ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 ·...

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ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 ~ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 目 次 参考 診療報酬におけるハイリスク薬の考え方 ・・・・・・・・・・・ 1 ◆薬学的管理指導において特に注意すべき事項 ・・・・・・・・・・・・・ 2 ◆患者家族への指導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ◆服薬指導のポイント ・・・・・・・・・・・・・・・ 2 □自覚症状確認 □服薬状況確認 ・・・・ 2 □患者データ確認 □リスク因子の有無・ 3 □他疾患の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 □他薬剤併用 □生活習慣確認 ・・・ 4 □服用時の注意 □服用忘れの対応 ・ 4 □副作用発症の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 □OTC薬、民間療法、健康食品の使用確認・ 5 □家族の協力 □旅行時の注意 ・・・ 5 □各製薬メーカーの手帳、チェックシートの利用 ・・・ 5 ◆血液の働き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 ◆血液の成分 ◆造血 ・・・・・・・・・・・・・・・ 6 ◆血液細胞(血球)の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 ◇赤血球 ◇白血球 ◇血小板 ◆止血の機序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 1.損傷血管の収縮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 2.血小板血栓の形成(一次止血) ・・・・・・・ 14 ■正常な血管内では血小板凝集は起こらない 3.凝固因子による二次止血 ・・・・・・・・・・・ 15 ◇ビタミンK依存因子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 ■正常な血管内では血液凝固は起こらない 4.線溶系(線溶カスケード) ・・・・・・・・・・・ 18 ◆凝固・線溶系の生理的変動 ・・・・・・・・・・ 19 1.日内変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 2.加齢による変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 3.生活習慣による変動 ・・・・・・・・・・・・・ 20 ◆血栓の病態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ◆血栓症の発症機序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ◆血栓症と基礎疾患 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 ◆治療薬剤の選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 ◆治療薬剤の分類と特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・ 24 1.抗血小板剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 2.抗凝固剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 3.血栓溶解剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 ◆ビタミンKとは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 ◆検査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 ◆新規経口凝固薬剤のワルファリンとの比較・ 31 ◆ワルファリン抵抗性 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 ◆他剤への切り替え ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 ◆各疾患における治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 ◆血栓症の予防 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 ◆血栓症を来す薬剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 ◆出血傾向のある患者に「禁忌」な薬剤 ・・・ 39 ◆抜歯・手術時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 ◆内視鏡治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 ◆副作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 ◆出血傾向の早期発見 ・・・・・・・・・・・・・・・ 44 ◆出血時の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 ◆出血予防 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ◆相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ◆高齢者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 ◆妊婦・授乳時の投与 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 ◆腎機能障害の患者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 <表>血液凝固阻止剤一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 血液凝固阻止剤の注意すべき副作用と初期症状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 手術前に中止を考慮する薬剤・ハーブ類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 ビタミンK、納豆菌を含む医薬品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 添付文書の警告欄に「血栓症」に関する注意喚起の記載がある薬剤 ・・ 57 添付文書に「出血患者」への投与注意(禁忌・慎重投与)の記載がある薬剤 59 健康食品・サプリメント等食品との相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 ★特定薬剤管理指導加算について(告示・通知) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 ★ハイリスク薬の薬学的管理指導 薬局向け参考資料ホームページ紹介 ・・・・・・・・・69

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Page 1: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

ハイリスク薬のポイントブック<4>

~ 血液凝固阻止剤 ~ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

目 次

◆参考 診療報酬におけるハイリスク薬の考え方 ・・・・・・・・・・・ 1

◆薬学的管理指導において特に注意すべき事項 ・・・・・・・・・・・・・ 2

◆患者家族への指導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

◆服薬指導のポイント ・・・・・・・・・・・・・・・ 2

□自覚症状確認 □服薬状況確認 ・・・・ 2

□患者データ確認 □リスク因子の有無・ 3

□他疾患の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

□他薬剤併用 □生活習慣確認 ・・・ 4

□服用時の注意 □服用忘れの対応 ・ 4

□副作用発症の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

□OTC薬、民間療法、健康食品の使用確認・ 5

□家族の協力 □旅行時の注意 ・・・ 5

□各製薬メーカーの手帳、チェックシートの利用 ・・・ 5

◆血液の働き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

◆血液の成分 ◆造血 ・・・・・・・・・・・・・・・ 6

◆血液細胞(血球)の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

◇赤血球 ◇白血球 ◇血小板

◆止血の機序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

1.損傷血管の収縮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

2.血小板血栓の形成(一次止血) ・・・・・・・ 14

■正常な血管内では血小板凝集は起こらない

3.凝固因子による二次止血 ・・・・・・・・・・・ 15

◇ビタミンK依存因子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

■正常な血管内では血液凝固は起こらない

4.線溶系(線溶カスケード) ・・・・・・・・・・・ 18

◆凝固・線溶系の生理的変動 ・・・・・・・・・・ 19

1.日内変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

2.加齢による変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

3.生活習慣による変動 ・・・・・・・・・・・・・ 20

◆血栓の病態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

◆血栓症の発症機序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

◆血栓症と基礎疾患 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

◆治療薬剤の選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

◆治療薬剤の分類と特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・ 24

1.抗血小板剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

2.抗凝固剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

3.血栓溶解剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

◆ビタミンKとは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

◆検査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

◆新規経口凝固薬剤のワルファリンとの比較・ 31

◆ワルファリン抵抗性 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

◆他剤への切り替え ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

◆各疾患における治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

◆血栓症の予防 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

◆血栓症を来す薬剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

◆出血傾向のある患者に「禁忌」な薬剤 ・・・ 39

◆抜歯・手術時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

◆内視鏡治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

◆副作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

◆出血傾向の早期発見 ・・・・・・・・・・・・・・・ 44

◆出血時の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

◆出血予防 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

◆相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

◆高齢者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

◆妊婦・授乳時の投与 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

◆腎機能障害の患者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

<表>血液凝固阻止剤一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

血液凝固阻止剤の注意すべき副作用と初期症状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

手術前に中止を考慮する薬剤・ハーブ類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

ビタミンK、納豆菌を含む医薬品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

添付文書の警告欄に「血栓症」に関する注意喚起の記載がある薬剤 ・・ 57

添付文書に「出血患者」への投与注意(禁忌・慎重投与)の記載がある薬剤 59

健康食品・サプリメント等食品との相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

★特定薬剤管理指導加算について(告示・通知) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63

★ハイリスク薬の薬学的管理指導 薬局向け参考資料ホームページ紹介 ・・・・・・・・・69

Page 2: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

この冊子は、現在、愛知県薬剤師会薬事情報センターと岐阜県薬剤師会ぎふ薬事情報センターが

共同し県薬剤師会ホームページの会員情報に提供している『ハイリスク薬の薬学的管理指導 薬局

向け参考資料』より作成しました。 近年、血液凝固阻止剤の新薬発売やその使い分け、休薬期間の考え方など注目されています。そ

こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

てください。

参考 診療報酬におけるハイリスク薬の考え方 ハイリスク薬の薬学的管理指導を実施する上で必要な、薬局・薬剤師が行うべき標準的な業務を

示したものが、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第 2版)」

[日本薬剤師会 平成 23 年 4 月 15 日]です。このガイドラインは、平成 26 年度調剤報酬点数表

「特定薬剤管理指導加算」の参考にするものです。

特にハイリスク薬については、5-Components を意識した服薬指導が望まれています。

① 薬剤の効果(作用)

:どういう効果があるか、いつごろ効果が期待できるか

② 副作用(副作用の自覚症状)

:どのような副作用が起こりうるか、いつ頃から、どのように自覚されるか

③ 服薬手順

:どのように、いつ、いつまで服用するか、食事との関係、最大用量、服用を継続する

意義

④ 注意事項

:保管方法、残薬の取り扱い、自己判断による服薬や管理の危険性

⑤ 再診の予定(次回受診日)

:いつ再診するか、予定より早く受診するのはどのような時か

個々の患者さんを薬剤のハイリスクから守るため、薬局薬剤師が投薬時に患者さんと対面におい

て、情報収集し考え、フォロー・指導を行うものであり、画一的な内容では網羅しきれない綿密な

薬学的管理指導です。患者さん又はその家族等に対して確認した内容及び行った指導の要点につい

ては、薬剤服用歴の記録に記載することが基本となります。

―――――――――――――――――――――――――――――

●診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)

平成 26 年 3 月 5 日保医発 0305 第 3 号 別添 3(調剤点数表)より

特定薬剤管理指導加算は、薬剤服用歴管理指導料を算定するに当たって行った薬剤の管理及び指

導等に加えて、患者又はその家族等に当該薬剤が特に安全管理が必要な医薬品である旨を伝え、当

該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った場合に算定する。

なお、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」(日本薬剤師会)

等を参照し、特に安全管理が必要な医薬品に関して薬学的管理及び指導等を行う上で必要な情報に

ついては事前に情報を収集することが望ましいが、薬局では得ることが困難な診療上の情報の収集

については必ずしも必要とはしない。

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血液凝固阻止剤

◆患者家族への指導

患者あるいはその家族に対して、治療法や本剤投与の有効性および危険性(出血など)

を医師からの説明を受け、理解と同意を得ているかを確認し服薬指導を行う。使用薬剤の

投与により発現する可能性のある副作用について、具体的に説明を行い、皮下出血や歯茎

からの出血など出血傾向がないか注意してもらう。服用は長期服用が原則となるため、医

師の指示なしに投与を中止しないように、また、のみ忘れがないように家族の薬剤管理に

も協力を必要とする。服用を忘れた場合の服用時間等は製剤によって異なるため、適切な

指導を行う。

◆服薬指導

薬剤の作用から普段の状態よりも出血しやすくなることを説明し、異常な出血が認めら

れた場合には医師または薬剤師に連絡するように注意をする。自己判断で、服薬中止や減

量することがないように指導する。

<服薬指導のポイント>

□患者の自覚症状を確認する

・鼻血、あざ(皮下出血)の有無

・貧血

・便の黒色化、下血

・胸痛、脈拍数の増加

・消化管障害

・生理に変化がないか

□服薬状況の確認

・長期服用の必要性を理解している

・決められた時間に、決められた量を服用できているか・・・残薬の確認

・新規経口凝固剤は半減期が短いため、のみ忘れは血栓発症リスクが急激に高まる

・他院(他科)を受診して、薬剤を服用していないか

・他院(他科)を受診する際は、抗血栓剤の服用を医師に伝えているか

◇薬学的管理指導において特に注意すべき事項

1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認

2) 服用患者のアドヒアランスの確認、服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休止、

検査・手術後・抜歯後の服薬再開の確認)

3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(服用中は出血傾向と

なるので、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策)

4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)

5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事(納豆等)との相互作用の確認

6) 日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導

薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)血液凝固阻止剤より

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□患者のデータ(指標)を確認する

・肝機能の検査値

・トロンボテスト値、APTT や INR・・・抗凝固作用の評価

・血中ヘモグロビン値・・・持続出血の早期発見

ヘモグロビン値基準値:男性 14~18g/dL、女性 12~16g/dL

・血圧コントロール・・・降圧目標 130/80mmHg 未満が望ましい

・〔チクロピジン、クロピドグレル〕投与開始 2 ヵ月間は、2 週間に 1 回程度血液検査

を受けているか

・〔ダビガトラン〕クレアチニンクリアランス 30mL/min 未満の患者へは投与禁忌

〔アピキサバン、リバーロキサバン〕腎不全(クレアチニンクリアランス 15mL/min

未満)患者へは投与禁忌

□リスク因子の有無

・感染、炎症

・喫煙・・・酸化ストレス、炎症反応に伴う血管壁障害とニコチンによる血中カテコラミ

ン刺激が血小板を活性化。

・脳・脊髄・眼科領域の 近の手術歴

・出血性脳卒中の既往

・飲酒・・・アスピリンと服用により消化管出血を誘発または増強することがある

・肥満

・けがをするおそれのある仕事や運動

・抜歯や内視鏡治療、手術などの予定がないか

・出血に注意すべき薬剤の服用

・月経期間中

・妊婦または妊娠している可能性

・脱水状態

・長期臥床

□他の疾患にかかっていないかの確認

・脳梗塞

・高血圧・・・脳出血、脳梗塞の 大危険因子

・糖尿病・・・血小板が活性化しやすい

・脂質異常症・・・酸化 LDL 産生時に生じる酸化コリングリセロリン脂質が、血小板の

活性化を増強

・腎障害

・肝障害

・コントロール不良の重度の高血圧

・出血性疾患(血小板減少症、血小板疾患など)

・潰瘍性消化管疾患

・女性ホルモン療法

・〔バファリン配合錠〕腎障害・・・アルミニウムを含有するため腎臓からの排泄が低下

するが、1 錠あたりのアルミニウム量は少ないため透析患者でも影響がないとされる

・歯肉炎

・〔アスピリン〕消化性潰瘍、アスピリン喘息

・〔ワルファリン〕骨粗鬆症・・・ビタミン K2の服用

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□他の薬剤の併用

・血小板凝集抑制作用を有する薬剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、ヘパリン製剤、トロン

ボキサン合成阻害剤、プロスタグランジン E1製剤及び I2誘導体

・・・出血傾向が増強されることがある

・非ステロイド性消炎鎮痛剤、SSRI、SNRI、TXA2 拮抗剤・・・出血を引き起こす可能

性がある

・〔ダビガトラン〕P-糖蛋白阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン)、P-糖

蛋白誘導体(リファンピシン、カルバマゼピン)

・〔クロピドグレル、シロスタゾール〕CYP2C19 を阻害する薬剤(オメプラゾール)

・〔シロスタゾール〕CYP3A4 を阻害(マクロライド系抗生物質、HIV プロテアーゼ阻

害剤、アゾール系抗真菌剤、シメチジン、ジルチアゼム塩酸塩等)、誘導する薬剤

・〔ワルファリン〕CYP2C19 を阻害、誘導する薬剤、骨粗鬆症用剤(ビタミン K2)

・〔アスピリン、ワルファリン〕蛋白結合率の高い薬剤・・・併用薬の血漿蛋白との結合

を置換。ワルファリン蛋白結合率は 90~99%

・〔ワルファリン〕ビタミン K 含有薬剤

□生活習慣の確認

・〔ワルファリン〕ワーファリン手帳とカードを携帯しているか確認する

・〔ワルファリン〕納豆、モロヘイヤ、青汁、クロレラなどの食品を摂っていないか

・禁煙

・飲酒

〔ワルファリン〕アルコール摂取から 6~7 時間以上の間隔をあける

・脂肪の多い食事

・ペットにかまれることはないか

・カミソリでひげをそっていないか

□服用時の注意

・〔バイアスピリン〕本剤は腸溶錠であるので、急性心筋梗塞ならびに脳梗塞急性期の

初期治療に用いる場合以外は、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そ

のままかまずに服用させる

・〔パナルジン〕細粒剤は苦味が残ることがあるので速やかに飲み下す

・〔プレタール OD 錠〕口腔崩壊錠で口腔粘膜から吸収されることはないため、唾液又

は水で飲み込む

・〔ダビガトラン〕吸湿性があるので、服用直前に PTP シートから取り出し、カプセ

ルを開けて服用しない

□服用忘れの対応

・飲み忘れもなく、指示どおりに服用できているか

毎日きちんと服用することで血栓が予防できることを説明し、のみ忘れがないよう

に指導する

・飲み忘れても決して 2 回分を一度に服用しないように説明する

・医師の説明を理解しているか

・服用に対して不安、質問がないか

・〔アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル〕気が付いたら、すぐに服用。次の服

用時間が近いときは、忘れた分は服用しない

・〔シロスタゾール〕気が付いても服用せず、次の時間に決められた量を服用

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・〔ワルファリン〕気が付いたら、その日の分だけすぐに服用

・〔ダビガトラン〕気が付いたら、すぐに服用。次の服用までに 6 時間以上間隔をあけ

て服用

・〔アピキサバン〕気が付いたら、すぐに服用。その後 1 日 2 回服用

・〔リバーロキサバン〕気が付いたら、すぐに服用。翌日から 1 日 1 回服用

□副作用の発症の有無を確認

・出血(皮下出血、鼻血、貧血、歯肉出血)、あざ、目の充血

・腎障害

・血尿(おしっこの色が濃くなった)

・黒色便(上部消化管の出血)、赤色便(大腸、下部小腸の出血)

・〔アスピリン〕消化性潰瘍、胃腸障害、咳

・〔チクロピジン、クロピドグレル〕肝機能障害、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、

無顆粒球症、頭痛、頻脈、かゆみ

・〔シロスタゾール〕うっ血性心不全、狭心症、動悸、ほてり、頭痛

・〔ダビガトラン〕胃痛、貧血

・〔ダビガトラン〕胸やけ・・・吸収をしやすくするために添加した酒石酸が原因。内服

前後に多めの水で飲むことや食事と一緒に服用することで予防可能

□OTC薬や民間療法、健康食品の使用状況の確認

・健康食品や民間薬などを摂っていないか、また摂りたいと考えていないか

・・・セントジョーズワート、バレリアンなど

・ビタミン K や納豆含有薬剤または健康食品・・・ワルファリンの作用を減弱する

・イチョウ葉エキス、EPA、DHA を含む健康食品・・・抗血小板作用がある

・グレープフルーツジュース、イチョウ葉エキス・・・CYP3A4 を阻害する

□家族の協力

・長期薬剤の服用の必要性が理解できているか

・医師への連絡先の確認ができているか

・薬剤管理の協力ができるか

・本人と家族の両方から情報収集ができるか

□旅行時の注意

・時差に注意し、服用間隔を考慮し現地の適当な時間に服用する

・長期の旅行をする際は、旅行中に薬がなくならないように余裕を持って出かける

・薬を紛失したり、足りなくなった場合は、現地の循環器科を受診し処方してもらう

その際には処方が書かれた手帳やメモ、ワーファリンカードを提示できるように常

備しておく

□各製薬メーカーの手帳、チェックシートの利用

・副作用のチェックリスト

・抗凝血薬療法手帳(ワーファリン手帳)

・出血傾向、脳梗塞の前触れ症状のチェックシート

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◆血液の働き

血液は、心・血管系の中を循環する、比重 1.05~1.06、pH7.35~7.45、水の約 5 倍の粘

稠性を示す液体で、生命の維持に極めて重要である。血液量は通常成人で、体重の約 8%を

占め、体重 60kg で 4~5L となる。また、全血液量の 1/3(約 1.5L)を失うと生命に危険を

及ぼす。

体内を循環し、酸素や栄養素を全身の組織に供給し、二酸化炭素や老廃物を組織から運

び去る。また、身体内部の熱を体表へ運んだり、ホルモンや電解質を全身に流通すること

で恒常性の維持に働いている。さらに、白血球や免疫グロブリンの移動を通じて、病原体

や異物からの生体防御、血小板や凝固因子による止血機構においても重要な役割を果たし

ている。

血液の働き

機能 例 関与する血液成分

物質の運搬 O2、CO2、栄養素、老廃物 赤血球、血漿

内部環境の調節 体温、pH、浸透圧 血漿

生体防御 感染防御機構、免疫応答 白血球、補体、抗体

止血 血小板凝集、血液凝固 血小板、凝固因子

情報の流通 ホルモンなど 血漿

(坂井建雄他:人体の正常構造と機能,日本医事新報社,2012)

◆血液の成分

血液は、有形細胞成分(血球)と淡黄色透明な液体成分(血漿)とから構成される。血

液が凝固すると血球や凝固因子などが分離し、上澄み(血清)が残る。これは血漿からフ

ィブリノゲンをはじめ凝固因子を除いたものに相当する。血漿は、全血液量の約 55%を占

める液体成分で、90%は水からなる。その他にはアルブミンやグロブリン、凝固因子など数

十種類の血漿蛋白質やカルシウムやナトリウムなどの電解質、糖質、アミノ酸、脂質など

が含まれる。

◆造血

循環血中の血液細胞(血球)の寿命は比較的短く、数日から数ヵ月で新しい細胞と交替

する。血球の新生を造血といい、骨髄内の造血幹細胞から分化・成熟して循環血中へ出る。

骨髄は成人で重さ 1,600~3,700g に達し、その約半分が造血を行う赤色骨髄である。そ

の他の部位は脂肪を蓄積した黄色骨髄で、主に体肢骨に分布する。骨髄の造血細胞にはす

べての血液細胞の母細胞である多能性幹細胞がある。多能性幹細胞は自分と同じ細胞を複

製する能力(自己複製能)とすべての血球に分化する能力(多分化能)を兼ね備えている。

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図 1 ヒト造血細胞の分化 CFU-GM:顆粒球およびマクロファージに分化しうる前駆細胞

CFU-EO:好酸球系前駆細胞 CFU-MEGA:巨核球系前駆細胞

BFU-E:前期赤芽球系前駆細胞 CFU-E:後期赤芽球系前駆細胞

(今西二郎:免疫学の入門,金芳堂,2012)

◆血液細胞(血球)の種類

血球は、全血液量の約 45%を占め、赤血球、白血球、血小板からなるが、その大半(99%

以上)は赤血球である。

1.赤血球 erythrocyte (red blood cell;RBC)

直径 7~8μm、厚さ 2μm の両面の中央が凹んだ円板状の形状をする。これは、同じ

容積の球体に比べ表面積が約 1.3 倍と広く、ガス交換を行うには有利である。また、狭い

毛細血管(内径 3~6μm)内でも変形しながら通り抜けることができる。

ヘモグロビン(hemoglobin;Hb)を含むため赤色を示し、成熟赤血球は核をもたず、

細胞質と細胞膜のみからなる。ミトコンドリアももたないため嫌気的解糖による ATP 産

生などでエネルギーを得ている。

骨髄で産生された成熟赤血球は約 120 日間循環系内において肺でヘモグロビン分子に

酸素を結合させ、全身に運搬する。また二酸化炭素(CO2)運搬の仲介を担う。組織から

排出する CO2を取り込み重炭酸イオン(HCO3-)に変換させ、血漿中に移動させる。肺

胞付近になると HCO3-は再び赤血球内で CO2に変換され、肺に運ばれる。

老化赤血球は主に脾臓で破壊される。血液は脾索と呼ばれる細かな網目の中を流れた

のち、脾洞と呼ばれる洞様血管に回収されるが、老化または変形能の低下した赤血球は

脾索の網目を通過できずに破壊し、脾索にあるマクロファージに貪食される。老化赤血

球の処理は肝臓、骨髄などでも行われる。

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赤血球に関する基準値

男性 女性

赤血球数(/μm) 420~570 万/μL 380~550 万/μL

ヘマトクリット(%) 40~50 35~45

ヘモグロビン濃度(g/dL) 14~17 12~15

平均赤血球容積* 85~100 80~100

*平均赤血球容積(MCV)= Ht(%)×10/赤血球数(106/μL)

2.白血球 leukocyte (white blood cell;WBC)

白血球は循環系外に出て働き、血流は移動手段とする。骨髄系とリンパ系(リンパ球)

に大別され、骨髄系には顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)と単球に分けられる。好

中球は食作用を示し、細菌などの病原体を貪食する。好酸球は寄生虫除去作用をもつ他、

アレルギー反応においても関与する。好塩基球は顆粒中にヒスタミンやヘパリンを含み、

IgE 刺激により放出するため、即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)反応に関与する。

(1)顆粒球

顆粒球とは細胞質内に豊富な顆粒*を有する白血球で、好中球、好酸球、好塩基球があ

る。骨髄内で造血幹細胞から、骨髄芽球⇒前骨髄球⇒骨髄球⇒後骨髄球⇒桿状核球⇒分

葉核球の順に分化していく。好中球、好酸球、好塩基球系にそれぞれかなり早い段階で

分化経路が分かれるが、光学顕微鏡で区別がつくのは特殊顆粒が産生される骨髄球以降

である。

* 顆粒:

顆粒球に含まれる顆粒にはアズール顆粒と特殊顆粒がある。

アズール顆粒(一次顆粒):アゾール色素に染まるやや大型で、顆粒球、単球に

共通して存在する。酸性ホスファターゼやミエロペルオキシダーゼを含み、

他の細胞のライソソームに相当する。顆粒の 20%を占める。

特殊顆粒(二次顆粒):アルカリホスファターゼ、ラクトフェリン、リゾチーム

などを含む中好性の小型の顆粒で、顆粒の 80%を占める。May-Giemsa 染色

(メチレンブルー、エオジン、アズール B の混合液)での色調によって顆粒

球が分類される。

①好中球 neutrophil

直径 10~13μm の類円形細胞で、全白血球の 40~70%を占め、核が未熟で棒状の桿状

核球と成熟して細かいくびれのある分葉核球と 2 種類の顆粒(アズール顆粒と特殊顆

粒)をもつ。May-Giemsa 染色による特殊顆粒ピンク(好中性)を示す。

好中球は遊走能をもつ食細胞で、炎症部位に移行するため血管内皮に接着し、毛細血

管内から組織へくぐり抜け(遊出)、炎症部位から放出されるサイトカイン(ケモカイ

ン)、細菌や組織の分解産物、補体の断片などの走化性因子に引き付けられ、細菌など

の異物に向かって移動(走化性)し、細菌などを貪食する。また、炎症時に発熱物質

を放出したり、死滅するとライソソーム様酵素を出して周囲組織を融解、膿を生じる。

高体温は、細菌にとって不利に働き、白血球にとっては活動に有利となる。

好中球は1週間ほどの寿命の大半を脊髄中で過ごし、循環血中に出てから数時間で組

織に移行する。組織に移行した好中球は、細菌を貪食して死滅するか、貪食しなかっ

た場合も 2~3 日でアポトーシスに至り寿命を終える。

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②好酸球 eosinophil

2 分葉核と May-Giemsa 染色(酸性色素であるエオジン)により赤橙色に染まる酸好

性顆粒を特徴とし、好中球に比べてやや大きく直径 10~15μm で、全白血球の 2~4%

を占める。酸好性顆粒は直径 0.6~1.0μm の楕円形で、MBP (major basic protein)、

ECP(eosinophil cationic protein)、EPO(eosinophil peroxidase)、アルギニン、リ

ジンを多く含む塩基性蛋白、ヒスタミナーゼ、LTC4(eukotrieneC4)、PAF(platelet

activating factor)などが含まれる。そのため酸性色素により強く染色される。これら

の顆粒内物質が細胞外に放出される(脱顆粒)ことにより、MBP 、ECP は寄生虫な

どへの細胞毒性を持っており寄生虫除去作用を示すが、正常組織の傷害すなわちアレ

ルギー反応を引き起こすと考えられている。また、LTC4、LTB4、PAF などの脂質メ

ディエーター放出は気道収縮や血管透過性亢進を促し、ヒスタミナーゼは抗ヒスタミ

ン作用を示す。

好酸球はⅠ型アレルギー反応(遅発型反応)*に際して肥満細胞(マスト細胞)や好塩

基球から放出されるヒスタミンなどの好酸球走化因子に誘導されて集まり、アレルギ

ー反応を鎮静化する役割を担う。また、弱いながらも好中球と同様に接着・遊走・貪

食・殺菌などの作用も示す。

* Ⅰ型アレルギーでは、肥満細胞が主体となる短時間の反応(即時型反応)の後

に、好酸球が主体となる遅発型反応が起こることがある。

③好塩基球 basophil

好中球とほぼ同じか、やや小さく直径 9~12μm で、白血球の 0~2%と も少なく塩

基性色素により暗紫色に染まる大型の顆粒(好塩基性顆粒)をもつ。顆粒はヒスタミ

ン、ヘパリンを含み顆粒が充満し、核が見えにくい。

好塩基球は貪食能をもたず、IgE などに対するレセプターをもち、細胞表面の受容体に

抗原が結合すると、脱顆粒を起こし、血管透過性亢進や平滑筋収縮などを伴う即時型

アレルギーを引き起こす。

(2)単球 monocyte

直径 10~15μm の類円形を示し、白血球の中で も大きい。末梢白血球の 3~6%を占

め、好中球の数倍といわれる貪食能と数ヵ月に及ぶ長い寿命を特徴とする。不定形で、

腎臓形、馬蹄形の核で、微細な紫色のアズール顆粒をもつ。

単球は骨髄から末梢血に入って 1~2日循環するが、炎症などがあると血管外へ遊出し、

不正形の成熟したマクロファージ(MΦ)に分化する。単球から分化したマクロファージ

はそれぞれの組織に適応し、様々な形の細胞に姿を変え、特有の名称で呼ばれ、固有の

機能をもつ。マクロファージは強い貪食能・殺菌、異物細胞の処理、外来性の抗原の提

示、抗腫瘍作用、サイトカイン産生の役割を示す。

<マクロファージの各組織における名称>

・皮膚 ⇒ランゲルハンス細胞 ・骨 ⇒破骨細胞

・肝臓 ⇒クッパー細胞 ・中枢神経 ⇒ミクログリア

・リンパ節 ⇒マクロファージ、樹状細胞 ・肺 ⇒肺胞マクロファージ

・脾臓 ⇒赤脾臓マクロファージ ・炎症巣 ⇒多核巨細胞

(3)リンパ球

骨髄中の多機能性幹細胞から分化して、直径 6μm ほどの小リンパ球と 10μm を超え

る大リンパ球(末梢リンパ球の約 3%)がある。小リンパ球の細胞質は少なく、核のまわ

りを縁取るように存在し、核は丸く、切れ込みをみることもある。

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リンパ球は機能や細胞表面マーカーの違いから獲得免疫に寄与する B 細胞、T 細胞と

