ヒト小唾液腺培養細胞から腺房細胞の樹立 - …...250 歯基礎誌 31: 248-256,...

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Page 1: ヒト小唾液腺培養細胞から腺房細胞の樹立 - …...250 歯基礎誌 31: 248-256, 1989. 組織のパラフィン包埋切片を用いて五重染色によ る分泌顆粒及びコロイド鉄によるムチン染色を行

Jpn. J. Oral Biol., 31: 248-256, 1989.

ヒト小唾液腺培養細胞から腺房細胞の樹立

清 信 成 一

東北大学 ・歯学部 ・口腔細菌学 講座 (主任: 熊谷勝男教授)

〔受付:昭 和63年12月13日 〕

Establishment of acinar cells from human salivary

gland tissue by transformation of SV40

Seiichi Kiyonobu

Department of Oral Bacteriology, Tohoku UniversitySchool of Dentistry 4-1 Seiryo-machi, Sendai 980

(Chief: Prof. K. Kumagai)〔Accepted for publication: December 13, 1988•l

Key words: Human acinar cells / transformation / saliva

Abstract: A piece of minor salivary gland tissue obtained from the lip of a 16 years old female wasminced to about 3 mm3 by fine pincettes and cultured with 10 % FCS containing MEM supplementedwith EGF (10 ng/ml), fungizon (10 mcg/ml) and kanamycin (60 mcg/ml) in a 5 % CO2 incubator.Many small bubbles of saliva were found on the surface of the fragments after 3 to 4 days of incuba-tion and outgrowth of cells from the fragments was observed from 7 days of incubaton. Monolayercells of the outgrowth were trypsinized and passaged with fresh culture medium. At the 8 th passage,monolayer cells were infected with SV40 at moi 100PFU/cell. After 18 hour-incubation, the suspensionof the infected cells was incubated at densities of 104 and 103 cells/dish within 0.33 % agar containingculture medium. Transformed colonies were picked up from soft agar medium and 3 of the 28 colonieswere identified as being acinar cells of the salivary gland, since secretory granules and mucosubstanceswere specifically proved in the cytoplasm of these cells after 2 to 4 days of incubation. One of thetypical clone cells was named HA-16 cells. However, the appearances of the secretory granules andmucins in the cytoplasm of the HA-16 cells depended on the cellular growth cycle, i.e. secretory

granules and mucins were not found in the growing cells (G1-S-G2-M phase) but many secretorygranules and mucins could be recognized in the non-dividing cells (Go phase). These results suggest thata clonal acinar cell line can be established from human minor salivary gland and that this cell line isuseful for the investigation of the mechanism of saliva production.

緒 言

唾液腺は終末部の部位 とその大小など によっ

て,耳 下腺,顎 下腺,舌下腺の三大唾液腺 と,口 唇

腺,頬 腺,臼歯腺,口 蓋腺,舌 腺などの小唾液腺に

分けられている。 また終末部の分泌細胞の差によ

って,漿 液腺,粘 液腺,混 合腺の三種類に分類さ

れ,漿 液腺には耳下腺とエブネル腺,粘 液腺には

口蓋腺,頬 腺,舌 口蓋腺と口唇腺,混 合腺には顎

下 腺 と舌 下 腺 な どが含 まれ る。 こ れ等 の唾 液 分 泌

機 構 に関 して は,自 律 神 経 支 配 下 に あ り副 交感 神

経 刺 激 に よ り漿 液 性 唾 液 が分 泌 され,ま た交感 神

経 刺 激 では粘 液 性唾 液 の分 泌 が 促 され る とされ て

い る。 こ の様 な漿液 性 や粘 液 性 の唾 液 の組 成 につ

い て,Mason and Chisholm1)等 の 報 告 が あ るが,

混 合 唾 液 の 組成 は各 唾 液 腺 の活 動 状 態 に よ り 変 わ

って くる。1916年,Lashleyに よ り考 案 され た カ

ニ ュー レを 耳 下 腺 導 管 開 口部 に 挿 入 す るClarl-

son-Crittenden法 や1953年,Curbyに よ り改 良

され た 内環 と外 環 を持 つCurby cup法 が古 い唾仙 台 市 星 陵 町4-1(〒980)

