ファジィ科学シンポジウム...
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Vol. 34 No. 3
第198回
ファジィ科学シンポジウム
講演論文集
期日 2020年 9月 5日(土)16:00~18:00
場所 Zoom会議室(ホスト:染山 教大(運千山真養寺))
プログラム
第 1部: 研究講演 「ファジィソシオメトリー分析法について」
上江洲 弘明(金沢工業大学)
第2部: ディスカッション
主催 日本知能情報ファジィ学会ソフトサイエンス研究部会
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
ESA(教育システム解析)研究会
pp.1-26
ファジィソシオメトリー分析法について
金沢工業大学 上江洲 弘明
第 1章 ファジィソシオメトリー分析
ファジィグラフは,通常のグラフ理論をファジィ的拡張したもので,集団の構造分析や教材の構造解
析等に応用できる大変有効な表現手法である.このファジィグラフをさらに拡張し,クリスプ性をグレ
ードに置き換えたファジィグラフをファジィノードファジィグラフとよぶ.これにより,ファジィグラ
フの応用の範囲は広がるが,ファジィグラフとは異なり,複雑なものになる.そこで,ファジィノード
ファジィグラフを T-ノルム族を用いてファジィグラフに変換し解析する.このとき,パラメータ𝜆の値
を変化させることにより,ファジィグラフ列が生成される.この手法を用い,ファジィソシオメトリー
分析を行う.
以下,その変換の理論と最適ファジィグラフ決定法,およびファジィソシオメトリー分析について述
べる.
1.ファジィノードファジィグラフ
ファジィノードファジィグラフ G は,次のように定義される.
定義 1. ファジィノードファジィグラフ
𝐺 = (𝑉, 𝑌): 𝑉 = {𝑣𝑖(𝑢𝑖)}, 𝑌 = (𝑦𝑖𝑗)
ただし,𝑢𝑖 ∈ [0,1]はノード𝑣𝑖のグレード,𝑦𝑖𝑗 ∈ [0,1]はノード𝑣𝑖から𝑣𝑗へのアークのグレードを表す.
ファジィノードファジィグラフ𝐺は,次の方法でファジィグラフに変換することができる.
𝐺 = (𝑉, 𝐹): 𝑉 = {𝑣𝑖}, 𝐹 = (𝑓𝑖𝑗), 𝑓𝑖𝑗 = 𝑇(𝑢𝑖 , 𝑦𝑖𝑗)
ここで,ノード𝑣𝑖から𝑣𝑗へのアークのグレード𝑓𝑖𝑗は,𝑢𝑖と𝑦𝑖𝑗の T-ノルムである.
2. T-ノルム
定義 2. T-ノルム
T-ノルム(Triangular Norm)は
(𝑝, 𝑞) ∈ [0,1]2 → 𝑇(𝑝, 𝑞) ∈ [0,1]
となる二項演算で次の性質をみたす:
(1) 可換性:𝑇(𝑝, 𝑞) = 𝑇(𝑞, 𝑝)
(2) 結合性:𝑇(𝑝, 𝑇(𝑞, 𝑟)) = 𝑇(𝑇(𝑝, 𝑞), 𝑟)
(3) 単調性:𝑝 ≤ 𝑞, 𝑟 ≤ 𝑠 ⟹ 𝑇(𝑝, 𝑟) = 𝑇(𝑞, 𝑠)
(4) 境界条件:𝑇(𝑝, 0) = 0, 𝑇(𝑝, 1) = 𝑝
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代表的な T-ノルムには,(1), (2), (3), (4) などがある.
(1)論理積(Logical product):𝑇𝐿(𝑝, 𝑞) = 𝑝 ∧ 𝑞
(2)代数積(Algebraic product):𝑇𝐴(𝑝, 𝑞) = 𝑝 × 𝑞
(3)限界積(Łukasiewicz product):𝑇𝑀(𝑝, 𝑞) = (𝑝 + 𝑞 − 1) ∨ 0
(4)激烈積(Drastic product):𝑇𝐷(𝑝, 𝑞) = {0, 𝑝 ∨ 𝑞 < 1
𝑝 ∧ 𝑞 𝑝 ∨ 𝑞 = 1
上記の T-ノルムはいずれも個別の T-ノルムであるが,これら以外に,パラメータを用いて表される
T-ノルムの族がある.これらの族を T-ノルム族という.