自然免疫に寄与する NK 細胞に大別されるが、形態状の区別は難しく、特に活性化前の B

細胞、T 細胞は小リンパ球として存在し、抗原との接触で活性化して形態が大きく変化す

る(芽球化)。

* 自然免疫と獲得免疫:

免疫機構は、自然免疫がまずその防御(一次防御)に働くが、異物が侵入する

と引き続き獲得免疫が働くが、作用の発現には数日を要する。

自然免疫 獲得免疫

免疫機構

第 1 段階:体表面での侵入を防ぐ

(バリアー)

第 2 段階:食作用→排除機構(炎

症反応)

細胞性免疫:食作用、抗原排除

体液性免疫:特異的な抗原認識

→抗体反応→破壊

免疫記憶

担当細胞

第 1 段階:皮膚、粘膜、酵素、胃

液、常在細菌 MΦ⇒T 細胞

へ抗原提示

T 細胞:抗原排除

B 細胞:抗体産生、記憶 第 2 段階:好中球、MΦ、NK 細胞

作用の発現 早い(即時的)

遅い(数日後)

免疫的 非特異的 特異的

特異性 非自己と認識したものに無差別

に反応 ←活性化

特定の非自己(特異的抗原)を標

的に反応

対象 細菌:好中球、MΦ

ウイルス:NK 細胞 自然免疫を突破したもの

免疫記録 × ○

①B 細胞

骨髄の造血幹細胞で未熟 B 細胞が形成され、これが末梢リンパ組織(リンパ節、脾臓、

消化管粘膜関連リンパ組織など)に移行(ナイーブ B 細胞)して、さらに各種の抗体

産生細胞に分化し、血液によって組織間を移動している。その後、抗原刺激とヘルパ

ーT 細胞(Th2)からの刺激を受けて活性化し、形質細胞(抗体産生細胞)となる。形

質細胞は粗面小胞体が著しく発達し、個々で抗体(IgM→IgD→IgG、IgA、IgE)を合

成して細胞外に分泌する。個々の B 細胞は、それぞれ異なった受容体をもっている。

また、活性化 B 細胞の一部はメモリーB 細胞(抗原記憶)となって休止状態に入り、

再び抗原に遭遇すると急速に増殖し、免疫応答に働く。

②T 細胞

NK 細胞と共通の骨髄内の前駆細胞から発生し、骨髄から胸腺に移行したものは、主に

細胞表面マーカー*CD4 のヘルパーT 細胞(産生するサイトカインにより Th1 と Th2

に分けられる)と CD8 の細胞傷害性 T 細胞(CTL、キラーT 細胞)に分化する。成熟

した T 細胞はどちらも CD3 でリンパ節、末梢組織に分布する。

* 細胞表面マーカー:

細胞の表面に存在している特異的なマーカー(抗原)を細胞表面マーカーとい

う。国際統一名で決められて、CD(cluster of differentiation)番号で表記さ

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れる。細胞表面マーカーにより、形態学的に区別できないリンパ球を判別する

ことが可能でもあり、造血器腫瘍の判断では細胞表面マーカーを用いて腫瘍細

胞の起源を知ることに役立つ。

③NK 細胞(ナチュラルキラー細胞)

NK 細胞は T 細胞と共通の前駆細胞から発生し、骨髄内で成熟し、末梢組織に分布す

る。自然免疫に関与し、ウイルス感染細胞やがん細胞を傷害する細胞で、T 細胞に特異

的なマーカー(TCR、CD3、CD8)や抗原を認識する受容体ももたないため、キラーT

細胞とは異なるメカニズムで標的細胞を識別して直接攻撃する。

④NKT 細胞

NK 細胞特有の細胞表面マーカーをもった T 細胞が同定された。サイトカインの一種

である IL-4 を大量に産生する能力をもち、Th1 と Th2 細胞の分化制御や免疫応答制御

などに関与していると考えられている。

3.血小板 platelet

骨髄巨核球の細胞質の一部がちぎれて血中に

出てきたもので、通常約 10 日間全身を循環した

のち赤碑髄で破壊される。

血小板は、直径 2~4μm の円板形で、その形

態は細胞膜直下を走る微小管によって保たれて

いるが、活性化すると球状に変え、偽足(突起)

を出す。細胞膜はところどころで内部に深く落

ちくぼんで、開放小管系をなす。核をもたず、

α顆粒*と濃染顆粒(セロトニン、ADP、ATP、

Ca2+などを含む)という血小板特有の細胞内顆

粒をもつ。また、血小板はミトコンドリアと酵

素系を備えており、グリコーゲンを原料として ADP、ATP を産生している。

血小板の役割は、損傷した血管の修復・止血である。

健常者の末梢血には約 15~40 万/μL が存在するが、15 万/μL 未満の状態を血小板減少

症といい、3 万/μL 未満になると自然出血が起きやすくなる。 初にあらわれる自然出

白血球 マーカー

B 細胞 CD10 CD19 CD20 CD22

T 細胞全般 CD2 CD3 CD5 CD7

ヘルパーT 細胞 CD4

細胞傷害性 T 細胞 CD8

NK 細胞 CD16 CD56

顆粒球 CD13 CD33

単球 CD14

マクロファージ CD68 CD163

Langerhans 細胞 CD1a

巨核球 CD41 CD42 CD61

造血幹細胞 CD34

図 2 血小板の構造 9)

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血は、紫斑と呼ばれる皮下出血が多く、次いで粘膜出血などが起きやすい。

* α顆粒:

血小板のα顆粒内に von Willebrand 因子(vWF)、血小板第 4 因子、血小板由来成

長因子(PDGF)、トロンボスポンジン、フィブロネクチン、フィブリノゲンなどが

含まれる。

・血小板由来成長因子(PDGF):

主に間葉系細胞の遊走および増殖などの調節に関与する増殖因子であり、主に巨核

球によって産生されるほか、血小板顆粒中に存在し、凝集時に血漿中へ放出される。

血小板以外にマクロファージ、平滑筋細胞、腎のメサンギウム細胞、内皮細胞など、

多くの細胞において産生される。

・トロンボスポンジン:

α顆粒中に大量に含まれる蛋白質で、トロンビンの刺激により放出され、血小板凝

集、血栓強固化をサポートする。

・血小板第 4 因子:

巨核球でのみ産生されα顆粒内に蓄積される、強いヘパリン中和作用を有している

塩基性蛋白質で、血中半減期は約 2 分と非常に短い。血小板活性化に伴い血中に放

出されるため、血中の値は血小板活性の指標とされるが、内皮細胞表面のヘパリン

様物質に吸着されるため血中濃度の上昇は大きくない。

・von Willebrand 因子(vWF):

血管内皮細胞、巨核球で産生され、血漿、血管内皮や組織、血小板に存在する。血

管が傷害され出血を来したときに、傷害された血管内皮の下に存在するコラーゲン

に結合する。結合した vWF に対して血小板が接着し、血小板は ADP などの伝達物

質を放出する。さらなる血小板を接着させることで、血小板血栓を形成する(一次

止血)。また凝固第Ⅷ因子へ結合し、内因系凝固因子のひとつとしても機能する。

・フィブロネクチン:

高分子の糖蛋白質であり細胞外マトリックスのひとつ。細胞膜上の受容体蛋白質で

あるインテグリンと結合し、コラーゲン、フィブリン、ヘパラン硫酸プロテオグリ

カンなどの細胞外マトリックスとも結合する。 細胞外マトリックスと細胞を接着、

成長、遊走、分化、移動に関与し、創傷治癒や胚発生のような過程において重要な

存在である。

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血液細胞(血球)の種類

分類 形態 特徴 機能

赤血球

・中央が凹んだ円板状

・凹みは直径の 1/3 以内

・直径 7~8μm

・厚さ 2μm

・赤色(ヘモグロビンを含む)

・核をもたない

・変形しながら毛細血管を通り抜

ける

・寿命は約 120 日

・赤血球数:男性 420~570 万/μL

女性 380~550 万/μL

・肺においてヘモグロビン分子に O2 を

結合させ、全身に運搬

・組織から排出する CO2 を肺に運搬

白血球

顆粒球

好中球

分葉核球

・直径 10~13μm

・核は成熟し分葉し、核の間は

核糸で連結(凝集状)

・寿命は 2~3 日

・白血球の 25~70%

*白血球数 4000~9000/μL

好中球は白血球の 40~70%

・接着能

・遊走能

・貧食能

・殺菌能

桿状核球

・直径 10~13μm

・核が完全に分葉せず、桿状

・核の最小幅が最大幅の 1/3

以上を示し、核糸がない

・桿状核球が成熟し分葉核球と

なる

・白血球の 0~15%

好酸球

・好中球に比べてやや大きい

・直径 10~15μm

・核は通常 2 葉に分葉し、細い

クロマチン糸で連結

・白血球の 2~4%

・エオジン親和性の赤橙色に染

まる均質・粗大な顆粒(好酸性顆

粒)をもつ

・消化管や起動などの粘膜に多く存在

・寄生虫の除去

・アレルギー反応の制御

好塩基

・直径 9~12μm で好中球とほ

ぼ同じか、やや小さい・顆粒が

充満し、核が見えにくい

・白血球の 0~2%

・塩基性色素により暗紫色に染ま

る大型の顆粒(ヒスタミン、ヘパリ

ン)をもつ

・肥満細胞と同じく、IgE を介してヒスタ

ミンを放出し、即時型 I 型アレルギー

反応を引き起こす

単球

・白血球の中で最も大きい

・直径 10~15μm

・顆粒は小さく、少ない

・核は不定形で、腎臓形、馬蹄

形を示す

・白血球の 3~6%

・細かな紫色の顆粒をもつ

・食作用

・マクロファージ(大食細胞)への分化

・殺菌

・抗原提示

・抗腫瘍作用

・サイトカイン産生

リンパ球

・直径6μm程の小型と10~15

μm を超える大型(末梢リンパ

球の約 3%)のものがある

・核は丸く、切れ込みをみるこ

ともある

・好中球は白血球の 25~40%

・機能や細胞表面マーカーにより

に B 細胞、T 細胞、NK 細胞に分

けられる

免疫応答

・B 細胞:抗原をキャッチ

・T 細胞:MHC 分子に結合した抗原断

片をキャッチ

血小板

・直径 2~4μm

・大きさは赤血球の 1/3

・円板形

・核をもたず、活性化すると偽足

(突起)を出す

・寿命は約 10 日

・血小板数 15~40 万/μL

・止血と血液凝固:一次止血、活性化

血小板は一連の血液凝固過程を促進

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◆止血の機序

血液は、正常な血管内では円滑な血流を保つために血管内皮細胞により、血小板機能や

凝固系などの血栓形成作用は抑制され、血栓ができないように血栓形成作用と抗血栓形成

作用の相反する作用がバランスを保っている。しかし、血管が損傷を受けて出血すると血

管内皮細胞は、血小板機能や凝固系などの血栓形成作用を促進し、同時に線溶系などの抗

血栓形成作用は抑制され、損傷部分に血栓が形成され止血される。止血に至る止血機構は、

血管収縮、血小板が関与する一次血栓(止血)と凝固因子が関与する二次血栓(止血)に

分けられる。血栓による止血後、血管壁細胞が増殖し血管が修復される。血管修復後は、

プラスミンによる線溶系が血栓を溶かし、血液流動性が維持される。

1.損傷血管の収縮

血管壁が傷つけられると、疼痛刺激やトロンボキサン A2(TXA2)、エンドセリンの作用

により出血部位の細動脈が収縮する。収縮は一時的ではあるが、出血量を 小限に食い止

めるとともに、血流速度が遅くなるために血小板の粘着・凝集が起こりやすくなる。

2.血小板血栓の形成(一次止血)

一次止血は、血小板の①粘着、②顆粒放出、③凝集という機能で行われる。

①血小板粘着

血管壁が損傷し内皮下の結合組織が露出すると、血小板は、血漿蛋白質である von

Willebrand 因子(vWF)を介して血管壁のコラーゲンに粘着する。vWF は、血小板膜

に存在する vWF に対する受容体の Gp Ib-V-Ⅸと呼ばれる糖蛋白質複合体に結合し、コ

ラーゲンとの間を架橋する。

②血小板顆粒放出反応

血管損傷部位に粘着した血小板は、コラーゲン、vWF 等により活性化され、静止時の円

板状から球状に変えるとともに偽足を出して移動し、互いに密着する。

活性化された血小板からは開放小管系を介する Ca2+流入や、貯蔵 Ca2+の放出が起こり、

細胞内 Ca2+が上昇する。その結果、脱顆粒が起こり、濃染顆粒(密顆粒)のアデノシン

二リン酸(ADP)やセロトニンが細胞外に放出され、さらに細胞内のホスホリパーゼ A2

(PLA2)が活性化される。ADP はさらに血小板を活性化する。また、活性化された PLA2

は細胞膜リン脂質からアラキドン酸を遊離する。アラキドン酸は血小板シクロオキシゲ

ナーゼ(COX)によって TXA2に変換されて細胞外に放出される。TXA2はさらに血小板

内の顆粒放出反応を刺激し、血小板活性化および血管収縮作用を発揮する。

③血小板凝集

ADP は血小板凝集を仲介するうえで特に重要で、血小板を粘着質にし、互いに付着させ

る。ADP 受容体の活性化が、血小板形態の変化と血小板の膜上糖蛋白である GPⅡb/Ⅲa

発現を促進する。血小板が活性化されると Ca2+の働きで GPⅡb/Ⅲa は複合体を形成し、

そこにフィブリノゲンが結合することで血小板同士が互いに凝集し、血栓を形成する。

この血小板凝集は可逆的である。また、ADP は血小板凝集がある状態でのみ顆粒分泌を

誘発する。

TXA2は、血小板膜中の G 蛋白質共役型の TXA2受容体の刺激を通じて血小板の凝集を促

進する。α-顆粒から放出されるフィブロネクチン、トロンボスポンジン、血小板第 4 因

子も凝集を促進する。こうしてできた血小板血栓を一次血栓という。

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■正常な血管内では血小板凝集は起こらない

血小板の表面は糖蛋白質で覆われ、一方血管内皮細胞は陰性荷電を帯びているため両者

はくっつかず、血管内皮が損傷しない限り、血小板の粘着と活性化が起こらないようにな

っている。

また、内皮細胞の産生する NO(一酸化窒素)やプロスタングランジン I2(PGI2)は血

小板の活性を抑制する。内皮細胞 PGI2と血小板 TXA2はいずれもアラキドン酸の代謝物で

あり、正常では両者の生産量のバランスが保たれている。この他に血管内皮細胞内にある

ADPase が血小板から放出される ADP を分解して血小板凝集を抑制している。

図 3 アラキドン酸の代謝経路

(日本緩和医療学会:「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2010 年版」より)

3.凝固因子による二次止血

血小板による一次血栓の形成と同時に進められ、一次血栓の周りをフィブリン網によっ

て強固にすることで、止血栓として完成させる反応で、血液凝固あるいは凝固という。こ

の血中のフィブリノゲンをフィブリンに変換する反応を促進する物質を凝固因子といい、

Ca 以外は血漿蛋白質であり、第Ⅲ、Ⅷ因子および vWF を除き肝細胞で合成される。さら

に、そのいくつかは合成にビタミン K を必要とする。

血液凝固カスケードは一続きの酵素反応で、連鎖反応で次々と活性化され、凝固反応が

進行していく(血液凝固カスケード)。反応の中心的役割を担うのは第Ⅱ因子(プロトロン

ビン)が活性化されたトロンビンである。Ca2+は多くの段階で補助因子として働く。活性

化した凝固因子はローマ数字の横に“a”を付けてあらわす。

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◇ビタミン K 依存因子:

肝臓で第Ⅱ、Ⅸ、Ⅶ、Ⅹ因子を産生する際にはビタミン K が必要であり、ビタミン K

が欠乏するとこれらの因子の再生が低下して凝固時間が延長する。

図 4 血液凝固カスケード

①第Ⅹ因子(factor Ⅹ;FⅩ)の活性化

凝固反応は、内因性の経路、外因性の経路があり、 終的には共通の経路を介してフィ

ブリン形成をもたらす。内因系では、露出したコラーゲンに血中の凝固因子が触れるこ

とで反応が開始される。外因系は血管損傷組織から放出された組織トロンボプラスチン

(第Ⅲ因子)が反応開始の引き金となり、活性化された内皮細胞、活性化された白血球、

内皮下の血管平滑筋細胞、繊維芽細胞を含むいくつかの異なる細胞型上の組織因子(TF)

の発現によって進行していく。血管損傷組織から放出された組織トロンボプラスチンが

第Ⅶ因子と複合体を形成し、第Ⅸ因子を活性型に変換する。また、第Ⅸ因子もⅦa により

直接活性型に変換され、Ⅸa はⅧa を補因子として第Ⅹ因子をⅩa に活性化させる。

②プロトロンビンからトロンビンへの変換

第ⅩaはⅤaを補因子としてプロトロンビン(第Ⅱ因子)を活性型トロンビンに変換する。

このいずれの反応も陰性荷電したリン脂質二重層(特にホスファチジルセリン)におけ

る Ca2+の存在下で血小板の表面で進行する。α-顆粒から放出された血小板第 4 因子は、

ヘパリンを中和することによりトロンビン活性を保つ。

③フィブリノゲンからフィブリン

フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は分子量 34 万の大きな糖蛋白質でトロンビンはフィブリノ

ゲン分解酵素としてフィブリノゲンを加水分解してフィブリンモノマーを生成する。こ

のフィブリンモノマーは速やかに重合して鎖状のポリマーとなる。さらにトロンビンよ

り活性化された第ⅩⅢ因子がフィブリモノマー間に架橋結合を形成し、安定化したフィ

ブリン網に赤血球が絡み合い、血餅が出来上がる。この反応には Ca2+が必要とされる。

2~3 分後、血小板が収縮するために血餅が縮み、傷口を引き寄せて二次止血が完了する。

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■正常な血管内では血液凝固は起こらない

凝固反応で生成されたトロンビンは、その大半がフィブリンに吸着され正常な血管に血

栓が形成されることはない。また、凝固カスケードは多くの凝固阻害因子により制御され

ており、凝固は損傷部位のみで局所的に生じる。凝固阻害因子であるアンチトロンビン(AT)

は血管内皮細胞上のヘパリンに結合することで活性化し、トロンビンや第Ⅸa~Ⅻa 因子な

どの凝固因子と結合して反応を阻害する。

さらに、血管内皮細胞から突き出た膜蛋白質トロンボモジュリン(TM)はトロンビンを

吸着するだけでなく複合体を形成し、ビタミン K 依存の抗凝固物質であるプロテイン C

(PC)を活性化させる。この活性化プロテイン C(aPC)はプロテイン S を補酵素として

第Ⅴa、Ⅷa 因子を分解し不活性化させる。このように正常血管内で血管凝固を防ぐ機構を

凝固阻止という。

血液凝固因子

因子

番号 慣用名 血漿含有 活性体 活性体の主な機能

合成場所/

ビタミン K 依存性

Ⅰ フィブリノゲン 200~400mg/dL フィブリン ゲル形成 肝臓

Ⅱ プロトロンビン 100~150μg/mL トロンビン プロテアーゼ(基質:Ⅰ,Ⅴ,

Ⅶ,Ⅷ,Ⅻ) 肝臓/依存

Ⅲ 組織トロンボプラスチン

(組織因子;TF)

脳、肺、胎盤に多

い リボ蛋白質

外因性凝固の開始(Ⅶa,

Ca2+と複合体形成)

マクロファージ、内

皮細胞

Ⅳ カルシウム Ca2+ 補助因子

Ⅴ 不安定因子

(AC グロブリン) 50~100μg/mL Ⅴa Ⅹa の補助因子 肝臓、骨髄巨核球

Ⅵ 欠番

Ⅶ 安定因子

(プロコンバーチン) 400ng/mL Ⅶa プロテアーゼ(基質:Ⅹ) 肝臓/依存

Ⅷ 抗血友病因子(AHF) 100~200ng/mL Ⅷa Ⅸa の補助因子〔血友病 A〕 血漿中で vWF と複

合体形成

Ⅸ Christmas 因子 3~5μg/mL Ⅸa プロテアーゼ(基質:Ⅹ)

〔血友病 B〕 肝臓/依存

Ⅹ Stuart 因子 5~10μg/mL Ⅹa プロテアーゼ(基質:Ⅱ,Ⅴ,

Ⅶ) 肝臓/依存

Ⅺ 血漿トロンボプラスチン

前駆物質(PTA) 6μg/mL Ⅺa プロテアーゼ(基質:Ⅸ) 肝臓

Ⅻ Hageman 因子 20~30μg/mL Ⅻa プロテアーゼ(基質:Ⅶ,Ⅺ,

プレカリクレイン) 肝臓

ⅩⅢ フィブリン安定因子 10~20μg/mL ⅩⅢa トランスグルタミナーゼ(基

質:フィブリン) 肝臓

なし プレカリクレイン 50μg/mL カリクレイン プロテアーゼ(基質:Ⅻ,高

分子キニノゲン) 肝臓

なし 高分子キニノゲン 70μg/mL ブラジキニン Ⅶa の補助因子 肝臓

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4.線溶系(線溶カスケード)

線溶系とは凝固によって生じたフィブリノゲンやフィブリンを分解し、止血の役目を終

えた血餅を徐々に溶解するしくみである。

プラスミンの前駆体であるプラスミノゲンは肝臓で合成され、血餅中に取り込まれたプ

ラスミノゲンは、血管内皮細胞が産生する組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)*によ

ってプラスミンに変換され、フィブリンを分解するのでこの反応をフィブリン溶解(二次

線溶)という。プラスミンは血栓形成の部位に限定され、血栓のない状態では血液中にほ

とんど存在せず、二次線溶反応は起こらない。また、病的要因などの特殊な線溶反応とし

て血栓のない状態でも、プラスミノゲンの活性化がフィブリンの関与無しで進行し、生じ

たプラスミンが凝固前のフィブリノゲンを分解する一次線溶反応がある。血栓溶解のため

の二次線溶は生体の重要な反応であるが、循環血液中のフィブリノゲンを分解する一次線

溶は生体にとって悪影響を及ぼす。そのため生体内では線溶促進因子と制御因子の巧みな

バランスのもと二次線溶は効率よく進み、逆に一次線溶は強力に制御されている。

プラスミンはフィブリンだけでなく、フィブリノゲンや他の凝固因子も分解しフィブリ

ノゲン/フィブリン分解産物(FDP)を生成しながら血栓を溶かしていく。FDP は一次線溶

(フィブリノゲン分解産物)と二次線溶(フィブリン分解産物)を合わせた総称である。

血液中に放出された t-PA は、そのほとんどがプラスミノゲンアクチベーターインヒビタ

(PAI)による阻害を受け、肝臓で半減期 6 分という短時間で除去される。そのため循環血

液中における t-PA によるプラスミノゲン(PLG)のプラスミンへの活性化はほとんど起き

ず、わずかに生じたプラスミンもプラスミンインヒビター(PI)により強力な阻害を受け

速やかに失活する。フィブリン血栓に入り込んだ PI は、プラスミン活性をマイルドに抑制

し、目的とする止血機構が完了するまで血栓が溶解し過ぎて出血をきたさないように働い

ている。血栓の溶解が早すぎると出血するし、遅いと末梢の循環不全や梗塞につながる。

また、肝臓で産生され、血中に存在する線溶阻害因子のα2-プラスミンインヒビター

(α2-PI)もプラスミンが血栓部位に限局して活性が発揮されるように、プラスミンを阻害

するが、血栓内では、プラスミンとα2-PI の結合部位をフィブリンが塞いでいるため、α2-PI

はプラスミンを阻害することができない。

*プラスミノゲン活性化因子(PA):

プラスミノゲンをプラスミンへ変換(活性化)する分子。組織型(tissue type, tPA)

とウロキナーゼ型(urokinase type, uPA)の 2 種類の分子がある。いずれもセリン蛋

白質分解酵素で、プラスミノゲンの 561 番アルギニン残基と 562 番バリン残基の間の

ペプチド結合のみを特異的に切断する。プラスミノゲンはこのペプチド結合が切断さ

れると高次構造が変化し、酵素活性が発現した分子であるプラスミンとなる。組織型

プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)はウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベー

ター(u-PA)よりもフィブリンへの親和性が高く、血栓溶解反応でのプラスミノゲン

の活性化は組織型が、細胞の移動など組織線溶反応でのプラスミノゲンの活性化はウ

ロキナーゼ型が行うと考えられている。 (医学書院 医学大辞典 第 2 版より)

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図 5 線溶機構に関わる因子 (北島 勲:凝固・線溶と臨床検査,血栓止血誌 19(4) : 462~466, 2008)

◆凝固・線溶系の生理的変動

凝固・線溶系は、年齢、性差、日内変動など多様な生理的因子の影響を受けて変動する。

1.日内変動

午前中は血小板凝集能および凝固活性が更新し、逆に線溶活性が低下するため、血栓症

のリスクが高いことが知られている。

①血小板

血小板凝集能は午前中に高く、午後に低下する。メカニズムについては不明な点が多い

が、 も有力な理由として、起床後の活動量の増加に伴うカテコールアミン類(アドレ

ナリン)の血中濃度の急激な上昇による血小板凝集能の増加が考えられる。

②凝固系

ヒトでは午前中に凝固因子の増加や凝固反応の活性化が起こることを示す報告がある。

また、凝固抑制因子のうちプロテイン C、プロテイン S、アンチトロンビン外因系凝固イ

ンヒビター(TFPI)などは日内変動を示すことが報告されているが、血小板凝集能の変

動に付随した変動であるとの考えもある。

③線溶系因子

血栓は午前中に溶けにくく、午後には溶けやすいことは知られている。プラスミノゲン

やα2-PI など血中濃度の高い主要な線溶因子は日内変動を示さないことから原因は不明

であった。しかし、t-PA の血中濃度は午前中に高く、午後に低下する。その後、血中 PAI-1

値も早朝に高く、日中から夕方にかけて低下することが報告されている。

PAI-1 は t-PA の阻害蛋白質であるが、PAI-1 は正常血漿中に t-PA よりも大量に存在(約

10ng/mL)し、生成された t-PA と速やかに結合して阻害することで、プラスミンの生成

が抑制され線溶反応が起こらない。

t-PA の多くは不活性型の t-PA-PAI-1 複合体として存在するため PAI-1 が多い午前中は

複合体も同じく高値を示すが、t-PA 活性と線溶活性は低下する。

■時計遺伝子と遺伝子発現の制御機構

内分泌系および循環器系に関わる多くの因子は、遺伝子発現が日内変動する。哺乳類

における概日リズムの中枢は、視交叉上核 (suprachiasmatic nucleus: SCN) に存在す

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ることが明らかになっており、時計遺伝子間での転写調節を介したフィードバックルー

