公共施設・⾃治体窓⼝における キャッシュレス決済 …...2...

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1 公共施設・⾃治体窓⼝における キャッシュレス決済導⼊⼿順書 (初版) ⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会 2020 年 4 ⽉

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公共施設・⾃治体窓⼝における キャッシュレス決済導⼊⼿順書

(初版)

⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会

2020 年 4 ⽉

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【履歴】 2020 年 4 ⽉ 27 ⽇ 新規制定(初版)

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⽬次

1 はじめに .......................................................................................................................................... 1

1.1 導⼊の重要性 ............................................................................................................................ 1

1.2 本資料の主旨 ............................................................................................................................ 2

1.3 本資料のスコープ .................................................................................................................... 2

2 ⾃治体にとっての導⼊⽬的・メリット .......................................................................................... 3

2.1 住⺠サービス向上 .................................................................................................................... 3

2.2 事務効率化 ............................................................................................................................... 5

3 導⼊⼿順 .......................................................................................................................................... 6

3.1 導⼊⼿順概要 ............................................................................................................................ 6

3.2 導⼊⼿順詳細 ............................................................................................................................ 6

3.2.1 導⼊対象施設・窓⼝および推進部⾨の決定 ..................................................................... 6

3.2.2 導⼊する決済⼿段の決定 .................................................................................................. 7

3.2.3 関連規定・会計処理の検討 ............................................................................................... 8

3.2.4 決済事業者および設備等の決定 ..................................................................................... 11

3.2.5 導⼊・予算要求 ............................................................................................................... 13

4 残存課題と今後の展望 .................................................................................................................. 14

4.1 残存課題 ................................................................................................................................. 14

4.2 今後の展望 ............................................................................................................................. 14

5 参考資料 ........................................................................................................................................ 15

5.1 ⾃治体アンケート結果 ........................................................................................................... 15

5.2 関連法令資料 .......................................................................................................................... 18

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1 はじめに

1.1 導⼊の重要性 キャッシュレス化は現在国を挙げて推進している施策であり、「成⻑戦略フォローアッ

プ」(令和元年 6 ⽉ 21 ⽇閣議決定)においては、2025 年までにキャッシュレス決済⽐率を倍増し、4 割程度とすることを⽬指すこととしている。また、当協議会作成の「キャッシュレス・ロードマップ 2019」においては「⽇本全国、どこでも誰でもキャッシュレス」をキャッシュレス社会の将来像として掲げている。

図表 1 「キャッシュレス・ロードマップ 2019」より抜粋

また昨今の社会状況を⾒ると、従来のクレジットカード・電⼦マネーに加えコード決済のような新たな決済⼿段の台頭や、経産省によるキャッシュレス・ポイント還元事業等の施策の効果もあり、キャッシュレス決済の利⽤者・加盟店がいずれも急速に増加している。

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上記の政府・社会の状況を踏まえれば、公共性の⾼い公共施設・⾃治体窓⼝におけるキャッシュレス決済の導⼊は⾃然な流れであり、また利⽤者の利便性向上の観点からも重要な施策であると⾔える。

1.2 本資料の主旨

上記のとおり導⼊の重要度は⾼い⼀⽅で、現状では公共施設・⾃治体窓⼝等は⽀払⼿段が現⾦のみのケースが⼤多数である。そこで当協議会において調査した結果、導⼊にあたってはキャッシュレス決済導⼊特有の要検討事項や、事務・規定等⾃治体固有の課題があることが分かった。

本資料では、上記調査や先⾏事例のヒアリング結果等を踏まえ、公共施設・⾃治体窓⼝等におけるキャッシュレス決済導⼊の⼿順及び検討事項を整理した。導⼊検討を担当する部局において本資料を共有のうえ活⽤いただきたい。

1.3 本資料のスコープ 本資料で取り扱う対象は、⾃治体の歳⼊のうち、公共施設・⾃治体窓⼝における⼿数

料・利⽤料の⽀払へのキャッシュレス決済導⼊とする。従って、税公⾦の納付書⽀払におけるクレジットカード・スマホアプリによるキャッシュレス⽀払導⼊等は本資料の対象外となる。

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2 ⾃治体にとっての導⼊⽬的・メリット ⾃治体にとっての導⼊⽬的・メリットは、主に住⺠サービス向上の観点と事務効率化の