定義 3. T-ノルム族
任意の𝜆 ∈ [𝑎, 𝑏]に対して,各𝑇𝜆が T-ノルムであるとき,{𝑇𝜆}を𝑇𝑎 , 𝑇𝑏をつなぐ T-ノルム族であるとい
う.
T-ノルム族には以下のものがある.
(1) Dombi: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) =
1
1 + √(1 − 𝑝
𝑝 )𝜆
+ (1 − 𝑞
𝑞 )𝜆𝜆
, 𝜆 > 0
(2) Weber: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) = ((1 + 𝜆)(𝑝 + 𝑞 − 1) − 𝜆𝑝𝑞) ∨ 0, 𝜆 ≥ −1
(3) Yager: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) = 1 − √(1 − 𝑝)𝜆 + (1 − 𝑞)𝜆𝜆
∧ 1, 𝜆 ≥ −1
(4) Hamacher: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) =𝑝𝑞
𝜆 + (1 − 𝜆)(𝑝 + 𝑞 − 𝑝𝑞), 𝜆 ∈ [0,1]
(5) Schweizer(i): 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) = √(𝑝𝜆 + 𝑞𝜆 − 1) ∨ 0𝜆
, 𝜆 > 0
(6) Schweizer(ii): 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) =
1
√1
𝑝𝜆 +1
𝑞𝜆 − 1𝜆
, 𝜆 > 0
(7) Schweizer(iii): 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) = 1 − √(1 − 𝑝)𝜆 + (1 − 𝑞)𝜆 − (1 − 𝑝)𝜆(1 − 𝑞)𝜆𝜆
, 𝜆 > 0
(8) Dubois: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) =𝑝𝑞
𝑝 ∨ 𝑞 ∨ 𝜆, 𝜆 ∈ [0,1]
(9) Frank: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) = log𝜆 [1 +(𝜆𝑝 − 1)(𝜆𝑞 − 1)
𝜆 − 1] , 𝜆 > 0, 𝜆 ≠ 1
(10) 準論理積: 𝑇𝜆(𝑝, 𝑞) = {0, 𝑝 ∨ 𝑞 < 1 − 𝜆
𝑝 ∧ 𝑞 𝑝 ∨ 𝑞 ≥ 1 − 𝜆, 𝜆 ∈ [0,1]
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3. T-ノルム族によるファジィノードファジィグラフ解析
ファジィノードファジィグラフを準論理積を用いてファジィグラフに変換すると,ファジィグラフ列
{𝐺𝜆}が生成される.
𝐺 = (𝑉, 𝑌): 𝑉 = {𝑣𝑖(𝑢𝑖)}, 𝑌 = (𝑦𝑖𝑗) ⟹ 𝐺𝜆 = (𝑉, 𝐹𝜆): 𝑉 = {𝑣𝑖}, 𝐹𝜆 = (𝑓𝑖𝑗𝜆), 𝑓𝑖𝑗
𝜆 = 𝑇𝜆(𝑢𝑖 , 𝑦𝑖𝑗)
このとき,グラフ列{𝐺𝜆}から最適ファジィグラフ𝐺𝜆0を,クラスター分析と連結度の度合いとの2つの
観点から決定する.
まず,ファジィグラフ𝐺をクラスター分析するために,類似行列𝑆を定義する.
定義 4. 類似行列𝑆
𝑆 = (𝑠𝑖𝑗),2
𝑠𝑖𝑗=
1
𝑓𝑖𝑗+
1
𝑓𝑗𝑖
ただし,𝑓𝑖𝑗 ⋅ 𝑓𝑗𝑖 = 0のとき𝑠𝑖𝑗 = 0である.
この類似行列からファジィクラスタリング分析を行い,分割樹形図 P を作る.この樹形図の最適カッ
トレベル c0 を決定するため,クラスター分岐度関数とクラスターサイズ関数を定義する.
定義 5. クラスター分岐度関数𝑝(𝑐)・クラスターサイズ関数𝑞(𝑐)
𝑝(𝑐) =𝑥(𝑐) − 1
𝑥(1) − 1, 𝑞(𝑐) =
𝑦(𝑐) − 1
𝑦(0) − 1
このクラスター分岐度関数 )(cp ・クラスターサイズ関数 )(cq にファジィ決定を用いて,最適カット
レベル c0 を決定する.