プモデルが提唱されている。SCN は脳内だけでなく、心臓や肝臓、腎臓、骨格筋、血管

内皮細胞に至るまで、ほとんどの組織で発現している。体内時計の振動体を構成する重

要な遺伝子としては、転写を活性化する正の制御因子 Clock、Bmal1 と正の制御因子の

転写活性を阻害することで、自身の発現を抑制する負の制御因子 Period (Per1、Per2、Per3)、Cryptochrome(Cry1、Cry2)などがある。Per1、Per2 は光刺激によっても誘

導される。BMAL1-CLOCK ヘテロダイマーが、負の制御因子の遺伝子上に存在する

E-box (CACGTG)の特定の塩基配列に結合することにより転写促進因子として働き、

period、vasopressin、DPB などの発現・転写を促進する。生じた PER1、PER2、PER3、

CRY1、CRY2、CKI、DEC1、DEC2 などの各蛋白の複合体が抑制因子として働き、転

写促進因子である BMAL1-CLOCK ヘテロダイマーを抑制し、自らの転写活性を抑制す

る。この転写、翻訳の周期が約 24 時間であり、体内時計の概日リズムを規定する。なお、

イタリック表記の Clock、Cry は遺伝子を示し、大文字の CLOCK、CRY などはそれら

の遺伝子産物を示す。

2.加齢による変動

心筋梗塞の発症は男性では加齢とともに増え、女性は若年期の発症は少ないが、更年期

以降は男性並みに増える。

①血小板

加齢に伴って出血時間が短縮し、凝集能は増強する。女性では閉経後は男性と同様に凝

集能が増加するという報告がある。血球成分が高齢者で減少するのに対して、血小板数

は年齢による変動は認められない。

②凝固系

凝固因子のなかで、フィブリノゲンや高分子キリノゲン、vWF は加齢とともに血中濃度

が上昇し、アンチトロンビン、プロテイン C、プロテイン S という主要な抗凝固因子の

活性は、男性では 40歳代をピークとして加齢とともに低下し、結果的に易血栓性に傾く。

③線溶系因子

線溶活性は、男性では加齢とともに低下する。女性は更年期まで高い活性が維持され、

更年期以降に男性と同様に低下する。これは PAI-1 の血中濃度の変動と一致する。PAI-1

の増加は、血栓症のリスクを高めることになる。

3.生活習慣による変動

適量のアルコール摂取は心血管イベントの発症を低下させるが、過剰摂取では逆に PAI-1

増加に伴う線溶活性の低下も報告されている。

喫煙は、全身性の酸化ストレスを増加させ、炎症反応を引き起こすことが知られている。

喫煙によりⅦa、フィブリノゲン、PAI-1 の血中濃度が高まり、血管壁は、酸化ストレスに

よる内皮傷害のために抗血栓性機能が失われる。血流においては、ニコチンあるいは NO

と PGI2の産生抑制を介する血管収縮のため、易血栓性に相乗的に寄与する。

精神的ストレスは心血管イベントを増加させ、過激な短時間な運動は、フィブリノゲン

量が増加するために凝固能が亢進し、血小板凝集能も増加する。また、線溶活性の増強は

極めて短時間で消失し、易血栓性のみ遷延して残るため、血栓症リスクの回避につながら

ない。

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◆血栓の病態

血栓とは血管内で形成される凝血塊のことで、2 種類の動脈血栓(白色血栓)と静脈血栓

(赤色血栓)がある。

①動脈血栓(白色血栓)

成因:動脈硬化、脂質異常症、高血圧などにより血管内皮の障害部位(アテローム)に

血小板が凝集し、さらにフィブリン形成が誘発され、白色血栓が形成される。

疾患:血栓性の脳梗塞、心筋梗塞

②静脈血栓(赤色血栓)

成因:血液の停滞、静脈内皮膚障害、血液凝固の亢進

血液成分の粘稠度の増大により形成される。

疾患:静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症、腹部静脈血栓症)

◆血栓症の発症機序

血栓症とは、何らかの要因により血栓が過剰に産生されると血管閉塞をきたし、末梢へ

の血流が途絶することにより発症する。血管を閉塞する因子を塞栓といい、その病態を塞

栓症という。

19 世紀の病理学者 Virchow は、病的血栓の形成には、1)血管壁の性状変化、2)血流の

変化、3)血液成分の変化 という 3 つの徴候が関与するという概念を提唱し、現在も静脈

血栓症の 3 大誘発因子として支持されている。

1.血管壁の性状変化

正常な血管内皮細胞は血流を維持するために様々な機能を有している。血小板や凝固系

の活性化を抑制して血栓形成を防止したり、血栓が形成された場合はこれを線溶活性によ

り積極的に溶解する。しかし、アテローム性動脈硬化病変部位や炎症部位ではこれらの機

能が低下し、逆に外因系凝固カスケードの開始因子である組織因子(TF)の発現が高まり、

血栓が形成されやすくなる。

通常、TF は血管損傷で血液が流出した際に、細胞免疫応答や炎症反応に伴うエンドトキ

シン、炎症性サイトカインなどの細胞刺激により血管外組織血管壁の外膜で発現し、血液

中の第Ⅶ因子や活性化したⅦa が結合することで血栓形成が開始される。

2.血流の変化

手術や長期臥床、長時間の同一姿勢、妊娠時の子宮や腫瘤などによる圧迫などにより、

血流速度が低下または血流が停滞する。血流速度が低下すると血液粘度が増し、赤血球が

コインを積み重ねたような状態(連銭形成)となる。また、活性化凝固因子が拡散するこ

とができなくなり、凝固カスケードが進行する。

◇エコノミークラス症候群

長時間の飛行機旅行などでの四肢、躯体の可動制限と下肢を下げた状態による血流停滞、

脱水などによる血液粘度の上昇が主な要因である。

3.血液成分の変化

血液中の凝固抑制因子の先天性分子異常が血栓形成につながる要因となる。また、炎症

に伴う凝固因子の増加、線維阻害因子の増加、脱水による血液粘度の上昇など後天的な異

常に伴う血液成分の変化も血栓症の要因となる。

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①遺伝性素因

日本では、アンチトロンビン、プロテイン C、プロテイン S などの抗凝固因子の異常に

よる血栓症が知られている。いずれも静脈血栓症を発症して発見される場合が多い。中

高年以降に加齢に伴い他の後天性素因と相乗効果で発症に至ると考えられる。

②後天性素因

感染、炎症、手術侵襲、がん、生活習慣病などの各病態、加齢により血栓傾向が増強す

ることが知られている。また、肥満、高脂血症においてもフィブリン形成能の増加によ

り血液粘度が高まる。脱水時にはヘマトクリットと血漿蛋白濃度が上昇し、血栓リスク

が高まる。

◆血栓症と基礎疾患

他の疾患が血栓症の原因ともなり得る。

1.悪性新生物

前骨髄球性白血病(APL)細胞や胃がん細胞などは組織因子(TF)を高発現あるいは放

出し、播種性血管内凝固症候群(DIC)や静脈血栓閉塞症(VTE)などを引き起こす。ま

た、がん細胞あるいはその周囲細胞から分泌されるサイトカインなどが、単球や血管内皮

細胞などの TF 産生を促進して血栓症の原因となる。

止血系の活性化機序 22)

活性化因子 病態、病因、疾患

血液成分

漿

外因系 TF 発現の増加・放出 腫瘍性、感染症、妊娠(胎盤)、動脈硬化

内因系 外因系からの活性化、血管壁の

異常、血流うっ滞、微量のⅡa

Ⅶa により FⅩや FⅨ活性化、動脈硬化、

ケモカイン、活性化白血球、微量のⅡa

からの活性化

線溶系 PAI-1 の増加 感染症、脂質異常

血小板

ADAMTS13 異常、血管内皮細胞

障害、種々の血小板凝集惹起物

質、抗体

TMA、HIT、DIC、動脈硬化性血栓性疾患

白血球 細胞毒素、サイトカイン 感染症、炎症性疾患、がん

血管壁 瘤、動脈硬化、物理的/化学的内

皮障害

大動脈瘤、アテロームなどの動脈硬化、

血管腫

血流 うっ滞、乱流 心房細動、長期臥床、長時間旅行

TMA:血栓性微小血管障害 HIT:ヘパリン起因性血小板減少症 DIC:播種性血管内凝固

ADAMTS-13:フォンウィルブランド因子(VWF)切断酵素

2.感染症・炎症

外因系凝固カスケードの開始因子である TF は、通常は血液が触れる部位にはほとんど発

現しないが、炎症などの発症で白血球や血管内皮細胞を刺激して、TF やサイトカインなど

を産生・放出させ、外因系の活性化による血栓症につながる。

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3.メタボリックシンドローム

脂肪組織で産生される、線溶活性を調整する PAI-1 が脂肪蓄積に伴って増加する。また、

肥満症例では、脂肪組織による直接的な血管の圧迫も血栓症発症の原因となる。血中アデ

ィポネクチン濃度が健常人よりも低下していることも易血栓性に寄与する。

4.動脈硬化

高コレステロール血症では、マクロファージが変性コレステロールを貪食して泡沫化し、

TF やサイトカインなどを産生・放出させ、単球や血管内皮細胞を刺激する。さらに TF 産

生を促すとともに平滑筋細胞などを遊走させアテロームを形成する。

5.妊娠

妊娠中には深部静脈血栓症の発症リスクが増大する。若年者より高齢の妊婦、帝王切開、

右脚より左脚に多い。妊娠に伴う凝固活性の増強と線溶活性の低下が基盤となるが、妊娠・

分娩時の出血に備える生理的変動ともいえる。胎盤には TF が大量に存在し、異常分娩など

で血中に放出されると外因系凝固が活性化され、DIC を発症する。妊娠状態では、エスト

ロゲンなどの影響により凝固因子濃度が増加して過凝固状態ともなる。経口避妊薬服用時

も同様な機序が考えられ、PAI-1 も妊娠経過に伴って増加し、線溶活性は低下する。

6.ストレス

過度の身体的ストレスは、フィブリノゲンや PAI-1 などの増加、脱水による血液濃縮な

どにより血栓症リスクを高める。短期間の急性精神的ストレスでは凝固因子の第Ⅶ、Ⅷ因

子、フィブリノゲンが増加する。

◆治療薬剤の選択

抗血栓療法は、血栓症の発症を抑制する治療で、①血小板機能を阻害する抗血小板剤、

②血液凝固能を低下させる抗凝固剤、③線溶系を活性化して形成された血栓を溶解する血

栓溶解剤などが用いられる。

抗血栓療法の分類 26)

抗血小板療法 抗凝固療法

主な病態 血小板の活性化 凝固系の活性化

血栓が形成されや

すい場所 血流の流れが早い動脈 血流の流れが遅い静脈

原因 動脈硬化 血流の流れのうっ滞

代表的疾患 心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬

化症など 深部静脈血栓症、肺梗塞など

予防薬 抗血小板剤 抗凝固剤

一般に、動脈に形成される動脈血栓(白色血栓)は、抗血小板剤を用い、静脈に形成さ

れる静脈血栓(赤色血栓)は、抗凝固剤による治療が原則とされる。血栓リスクの高い症

例には抗凝固剤を使用し、血栓リスクの低い症例には抗血小板剤を使用する。しかし、血

小板も凝固機序に関与することや動脈血栓でも閉塞血栓では静脈血栓を伴うことなどから

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抗血小板剤と抗凝固剤が併用されることが多い。不安定狭心症など近未来に心筋梗塞を発

症するリスクが極めて高い状態の時にはヘパリンとアスピリンの併用など血栓溶解剤は両

方のタイプの血栓に用いられる。

◆治療薬剤の分類と特徴

→ 血液凝固阻止剤一覧 ・・・P48

図 6 抗血小板剤の作用機序 (堀美智子:ハイリスク薬説明支援ガイドブック,p76,じほう)

1.抗血小板剤

現在臨床に使用できる抗血小板剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、ホスホジ

エステラーゼ(PDE)阻害剤、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤、GPⅡb/Ⅲa 受

容体阻害剤(日本では未承認)である。

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①シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤

・アスピリン(バファリン配合錠 A81、バイアスピリン 100mg、コンプラビン配合錠)

シクロオキシゲナーゼ 1(COX-1)を阻害(セリン残基のアセチル化)することにより、

トロンボキサン A2(TXA2)の合成を阻害し、血小板凝集抑制作用を示す。血小板にお

ける COX-1 阻害作用は、血小板が本酵素を再合成できないため、不可逆的である。一

方、血管組織では COX-1 の再合成が行われるため、プロスタサイクリン(PGI2)合成

阻害作用は可逆的で比較的速やかに回復する。

②アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(チエノピリジン誘導体)

・チクロピジン(パナルジン錠 100mg、細粒 10%)

・クロピドグレル(プラビックス錠 25mg、75mg、コンプラビン配合錠)

血小板膜にある ADP 受容体を遮断して、アデニレートシクラーゼを持続的に活性化さ

せ、血小板の活性化を抑制する。この酵素を活性化するとATPから cAMPが産生され、

細胞内遊離 Ca2+濃度が減少し、この結果、血小板の活性化が抑制され、血小板凝集が

抑制される。

抗血小板剤の特徴

アスピリン クロピドグレル シロスタゾール

脳梗塞再発抑制効果 + ++ +

血小板凝集能

ADP 凝集抑制 ++ +

コラーゲン凝集抑制 ++ +

SPA 抑制 + +

抗動脈効果作用 + + ++

脳血流増加作用 +

頭蓋内出血 ++ + +

消化管出血 ++ + +

頭痛 ++

頻脈 ++

忍容性(adherence) + ++ +

抵抗性 4~40% 10~20% 不明

(棚橋紀夫:脳梗塞における抗血栓療法,ハートビュー Vol.18 No.2 より)

③ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤

・シロスタゾール(プレタール OD 錠 50mg、100mg)

・ジピリダモール(ペルサンチン錠 25mg、100mg、L カプセル)・・・ワーファリンとの併用

血小板ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害により cAMP の分解を抑制し、血小板 cAMP

濃度を上昇させ、血小板凝集を抑制する。

④プロスタグンジン(PGE1、PGI2)

・ベラプロストナトリウム(ドルナー錠 20μg)

・リマプロスト アルファデクス(オパルモン錠 5μg、プロレナール錠 5μg)

PGE1、PGI2は生理的血小板抑制物質であり、アデニレートシクラーゼの活性化により、

血小板内の cAMP 濃度を上昇させ、血小板凝集抑制作用と強い血管拡張作用を有する。

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⑤5-HT2受容体遮断剤

・サルポグレラート(アンプラーグ錠 50mg、100mg、細粒 10%)

5-HT2受容体に選択的に拮抗し、プラスミンインヒビター(PI)代謝回転の抑制・Ca2+

動員の抑制により、セロトニンによって増強される血小板凝集や血管収縮を抑制する

が、セロトニンの凝集作用が極めて弱いため、単独での効果は弱い。

脱エステル化された後、代謝物は複数のチトクローム P450 分子種で代謝される。

⑥EPA(イコサペント酸)

・イコサペント酸エチル(エパデール、-S、ソルミラン顆粒状軟カプセル)

EPA は血小板の細胞膜に取り込まれ、アラキドン酸の代謝を競合的に阻害して TXA2

の産生を抑制する。

⑦トロンボキサン(TXA2)合成酵素阻害剤

・オザグレルナトリウム注射液(キサンボン、-S 注射液他)

TXA2 は血管収縮作用、血小板凝集作用、気管支収縮作用をもつ。TXA2 合成酵素を選

択的に阻害することで、TXA2 の産生を著明に抑制する。また、PGI2 の産生も抑制し

て、両者のバランスの改善により血小板凝集抑制および血管拡張作用を示す。抗血小

板作用の適応があるのは注射のみである。

⑧GPⅡb/Ⅲa 受容体阻害剤(日本では未承認)

血小板凝集の 終段階であるフィブリノゲンや vWF と血小板膜表面蛋白 GPⅡb/Ⅲa

との相互作用を阻害し、強力な血小板凝集抑制作用をもつ薬剤として開発中である。

2.抗凝固剤

抗凝固剤は、血液凝固機構の過程に作用して、フィブリン形成に直接関与するトロンビ

ンの生成量を抑制して抗凝固効果を発現するのがワルファリンと抗Ⅹa 剤で、トロンビン活

性を直接阻害するのが抗トロンビン剤である。間接作用型抗凝固剤(クマリン誘導体)と

直接作用型抗凝固剤(ヘパリン、抗トロンビン剤、活性化第Ⅹa 因子阻害剤)と 2 種類に分

類される。ただし、トロンビンは、凝固カスケード反応の 終酵素のみならず、カスケー

ド上位の第Ⅺ因子や第Ⅷ、Ⅴ因子を活性化するために、抗トロンビン剤はトロンビン生成

量も抑制する。抗トロンビン剤、活性化第Ⅹa 因子阻害剤を新規経口凝固薬剤(NOAC:ノ

アック Novel Oral Anticoagulants)と呼んでいる。

<間接作用型抗凝固剤>

①クマリン誘導体

・ワルファリン(ワーファリン錠 0.5mg、1mg、5mg、顆粒 0.2%)

肝臓でビタミン K サイクルを阻害し、ビタミン K 依存性凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)

の生成を抑制することで抗凝固作用を示す。薬効を発揮するまでに 36~48 時間かかり、

投与中止後も数日間効果が持続する。薬物間相互作用を引き起こす薬物が多く、特に

*注意

特定薬剤管理指導加算の対象となる「血液凝固阻止剤」には、血液凝固阻止

目的で長期間服用するアスピリンは含まれるが、イコサペント酸エチル、サル

ポグレラート塩酸塩、ベラプロストナトリウム、リマプロストアルファデクス

及び解熱・鎮痛を目的として投与されるアスピリンは含まれない。

(平成 22 年 4 月 30 日付 厚生労働省保険局医療課 事務連絡)

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ビタミン K はワルファリンと拮抗してワルファリンの作用を減弱する可能性があるた

めビタミン K を含有する医薬品や食品・健康食品との併用に注意する。

<直接作用型抗凝固剤>

②ヘパリン注射製剤

ヘパリンは速効性で、急を要する場合にワルファリンと併用して使用される。非分画

(標準の高分子量製剤)ヘパリンと低分子量ヘパリンに分類され、ヘパリンは単独で

は抗凝固作用がなく、生理的凝固阻害因子であるアンチトロンビンⅢに結合して活性

化し、トロンビンおよび凝固因子Ⅹa の活性を消失させて抗凝固作用を示す。

③抗トロンビン剤

・ダビガトラン(プラザキサカプセル 75mg、110mg)

製剤はプロドラッグであり、投与後速やかに吸収され、エステラーゼで加水分解され

て活性代謝物であるダビガトランとなり、トロンビンの活性を阻害する。約 80%が腎

臓から排泄されるため、腎機能障害患者、高齢者などでは用量調節が必要とされる。

肝薬物代謝酵素 P-450 の代謝を受けないが、P-糖蛋白質との相互作用を有する。

④Ⅹa 阻害剤

・リバーロキサバン(イグザレルト錠 10mg、15mg)

・エドキサバン(リクシアナ錠 15mg、30mg)・・・術後の入院中に使用

・アピキサバン(エリキュース錠 2.5mg、5mg)

外因性及び内因性血液凝固経路の収束点である第Ⅹa 因子を阻害することにより、その

下流のプロトロンビンからトロンビンへの変換を抑制し、直接的な抗血液凝固作用お

よび間接的な抗血小板作用を示す。ワルファリンと比べ効果発現が早く、投与中止後

の効果消失も早い。薬効モニタリングは不要であるが、個別 適化ができない。

3.血栓溶解剤

・アルテプラーゼ(t-PA)(アクチバシン注、グルトバ注)

・ウロキナーゼ製剤

プラスミノゲンをプラスミンに活性化し、形成されたフィブリン血栓塊の溶解を促す。

◆ビタミン Kとは

ビタミン K は、正常な止血や抗血栓機序の中心

的要素である。植物で自然に作られる脂溶性のビ

タミンで、2 つの形で存在する。ビタミン K1(フ

ィロキノン)は広く植物(緑色野菜)に分布し、

ビタミン K2(メナキノン)は、微生物由来であり

納豆やチーズなどに多く含まれるほか、体内の腸

内細菌によっても作られる。血液凝固因子である

プロトロンビン(第Ⅱ因子)、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の肝

臓での産生の際、還元されたビタミン K(ヒドロ

キノン)はグルタミン酸(Glu)をγ-カルボキシ

グルタミン酸(Gla)にカルボキシル化する酵素(ビ

タミン K 依存性カルボキシラーゼ)の補酵素とし

て作用する。γ-カルボキシル化グルタミン酸残基

は Ca2+の分子との結合を促し、その結果陰性に荷

図 7 ビタミン K とワルファリンの作用機序

(樋口宗史監修:ラング・デール薬理学,p327,

西村書店,2011)

-27-

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電しているリン脂質表面への結合を促す。これら第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹの因子はビタミン K の

依存性凝固因子と呼ばれる。また、プロテイン C、プロテイン S の凝固阻止因子もビタミ

ン K 依存性蛋白質である。ビタミン K 依存性カルボキシラーゼによるカルボキシル化が行

われている間、還元型ビタミン K(ヒドロキノン)は、ビタミン K エポキシダーゼにより

酸化型ビタミン K(エポキシド)に変換され、エポキシド還元酵素によりビタミン K とな

る。さらに脱水素酵素により再び還元されてヒドロキノンに戻るサイクルが存在する。

ビタミン K の一日所要量は、成人男子で 75μg、成人女子で 65μg であり、 普段の食生

活で十分に摂取され、また、腸内細菌叢による供給もある。通常、欠乏症に陥ることはほ

とんど無いが、抗生物質の投与による腸内細菌の減少や何らかの吸収障害によって、また

新生児では腸内細菌叢による新生がないため、ビタミン K の欠乏状態に陥ることがある。

ビタミン K 欠乏症では、血液凝固能の低下が起こる。

プロトロンビンは、ビタミン K が欠乏すると、活性のない PIVKA II(protein induced by

vitamin K absence or antagonist)となり、ビタミン K 欠乏の指標とされている。

〔参考〕ビタミン K の依存性凝固因子の各半減期

第Ⅶ因子:1.5~5 時間

第Ⅸ因子:20~24 時間

第Ⅹ因子:1~2 日

第Ⅱ因子:2.8~4.4 日

プロテイン C:6~8 時間、プロテイン S:2~3 日

◆検査

止血機構の異常を調べる検査には、一次止血に関する検査と二次止血に関する検査すな

わち血液凝固能に関する検査が行われる。血液凝固能に関する主な検査項目には、プロト

ロンビン時間(PT)、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)、活性化部分トロンボプラ

スチン時間(APTT)、トロンボテスト(TT)がある。ワルファリンの用量を決める上で

PT-INR が指標となる。

1.一次止血に関する検査

臨床においては、まず、血小板数の確認をしたのち、出血時間を検査する。

①出血時間(Duke 法)

針で耳介に 2mm 程の切傷をつくり、止血するまで湧出する血液を 30 秒ごとにろ紙で

吸い取る。切傷の大きさにより測定値が変動するが、 初の血液班が 1cm 以上である

ことが望ましい。血小板の数、機能の異常や血管壁の異常により延長する。また、温

度の影響を受けやすく、低温では延長する。

・基準値:1~5 分

・異常値(短縮)となる疾患

血栓症

・異常値(延長)となる疾患

血小板減少症:再生不良性貧血、急性白血病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、

播種性血管内凝固症候群(DIC)

2.二次止血(血液凝固能)に関する検査

凝固カスケードによりフィブリンが形成されるまでの経路には、内因系と外因系の 2 つ

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があり、内因系凝固を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)と外因系凝固

を反映するプロトロンビン時間(PT)がある。

①プロトロンビン時間(PT)

クエン酸加血漿に組織トロンボプラスチン(組織因子・リン脂質複合体)と Ca2+を加

えて、フィブリン析出までの時間を溶液の濁度や粘度の変化などで測定する。

PT は第Ⅶ因子と第Ⅹ、Ⅴ、Ⅱ、Ⅰ因子の総合的な活性を反映しているため、これらが

先天的に欠乏したり、異常な場合、肝機能障害やビタミン K 欠乏症でも延長する。

・基準値:10~12 秒(80~120%)

・異常値(延長)となる疾患

産生障害:肝障害、ビタミン K 欠乏症(特発性、抗菌剤投与、胆道閉鎖、全身

消耗状態)、経口抗凝固剤投与

消耗亢進:播種性血管内凝固症候群(DIC)、線溶亢進

外因系凝固因子活性阻害:ヘパリン投与、循環抗凝血素、異常蛋白血症

②プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)

PT の測定に用いる組織トロンボプラスチンが生物由来のため、用いる試薬によってば

らつきが生じることから標準化された値を用いることが推奨されている。試薬ごとに

設定された国際感受性指標(ISI)を用い、PT-INR=(検体 PT/コントロール PT)と

いう換算式から算出する。

日本人では PT-INR が 2.2 以上になると出血イベントが増加するとの報告がある。ワル

ファリンの投与量の決定は PT-INR の値が治療域にあるかどうかで調節され、漫然と

投与するのではなく、1 ヵ月に 1 度採血を行ない、PT-INR を測定したうえで、次回の

投与量を決める。

・基準値:0.85~1.15

・ワルファリンの治療域:2.0~3.0

心房細動:2.0~3.0(70 歳未満)

1.6~2.6(70 歳以上)

肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症:1.5~2.5

人工弁(機械弁/生体弁):2.0~3.0

静脈洞血栓症:2.0~3.0

※TTR(Time in Therapeutic Range)

INR が至適範囲に入っている時間(期間)をあらわしたもので、ワルファリンコン

トロールの指標。横軸に診療日、縦軸に PT-INR をとり、各診療日の PT-INR をプ

ロットし、各診療日の PT-INR を線で結び、目標 PT-INR 範囲に何%の期間入って

いるかを算出する。TTR が高値なほど、ワルファリンコントロールは良好であると

いえる。

③トロンボテスト(TT)

外因系凝固因子のうちビタミン K 依存性凝固因子の活性低下を評価できる。トロンボ

テスト試薬(フィブリノゲンや第Ⅴ因子を含む吸着血漿を組織トロンボプラスチンに

添加したもの)を用い、凝固時間を策定する。標準血漿により検量線を作成し、活性

を%で表す。PT では第Ⅸ因子低下の程度を評価できないが、TT ではワルファリンに

より低下する第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の活性を総合的に評価することが可能である。

近では、ワルファリン投与時のモニタリングには PT-INR が用いられる傾向にあるが、

フィブリノゲンや第Ⅴ因子の影響を受けない TT を用いる場合がある。

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ワルファリン投与時に凝固時間の延長(活性低下)が認められる。TT と PT-INR は逆

相関の関係で TT 値が小さいほど抗凝固剤の効果が強い。

・基準値:70~130% ・PT-INR の 1.6~2.8 は TT では 10~25%に相当

④活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)

内因系・共通系*の凝固活性異常のスクリーニング検査として用いられる。クエン酸加

血漿にカオリンやセファリンなどを加え接触相に関わる第Ⅺ、Ⅻ因子を活性化させる。

さらに部分トロンボプラスチン(リン脂質)と Ca2+を加えて、フィブリン析出までの

時間を溶液の濁度や粘度の変化などで測定する。

APTT が PT(INR)、TT より鋭敏に、過剰なトロンビン活性抑制状態や出血現象チェ

ックに有用であるとされる。また、新規経口凝固阻害剤は半減期が短く、血中濃度変

化が大きいため、ピーク値とトラフ値における凝血パラメーター(PT、APTT など)