Page 2: ヒト小唾液腺培養細胞から腺房細胞の樹立 - …...250 歯基礎誌 31: 248-256, 1989. 組織のパラフィン包埋切片を用いて五重染色によ る分泌顆粒及びコロイド鉄によるムチン染色を行

清信成一: ヒト腺房細胞樹立 249

液採取法としてあるがSchneyer2)に よって開発 さ

れた顎下腺と舌下腺 か らの 唾液採取器が報告 さ

れ,さ らにTruelove等3)に より本装置の改良型

も報告 されている。 しかし,こ れ等の方法で採

取された唾液の組成を調べても,Shannon and

Prigmore4)の 報告にある様に唾液分泌には日常 リ

ズムがあり,採 取する日と時間により唾液組成と

分泌量は変化する。 この様に唾液組成は刺激の種

類によ り唾液分泌速度が異なる事 と各唾液腺から

の分泌量 も変動する事から,正 確な唾液の組成は

把握されていない。また,舌下腺と小唾液腺から分

泌される唾液の組成については採取する事が困難

である為に十分に研究されていない。

この様な事から,ヒ トまたはマウスの唾液腺組

織を培養 して細胞 レベルで唾液分泌の機構を解析

する試みがなされてきた5-7)。しかし,正 常組織細

胞は分裂回数が25~55回 の範囲でlife spanを 生

じて死滅する事8-10)と,唾 液腺を構成する種々の

細胞から唾液分泌細胞のみを選択的に培養 しクロ

ーン化する事は困難である事11)等が唾液分泌機構

を細胞 レベルで研究するにあたり問題 となってい

る。

本研究ではヒト(16歳,女 性)の 口唇から小唾

液腺組織 を摘出し,ピ ンセットで細分してから,

組織培養 し,8代 継代培養時に腫瘍 ウイルスであ

るSimian Virus 40 (SV40)を 感染 させ,ト ラン

スフォームしたコロニーを取 り出し,酸 性ムコ多

糖体を細胞質内に産生するクローン細胞が得 られ

た。 この細胞は樹立細胞として継代可能であり,

小唾液腺の腺房細胞と考えられる事から,唾 液組

成の研究及び 細胞 レベルでの唾液産生機構の研究

に有用 と考えられたので,こ の細胞の性状につい

て報告する。

材料と方法

1. 培養材料

培養材料は東北大学 ・歯学部附属病院 ・口腔診

断科に来院 した16歳 女性の口唇粘液のう胞患者か

らのう胞を摘出 した際,切 除した部分から小唾液

腺組織を分離 して使用した。 組織片はただちに氷

冷したMEM培 地 に入れ,無 菌室内でピンセ ッ

トを用いて約3mm3の 大きさに細分し,新 しい

MEM培 地 に 小 片 を 移 し変 え る事 に よ り脱 血 し

た。

2. 唾 液 腺組 織 片 の細 胞 培 養

小唾 液 腺 の組 織片 は10%fetal bovine serum

(FBS),10μg/mlの フ ァン ギ ゾ ン(シ グ マ社),

10ng/mlのepidermal growth factor(EGF;日

本 ケ ミカル リサ ーチ社)12),100U/mlのpenicillin

及 び100μg/mlのstreptomycinを 加 え たMEM

培 地 を用 い て,37℃,5%CO2イ ンキ ュベ ー タ

ー で培 養 した13)。

組織 片 よ りoutgrowth14)し た細 胞 は トリプ シ ン

(0.25%)-EDTA(0.02%)処 理 に て分 散 し,初

代 継 代培 養 した。2代 か ら8代 継 代 時 には,ト リ

プ シ ン-EDTA処 理 時 間 を短 く し,線 維 芽 系細 胞

が培 養容 器 か ら離脱 した時 にPBSで 洗 浄 し,残

っ た上 皮 系細 胞 を再 び トリプ シ ン-EDTA処 理

を行 い,出 来 る限 り上皮 系細 胞 を継 代 す る様 に し

た。8代 継 代 時 にて 約80%は 上 皮 系細 胞 の 形態 を

示 して い た。

3. トラ ンス フ ォ-メ イ シ ョン