定義 6. ファジィ決定による最適カットレベル𝑐0
𝑐0 = max {𝑐|𝑝(𝑐) ∧ 𝑞(𝑐) = max{𝑝(𝑥) ∧ 𝑞(𝑥)}}
この最適カットレベル𝑐0を用いて最適ファジィグラフ0
G を決定する.ファジィグラフ G がクラス
ター分析の特徴を表している度合いを計量するため,距離関数 )(d を定義する.また,ファジィグラフ
G が保持している情報量の度合いを計量するため,連結度関数 )(e を定義する.
定義 7. 距離関数𝑑(𝜆)・連結度関数𝑒(𝜆)
𝑑(𝜆) = 𝑑(𝐹𝜆, 𝑆𝑐0) =
1
𝑛2 − 𝑛∑ ∑|𝑓𝑖𝑗 − 𝑠𝑖𝑗
𝑐0|
𝑛
𝑗=1
𝑛
𝑖=1
, 𝑒(𝜆) = 𝑒(𝐹𝜆) =𝛾(𝐹𝜆)
𝑛2 − 𝑛
ただし,𝑆𝑐0 = (𝑠𝑖𝑗𝑐0)は類似行列𝑆の𝑐0-カット行列,𝛾(𝐹𝜆) = #(Γ), Γ = {𝑓𝑖𝑗 ∈ 𝐹𝜆|𝑓𝑖𝑗 > 0}である.ここで,
#(Γ)は集合Γの要素の個数を表す.
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さらに,この距離関数𝑑(𝜆)・連結度関数𝑒(𝜆)を正規化して,ファジィ距離関数𝑓𝑑(𝜆)・ファジィ連結度
関数𝑓𝑒(𝜆)を定義する.
定義 8. ファジィ距離関数𝑓𝑑(𝜆)・ファジィ連結度関数𝑓𝑒(𝜆)
𝑓𝑑(𝜆) =𝑑𝑀 − 𝑑(𝜆)
𝑑𝑀 − 𝑑𝑚
, 𝑓𝑒(𝜆) =𝑒(𝜆) − 𝑒𝑚
𝑒𝑀 − 𝑒𝑚
ただし,𝑑𝑀 = max{𝑑(𝜆)} , 𝑑𝑚 = min{𝑑(𝜆)} , 𝑒𝑀 = max{𝑒(𝜆)} , 𝑒𝑚 = min{𝑒(𝜆)}である.
この2つの関数から,ファジィ決定を用いて,最適値𝜆0を決定する.
定義 9. 最適値𝜆0の決定
𝜆0 = min {𝜆|𝑓𝑑(𝜆) ∧ 𝑓𝑒(𝜆) = max{𝑓𝑑(𝑥) ∧ 𝑓𝑒(𝑥)}}
4. ソシオメトリー分析への応用
適用事例として小学生 13 人のクラスを対象に,図 1 のアンケートを行った結果を説明する.アンケ
ート結果から,図 2 の応答行列𝐾ができ,応答行列𝐾から,図 3 の評定行列𝑅が得られる.
図 1. アンケート
評定行列𝑅より,図 4 の選好行列(ファジィノードファジィ行列)𝑇ができる.
さらに,この選好行列𝑇から図 5 のファジィノードファジィグラフ𝐺 = (𝑉, 𝑌)ができる.
次に,ファジィノードファジィグラフ𝐺 = (𝑉, 𝑌)をファジィグラフ𝐺𝜆 = (𝑉, 𝐹𝜆)に変換する.この変換の
際に T-ノルム族は「順論理積」を用いる.ここでは𝜆を変化させることによって,図 5.1-5.16 のファ
ジィグラフ列{𝐺𝜆}をつくることができる.