をチェックすることが推奨される。

・基準値:20~40 秒

・異常値(延長)となる疾患

先天性疾患:血友病 A(第Ⅶ因子欠損)、B(第Ⅸ因子欠損)、von Willebrand 病、

無フィブリノゲン血症

産生障害:肝障害

消耗亢進:播種性血管内凝固症候群(DIC)、線溶亢進

凝固因子活性阻害:ヘパリン投与、循環抗凝血素

*第Ⅰ因子(フィブリノゲン)、第Ⅱ因子、第Ⅴ因子、第Ⅹ因子の 4 つは

内因系・外因系の両系に共通して働く因子で共通系と呼ぶ。

3.線溶系(線溶カスケード)に関する検査

線溶系ではプラスミンによって、フィブリノゲンやフィブリンが分解され、フィブリノ

ゲン/フィブリン分解産物(FDP)が産生される。FDP のうちのフィブリン分解産物の細小

単位として D-ダイマーがある。D-ダイマーは二次線溶を反映するため、播種性血管内凝固

症候群(DIC)や血栓症の存在を特異的に反映し、線溶療法のモニターとしても用いられる。

①フィブリノゲン

・基準値:200~400mg/dL

加齢により増加、60 歳以上では 250~500 mg/dL

・異常値(高値)となる疾患

感染症、悪性腫瘍、心筋梗塞、脳血栓症、糖尿病、ネフローゼ症候群

・異常値(低値)となる疾患

消耗亢進:播種性血管内凝固症候群(DIC)、大量出血

生成障害:慢性肝炎、肝硬変

APTT PT 欠乏が疑われる凝固因子

正常 延長 Ⅶ

延長 正常 Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ

延長 延長 Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅹ

正常 正常 ⅩⅢ

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②フィブリノゲン/フィブリン分解産物(FDP)

・基準値:5~10μg/mL D-ダイマー:150ng/mL 以下

・異常値(延長)となる疾患

DIC(悪性腫瘍、重症感染症、白血病)、胸水症、消化管出血

血栓溶解療法・・・フィブリノゲン分解あれば FDP 上昇に比して D-ダイマー低値

◆新規経口凝固薬剤(NOAC)とワルファリンの比較

ワルファリンの欠点を克服するために開発された新規経口凝固薬剤だが、出血時の中和

剤がない、作用評価の指標がない、などの欠点がある。

新規経口凝固薬剤(NOAC)とワルファリンの比較

ワルファリン ダビガトラン リバーロキサバン アピキサバン エドキサバン

主な商品名 ワーファリン プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナ

標的凝固因子 Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子 トロンビン Ⅹa 因子 Ⅹa 因子 Ⅹa 因子

プロドラッグ × ○ × × ×

投与回数/日 1 回 2 回 1 回 2 回 1 回

Tmax (h) 0.5~1 0.5~2 0.5~4 3~3.5 1~2

血中半減期 (h) 60~132 12~14 5~13 6~8 4.9

生物学的利用率 100% 7% 80% 50% 50%

蛋白結合率 90~99% 34~35% 92~95% 87% 40~59%

薬物相互作用 CYP2C9 P 糖蛋白阻害剤 CYP3A4、2J2

P 糖蛋白阻害剤

CYP3A4

P 糖蛋白阻害剤

P 糖蛋白阻害剤

多い 少ない

腎排泄 0%(肝 100%) 80% 66% 25% 35%

モニタリング 必須(PT-INR) 不要(確立していない)

個々の用量調節 必須(可能) 不可能(不要)

食物の影響 ビタミン K 製剤含有食品 少ない

中和薬 ビタミン K 製剤 ない

利点 ・PT-INR による用量調節

が可能

・安価

・効果発現が早い ・用量依存性

・服用中断が短期間 ・頭蓋内出血、大出血が少ない

・虚血性脳卒中

が少ない

・肝代謝P450の

関与なし

・第Ⅶ因子に影

響しない

・安全域が大きい

・腎障害の影響を

受けない

・蛋白結合率は

低い

欠点 ・PT-INR によるモニタリン

グが必要

・効果発現が遅い

・中止後の効果持続が長

・安全性・有効性の範囲

が狭い

・75 歳以上での出血増加 ・効果評価の指標がない

・腎機能低下

(Ccr<30mL/分)

患者に禁忌

・胃腸障害が多

・腎不全

(Ccr<15mL/分)

患者に禁忌

・肝機能障害は

禁忌

・腎不全

(Ccr<15mL/分)

患者に禁忌

・腎機能低下

(Ccr<30mL/分)

患者に禁忌

Ccr(クレアチニンクリアランス)

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◇ワルファリンの問題点

・至適投与量の個人差がある

・ワルファリン抵抗性(耐性)が起こる場合がある

・効果発現までに時間がかかり、効果消失までに時間がかかる

・INR(国際標準比)治療域が狭い

・多数の薬物-食物相互作用を有する

・定期的な凝固能モニタリングを要する

◇新規経口凝固薬剤の利点

・頭蓋内出血の頻度はワルファリンよりも明らかに低い

・低用量では大出血が有意に減少する

・安全域が広く、PT-INR などのモニタリングが必要ない

・薬効と副作用は薬剤の血中濃度に比例(用量依存)する

・虚血性脳卒中が有意に減少する(ダビガトラン)

・半減期が 9~15 時間と短く、服用を中止すると作用もすぐに消失する

→服用を忘れると血栓発症リスクが急激に高まる

・食事の影響がない

・相互作用が少ない

◇新規経口凝固薬剤の問題点

・腎機能低下者への投与量調節が必要

・胃腸からの大出血注意(ダビガトラン:2011 年 8 月ブルーレター発出)

・高価

・適切な効果評価の指標がない

・中和薬がない

◆ワルファリン抵抗性

大量に投与してもワルファリン治療効果があらわれにくい状態をワルファリン耐性やワ

ルファリンレジスタンスと呼んでいる。ワルファリン 1 日用量 9mg 以上を必要とする場合

にみられ、コンプライアンス不良、ビタミン K 過剰摂取、ワルファリン効果を減弱させる

薬物摂取などの原因が も多い。ワルファリンが効きにくい患者に接するときは、まず内

服状況、食事内容、内服薬を調べることが大切である。

◆他剤への切り替え

高齢者や腎機能障害例で、ワルファリンによるコントロールが良好である場合は、ワル

ファリン投与の続行が勧められている。若年者で併用薬も多く食事制限を嫌う場合は、新

規経口凝固薬剤がよい。

これまでの臨床試験や臨床使用では、抗トロンビン剤とⅩa 阻害剤の間に明らかな差異は

報告されていない。

◇ダビガトラン

a.ワルファリン→ダビガトラン

PT-INR が 2.0 未満であることを確認後に開始する。

b.他の抗凝固剤(ヘパリン)→ダビガトラン

次回投与予定時間の 2 時間前から開始し、特に未分画ヘパリンの持続静注の場合は、

中止時にダビガトランの投与を開始する。

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c.ダビガトラン→ワルファリン

ワルファリン内服後に抗凝固作用が発現(PT-INRが 2.0以上、70歳以上では PT-INR

が 1.6 以上)まで併用した後(通常 3~5 日)、速やかにダビガトランを中止する。

切り替え期間中は PT-INR を頻回に測定する。

d.ダビガトラン→他の抗凝固剤(ヘパリン)

12 時間の間隔をあける必要がある。

◇リバーロキサバン

a.ワルファリン→リバーロキサバン

ワルファリンを中止したうえで PT-INR などの検査を行い、治療下限域を下回った

ことを確認後速やかにリバーロキサバンの服用を開始する。

b.注射剤の抗凝固剤(ヘパリン等)→リバーロキサバン

次回の静脈内又は皮下投与が予定された時間の 0~2時間前又は持続静注中止後より、

本剤の投与を開始する。

c.リバーロキサバン→ワルファリン

リバーロキサバンとワルファリンを併用し、PT-INR が治療域の下限を超えるように

なったことを確認後速やかにリバーロキサバンの服用を中止する。

d.リバーロキサバン→注射剤の抗凝固剤(ヘパリン等)

本剤の投与を中止し、次回の本剤投与が予定された時間に抗凝固剤の静脈内投与又

は皮下投与を開始する。

◇アピキサバン

a.ワルファリン→アピキサバン

ワルファリンの投与を中止し、PT-INR が 2.0 未満となってから本剤の投与を開始す

る。

b.注射剤の抗凝固剤(ヘパリン等)→アピキサバン

次回の投与時間まで間隔をあけて、本剤の投与を開始すること。ただし、抗凝固剤

の持続静注から切り替える場合は、持続静注中止と同時に本剤の投与を開始する。

c.アピキサバン→ワルファリン

PT-INR が治療域の下限を超えるまでは、ワルファリンと併用する。

d.アピキサバン→注射剤の抗凝固剤(ヘパリン等)

次回の投与時間まで間隔をあけて、切り替える薬剤の投与を開始する。

◆各疾患における治療

循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法の各ガイドライン ClassⅠを示す。

◇心房細動

血栓形成の観点からは、心房細動と非弁膜症性心房細動(NVAF)に分けられる。リウマ

チ性僧帽弁疾患に伴う心房細動は血栓塞栓症の発症頻度が高く、元来ワルファリン療法の

適応疾患の 1 つである。また、心房細動の基礎疾患に弁膜症を伴わない非弁膜症性心房細

動の占める比率が増加し、脳塞栓症(脳梗塞)発症の予防が重要な課題となってきている。

心房細動による脳梗塞発症リスク評価スコアとして CHADS2 スコアを用いている。

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*1 血管疾患とは心筋梗塞の既往、大動脈プラーク、および末梢動脈疾患などをさす。 *2 人工弁は機会弁、生体弁をともに含む。 *3 2013 年 12 月の時点では保険適応未承認。

CHADS2 スコアの増加とともに、脳卒中の発症率が上昇することが明らかになっている。

日本循環器学会が作成する「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」では、

CHADS2スコア1点でダビガトラン( レベルB )か、アピキサバンによる抗凝固療法、2

点以上で適応があれば新規経口抗凝固薬の投与をまず考慮するとされている。同等レベル

の適応がある場合、新規経口抗凝固薬がワルファリンよりも望ましい。また、抗凝固療法

が拒否された場合、ACCP(米国胸部医学会)ではCHADS2スコア0点の場合にはアスピリ

ン単独、1点以上の場合にはアスピリン+クロピドグレルを推奨している。

図 8 心房細動における抗血栓療法 8)

◇脳梗塞

→「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」(2009 年改訂版)

→「脳卒中治療ガイドライン 2009」

国内死因の第 3 位を占める脳卒中の死亡者数は年約 13 万人であり、その 60%が脳梗塞

による。脳梗塞の病型は大きく分けると、脳内小動脈病変が原因の「ラクナ梗塞」、頸部~

頭蓋内の比較的大きな動脈のアテローム硬化が原因の「アテローム血栓性脳梗塞」、心疾患

による「心原性脳塞栓症」および「その他」に大別される。

1.脳梗塞および一過性脳虚血発作(心原性脳塞栓症を除く)

CHADS2

記号 疾患 点数

C Congestive heart failure(うっ血性心不全) 1

H Hypertension(高血圧) 1

A Age(年齢 75 歳以上) 1

D Diabetes Mellitus(糖尿病) 1

S2 Stroke or TIA(脳卒中・一過性脳虚血発作の既往) 2

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a.発作予防

・心筋梗塞の既往を有する症例

→抗血小板剤投与

・心筋梗塞に加えて、心房細動、左室内血栓もしくは左室機能低下を有する症例

→PT-INR 値 2.0~3.0 でのワルファリン投与(非弁膜性心房細動で 70 歳以上は

PT-INR 値 1.6~2.6 を目標)

b.急性期

・発症早期(24~48 時間以内)の脳梗塞および一過性脳虚血発作例

→アスピリン 162~330mg/日の経口投与

・発症早期(48 時間以内)で病変 大径が 1.5cm を超すような脳梗塞

→選択トロンビン阻害剤(アルガトロバン)

c.慢性期

・非心原性脳梗塞および一過性脳虚血発作の再発予防を目的

→アスピリン 81~162mg/日、クロピドグレル 75 mg/日(75 歳以上、もしくは体重

50kg 未満では 50 mg/日)、もしくはシロスタゾール 200 mg/日の投与

・頸動脈内膜剥離術前後

→抗血小板剤投与

2.心原性脳塞栓症(一過性脳虚血発作を含む)

心原性脳塞栓症の原因は大半が心房細動で、これに高血圧、糖尿病、65 歳以上の高齢

男性といった因子が加わると 1.4~1.7 倍のリスクが上昇する。特に非弁膜症性心房細動

の頻度が高い。

「脳卒中治療ガイドライン 2009」では、脳卒中の危険因子の管理における降圧目標と

して、高齢者は 140/90mmHg 未満、若年・中年者は 130/85mmHg 未満、糖尿病や腎障

害合併例には 130/80mmHg 未満が推奨されている。

・心房細動、左室血栓、急性心筋梗塞、人工弁置換を伴う症例

→ワルファリン投与

・卵円孔*開存を有し、深部静脈血栓または血液凝固異常症を合併した症例

→ワルファリン投与

・卵円孔開存を有し、深部静脈血栓または血液凝固異常症を合併していない症例

→抗血小板剤投与

脳梗塞発症リスクが高い病態では、ワルファリンが治療域に入るまで即効性のヘパリ

ンを必ず併用する。

*卵円孔:心房中隔中央に開いている孔。胎内にいる間は肺呼吸をしていないため

10mm 程度開いているこの孔を通って血液が循環するが、生後は閉じる。これが閉じ

ずに残る場合があり、卵円孔開存となる。約 2 割にみられ通常は問題にならない。

◇急性冠症候群

→「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」(2007 年改訂版)

急性冠症候群は冠動脈粥腫(プラーク)破綻、血栓形成を基盤として急性心筋虚血を呈

する臨床症候群であるが、急性心筋梗塞、不安定狭心症から心臓急死までを包括する広範

な疾患概念である。一度破綻したプラークにより血栓形成が亢進することで冠動脈の血流

低下、停滞、閉塞をきたし発症する。冠動脈ステント留置による経皮的冠動脈インターベ

ンション(PCI)が主流となり、術後は血小板凝集能が亢進することから、ステント血栓症

の予防のために、アスピリンとクロピドグレル(もしくはチクロピジン)の抗血小板剤 2

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剤併用抗血小板療法(DAPT)が行われる。投与期間は 2 週間以内に起こることが多いこと

から、少なくとも 1 ヵ月必要とされている。

1.冠動脈バイパス術(CABG)

・アスピリン 81~162mg/日の投与(術後 48 時間以内の投与開始が推奨される)

・アスピリン禁忌症例→チクロピジン、クロピドグレル投与

2.冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)

a.PCI に際し活性化凝固時間(ACT)250 秒以上を目標としたヘパリン(未分画)の

静脈内投与

b.禁忌のない症例に対するアスピリン(81~330mg/日)投与

c.ステント留置例に対するチクロピジンもしくは、クロピドグレルのアスピリンとの

併用投与

ただし副作用(白血球減少、血小板減少、肝障害)に十分注意する。投与期間につい

ては海外では出血リスクが高い場合を除き、薬剤溶出性ステント留置例では 低 12 ヵ

月、ベアメタルステント留置例では 低 1 ヵ月の併用投与が推奨されているが我が国

におけるエビデンスは十分ではない。なおクロピドグレルは 2014 年 2 月現在、冠動脈

疾患に対しては PCI を前提とした急性冠症候群(不安定狭心症、非 ST 上昇型心筋梗

塞、ST 上昇心筋梗塞)安定狭心症、陳旧性心筋梗塞に対して保険適応がある。

d.ヘパリン起因性血小板減少症の症例に対するアルガトロバン投与

◇虚血性心疾患

抗血小板療法は安定労作狭心症、心筋梗塞の二次予防として重要な治療法である。

1.不安定狭心症

a.可及的速やかなアスピリン 162~330mg/日の投与、およびその後の 81~162mg/日

の長期継続投与

b.アスピリンの使用が困難→チクロピジンあるいはクロピドグレルの投与

c.ステント治療時のアスピリンとクロピドグレル(あるいはチクロピジン)の併用

d.中等度以上のリスクを有する症例→抗血小板薬に加えたヘパリン静脈内投与

2.安定労作狭心症

a.アスピリン 81~162mg/日の投与

b.発作性および慢性心房細動、肺動脈血栓塞栓症を合併する症例、人工弁の症例

→ワルファリンの併用

3.心筋梗塞(非急性期)

a.禁忌がない場合→アスピリン 81~162mg/日の永続的投与

b.アスピリンが禁忌の場合→トラピジル 300mg/日の投与

c.左室、左房内血栓を有する心筋梗塞、重症心不全、左室瘤、発作性および慢性心房

細動、肺動脈血栓塞栓症を合併する症例、人工弁の症例→ワルファリンの併用

◇深部静脈血栓閉塞症(DVT)、肺血栓塞栓症(PTE)

→「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」(2009

年改訂版)

肺血栓塞栓症(PTE)や深部静脈血栓閉塞症(DVT)は、エコノミークラス症候群とし

て、知られるようになった。ときに致死的となる PTE は、成因や病態はまだ十分に解明さ

れていないが、そのほとんどが DVT を塞栓源として発症することから、PTE は DVT の合

併症ともいえ、静脈血栓塞栓症として 1 つの連続した病態と捉えられており、DVT に対す

る治療が重要となる。炎症、ストレス、肥満、悪性腫瘍、長期臥床、先天的血栓傾向等に

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より、Virchow の 3 主徴(「血栓症の発症機序」P21 参照)である静脈の血流停滞、血管内

皮障害、血液凝固能亢進の因子が加わり、下肢静脈内に血栓が形成されると下肢腫脹、疼

痛が出現し、血栓が遊離し肺動脈を塞栓すると急速に進行する肺高血圧、低酸素血症から

症状があらわれる。

DVT における抗血栓療法は、さらなる血栓増加、PTE、DTE 再発、血栓後症候群を防ぐ

ことを主要な目的として、ヘパリン、ワルファリンを使用した抗凝固療法が行われるが、

ワルファリン単独での治療開始はむしろ凝固にシフトすることがあるため、導入時にヘパ

リンの併用を考慮する。

1.急性深部静脈血栓症

a.ヘパリン(未分画ヘパリン)とワルファリンの併用

b.ヘパリンコントロールの目標 APTT 値 1.5~2.5 倍延長

2.急性肺血栓塞栓症(ClassⅠ)

a.急性期には、未分画ヘパリンを APTT がコントロール値の 1.5~2.5 倍となるよう

に調節投与して、ワルファリンの効果が安定するまで継続する

b.慢性期にはワルファリンを投与する。可逆的な危険因子の場合には 3 ヵ月間、先天

性凝固異常症や特発性の静脈血栓塞栓症では少なくとも 3 ヵ月間の投与を行う。が

ん患者や再発を来たした患者ではより長期間の投与を行う

c.急性期で、ショックや低血圧が遷延する血行動態が不安定な例に対しては、血栓溶

解療法を施行する

3.静脈血栓塞栓症の薬物的予防法

・低用量未分画ヘパリン

8 時間もしくは 12 時間ごとに未分画ヘパリン 5,000 単位を皮下注射

・用量調節ワルファリン

ワルファリンを内服し、我が国では PT-INR 1.5~ 2.5 でのコントロールを推奨する

・低分子量ヘパリンおよび Xa 阻害薬

我が国では、低分子量ヘパリン(エノキサパリン)が股関節全置換術後、膝関節全

置換術後、股関節骨折手術後、静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い腹部手術後の使

用に保険適用されており、また、Ⅹa 阻害剤(フォンダパリヌクス)が、静脈血栓塞

栓症の発現リスクの高い下肢整形外科手術後ならびに腹部手術後での使用に保険適

用されている

◇播種性血管内凝固症候群(DIC)

何らかの疾患を基礎に凝固反応を開始させる組織因子があらわれて、通常の止血時と同

様の現象が起きて、全身の血管内に播種性に血栓が全身に起こる。凝固反応を抑えようと

して凝固制御因子のアンチトロンビンがトロンビンに結合し抑制する。また、できた血栓

を溶かそうとしてプラスミンが活発に働くようになる。これらの反応が同時に、そして無

秩序に全身の血管や組織で進行する結果として血栓の元になる血小板や凝固因子が過剰に

消費されて低下し、アンチトロンビンも大量に使われるので低下する。その結果は凝固反

応がさらに進み、血栓ができるのを止める機能が低下し、血栓を作り出す傾向が高まる。

プラスミンは血栓を溶かそうとして活発に働き始め、本来出血を止めるためにできた血栓

をも溶かしてしまい、出血傾向が強まる(消費性凝固障害)。DIC は、凝固作用と線溶作用

が同時に無秩序に起こるため、極めて治療の難しい病態の一つで、多くの臓器に微小血栓

が無数に生じることやショックのため、組織に血液が行き渡らず虚血性の壊死を起こし、

多臓器の循環障害による機能不全を生じる。これに出血症状が加わり、その結果として、

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致死的影響を生じる。

早期の診断と基礎疾患の治療とともに全身性の凝固・線溶活性の過剰発現の悪循環を断

つための治療が重要である。消費性凝固障害に伴い血小板数、凝固因子が減少するため検

査値としては血小板数の低下、フィブリノゲン量低下、PT 延長がみられる。また、生体内

での線溶系活性化により、FDP、D-ダイマーが増加する。

1.抗凝固療法

・ヘパリン類(未分画ヘパリン、ダルテパリンナトリウム、ダナパロイドナトリウム)

・アンチトロンビンⅢ製剤(アンチトロンビン血中濃度 70%以下の場合)

・トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)製剤

・合成蛋白分解酵素阻害剤(メシル酸ナファモスタット、メシル酸ガベキサート)ト

ロンビンや活性化第Ⅹ因子を不活化

2.抗線溶療法

トラネキサム酸・・・プラスミノゲンのフィブリンへの結合阻害

3.補充療法

重篤な出血症例を中心に血小板輸血、凍結保存血漿、フィブリノゲン製剤などによる

血小板あるいは凝固因子の補充が行われる。

◆血栓症の予防

血栓症のリスクは加齢とともに高くなるため、抗血栓剤は長年にわたって継続してのみ

続ける必要がある。また、心筋梗塞や脳梗塞を起こさないためにも喫煙、高血圧、脂質異

常症、糖尿病などの危険因子を減らすように注意する。

・喫煙者は禁煙する

・運動習慣をつける・・・1 日 30~40 分、平らな道を歩く

・塩分、脂肪を摂りすぎない

・肥満のある人は体重を減らす

・血圧管理・・・収縮期血圧≧200mmHg(リスク大)

・脂質異常症の治療

・糖尿病などのコントロール・・・空腹時血糖値≧141mg/dL(リスク大)

◆血栓症を来す薬剤

→ 添付文書の警告欄に「血栓症」に関する注意喚起の記載がある薬剤 ・・・P57

・脂肪乳剤・・・トロンボプラスチン効果があり、凝固性亢進、血栓症を引き起こすおそれ

がある

・経口避妊剤、卵胞ホルモン剤

経口避妊剤服用に伴って血栓症リスクが増大することは明らかとされている。エスト

ロゲンに関しては動脈硬化抑制作用が知られており、若年女性では血栓症発症が少な

い理由ともされ、また 近では、抗凝固因子であるプロテイン S の発現を抑制すると

いう報告もあがっている。一方、プロゲステロンでは、血管内皮を除く多くの細胞で

PAI-1 の産生を増強することが報告されているが、なぜ血栓症が増えるのかは、未だ不

明とされる。経口避妊剤服用 1~5 年目に血栓症発症が多く、肥満や高齢者で発症リス

クが高いことが知られている。

ヤーズ配合錠(月経困難症治療剤)による血栓症についての安全性速報(ブルーレ

ター)が 2014 年 1 月に出され、同時に「警告」を新設し注意喚起している。

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・メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(ヒスロン H)

血栓症発現(1.37%)の報告があり、「本剤の投与中に重篤な動・静脈血栓症が発現し、

死亡に至った報告がある。」と「警告」の項で注意喚起している

・ダナゾール(ボンゾール)・・・機序不明。「警告」に血栓症を引き起こすおそれがある

・骨粗鬆症治療剤 選択的エストロゲン受容体モジュレーター

・エストラムスチンリン酸エステルナトリウム(エストラサイトカプセル)

エストロゲン様作用により症状を悪化又は再発させるおそれがある

・蛋白同化ホルモン・・・凝固因子量の増加で効果減弱

◆出血傾向のある患者に「禁忌」な薬剤

→ 添付文書に「出血患者」への投与注意(禁忌・慎重投与)の記載がある薬剤 ・・・P59

→ 手術前に中止を考慮する薬剤・ハーブ類 ・・・P53

抗血小板剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、NSAIDs の使用は出血リスクを高めるため観察を

十分に行うが、プロスタグランジン合成阻害作用をもつ製剤や HIV プロテアーゼ阻害剤に

注意する。

また、健康食品の摂取にも十分に注意を図る。例えば、イチョウ葉エキスは血小板活性

化因子(PAF)の活性を阻害し血小板の凝集を抑制する。ガーリック、朝鮮ニンジン、ショ

ウガ、フィーバーフューらも作用機序は不明だが、血小板凝集抑制作用を有している。医

薬品成分としても使用されているイコサペントエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)

も抗血小板作用を持つため、摂取には注意する。出血リスクを高める可能性のある素材(成

分)においてはデータが不十分ではあるが、手術前などは 2 週間前から中止するなどの対

応を取る。服用薬剤および摂取している健康食品については必ず事前に医師・薬剤師に相

談するよう指導する。

◆抜歯・手術時

→「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2010 年版」

→ 手術前に中止を考慮する薬剤・ハーブ類 ・・・P53

以前は、抜歯や体表面の小手術などにおいても抗血栓剤の服用を中止していた。しかし

現在は、出血リスクよりも服薬を中断することによる血栓症のリスクの方が高いため、原

疾患が安定し、INR が治療域にコントロールされている患者で、出血した時の対応が容易

な場合には、ワルファリンおよび抗血小板剤も継続することが基本とされている。欧米で

は、抜歯に際してワルファリンを休薬したところ約 1%が重篤な血栓症を発症したとの報告

がある。

抗凝固療法を突然中止すると、リバウンド現象として一過性に凝固系が亢進し、血栓塞

栓症を誘発する可能性が示唆されている。しかし、出血時の対処が容易でない処置や大手

術では、あらかじめ抗血栓剤を休薬せざるをえない。休薬期間中に血栓症を発症するリス

<ヤーズ配合錠「警告」の記載内容>

本剤の服用により、血栓症があらわれ、致死的な経過をたどることがあるので、血栓

症が疑われる次のような症状があらわれた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を

行うこと。

緊急対応を要する血栓症が疑われる症状

下肢の急激な疼痛・腫脹、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、四肢の脱力・麻痺、

構語障害、急性視力障害等

患者に対しても、このような症状があらわれた場合は、直ちに服用を中止し、救急医

療機関を受診するよう説明すること。

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クが高い場合では、脱水回避のための輸液、抗血栓剤をヘパリンに代替する「ヘパリン橋

渡し療法」が行われる。

◆内視鏡治療

→「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」日本消化器内視鏡学会

消化管出血は内視鏡的止血によってコントロールできるが、血栓塞栓症は重篤なケース

で発症する場合もあり、一般的には予後はよくない。

1.粘膜生検および出血低危険度手技

・抗血小板剤や抗凝固剤を 1 剤のみ服用→休薬なく施行。ワルファリンの PT-INR が

通常の治療域であること

・抗血小板剤や抗凝固剤を 2 剤以上服用→休薬してもリスクが低い場合は、アスピリ

ン 3~5 日間、チエノピリジン誘導体 5~7 日間、その他の抗血小板剤 1 日の休薬は

可能

2.出血高危険度手技

・リスクが低い場合→アスピリン 3~5 日間、チエノピリジン誘導体 5~7 日間、その

他の抗血小板剤 1 日の休薬は可能

・リスクが高い場合→アスピリンを休薬せず。アスピリン単独では処方医に休薬可否

の確認

・チエノピリジン系薬剤はアスピリンまたはシロスタゾール(血管内皮保護作用を有

する)に置換。シロスタゾールはうっ血性心不全には禁忌、早期の頭痛、頻脈の副

作用に注意

・脱水回避のための輸液、ヘパリン投与(橋渡し療法)