マ イ コプ ラズ マ 陰 性 のCV-1細 胞 で 増 殖 した

SV40を 実 験 に供 した。SV40の 感 染 価 は107.8PF

U/mlを 示 し,8代 継 代 培 養 細 胞 の1細 胞 あた り

100PFUの 感 染価(multiplicity of infection

100:moi=100)の 割 合 で 感 染 さ せ,18時 間,

37℃ で培 養 した。 この感 染 細 胞 を トリプ シ ン-

EDTA処 理 に て分 散 した後,0.33%寒 天 含ME-

M培 地(10%FBS,10ng/ml EGF加)中 で 培

養 した 。 コ ロニ ー を形成 した細 胞 を トラン ス フ ォ

ー ム細 胞15)と して採 取 し,各 コ ロニ ー毎 に継 代 培

養 し,ク ロー ン細 胞 と した。

4. 腺 房 細 胞 の 同定

トラ ンス フ ォ ーム 細胞 と して 得 られ た ク ロー ン

細 胞 につ い て,分 泌顆 粒 を 同定 す る為 に4℃ ホ

ル マ リン 蒸 気 固定 後 五重 染色(Alcian Blue,0.5

%過 ヨ ウ素 酸Schiff, Haematoxylin, Orange G,

ライ トGreen)及 びPAS染 色 を行 った 。 酸 性

ム コ多糖 体(ム チ ン)染 色 と して コ ロイ ド鉄 染 色

法 に よ り,細 胞 内 ム チ ン産生 を調 べ た。 また,培

養 細 胞 を グル タ ール アル デ ヒ ド固 定 後 に 金 蒸 着 し

走 査型 電 子 顕 微 鏡(日 立570型)に よ り細胞 表 面 の

分泌 物 の観 察 を行 った。 ま た,正 常 ヒ ト小 唾 液 腺

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250 歯 基 礎 誌 31: 248-256, 1989.

組 織 のパ ラ フ ィ ン包 埋 切 片 を用 い て 五 重 染 色 に よ

る分 泌 顆 粒 及 び コ ロイ ド鉄 に よ るム チ ン染 色 を 行

い,唾 液 腺 組 織 細 胞 に見 られ る ムチ ン陽性 で あ る

腺 房 細 胞 の染 色像 と ク ロー ニ ン グされ た細 胞 の 染

色 像 と比 較 した。

5. 増 殖 曲 線 の作 成

ク ロー ン細 胞 の うち腺 房 細 胞 と 同 定 され た もの

につ い て増 殖 曲線 を作 成 し,同 時 に細胞 質 内 の分

泌顆 粒 及 び ム チ ン の関 係 も調 べ た。 トリプ シ ン-

EDTAで 細 胞 分 散 後,105 cells/mlに 細 胞 濃 度

を10%FBS含MEM培 地 で調 整 し,2mlを 組

織 培養 用dish(35mmφ)に 入 れ て5%CO2イ ン

キ ュベ ー タ ー で培 養 した 。 経 日的 にdishを 取 り

出 して,ト リプ シ ン-EDTA処 理 を して細 胞 数

を血 球計 算盤 に て測 定 した。

結 果

1. 腺 房細 胞 の ク ローニ ン グ

小 唾 液 腺 の組 織 片 を培 養 開 始 して か ら48時 間後

に は プ ラ スチ ック面 に接 着 した 。 そ の後3~4日

目か ら接 着組 織片 の表 面 に唾 液 の分 泌 と 思 わ れ る

泡状 の分 泌 物 が認 め られ る組 織 片(Fig.1)が 観

察 され た。 この水 泡状 の もの は培 養 開始 時 に は認

め られ な か っ た事 か ら,培 養 状 態 にな って か ら出

現 した もの と考 え られ た。 培 養1週 間 に て組 織 片

の周 辺 部 よ り線 維 芽 系細 胞 のoutgrowthが 始 ま

り,培 養 日数 の 増加 と共 に 組 織 片 の 周 囲 か らの

outgrowthし た単 層 細胞 は広 が りを示 した(Fig.

