果になった仮説について考える。これは正当

性がある場合と正当性がない場合の両方に共通する結果である。CRM に対する満足は、CRM

実施製品の再購買意図に正の影響を与えるとしたが、実際には負の影響を与えていた。しか

し、CRM の満足は再購買意図に対して直接的には負の効果を与えるけれど、態度を経由し

て間接的に正の効果を与えている。このことから、CRM は製品属性の 1 つとして見なされ

ているのであり、CRM 自体が直接的な効果をもっているわけではないと考えられる。

6. おわりに

既述のように CRM に対する注目度は高まっており、製品を買うだけで社会貢献に参加で

きるため、社会貢献したくても方法がわからない消費者と社会貢献活動の橋渡しの役割を果

たしている。本論は、期待不一致モデルと多属性態度モデルの統合モデルを提唱し、CRM

の消費者受容プロセスを解明しようと試みてきた。

構築されたモデルは、大学生に対するアンケート調査から得られたデータを用い、構造

方程式モデルによって経験的にテストに付された。分析結果が示唆することには、CRM 効

果の満足が CRM 製品の再購買意図へ負の影響を与えることから、CRM の実施に対し 1 回の

購買で満足してしまい、それによる再購買はされないということが示された。また、CRM

.533***

.992***

.144**

.333***

-.150**

.417***

.481*** .449***

-.185*

CRM 効果の

期待

CRM 効果の

成果

CRM 効果の

確認

価格属性

品質属性

態度

CRM 効果の

満足

再購買意図

2=287.513 (d.f.=124), p<.001

GFI=.900, AGFI=.863

RMR=.135, RMSEA=.069

***:1%水準で有意、**:5%水準で有意、*:10%水準で有意。

実線:有意、点線:符号仮説と逆の結果。

Page 20: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

20

効果の満足が CRM 実施後の態度に正の影響を与え、CRM 実施後の態度が再購買意図に正の

影響を与えることから、消費者は CRM 実施に満足すると、製品に対する態度を経て、再購

買意図へと影響を与えることが示された。つまり、CRM は製品の価値を高める役割をもっ

ていると考えられる。さらに、以上のことから CRM は製品属性の 1 つとして見なされてい

るのであり、CRM 自体が直接的な効果をもっているわけではないと考えられる。

また、CRM 効果の期待から CRM 効果の満足への影響と、CRM 効果の確認から CRM 効

果の満足への影響を比較してみると、コーズに正当性がある場合、CRM効果の期待からCRM

効果の満足への影響の方が強い影響を与えることが推定値に現れている。一方、コーズに正

当性がない場合、推定値に大きな差は見られなかった。このことから、コーズに正当性が見

られる場合、事前評価によって判断される割合が大きく、満足に与える影響が大きくなると

いう可能性があると考えられる。

本論は次のような課題がある。期待不一致モデルは、事前期待と事後の成果の差異で満足

を形成するモデルであるため、本来であればそれぞれ確認に対して、期待は負、成果は正の

値を示すべきであるが、コーズに正当性がある場合においては、期待の値が正という結果に

なった。これは既述のように、期待不一致モデルの、尺度の測定方法の確立、測定された得

点の解釈、また期待と成果測定時の状況要因の考慮などの課題が残されていることにあると

考えられる (清水, 1999)。

CRM は、単なる販売促進効果を持つのではなく、社会的責任も同時に果たせることから、

消費者や製造業者だけでなく、それを販売する小売業者にもメリット13がある。したがって、

売上を向上させるだけでなく、業者間の取引を促進、または良好な関係を構築・維持する働

きがあることも考えられる。このように今後 CRM が発展するためには、消費者行動の研究

にとどまらず、さらなる研究範囲の拡大が課題として挙げられる。

以上のような課題を残したが、本論は CRM 実施製品による顧客ロイヤルティ構築を、消

費者受容プロセスによって解明するという視点で研究を行った所に意義あるものと主張で

きるものであろう。

13 具体的には、社会貢献活動という大義名分を得ることで営利目的という印象を緩和した販売促進を

行えることなどが挙げられる。

Page 21: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

21

参考文献

阿部周造 (1978) 『消費者行動: 計量モデル』千倉書房.