つぎのそれぞれのばあいに、おなじグループに
なりたい人をじゅんにかきなさい。
(あ) おひる休みにいっしょにあそびたい人
(い) えんそくのときに、いっしょにおべんとう
を食べたい人
(う) グループ学習をいっしょにやりたい人
1 2 3 4 5 …
(あ)
(い)
(う)
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図 2. 応答行列𝐾
図 3. 評定行列
1 2 3 4 5 …
(あ) 11 10 4 7 0 0
S01 (い) 11 4 10 7 0 0
(う) 11 7 0 0 0 0
(あ) 7 3 8 10 6 0
S02 (い) 7 6 3 8 13 4
(う) 3 7 13 8 4 0
(あ) 8 2 5 11 0 0
S03 (い) 2 8 6 10 1 12
(う) 0 0 0 0 0 0
(あ) 11 1 10 0 0 0
S04 (い) 10 11 0 0 0 0
(う) 3 11 10 0 0 0
(あ) 2 12 7 1 10 0
S05 (い) 2 1 6 9 8 0
(う) 7 2 8 11 10 0
(あ) 0 0 0 0 0 0
S06 (い) 2 3 7 0 0 0
(う) 5 0 0 0 0 0
(あ) 3 2 0 10 0 0
S07 (い) 9 4 0 0 0 0
(う) 0 3 2 1 0 0
(あ) 3 9 7 5 13 0
S08 (い) 5 2 9 3 7 13
(う) 1 7 3 5 0 0
(あ) 12 9 4 1 2 6
S09 (い) 13 8 7 11 3 5
(う) 9 1 2 5 0 6
(あ) 4 11 7 2 8 3
S10 (い) 4 11 7 2 8 3
(う) 4 11 7 2 8 3
(あ) 7 0 0 0 0 0
S11 (い) 4 10 0 0 0 0
(う) 0 0 0 0 0 0
(あ) 0 0 0 0 0 0
S12 (い) 8 3 1 7 2 5
(う) 0 0 0 0 0 0
(あ) 1 0 0 0 0 0
S13 (い) 1 2 0 6 0 0
(う) 0 0 9 0 0 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
1 3 2 3 9
2 6 2 8 1 1
3 5 1 1 5
4 2 3 5 7
5 2 8 1 4 1 2
6 3 2 3 1
7 3 5 2 3
8 3 2 4 3 3 3
9 2 1 1 1 2 5 3 3
10 9 3 6
11 3 3 2
12 1 2 3
13 6 2 1
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図 4. 選好行列T
図 5. ファジィノードファジィグラフ G=(V, Y)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
1 1 0.33 0.22 0.33 1
2 1 0.67 0.22 0.89 0.11 0.11
3 0.56 1 0.11 0.11 0.56
4 0.22 0.33 1 0.56 0.78
5 0.22 0.89 1 0.11 0.44 0.11 0.22
6 0.33 0.22 0.33 1 0.11
7 0.33 0.56 0.22 1 0.33
8 0.33 0.22 0.44 0.33 0.33 1 0.33
9 0.22 0.11 0.11 0.11 0.22 1 0.33 0.33
10 1 0.33 1 0.67
11 0.33 0.33 0.22 1
12 0.11 0.22 0.33 1
13 0.67 0.22 0.11 1
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図 6.1. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.81,1.00]
図 6.2. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.80,0.81)
図 6.3. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.78,0.80)
図 6.4. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.67,0.78)
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図 6.5. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.65,0.67)
図 6.6. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.64,0.65)
図 6.7. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.61,0.64)
図 6.8. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.56,0.61)
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図 6.9. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.44,0.56)
図 6.10. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.37,0.44)
図 6.11. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.35,0.37)
図 6.12. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.33,0.35)
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図 6.13. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.24,0.33)
図 6.14. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.12,0.24)
図 6.15. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.11,0.12)
図 6.16. ファジィグラフ Gλ = (𝑉, 𝐹𝜆),
𝜆 ∈ [0.00,0.11)
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このファジィグラフ列{𝐺𝜆}の中から,前述した方法で最適ファジィグラフ𝐺𝜆0を決定する.
クラスター分析を行うため,選好行列𝐹から友好行列𝑆を作ると,図 7 の分割樹形図𝑃が得ら
れる.この分割樹形図𝑃については,クラスター分岐度関数𝑝(𝑐)・クラスターサイズ関数𝑞(𝑐)
が次のようになる:
𝑝(𝑐) =𝑥(𝑐) − 1
13 − 1, 𝑞(𝑐) =
𝑦(𝑐) − 1
13 − 1
この2つの関数に対して,ファジィ決定を行うと図 8 が得られ,最適なカットレベル
𝑅𝑐0, 𝑐0 = 0.26が定まる.
次に,この結果を用いて,最適ファジィグラフ𝐺𝜆0を決定する.𝑐0 = 0.26から距離関数𝑑(𝜆),
連結度関数𝑒(𝜆)が次のように定義される:
𝑑(𝜆) =1
156∑ ∑|𝑓𝑖𝑗 − 𝑠𝑖𝑗
𝑐0|
13
𝑗=1
13
𝑖=1
, 𝑒(𝜆) =𝛾(𝐹𝜆)
156
この2つの関数を正規化することにより,ファジィ距離関数𝑓𝑑(𝜆),ファジィ連結度関数
𝑓𝑒(𝜆)が次のように定義される:
𝑓𝑑(𝜆) =0.254 − 𝑑(𝜆)
0.026, 𝑓𝑒(𝜆) =
𝑒(𝜆) − 0.045
0.295
これによりファジィ決定を用いて図 9 がえられ,𝜆0 = 0.67が決定される.