2)。 培 養後4週 間 で は組 織 片 の塊 は プ ラ スチ ッ ク

面 か ら 脱 落 しoutgrowthで 形 成 され た 単 層細

胞 のみ とな った。 この 培 養 細 胞 を トリプ シ ン-

EDTA処 理 に よ り,105 cells/mlの 細 胞 濃 度 で

継 代 培養 した。 この細 胞 は1週 間 の培 養 で単 層細

胞 を形 成 し形 態 的 に大 部 分 が 線 維 芽 系細 胞 で あ っ

た。 線 維 芽 系細 胞 は上 皮 系 細 胞 よ り トリプ シ ン感

受 性 が 高 い事 を利 用 し,単 層 細胞 を ト リプ シ ン-

EDTA処 理 後,プ ラ スチ ック面 よ り離 脱 した細 胞

をPBSで 洗 浄 し,再 び トリプ シ ン-EDTA処

理 を して,出 来 る限 り上 皮 系 細 胞 を継 代 す る様 に

試 み た。 こ の方 法 で8代 継 代 した時 の 単層 細 胞 は

80%が 形 態 的 に上 皮 系細 胞 で あ った。 この細 胞 に

SV40をmoi SV40 100 PFU/cellの 割 合 で感 染 さ

Fig. 1 Small bubbles of saliva shown on the

fragments of salivary gland tissue after

3 days of culture.(•~100)

Fig. 2 Outgrowth of cells from the fragments

after 14 days of culture.(•~200)

せ,18時 間後 に ト リプ シ ン-EDTA処 理 し,分 散 し

た細胞 を0.33%寒 天含MEM培 地 に混 合 し,104

ま た は103 cells/dish(6cmφ)の 条 件 で 培養 し,10

日毎 に0.5mlのMEM培 地 を補 充 した 。 約2週

間培 養 頃 か らコ ロニー形 成 が認 め られ,4週 間 後

には 肉 眼的 に認 め られ る コ ロニー まで に 成 長 した

(Fig.3)。 ま た一 部 の 細 胞 はMEM培 地 を用 い

て9cm径dishで 培 養 した。 コ ロニ ー を形成 した

トラ ン ス フ ォー ム細 胞 は ク ロー ニ ン グ ・リン グ を

用 い て取 り出 し,ト リプ シ ン-EDTA処 理 して

細 胞 分 散 を行 い,各 コ ロニー 毎 にMEM培 地 に

て継 代 培 養 した。 最 終 的 に継 代 可能 に な った28個

の ク ロー ン細 胞 の 中 で細 胞表 面 か ら粘 液 物 質 を 産

生 して い る3個 の ク ロー ン細 胞 が見 い出 され た。

この事 は培 養 した 小 唾 液 腺 の組 織 片 か ら 増殖 した

細 胞 の中 で腺 房 細 胞 が トラ ン ス フ ォー ム して,こ

れ が ク ロー ン化 され た 可 能 性 が あ り,粘 液 様 物質

の 産 生 が 多 くて細 胞 増 殖 の よ い ク ロー ン を選 び コ

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清信 成 一: ヒ ト腺 房細 胞 樹 立 251

Fig.3 Colony of transformed cells infected with

SV40 from the culture cells of minor

salivary gland tissue after 21 days of

culture.(•~200)

Fig.4 May-Gruenwald's and Giemsa's stained

HA-16 cells after 5 days of culture.

(•~400)

ロニー の コー ド番 号 か らHA-16細 胞 と 称 して こ

の細 胞 の性 状 に つ い て解 析 を進 めた。 本 実 験 に用

い た段階 で のHA-16細 胞 は 軟 寒 天培 地 で コ ロニ

ー形 成後,プ ラ ス チ ック ・フ ラス コで18~24代 継

代 培養 され た もの で あ る。

2. 腺 房 細 胞 の同 定

HA-16細 胞 を トリプシ ン-EDTAで 分散 後,ス

ライ ドガラ ス上 で5日 間 培養 し,メ タ ノール 固 定

後,ギ ム ザ染 色 した細 胞 をFig,4に 示 した 。細 胞

質 内 に特 異 的 に大 きな空 胞 が見 られ,他 の ク ロー

ン細 胞 に は この様 な空 胞 は認 め られ な か った。 同

様 に ス ライ ドガ ラ ス上 に培 養 したHA-16細 胞 を1

日,2日,3日 と経 日的 に取 り出 し,中 性 ホ ル マ リ

ンで 固定 後,分 泌 顆 粒 を染 色 す る 目的 で五 重 染 色

した時,Fig.5に 示 した様 に細 胞 質 内 に 分泌 顆 粒

が明 瞭 に染 色 され た。 こ の分 泌 顆 粒 は培 養 後,1

日 目の細 胞 で は弱 く,3日 目 の培養 細胞 は分 泌 顆

Fig.5 Haematoxylin-Alcian blue Pass-Masson

stained HA-16 cells after 3 days of cul-

ture.(•~400)

