アルブミン製剤...

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適正使用ハンドブック アルブミン製剤 【禁忌】(次の患者には投与しないこと) 本剤の成分に対しショックの既往歴のある患者 【原則禁忌】(次の患者には投与しないことを 原則とするが、特に必要とする場合には慎重に 投与すること) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 薬価基準収載 (注意ー医師等の処方箋により使用すること) 特定生物由来製品 処方箋医薬品 注) KK-ALB-002BC 2016 年 6 月作成 審 J1601214

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Page 1: アルブミン製剤 適正使用ハンドブックjbpo.or.jp/med_test/di/include/abj/data/abj_handbook.pdf小児*2 0.02mL/kg/分以下 *1 おおむね、5%アルブミン製剤250mL(12.5g)を約1時間かけて投与する速度。*2

適正使用ハンドブックアルブミン製剤

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対しショックの既往歴のある患者

【原則禁忌】(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

薬価基準収載

(注意ー医師等の処方箋により使用すること)特定生物由来製品 処方箋医薬品注)

KK-ALB-002BC2016年6月作成審J1601214

Page 2: アルブミン製剤 適正使用ハンドブックjbpo.or.jp/med_test/di/include/abj/data/abj_handbook.pdf小児*2 0.02mL/kg/分以下 *1 おおむね、5%アルブミン製剤250mL(12.5g)を約1時間かけて投与する速度。*2

アルブミンの性質

アルブミンの働き

アルブミン量

25%アルブミン製剤

20%アルブミン製剤

水 分 量 100mL80mL 160mL 200mL 250mL400mL 500mL

5g 8g4g 10g 12.5g 20g 25g

20mL 20mL20mL

20mL20mL 20mL

50mL50mL

50mL50mL 50mL

50mL

〔血漿膠質浸透圧の維持〕約80%を担い、中心的役割を果たす。アルブミン1gは約20mLの水分保持能力がある。

アルブミンは、血漿たん白質の約60%を占め、量的に最も多いたん白質です。

〔 物 質の運 搬 〕 脂肪酸、ホルモン、薬物、老廃物、毒素など

〔アミノ酸供給源〕 予備アミノ酸

〔酸化・還元緩衝〕 フリーラジカルの消去やスーパーオキサイドの産生抑制などによる抗酸化作用

総   量 体重1kgあたり4〜5g ex.)体重60kgの場合、240〜300g

分   布 約40%が血管内、60%は血管外 血管の内外で平衡を保っている

血清中濃度 3.9〜4.9g/dL 正常範囲は測定法等により異なる

合   成 1日に100〜200mg/kg ex.)体重60kgの場合、1日約6〜12g

分   解 1日に100〜200mg/kg 合成量とほぼ同じ

血中半減期 14〜20日 肝硬変等の合成低下時は延長

渡邊明治 編:臨床アルブミン学 メディカルレビュー社, 76, 203-204, 1999. 抜粋

● アルブミンの性質 …………………………………1● アルブミンの働き …………………………………1● 血液製剤の使用指針(改訂版) ……………………2● アルブミン製剤の使い分け ………………………4● 投与量と投与効果の評価 …………………………4● 推奨投与速度 ………………………………………5● 出血患者における輸液・成分輸血療法の適応 …5● アルブミン投与時の期待上昇濃度 ………………6

CONTENTS

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Page 3: アルブミン製剤 適正使用ハンドブックjbpo.or.jp/med_test/di/include/abj/data/abj_handbook.pdf小児*2 0.02mL/kg/分以下 *1 おおむね、5%アルブミン製剤250mL(12.5g)を約1時間かけて投与する速度。*2

目的

● アルブミン製剤を投与する目的は、血漿膠質浸透圧を維持することにより循環血漿量を確保すること、および体腔内液や組織間液を血管内に移行させることによって治療抵抗性の重度の浮腫を治療することにある。