観点から語られる。 なお、キャッシュレスを積極的に推進している⾃治体においては、⾸⻑および⾃治体の

⽅針として導⼊⽬的を明確に発信した上で具体的な導⼊に進んでいることが多い。これから導⼊を進める⾃治体においても、導⼊⽬的を明確化し⾃治体としての⽅針を整理するにあたり、本章内容を活⽤いただきたい。

2.1 住⺠サービス向上 まず、昨今のアンケート調査においては、現⾦よりもキャッシュレスで払いたいとの意

向を持つ住⺠が決して少数派ではないことが伺える。 例えば当協議会において今年度実施した「消費者・事業者インサイト調査」においてはキャッシュレス利⽤の意向について下記のような回答結果が出ており、55%は現⾦よりもキャッシュレスで⽀払いたい意向を持つと⾔える。

図表 2 「消費者・事業者インサイト調査」より(2019 年 9 ⽉, n=5000) 回答選択肢 回答割合

どんな⾦額・場所等でも、キャッシュレスで払いたい 20% どちらかというとキャッシュレスで払いたい 35% どちらともいえない(両⽅を使う) 23% どちらかというと現⾦で払いたい 19% どんな⾦額・場所等でも現⾦で払いたい 3%

図表 3 神奈川県「キャッシュレスに関するアンケート結果」より https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gz8/cashless/ekanacashless.html

加えてそのようにキャッシュレスで⽀払いたい意向を持つ住⺠の中には、公共施設にお

いてキャッシュレスで⽀払えず不便と感じている住⺠も⼀定数いると考えられる。

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図表 4 消費者庁実施のアンケート調査より

図表 5 神奈川県「キャッシュレスに関するアンケート結果」より https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gz8/cashless/ekanacashless.html

(以下略)

設問:今後、あなたがキャッシュレス決済を利⽤する上で事業者等に期待することや、こうした点が改善されればより使うようになるのではないかという点は何ですか。当てはまるものをいくつでも選んでください。

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以上を踏まえると、公共施設・⾃治体窓⼝におけるキャッシュレス決済の導⼊はキャッシュレスで⽀払いたい⼀定の層のニーズに応えることに繋がり、住⺠サービス向上に確実に貢献できる施策と⾔える。

2.2 事務効率化 次に事務効率化の観点では、都度の⽀払いの効率化と釣銭準備・締め作業の効率化が挙

げられる。 都度の⽀払いは、受付担当者による受領⾦額の確認・釣銭の⽤意・釣銭の⾦額確認とい

った⼿間が省けることから、⽀払の迅速化・⾦額相違のリスクの低減・担当者の⼼理的負荷の軽減が期待できる。特に利⽤者の多い施設等ではより効果が⼤きくなる。 釣銭準備・締め作業については、キャッシュレス決済の⽐率が⼤きくなるほど釣銭準備

の⼿間や締め作業における現⾦集計の⼿間が軽減される点がメリットとして挙げられる。 当協議会において今年度実施した「消費者・事業者インサイト調査」においても、⺠間

店舗を対象とした調査ではあるものの、下記のように現⾦の取扱による負荷が課題として挙げられている。

図表 6 「消費者・事業者インサイト調査」より(2019 年 9 ⽉)

なお、⾃治体へのヒアリングでは現⾦の締め作業に加え、キャッシュレス決済の締め作業が追加で必要となる点をデメリットとして指摘する声もあった。しかし、導⼊後に現⾦取扱いが減少すれば、本章で挙げた事務効率化のメリットが次第に上回る可能性も⼗分にある。

また当協議会内で実施したアンケートにおいてはキャッシュレス導⼊した⾃治体のうち、⽬的としては住⺠サービス向上が最も多く、そのうち 8割は⼀定の導⼊成果ありと回答している。(p16参照) 以上のように、住⺠サービス向上の観点および事務効率化の観点を総合的に考慮し、各

⾃治体においては前向きな検討を推奨したい。

出所:事業者インタビュー結果(2019年度実施)よりNRI作成

キャッシュレス移⾏で軽減

主なリスク

売上⾦の⼊⾦が不便

細かいミスが積み重なる

「(地⽅の場合)現⾦で⼗数万円もある前⽇売上を従業員に持たせて、翌⽇の朝、最寄りのATM(⾞で20分)に⼊⾦させている。お⾦を扱うことに責任を感じてくれる⼈ほど精神的な負担も⼤きく、⼼底申し訳ないと思っている。」