Barone, Michael J., Anthony D. Miyazaki, and Kimberly A. Taylor (2000). The influence of

cause-related marketing on consumer choice: Does one good turn deserve another? Journal of

the Academy of Marketing Science, 28(2), 248-262.

Berger, I. E. and Mitchell, A. A. (1989). The effect of advertising on attitude accessibility, attitude

confidence and the attitude-behavior relationship. The Journal of Consumer Research, 16(3),

269-279.

Berger, Ida E., Peggy H. Cunningham, and Robert V. Kozinets (1996). The processing of

cause-related marketing claims: Cues biases, or motivators? 1996 AMA Summer Educators’

Proceedings: Enhancing Knowledge Development in Marketing, 7, 71-72.

Baker, M. J. and Churchill, G. A., Jr. (1977). The impact of physically attractive models on

advertising evaluations, Journal of Marketing Research, 14(4), 538-555.

Brown, Tom J. and Peter A. Dacin (1997). The company and the product: Corporate associations and

consumer product responses. Journal of Marketing, 61(1), 68-84.

Carr, Patrichk Joseph (2005). Cause related marketing: A study of consumer nonprofit brand

identification, Thesis, Department of Planning, Public Policy and Management and the

Graduate School of the University Oregon.

Cornwell, T. Bettina and Leonard V. Coote (2005). Corporate sponsorship of a cause: the role of

identification in purchase intent. Journal of business Research, 58(3), 268-276.

Cone Inc and Roper Starch Worldwide INC (1999). THE EVOLUTION of cause branding 1999

Cone/Roper Cause Related Trends Report, Cone, Inc.

Dick, A. S. and Basu, K. (1994). Consumer loyalty: Toward an integrated conceptual framework.

Journal of Academy of Marketing Science, 22(2), 99-113.

Ellen, P. S. , Mohr, L. A., and Webb, D. J. (2000). Charitable programs and the retailer: Do they mix?

Journal of Retailing, 76 (3), 393-406.

Fishbein, M. (1967a). A consideration of beliefs and their role in attitude measurement. InFishbein,

M. (Eds.), Reading in Attitude Theory and Measurement. 257-266. New York: JohnWiley and

Sons.

Fishbein, M. (1967b). A behavior theory approach to the relations between beliefs about an object

and the attitude toward the object. In Fishbein, M. (Eds.), Reading in Attitude Theory and

Measurement. 389-400. New York: John Wiley and Sons.

Page 22: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

22

Fishbein, M., and Ajzen, I. (1975). Belief, attitude, intention and behavior: An introduction to theory

and research, Reading, Mass.: Addison-Wesley publishing company.

Fiske, Carlo A. (1997). Understanding the effects of cause-related advertising on consumer attitudes.

Dissertation: College of Business Administration University of South Carolina.

Flavian, C., Martrines, Y. and Polo, Y. (2001). Loyalty to grocery stores in the spanish market of the

1990s. Journal of Retailing and Customer Service, 8(2), 85-93.

藤村和弘 (1992)「顧客満足戦略における消費者満足概念」『経済論叢』 (広島大学) 16(3),

141-179.

Henry Assael. (1987). Consumer behavior and marketing action. Boston: Kent Publishing Co. p87.

Heskett, J. L., Jones, T. O., Loveman G. W., Sasser, W. E. Jr. and Schlesinger, L. A. (1994). Putting

the service-profit chain to work. Harvard Business Review, 72(2), 164-174. 平松貞実 (2006)『社会調査で何が見えるか 歴史と実例による社会調査入門』新曜社.

Jacob, J. and Chestnut, R. W. (1978). Brand loyalty measurement and management, New York:

Wiley.