使用指針

1)出血性ショック等● 循環血液量の30%以上の出血をみる場合は、細胞外液補充液の

投与が第一選択となり、人工膠質液の併用も推奨されるが、原則としてアルブミン製剤の投与は必要としない。

● 循環血液量の50%以上の多量の出血が疑われる場合や血清アルブミン濃度が3.0g/dL未満の場合には、等張アルブミン製剤の併用を考慮する。

● 腎機能障害などで人工膠質液の使用が不適切と考えられる場合には、等張アルブミン製剤を使用する。また、人工膠質液を1,000mL以上必要とする場合にも、等張アルブミン製剤の使用を考慮する。

2)人工心肺を使用する心臓手術通常、心臓手術時の人工心肺の充填には、主として細胞外液補充液が使用される。人工心肺実施中の血液希釈で起こった一時的な低アルブミン血症は、アルブミン製剤を投与して補正する必要はない。ただし、術前より血清アルブミン濃度または膠質浸透圧の高度な低下のある場合、あるいは体重10kg未満の小児の場合などには等張アルブミン製剤が用いられることがある。3)肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療● 大量(4L以上)の腹水穿刺時に循環血漿量を維持するため、高張

アルブミン製剤の投与が考慮される。また、治療抵抗性の腹水の治療に、短期的(1週間を限度とする)に高張アルブミン製剤を併用することがある。*肝硬変などの慢性の病態による低アルブミン血症は、それ自体ではアルブミン製剤の適応とはならない。4)難治性の浮腫、肺水腫を伴うネフローゼ症候群

*ネフローゼ症候群などの慢性の病態は、通常アルブミン製剤の適応とはならないが、急性かつ重症の末梢性浮腫あるいは肺水腫に対しては、利尿薬に加えて短期的(1週間を限度とする)に高張アルブミン製剤の投与を必要とする場合がある。

[要約]アルブミン製剤の適正使用

血液製剤の使用指針(改訂版)

使用指針

5)循環動態が不安定な血液透析等の体外循環施行時● 血圧の安定が悪い場合に血液透析時において、特に糖尿病を合

併している場合や術後などで低アルブミン血症のある場合には、循環血漿量を増加させる目的で予防的投与を行うことがある。

6)凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換法*ギランバレー症候群、急性重症筋無力症など凝固因子の補充を必要としない症例では、等張アルブミン製剤を使用する。*加熱人血漿たん白は、まれに血圧低下をきたすので、原則として使用しない。

7)重症熱傷● 熱傷部位が体表面積の50%以上あり、細胞外液補充液では循環

血漿量の不足を是正することが困難な場合には、人工膠質液あるいは等張アルブミン製剤で対処する。*熱傷後、通常18時間以内は原則として細胞外液補充液で対応するが、18時間以内であっても、血清アルブミン濃度が1.5g/dL未満の時は適応を考慮する。8)�低たん白血症に起因する肺水腫あるいは著明な浮腫が認められる場合

● 術前、術後あるいは経口摂取不能な重症の下痢などによる低たん白血症が存在し、治療抵抗性の肺水腫あるいは著明な浮腫が認められる場合には、高張アルブミン製剤の投与を考慮する。

9)循環血漿量の著明な減少を伴う急性膵炎など● 急性膵炎、腸閉塞などで循環血漿量の著明な減少を伴うショッ

クを起こした場合には、等張アルブミン製剤を使用する。

不適切な使用

1)たん白質源としての栄養補給2)脳虚血3) 単なる血清アルブミン濃度の

維持4)末期患者への投与

使用上の注意点

1)ナトリウム含有量2)肺水腫、心不全3)血圧低下4)利尿5)アルブミン合成能の低下

厚生労働省医薬食品局血液対策課「血液製剤の使用指針」(改定版)平成17年9月(平成24年3月一部改正)より引用

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Page 4: アルブミン製剤 適正使用ハンドブックjbpo.or.jp/med_test/di/include/abj/data/abj_handbook.pdf小児*2 0.02mL/kg/分以下 *1 おおむね、5%アルブミン製剤250mL(12.5g)を約1時間かけて投与する速度。*2