「現⾦を従業員に横領された経験がある。たった1万円のために、泣く泣く貴重な従業員を⼿放した。“あの⼦は⼤丈夫だろう”と思っていた⼈だったが、ついつい魔が差してしまったようだ。」

「お客さんにお釣りを渡すのは、⼈の⼿でやるから、間違うことがある。経営者として間違いを発⾒したら、指摘しないといけない。それが積み重なると、いつの間にか現場の雰囲気が悪くなってしまう。雰囲気が悪いと、お客さんの⼼象が悪くなる。」

現⾦が横領される

事象

• 作業効率の低下• サービス⽔準の低下• 顧客体験の悪化

• ⾦銭的な損害• 解雇に伴う⼈材の損失

• 労務環境悪化(残業、休⽇返上)

• 従業員の精神状態の悪化

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3 導⼊⼿順

3.1 導⼊⼿順概要 導⼊⼿順は、⼤きく分けて下記の流れが想定される。各項⽬の詳細は後述する。 ① 導⼊対象施設・窓⼝および推進部⾨の決定 ② 導⼊する決済⼿段の決定 ③ 関連規定・会計処理の検討 ④ 決済事業者および設備等の決定 ⑤ 導⼊・予算要求

3.2 導⼊⼿順詳細

3.2.1 導⼊対象施設・窓⼝および推進部⾨の決定 決済⼿段を導⼊すると、通常は売上⾦額に⼀定の料率を掛けた決済⼿数料を決済事業者

に⽀払うこととなる。基本的な考え⽅として、各施設・窓⼝単位で導⼊するよりは⾃治体単位で複数箇所にまとめて導⼊する⽅が、決済事業者にとってコストメリットが⼤きくなり⼿数料率の軽減にも繋がりやすい。

しかし下図のように施設・窓⼝により担当部局が異なる場合や、指定管理者が運営主体である施設・窓⼝の場合は、同⼀⾃治体内であっても意思決定の主体が多岐に渡り、まとめて導⼊することが困難なケースが多い。また指定管理者にキャッシュレス決済導⼊を打診する際は、発⽣する決済⼿数料分を⾃治体が負担するために予算の追加計上が必要となる場合もある。

図表 7 (参考)⾃治体組織及び導⼊実現⽅法のイメージ

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上記のような事情から、現状の事例ではまず⾃治体内の⼀部の施設・窓⼝で試験的にキャッシュレス決済を導⼊していることが多い。

図表 8 ⾃治体における試験的なキャッシュレス決済の導⼊事例 ⾃治体 事例 東京都 現⾦決済のみの施設が残る中で、利⽤者の多い施設から優先的に導⼊す

るべく、「年間 10 万件以上の利⽤がある都⽴施設」との基準で導⼊対象を選定し、計 5 施設で導⼊を推進。

神奈川県 決済事業者からある程度まとまった窓⼝・施設で導⼊することによるボリュームディスカウントの提案もあったが、早期の導⼊を優先し導⼊に同意した2か所で先⾏導⼊を実施。 先⾏導⼊によりノウハウを蓄積し、将来的には他の窓⼝・施設への展開も検討。

豊橋市 社会潮流等を鑑み、部局横断的な市職員グループにてキャッシュレスに関する政策研究を⾏い、その結果を基に当時事務局を担っていた企画部未来創⽣戦略室が実証実験に要する経費を予算化し実施した。今後の本格導⼊を視野に⼊れ、実証実験は消費者の動向調査等のデータ収集を主⽬的に、①多くの来場者が⾒込める動植物公園での夏期夜間開園(令和元年8⽉〜9⽉)の当⽇券販売、②市刊⾏物等の複数種類の商品を扱う窓⼝での物販(令和元年 12⽉〜令和2年1⽉)で実施した。

また導⼊対象施設・窓⼝が複数ある場合、検討を確実に進めるために推進部⾨を明確に決定することも重要である。例えば会計部⾨が推進部⾨となることや、組織横断的な企画部⾨があればその部⾨が推進部⾨となることが考えられる。

図表 9 ⾃治体におけるキャッシュレス推進部⾨の設定事例 ⾃治体 事例 東京都 「しごと改⾰」としてはんこレス・ペーパーレス・キャッシュレスの「3

つのレス」の取組を都庁全体で実施する中で、キャッシュレスは会計管理局と総務局が主管部局として推進。

神奈川県 県庁が「キャッシュレス都市 KANAGAWA 宣⾔」を発出し、その⼀環として県庁のキャッシュレス化も推進。上記宣⾔を踏まえ、政策局がキャッシュレス推進に関する全体統括をしており、そのうち県庁のキャッシュレス化は総務局が推進している。