Joan L. Giese and Joseph A. Cote (2000). Defining consumer satisfaction. Academy of Marketing

Science Review, 2000(1), available: http://www.amsreview.org/articles/giese01-2000.pdf.

Kotler, P., and Keller, K. L (2008). Marketing Management, 12th Edition, Prentice-Hall.

Lafferty, Barbara A. (1997). Cause-related marketing: Does the cause make a difference in

consumers’ attitudes and purchase intentions toward the product? Advances in Consumer

Research. 24, M Brucks and D. MacInnis eds. Tucson, AZ.: Association for Consumer Research,

113.

________________ (1999). Assessing cause-brand alliance evaluations on subsequent attitudes

toward the cause and brand. Dissertation: The Florida State University College of Business.

_________________ and Ronald E. Goldsmith (2005). Cause-brand alliances: does the cause help

the brand or does the brand help the cause? Journal of Business Research, 58(4), 423-429.

Lancaster, K (1991). Modern consumer theory, England: Edward Elgar.

Landreth, Stacy (2002). For a good cause: the effects of cause importance, cause proximity,

congruency and participation effort on consumers’ evaluations of cause related marketing.

Dissertation: Louisiana State University and Agricultural and Mechanical College.

中西正雄 (1978)『消費者行動分析のニューフロンティア』誠文堂新光社.

新倉貴士 (2005) 「消費者の認知世界」~ブランドマーケティング・パースペクティブ~千

倉書房.

Page 23: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

コーズ・リレイテッド・マーケティングの消費者受容プロセス

23

奥瀬喜之 (2000)「統合型マーケティング・コミュニケーション (IMC) における広告とセー

ルス・プロモーションの在り方 : プロダクトライフサイクルの視座から」『商学討究』

50(2/3), 293-305.

Oliver, R. L. (1980). A Cognitive model of the antecedents and consequences of satisfaction

decisions. Journal of Marketing Research, 17(4), 460-469.

____ (1997). Satisfaction: A behavioral perspective on consumer. New York: McGraw-Hill.

____ (1999). Whence consumer loyalty? Journal of Marketing, 63(Special Issue), 33-44.

朴修賢 (2007) 「スイッチング障壁が顧客ロイヤルティと顧客満足に与える影響」『大阪成蹊

大学現代情報学部研究紀要』 5(1) 81-97.

Rosen, Sherwin (1974). Hedonic prices and implicit markets: Product differentiation in pure

competition, Journal of Political Economy, 82(1), 34–55.

佐々木茂・坪井明彦 (2000) 「消費者購買特性および広告が小売価格競争に及ぼす影響に関

する基礎的考察」『高崎経済大学論集』43(2) 15-27.

世良耕一 (1998)「コーズ・リレイテッド・マーケティングの概念と日本における必要性~フ

ィランソロピーと併存する『社会貢献を行う際の選択肢として』~」『函大商学論究』

31(1)

____ (2001)「コーズ・リレイテッド・マーケティングを通したブランド構築に関する一考察

~社会貢献による『ブランド拡張』と『ブランドの製品属性の補完』の可能性について

~」『函大商学論究』34(1), 59-82.

____ (2003)「コーズ・リレイテッド・マーケティングの評価に『消費者とコーズの関係』が

与える影響に関する一考察~支援先選定の重要性の検証~」Journal of business

administration, 1(3), 11-27.

____ (2004)「コーズ・リレイテッド・マーケティング評価に影響を与える要因に関する一考

察~『消費者とコーズの関係』からのアプローチ~」『広告科学』45,90-105.

____ (2007)「コーズ・リレイテッド・マーケティングのサンプリング促進効果に関する一考

察~『消費者とコーズの関係』を中心にして~」『広告科学』48, 66-79.

____ (2008)「コーズ・リレイテッド・マーケティングにおける寄付表記がもたらす影響に関

する一考察」『広告科学』49,46-61.

清水聰 (1999)『新しい消費者行動』千倉書房.

白塚重典 (1997)「ヘドニック・アプローチによる品質変化の捕捉── 理論的枠組みと実証

研究への適用 ──」『IMES Discussion Paper Series』97, J-6.