内視鏡検査・治療時の周術期ワルファリン休薬に関しては、日本消化器内視鏡学会リス

クマネージメント委員会による「内視鏡治療時の抗凝固薬、抗血小板薬使用に関する指針」

(Gastroenterol Endosc 2005;47:2691-2695)では、高危険手技の場合、INR 1.5 以下

であることを確認(低危険手技では望ましい)して、内視鏡治療を行う。抗凝固療法の再

開は後出血を含め出血の危険性がなくなった時点で再開する。血栓塞栓の危険性が高い症

例にはヘパリン置換も考慮する。内視鏡治療はヘパリン点滴中止後 4~6 時間経過してから

開始し、内視鏡治療終了後 2~6 時間経過してからヘパリンを再開する。ワルファリン治療

は一般的には内視鏡治療を行った当日夜に再開し、INR が治療域に達するまでヘパリンの

併用を 4~5 日行う。

◆副作用

→ 血液凝固阻止剤の注意すべき副作用と初期症状 ・・・P51

血液凝固阻止剤に共通して起こる重大な副作用は出血である。

1.出血性合併症

出血の発生機序は主作用である抗血小板作用および抗凝固作用の過剰により起こる。初

期は皮膚・粘膜・運動器の出血症状が多く認められ、紫斑ができやすい。皮膚の点状出血、

鼻出血、歯肉出血、過多月経などの症状に留意するように指導する。また、重篤な場合は、

ショック、貧血、心不全、意識障害などの全身性の症状が発現するが、抗血栓療法の 大

のリスクは出血性合併症である。そのなかでも、輸血によって補正できず、死亡あるいは

重篤な後遺症に結びつく頭蓋内出血は危険な副作用である。

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◇頭蓋内出血

頭蓋内出血と も関係するのは血圧であり、抗血栓療法中は注意深い血圧管理が重要と

される。日本の抗血栓療法の検討(BAT 試験)では収縮期血圧 130mmHg、拡張期血圧

81mmHg が頭蓋内出血の予測の目安であると示されている。

いずれの試験でもワルファリンと比較して新規経口抗凝固剤で頭蓋内出血が有意に少な

い。脳は組織因子が豊富であり、血管損傷時には、組織因子と活性型第Ⅶ因子が速やかに

複合体を形成し、止血反応を起こす。新規経口抗凝固剤は、ワルファリンと異なり第Ⅶ因

子を抑制しないことが頭蓋内出血の少ない一因と考えられる。

◇低用量アスピリンの上部消化管障害

アスピリン投与による消化性潰瘍あるいは出血性胃炎のリスクは 5.5 倍と、海外からの報

告と比しやや高いリスクを示しており、消化管合併症のリスクが高い可能性を示唆してい

る。また、低用量アスピリンによる消化管出血は、年齢を重ねるにつれ増加すると報告さ

れ、他の抗血小板剤や抗凝固剤の併用により出血リスクが増加している。

◇ヘリコバクターピロリ感染と NSAIDs(低用量アスピリンを含む)

近のメタ解析では、消化性潰瘍の主要な病因として、ヘリコバクターピロリ感染と

NSAIDs(低用量アスピリンを含む)が重要であることが明らかにされている。2007 年に

発表された「EBM に基づく胃潰瘍診療ガイドライン第 2 版」では、消化管出血の既往のあ

る例に対し、アスピリン投与を行う際には、除菌後に PPI の投与により再発予防を測るこ

とが妥当であるとされている。抗血栓剤による消化性潰瘍は心窩部痛が少ないのが特徴で

あり、出血の徴候である黒色便と貧血に注意する。

なお、クロピドグレルと PPI(オメプラゾール)の併用は、クロピドグレルの抗血小板効

果が減弱すると考えられるが、まだ十分なエビデンスが得られていない。また、ワルファ

リンはヘリコバクターピロリ除菌剤のクラリスロマイシン、メトロニダゾール、オメプラ

ゾール、ランソプラゾールとの代謝酵素 P450 においての相互作用で抗凝固作用を増強する

可能性がある。ダビガトランもクラリスロマイシンの P-糖蛋白阻害作用によりダビガトラ

ンの血中濃度が上昇し、PPI とでは胃内の pH 上昇により吸収が低下するおそれがある。

◇消化管出血

消化管出血では吐血、下血はトライ靭帯より口側の消化管に出血源が存在し、血液が胃

酸の影響を受けると黒色のタール便となる。それより肛門側からの消化管出血では、通常

は血便となる。便潜血や貧血の有無を定期的に調べる必要がある。

ダビガトランは、頭蓋内出血の頻度がワルファリンよりも明らかに低いのに、消化管出

血、なかでも下部消化管出血の発現率はワルファリンよりも高く、特に抗血小板剤との併

用で頻度が高くなる。これは、吸収されなかったダビガトランエテキシラートが消化管内

で活性代謝物のダビガトランに変換され、それが大腸ポリープなどの器質病変に局所的に

曝露することにより出血を助長すると考えられている。また、リバーロキサバンでも大出

血の頻度が高い。上部消化管出血のリスクが高いものとして、①消化性潰瘍および出血の

既往歴を有する者、②NSAIDs や複数の抗凝固剤併用者、③70 歳以上の高齢者、④原疾患

が心疾患罹患、⑤ヘリコバクターピロリ感染陽性者。下部消化管出血、特に憩室出血のリ

スクについては、①高血圧、②NSAIDs や複数の抗凝固剤併用者、③高齢者、④原疾患が

心疾患罹患、⑤腎不全患者、が報告されている。

消化管出血時に抗血栓剤を中止する必要があるが、中止して生ずるリバウンド現象とし

て血栓塞栓症を起こす危険性が、抗血小板剤に比べてワルファリン使用者に増大する。

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◇血尿

血尿を認めた場合には、原則として早い時期に泌尿器科を受診する。通常は、尿路に出

血するような何らかの原因があり、抗血栓剤がその出血の程度を増幅させると考えるべき

である。尿に血塊が多量に混じった“どろっとした”血尿かどうかを確認し、血塊が混じ

っていない場合は程度も軽く、貧血も来すことは少ない。

2.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の特徴は倦怠感、脱力感、悪心、食欲不振などの不

定愁訴に加え、発熱、動揺する精神神経症状、乏尿、無尿などの腎機能障害、軽度黄疸を

伴う貧血、動悸、息切れ、血小板減少に伴う皮膚、粘膜の出血(紫斑、歯肉出血、血尿、

消化管出血など)が認められるが、早期にはこれらの症状が一つでもあらわれたら本症を

念頭におき、まず末梢血液検査を行う。精神神経症状は増悪と寛解を繰り返し動揺するこ

とが特徴で、軽度の頭痛、突然の見当識障害、せん妄、錯乱、痙攣、うとうとする、意識

障害、など多彩な症状が必発ではないが短時間の内に認められる。

全症例が投与開始から 2 ヵ月以内に発症しているので、使用開始から 2 ヵ月間は、症状

に注意すると共に、臨床検査を定期的に行う必要がある。 近チエノピリジン系薬剤であ

るクロピドグレルがチクロピジンより発症頻度は低いが TTP を引き起こすことが明らか

となり、同じ系統の薬剤であってもチクロピジンは晩期発症型、クロピドグレルは早期発

症型とされ、薬剤によって発症傾向が異なるがその原因は不明である。薬剤によって発症

する TTP では vWF を切断する肝臓由来酵素 vWF-CP (ADAMTS13)に対するインヒビ

ター(抗体)が出現する。

治療方法は、TTP の可能性が認められれば薬剤を中止し、早期の血漿交換療法、新鮮凍

結血漿(FFP)50~80ml/kg/day で血漿交換を 3~5 日間連続して行う。可及的には新鮮

凍結血漿輸注をまず行う。血小板輸血は臨床症状を悪化させるため禁忌である。

3.ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)

ヘパリン投与による軽度の血小板凝集作用の結果、血小板に対する抗体ができ血小板減

少症、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)が引き起こされる。HIT の約 70%は、ヘパリ

ン治療開始 5~14 日後に血小板減少症が始まる。過去 100 日以内にヘパリンを使用してい

る場合、ヘパリン再使用後 24 時間以内に血小板減少、血栓塞栓症状があらわれる。

原因は明らかではないが投与 5 日目以降にヘパリン皮下注射部位の痛み、紅斑、壊死な

どが認められる。HIT に関連した抗体陽性時にはヘパリンを一度に大量静注を行うと、急

激に(5~30 分後に)発熱、悪寒、呼吸困難、胸痛、悪心、嘔吐、頻脈などの全身症状を

示すことがある。発症リスクは低分子ヘパリンよりも未分画ヘパリンの方が 10 倍高く、未

分画ヘパリンでは、ウシ由来の方がブタ由来より発症頻度が高い。

治療方法は、使用しているヘパリン製剤を直ちに中止する。中止した後も HIT 抗体が陰

性化するまで平均で 50~85 日程度かかる。血栓塞栓症状がなくてもヘパリン製剤に代わる

抗血栓塞栓療法-抗トロンビン剤(アルガトロバン製剤:ノバスタン、スロンノン)投与

が行われる。代替の抗凝固療法を行わなければ 1 日当たり約 6%の患者が血栓塞栓症を発症

する。血小板数が回復した症例についてはワルファリン療法に切り替えるか、血小板輸血

は、血小板活性化の源を提供することになり血栓塞栓症を起こしやすくする可能性もある

ため、出血予防としての血小板輸血は避けるべきである。

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4.無顆粒球症

チクロピジンの添付文書「警告」の項に「無顆粒球症があらわれることがあるので、原

則として 2 週に 1 回、血球算定(白血球分画を含む)を行い、副作用の発現が認められた

場合には、ただちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。本剤投与中は、定期的に血液

検査を行い、副作用の発現に注意すること。」と明記されている。

無顆粒球症の発生機序は大きく 2 つに分けられる。

1)免疫学的機序:

医薬品が好中球の細胞膜に結合してハプテンとして働き抗好中球抗体の産生を引き

起こすものである。抗体が結合した好中球は貪食細胞に補足されて破壊される。

2)前駆細胞に対する直接毒性:

医薬品あるいはその代謝物が顆粒球系前駆細胞の核内物質や細胞質内蛋白と結合し

て直接的に傷害するものである

すべての医薬品が、どちらかの機序に明確に区分されるわけではなく、チクロピジンは

どちらの機序か明確に区別されていない。発生時期は投与後 3 ヵ月以内に発症するが、特

に投与後 3~4 週以内のことが多い。無顆粒球症の発症頻度は高く、約 2.4%とされる。

5.肝障害

ワルファリン、チクロピジンをはじめとする抗血小板剤、抗凝固剤において注意すべき

重大な副作用として注意がされている。これら薬物性肝障害の報告がある薬物の服用開始

時には定期的な肝機能検査が行われるように留意するなど、より早期発見に努める必要が

ある。多くの薬物性肝障害は薬物服用後60 日以内に起こることが多いが、90 日以降の発

症もみられる(約20%)。また、自覚症状として肝障害に伴う症状(倦怠感、食欲低下、嘔

気、茶褐色尿、黄疸)に気づいた場合には、すぐに主治医に受診するよう指導する。

肝障害には次の分類がある。

1)アレルギー性特異体質:

薬物性肝障害はアレルギー性特異体質によることが多く、肝障害の初期症状としては、

発熱(38~39℃)、発疹等のアレルギー症状が早期にあらわれ、次第に強くなる全身

倦怠感と嘔気・嘔吐等の消化器症状が出現する。代謝性特異体質による場合には、常

用量であっても、服用期間依存的に肝細胞障害が発現するとされている。特異体質に

よる薬物性肝障害を事前に予測することは困難であるが、起因薬物の中止で速やかに

治癒する例が多い。

2)肝細胞障害型:

肝細胞障害が主体の肝障害(肝細胞障害型)は肝機能検査値に異常はあるものの、肝

障害に無症状で気づかず、起因薬物の服用を継続した場合、肝不全に陥ることがある。

胆汁うっ滞が主体の肝障害(胆汁うっ滞型)では、起因薬物を継続投与した場合には

閉塞性黄疸に匹敵するほどの高度の黄疸を呈し、胆汁性肝硬変に進展する例もある。

したがって予後は原因薬物の中止に大きく左右され、より早期の症状に気づいて、主

治医と連絡をとり、適切な処置を受けられるように指導する必要がある。ワルファリ

ン、チクロピジンでは、胆汁うっ滞を主とする肝障害が発症する。

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◆出血傾向の早期発見

呼吸器系出血、消化器系出血、泌尿器系出血、頭蓋内出血などの臓器における出血は、

出血部位により様々な症状が出現し、出血が進行すると次第に貧血状態になる。手足の点

状出血、青あざができやすい、皮下出血、鼻血、歯茎の出血などの症状やヘモグロビン値

の低下など十分に注意し、出血傾向を早期に発見することが大切である。

・頻脈、動悸、冷汗、手足が冷たくなる・・・大量出血性ショック時に も早期にみられる

・鼻出血、歯肉出血、喀血、吐血・・・肺から出血する喀血、鼻出血や口腔内出血を飲みこ

むことで下血、血便、腹痛、吐血が起こる場合がある

・頭蓋内出血・・・頭痛、意識障害、顔がゆがむ、手が上がらない、言葉がもつれる

・消化器系出血・・・下血、血便、腹痛、吐血、腹部膨満感、血圧低下など

・血尿・・・赤色あるいは茶褐色を呈する

・皮下出血、皮下血腫

・血便(黒便)

・眼内出血・・・目がかすむなどの視力障害

・呼吸器系出血・・・咳、呼吸困難→血痰、喀血

◆出血時の対応

現在、新規経口凝固薬剤の抗凝固作用を中和する薬剤は知られていない。軽度の出血

がみられた場合は、きれいなガーゼやハンカチなどを出血部位に当てて、手でしっかり

と圧迫して止血する。半減期が比較的短いことから程度に応じて薬剤投与の延期または

中止を行うことになる。蛋白結合が高い薬剤においては血液透析の除去は有用ではない。

中等度・重度の出血においての対応を把握しておく。

◇中等度・重度の出血とは

・外科的処置を要する出血

・補液や血行動態管理を要する出血

・血液製剤(濃厚赤血球、新鮮凍結血漿など)または血小板輸血を要する出血

・今後上記処置が必要となることが予想される出血

・脳内出血、くも膜下出血

・ヘモグロビン値≧2g/dL の低下を伴う出血

・重要な臓器(頭蓋内、髄腔内、眼内、心膜、関節内、筋肉内、後腹膜)の出血

・5 分以上持続するか、あるいは反復性の鼻出血(ハンカチに点状のシミが付く程度

よりも重症の出血が 24 時間以内に複数回)またはインターベンション(パッキン

グ、電気焼灼など)を要する出血

・自然発生的肉眼的血尿または尿生殖路への手技(カテーテル留置または手術など)

の後 24 時間以上持続する血尿

・肉眼で確認できる消化管出血で、明らかな下血または吐血がある場合

・数個の出血斑を認める程度よりも重症の直腸出血

・喀痰中に数個の血液の固まりを認める程度よりも重症の喀血

・25cm2以上、何らかの誘因がある場合は 100cm2以上の皮下血腫

・多源性出血

◇中等度・重度の出血の対応

・投与薬剤の中止

・機械的圧迫、外科的処置

-44-

Page 46: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

・補液および血行動態の管理

・血液製剤(濃厚赤血球、新鮮凍結血漿など)または血小板輸血等の適切な対処療法

の開始

・脳内出血やくも膜下出血の場合は、十分な降圧を行う

・上記処置にて止血が困難な場合

・プロトロンビン複合体製剤(PCC)

・活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)

・遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤(rFⅦa)

・ワルファリンにはビタミン K の静注

・ダビガトランには透析除去が可能

◆出血予防

日常生活で無用な出血を防ぐため生活指導を行う。

・大きな怪我をしないように注意する(転倒・骨折を避ける)

・鼻はやさしくかむ

・歯ブラシを柔らかいもので、やさしくブラッシングする

・ひげそりはカミソリでなく電気カミソリを使う

・トイレの後に血便、血尿を確認する

・血圧を十分に下げる

・血糖のコントロール

・禁煙・節酒

・抗血小板剤、非ステロイド性抗炎症剤の 小限の使用

◆相互作用

→ ビタミン K、納豆菌を含む医薬品 ・・・P56

→ 健康食品・サプリメント等食品との相互作用 ・・・P64

抗血小板剤、抗凝固剤、血栓溶解剤に共通する相互作用は、それぞれの併用による作用

増強である。 ・抗凝固剤、血小板凝集を抑制する薬剤、血栓溶解剤、NSAIDs→これら薬剤と併用する

と出血を助長するおそれがある。

〔クロピドグレルの薬物相互作用〕

・薬物代謝酵素(CYP2C9)を阻害する薬剤(オメプラゾール等)→CYP2C19 を阻害す

ることにより、本剤の血中濃度が上昇することがある。

〔ワルファリンの薬物相互作用〕

・ビタミン K 及びビタミン K 含有製剤、食品(納豆、クロレラ食品、青汁)→本剤の効

果を減弱することがある。

・薬物代謝酵素(CYP2C9、CYP1A2、CYP3A4)を阻害または誘導する薬剤

・セントジョーンズワート含有食品→本剤の肝薬物代謝酵素 CYP2C9、CYP3A4 を誘導

し効果を減弱することがある。

〔ダビガトランの薬物相互作用〕

・P-糖蛋白基質阻害または誘導する薬剤→抗凝固作用に影響する。

・セントジョーンズワート含有食品等→併用食品の P-糖蛋白誘導作用により抗凝固作用

が減弱することがある。

-45-

Page 47: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

〔リバーロキサバン、アピキサバンの薬物相互作用〕

・P-糖蛋白基質阻害または誘導する薬剤→抗凝固作用に影響する。

・薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害または誘導する薬剤

・セントジョーンズワート含有食品→強力な CYP3A4 及び P-糖蛋白の誘導作用により、

薬剤の代謝及び排出が促進されると考えられる。

◆高齢者

ダビガトランにおけるリスクは 75 歳以下では、ワルファリンよりも低いが、75 歳を超え

るとワルファリンと同等もしくは増加傾向にある。75 歳以上の患者に投与する場合は高用

量を投与せず、低用量(110mg 1 日 2 回)から厳格な注意ときめ細かな観察のもと使用し

ていく。

◆妊娠・授乳時の投与

ワルファリンは分子量が小さく胎盤を通過し、妊娠初期(6~9 週間)の使用で催奇形性

があり、胎児性ワルファリン症候群といわれ、受胎 100 日以前は鼻粱低形成、骨端形成異

常など、受胎 100 日以降は発育障害、精神遅滞などを来すとされる。催奇形性は用量依存

性といわれ、1 日 5mg 以下では全体のリスクは少ないとされている。ヘパリンは胎盤を通

過しないため胎児毒性はない。

2004 年に出された米国のガイドラインでは、妊娠中にもかかわらず抗凝固療法が必要な

場合は、①抗Ⅹa 活性値や体重により用量調節した低分子ヘパリンを妊娠全期間にわたって

使用、②APTT 値により強力に用量調節した未分画ヘパリンを妊娠全期間にわたって使用、

③妊娠 13 週まで未分画また低分子ヘパリンを使用し、その後、妊娠 3 期の中期までワルフ

ァリン内服を行い分娩まで再び未分画また低分子ヘパリンを使用する、といった 3 つの方

法が推奨されている。

胎児は酵素系とビタミン K 依存性凝固因子が未発達のため、母親よりもワルファリンの

影響を受けやすい。このため 34~36 週目までには投与を中止し、娩出中の胎児出血死を予

防するため、経膣分娩の代わりに帝王切開で分娩すべきである。

乳汁中にはワルファリンの不活性な代謝物のみが移行され、授乳中の乳児への悪影響は

ないといわれている。

◆腎機能障害の患者

ダビガトランは 80%が腎臓代謝であり、透析患者を含むクレアチニンクリアランス(Ccr)

30mL/min 未満(アピキサバン、リバーロキサバンは Ccr15mL/min 未満、エドキサバンは

Ccr30mL/min 未満)の患者での使用は禁忌で、ワルファリンによる抗凝固療法が行われる。

透析患者においては、もともと脳出血など出血リスクが高く、末期腎不全患者ではワルフ

ァリン投与により大出血が 3 倍以上増加するとの報告がある。

●Cockcroft-Gault 式の Ccr 計算式

男性:Ccr =(140-年齢)×体重(Kg)/72×血清クレアチニン値(mg/dL)

女性:Ccr =0.85×(140-年齢)×体重(Kg)/72×血清クレアチニン値(mg/dL)

腎機能評価は、Ccr、推算糸球体濾過量(eGFR)などで行われるが、eGFR は体重が考

慮されておらず、低体重症例では腎機能障害が過小評価される可能性がある。新規経口抗

凝固剤投与時の腎機能評価には使用できず、Ccr で行う。

-46-

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〔参考〕

1) 日本循環器学会他合同研究班:循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドラ

イン(2009 年改訂版)

2) 日本循環器学会他合同研究班:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関

するガイドライン(2009 年改訂版)

3) 日本循環器学会他合同研究班:急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2007 年改訂版)

4) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:重篤副作用疾患別対応マニュアル

5) 日本消化器内視鏡学会:抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン

6) 日本有病者歯科医療学会他合同研究班:抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン,学術

社,2010

7) 抗血栓療法ガイドライン推進選定部会:科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関する

ガイドライン 2010 年版

8) 日本循環器学会学術委員会合同研究班:心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版)

9) 医学情報科学研究所編:病気がみえる vol.5 血液 第 1 版,メディックメディア,2010

10) 木村 健:45 疾患の薬学管理チェックシート,じほう,2008

11) 堀 美智子:ハイリスク薬 説明支援ガイドブック,じほう,2011

12) 樋口宗史他:ラング・デール薬理学,271-290,西村書店,2011

13) 田中千賀子他:NEW 薬理学 改訂第 6 版,南江堂,2011

14) 吉尾 隆他:薬物治療学 第 2 版 血栓・塞栓,109-116,南山堂,2013

15) 大橋京一他:ローレンス臨床薬理学,西村書店,2006

16) 医学情報科学研究所編:病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症 第 1 版,メディックメ

ディア,2009

17) 坂井建雄他:人体の正常構造と機能 7.血液・免疫 改訂第 2 版,日本医事新報,2012

18) 浦野哲盟他:血栓形成と凝固・線溶,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013

19) 清野裕他:病態生理に基づく臨床薬理学,メディカル・サイエンス・インターナショナル,

2008

20) 浦部晶夫他:今日の治療薬 2014,南江堂

21) 龍原 徹他:ポケット医薬品集 2014,白文舎

22) 和田英夫他:特集 抗血栓療法と薬の使い方,月刊薬事 Vol.54 No.7,21-69,じほう,2012

23) 奥村 謙他:特集 新しい経口の抗凝固薬,血液フロンティア Vol.22 No.7,17-86,医学ジ

ャーナル社,2012

24) 坂田 洋他:特集 新規経口抗凝固薬の光と影,medicina Vol.49 No.6,948-1057,医学書

院,2012

25) 後藤信哉他:特集 抗血栓療法,薬局 Vol.64 No.2,15-144,南山堂,2013

26) 町田聖治他:抗血栓療法,レシピ Vol.12 No.4,21-55,南山堂,2013

27) 中村敏明他:検査値のミカタ-血液凝固能,日経ドラッグインフォメーション 2013.10,

21-23,日経 BP マガジン

28) 前田昌子他:薬剤師のための臨床検査ハンドブック 第 2 版,172-182,丸善出版,2012

29) 日本薬剤師会編:「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」

(第 2 版)

各社 添付文書及びインタビューフォーム

2014/02/21 作成

-47-

Page 49: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

血液

凝固

阻止

剤一

アス

ピリ

ン 

(バ

イア

スピ

リン

) 

  

  

  

 バ

イエ

腸溶

錠:100m

g

①②

100m

g 1回

、1回

300m

gまで

空腹

時は

避け

る③

不可

逆的

に阻

害す

るた

め、

1日

1回

投与

4.0

~4.5

0.4

4-

尿:90%

(24h・未

0%)

アス

ピリ

ン・ダ

イア

ルミ

ネー

ト 

(バ

ファ

リン

) 

  

 ライオ

ン=エー

ザイ

錠:81m

g

①②

81m

g 1回

、324m

gま

空腹

時は

避け

る③

・不

可逆

的に

阻害

する

ため

、1

日1回

投与

・早

く吸

収さ

れ、

胃腸

障害

も少

ない

制酸

緩衝

性の

アス

ピリ

ン製

剤・胃

粘膜

を保

護の

目的

でア

ルミ

ニウ

ムが

配合

25分

0.4

-尿

:87%

(0~

52h・

代)

チク

ロピ

ジン

 (パ

ナル

ジン

)  

   

  

 サ

ノフ

錠:1m

g細

粒:1%

①血

管手

術お

よび

血液

体外

循環

に伴

う血

栓・塞

栓の

治療

なら

びに

血流

障害

の改

善②

慢性

動脈

閉塞

症に

伴う

潰瘍

、疼

痛お

よび

冷感

など

の阻

血性

諸症

状の

改善

③虚

血性

脳血

管障

害(一

過性

脳虚

血発

作(TIA

)、

脳梗

塞)に

伴う

血栓

・塞

栓の

治療

④ク

モ膜

下出

血術

後の

脳血

管攣

縮に

伴う

血流

障害

の改

①200~

300m

g 2~

3回

食後

分服

②300~

600m

g 2~

3回

食後

分服

③200~

300m

g 2~

3回

食後

分服

、200m

gの場

合:1回

も可

④300m

g 3回

食後

分服

チエ

ノピ

リジ

ン系

・血

小板

のア

デニ

レー

トシ

クラ

ーゼ

活性

を増

強し

、血

小板

内cA

MP

産生

を高

め血

小板

凝集

能・放

出能

を抑

・血

液レ

オロ

ジー

的性

状を

改善

する

(赤

血球

変形

能増

強、

血液

粘度

低下

警告

:投

与開

始後

2ヵ

月以

内に

血栓

性血

小板

減少

性紫

斑病

(TTP

)、

無顆

粒球

症、

重篤

な肝

障害

等の

副作

用に

注意

→開

始後

2ヵ

月間

は定

期的

に血

液検

査を

行う

必要

があ

・血

小板

抑制

作用

はア

スピ

リン

より

4~

30倍

強く、

持続

的・投

与中

止後

もリ

バウ

ンド

を示

さな

不可

逆的

7~

10

(血

小板

の寿

命)

10~

14

2~

31.6

12C

9、

2C

19、

3A

4

尿:30%

(24h・未

0.0

1~

0.0

2%)

糞:60%

クロ

ピド

グレ

ル 

(プ

ラビ

ック

ス)

  

 

  

 サ

ノフ

錠:25、

75m

g

①虚

血性

脳血

管障

害(心

原性

脳塞

栓症

を除

く)後

の再

発抑

制②

経皮

的冠

動脈

形成

術(P

CI)

が適

用さ

れる

急性

冠症

候群

(不

安定

狭心

症、

非ST上

昇心

筋梗

塞)

①50~

75m

g 1回

 空

腹時

は避

ける

②開

始:300m

g 1回

維持

量:75m

g 1回

チエ

ノピ

リジ

ン系

血小

板の

AD

P受

容体

サブ

タイ

プP

2Y12に

作用

し、

AD

Pの

結合

を阻

害し

血小

板凝

集を

抑制

・チ

クロ

ピジ

ンと

同等

の血

管性

イベ

ント

抑制

効果

あり

・チ

クロ

ピジ

ンと

異な

る酵

素で

代謝

され

るた

め副

作用

の頻

度は

半分

と少

ない

不可

逆的

7~

10

(血

小板

の寿

命)