3.2.2 導⼊する決済⼿段の決定 導⼊する決済⼿段は⼤きく分けてクレジットカード、電⼦マネー、コード決済が挙げら

れる。以下に概要を⽰す。

図表 10 代表的なキャッシュレス決済⼿段の概要 分類 概要

クレジットカード Visa・MasterCard、JCB、AMEX 等のブランドロゴが付与されたカードを決済端末に通すことで決済する決済⼿段。 当決済を導⼊した場合、同様のブランドロゴの付与されたデビットカード・プリペイドカードでも決済可能となる。

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分類 概要 電⼦マネー 決済端末にカードをかざすことで、⽐較的短時間で決済可能な決済⼿

段。 前払い式ではSuica・PASMO等の交通系電⼦マネーやWAON・nanaco・楽天 Edy、後払い式では iD、QUICPay等が該当。

コード決済 ユーザーのスマートフォンと決済端末との間で、バーコードもしくはQRコードの読取を⾏うことで決済する決済⼿段。 決済事業者によっては、決済端末不要で印刷した QR コードを設置することで導⼊可能なものもある。

導⼊する決済⼿段の⽅針としては「極⼒多くの種類の決済⼿段を導⼊する」「⾃治体内で

利⽤者の多い決済⼿段を選択する」「導⼊先の決済単価等に合わせ、適した決済⼿段を選択する」等が考えられる。下記検討事例を参考に、各⾃治体において実態に即した⽅針を検討することが望ましい。

なお、⾃治体によっては上記のような導⼊⽅針について外部専⾨家に相談する事例も⾒られた。

図表 11 ⾃治体における外部専⾨家への相談事例 ⾃治体 事例 東京都 恩賜上野動物園におけるコード決済導⼊実証実験の際は、利⽤者の多

いサービスであることを重視して選定。また中国観光客の利⽤を⾒据え、中国で広く利⽤されているコード決済サービスも採⽤。 導⼊にあたっては、決済事業者を選定するための委員会を⽴ち上げ、情報システムや決済サービスに詳しい学識経験者が委員として参画。

神奈川県 極⼒広い決済⼿段に対応する⽅針で、クレジットカード・電⼦マネー・QRコード決済を幅広く導⼊。

豊橋市 今後どの決済⼿段の導⼊が最適か判断するための材料となるよう、実証実験においては複数の決済⼿段(クレジットカード、交通系電⼦マネー、流通系電⼦マネー)を選定した。

3.2.3 関連規定・会計処理の検討 各⾃治体へのヒアリングの結果、キャッシュレス決済の下記 2 点の特徴により⾃治体へ

の導⼊において特有の課題が⽣じていることが分かった。本項ではそれぞれの特徴により⽣じる課題と対応⽅法を記載する。

特徴①:売上から決済⼿数料を差し引いた⾦額が決済事業者から加盟店に振り込まれる 特徴②:売上は決済当⽇の翌⽇以降に加盟店に振り込まれる 特徴①による課題と対応⽅法

決済⼿数料の⽀払においては特徴①の運⽤が⼀般的であり、歳⼊・歳出に置き換えると下記のような事象が発⽣する。

1. 歳⼊⽤の⼝座には実際の歳⼊⾦額全額ではなく、決済⼿数料分を差し引いた⾦額のみ⼊

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⾦される 2. 決済⼿数料は歳出⽤の⼝座から⽀払われない

これにより、通常の歳⼊・歳出の運⽤とは異なるフローとなる。 対応⽅法としては、特徴①の事象を地⽅⾃治法施⾏令の第百六四条に規定される繰替払

とみなし、同条5項に記載のある「普通地⽅公共団体の規定に定めるもの」に決済⼿数料を含めるべく各⾃治体の規定を変更して対応している事例が⾒られる。当該事例の場合、会計処理上はキャッシュレス決済の売上分を歳⼊、決済⼿数料分を歳出としてそれぞれ計上のうえ、歳出⽤の⼝座から歳⼊⽤の⼝座に決済⼿数料分を⼊⾦する等の対応をしている。こちらは多くの⾃治体で実現可能な対応と考えられる。