図 7. 分割樹形図𝑃
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図 8. ファジィ決定による最適カットレベル𝑐0
図 9. ファジィ決定による最適値𝜆0
これらのことから最適なファジィグラフ𝐺𝜆0, 𝜆0 = 0.67が求まる.次に,クラスター分析
の結果𝑅𝑐0, 𝑐0 = 0.26と総合すると,図 10 のファジィソシオグラム𝑈𝑧が得られる.
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図 10. ファジィソシオグラム𝑈𝑧(𝜆 = 0.67, 𝑧 = 0.26)
このファジィソシオグラムは同じクラスターに属するノードを四角形,五角形で表し,
シャプレイ値の高いノードを 2 重太線で表してある.
ファジィソシオグラムから以下のことがわかる.
(1) 2,4 の児童はクラスのオピニオンリーダーである.
(2) {1,4,10,11},{2,3,6,7,8,9}の児童の組は仲がよい.
(3) 12,13 の児童は比較的孤立している.
クラスの担任教員からは,別途次のようなコメントが得られた.
(1) 児童 4 は明るい性格でクラスのオピニオンリーダー的人物である.
(2) 児童 13 はクラスでは孤立ぎみの生徒である.
(3) 児童 7 はおとなしいが,だれとでも仲が良い.
(4) 児童1と4は家が近所で,非常に仲がよい.
近似ソシオグラムの情報と,教員のコメントから得られる人間関係はほぼ一致してい
る.
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このことから,ファジィノードファジィグラフと T-ノルムを応用した多段階的近似ソシ
オグラム分析は,かなり有効であることが確認される.なお,このソシオグラム分析法
は,心理学的観点,社会一般の集団構造の解析等にも適用することができる.
4. おわりに
第 1 章では,T-ノルムを応用してファジィノードファジィグラフをファジィグラフに変
換する方法,ファジィグラフ列から最適ファジィグラフを決定する方法などを論じた.次
に,その適用事例として,ソシオメトリー分析について述べた.この分析法は,一般に,
あいまいで複雑な情報を近似的に簡潔に表現し,構造的に分析することに有効であると考
えられる.
第 1章 参考文献
[1] 西田,竹田:ファジィ集合とその応用,森北出版,1978.
[2] 水本:ファジィ理論とその応用,サイエンス社,1988.
[3] 山下:ファジィ理論と応用,学文社,1997.
[4] 上江洲,山下:T-ノルムを応用したファジィノードファジィグラフの解析Ⅰ~Ⅱ,日
本数学会大会応用数学分科会, 1999~2000.
[5] 上江洲, 山下 : ファジィノードファジィグラフを応用した教材構造分析, 17th ファジ
ィシステムシンポジウム 5E2-3, pp.221-222, 2001.
[6] 上江洲:ファジィノードファジィグラフを応用したソシオメトリー分析,日本ファジ
ィ学会誌 Vol.14 No.3,pp.299-309, 2002.
[7] 上江洲:T-ノルム族の解析と応用,日本数学会大会応用数学分科会,pp.28-29,2003.
[8] 上江洲,山下:T-ノルム族のファジィノードファジィグラフへの応用,日本ファジィ
学会ソフトサイエンス研究部会, pp.10-13, 2003.
[9] 上江洲, 山下 : Connectivity Properties of T-Norm Families and its Application, Int’l
Conference on Computer, Communication and Control Technologies, 2003.
[10] 上江洲, 津田 : ファジィ理論を応用したクラスターレベル分析とその応用, 日本教
育工学会, pp.695-696 , 2003.
[11] 上江洲 : ファジィノードファジィグラフ,T-ノルムとその応用,日本知能情報ファ
ジィ学会誌 Vol.16 No.1, pp.88-95, 2004.
[12] 上江洲,山下:Learning Structure Analysis System Applying Fuzzy Theory,The 4th
IEEE International Conference on Advanced Learning Technologies, pp.890-891, 2004.
[13] 上江洲,山下:ファジィノードファジィグラフの特性解析と応用,日本知能情報ファ
ジィ学会ソフトサイエンスワークショップ, pp.27-30, 2005.
