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避難指示区域における航空機モニタリングの測定結果について
平成 25 年 5 月 13 日 原子力規制庁監視情報課
内閣府原子力被災者生活支援チーム 1.目的・内容
東京電力福島第一原子力発電所から 80 km 圏内について、梅雨や台風等の自然の
影響による放射性物質の状況等(空間線量率及び放射性セシウムの沈着状況)の変化
を確認するため、平成 24 年 6 月及び同年 11 月に引き続き、平成 25 年 3 月に警戒区
域及び避難指示区域について航空機モニタリングを実施し、地表面から 1m高さの空
間線量率及び地表面への放射性セシウムの沈着状況を評価し、これまで実施した航空
機モニタリングの結果と比較した。 (なお、避難指示区域に設定されていた警戒区域は、平成25年5月28日に全て解
除されることとなっている。(平成25年5月7日原子力災害対策本部決定)) 2.方法 ○ 調査対象:避難指示区域周辺における地表面から 1m高さの空間線量率、地表面
への放射性セシウムの沈着量 ○ 測定実施日:平成 25 年 3 月 4 日~3 月 11 日(のべ 13 フライト) ○ 航空機:ヘリコプター(BELL412;中日本航空(株) )1 機 ○ 調査委託先:(公財)日本分析センター 3.結果と考察 ○ 別紙1に航空機モニタリングの測定結果を基に、避難指示区域における地表面か
ら 1m高さの空間線量率の分布状況を示した「空間線量率マップ」を示す。また、
同区域における土壌表層中の放射性セシウムの沈着状況を示した「土壌濃度マッ
プ」は別紙 2~4 のとおりである。(マップの作成については参考参照) ○ 別紙 1~4 のマップ作成にあたっては、それぞれの測定値を、調査の最終日であ
る平成 25 年 3 月 11 日時点に減衰補正して統一した。なお、補正にあたっては、
風雨等の自然環境による放射性物質の移行の影響は考慮していない。 ○ 今回のモニタリングを実施した一部の地域では積雪等が確認された。これまでの
モニタリングにおいても、地上からのガンマ線が雪等によって遮蔽されることで
空間線量率が低く測定される傾向が確認されているため、別紙 1~4 のマップで
は、雪等の箇所を実線で囲われた白色の領域で表示した。 ○ 積雪箇所の特定にあたっては、これまで同様に、(独)宇宙航空研究開発機構(以
下、「JAXA」という。)が公開している地球環境モニター(JASMES※1)上の、
NASA の地球観測衛星 Terra 及び Aqua の観測結果※2を活用した。 ○ 放射線量等分布マップ拡大サイト(http://ramap.jaea.go.jp/map/)において別紙
1~4 のマップの詳細を公開する。また放射性物質の分布状況等調査データベース
(http://radb.jaea.go.jp/mapdb/)においてデータを公開する。
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○ 別紙 5 図 1 に第 4 次航空機モニタリング(平成 23 年 11 月 5 日時点)と、今回の
モニタリング結果を散布図で示した。ここでは、今回のモニタリングで実施した
避難指示区域の測定結果のみを抽出した。 (約 15,000 点)。 ○ 散布図のプロットを最小二乗法により近似した直線の傾きは、0.58、決定係数 R2
は 0.93 であり高い相関があった。この結果から、第 4 次モニタリング(平成 23年 11 月 5 日時点)から今回(平成 25 年 3 月 11 日)までの約 16 ヶ月で空間線量
率は約 4 割減少している傾向にあるといえる。 ○ 別紙 5 図 2 に、避難指示区域における第 4 次モニタリングで得られた空間線量率
を基準に、第 4 次以降の 3 回と今回の測定結果の相対値を示す。ここでは、一度
でも積雪のあった地点の測定結果は除外している。また、参考として放射性セシ
ウムの物理的半減期のみから計算した空間線量率を示す。 ○ 航空機モニタリングから評価した空間線量率の減少は、明らかに物理的半減期か
ら計算した空間線量率を下回る傾向にあった。この理由としては、降雨等の自然
環境の影響等が考えられる。 なお、物理的半減期から計算した空間線量率の減衰の割合に比べて各回の実際
の空間線量率の減少の割合にはばらつきが見られるが、これは、線量換算係数※3
の算出の不確かさ、測定高度の違いや測線のずれ(測定範囲の違い)等が考えら
れる。今後とも、空間線量率等の減少傾向を把握していくためには、測定手法を
継続的に改善し実施していくことが必要である。
※1 JAXA 地球環境モニター(JAXA Satellite Monitoring for Environmental Studies)の略称 ※2 NASA の地球観測衛星 Terra 及び Aqua に搭載された光学センサで観測された日本付近の積雪
データについて、JAXA が独自の処理アルゴリズムを用いて解析処理した結果。本データは、深
さが約 5 ㎝以上ある均一な積雪域であれば表示できるが、それ以下の積雪深さでは地表面の被覆
状況により積雪の有無を正確に判定することが困難な場合がある。 ※3 線量換算係数は、上空での測定結果(計数率)を空間線量率に換算するための係数。空間線量率
が一定で地形が平坦なテスト地点における上空での計数率と、地上で測定した空間線量率を比較