また⾃治体によっては現⾦による繰替払ではなく、会計規則に基づき決済⼿数料相当額を歳出予算から歳⼊予算に振替える⼿続により整理している事例もある。

なお勘定システムについては、上記対応の場合通常の繰替払と同様の処理となるため特段改修は不要と想定されるが、実施にあたっては各⾃治体にて確認が必要である。

図表 12 ⾃治体における会計規則への対応事例 ⾃治体 事例 東京都 会計規則に基づき決済⼿数料相当額を歳出予算から歳⼊予算に振り替

える⼿続きにより整理。 東京都会計事務規則第 88 条 同⼀の局⼜は所に属する次に掲げる事項は、振替収⽀命令書によって振替整理しなければならない。ただし、振替収⽀命令書の仕様を不適当と認める場合においては、この限りでない。 ⼀ 各会計間⼜は同⼀会計内の収⼊⽀出 以下 略

【地⽅⾃治法施⾏令】 (繰替払)

第百六⼗四条 次の各号に掲げる経費の⽀払については、会計管理者⼜は指定⾦融機関、指定代理⾦融機関、収

納代理⾦融機関若しくは収納事務取扱⾦融機関をしてその収納に係る当該各号に掲げる現⾦を繰り替えて使⽤

させることができる。

⼀ 地⽅税の報奨⾦ 当該地⽅税の収⼊⾦

⼆ 競輪、競⾺等の開催地において⽀払う報償⾦、勝者、勝⾺等の的中投票券の払戻⾦及び投票券の買戻⾦ 当

該競輪、競⾺等の投票券の発売代⾦

三 証紙取扱⼿数料 当該証紙の売りさばき代⾦

四 歳⼊の徴収⼜は収納の委託⼿数料 当該委託により徴収⼜は収納した収⼊⾦

五 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上繰り替えて使⽤しなければ事務の取扱いに⽀障を及ぼすような

経費で普通地⽅公共団体の規則で定めるもの 当該普通地⽅公共団体の規則で定める収⼊⾦

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⾃治体 事例 神奈川県 財務規則の変更により、決済⼿数料全般を繰替払の対象として追加。

【神奈川県 財務規則】 (繰替払) 第 78 条 政令第 164 条第1号から第4号までに掲げる経費のほか次の各号に掲げる経費の⽀払については、当該各号に定める現⾦を繰り替えて使⽤することができる。 (1) 県税の還付加算⾦、県⺠税利⼦割額に係る還付⾦並びに法⼈の県⺠税及び事業税並びにアメリカ合衆国軍隊の構成員等の所有する⾃動⾞に対する⾃動⾞税の還付⾦ 税に伴う税外収⼊⾦ (2) 市場出荷の場合に⽀払う⼿数料 当該出荷による収⼊⾦ (3) ⼊場券販売⼿数料 当該販売による収⼊⾦ (4) 指定代理納付者に納付させる収⼊⾦の取扱いに係る⼿数料 当該収⼊⾦

豊橋市 会計規則の変更により、電⼦マネーの決済⼿数料を繰替払の対象として追加している。ただし、多様化している決済⼿段に柔軟に対応できるよう規則の改正を検討している。 【豊橋市 予算決算会計規則】 (繰替払) 第 75条 政令第 164 条第5号の規定により、前払式電⼦マネー(⾦銭的価値の情報を前払いによる充当によりICカード等へ電⼦的に記録したもののうち市⻑が認めるものをいう。)の利⽤に係る役務費の⽀払いについては、繰替払をすることができる。

補⾜として、決済事業者側の対応により売上の振込と決済⼿数料の請求を個別に実施できる場合には上記の対応は不要と想定される。また、指定管理者が運営する公共施設の場合は、売上・決済⼿数料がそれぞれ指定管理者の収⼊・⽀出として計上されるため、⾃治体の会計処理においては対応不要と想定される。 特徴②による課題と対応⽅法

キャッシュレス決済の売上は、決済事業者側で集計してから加盟店に振り込まれる。振込のタイミングは⽉ 2回の定⽇・加盟店による振込申請の翌⽇等パターンが複数あるが、いずれにおいても決済⽇の翌⽇以降に振り込まれることとなる。

従って施設・窓⼝においては、締め処理の際キャッシュレス決済による売上を集計し、現⾦の売上と合算して計上する必要がある。またキャッシュレス決済による売上が後⽇⼊⾦された際にも、各⽇に集計したキャッシュレス決済による売上と実際の⼊⾦額を突合する必要がある。これらの点については、POSを中⼼にシステム・業務変更を実施した事例が⾒られる。

