ビッグバンから始まる世界(i)...
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ビッグバンから始まる世界(I)〜素粒子論的トピックス〜
埼玉大学大学院理工学研究科
井上直也
HiSEP「入門セミナー」 2012年度 Ver.
南部陽一郎氏、小林誠氏、益川敏英氏がノーベル物理学賞受賞
2008年10月7日(火)・スウェーデン王立科学アカデミーノーベル物理学賞受賞者○シカゴ大学名誉教授 南部陽一郎氏、
「自発的対称性の破れ」という概念を素粒子理論に適用し、素粒子に質量が生まれる仕組みや、真空が素粒子に与える影響の解明に貢献。
○高エネルギー加速器研究機構名誉教授 小林誠氏○京都産業大学理学部教授・京都大学名誉教授 益川敏英氏
クォークが3種類しか発見されていない当時、1973年に、物質を構成する基本粒子クォークが6種類あれば、「CP対称性の破れ」が自然に説明できる、という先駆的な理論(小林・益川理論)を提唱。
http://www.kek.jp/nobel/
プレス発表
線対称、点対称はわかりやすい例。では物理の世界用に再定義すると?
「一つのものにある操作を施したとき,もとと全く同一にみえるならば,そのものは対称である」 (ヘルマン・ワイル)
回転・平行移動も対称移動。
物理では「同じように見える」
→「物理法則が一緒である」「性質が同じ」と考えて対称性を理解します。
対称性とは?・
でもその対称性が破れている(法則が変わる、性
質が変わる)ということ。。なぜ?
(素)粒子と反粒子=双子の関係
(電子と陽電子、陽子と反陽子など)
両者は裏表の関係だがその性質はお互い変わらないものであろう。「対称」の概念から。。。。
さて、、
宇宙ができたときは、粒子と反粒子は同数あった。
そうならば粒子と反粒子はすべて対消滅すべき。
消滅!!! でも。。
エネルギー
何かの理由で粒子のみが残った(今の宇宙です)。
ビックバン初期に、反粒子が対称性の破れから対消滅せずに粒子に転換されるものがあった(性質が変わった)。
初期の宇宙で粒子と反粒子のそれぞれを支配していた法則に何らかの違いがあったということ。→「CP対称性の破れ」。
変身!
物質は6種類のクォークと6種類のレプトンからなり、ゲージ粒子を交換して3種の力が引き起こされる。
標準理論
http://www.kek.jp/newskek/2008/sepoct/nobel.html
自然界には「CP対称性」以外にも、様々な対称性がある。理由なく(自然に)その対称性が破れることがある。均衡が破れる。
「自発的対称性の破れ」。
たとえば、、、ビックバン直後、高温の世界で、高速で飛び回る素粒子の種(それは質量
がなかった)。対称性の破れで「真空の性質が変化」し、真空がエネルギーを帯び、素粒子の種の自由が、制約を受けて、速さに束縛が加わる。
質量が生まれて物質ができる。 エネルギー=質量。
物質世界の誕生。1960年、真空の性質の変化について,「自発的対称性の破れ」として説明した。
○シカゴ大学名誉教授 南部陽一郎氏
ケプラーの法則
16世紀後半、ケプラーはティコ・ブラーエによる惑星の運行観測データを解析し、3つの法則を導いた。 100年後、ニュートンは万有引力の法則をみいだし(中心力)、それでケプラーの法則を説明した。
第1法則:惑星の軌道は太陽を一つの焦点とする楕円。第2法則:太陽と惑星結ぶ線分が一定時間に通過する面積は等しい。第3法則:惑星が太陽を一周する周期Tの2乗と軌道の長軸半径aの3乗の比は
すべての惑星に対して同じ。
最初と最後の段階は大きな謎を残している。
宇宙の始まりのビックバンと現在の宇宙の見えない姿の謎。星の進化の最終段階であ
る超新星爆発は、重元素の起源、中性子星・ブラックホールの起源、ガンマ線バースト、高エネルギー宇宙線加速源、ニュートリノ放射源、など高エネルギー宇宙物理学のあらゆる研究領域における主役。
古典物理学の世界での宇宙
20世紀の宇宙研究
(かぎりなく大きな宇宙や小さな原子=原子の世界)
“力=ちから”から物理とビックバンを少し探ってみる。
目に見えない世界の謎
宇宙空間でどうして力が伝わるのか?宇宙でも磁石の力ははたらきます。
なぜ引きつけあう力だけなのだろう?反発する力はないの?(物理の世界での対称性の破れ)
(c.f. 電気力 F=a(q x Q)/r2 クーロン力) q、Qは電気量でプラス、マイナスがある。
M
mR
力はなにが伝えるのか?
○1個の原子/ml
○多量のニュートリノ(宇宙の活動天体による)
○未知の物質(ダークマター)
○電磁波
300個/mlの光子 光は波であり粒子である。
(宇宙背景光子:ビックバンのなごり)
→ あとで主役になります。
宇宙は真空でしょうか?