Soutar, G. N. (2004). Personal Correspondence.

Page 24: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

24

Strahilevits, Michal and Johan G. Myers (1998). Donations to charity as purchase incentives: How

well they work may depend on what you are trying to sell. Journal of Consumer Research, 24(4),

434-446.

Strhilevitz, Michael (2003). The effects of prior impressions of a firm’s ethics on the success of a

cause-related marketing campaign: Do the good look better while the bad look worse? Journal

of Nonprofit and Public Sector Marketing, 11(1), 77-92.

高橋郁夫 (2008)『消費者購買行動: 小売マーケティングへの写像』(第 3 版). 千倉書房.

Vaidyanathan, Rajiv and Praveen Aggarwal (2005). Using commitment to drive consistency:

Enhancing the effectiveness of cause-related marketing communications. Journal of Marketing

Communications, 11(4), 231-246.

Varadarajan, P. Rajan and Anil Menon (1988). Cause-related marketing: A coalignment of marketing

strategy and philanthropy. Journal of Marketing, 52(3), 58-74.

Webb, Deborah J. (1999). Consumer attributions regarding cause-related marketing offers and their

impact on evaluations of the firm and purchase intent: An experimental examination.

Dissertation: College of Business Administration of Georgia State University.

Yi, Y. (1990). A critical review of consumer satisfaction in V. A. Zeithmal (ed.), Review of

Marketing, Chicago; American Marketing Association, 68-123.

参考資料

『毎日新聞』 2009 年 10 月 11 日 朝刊.

『毎日新聞』 2009 年 10 月 25 日 朝刊.

日経 MJ (流通新聞) 2009 年 8 月 5 日 p.1.