Fig.6 Colloidal iron stained HA-16 cells after

3 days of culture.(•~400)

粒を保有する細胞の数及び 細胞内に認められる分

泌顆粒の数 ともに最高を示 した。5日 目以降の培

養細胞は細胞質内に空泡が多 く分泌顆粒の 判別は

困難であった。 このHA-16細 胞は分泌顆粒 を保

有する事が確認されたが,ギ ムザ染色で示された

空胞の組成を調べる目的でムチンを特異的に染色

するコロイ ド鉄染色を試みた。 実験試料 として培

養1日,2日,3日,5日 及び7日 のHA-16細 胞

とヒト小唾液腺組織のパラフィン包埋切片を用い

た。Fig.6に3日 培養 したHA-16細 胞のコロイ

ド鉄染色像を示 し,Fig.7に パラフィン包埋の小

唾液腺組織切片の同染色像を示 した。HA-16細 胞

に示 されたムチン顆粒は核周辺から細胞質膜にか

けて広 く分布 しているが,核 周辺 に密に分布する

傾向が認められ一部ムチンの 細胞外への遊出を思

わせる部分 もあった。 また,小 唾液腺組織切片で

は明らかに腺房細胞のみが ムチン陽性であり,他

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252 歯 基 礎 誌 31: 248-256, 1989.

Fig.7 Colloidal iron stained thin section of

human minor salivary gland tissue.

(•~400)

の組 織 細胞 に は ム チ ン陽性 細 胞 は 認 め られ な か っ

た 。HA-16細 胞 に示 され た ム チ ン も培 養 開始 か ら

1日 目は弱 く,そ の後 は培養 日数 と共 に細胞 内 の

ムチ ン量 は増 加 の傾 向 を示 した。 しか し,細 胞 内

に認 め られ た のみ で,細 胞 表 面 に はム チ ンを認 め

る事 が出 来 な か った。 この事 は固 定 及 び染 色 中 に

細胞 外 の ム チ ンは 洗 い流 され た 結果 と思 われ た た

め,走 査 型 電子 顕 微 鏡 に よ りHA-16細 胞 の 表 面

を観 察 した。3日 及 び5日 間 培 養 したHA-16細

胞 と非 分 泌細 胞 と して ヒ ト胎 児肺(HEL)細 胞 を

コ ン トロール と して用 い た。Fig.8a,b,c,d

にHA-16細 胞 を 示 し,Fig.9にHEL細 胞 を

示 した。Fig.8は い ずれ もHA-16細 胞 表 面 に分

泌 物 状 の小 胞 が見 られ,aは 分 泌 初期 と思 わ れ,

b,cの 順 で細 胞 表 面 に分泌 物 が多 くな って い る。

また5日 間 培 養 したHA-16細 胞 はdに 示 した

が,細 胞 表 面 は 分 泌 物 様 物 質 で 覆 わ れ て い た。

Fig.9に 示 したHEL細 胞 に は分泌 物 状 の もの は

細 胞 表 面 に何 等 認 め られ なか った。

HA-16細 胞 の増 殖 曲線 と 細 胞 質 内 の 分 泌 顆粒

及び ムチ ンの 関係 をFig.10に 示 した。 トリプ シ

ンーEDTAで 細 胞 分 散 後,105 cells/mlに 細 胞 濃

度 を調整 し,2mlを 組 織 培 養 用dish(35mmφ)