※Lundsgaard-Hansen P. et al. Component therapy of surgical hemorrhage : Red cell concentrates. colloids and crystalloids. Bibl Haematol. 46 : 147-169. 1980.(一部を改訂)

A-C

:細胞外液補充液(乳酸リンゲル液・酢酸リンゲル液など):人工膠質液:等張アルブミン(5%人血清アルブミン、加熱人血漿たん白):赤血球濃厚液またはMAP加赤血球濃厚液:新鮮凍結血漿:血小板濃厚液

Ht(43→35)%

輸液血液成分

100

80

60

35

25

20 50 100 150 (%)

(%)血液成分量

出血量

TP(7.5→4.5)g/dL

Ⅴ/Ⅷ因子%

Plt=5×104/μL

L-R

A-CHSA

RCCFFPPC

L-RHSA

RCCFFP

PC

推奨投与速度添付文書上では、投与速度の設定及び小児に対する用法・用量の設定はありませんが、当機構では米国で規定されている投与速度1)を参考に、下表の速度を推奨しています。アルブミン製剤の使用にあたっては、輸注速度を調整し慎重な投与が必要です。1時間あたり負荷するアルブミンを10g前後に制限して、循環系に過剰な負担をかけないよう配慮することが望ましいとされています。2),3)

アルブミン製剤の投与速度の目安�1)〜3)

投与速度の目安

献血アルブミン5%静注「JB」成人 5mL/分*1以下小児*2 0.1mL/kg/分以下

献血アルブミン20%静注「JB」献血アルブミン25%静注「ベネシス」赤十字アルブミン25%

成人 1mL/分以下

小児*2 0.02mL/kg/分以下

*1 おおむね、5%アルブミン製剤250mL(12.5g)を約1時間かけて投与する速度。*2 小児の投与速度は、成人体重50kgとして体重あたりに換算したものです。

1)Drug Point®2)寮 隆吉:Medical Practice,9(臨時増刊), 216-222, 1992.3)渡邊明治 編:臨床アルブミン学 メディカルレビュー社, 211, 1999.

■ 出血性ショック等■ 人工心肺を使用する心臓手術■ 循環動態が不安定な血液透析等の体外循環施行時■ 凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換法■ 重症熱傷■ 循環血漿量の著明な減少を伴う急性膵炎など

■ 肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療■ 難治性の浮腫、肺水腫を伴うネフローゼ症候群■ 循環動態が不安定な血液透析等の体外循環施行時■ 凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換法(希釈使用)■ 低蛋白血症に起因する肺水腫あるいは著明な浮腫が認められる

場合

アルブミン製剤の使い分け

投与量と投与効果の評価● 患者の血清アルブミン実測値と臨床症状から目標値を設定し、それに即

した必要投与量を正確に算定することが大切です。

● 上記算定式で求められたアルブミン量を患者の病状に応じて、通常2〜3日で分割投与します。

● 投与効果の評価を3日を目途に行い、使用の継続を判断し、漫然と投与し続けることのないように注意します。

《「血液製剤の使用指針」(改定版)平成17年9月(平成24年3月一部改正)より》出血患者における輸液・成分輸血療法の適応

目標血清アルブミン濃度 3.0g/dL以上 2.5g/dL以上

投与量算定式 必要投与量(g)=期待上昇濃度(g/dL)×体重(kg)

急性 慢性

必要投与量(g) =期待上昇濃度(g/dL)×循環血漿量(dL)×2.5 =期待上昇濃度(g/dL)×0.4(dL/kg)×体重(kg)×2.5 =期待上昇濃度(g/dL)×体重(kg)期待上昇濃度:目標値−実測値循環血漿量:0.4dL/kg投与アルブミンの血管内回収率:4/10(40%)