第198回ファジィ科学シンポジウム 令和 2年 9月 5日(土) Zoom会議室 (ホスト:染山教大(運千山真養寺))
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[14] 上江洲,山下:Decision Method of Optimal Fuzzy Graph Applying Fuzzy Decision,
International Congress of Mathematicians, pp.156, 2006.
[15] 上江洲,山下:ファジィノードファジィグラフ解析による最適ファジィグラフの決定
法,日本知能情報ファジィ学会ソフトサイエンスワークショップ,pp.34-37,2006.
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第 2章 ファジィグラフの自動描画システム
ファジィグラフは集団の構造分析や教材の系列解析などに応用される有効な表現手法で
ある.しかし,ファジィグラフを平面上に図示しようとするとノードやアークが重なり合
い,グラフが複雑になる.そこで,遺伝的アルゴリズムを応用して,ファジィグラフを見
易く,さらに表示する情報量も大きくなる描画システムを考案した.以下,そのシステム
の手法とその応用事例について述べる.
1. ファジィグラフ
𝑆を通常の(クリスプ)集合とする.集合𝑆のファジィ部分集合は写像𝜎: 𝑆 → [0,1]により定
義され,この𝜎をファジィ部分集合のメンバーシップ(帰属度)関数という.また,このとき
𝑥𝑖 ∈ 𝑆に対して,𝜎(𝑥𝑖)の値はファジィ部分集合に属する度合い(グレード)を表す.
同様にしてファジィ関係𝑅は,直積集合𝑆 × 𝑆のファジィ部分集合と考えることができ,
写像𝜇: 𝑆 × 𝑆 → [0,1]により定義される.
ファジィ集合𝑆上のファジィ関係𝑅はファジィノードファジィグラフ𝐺で表すことができ,
次のように定義される.
定義 1: ファジィノードファジィグラフ
ファジィノードファジィグラフ𝐺 = (𝜎, 𝜇)は以下の2つの関数によって定義される.
𝜎: 𝑆 → [0,1]
𝜇: 𝑆 × 𝑆 → [0,1]
また,ファジィグラフはノードのファジィ部分集合とファジィ関係行列によっても表現
することが可能である.
𝐺 = (𝑆, 𝐹): 𝑆 = {𝑥𝑖(𝑢𝑖)}, 𝐹 = (𝑓𝑖𝑗)
ここで,𝑢𝑖 = 𝜎(𝑥𝑖), 𝑓𝑖𝑗 = 𝜇(𝑥𝑖 , 𝑥𝑗)である.
また,すべての𝑥𝑖 ∈ 𝑆に対して,𝜎(𝑥𝑖) = 1の場合には,𝐺をクリスプノードファジィグラ
フという.
通常,クリスプノードファジィグラフは,シャプレイ値を応用してノードのグレードを
計算し,ファジィノードファジィグラフ化する.
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定義 2: シャプレイ値
𝜎(𝑥𝑖) = [𝜙(𝑖)
max1≤𝑘≤𝑀
{𝜙(𝑘)}]
𝑟
, 0 < 𝑟 ≤ 1
𝜙(𝑖) =∑ 𝑣𝑖𝑗
𝑀𝑗=1
∑ ∑ 𝑣𝑝𝑞𝑀𝑞=1
𝑀𝑝=1
𝑣𝑖𝑗 = {
2𝜇(𝑥𝑖 , 𝑥𝑗)𝜇(𝑥𝑗 , 𝑥𝑖)
𝜇(𝑥𝑖 , 𝑥𝑗) + 𝜇(𝑥𝑗 , 𝑥𝑖), 𝑖 ≠ 𝑗 𝑎𝑛𝑑 𝜇(𝑥𝑖 , 𝑥𝑗) + 𝜇(𝑥𝑗 , 𝑥𝑖) ≠ 0
0, 𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟𝑤𝑖𝑠𝑒
2. グラフ描画
描画の際,基本的な規則として以下のものを採用する.
・ノードは格子上に描画する.
・隣り合うノード同士のアーク以外は描画しない.
・𝑘 × 𝑘の正方形の格子内に,シャプレイ値の高いものほど中央に来るように描画する.
図 1. 描画例
これらの規則の下,遺伝的アルゴリズムを用いて,ノードの配置を決定する.ノードの
高いものを中央に近く配置するため,中心を第 0 層,中心の周りを第 1 層として,第1
層,第 2 層と順に決定していく.