で培 養 した。 細 胞 は培 養 開始 後,1日 目 で減少 を

示 し,2日 目 か ら5日 目ま で増 殖 を示 し,6日 目

か ら急 速 に減 少 が 始 ま り,10日 目で は生 細胞 は認

め られ な くな った 。 この事 か らHA-16細 胞 の継

代 維 持 に は3~4日 毎 に 培 養 細 胞 を継代 す る事 が

必 要 で あ る こ とが示 され た。

考 察

唾液の産生に関する研究は古 くか ら行われてい

るが,い ずれも動物またはヒトを用いたin vivo

の実験 であ り,細 胞 レベルでの実験は 不可能であ

った。 電子顕微鏡の発達により,細 胞 レベルの観

察は可能になったが,唾 液腺組織細胞中での細胞

であ り,腺 房細胞にはひだ状の インフォールデン

グがあって細胞表面積を増や して吸水反応を高め

ている事,細 胞質内には分泌顆粒がある事,ま た

唾液を細胞外に放出する為に多数のマイクロビラ

イがある事等の 形態的特徴があげられているにす

ぎない。 この様に電子顕微鏡では形態的な観察は

出来ても,細 胞 レベルでの唾液分泌機構の解析は

不可能である。 丸茂等の研究13)でヒ ト小唾液腺組

織片の培養の報告があるが,正 常細胞の培養には

細胞自身の持つlife span8-10)が あ り,ク ローン

化 して継代細胞株として樹立する事は不可能であ

る。 本研究では腫瘍 ウイルスであるSV40を 用い

て細胞を トランスフォームさせ,そ の中から特有

な唾液分泌機能を有する細胞のクローン化を試み

た。 唾液腺組織には構築組織 として多 く含まれる

線維芽系細胞 と導管 ・介在部導管及び 腺房細胞 を

構成する上皮系細胞がある。 培養開始時には線維

芽系細胞が大部分であった事から,ト リプシン感

受性は線維芽系細胞が高い事を利用 し,出 来る限

り線維芽系細胞を培養細胞から排除するよう努力

した。SV40感 染 により軟寒天培地で形成 したコ

ロニーの内,28個 のクローン細胞が得 られたが,

3つ のクローン細胞が細胞表面に粘液様物質を産

生 し,こ の3つ のクローン細胞にのみ五重染色で

分泌顆粒が細胞質内に認められた。 この中から細

胞増殖の良いクローン番号16で ある細胞をHA-

16細 胞 として,そ の性状を代表的線維芽細胞であ

るHEL細 胞 と比較 した。HA-16細 胞には細胞

質内に分泌顆粒が 認められると共にコロイ ド鉄染

色により細胞質内にムチンが産生 されている事が

確認 された。 他方,HEL細 胞にはいずれも認め

られなかった。 また,ヒ ト小唾液腺組織のパラフ

ィン切片では腺房細胞のみに ムチン陽性細胞が認

められた事から,HA-16細 胞はヒト小唾液腺の腺

房細胞が その機能を保持 したままSV40で トラン

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清信成 一: ヒト腺房細胞樹立 253

Fig.8 Observation of the suface of HA-16 cells by electron microscopy after 3 days (abc) and 5 days

(d) of culture.(a; •~3500, b: •~5000, c; •~2200, d; •~700)

スフォーム して,ク ローン細胞として樹立 された

と考えられる。HA-16細 胞は培養開始から3日 ま

での間に分泌顆粒 とムチンを細胞質内に 経日的に

蓄積する事,5日 培養では走査型電子顕微鏡で認

められた様に細胞表面に多 くの分泌物が排出され

ている事,HA-16細 胞の細胞増殖曲線で示 された

様に培養開始から4日 まで細胞増殖 を行い,そ の

後増殖停止 した後で 生細胞数が減少する事 と考え

合わせると,HA-16細 胞はG1相 →S相 →G2相

→M相 のサイクルで細胞分裂 を行い増殖するが,

単層細胞形成が 近づき分裂 サイクルを停止 する

G0相 になると細胞の分泌機能発現が行われ,分

泌顆粒 とムチン合成が活発 となり細胞外にムチン

を分泌し続ける状態になるものと考えられる。 こ

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254 歯 基 礎 誌 31: 248-256, 1989,

Fig.9 Observation of the surface of HEL cells

by electron microscopy after 3 days of

culture. (•~3000)

Fig.10 Comaprison of HA-16 cells growth with

appearances of secretory granules and

mucins in cytoplasm of HA-16 cells.