Page 25: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

25

付録:コーズ・リレイテッド・マーケティング(CRM)に対する アンケート調査

中央大学商学部久保知一研究室3年

土岐 恵 古屋 雄司 増山 絵里 佐藤 美緒

○ごあいさつ

現在、私たちは消費者行動に関する研究を進めております。このたび CRM と言うマーケティング手法を用いた商品に

対する消費者心理を調査するため、以下のアンケートを作成いたしました。回答結果はコンピュータで統計的に処理され、

プライバシーは保護されます。また、学術研究以外の目的でデータが使用されることはなく、研究終了後、回収したアン

ケートは処分いたします。大変お手数ではございますが、私ども純粋な学術研究の趣旨をご理解の上、御協力の程、よろ

しくお願いいたします。

現在、さまざまなコーズ・リレイテッド・マーケティング(CRM)実施対象商品が販売されています。CRM とは、コーズ

(良いことなので支援したくなるような対象)との協力関係のもと、企業がコーズ支援をすることにより、マーケティング

目標の達成を促進する戦略のことです。

最近の例として、アサヒビール株式会社が行っている地域貢献活動が挙げられます。詳細は以下の通りです。

【アサヒスーパードライ(缶ビール)】 発売元:アサヒビール株式会社

1 本売り上げるごとに 1 円を、47 都道府県の地域貢献活動に寄付している。2009

年春に実施された活動において、2 億 2000 万円が寄付された。

例えば、秋田県では、世界遺産である白神山地を保全する取り組みに賛同し、「秋

田白神ガイド協議会」に寄付を行っている。東京都では、世界で最も環境負荷の少な

い先進的な環境都市の実現に向けた取り組みに賛同し、都内の公立小学校への太陽光

発電設備の設置に協力している。

今回は、CRM を実施している、三ツ矢サイダーとカルピスウォーターを買ったと想定して、両商品を比較しながら、

以下の質問に順番にお答えください。両商品情報とそれぞれの商品が対象とする支援内容は以下のとおりです。

あてはまる番号に○印をお付けください。

【5―――4―――3―――2―――1】

【三ツ矢サイダー】

Ⅰ.商品についておたずねします。

0101 おいしいと思う。 5-4-3-2-1

0102 良い味わいだと思う。 5-4-3-2-1

0103 良い甘さだと思う。 5-4-3-2-1

0104 さわやかな味わいだと思う。 5-4-3-2-1

0105 飲みやすいと思う。 5-4-3-2-1

そう思う どちらでも

ない

そう思わない

Page 26: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

26

0201 質に見合った価格だと思う。 5-4-3-2-1

0202 価格は妥当だと思う。 5-4-3-2-1

0203 適切な価格だと思う。 5-4-3-2-1

0204 手頃な価格だと思う。 5-4-3-2-1

0205 価格は適していると思う。 5-4-3-2-1

0301 この商品を飲みたいと思う。 5-4-3-2-1

0302 この商品が好きだ。 5-4-3-2-1

0303 この商品を飲むことは望ましい。 5-4-3-2-1

【三ツ矢サイダーの支援内容】

アサヒ飲料は、三ツ矢サイダーの売上 1ℓごとに 10ℓの安全な水をアフリカのマリ共和国に寄付し、

安全な飲み水の提供に努めている。これは「安心・安全な水」にこだわりをもって作られる三ツ矢

サイダーならではの支援内容といえる。

Ⅱ.「商品を買うことが社会貢献につながる」CRM についておたずねします。

設問 1)水にこだわりをもつ三ツ矢サイダーが水支援をするという社会貢献についてどう思いますか。

0401 期待できる。 5-4-3-2-1

0402 良いと思う。 5-4-3-2-1

0403 望ましいと思う。 5-4-3-2-1

0404 誠実な企業だと思う。 5-4-3-2-1

0405 利他的であると思う。 5-4-3-2-1

【支援結果】

この支援キャンペーンを 1 年間行った結果、11 億 1500 万ℓの清潔で安全な水が供給される

(2 万人に 10 年間安全な水が保証される)こととなった。

設問 2)あなたが三ツ矢サイダーを買ったとすると、実際に三ツ矢サイダーが支援した結果をみて、どう思いましたか。

0501 社会貢献できたと思う。 5-4-3-2-1

0502 支援できたと思う。 5-4-3-2-1

0503 良い結果だと思う。 5-4-3-2-1

0504 自分の買い物が社会貢献につながったと思う。 5-4-3-2-1

0505 この製品を買うことは社会貢献につながらないと思う。 5-4-3-2-1

設問 3)支援結果は、想像していたものと比べてどうでしたか。

0601 上記の結果は自分が思っていたものと同じぐらいの成果であった。 5-4-3-2-1

0602 上記の結果は自分が思っていたものよりも、良くない結果だった。 5-4-3-2-1

0603 供給された水の量は自分が思っていたのと同じぐらいの量だった。 5-4-3-2-1

0604 供給された水の量は自分が思っていたより少なかった。 5-4-3-2-1

Page 27: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