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図 2. 配置の決定順序
3. 遺伝的アルゴリズム
3.1 コーディング
ノードの配置を表す GTYPE の設計法の1つとして,順序表現を用いる.これは,ノー
ド𝑥1, 𝑥2, 𝑥3, … , 𝑥𝑁を1,2,3, … , Nで順序付けて,配置を相対的な順番で表現したものである.
たとえば,図 3 のような配置を考える.
① ③ ⑤
⑥ ② ⑨
⑦ ④ ⑧
図 3. 配置例
このとき,ノードの配置を𝑋(𝑥, 𝑦)という配列変数に格納することを考えると,左上を起点
として,
𝑋(1,1) = 𝑥1, 𝑋(2,1) = 𝑥3, 𝑋(3,1) = 𝑥5, 𝑋(2,1) = 𝑥6, 𝑋(2,2) = 𝑥2,
𝑋(3,2) = 𝑥9, 𝑋(1,3) = 𝑥7, 𝑋(3,2) = 𝑥4, 𝑋(3,3) = 𝑥8
と表すことができ,単純にコード化すると135629748となる.しかし,この表現のままで
は通常の交叉を行うと致死遺伝子(条件を満たしていない解の GTYPE)の発生を抑えるこ
とができない.そこで,順序表現によるコーディングを行う.
ここで,図 3 の配置の GTYPE は次のように構成する(表 1).
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表 1. 配置𝑥1, 𝑥3, 𝑥5, 𝑥6, 𝑥2, 𝑥9, 𝑥7, 𝑥4, 𝑥8の遺伝子コード
ノード 相対的順序 遺伝子コード
𝑥1 𝑥1 𝑥2 𝑥3 𝑥4 𝑥5 𝑥6 𝑥7 𝑥8 𝑥9
1 2 3 4 5 6 7 8 9
1
𝑥3 𝑥2 𝑥3 𝑥4 𝑥5 𝑥6 𝑥7 𝑥8 𝑥9
1 2 3 4 5 6 7 8
2
𝑥5 𝑥2 𝑥4 𝑥5 𝑥6 𝑥7 𝑥8 𝑥9
1 2 3 4 5 6 7
3
𝑥6 𝑥2 𝑥4 𝑥6 𝑥7 𝑥8 𝑥9
1 2 3 4 5 6
3
𝑥2 𝑥2 𝑥4 𝑥7 𝑥8 𝑥9
1 2 3 4 5
1
𝑥9 𝑥4 𝑥7 𝑥8 𝑥9
1 2 3 4
4
𝑥7 𝑥4 𝑥7 𝑥8
1 2 3
2
𝑥4 𝑥4 𝑥8
1 2
1
𝑥8 𝑥8
1
1
この表より,配置𝑥1, 𝑥3, 𝑥5, 𝑥6, 𝑥2, 𝑥9, 𝑥7, 𝑥4, 𝑥8の遺伝子コードは 123314211 と求められる.
3.2 遺伝的アルゴリズム
ノードの配置について,遺伝的アルゴリズムを以下の条件のもと実行する.
・第 0 世代は乱数により定める.
・第 250 世代まで計算する.
・交叉オペレータは 1 点交叉を採用し,交叉位置は乱数により決定する.
・親の決定はルーレット方式により決定する.
・交叉率は 1.00,突然変異率は 0.033 とする.
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また,第𝑚層の適合度関数を以下のように設定する.
𝑓𝑖𝑡𝑛𝑒𝑠𝑠(𝐺𝑇𝑌𝑃𝐸) =
∑ ∑ ∑ ∑ 𝜇(𝑋(𝑘 − 𝑚 + 𝑎, 𝑘 − 𝑚 + 𝑏), 𝑋(𝑘 − 𝑚 + 𝑎 + 𝑥, 𝑘 − 𝑚 + 𝑏 + 𝑦)) ⋅ (|𝑥 + 𝑦| − 𝑥𝑦)
1
𝑥=−1
1
𝑦=−1
2𝑚
𝑏=0
2𝑚
𝑎=0
ただし,
𝑘 = 1 − [3 − √𝑁
2] , #(𝑆) = 𝑁
であり,𝑋(𝑠, 𝑡)は座標(𝑠, 𝑡)に配置されるノードを表す.
4. ソシオメトリー分析への応用例
小学生 13 人のクラスを対象に,図 4 のアンケートを行った結果を説明する.アンケー
ト結果から応答行列𝐾が得られ,応答行列𝐾から評定行列𝑅が得られる.