の事からHA-16細 胞を継代培養する時は腺房細

胞 として機能を発現する前に継代する必要性をも

示 している。

唾液の産生に関しては細胞にはpinocytosisに

よる細胞吸水作用があることや,小 胞で合成 され

る酵素や糖タンパク質はゴルジ装置に送 られてか

ら分 泌顆 粒 に 取 り込 まれ て唾 液 が作 られ る こ とが

明 らか に な っ て い る。 この唾 液 の 産生 は ピ ロカ ル

ピ ンで増 加 し,ア トロ ピ ンに よ って抑 制 され る16)

が,HA-16細 胞 はG0相 に な って か ら細胞 質 内 に

分泌 顆 粒 及 び ム チ ン が認 め られ る 事 は これ等 の薬

剤 に よ る抑 制 で は な く,細 胞 増 殖 停 止 に伴 う細 胞

機 能 の 発現 と考 え られ る。

唾 液 中 に は消 化 作 用 物 質 と して ア ミラー ゼ17,18)

が あ り,ま た,抗 菌作 用物 質19)も 含 まれ て お り,

リゾチ ー ム20,21),ペ ル オ キ シ ダー ゼ22),IgA抗

体23),ロ イ コタ キシ ン24)及び オ プ ソニ ン25)が研 究

され て い る。 しか し,こ れ 等 の物 質 は3大 唾 液 腺

及 び小 唾 液 腺 か ら分 泌 され た 混 合 唾 液 に よ る もの

で,ど の様 な唾 液 腺 で これ 等 の 物 質 が 産生 され て

い るか不 明 で あ る。HA-16細 胞 か ら分 泌 され て い

る物 質 に これ等 の物 質 の どれ が 含 まれ て い るか 解

析 して い な い が,小 唾 液 腺 組 織 の腺 房 細 胞 由来 で

あ るHA-16細 胞 の 分泌 物 に どの様 な 物 質 が 含 ま

れ て い るか興 味 あ る事 で あ る。 ま た,唾 液 腺組 織

の 抽 出物 に は神 経 成 長 促 進 因 子(NGF)26)や 上 皮

成 長 促 進 因子(EGF)27)が 含 まれ て未 分 化 細胞 か

ら分 化促 進 す る為 の組 織 形 成 に重 要 な 因 子 で あ る

が,唾 液 腺組 織 細 胞 で こ れ等 の物 質 の生 成 場所 は

不 明 と され て い る。 一 般 に線 維 芽 系 細胞 か らcol-

ony stimulating factor (CSF)28)が 産 生 され て い

る が,HA-16細 胞 の様 な 分泌 機 能 を有 す る上 皮 系

細 胞 がNGFま たはEGF産 生 に 関与 して い るか

否 か を調 べ る事 で,こ れ 等 の 因子 の生 成 細 胞 を同

定 す る上 で 腺 房 細 胞 の関 わ り合 い を追 求 出 来 る も

の と思 われ る。

唾 液 は漿 液 性 唾 液 と 粘 液 性 唾 液 に 分 け られ,

HA-16細 胞 は 口唇 の 小 唾 液 腺 か ら ク ロー ニ ング

され た の で 粘 液 性 唾 液 を産 生 す る腺 房 細 胞 由来 と

考 え られ る。 ヒ トの小 唾 液 腺 組 織 切 片 の コ ロイ ド

鉄 染色 に よ って 特 異 的 に腺 房 細 胞 に認 め られ た ム

チ ン陽性 細 胞 と同 じ様 に,HA-16細 胞 に ムチ ンが

認 め られ 分 泌機 能 を 保 有 して い る こ とが 示 され

た。 唾 液成 分 の組 成 に つ い て は ヒ トや 動 物 か ら採

取 され た唾 液 が用 い られ て い る が,常 に細 菌 汚 染

が あ り唾液 成 分 は細 菌 に よ り唾 液 の蛋 白分 解29)や

糖 分 解30)を 受 けて い る と報 告 され て い る。 こ の事

は正 確 な 唾 液組 成 を測 定 す る事 は 困難 で あ る こ と

Page 8: ヒト小唾液腺培養細胞から腺房細胞の樹立 - …...250 歯基礎誌 31: 248-256, 1989. 組織のパラフィン包埋切片を用いて五重染色によ る分泌顆粒及びコロイド鉄によるムチン染色を行