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図表 13 ⾃治体におけるシステム・業務変更を実施した事例 ⾃治体 事例 東京都 ・クレジットカード導⼊時、導⼊先の POSを中⼼にシステム・業務変

更実施。売上⾦の振込予定額の把握や振込後の突合のために、クレジット売上を⽇次計算して別途管理。 ・POSで対応しているため、勘定システムは特に改修無し。

神奈川県 決済事業者側、県側とも、システム改修は実施なし。業務内容の変更については、以下を実施。 ・⽇次の締め作業の際、現⾦による収納とは別に、キャッシュレス決済

を集計するため、決済事業者のウェブサイトから同⽇の決済データを取得、確認⽤のフォーマットに落とし込み、責任者による決裁を実施。

・決済事業者への⼿数料の⽀払いを、繰替払(⼊⾦額から⼿数料を事前に差し引き、残額のみ⼊⾦する⽅法)を採⽤していることから、決済事業者による⼊⾦⽇には、事業者のウェブサイトから⼊⾦データを取得し、収⼊科⽬ごとの⼊⾦額及び⼿数料額を確認、経理担当宛て報告書などを作成。

・経理担当では、前述の報告書の内容に基づき、本来の収⼊額と繰替払により減じられた⼊⾦額との差額を、当該事業に係る歳出予算から歳⼊予算に繰⼊れを実施。

豊橋市 実証実験時は、キャッシュレス決済による売上と⼊⾦額の突合を⾏ったうえで、売上の歳⼊調定および決済⼿数料の繰替払を⾏った(頻度:⽉ 1 回)。

3.2.4 決済事業者および設備等の決定 決済事業者の選定にあたっては、3.2.1〜3.2.3までの検討内容や予算等を踏まえ選定基準を作成のうえ公募することとなる。候補となる決済事業者は⼤まかに下表のように分類される。

なお、⾦融機関の関連会社にクレジットカード会社がある場合もあり、指定⾦融機関に相談することで当該関連会社の知⾒を活⽤して導⼊を進められる可能性がある。本資料作成にあたって実施したヒアリングにおいては事例が⾒られなかったが、指定⾦融機関への相談も進め⽅の選択肢として考えられる。

図表 14 候補となる決済事業者の分類 分類 概要 想定ケース

クレジットカード会社 主にクレジットカードを取り扱う事業者。 取り扱うブランドは会社により異なる。 電⼦マネーも併せて取り扱うことが多い。

Ø クレジットカードの導⼊を検討する場合

Ø 上記と併せて電⼦マネーの導⼊も検討する場合

※取扱カードブランド・電⼦マネーは各事業者に要確認

電⼦マネー事業者 主に⾃社の電⼦マネーを取り扱う事業者。 Ø 特定の電⼦マネーの導⼊を検討する場合

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分類 概要 想定ケース コード決済事業者 主に⾃社のコード決済サービスを取り扱う事

業者。インバウンド対応のニーズに合わせ中国のコード決済等も併せて取り扱う事業者もある。

Ø 特定のコード決済サービスの導⼊を検討する場合

Ø 中国⼈観光客の施設利⽤等を⾒込み、中国のコード決済等の導⼊も検討する場合

決済代⾏会社 (PSP/ゲートウェイ事業者)

上記のような複数の事業者との契約・システム接続等をとりまとめることで、複数の事業者で取り扱う決済⼿段をまとめて導⼊するサービスを提供する事業者。 ※納付書の⽀払においても PSP を導⼊する場合があるが、⾮対⾯決済のため本資料で扱う対⾯決済とは別事業者であることが多い。

Ø #1~#3 の単⼀事業者だけではカバーできない、多くの種類の決済⼿段の導⼊を検討する場合

また、設備については下図のように多様な決済端末が選択肢として存在する。端末の種類は導⼊する決済⼿段・契約する決済事業者等によって様々である。多様な端末の中で何が適切かは、設置場所のスペース・回線環境・予算等の要件次第となるため、各事業者に要件を提⽰のうえ相談することが望ましい。

図表 15 代表的な決済端末の種類

上記決済事業者・設備の検討について、参考として先⾏⾃治体の検討事例を掲載する。

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図表 16 ⾃治体における決済事業者・設備の検討事例 ⾃治体 事例 東京都 恩賜上野動物園へのコード決済導⼊実証実験において、国内・中国の主