図 4. アンケート
評定行列𝑅より,図 5 の選好行列𝑇ができる.また,この選考行列𝑇から図 6 の友好行列
𝑉が得られ,図7の分割樹形図ができる.
つぎのそれぞれのばあいに,おなじグループになりたい人を
じゅんにかきなさい.
(あ) おひる休みにいっしょにあそびたい人
(い) えんそくのときに,いっしょにおべんとうを食べたい人
(う) グループ学習をいっしょにやりたい人
1 2 3 4 5 …
(あ)
(い)
(う)
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図 5. 選好行列𝑇
図 6. 友好行列 V
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 S.V.
1 1 0.33 0.22 0.33 1 0.16
2 1 0.67 0.22 0.89 0.11 0.11 1.00
3 0.56 1 0.11 0.11 0.56 0.75
4 0.22 0.33 1 0.56 0.78 0.88
5 0.22 0.89 1 0.11 0.44 0.11 0.22 0.20
6 0.33 0.22 0.33 1 0.11 0.35
7 0.33 0.56 0.22 1 0.33 0.39
8 0.33 0.22 0.44 0.33 0.33 1 0.33 0.65
9 0.22 0.11 0.11 0.11 0.22 1 0.33 0.33 0.36
10 1 0.33 1 0.67 0.63
11 0.33 0.33 0.22 1 0.48
12 0.11 0.22 0.33 1 0.00
13 0.67 0.22 0.11 1 0.19
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
1 1 0.27
2 1 0.61 0.27 0.48 0.15 0.15
3 0.61 1 0.15 0.49
4 0.27 1 0.71 0.47
5 1 0.17 0.17
6 0.27 0.15 0.17 1
7 0.48 1 0.17
8 0.15 0.49 0.17 1 0.27
9 0.17 0.27 1 0.17
10 0.71 1 0.33
11 0.47 0.33 1
12 1
13 0.15 0.17 1
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図 7. 分割樹形図
さらにこの分割樹形図をクラスターレベル分析を行うと,図 8 のファジィ決定の図が得
られ,最適カットレベルが𝑧0 = 0.47であることがわかる.このレベルではクラスター
{4, 10, 11}, {2, 3, 7, 8}が存在する.
図 8. ファジィ決定
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また,図 5 の選好行列を,前述のファジィノードファジィグラフ描画システムを用いて
描画すると,図 9 が得られる.遺伝的アルゴリズムを用いる性質上,最適解は数多く求ま
るので,ここでは 10 回の試行中適合度の値が最も高く,かつ,前述のクラスター分析の
結果もよく表している図を採用した.
図 9. ファジィノードファジィグラフ(適合度 14.74)
さらに,このファジィノードファジィグラフを T-ノルムを用いてグラフ解析し,𝜆の最適
値を求めると,𝜆0 ∈ [0.67, 0.78) であることがわかる(図 10).
図 10. 𝜆の最適値
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𝜆0 = 0.67でファジィノードファジィグラフをクリスプノードファジィグラフに変換する
と,図 11 のクリスプノードファジィグラフが得られる.
図 11. クリスプノードファジィグラフ
さらに,このクリスプノードファジィグラフを近似 4 値分析すると,図 12 の近似ファ
ジィグラフが得られる(𝑝 = 0.17).
図 12. 近似ファジィグラフ (𝑝 = 0.17)
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この近似ファジィグラフと前述のクラスター分析との分析結果を統合して,図 13 の近
似ソシオグラムが得られる.ここで,②の児童はシャプレイ値が最も高いので,2 重太線
でマークしてある.
図 13. 近似ソシオグラム
この近似ソシオグラムから,②はクラスのリーダー的存在であり,小グループ{④,⑩,
⑪},{②,③,⑦,⑧}があることがわかる.この特徴は,担任の先生の見解とも一致す
る.
なお,このソシオグラム分析法は,心理学的な観点から,社会一般の集団構造の解析等に
も適用することができる.
5. おわりに
ファジィノードファジィグラフの描画システムを提案し,その適用事例としてソシオメ
トリー分析への応用を紹介した.今回は,遺伝的アルゴリズムの交叉オペレータに 1 点交
叉を採用したが,よりよい解の探索には交叉についてさらに検討が必要であろう.交叉オ
ペレータや,その他の手法についての研究が今後の課題である.
第 2章 参考文献
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