>14

26.9

3A

4、

1A

2、

2C

19

尿:41%

(5日

・14C

)糞

:51%

配 合 剤

クロ

ピド

グレ

ル/

アス

ピリ

ン 

(コ

ンプ

ラビ

ン)

  

 

  

 サ

ノフ

1錠

経皮

的冠

動脈

形成

術(P

CI)

が適

用さ

れる

急性

冠症

候群

(不

安定

狭心

症、

非ST上

昇心

筋梗

塞、

ST上

昇心

筋梗

塞)安

定狭

心症

、陳

旧性

心筋

梗塞

の虚

血性

心疾

1回

1錠

空腹

時は

避け

クロ

ピド

グレ

ル:A

DP

のP

2Y12受

容体

拮抗

作用

アス

ピリ

ン:C

OX-1阻

害作

異な

る作

用機

序を

有す

るチ

エノ

ピリ

ジン

系抗

血小

板剤

とア

スピ

リン

の二

剤抗

血小

板療

法(D

AP

T)に

1剤

で投

与可

不可

逆的

7~

10

(血

小板

の寿

命)

(ク

ロピ

ドグ

レル

)3A

4、

1A

2、

2C

19

シロ

スタ

ゾー

ル (プ

レタ

ール

) 

  

  

  

  

 大

細粒

:1%

OD

錠:50、

100m

g(後

発品

錠:50、

100m

g

①慢

性動

脈閉

塞症

に基

づく潰

瘍、

疼痛

及び

冷感

等の

虚血

性諸

症状

の改

善②

脳梗

塞(心

原性

脳塞

栓症

を除

く)発

症後

の再

発抑

1回

100m

g 2回

分服

血小

板及

び血

管平

滑筋

のP

DE3

活性

を阻

害し

、抗

血小

板作

用及

び血

管拡

張作

用を

示す

警告

:脈

拍数

増加

、狭

心症

の発

・TXA

2に

よる

血小

板凝

集を

制 ・投与

後3時

間で

血小

板凝

集抑

制作

用が

発現

、48時

間後

に効

果は

消失

可逆

的0.5

~1

2~

43

18.0

(β

相)

3A

4(主

)、

2D

6、

2C

19

尿:30%

(72h・代

代謝

酵素

(CYP

)排

泄持

続時

間(日

)一

般名

(主

な商

品名

)会

社名

血中

半減

期(h

不可

逆的

7~

10

(血

小板

の寿

命)

7~

10

作用

機序

Tm

ax(h

)剤

形・容

量休

薬期

間(日

シク

ロオ

キシ

ゲナ

ーゼ

1(C

OX-1)

を阻

害に

より

、ト

ロン

ボキ

サン

A2

(TXA

2)の

合成

を阻

害し

、血

小板

凝集

抑制

作用

を示

①狭

心症

(慢

性安

定狭

心症

、不

安定

狭心

症)、

心筋

梗塞

、虚

血性

脳血

管障

害(一

過性

脳虚

血発

作(TIA

)、

脳梗

塞) に

おけ

る血

栓・塞

栓形

成の

抑制

②冠

動脈

バイ

パス

術(C

AB

G)

ある

いは

経皮

経管

冠動

脈形

成術

(P

TC

A)施

行後

にお

ける

血栓

・塞

栓形

成の

抑制

③川

崎病

(川

崎病

によ

る心

血管

後遺

症を

含む

ア ス ピ リ ン チ エ ノ ピ リ ジ ン 系

効能

・効

果用

法・用

量(/日

・成

人)

抗血

小板

作用

抗 血 小 板 剤

分類

特徴

1 /

3

-48-

Page 50: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

血液

凝固

阻止

剤一

代謝

酵素

(CYP

)排

泄持

続時

間(日

)一

般名

(主

な商

品名

)会

社名

血中

半減

期(h

)作

用機

序Tm

ax(h

)剤

形・容

量休

薬期

間(日

)効

能・効

果用

法・用

量(/日

・成

人)

抗血

小板

作用

分類

特徴

ジピ

リダ

モー

ル 

(ペ

ルサ

ンチ

ン、

-L)

  

  

  

ベー

リン

ガー

 (ア

ンギ

ナー

ル)

  

  

  

長生

堂=田

(ペ

ルサ

ンチ

ン)

錠:12.5

、25、

100m

g(ペ

ルサ

ンチ

ン-L)

カプセ

ル:150m

g(ア

ンギ

ナー

ル)

錠:12.5

、25m

g散

:12.5

%

(12.5

、25m

g )

①狭

心症

、心

筋梗

塞(急

性期

を除

く)、

その

他の

虚血

性心

疾患

、う

っ血

性心

不全

(1.2

5m

g を

除く)

②ワ

ーフ

ァリ

ンと

の併

用に

よる

心臓

弁置

換術

後の

血栓

・塞

栓の

抑制

③ス

テロ

イド

に抵

抗性

を示

すネ

フロ

ーゼ

症候

群に

おけ

る尿

蛋白

減少

①1回

25m

g 3回

②300~

400m

g 3~

4回

(ペ

ルサ

ンチ

ン-L)

②1回

150m

g 2回

③略

血小

板の

アデ

ニー

ルサ

イク

ラー

ゼ活

性を

増強

、P

DE活

性を

抑制

し、

血小

板内

cA

MP

産生

を高

め血

小板

凝集

能・放

出能

を抑

ペル

サン

チン

-Lは

、4日

でほ

ぼ定

常状

態可

逆的

11~

2

0.5

~2

(100m

g)

2~

4(徐

放剤

1.6

9(徐

放剤

)-

尿:<1%

(24h・代

)胆

汁中

E P A 製 剤

イコ

サペ

ント

酸エ

チル

(EP

A)

 (エ

パデ

ール

、-S)

  

  

  

  

  

持田

 (ソ

ルミ

ラン

) 

  

  

  

  

森下

=帝

軟カプセ

ル:300m

g

(エ

パデ

ール

S)

軟カプセ

ル:300、

600、

900m

g/包

(ソ

ルミ

ラン

軟カプセ

ル:600、

900m

g/包

①閉

塞性

動脈

硬化

症に

伴う

潰瘍

、疼

痛及

び冷

感の

改善

②高

脂血

①1回

600m

g 3回

、毎

食直

後②

1回

600m

g 3回

、毎

食直

後 

TG

異常

:1回

900m

gまで

3回

、毎

食直

かま

ずに

服用

血小

板膜

リン

脂質

中の

EP

A含

量を

増加

させ

、血

小板

膜か

らの

アラ

キド

ン酸

代謝

を競

合的

阻害

によ

り、

TXA

2産

生を

抑制

し、

血小

板凝

集を

抑制

する

と考

えら

れる

・EP

A製

剤・空

腹時

投与

によ

り吸

収低

下→

食直

後服

用不

可逆

的7~

10

(血

小板

の寿

命)

7~

10

6.6

33.6

(β

相)

-

尿:2.7

%糞

:16.7

%呼

気:44.4

%(168h・

14C

5-H

T2

ブロ

ッカ

サル

ポグ

レラ

ート

 (ア

ンプ

ラー

グ)

  

  

  

  

田辺

三菱

錠:50、

100m

g細

粒:10%

慢性

動脈

閉塞

症に

伴う

潰瘍

,疼

痛お

よび

冷感

等の

虚血

性諸

症状

の改

善1回

100m

g 3回

食後

血小

板及

び血

管平

滑筋

にお

ける

5-H

T2レ

セプ

ター

への

拮抗

作用

より

抗血

小板

作用

及び

血管

収縮

抑制

作用

を示

・5-H

T2ブ

ロッ

カー

・単回

投与

後1.5

時間

で凝

集抑

制作

用が

最大

、4~

6時

間持

続、

12時

間後

に効

果は

消失

可逆

的12h

1~

20.9

(100m

g)0.7

5(100m

g)

1A

2、

2B

6、

2C

9、

2C

19、

2D

6、

3A

4

尿:44.5

%(24h・代

)糞

:4.2

%

ベラ

プロ

スト

ナト

リウ

ム 

(ド

ルナ

ー)

   

  

東レ

=ア

ステ

ラス

 (プ

ロサ

イリ

ン)

  

  

  

  

  

科研

錠:20μ

g①

慢性

動脈

閉塞

症に

伴う

潰瘍

、疼

痛及

び冷

感の

改善

②原

発性

肺高

血圧

①120μ

g 3回

食後

②略

血小

板及

び血

管平

滑筋

のP

GI 2受

容体

を介

して

、ア

デニ

レー

トシ

クラ

ーゼ

を活

性化

し、

細胞

内cA

MP

濃度

上昇

、C

a2+

流入

抑制

、TXA

2

生成

抑制

等に

より

抗血

小板

作用

、血

管拡

張作

用等

を示

・P

GI 2誘

導体

・血

小板

凝集

能及

び血

小板

粘着

能を

抑制

可逆

的3h

11~

1.5

1.1

2C

8(僅

か)

尿 (24h・未

14%)

リマ

プロ

スト

アル

ファ

デク

ス 

(オ

パル

モン

) 

  

  

  

  

 小

 (プ

ロレ

ナー

ル)

  

  

  

大日

本住

錠:5μ

g

①閉

塞性

血栓

血管

炎に

伴う

潰瘍

、疼

痛お

よび

冷感

など

の虚

血性

諸症

状の

改善

②後

天性

の腰

部脊

柱管

狭窄

症(SLR

試験

正常

で、

両側

性の

間欠

跛行

を呈

する

患者

)に

伴う

自覚

症状

(下

肢疼

痛、

下肢

しび

れ)お

よび

歩行

能力

の改

30μ

g 3回

分服

②略

末梢

血管

拡張

によ

る血

流量

増加

作用

及び

血小

板凝

集抑

制作

用を

有す

るP

GE1受

容体

を介

して

、ア

デニ

レー

トシ

クラ

ーゼ

を活

性化

・P

GE

1誘

導体

・血

管拡

張作

用、

血流

増加

作用

、血

小板

凝集

抑制

作用

を持

つ ・強

度は

PG

I 2誘

導体

に匹

敵す

可逆

的3h

1~

20.4

20.4

5-

尿:30%

糞:70%

(腸

肝循

環)

P G 誘 導 体

抗 血 小 板 剤

2 /

3

-49-

Page 51: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

血液

凝固

阻止

剤一

代謝

酵素

(CYP

)排

泄持

続時

間(日

)一

般名

(主

な商

品名

)会

社名

血中

半減

期(h

)作

用機

序Tm

ax(h

)剤

形・容

量休

薬期

間(日

)効

能・効

果用

法・用

量(/日

・成

人)

抗血

小板

作用

分類

特徴

ワル

ファ

リン

カリ

ウム

 (ワ

ーフ

ァリ

ン)

  

  

  

  

エー

ザイ

 (ワ

ルフ

ァリ

ンカ

リウ

ム)

  

  

  

  

  

  

各社

錠:0.5

、1、

5m

g

(ワ

ルフ

ァリ

ンカ

リウ

ム)

錠:0.5

、1、

2m

g

血栓

塞栓

症(静

脈血

栓症

、心

筋梗

塞症

、肺

塞栓

症、

脳塞

栓症

、緩

徐に

進行

する

脳血

栓症

等)の

治療

及び

予防

初回

:20~

40m

g 1両

日休

薬し

て治

療域

にま

たは

初回

:5~

6m

g 1回

、数

日間

をか

けて

治療

域に

維持

量:1~

5m

g 1回

ビタ

ミン

K作

用に

拮抗

し肝

臓に

おけ

るビ

タミ

ンK依

存性

血液

凝固

因子

(プ

ロト

ロン

ビン

、第

VII、

第IX

、及

び第

X因

子)の

生合

成を

抑制

して

抗凝

血効

果及

び抗

血栓

効果

を発

警告

:カ

ペシ

タビ

ンと

の併

・効

果発

現が

遅い

・循

環血

液中

の血

液凝

固因

子に

直接

作用

しな

い→

既に

形成

され

た血

栓は

溶解

しな

い・ビ

タミ

ンK含

有の

納豆

、ク

ロレ

ラ、

青汁

の摂

取は

避け

なし

48~

72h

5~

70.5

~1.0

60~

132.5

2C

9(主

)、

1A

2、

3A

4

尿:1/3

(代

糞 (腸

肝循

環)

ト ロ ン ビ ン 阻 害 剤

ダビ

ガト

ラン

エテ

キシ

ラー

ト 

(プ

ラザ

キサ

) 

  

  

 日

本ヘ

゙ーリンガー

硬カプセ

ル:75、

110m

g

非弁

膜症

性心

房細

動患

者に

おけ

る虚

血性

脳卒

中及

び全

身性

塞栓

症の

発症

抑制

1 回

150m

g 1日

2回

必要

に応

じて

1回

110m

g1日

2回

減量

トロ

ンビ

ンの

活性

を直

接的

に阻

警告

:出

血の

危険

・効

果発

現が

速い

・ビ

タミ

ンKを

含有

する

食物

の制

限が

ない

・血

液凝

固能

モニ

タリ

ング

や用

量調

節が

不要

・C

YP

450の

代謝

を受

けな

い・P

-糖

蛋白

基質

・プ

ロド

ラッ

なし

->

20.5

~2

12~

14

-P

-糖

蛋白

尿:85%

(168h)

糞:6%

エド

キサ

バン

 (リ

クシ

アナ

) 

  

  

 第

一三

錠:15、

30m

g

膝関

節全

置換

術、

股関

節全

置換

術、

股関

節骨

折手

術施

行患

者に

おけ

る静

脈血

栓塞

栓症

の発

症抑

制*術

後の

入院

中に

限っ

て使

30m

g 1回

選択

的か

つ直

接的

に第

Ⅹa因

子を

阻害

警告

:脊

椎・硬

膜外

麻酔

、腰

椎穿

刺等

との

併用

によ

る神

経障

・1日

1回

長時

間作

用型

・重

大な

出血

事象

の発

現頻

度が

低い

・凝

固モ

ニタ

リン

グ不

要・相

互作

用が

少な

い・P

-糖

蛋白

基質

なし

24h

1~

34.9

-P

-糖

蛋白

尿:2.9

~35.0

%(48h)

リバ

ーロ

キサ

バン

 (イ

グザ

レル

ト)

  

  

  

バイ

エル

錠:10、

15m

g非

弁膜

症性

心房

細動

患者

にお

ける

虚血

性脳

卒中

及び

全身

性塞

栓症

の発

症抑

制1 回

15m

g 1日

1回

食後

選択

的か

つ直

接的

に第

Ⅹa因

子を

阻害

警告

:出

血の

危険

・1日

1回

長時

間作

用型

・重

大な

出血

事象

の発

現頻

度が

低い

・凝

固モ

ニタ

リン

グ不

要・相

互作

用が

少な

い・P

-糖

蛋白

基質

なし

24h

10.5

~4

5~

13

3A

4(主

)、

2J2

P-糖

蛋白

尿:36%

(未

変化

尿:66%、

糞:28%

アピ

キサ

バン

 (エ

リキ

ュー

ス)

  

  

  

バイ

エル

錠:2.5

、5m

g非

弁膜

症性

心房

細動

患者

にお

ける

虚血

性脳

卒中

及び

全身

性塞

栓症

の発

症抑

1回

5m

g 1日

2回

体重

、腎

機能

に応

じて

、1

回2.5

mg

1日

2回

に減

選択

的か

つ直

接的

に第

Ⅹa因

子を

阻害

警告

:出

血の

危険

・1日

1回

長時

間作

用型

・重

大な

出血

事象

の発

現頻

度が

低い

・凝

固モ

ニタ

リン

グ不

要・相

互作

用が

少な

い・P

-糖

蛋白

基質

なし

24h

1~

23~

3.5

6~

83A

4(主

)P

-糖

蛋白

尿:27%

(未

変化

)糞

:25%

AD

P:ad

enosi

ne-5'-

diph

osp

hat

e  

  

PD

E:ホ

スホ

ジエ

ステ

ラー

ゼ 

  P

GI 2

:プ

ロス

タサ

イク

リン

I 2 

  代

:代

謝物

 未

:未

変化

体 

3H

、14C

:放

射能

活性

注)

特定

薬剤

管理

指導

加算

の対

象と

なる

「血

液凝

固阻

止剤

」に

は、

血液

凝固

阻止

目的

で長

期間

服用

する

アス

ピリ

ンは

含ま

れる

が、

イコ

サペ

ント

酸エ

チル

、塩

酸サ

ルポ

グレ

ラー

ト、

ベラ

プロ

スト

ナト

リウ

ム、

リマ

プロ

スト

アル

ファ

デク

ス及

び解

熱・鎮

痛を

目的

とし

て投

与さ

れる

アス

ピリ

ンは

含ま

れな

い。

(平

成22年

4月

30日

付 厚

生労

働省

保険

局医

療課

事務

連絡

〔参

考〕櫻

井美

由紀

他:ハ

イリ

スク

治療

薬2012,

じほ

う 

  

  

今日

の治

療薬

2012,

南江

愛知

県薬

剤師

会薬

事情

報セ

ンタ

ー('1

3.1

2.1

2)

抗 凝 固 剤

第 Ⅹ a 因 子 阻 害 剤

3 /

3

-50-

Page 52: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

血液凝固阻止剤の注意すべき副作用と初期症状

アスピリン チクロピジン クロピドグレル シロスタゾール ジピリダモールイコサペント酸エチル

サルポグレラート

ベラプロストナトリウム

リマプロストアルファデクス

バイアスピリン

バファリンパナルジン プラビックス プレタール

ペルサンチンアンギナール

エパデール アンプラーグドルナープロサイリン

オパルモンプロレナール

ショック全身が赤くなる、息苦しい、のどが詰まる、むくみ、唇や舌・手足がしびれる、くしゃみ、蕁麻疹

○(不明) ○(0.1%未満)

アナフィラキシー全身が赤くなる、息苦しい、のどが詰まる、むくみ、唇や舌・手足がしびれる、くしゃみ、蕁麻疹

○(不明)

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

手足に赤い小さな斑点または青いあざができる、鼻血、歯ぐきからの出血、尿が赤みを帯びる、皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が褐色になる、顔がいつもより青白い、眠い、物忘れが多い、発熱

○(不明) ○(不明)

無顆粒球症 突然の高熱、さむけ、のどの痛み ○(不明) ○(不明) ○(不明) ○(不明)

汎血球減少体がだるい、頭が重い、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、鼻血、歯ぐきからの出血

○(不明) ○(不明) ○(不明)

赤芽球癆全身倦怠感、頭重、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸息切れ

○(不明)

血小板減少 手足にあざができる、出血しやすい ○(不明) ○(不明) ○(0.1%未満) ○(不明) ○(不明)

白血球減少 発熱、のどの痛み、体がだるい、口内炎 ○(不明)

再生不良性貧血あおあざかできやすい、歯茎や鼻の粘膜からの出血、発熱、のどの痛み、皮膚や粘膜が青白く見える、疲労感、動悸

○(不明) ○(不明) ○(不明)

脳出血等の頭蓋内出血 頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害 ○(不明) ○(不明) ○(1%未満) ○(不明) ○(不明) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満)

硬膜下血腫頭痛、嘔吐、片側の麻痺(片麻痺)やしびれ、痙攣、言葉がうまく話せない(失語症)、呆けや意欲の低下

○(0.1%未満)

肺出血 喀血、血痰 ○(不明) ○(不明) ○(不明)

消化管出血等の重篤な出血胃のもたれ、空腹時にお腹が痛い、胃が痛い、食欲がなくなる、便が黒くなる

○(不明) ○(不明) ○(1%未満) ○(0.1%未満) ○(不明) ○(0.1%未満) ○(0.1%未満)

眼底出血 視力障害、飛蚊症 ○(不明) ○(0.36%) ○(0.1%未満) ○(不明) ○(0.1%未満)

鼻出血 鼻血 ○(不明) ○(0.1%未満)

皮下出血出血点(直径1mm前後のあざ)、出血斑、手掌大のあざ

関節血腫 関節内に出血が起こり血がたまっている ○(0.1%未満)

後天性血友病 ○(不明)

うっ血性心不全 呼吸困難、全身のむくみ

心筋梗塞急な強い胸痛、ドキドキする、胸が締めつけられたような感じ、胸が圧迫されたように苦しい、気分が悪い、吐き気

○(不明)

狭心症 胸の痛み、圧迫感、狭窄感、冷汗 ○(1.16%) ○(0.1%未満) ○(不明)

心室頻拍 めまい、動悸、胸が痛む、胸部の不快感

皮膚粘膜眼症候群高熱(38℃以上)、のどが痛い、関節が痛い、体がだるい、皮膚が斑に赤くなる、水ぶくれができる、口の中がただれる、目の充血

○(不明) ○(不明) ○(不明)

中毒性表皮壊死融解症高熱(38℃以上)、のどが痛い、親指大の赤い湿疹、唇や口の中のただれ、皮膚が焼けるように熱く感じる、水ぶくれができる

○(不明) ○(不明) ○(不明)

皮膚壊死 皮膚の痛み、表面は赤く熱がある

紅皮症顔に発疹ができる、顔が斑に赤くなる、全身の皮膚が赤くなる、皮膚のカスがぼろぼろ落ちる、発熱

○(不明)

多形滲出性紅斑皮膚が円形状など不揃いに赤くなる・水ぶくれができる、全身の皮膚にかゆみや部分的に痛みがある

○(不明) ○(不明)

剥脱性皮膚炎顔に発疹ができる、顔が斑に赤くなる、全身の皮膚が赤くなる、皮膚のカスがぼろぼろ落ちる、発熱

○(不明)

胃潰瘍・十二指腸潰瘍胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐き気、胃が痛い、空腹時にみぞおちが痛い、便が黒くなる、吐血

○(不明) ○(不明)

小腸・大腸潰瘍みぞおちの痛み、圧痛、吐き気、嘔吐、胸やけ、もたれ

○(不明)

喘息発作 息苦しさ、喘鳴 ○(不明)

間質性肺炎、好酸球性肺炎階段を登ったり、少し無理をすると息切れ・息苦しい、空咳、発熱、これらの症状が急に出現・持続する

○(不明) ○(0.1%未満) ○(不明) ○(不明)

(重篤な)肝障害意識がぼんやりする、疲れる、食欲がない、体がだるい、皮膚がかゆい、皮膚や眼が黄色くなる

○(不明) ○(不明) ○(不明)○(0.1~5%未満)黄疸(不明)

○(不明) ○(不明) ○(不明)

急性腎不全尿量が少なくなる、ほとんど尿が出ない、一時的に尿量が多くなる、発疹、むくみ、体がだるい

○(不明) ○(不明) ○(不明)

全身性エリテマトーデス(SLE)様症状

発熱、体がだるい、体重が減少、筋肉や関節の痛み・腫れ、発疹、皮膚が斑状に赤くなる、リンパ節が腫れる

○(不明)

過敏症(気管支痙攣、血管浮腫等)

呼吸困難、目や唇周囲の膨張、発熱、寒気、意識障害

○(不明)薬剤性過敏症症候群

○(不明)

鼻出血 鼻血 ○(0.43%) ○(2.05%) ○(0.02%) ○(0.05%) ○(0.03%)

皮下出血出血点(直径1mm前後のあざ)、出血斑、手掌大のあざ

○(0.49%) ○(3.30%) ○(0.06%) ○(0.02%) ○(0.03%) ○(0.04%)

歯肉出血 歯ぐきからの出血 ○(0.13%) ○(0.48%)

貧血階段や坂を上るときの動悸、息切れ、頭痛、めまい、耳鳴り、全身倦怠感

○(0.16%) ○(0.2%)

胃炎みぞおちの痛み、圧痛、吐き気、嘔吐、胸やけ、もたれ

○(0.4%)

悪心・嘔吐 気持ちが悪い、吐く ○(0.04%) ○(0.16%) ○(0.14%) ○(0.15%)○(0.44%)嘔吐(0.1%)

嘔吐(0.25%) 嘔吐(0.08%) ○(0.5%)

食欲不振 食欲がない ○(0.3%) ○(0.32%) ○(0.27%) ○(0.17%) ○(0.08%) ○(0.12%) ○(0.2%)

下痢 泥状又は水様の便 ○(0.37%) ○(0.4%) ○(1.1%)

動悸 胸がどきどきする ○(0.08%) ○(1.04%) ○(0.1%) ○(0.21%) ○(0.17%)

頻脈 脈拍数の増加 ○(0.12%) ○(0.39%)

不眠 眠れない ○(0.04%) ○(0.16%) ○(0.17%)

めまい めまい ○(0.41%)

頭痛 頭の痛み ○(0.11%) ○(0.36%) ○(3.73%) ○(3.46%) ○(1.2%) ○(0.3%)

発疹 皮膚の吹出物 ○(1.05%) ○(1.21%) ○(0.22%) ○(0.15%) ○(0.15%) ○(0.37%)

顔面潮紅 顔がほてって赤くなる ○(0.8%) ○(0.28%)

ほてり ほてり ○(0.3%) ○(0.13%)

    〔参考〕くすりの適正使用協議会監修:くすりの副作用用語事典,第一メディカル        重大な副作用疾患別対応マニュアル,医薬品医療機器総合機構

重大な副作用 初期症状

抗血小板剤

その他の副作用

1 / 2 -51-

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血液凝固阻止剤の注意すべき副作用と初期症状

ショック全身が赤くなる、息苦しい、のどが詰まる、むくみ、唇や舌・手足がしびれる、くしゃみ、蕁麻疹

アナフィラキシー全身が赤くなる、息苦しい、のどが詰まる、むくみ、唇や舌・手足がしびれる、くしゃみ、蕁麻疹

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

手足に赤い小さな斑点または青いあざができる、鼻血、歯ぐきからの出血、尿が赤みを帯びる、皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が褐色になる、顔がいつもより青白い、眠い、物忘れが多い、発熱

無顆粒球症 突然の高熱、さむけ、のどの痛み

汎血球減少体がだるい、頭が重い、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、鼻血、歯ぐきからの出血

赤芽球癆全身倦怠感、頭重、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸息切れ

血小板減少 手足にあざができる、出血しやすい

白血球減少 発熱、のどの痛み、体がだるい、口内炎

再生不良性貧血あおあざかできやすい、歯茎や鼻の粘膜からの出血、発熱、のどの痛み、皮膚や粘膜が青白く見える、疲労感、動悸

脳出血等の頭蓋内出血 頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害

硬膜下血腫頭痛、嘔吐、片側の麻痺(片麻痺)やしびれ、痙攣、言葉がうまく話せない(失語症)、呆けや意欲の低下

肺出血 喀血、血痰

消化管出血等の重篤な出血胃のもたれ、空腹時にお腹が痛い、胃が痛い、食欲がなくなる、便が黒くなる

眼底出血 視力障害、飛蚊症鼻出血 鼻血

皮下出血出血点(直径1mm前後のあざ)、出血斑、手掌大のあざ

関節血腫 関節内に出血が起こり血がたまっている

後天性血友病

うっ血性心不全 呼吸困難、全身のむくみ

心筋梗塞急な強い胸痛、ドキドキする、胸が締めつけられたような感じ、胸が圧迫されたように苦しい、気分が悪い、吐き気

狭心症 胸の痛み、圧迫感、狭窄感、冷汗

心室頻拍 めまい、動悸、胸が痛む、胸部の不快感

皮膚粘膜眼症候群高熱(38℃以上)、のどが痛い、関節が痛い、体がだるい、皮膚が斑に赤くなる、水ぶくれができる、口の中がただれる、目の充血

中毒性表皮壊死融解症高熱(38℃以上)、のどが痛い、親指大の赤い湿疹、唇や口の中のただれ、皮膚が焼けるように熱く感じる、水ぶくれができる

皮膚壊死 皮膚の痛み、表面は赤く熱がある

紅皮症顔に発疹ができる、顔が斑に赤くなる、全身の皮膚が赤くなる、皮膚のカスがぼろぼろ落ちる、発熱

多形滲出性紅斑皮膚が円形状など不揃いに赤くなる・水ぶくれができる、全身の皮膚にかゆみや部分的に痛みがある

剥脱性皮膚炎顔に発疹ができる、顔が斑に赤くなる、全身の皮膚が赤くなる、皮膚のカスがぼろぼろ落ちる、発熱

胃潰瘍・十二指腸潰瘍胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐き気、胃が痛い、空腹時にみぞおちが痛い、便が黒くなる、吐血