27

設問 4)あなたが三ツ矢サイダーを買ったとすると、自分が三ツ矢サイダーの社会貢献に参加したことについてどう思い

ましたか。

0701 満足だった。 5-4-3-2-1

0702 良いと思った。 5-4-3-2-1

0703 満足できなかった。 5-4-3-2-1

0704 正しかった。 5-4-3-2-1

0705 自分の求めていたものであった。 5-4-3-2-1

Ⅲ.以上のことを踏まえてお答えください。

0801 CRM を実施しているこの商品を飲みたいと思う。 5-4-3-2-1

0802 CRM を実施しているこの商品が好きだ。 5-4-3-2-1

0803 CRM を実施しているこの商品を飲むことは望ましい。 5-4-3-2-1

0901 CRM を実施しているこの商品をもう一度試してみたいと思う。 5-4-3-2-1

0902 CRM を実施しているこの商品をまた買いたいと思う。 5-4-3-2-1

0903 CRM を実施しているこの商品をまた飲みたいと思う。 5-4-3-2-1

【カルピスウォーター】

Ⅰ.商品についておたずねします。

0101 おいしいと思う。 5-4-3-2-1

0102 良い味わいだと思う。 5-4-3-2-1

0103 良い甘さだと思う。 5-4-3-2-1

0104 さわやかな味わいだと思う。 5-4-3-2-1

0105 飲みやすいと思う。 5-4-3-2-1

0201 質に見合った価格だと思う。 5-4-3-2-1

0202 価格は妥当だと思う。 5-4-3-2-1

0203 適切な価格だと思う。 5-4-3-2-1

0204 手頃な価格だと思う。 5-4-3-2-1

0205 価格は適していると思う。 5-4-3-2-1

0301 この商品を飲みたいと思う。 5-4-3-2-1

0302 この商品が好きだ。 5-4-3-2-1

0303 この商品を飲むことは望ましい。 5-4-3-2-1

【カルピスウォーターの支援内容】

カルピスウォーターは、90 年受け継いできたカルピス独自の乳酸菌から作られている。カルピス株

式会社は、カルピスウォーターの売上 1ℓごとに 10ℓの安全な水をアフリカのマリ共和国に寄付し、安全

な飲み水の提供に努めている。

Page 28: コーズ・リレイテッド・マーケティングの 消費者受 …c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/zemi/works/3_CRM.pdfィング (Cause-related Marketing: CRM、以下CRM と表記)

土岐恵 古屋雄司 増山絵里 佐藤美緒

28

Ⅱ.「商品を買うことが社会貢献につながる」CRM についておたずねします。

設問 1)乳酸菌にこだわりをもつカルピスが水支援をするという社会貢献についてどう思いますか。

0401 期待できる。 5-4-3-2-1

0402 良いと思う。 5-4-3-2-1

0403 望ましいと思う。 5-4-3-2-1

0404 誠実な企業だと思う。 5-4-3-2-1

0405 利他的であると思う。 5-4-3-2-1

【支援結果】

この支援キャンペーンを 1 年間行った結果、11 億 1500 万ℓの清潔で安全な水が供給される(2

万人に 10 年間安全な水が保証される)こととなった。

設問 2)あなたがカルピスを買ったとすると、実際にカルピスが支援した結果をみて、どう思いましたか。

0501 社会貢献できたと思う。 5-4-3-2-1

0502 支援できたと思う。 5-4-3-2-1

0503 良い結果だと思う。 5-4-3-2-1

0504 自分の買い物が社会貢献につながったと思う。 5-4-3-2-1

0505 この商品を買うことは社会貢献につながらないと思う。 5-4-3-2-1

設問 3)支援結果は、想像していたものと比べてどうでしたか。

0601 上記の結果は自分が思っていたものと同じぐらいの成果であった。 5-4-3-2-1

0602 上記の結果は自分が思っていたものよりも、良くない結果だった。 5-4-3-2-1

0603 供給された水の量は自分が思っていたのと同じぐらいの量だった。 5-4-3-2-1

0604 供給された水の量は自分が思っていたより少なかった。 5-4-3-2-1

設問 4)あなたがカルピスを買ったとすると、自分がカルピスの社会貢献に参加したことについてどう思いましたか。

0701 満足だった。 5-4-3-2-1

0702 良いと思った。 5-4-3-2-1

0703 満足できなかった。 5-4-3-2-1

0704 正しかった。 5-4-3-2-1

0705 自分の求めていたものであった。 5-4-3-2-1

Ⅲ.以上のことを踏まえてお答えください。

0801 CRM を実施しているこの商品を飲みたいと思う。 5-4-3-2-1

0802 CRM を実施しているこの商品が好きだ。 5-4-3-2-1

0803 CRM を実施しているこの商品を飲むことは望ましい。 5-4-3-2-1

0901 CRM を実施しているこの商品をもう一度試してみたいと思う。 5-4-3-2-1

0902 CRM を実施しているこの商品をまた買いたいと思う。 5-4-3-2-1

0903 CRM を実施しているこの商品をまた飲みたいと思う。 5-4-3-2-1

ご協力ありがとうございました。