し算出する。本係数はヘリコプターの型式や検出器の設置位置で変化するため、毎回のモニタリ
ング毎に算出している。
避難指示区域における空間線量率マップ(地表面から1m高さの空間線量率)
(平成25年3月11日時点)
別紙1
※1:測定結果は、避難指示区域の測定の最終日の時点(平成25年3月11日時点)の値に減衰補正。※2:実線で囲われた白色の領域は積雪等のあった箇所。
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避難指示区域における土壌濃度マップ(地表面へのセシウム134、137の沈着量の合計)
(平成25年3月11日時点)
別紙2
※1:測定結果は、避難指示区域の測定の最終日の時点(平成25年3月11日時点)の値に減衰補正。※2:実線で囲われた白色の領域は積雪等のあった箇所。
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避難指示区域における土壌濃度マップ(地表面へのセシウム137の沈着量)
(平成25年3月11日時点)
別紙3
※1:測定結果は、避難指示区域の測定の最終日の時点(平成25年3月11日時点)の値に減衰補正。※2:実線で囲われた白色の領域は積雪等のあった箇所。
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避難指示区域における土壌濃度マップ(地表面へのセシウム134の沈着量)
(平成25年3月11日時点)
別紙4
※1:測定結果は、避難指示区域の測定の最終日の時点(平成25年3月11日時点)の値に減衰補正。※2:実線で囲われた白色の領域は積雪等のあった箇所。
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第4次航空機モニタリング以降の避難指示区域における空間線量率の減少について
○図1に第4次航空機モニタリングと今回のモニタリングの測定結果を示す。また、図2に第4次モニタリングと比較した過去と今回の空間線量率の
測定結果の相対値を示す。なお、データは避難指示区域のみを抽出し、積雪があった地点のデータを除外している。 ○第4次航空機モニタリングから今回測定までの約16ヶ月で空間線量率が約4割減少している傾向となった。
図1:第4次航空機モニタリングに対する今回のモニタリングの結果
(避難指示区域における同じ地点を比較したもの)
図2:第4次モニタリグの空間線量率を1とした航空機モニタリングにおける空間
線量率の変化傾向
別紙5
第 4 次を基準とした各回の航空機モニタリングにおける空間線量率 放射性セシウムの物理的半減期のみから計算した空間線量率
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(参考)
空間線量率マップ及び放射性セシウムの土壌濃度マップの作成について
○今回のモニタリングの飛行高度は対地高度で300m程度であり、その測定値は、航
空機下部の直径約600m程度(飛行高度により変化)の円内の測定値を平均化した
ものである。
○今回のモニタリングにおける航空機の軌跡幅は、約1.85kmである。
○空間線量率のマップは、測定対象地域内に設定したテストライン、ホバリング地点
周辺において、NaI式シンチレーション型サーベイメータを用いて地表面から1m高
さの空間線量率(μSv/h)とテストライン、ホバリング地点の上空で測定された計
数率(cps)の関係から線量換算係数を求めた上で、各測定地点の上空で測定した
計数率に線量換算係数を乗じて地表面から1m高さの空間線量率を算出した結果を
用いた。
○放射性セシウムの沈着量のマップは、測定するヘリコプターや測定器のタイプ毎に、
上空で測定しているガンマ線のエネルギースペクトルの特性を評価し、放射性セシ
ウム(セシウム134、137)の有意なエネルギースペクトルが検出されている地域と
検出されていない地域を選別した上で、放射性セシウムの沈着量のマップを作成し
た。詳細は以下のとおり(手法の詳細は「文部科学省による九州地方、沖縄県の航
空機モニタリングの測定結果について」(平成24年5月11日公表)別紙9を参照)。
①放射性セシウムの有意なエネルギースペクトルが検出されている地域
・放射性セシウムの沈着量を詳細に算出するため、西日本、北海道で適用した、上
空で測定されたガンマ線のエネルギースペクトル情報を基に天然核種の影響を
詳細に評価する手法を使用することとした。
・本手法を基に、各測定地点で得られた空間線量率の結果から各測定地点における
天然核種による空間線量率の寄与分を除いた上で、平成23年度科学技術戦略推進
費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」『放射性物質の分布状況等
に関する調査研究』(平成23年6~8月)において、(財)日本分析センターが実施
した、ゲルマニウム半導体検出器を用いたin-situ測定※の結果と空間線量率の
相関関係を適用し、放射性セシウムの沈着量を算出した。
※ゲルマニウム半導体検出器を用いたin-situ測定:可搬型ゲルマニウム半導
体検出器を環境中に設置し、地中に分布した放射線源からのガンマ線を検出す
ることにより、地中に蓄積している放射性核種の濃度を分析する手法。
②放射性セシウムの有意なエネルギースペクトルが検出されていない地域
・これまでと同様、当該地域を便宜上、マップ上の最低のレンジ(≦10kBq/m2)と
して、マップ上に表記した。