小腸・大腸潰瘍みぞおちの痛み、圧痛、吐き気、嘔吐、胸やけ、もたれ

喘息発作 息苦しさ、喘鳴

間質性肺炎、好酸球性肺炎階段を登ったり、少し無理をすると息切れ・息苦しい、空咳、発熱、これらの症状が急に出現・持続する

(重篤な)肝障害意識がぼんやりする、疲れる、食欲がない、体がだるい、皮膚がかゆい、皮膚や眼が黄色くなる

急性腎不全尿量が少なくなる、ほとんど尿が出ない、一時的に尿量が多くなる、発疹、むくみ、体がだるい

全身性エリテマトーデス(SLE)様症状

発熱、体がだるい、体重が減少、筋肉や関節の痛み・腫れ、発疹、皮膚が斑状に赤くなる、リンパ節が腫れる

過敏症(気管支痙攣、血管浮腫等)

呼吸困難、目や唇周囲の膨張、発熱、寒気、意識障害

鼻出血 鼻血

皮下出血出血点(直径1mm前後のあざ)、出血斑、手掌大のあざ

歯肉出血 歯ぐきからの出血

貧血階段や坂を上るときの動悸、息切れ、頭痛、めまい、耳鳴り、全身倦怠感

胃炎みぞおちの痛み、圧痛、吐き気、嘔吐、胸やけ、もたれ

悪心・嘔吐 気持ちが悪い、吐く

食欲不振 食欲がない

下痢 泥状又は水様の便動悸 胸がどきどきする頻脈 脈拍数の増加不眠 眠れないめまい めまい頭痛 頭の痛み発疹 皮膚の吹出物顔面潮紅 顔がほてって赤くなるほてり ほてり

    〔参考〕くすりの適正使用協議会監修:くすりの副作用用語事典,第一メディ        重大な副作用疾患別対応マニュアル,医薬品医療機器総合機構

重大な副作用 初期症状

その他の副作用

ワルファリンカリウム

ダビガトランエテキシラート

リバーロキサバン

アピキサバン エドキサバン

ワーファリン プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナ

○(不明) ○(不明)頭蓋内:0.13%脳:0.10%

○(不明)

○(不明) ○(1.6%)胃腸:1.05%直腸:1.15%

○(0.7%)

○(0.27%) ○(0.3%)

○(不明) 創傷出血:1.1%

○(不明)3~6日以内発現

○(不明) 0.1~1%未満○(0.1~5%未満)黄疸(不明)

○(1.3%) ○(14%) ○(5.0%) ○(1.3%)

○(3.1%) ○(7.8%) ○(5.0%) ○(4.9%)

○(0.3%)

○(2.7%) ○(1.1%) ○(0.4%)

○(0.3%) ○(0.1%)

○(不明) ○(1.1%)

○(不明) ○(1.1%)

○(不明)

抗凝固剤

愛知県薬剤師会 薬事情報センター('14.01.24)

2 / 2 -52-

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手術

前に

中止

を考

慮す

る薬

剤・ハ

ーブ

★ 血

液凝

固阻

止剤

は、

近年

、抜

歯や

小手

術の

場合

など

出血

した

時の

対応

が容

易な

場合

には

、継

続す

るこ

とが

基本

とさ

れて

いる

一般

名(主

な商

品名

)主

な作

用機

序持

続時

間休

薬期

間ア

デニ

レー

トシ

クラ

ーゼ

活性

促進

8~

10

日1

0~

14

β-ト

ロン

ボグ

ロブ

リン

放出

抑制

(血

小板

の寿

命)

(不

可逆

的)

8~

10

日1

0~

14

(血

小板

の寿

命)

(不

可逆

的)

7~

10

日7

~1

0日

(血

小板

の寿

命)

(不

可逆

的)

7~

10

日7

~1

0日

(血

小板

の寿

命)

(不

可逆

的)

シロ

スタ

ゾー

ル(プ

レタ

ール

)ホ

スホ

ジエ

ステ

ラー

ゼ阻

害0.5

~1

日3

~4

サル

ポグ

レラ

ート

塩酸

塩(ア

ンプ

ラー

グ)

血小

板セ

ロト

ニン

5-H

T2受

容体

阻害

12

時間

1~

2日

プロ

スタ

グラ

ンジ

ンE

1誘

導体

アデ

ニレ

ート

シク

ラー

ゼ活

性促

プロ

スタ

グラ

ンジ

ンI 2誘

導体

アデ

ニレ

ート

シク

ラー

ゼ活

性促

ジピ

リダ

モー

ル(ペ

ルサ

ンチ

ン)

ホス

ホジ

エス

テラ

ーゼ

阻害

-休

薬の

必要

なし

トラ

ピジ

ル(ロ

コル

ナー

ル)

トロ

ンボ

キサ

ンA

2合

成阻

害2

4時

間3

~4

ジラ

ゼプ

塩酸

塩水

和物

(コ

メリ

アン

)ホ

スホ

ジエ

ステ

ラー

ゼ阻

害-

2日

プロ

スタ

グラ

ンジ

ンE

2作

用増

ホス

ホジ

エス

テラ

ーゼ

阻害

血小

板膜

安定

化作

アラ

キド

ン酸

代謝

阻害

→ト

ロン

ボキ

サン

A2合

阻害

5~

7日

(不

可逆

的)

ダビ

ガト

ラン

エテ

キシ

ラー

ト(プ

ラザ

キサ

)ト

ロン

ビン

の活

性阻

害2

~3

日2

リバ

ーロ

キサ

バン

(イ

グザ

レル

ト)

第Ⅹ

a因子

阻害

24

時間

1日

アピ

キサ

バン

(エ

リキ

ュー

ス)

第Ⅹ

a因子

阻害

24

時間

1~

2日

  

  

  

  

  

  

  

 「循

環器

疾患

にお

ける

抗凝

固・抗

血小

板療

法に

関す

るガ

イド

ライ

ン(2009年

改訂

版)」よ

抗凝

固剤

抗血

小板

チク

ロピ

ジン

塩酸

塩(パ

ナル

ジン

クロ

ピド

グレ

ル硫

酸塩

(プ

ラビ

ック

ス)

アデ

ニレ

ート

シク

ラー

ゼ活

性促

アス

ピリ

ン(バ

ファ

リン

81m

g、バ

イア

スピ

リン

)シ

クロ

オキ

シゲ

ナー

ゼ阻

イコ

サペ

ント

酸エ

チル

(エ

パデ

ール

)ア

ラキ

ドン

酸代

謝阻

害→

トロ

ンボ

キサ

ンA

2合

阻害

プロ

スタグラ

ンジン

製剤

リマ

プロ

スト

アル

ファ

デク

ス(オ

パル

モン

)3

時間

1~

3日

ベラ

プロ

スト

ナト

リウ

ム(ド

ルナ

ー、

プロ

サイ

リン

)6

時間

1~

2日

冠血

管拡

張剤

脳血

管代

謝改

善剤

イブ

ジラ

スト

(ケ

タス

)-

3~

10

イフ

ェン

プロ

ジル

酒石

酸塩

(セ

ロク

ラー

ル)

-2

  

  

  

  

  

  

  

 「科

学的

根拠

に基

づく抗

血栓

療法

患者

の抜

歯に

関す

るガ

イド

ライ

ン2010年

版」よ

り 

  

  

 本

紙P

39参

ワル

ファ

リン

カリ

ウム

(ワ

ーフ

ァリ

ン)

ビタ

ミン

K依

存性

凝固

因子

(Ⅱ

、Ⅶ

、Ⅸ

、Ⅹ

)の

蛋白

合成

阻害

2~

3日

〔参

考〕

 添

付文

書 

  

月刊

薬事

 V

ol.4

5 N

o.3

, 1

78-179,

2003 

  

Phar

mac

y Toda

y V

ol.2

1 N

o.1

, 4

4-45,

2008

*ニ

セル

ゴリ

ン(サ

アミ

オン

):必

ずし

も休

薬が

必要

な薬

剤で

はな

いが

、血

小板

凝集

抑制

作用

があ

るた

め、

症状

等を

みて

可能

であ

れば

3日

間(体

外排

泄期

間)の

休薬

が望

まし

い。

 (メー

カー

確認

1 /

3

-53-

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手術

前に

中止

すべ

きハ

ーブ

* 安

全性

確保

から

、可

能で

あれ

ば、

術前

2週

間前

から

使用

を中

止す

るこ

とが

望ま

しい

ハー

ブ名

主た

る薬

理作

用手

術時

の注

意点

中止

期間

エキ

ナケ

ア細

胞性

免疫

活性

の賦

活ア

レル

ギー

反応

免疫

抑制

剤の

効果

減弱

長期

摂取

によ

る免

疫の

減弱

デー

タな

し *

麻黄

(エ

フェ

ドラ

) 

(医

薬品

成分

)交

感神

経刺

激作

用に

よる

心拍

数の

増加

、血

圧上

頻脈

およ

び血

圧上

昇に

よる

心筋

梗塞

、脳

卒中

の危

険性

、ハ

ロー

セン

によ

る心

室性

不整

脈、

長期

摂取

に伴

う内

因性

カテ

コラ

ミン

の枯

渇に

よる

循環

動態

の不

安定

化、

モノ

アミ

ンオ

キシ

ダー

ゼと

の併

用に

よる

生命

の危

険性

少な

くと

も術

前2

4時

間前

から

中止

ニン

ニク

血小

板凝

集抑

制(お

そら

く不

可逆

的)、

線溶

亢進

、意

義不

明の

降圧

効果

出血

リス

クの

増加

(特

に血

小板

凝集

抑制

剤と

の併

用時

)少

なくと

も術

前7

日間

の中

イチ

ョウ

葉血

小板

活性

化因

子の

抑制

出血

リス

クの

増加

(特

に血

小板

凝集

抑制

剤と

の併

用時

)少

なくと

も術

前3

6時

間前

から

中止

チョ

ウセ

ンニ

ンジ

ン血

糖降

下、

血小

板凝

集抑

制(お

そら

く不

可逆

的)、

PT-A

PTT延

長(動

物実

験)

低血

糖、

出血

リス

クの

増加

、ワ

ルフ

ァリ

ン抗

凝固

作用

の減

弱少

なくと

も術

前7

日間

の中

フィ

ーバ

ーフ

ュー

血小

板凝

集抑

制、

抗炎

症作

用出

血リ

スク

の増

加(特

に血

小板

凝集

抑制

剤と

の併

用時

)少

なくと

も術

前7

日間

の中

カバ

 (医

薬品

成分

セン

ト・ジ

ョー

ンズ

・ワ

ート

神経

伝達

物質

の再

取り

込み

抑制

CYP

誘導

作用

によ

る種

々の

薬剤

濃度

低下

少な

くと

も術

前5

日間

の中

ショ

ウガ

末梢

循環

改善

、抗

酸化

作用

、消

化促

進出

血リ

スク

の増

加(特

に血

小板

凝集

抑制

剤と

の併

用時

)少

なくと

も術

前7

日間

の中

魚油

血小

板凝

集抑

制出

血リ

スク

の増

加(特

に血

小板

凝集

抑制

剤と

の併

用時

)少

なくと

も術

前3

~4

日間

の中

バレ

リア

ン鎮

静麻

酔薬

の鎮

静作

用増

強、

ベン

ゾジ

アゼ

ピン

様の

禁断

症状

、長

期摂

取に

よる

麻酔

薬必

要量

の増

加デ

ータ

なし

*

ノコ

ギリ

ヤシ

前立

腺肥

大改

善出

血リ

スク

の増

加(不

明)

デー

タな

し *

アル

ファ

ルフ

ァコ

レス

テロ

ール

低下

、更

年期

障害

の改

善ワ

ルフ

ァリ

ン抗

凝固

作用

の減

弱(ビ

タミ

ンK含

有)

デー

タな

し *

鎮静

、抗

不安

麻酔

薬の

鎮静

作用

増強

、耽

弱、

耐性

、禁

断症

状(未

研究

)少

なくと

も術

前2

4時

間前

から

中止

2 /

3

-54-

Page 56: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

ハー

ブ名

主た

る薬

理作

用手

術時

の注

意点

中止

期間

アロ

エ便

秘の

改善

出血

リス

クの

増加

(プ

ロス

タグ

ラン

ジン

合成

低下

によ

る血

小板

凝集

抑制

)デ

ータ

なし

*

クロ

レラ

免疫

力を

高め

るワ

ルフ

ァリ

ン抗

凝固

作用

の減

弱(ビ

タミ

ンK含

有)

デー

タな

し *

青汁

(ケ

ール

)抗

酸化

作用

、整

腸作

用ワ

ルフ

ァリ

ン抗

凝固

作用

の減

弱(ビ

タミ

ンK含

有)

デー

タな

し *

クマ

ザサ

血行

促進

、胃

腸の

活性

化ワ

ルフ

ァリ

ン抗

凝固

作用

の減

弱(ビ

タミ

ンK含

有)

デー

タな

し *

ウコ

ン(ア

キウ

コン

)肝

機能

の改

善、

健胃

作用

出血

リス

クの

増加

(抗

凝固

作用

をも

つ)

デー

タな

し *

カモ

ミー

ル湿

疹出

血リ

スク

の増

加(抗

凝固

作用

をも

つ)

デー

タな

し *

ナッ

トー

キナ

ーゼ

血栓

溶解

出血

リス

クの

増加

(抗

凝固

剤と

の併

用時

)デ

ータ

なし

*

パパ

イヤ

アレ

ルギ

ー体

質の

改善

出血

リス

クの

増加

(抗

凝固

剤と

の併

用時

)デ

ータ

なし

*

コエ

ンザ

イム

Q10

動脈

硬化

の予

防、

エネ

ルギ

ー産

生出

血リ

スク

の増

加(抗

凝固

剤、

血小

板凝

集抑

制剤

との

併用

時)

デー

タな

し *

パッ

ショ

ンフ

ラワ

ー精

神の

安定

、鎮

静、

催眠

作用

出血

リス

クの

増加

(抗

凝固

剤、

血小

板凝

集抑

制剤

との

併用

時)

デー

タな

し *

セイ

ヨウ

エビ

ラハ

ギ(メ

リロ

ート

)末

梢循

環改

善作

用、

痔核

症状

の緩

和作

用出

血リ

スク

の増

加(ク

マリ

ン誘

導体

を含

むた

め)

デー

タな

し *

〔参

考文

献〕

1.

小内

 亨

,塚

田弥

生:代

替医

療の

日本

特有

の問

題点

,治

療,

84:31-37,

2002

2.

丸山

徹他

:手

術で

注意

すべ

きサ

プリ

メン

トと

薬剤

師の

役割

,医

薬ジ

ャー

ナル

,40:3339-3343,

2004

3.

清水

俊雄

:機

能性

食品

素材

便覧

,薬

事日

報,

2004

4.

吉川

敏一

:医

療従

事者

のた

めの

機能

性食

品ガ

イド

,講

談社

,2004

愛知

県薬

剤師

会薬

事情

報セ

ンタ

ー、

ぎふ

薬事

情報

セン

ター

('1

4.0

1.2

0)

3 /

3

-55-

Page 57: ハイリスク薬のポイントブック<4> ~ 血液凝固阻止剤 · こで、今回はハイリスク薬の「血液凝固阻止剤」について冊子にまとめました。日常業務にお役立

  ビタミンK、納豆菌を含む医薬品

薬効分類 薬剤名等 V.K又は納豆菌含有量 効能 添付文書に記載された相互作用

カチーフN 5mg錠  〃   10mg錠  〃  散

5mg:5mg10mg:10mg散:10mg /1mg

ワルファリンの作用を減弱する。

ケーワン5mg錠  〃  10mg錠  〃  20mgカプセル

5mg錠:5mg10mg錠:10mg20mgカプセル:20mg

ワルファリンの作用を減弱する。

ツインライン配合経腸用液 252μg /400mL

ツインラインNF配合経腸用液* 25.00μg /400mL

ラコール配合経腸用液 250μg /400mL

ラコールNF配合経腸用液* 25.00μg /400mL

エレンタール配合内用剤 9μg /80g

エレンタールP乳幼児用配合内用剤

14μg /80g

エンシュア・H 26.3μg /250mL

エンシュア・リキッド 17.5μg /250mL

アミノレバンEN配合散 5.5μg /50g   -

ヘパンED配合内用剤 44μg /80g   -

複合止血剤 オフタルムK錠 5mg毛細血管抵抗性の減弱による出血

ワルファリンの作用を減弱する。

ケイツーシロップ0.2% 2mg /mL新生児出血症及び新生児低プロトロンビン血症の治療

ケイツーカプセル5mg 5mgビタミンKの欠乏による次の疾患及び症状

グラケーカプセル15mg 15mg骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善

併用禁忌ワルファリンの作用を減弱する。

納豆菌配合消化酵素剤 ドライアーゼ配合細粒 60mg /g 消化異常症状の改善納豆で抗凝血作用が減弱するとの報告がある。

【一般用用医薬品】

薬効分類 薬剤名等 V.K又は納豆菌含有量 効能 添付文書に記載

パンラクミンプラス 10mg /9錠

フェカルミンゴールド錠 10mg /6錠

フェカルミンスリーE顆粒「分包」フェカルミンスリーE顆粒

50mg /3.6g

新コンチーム錠麦芽末、納豆菌、麹菌等100mg /12錠

ザ・ガードコーワ整腸錠PC 10mg /9錠

ファイバコートα 25mg /1.5g

ナチュラートコーワ 10mg /3錠

ベクニスソフト 10mg /2袋   -

歯痛・歯槽膿漏薬 デンテクE 4.5mg /3カプセル歯槽膿漏・歯肉炎に伴う諸症状の緩和

血栓塞栓症で血液の凝固を抑制するワルファリンを服用中の人

ビタミンK2(メナテトレノン)

ビタミンK2製剤

納豆菌末

整腸(便通を整える)、便秘、胃部・腹部膨満感、消化不良、胸やけ等

整腸(便通を整える)、腹部膨満感、軟便、便秘

抗凝血剤「ワルファリンカリウム」を服用している人

整腸薬

  -

経管栄養補給

    医薬品医療機器情報提供ホームページ:医療用、一般用医薬品添付文書情報より検索

便秘

ビタミンK1(フィトナジオン)

瀉下薬(下剤)

抗凝血剤「ワルファリンカリウム」を服用している人

*ツインラインNF、ラコールNFは、ビタミンK含有量を従来品の1/10にすることによって、ワルファリン作用減弱リスクを低減している。

愛知県薬剤師会薬事情報センター、ぎふ薬事情報センター('14.01.07)

ワルファリンの作用を減弱する。

【医療用医薬品】(注射剤は除く)

ワルファリンの作用を減弱する。

ワルファリンの作用を減弱する。

納豆菌末

肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善

  -

たん白アミノ酸製剤

ビタミンK1(フィトナジオン)

ビタミンK欠乏症の予防及び治療、出血

ビタミンK1製剤

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

114非ステロイド性消炎・鎮痛剤(COX-2選択的阻害剤) セレコキシブ(セレコックス錠)

外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている。<重大な副作用>(頻度不明)心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象が報告されている。

本剤には血小板に対する作用はない

219選択的抗トロンビン剤 アルガトロバン  (ノバスタンHI注他)

アルガトロバン製剤の脳血栓症急性期の臨床試験において、出血性脳梗塞の発現が認められている。脳血栓症の患者に使用する場合には、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、出血が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

抗凝血作用

241

性腺刺激ホルモン ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン  (HMG「TYK」注他) ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン  (ゴナトロピン注他)

ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン製剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合又は併用した場合、血栓症、脳梗塞等を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群があらわれることがある。

卵胞ホルモン分泌

黄体ホルモン製剤 メドロキシプロゲステロン (ヒスロンH錠)

本剤の投与中に重篤な動・静脈血栓症が発現し、死亡に至った報告がある。

黄体ホルモン抗エストロゲン作用

卵胞ホルモン製剤 エストラジオール(エストラーナテープ、ディビゲル) 結合型エストロゲン(プレマリン錠) エチニルエストラジオール  (プロセキソール錠) エストリオール(ホーリン錠)

<禁忌>血栓性静脈炎や肺塞栓症のある患者、又はその既往歴のある患者[卵胞ホルモン剤は凝固因子を増加させ、血栓形成傾向を促進するとの報告がある。]

エストロゲン作用

黄体ホルモン・卵胞ホルモン混合 ドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合(ヤーズ配合錠) クロルマジノン・メストラノール配合(ルテジオン配合錠)

本剤の服用により、血栓症があらわれ、致死的な経過をたどることがあるので、血栓症が疑われる次のような症状があらわれた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

黄体ホルモン・卵胞ホルモン混合 クロルマジノン・メストラノール配合(ルテジオン配合錠) ノルエチステロン・エチニルエストラジオール配合  (ルナベル配合錠)

<禁忌>血栓性静脈炎、肺塞栓症又はその既往歴のある患者[血液凝固能の亢進により、これらの症状が増悪することがある。]

249子宮内膜症治療剤 ダナゾール(ボンゾール錠)

血栓症を引き起こすおそれがあるので、観察を十分に行いながら慎重に投与すること。異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

機序不明 (血小板増加作用、アンチトロンビンⅢ低下作用、赤血球増加作用により、凝固能に影響を与えると考えられる)

254 経口避妊薬

<禁忌>血栓性静脈炎、肺塞栓症,脳血管障害、冠動脈疾患又はその既往歴のある患者[血液凝固能が亢進され、これらの症状が増悪することがある。]

エストロゲン作用

259

勃起不全治療剤 タダラフィル(シアリス錠) シルデナフィル(バイアグラ錠) バルデナフィル(レビトラ錠)

死亡例を含む心筋梗塞等の重篤な心血管系等の有害事象が報告されているので、本剤投与の前に、心血管系障害の有無等を十分確認すること。

cGMP特異的PDE5阻害剤

332下肢静脈瘤硬化剤 ポリドカノール  (ポリドカスクレロール注)

本剤投与により、肺塞栓、深部静脈血栓等の重篤な副作用が発現するおそれがあるので、症状等を注意深く観察し、発症が疑われた場合は適切な処置を行うこと。

血管内皮細胞を障害することにより過剰な血栓形成を抑制

395線維素溶解酵素剤 ウロキナーゼ注射剤  (ウロキナーゼ注)

重篤な出血性脳梗塞の発現が報告されている。出血性脳梗塞を起こしやすい脳塞栓の患者に投与することのないよう、脳血栓の患者であることを十分確認すること。

線維素溶解酵素剤

添付文書の警告欄に「血栓症」に関する注意喚起の記載がある薬剤

247

248 エストロゲン作用

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

免疫抑制剤 タクロリムス  (プログラフカプセル)

本剤の投与において、重篤な副作用(腎不全、心不全、感染症、全身痙攣、意識障害、脳梗塞、血栓性微小血管障害、汎血球減少症等)により、致死的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識と経験を有する医師が使用すること。

骨粗鬆症治療剤 ラロキシフェン(エビスタ錠) バゼドキシフェン(ビビアント)

<禁忌>深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症のある患者又はその既往歴のある患者[副作用として静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症を含む)が報告されており、このような患者に投与するとこれらの症状が増悪することがある。

エストロゲン様作用

421前立腺癌治療剤 エストラムスチン  (エストラサイトカプセル)

<禁忌>血栓性静脈炎、脳血栓、肺塞栓等の血栓塞栓性障害、虚血等の重篤な冠血管疾患、又はその既往歴のある患者[エストロゲン様作用により症状を悪化又は再発させるおそれがある。]

エストロゲン様作用

抗VEGFヒト化モノクローナル抗体 ベバシズマブ(遺伝子組換え)注  (アバスチン注)

脳血管発作、一過性脳虚血発作、心筋梗塞、狭心症、脳虚血、脳梗塞等の動脈血栓塞栓症があらわれ、死亡に至る例が報告されている。観察を十分に行い異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。動脈血栓塞栓症があらわれた患者には、本剤を再投与しないこと。

サリドマイド製剤 サリドマイド  (サレドカプセル) レナリドミド  (レブラミドカプセル)

深部静脈血栓症及び肺塞栓症を引き起こすおそれがあるので、観察を十分に行いながら慎重に投与すること。異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

愛知県薬剤師会薬事情報センター ('14.02.18)

429

399

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

サリチル酸系 アスピリン

<禁忌>川崎病に使用:出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがあるため、出血傾向を助長するおそれがある。]

 アスピリン配合剤  (バファリン、E・A・C)アセトアミノフェン  (カロナール、-坐、アンヒバ坐)

プロピオン酸系 イブプロフェン  (ブルフェン、ユニプロン) ケトプロフェン  (オルヂス、カピステン) ナプロキセン  (ナイキサン) フェノプロフェンカルシウム  (フェノプロン) チアプロフェン酸  (スルガム) プラノプロフェン  (ニフラン) フルルビプロフェン  (フロベン)

アリール酢酸系 ジクロフェナクナトリウム  (ボルタレン) インドメタシン  (インダシン) マレイン酸プログルメタシン  (ミリダシン) アラメタシン  (ランツジール) スリンダク  (クリノリル) モフェゾラク  (ジソペイン)

 インドメタシン  (インダシン坐剤)

<禁忌>直腸炎、直腸出血又は痔疾のある患者[直腸炎、直腸出血が悪化するおそれがある。また、痔疾のある患者で肛門(直腸)出血があらわれたとの報告がある。]

アントラニル酸系 メフェナム酸  (ポンタール) フルフェナム酸アルミニウム  (オパイリン) トルフェナム酸  (クロタム)

オキシカム系 ピロキシカム  (バキソ) テノキシカム  (チルコチル) アンピロキシカム  (フルカム)

ピラゾロン系 スルピリン  (スルピリン)

117

SSRI パロキセチン塩酸塩水和物   (パキシル) フルボキサミンマレイン酸塩   (ルボックス、デプロメール) 塩酸セルトラリン   (ジェイゾロフト)

出血の危険性を高める薬剤を併用している患者、出血傾向又は出血性素因のある患者[皮膚及び粘膜出血が報告されている。]

セロトニン再取り込み阻害作用

118サルチルアミド配合剤  (LLシロップ、PL顆粒)

出血傾向のある患者[血小板機能異常があらわれ、出血傾向を増悪させるおそれがある。]

プロスタグランジン合成阻害

114 プロスタグランジン合成阻害

出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがあるため、出血傾向を助長するおそれがある。]

出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがあるため、出血傾向を助長するおそれがある。]

添付文書に「出血患者」への投与注意(禁忌・慎重投与)の記載がある薬剤

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

119ピラセタム (ミオカーム内服液)

<禁忌>脳出血が確認されている又は疑われる患者[脳出血を悪化させるおそれがある。]<慎重投与>出血傾向のある患者[本剤は血小板凝集抑制作用を有するため。]

血小板凝集抑制作用

132

副腎皮質ステロイド点鼻用 デキサメタゾン  (エリザス) フルチカゾン  (アラミスト) フルチカゾン  (フルナーゼ) ベクロメタゾン  (リノコート) モメタゾン  (ナゾネックス)

反復性鼻出血の患者[出血を増強するおそれがある。]

線維芽細胞の増殖抑制、膠原繊維の形成阻害、肉芽形成の抑制作用により創傷治癒の抑制

Ca拮抗剤(ジヒドロピリジン系) ニカルジピン塩酸塩 (ペルジピン) ニルバジピン (ニバジール)

<禁忌>頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者[出血が促進する可能性がある。]

血管平滑筋へのCaイオン流入抑制

ヒドララジン製剤 ヒドララジン塩酸塩  (アプレゾリン) ブドララジン  (ブテラジン)

<禁忌>頭蓋内出血急性期の患者〔本剤の血管拡張作用により、頭蓋内出血を悪化させるおそれがある。〕

血管拡張作用

トラピジル (ロコルナール)

<禁忌>頭蓋内出血発作後、止血が完成していないと考えられる患者[血小板凝固抑制作用を有しており、出血を助長するおそれがある。]