使用目的:血漿膠質浸透圧を維持し、循環血漿量を確保する

使用目的:‌‌浮腫や胸水、腹水などの循環血液外の過剰に蓄積した水分を血管内へ移動させる

等張製剤

高張製剤

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Page 5: アルブミン製剤 適正使用ハンドブックjbpo.or.jp/med_test/di/include/abj/data/abj_handbook.pdf小児*2 0.02mL/kg/分以下 *1 おおむね、5%アルブミン製剤250mL(12.5g)を約1時間かけて投与する速度。*2

投与量の算定には下記の計算式を用いる。このようにして得られたアルブミ ン量を患者の病状に応じて、通常2〜3日で分割投与する。

ただし、期待上昇濃度は期待値と実測値の差、循環血漿量は0.4dL/kg、投 与アルブミンの血管内回収率は4/10(40%)とする。

献血アルブミン20%静注10g/50mL「JB」(アルブミン含量10g/本� )の場合*アルブミン投与時の期待上昇濃度

* 献血アルブミン20%静注4g/20mL「JB」にはアルブミンが4g/本、献血ア ルブミン25%静注5g/20mL「ベネシス」および赤十字アルブミン25%静注5g/20mLにはアルブミンが5g/本 含まれている。

必要投与量(g)=期待上昇濃度(g/dL)/体重(kg)

投与本数

体 重(kg)5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100

1 2.00 1.00 0.67 0.50 0.40 0.33 0.29 0.25 0.22 0.20 0.17 0.14 0.13 0.11 0.102 2.00 1.33 1.00 0.80 0.67 0.57 0.50 0.44 0.40 0.33 0.29 0.25 0.22 0.203 3.00 2.00 1.50 1.20 1.00 0.86 0.75 0.67 0.60 0.50 0.43 0.38 0.33 0.304 2.67 2.00 1.60 1.33 1.14 1.00 0.89 0.80 0.67 0.57 0.50 0.44 0.405 2.50 2.00 1.67 1.43 1.25 1.11 1.00 0.83 0.71 0.63 0.56 0.506 3.00 2.40 2.00 1.71 1.50 1.33 1.20 1.00 0.86 0.75 0.67 0.607 2.80 2.33 2.00 1.75 1.56 1.40 1.17 1.00 0.88 0.78 0.708 2.67 2.29 2.00 1.78 1.60 1.33 1.14 1.00 0.89 0.809 3.00 2.57 2.25 2.00 1.80 1.50 1.29 1.13 1.00 0.9010 2.86 2.50 2.22 2.00 1.67 1.43 1.25 1.11 1.00

(g/dL)献血アルブミン25%静注12.5g/50mL「ベネシス」/赤十字アルブミン� 25%静注12.5g/50mL(アルブミン含量12.5g/本)の場合*

投与本数

体 重(kg)5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100

1 2.50 1.25 0.83 0.63 0.50 0.42 0.36 0.31 0.28 0.25 0.21 0.18 0.16 0.14 0.132 2.50 1.67 1.25 1.00 0.83 0.71 0.63 0.56 0.50 0.42 0.36 0.31 0.28 0.253 2.50 1.88 1.50 1.25 1.07 0.94 0.83 0.75 0.63 0.54 0.47 0.42 0.384 2.50 2.00 1.67 1.43 1.25 1.11 1.00 0.83 0.71 0.63 0.56 0.505 2.50 2.08 1.79 1.56 1.39 1.25 1.04 0.89 0.78 0.69 0.636 3.00 2.50 2.14 1.88 1.67 1.50 1.25 1.07 0.94 0.83 0.757 2.92 2.50 2.19 1.94 1.75 1.46 1.25 1.09 0.97 0.888 2.86 2.50 2.22 2.00 1.67 1.43 1.25 1.11 1.009 2.81 2.50 2.25 1.88 1.61 1.41 1.25 1.1310 2.78 2.50 2.08 1.79 1.56 1.39 1.25

(g/dL)

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