要なコード決済を複数導⼊するために公募を実施、提案内容を審査の上、決済代⾏会社を採⽤。

神奈川県 ・多様な決済⼿段を導⼊するために、クレジットカード・電⼦マネー・QRコード決済の全てに対応する決済端末を採⽤。

・決済事業者への加盟、同者からの⼊⾦を⼀元的に⾏うことができるよう、複数の決済事業者と包括契約を締結する事業者を代理納付者に指定。

豊橋市 動植物公園での実証実験では、データ収集を主⽬的としていたため、複数のキャッシュレス決済に対応することができ、かつ、屋外のキャッシュレス専⽤の特設チケット販売ブースで使⽤可能な、配線不要のmPOS 端末を利⽤できる事業者を選定した。また、市刊⾏物等の販売窓⼝は、屋内であるものの、利⽤できる有線のインターネット回線がない、既設のレジも古く据置型の決済端末との連携も困難、など複数の理由により動植物公園と同じものを⽤いた。

3.2.5 導⼊・予算要求 事業者選定後の実際の導⼊は、選定した決済事業者と役割分担やスケジュール等を個別協

議して進める。また、導⼊により発⽣する各種費⽤について予算要求も必要となる。 予算要求するべき項⽬の例としては決済⼿数料の他に端末費⽤(決済端末・レシートプリ

ンター等)やレシート⽤ロール紙が挙げられるが、詳細は各事業者と協議のうえ受領した⾒積に基づき各⾃治体にて整理が必要となる。

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4 残存課題と今後の展望

4.1 残存課題 ここまで公共施設・⾃治体窓⼝におけるキャッシュレス決済導⼊についてまとめてきた中で、下記の点が課題として残存している。

① ⾃治体内の公共施設・⾃治体窓⼝全体にキャッシュレス決済を導⼊する組織横断的な取組事例の確⽴

② キャッシュレス決済の場合の領収書発⾏について ③ ⾃治体の意思決定のみではキャッシュレス決済を導⼊できない施設・窓⼝ ①については 3.2.1 においても⾔及しているが、トップダウンでキャッシュレスの⽅針

を打ち出す・⾃治体内の包括的な企画部局が担当部局に働きかける等しても全体への導⼊が進んでいる⾃治体の事例が現状では⾒られない。⾃治体へのヒアリングにおいては、反対意⾒が根強い部局が多く、⼀部部局のみを対象に導⼊を進めざるを得ないとの声が散⾒される。

本資料を元にキャッシュレス決済導⼊を進める⾃治体においては、「2 ⾃治体にとっての導⼊⽬的・メリット」の記載を参考に各部局との調整・説得を進め、可能な限り多くの施設・窓⼝への導⼊を実現いただきたい。 ②は、キャッシュレス決済の場合その場で直接納⼊⾦を受領しないことから、現⾦領収書をその場で発⾏できない点が課題となっている。こちらについては代替的な発⾏⽅法を検討している⾃治体もあり、有効な事例が今後確認でき次第協議会から共有したい。 ③は、例えばパスポート発⾏時に⾃治体の⼿数料と国の⼿数料を所定の取扱窓⼝で⽀払

うケースが挙げられる。このような事例の調査およびキャッシュレス決済の導⼊⽅法は、今後の検討課題としたい。

4.2 今後の展望 現在キャッシュレス決済の導⼊を推進している⾃治体においては、導⼊済の施設・窓⼝

で成果が上がっているとの報告もあり、今後は全庁への展開が期待される。またこれから導⼊を検討する他の⾃治体においては、本資料を活⽤し導⼊についての積極的な検討を期待したい。

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5 参考資料

5.1 ⾃治体アンケート結果 本資料の検討にあたり実施した⾃治体へのアンケート結果を掲載する。

【キャッシュレス決済の導⼊状況】

【キャッシュレス決済の導⼊場所】

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【導⼊⽬的と導⼊効果】

【導⼊時の課題】

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【導⼊後の課題等】

【キャッシュレス決済未導⼊理由】

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5.2 関連法令資料 本資料の検討にあたり参照した法令について、条⽂・整理資料を掲載する。

【指定管理者制度について】

http://www.soumu.go.jp/main_content/000451041.pdf

【納付時期の遡及について】

http://www.soumu.go.jp/main_content/000287122.pdf

【繰替払について】

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