清信成 一: ヒト腺房細胞樹立 255

を示 して い る。 。ま た,細 胞 レベ ル で の唾 液 の産 生

機構 につ い て 解 析 され て い な い 。HA-16細 胞 は

SV40に よ り トラ ン ス フ ォー ム さ れ た ク ロー ン細

胞 で あ る が,分 泌 顆 粒 及 び ム チ ン が細 胞質 内 に認

め られ,細 胞 表 面 に は分 泌 物 の蓄 積 が あ った事 か

ら,HA-16細 胞 は唾 液 産 生 及 び それ を細胞 外 に分

泌 す る機 能 を保 持 して い る と考 え られ る。 以 上 よ

りHA-16細 胞 は 正 常 ヒ ト唾 液 腺 組 織 の腺 房 細 胞

がSV40に よ り ト ラ ン ス フ ォー ム し,軟 寒天 培 地

中 で1個 の細 胞 か らコ ロニ ー を形 成 した事 は 正 常

細胞 は軟 寒 天 培 地 中 で コ ロニー を形成 し得 な い 事

か ら,SV40に よ り トラ ン スフ ォー ム した細 胞 と云

え る。ま た,こ の細 胞 は継 代 可 能 な事 か ら唾 液 組 成

及 び 唾 液 産 生機 構 を細 胞 レベ ル で解 析 す る事 が可

能 にな る もの と思 われ る。

結 論

ヒ ト口唇 の小 唾 液 腺 組 織 片 を細 分 して培養 し,

増 殖 した 細 胞 を8代 継 代 培 養 後SV40で ト ラ ン

スフ ォー ム して28個 の コ ロニ ー が得 られ た。 これ

等 の コ ロニー を継 代 培 養 して,そ の性 状 を調 べ た

所,3個 の コ ロニ ー か ら由来 した細 胞 の細 胞 質 内

に分泌 顆 粒 とム チ ンを有 す る事 が認 め られ た。 ま

た,走 査 型 電 子顕 微 鏡 に よ り細胞 表 面 に分泌 物 と

見 られ る小 胞 が認 め られ,培 養5日 目 では細 胞 全

体 を覆 うま でに な っ た。 ヒ ト口唇 の小 唾液 腺 組 織

切片 で は 腺 房 細胞 の み ムチ ン陽性 で あ り,ヒ ト胎

児肺 細 胞 では 分泌 顆 粒 及 び ム チ ンが認 め られ な か

った。 これ 等 の事 実 か らSV40で トラ ンス フ ォ ー

ム と して得 られ た細 胞 は小 唾 液 腺 の腺 房 細 胞 で あ

る と結 論 した.

謝辞:稿 を絶えるにあた り,こ の研究の御指導 を賜 り

ま した 当教室主任 の熊谷勝男教授 に謹んで感謝 の意 を表

します。 また実験指導に助言 をいただいた清水義信助教

授及び菅野恵美様 に感謝いた します。細胞染色 に御協力

いただきま した口腔診断科の丸茂町子講師及び電子顕微

鏡写真に御 協力いただ きま した第二保存科 の笹崎弘己講

師 の各位に感謝いた します。

抄録:口 唇の小唾液 腺組織(16歳 ・女性)を 培養 した時,組 織片 の表面に唾液 の分泌が見 られ,そ の後唾

液組織 片の周 辺か ら細胞増殖が見 られた。 この細胞 を8代 継代培養 し,SV40を 感染 させ トランスフォーム細

胞 を作 り,28個 の コロニーが得 られ たが,そ の内3個 のコロニーは細胞質内に分泌顆粒 とムチンの産生 が認

め られ た。また,ヒ ト口唇の小唾液腺組織切片 では,腺 房細胞 のみがムチ ン陽性であ った。この事か ら分泌顆

粒 とムチ ン陽性 を示 した細胞は小唾液 腺の腺房細胞が トランスフォーム した細胞 と結論 した.こ の細胞 を 継

代培養 した時,培 養 初期 の細胞増殖期では分泌顆粒の出現 とムチンの産生 は細胞質内に 弱 く認め られたが,

単層細胞 を形成 しつつ ある細胞 では細胞質内 と細胞表面 にムチ ンの産生が強 く認 められた。 これ等 の 事実 は

小唾液腺 の腺房細胞が唾液分泌機能 を保有 して トランスフオーム し,ク ローン細胞 として 樹立 された事 を示

してい る。

文 献

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