その力の源は媒介仮想粒子によると考えます(“力”の理論)。力をおよぼしあう2つの物では、片方から粒子がでて、相手側の物に到達します。この粒子のエネルギーを片方からうばい、もう片方にそれを伝えます。これで相手側に力がつたわる。
その粒子、って?? 作用反作用
(ゲージ粒子:力のメカニズム)
グルーオン、光子、Z-粒子、グラビトン
みつかっていない。。これを発見
すれば、ノーベル賞!!!
●重力では引きつける力だけしかないのは? → わかっていない。。
●N極(S極)だけの磁石→ 予言あり。「モノポール」(でも見つかっていない)
☆強い相互作用力(原子核をつなぎ止める力)☆弱い相互作用力 (弱ボゾン)☆電気磁気的な力 (光子)☆重力 (グラビトン)
それぞれの力は別々の原因から生まれてきたのでしょうか?
宇宙ができたそのときには(ビックバン)力の種類は一つだけのはず。。宇宙の進化とともに4つの力に別れたに違いない。。それぞれの力をすべて平等に説明できる理論を作ること。
標準理論・統一理論・大統一理論。。。。。
自然界に存在する4つの力とその起源
力の観点から宇宙のはじめに向かって時間をさかのぼっていくと
温度が1015Kを超え,粒子のエネルギーが100GeVを超えていた時代(ビッグバンから10-12秒)には,電磁力と弱い力(合わせて電弱力)は区別できな
かったが,温度の低下によって対称性が破れた。弱ボソンの質量が無視できなくなった。
温度が1027Kのとき(ビッグバンから10-36秒),強い力と電弱力の対称性が
破れた(インフレーション時)。
さらにさかのぼって,重力も含めた4 つの基本力が統一されていたはず。
原子,原子核,ハドロン,クォークとレプトンと,ミクロの世界を追究する旅は宇宙の歴史を逆にたどる旅にもなっている。
E=mc2
137(±2)億年前: 宇宙がビッグバンで始まる。ビッグバンから10-44秒後: 超統一力が大統一力と重力に分かれる。
10-36秒後: 大統一力が電弱力と強い(色の)力に分かれる。インフレーションが始まる。
10-34秒後: インフレーションが終わる。10-10秒後: 電弱力が電磁気力と弱い力に分かれる。10-6秒後: クォーク・ハドロン相転移が起こる
1秒後: 重水素の原子核の合成が始まる。3分後: 原子核の合成がヘリウムで終了する
38万年後: 陽子が電子を捕らえ、原子が誕生する。晴上がり。約1~8億年後: 最初の銀河が形成される。約2~10億年後: 宇宙を満たす中性水素ガスが電離する。約70億年後: ダークエネルギーにより宇宙の膨張の仕方が減
速膨張から加速膨張に変わる。現在: ビッグバンのなごりとして2.7Kの宇宙背景放射が
観測される。
宇宙の歴史
1981年、アラン・グースと佐藤勝彦「インフレーション宇宙」ビッグバン理論を補完する初期宇宙の進化モデル。
現在の宇宙は
フリードマン宇宙(平坦な宇宙)であるとしている。
観測によるとΩは1よりはるか小さい
しかし・・・
Ω=1のはず!
インフレーション宇宙論:ビックバン時代
「インフレーション」宇宙→膨張時期
最初の 10-36秒から10-34秒間 継続
体積は 1040倍 に。。。。
不確定性原理から,短い時間ではエネルギー(質量)の不確定性も膨大。
インフレーションが起こると,粒子は反粒子から急激に引き離されてしまうために対消滅ができなくなる。このため宇宙は,物質と反物質が高温の熱平衡状態になったスープ状になる。その後、粒子の対生成と対消滅(電子陽電子対は~3×10-22秒程度)を起こす。
ビッグバン理論において宇宙の始まり以来、初めて光子が長距離進めるようになった時期
→ およそ38万年後
宇宙の温度の低下にともない電子と原子核が結合して原子を生成。光子は電子との相互作用をまぬがれ長距離進めるようになる。 → 宇宙が放射に対して透明
晴れ上がり時期のマイクロ波は宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれ、ビッグバン理論について最も良い証拠。
電子
宇宙の晴れ上がり
WMAPの観測によると、
http://www.nikon.co.jp/main/jpn/feelnikon/discovery/light/chap01/sec01.htm
宇宙の96%は未知の物質
我々は色のついた物質しか見えない。見えない物質(黒い部分)はいったい何なのか?
今後の課題
銀河では,星が集中している中心部分で,星の回転速度は距離とともに増える。星が少なくなる外側になっても,回転速度は緩やかに増え続ける。軌道半径が大きくなれば重力は小さくなり,それにつり合う遠心力も小さくなるので,回転速度は遅くなる。そのような領域は,光を出さない暗黒物質(ダークマター)によって占められていると考えられる。
銀河の回転速度と暗黒物質
現在の宇宙のエネルギー密度の
5分の1は光を出さず重力のみ及ぼすダークマター、4 分の3 は実効的には「万有斥力」を及ぼすダークエネルギー
ダークマターの解明
未発見の素粒子階層の理論構築、地上での直接検出実験(高エネルギー物理学)へ。
ダークマターが直接検出され、素粒子の階層として正しく位置づけられて初めてその研究が完結。
21世紀の宇宙物理学に残された課題
第一部はここまで