トロンボキサンA2(TXA2)合成

阻害

ジピリダモール (ペルサンチン)

<重大な副作用>出血傾向(頻度不明):眼底出血、消化管出血、脳出血等の出血傾向があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害

ニコチン酸系 ニセリトロール  (ペリシット) ニコモール  (コレキサミン)

<禁忌>重症低血圧又は動脈出血のある患者[末梢血管拡張作用により、低血圧症の悪化や出血を助長させるおそれがある。]

血小板凝集能抑制作用

デキストラン硫酸ナトリウムイオウ (MDSコーワ)

出血性素因又は出血傾向のある患者[出血をおこすおそれがある。] 弱い抗トロンビン作用

陰イオン交換樹脂 コレスチラミン  (クエストラン) コレスチミド  (コレバイン)

出血傾向のある患者[ビタミンKの吸収を阻害するおそれがある。] ビタミンKの吸収阻害

EPA製剤 イコサペント酸エチル  (エパデール) オメガ-3脂肪酸エチル  (ロトリガ)

<禁忌>出血している患者 ( 血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等) [止血が困難となるおそれがある。]

アラキドン酸代謝阻害

イフェンプロジル酒石酸塩 (セロクラール)

<禁忌>頭蓋内出血発作後、止血が完成していないと考えられる患者

血小板膜安定化作用アラキドン酸代謝阻害

ニセルゴリン (サアミオン)

<禁忌>頭蓋内出血後、止血が完成していないと考えられる患者[出血を助長するおそれがある。]

血小板活性化因子(PAF)産生抑制作用血小板凝集抑制作用

リマプロスト アルファデクス (オパルモン)

1. 出血傾向のある患者[出血を助長するおそれがある。]2. 抗血小板剤、血栓溶解剤、抗凝血剤を投与中の患者

プロスタグランジンE1誘導体

アデニレートシクラーゼ活性促進

ベラプロストナトリウム (ケアロードLA、ベラサスLA)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、上部消化管出血、尿路出血、喀血、眼底出血等)[出血を増大するおそれがある。]

プロスタグランジンI2誘導体

アデニレートシクラーゼ活性促進

セベラマー塩酸塩 (フォスブロック 、レナジェル)

出血傾向を有する患者[ビタミンKの吸収阻害により出血傾向を増強するおそれがある。]

ビタミンKの吸収阻害

Ca拮抗剤 ロメリジン塩酸塩  (ミグシス、テラナス)

<禁忌>頭蓋内出血又はその疑いのある患者[脳血流増加作用により、症状を悪化させるおそれがある。]

血流増加作用

217

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218

214

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

219

ホスホジエステラーゼ-5阻害剤 シルデナフィル  (レバチオ) タダラフィル  (アドシルカ)

出血性疾患又は消化性潰瘍のある患者[in vitro試験でニトロプルシドナトリウム(NO供与剤)の血小板凝集抑制作用を増強することが認められている。出血性疾患又は消化性潰瘍のある患者に対する安全性は確立していない。]

血小板凝集能抑制作用

222アセトアミノフェン・エフェドリン配合 (アスゲン)

出血傾向、血液の異常又はその既往歴のある患者 [配合成分アセトアミノフェンによって、血小板機能異常等の血液障害を起こすことがある。]

プロスタグランジン合成阻害

249カリジノゲナーゼ (カリクロモン)

<禁忌>脳出血直後等の新鮮出血時の患者[血管拡張作用により出血を助長するおそれがある。]

キニン遊離による血流量増加

255ブロメライン・酢酸トコフェロール (ヘモナーゼ)

血液凝固異常のある患者[フィブリン溶解作用により、出血傾向を増強することがある。]

フィブリン溶解作用

259

勃起不全改善剤ホスホジエステラーゼ-5阻害剤 クエン酸シルデナフィル  (バイアグラ) 塩酸バルデナフィル水和物  (レビトラ) タダラフィル  (シアリス) *薬価基準未収載

出血性疾患又は消化性潰瘍のある患者[ニトロプルシドナトリウム(NO供与剤)の血小板凝集抑制作用を増強することが認められている。出血性疾患又は消化性潰瘍のある患者に対する安全性は確立していない。]

ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害

263トリプシン配合 (フランセチン・T・パウダー)

<禁忌>創面から出血している患者[トリプシンには血液凝固阻止作用がある。]

血液凝固抑制作用

269アルプロスタジル アルファデクス (プロスタンディン軟膏)

<禁忌>出血(頭蓋内出血、出血性眼疾患、消化管出血、喀血等)している患者[出血を助長するおそれがある。]

プロスタグランジンE1誘導体

264ヘパリン類似物質軟膏 (ヒルドイド、アメルS、エラダーム)

<禁忌>1.出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者[本剤に含まれるヘパリン類似物質は血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある。]2.僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者[本剤に含まれるヘパリン類似物質は血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある。]

血液凝固抑制作用

313ニコチン酸 (ナイクリン)

<禁忌>重症低血圧又は動脈出血のある患者[血管拡張作用により、更に血圧を低下させるおそれがある。]

血管拡張作用

ワルファリンカリウム (ワーファリン)

<禁忌>1. 出血している患者(血小板減少性紫斑病、血管障害による出血傾向、血友病その他の血液凝固障害、月経期間中、手術時、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産褥婦、頭蓋内出血の疑いのある患者等)[本剤を投与するとその作用機序より出血を助長することがあり、ときには致命的になることもある。]2. 出血する可能性のある患者(内臓腫瘍、消化管の憩室炎、大腸炎、亜急性細菌性心内膜炎、重症高血圧症、重症糖尿病の患者等)[出血している患者同様に血管や内臓等の障害箇所に出血が起こることがある。]3. 重篤な肝障害・腎障害のある患者[ビタミンK依存性凝固因子は肝臓で産生されるので、これが抑制され出血することがある。また、本剤の代謝・排泄の遅延で出血することがある。]4. 中枢神経系の手術または外傷後日の浅い患者[出血を助長することがあり、ときには致命的になることもある。]

ビタミンK依存性凝固因子の蛋白合成阻害

ダビガトランエテキシラート (プラザキサ)

<警告>本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。<禁忌>出血症状のある患者、出血性素因のある患者及び止血障害のある患者[出血を助長するおそれがある。]

血液凝固抑制作用(トロンビン阻害)

エドキサバントシル酸塩水和物 (リクシアナ)

<警告>脊椎・硬膜外麻酔あるいは腰椎穿刺等との併用により、穿刺部位に血腫が生じ、神経の圧迫による麻痺があらわれるおそれがある。<禁忌>出血している患者(頭蓋内出血、後腹膜出血又は他の重要器官における出血等)[出血を助長するおそれがある。]

活性化血液凝固第Ⅹ因子(Fⅹa)阻害

リバーロキサバン (イグザレルト)

<警告>本剤の投与により出血が発現し、重篤な出血の場合には、死亡に至る恐れがある。<禁忌>出血している患者(頭蓋内出血、消化管出血等の臨床的に重大な出血)[出血を助長するおそれがある。]

活性化血液凝固第Ⅹ因子(Fⅹa)阻害

333

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

333アピキサバン (エリキュース)

<警告>本剤の投与により出血が発現し、重篤な出血の場合には、死亡に至る恐れがある。<禁忌>臨床的に問題となる出血している患者[出血を助長するおそれがある。]

活性化血液凝固第Ⅹ因子(Fⅹa)阻害

アスピリン (バイアスピリン、アスピリン81mg、コンプラビン)

<禁忌>出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがあるため、出血傾向を助長するおそれがある。]

シクロオキシゲナーゼ阻害

イコサペント酸エチル (エパデール)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[止血が困難となるおそれがある。]

アラキドン酸代謝阻害

サルポグレラート塩酸塩 (アンプラーグ)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[出血を更に増強する可能性がある。]

血小板セロトニン5-HT2受容体

阻害

チクロピジン塩酸塩 (パナルジン)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[止血が困難になることが予想される。]

アデニレートシクラーゼ活性促進β-トロンボグロブリン放出抑制

クロピドグレル (プラビックス、コンプラビン)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[止血が困難になることが予想される。]

アデニレートシクラーゼ活性促進

シロスタゾール (プレタール)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[出血を助長するおそれがある。]

ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害

339ベラプロストナトリウム (ドルナー、プロサイリン)

<禁忌>出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、上部消化管出血、尿路出血、喀血、眼底出血等)[出血を増大するおそれがある。]

プロスタグランジンI2誘導体

アデニレートシクラーゼ活性促進

セレペプターゼ (ダーゼン)

プロナーゼ (エンピナース)

ブロメライン・トリプシン配合剤 (キモタブ)

血液凝固異常のある患者[フィブリン溶解作用により、出血傾向が増強することがある。]

399

核酸合成阻害(プリン拮抗剤) アザチオプリン (イムラン、アザニン) ミゾリビン (ブレディニン)

血性素因のある患者[骨髄機能を抑制し、出血傾向を増悪させるおそれがある。]

骨髄機能抑制

ソブゾキサン (ペラゾリン)

消化管潰瘍又は出血傾向のある患者[血小板減少に伴い、出血症状を増悪させることがある。]

ダサチニブ (スプリセル)

血小板機能を抑制する薬剤あるいは抗凝固剤を投与中の患者[出血傾向を増強するおそれがある。]

イブジラスト (ケタス)

<禁忌>頭蓋内出血後、止血が完成していないと考えられる患者[止血の完成を遅らせるおそれがある。]

プロスタグランジンE2作用増強

ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害

トロンボキサンA2受容体拮抗剤

 オザグレル塩酸塩水和物  (ベガ) ラマトロバン  (バイナス)

出血している患者[出血を助長する可能性がある。]トロンボキサンA2(TXA2)受容

体拮抗

622

イソニアジド (イスコチン)イソニアジドメタンスルホン酸ナトリウム (ネオイスコチン)

血液障害、出血傾向のある患者[これらの症状が悪化するおそれがある。]

フィブリン・フィブリノーゲン溶解作用

339

449

395

429 血小板減少

血液凝固異常のある患者[出血傾向があらわれやすい。]

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薬効 一般名(商品名) 記載内容 作用機序

625

HIVプロテアーゼ阻害剤 アタザナビル硫酸塩  (レイアタッツ) インジナビル硫酸塩エタノール付加物  (クリキシバン) ダルナビル エタノール付加物  (ブリジスタ) ネルフィナビル  (ビラセプト) ホスアンプレナビルカルシウム水和物  (レクシヴァ) リトナビル  (ノービア) ロピナビル・リトナビル  (カレトラ)

血友病患者及び著しい出血傾向を有する患者。[血友病患者において、本剤投与による加療中に、脳内出血、縦隔内出血の発現が報告されており、また、関節内出血、皮下出血等の出血事象の増加が報告されている。]

愛知県薬剤師会薬事情報センター ('13.12.12)

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★ 特定薬剤管理指導加算について(告示・通知) ★

● 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示) 平成 26 年厚生労働省告示第 57 号 別表第三 調剤報酬点数表

区分10 薬剤服用歴管理指導料(処方せんの受付1回につき) 4 特に安全管理が必要な医薬品として別に厚生労働大臣が定めるものを調剤した場合であって、当該医薬

品の服用に関し、その服用状況、副作用の有無等について患者に確認し、必要な薬学的管理及び指導を

行ったときには、4点を所定点数に加算する。 ● 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)

平成 26 年 3 月 5 日 保医発 0305 第 3 号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項

<薬学管理料> 薬学管理等は、患者等のプライバシーに十分配慮した上で実施しなければならないものとする。

区分10 薬剤服用歴管理指導料 (23) 特定薬剤管理指導加算 ア 特定薬剤管理指導加算(「注4」に規定する加算をいう。以下同じ。)は、薬剤服用歴管理指導料を算定

するに当たって行った薬剤の管理及び指導等に加えて、患者又はその家族等に当該薬剤が特に安全管理

が必要な医薬品である旨を伝え、当該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った

場合に算定する。なお、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」(日

本薬剤師会)等を参照し、特に安全管理が必要な医薬品に関して薬学的管理及び指導等を行う上で必要

な情報については事前に情報を収集することが望ましいが、薬局では得ることが困難な診療上の情報の

収集については必ずしも必要とはしない。 イ 特に安全管理が必要な医薬品とは、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固

阻止剤(ワルファリンカリウム、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩及びシロスタゾール並び

にこれらと同様の薬理作用を有する成分を含有する内服薬に限る。)、ジギタリス製剤、テオフィリン製

剤、カリウム製剤(注射薬に限る。)、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤及び抗HIV薬をい

う。 ウ 特に安全管理が必要な医薬品が複数処方されている場合には、そのすべてについて必要な薬学的管理及

び指導を行うこと。ただし、処方せんの受付1回につき1回に限り算定するものであること。 エ 対象となる医薬品に関して患者又はその家族等に対して確認した内容及び行った指導の要点について、

薬剤服用歴の記録に記載すること。

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健康食品・サプリメント等食品との相互作用-血液凝固阻止剤-

健康食品・飲食物 機序 文献

パイナップルパパイヤニンニクチャイニーズアンジェリカ(当帰)パセリクコクズスイートクローバー(メリロート)ベニバナウコンアジョワン亜麻の種子イカリソウウィローバーク(セイヨウシロヤナギ)カフェイン(ウーロン茶、ガラナ豆、紅茶、コーヒー、ココア、プーアール茶、マテ、緑茶)ウコンエゾウコギオールスパイスオキアミ油カラギーナンキナ皮ゴボウジャイアントフェンネルシャクヤクタイム丹参クローブ(丁子)

月見草油ドンクアイ(当帰)ニコチン酸イノシトールパウダルコバナジウムパンテチン(パントシン)ビンポセチンフィチン酸フェヌグリークブラダーラック(岩藻)ブロメラインホーリーバジルホーラージシードオイルポリコサノールホルスコリンミツガシワメラトニン霊芝レンギョウ

ビタミンEγ-リノレン酸ノコギリヤシトウガラシメマツヨイグサメリロートパウダルコ(アクアインカー、イペ)ビルベリーベニコウジピクノジェノール(松樹皮抽出物)コンドロイチン硫酸

出血傾向が高まることがあるので併用注意、または避ける。

11,12,13,16,17

イチョウ葉エキスイチョウ葉エキスが肝薬物代謝酵素CYP3A4を阻害または誘導し薬剤の血中濃度が変化する可能性あり。

12,13

イチョウ葉エキスフィーバーフュー(ナツシロギク)タマネギ朝鮮ニンジン(オタネニンジン)チクセツニンジンアマチャヅルアマニ油魚油(EPA、DHA)ブラックコホシュ

各素材に抗血小板作用がある。

5,9,10,1112,13,16,17,19,20

5,10,11,12,13,16,17,18,19

抗凝固剤 ワルファリンカリウム(ワーファリン) ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ) リバーロキサバン(イグザレルト)

各植物に抗血液凝固作用がある。

医薬品名

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健康食品・飲食物 機序 文献

ショウガ ショウガにトロンボキサン合成酵素阻害作用がある。

5,10,11,12,16,17,19

マンゴ プロトロンビン時間が増大する。5,12,19

オオバコの種子(サイリウム) 薬剤の消化吸収が減少し、血中濃度が低下する。10,11,16,17

ワルファリンカリウム(ワーファリン)

ビタミンK

<併用注意><慎重投与>ワルファリンの作用が減弱する可能性がある。ワルファリンは、ビタミンK拮抗作用により抗凝固作用を示す。

納豆クロレラ食品葉緑素(アロエ)青汁シソ

<併用注意>ビタミンKにより、ワルファリンの抗凝固作用は減弱する。

イラクサセイヨウオオバコ(オニオオバコ)パセリバーベナアルファルファオオバコ緑茶クマザサカブラ葉パセリブロッコリーホウレン草パセリレタス緑色の野菜ジュース

ビタミンKを多く含む素材とともに摂取すると、抗凝固剤の作用を減弱させることがあり、抗凝固剤を服用している人では血液凝固能が増すことがあるので、摂取量に注意すること。

1,5,10,11,13,15,16,17,20

ビタミンA

1,2,3,5,10,11,15,17

L-カルニチンキトサングルコサミンコンドロイチン

11,12,18,19

ビタミンE(高用量)高用量のビタミンEにより、ワルファリンカリウムの作用が増強する可能性がある。

1,2,3,4,5,10,11,15,17

ヒマワリの種 ヒマワリの種中のビタミンEに抗血液凝固作用がある。 5

アカツメクサ(レッドクローバー)レイシウコン(ターメリック)セロリジャーマンカモミールセイヨウトチノキ(マロニエ)カンゾウニンジン(ワイルドキャロット)パッションフラワーローヤルゼリー

各素材中のクマリンまたはクマリン誘導体に抗血液凝固作用がある。

5,11,12,13,16,17,18,20

ビタミンC(アスコルビン酸)大量のビタミンCとの併用によりワルファリンの血液凝固阻止作用が減弱する可能性がある。

1,3,10,11,13,15,17,20

ワルファリンカリウムの作用が減弱する可能性がある。

5,10,11,12,16,17,19

ビタミンK様作用があるため。 13

ヒバマタボルド

併用は慎重にまたは避けるべき。 13,17

クランベリースピルリナ

相互作用の可能性が考えられる。18,19,20

鉄亜鉛マグネシウム

金属カチオンと結合し、ワルファリンの吸収が抑制される。また、同時にこれらの吸収も減少する可能性がある。

3,10

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

<併用注意>薬物代謝酵素CYP3A4を誘導することにより、本剤の代謝を促進し、血中濃度を低下させる可能性がある。

ユビキノン(コエンザイムQ10)

ワルファリンの抗血液凝固作用を増大させる。

抗凝固剤 ワルファリンカリウム(ワーファリン) ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ) リバーロキサバン(イグザレルト)

医薬品名

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健康食品・飲食物 機序 文献

ワルファリンカリウム(ワーファリン)

グレープフルーツジュースグレープフルーツジュースの成分に含まれるフラノクマリン類により小腸上皮細胞のCYP3A4が阻害され、本剤の血中濃度が上昇することがある。

15

マテこれらが肝薬物代謝酵素CYP1A2を阻害し薬剤の血中濃度が上昇する可能性あり。

11

イチョウ葉エキスクランベリーマリアアザミ(ミルクシスル)カンゾウエゾウコギクコグレープフルーツジュースフィーバーフューフォーチ(ツルドクダミ)ペパーミントオイルユーカリ油レッドクローバー

肝薬物代謝酵素CYP2C9を阻害し薬剤の血中濃度が上昇する可能性あり。

5,11,12,17,19

チョウセンゴミシデビルズクローリモネンクコ

肝薬物代謝酵素CYP2C9の代謝を促進することがあるため、医薬品の作用が減弱されるおそれがある。

17,19

ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ)

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

<併用注意>併用により、ダビガトランの血中濃度が低下し、抗凝固作用が減弱することがある。このような場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意すること。(Pタンパク質誘導)

アピキサバン(エリキュース)セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

<併用注意>併用により、強力なCYP3A4及びPタンパク質の誘導作用により、本剤の代謝及び排出が促進され、血中濃度が減少するおそれがある。

リバーロキサバン(イグザレルト)

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

<併用注意>併用により、CYP3A4を強力に誘導することで本剤の血中濃度が低下するおそれがある。

グレープフルーツジュース

<併用注意>グレープフルーツジュースの成分がCYP3A4を阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇することがあるので、同時服用をしないように注意すること。

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品ニンニク

これらが肝薬物代謝酵素CYP3A4を誘導し薬剤の血中濃度を低下させる可能性あり。

12

イチョウ葉エキスイチョウ葉エキスが肝薬物代謝酵素CYP3A4を阻害または誘導し薬剤の血中濃度が変化する可能性あり。

12

イチョウ葉エキスに抗血小板作用があるため、出血が起こる可能性がある。

11,16,17

朝鮮ニンジン(オタネニンジン)チクセツニンジンアマチャヅル魚油(EPA、DHA)ウコンクズ

抗血小板作用がある。

9,10,11,12,13,1617

セイヨウトチノキ(マロニエ)ベニバナメツマヨイグサメリロートレイシアジョワン亜麻の種子イカリソウウィローバーク(セイヨウシロヤナギ)カフェイン(ウーロン茶、ガラナ豆、紅茶、コーヒー、ココア、プーアール茶、マテ、緑茶)ウコンエゾウコギオールスパイスオキアミ油カラギーナンγリノレン酸キナ皮ゴボウ

抗凝血薬との併用で出血傾向を強める。

野生のブラックコホシュには少量のサリチル酸が含まれている。

11,13,17,19

シロスタゾール(プレタール)

医薬品名

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健康食品・飲食物 機序 文献

ジャイアントフェンネルシャクヤクショウガノコギリヤシタイムタマネギ丹参クローブ(丁子)

抗凝血薬との併用で出血傾向を強める。

野生のブラックコホシュには少量のサリチル酸が含まれている。

11,13,17,19

月見草油唐辛子ドンクアイ(当帰)ニコチン酸イノシトールパウダルコ(アクアインカー、イペ)バナジウムパンテチン(パントシン)ピクノジェノール(松樹皮抽出物)ビタミンEビルベリービンポセチンフィーバーフューフィチン酸フェヌグリークブラックコホシュブラダーラック(岩藻)ブロメラインベニコウジベニバナホーリーバジルホーラージシードオイルポリコサノールホルスコリンミツガシワメマツヨイグサメラトニン霊芝アカツメクサ(レッドクローバー)レンギョウ

ボルド 併用は避けるべき。11,13,17

イチョウ葉エキス魚油(EPA、DHA)朝鮮ニンジン(オタネニンジン)チクセツニンジンニンニクアマチャヅルアマニ油フィーバーフュー(ナツシロギク)

これらに抗血小板作用があるため、出血が起こる可能性がある。

5,9,10,11,12,13,15,16,17

ジャーマンカモミールパッションフラワーセイヨウトチノキ(マロニエ)ウコンアカツメクサ(レッドクローバー)

各植物中クマリンまたはクマリン誘導体に抗血液凝固作用があるため、作用が増強される可能性がある。

9,10,11,12,13,15,17,19

ノコギリヤシトウガラシメマツヨイグサメリロートパウダルコセイヨウトチノキ(マロニエ)ベニバナレイシアジョワン亜麻仁油亜麻の種子イカリソウウィローバーク(セイヨウシロヤナギ)カフェイン(ウーロン茶、ガラナ豆、紅茶、コーヒー、ココア、プーアール茶、マテ、緑茶)ウコンエゾウコギオールスパイスオキアミ油カラギーナン

抗凝血薬との併用で出血傾向を強める。11,13,19

医薬品名

抗血小板剤 アスピリン(バイアスピリン、バファリン81mg)  ⇒114 アスピリン参照 チクロピジン塩酸塩(パナルジン) クロピドグレル硫酸塩(プラビックス)他

シロスタゾール(プレタール)

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健康食品・飲食物 機序 文献

γリノレン酸キナ皮ゴボウジャイアントフェンネルシャクヤクショウガタイムタマネギ丹参クローブ(丁子)月見草油ドンクアイ(当帰)ピクノジェノール(松樹皮抽出物)ビタミンEヒバマタビルベリービンポセチンフィチン酸フェヌグリークブラダーラック(岩藻)ブロメラインベニコウジベニバナホーリーバジル

抗凝血薬との併用で出血傾向を強める。11,13,19

ホーラージシードオイルポリコサノールホルスコリンミツガシワメラトニン霊芝レンギョウ

ボルド 併用は避けるべき。11,13,17

ニンニク成分含有製品 作用増強の可能性があるので大量摂取は避ける。 11クランベリー 相互作用の可能性が考えられる。 18クロム クロムの吸収および体内保持時間増加する。 13

クズ糖尿病モデル動物でアスピリンがクズによる低血糖症の誘発作用を促進した知見がある。

13,17

ニンニク成分含有製品 作用増強の可能性があるので大量摂取は避ける。 7,11

アマニ油抗血小板作用があるため、作用が増強される可能性がある。

10,11,16,17

メリロートアカツメクサ(レッドクローバー)セイヨウトチノキ(マロニエ)パウ・ダルコ(アクアインカー、イペ)ヒバマタビルベリーベニコウジベニバナピクノジェノール(松樹皮抽出物)メツマヨイグサメリロートレイシ

抗凝血薬との併用で出血傾向を強める。 11,13

ベニコウジベニコウジに含まれるメビン酸はHMG-CoA還元阻害作用を示す。

12

植物ステロール植物ステロールのコレステロール低下作用により薬効増強の可能性あり。

12

ボルド 併用は避けるべき。 13

〔参考文献〕1. 「飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」研究班:飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用第3版,じほう,19982. 渡邉・幸田:サプリメントをよくとる人への指導,臨床と薬物治療 Vol.19 No.9,850-854,20003. 堀美智子:サプリメントの基礎知識,薬事日報,20054. 杉山正康:薬の相互作用としくみ 全面改訂版,日経BP,20125. 大西憲明:医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネージメント,フジメディカル出版,20076. 堀美智子:薬とサプリメントの相互作用,医学のあゆみ,Vol.208 No.12,985-990,2004  * http://www.yobou.com/contents/rensai/report/r05_37.html7. 古泉秀夫:わかるサプリメント健康食品Q&A,じほう,20038. 平田明隆:欧米のダイエタリー・サプリメント,からだの科学 増刊,116-117,20039. 小内 享他:代替医療の日本特有の問題点,治療 Vol.84 No.1,31-37,200210. 福岡県薬剤師会薬事情報センター:飲食物・嗜好品とくすりの相互作用,200511. 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト:独立行政法人 国立健康・栄養研究所ホームページ(2009.08.18ダウンロード)12. 吉川敏一:医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典,講談社,2009

愛知県薬剤師会薬事情報センター東海四県情報システム委員会(TOP/NET)より

イコサペント酸エチル(エパデール)

植物中のクマリンまたはクマリン誘導体に抗血液凝固作用があるため、作用が増強される可能性がある。

医薬品名

抗血小板剤 アスピリン(バイアスピリン、バファリン81mg)  ⇒114 アスピリン参照 チクロピジン塩酸塩(パナルジン) クロピドグレル硫酸塩(プラビックス)他

11,12

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13. 清水俊雄:機能性食品素材便覧,薬事日報,200614. 澤田康文:薬と食の相互作用,医薬ジャーナル社,200515. 佐藤健次他:健康食品の基礎知識,じほう,200716. 独立行政法人 国立健康・栄養研究所監訳:健康食品データーベース,第一出版17. 田中平三他監訳:健康食品のすべて 第二版,同文書院,200818. 蒲原聖可:サプリメント健康食品HANDBOOK,株式会社新興医学出版社,200919. 藤村昭夫:思いもしなかった 健康食品と薬の相互作用,永井書店,201120. 井上善文他:薬物-飲食物相互作用,臨床栄養別冊 JCNセレクト7,医歯薬出版,2012

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★ハイリスク薬の薬学的管理指導 薬局向け参考資料★

掲載ホームページ紹介

「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第 2 版)」

(日本薬剤師会編)に基づいて資料を作成し、下記ホームページにて提供しております。

どうぞご利用下さい。

※本冊子の内容も全て掲載しております。

提供の PDF ファイルは、A4用紙に印刷できるよう文字等を小さくしてある場合が

あります。ご了承下さい。

また、エクセル、ワードファイルは、薬局様それぞれで加工できる資料として提供

しております。

※本冊子には掲載できなかった血液凝固阻止剤の各製剤概要も提供しています。どう

ぞご利用下さい。

◎ 愛知県薬剤師会ホームページ HOME > 医療関係者用サイト > ハイリスク薬

http://www.apha.jp/medical/infobox/entry-4237.html

◎ 岐阜県薬剤師会ホームページ HOME > 会員情報 > ハイリスク薬参考資料

http://www.gifuyaku.or.jp/highrisk/

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一般社団法人愛知県薬剤師会 薬事情報センター https://www.apha.jp/

一般社団法人岐阜県薬剤師会 ぎふ薬事情報センター http://www.gifuyaku.or.jp/

平成 26 年 3 月作成