久宝寺高架橋拡幅部の設計と施工...ge1 p123 ge2 p119 cl gb6 gb5 gb4 gb3 gb2 gb1 gb7 gb8...
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[報告] 久宝寺高架橋拡幅部の設計と施工 -八尾パーキングエリアオフランプ橋(鋼上部工)工事-
山 本 将 士*
今 中 勇 樹**
1.はじめに 近畿自動車道の休憩施設は,近畿自動車道下り線の東
大阪パーキングエリアのみであり,近畿自動車道上り線
には,パーキングエリア(以下,PA)がなかった.その
ため,近畿自動車道の上り線にも休憩施設を備える目的
から八尾PAが計画された.
本工事は,近畿自動車道上り線から八尾PAへと繋がる
オフランプの高架橋を施工する工事であり,西日本高速
道路株式会社 関西支社 大阪高速道路事務所より受注し
た.本橋の架橋位置図を図-1に示す. オフランプの高架橋は,近畿自動車道拡幅区間となる
久宝寺高架橋Bライン拡幅部(P116橋脚-P123橋脚間)
図-1 架橋位置図
と分離区間となる八尾PAオフランプ橋に分割される.全
体平面図を図-2に示す.
本稿では,工事概要と各橋梁の特徴を述べた後,久宝
寺高架橋Bライン拡幅部における設計と施工について報
告する.
2.工事概要 本工事の工事概要を以下に示す.
発 注 者:西日本高速道路株式会社 関西支社 大阪高速道路事務所
工 事 名:近畿自動車道 八尾パーキングエリア オフランプ橋(鋼上部工)工事
工事箇所:(自)大阪府八尾市西久宝寺(STA.116+05.8)
(至)大阪府八尾市西久宝寺(STA.118+95.5) 工 期:(自)平成 22 年 12 月 21 日
(至)平成 26 年 5 月 20 日
活 荷 重:B 活荷重
設計震度:kh=0.30(レベル 1) 鋼 重:約 407t(3 橋合計)
架設工法:《久宝寺高架橋 B ライン拡幅部》 トラッククレーンベント工法 《八尾 PA オフランプ橋》 大型搬送車による一括架設工法+トラック
クレーンベント工法
Y-5-1
KT-1
Y-6-1
KT-1-1
信
M
M
灯EM
灯
信
電気メ-タ-
EM
EM
VPφ200
12.7712.78
12.57
12.55
7.52
7.637.63
7.67
7.75
7.79
7.83
7.67
7.53
7.58
7.62
7.627.64
7.57
7.68
7.797.69
7.59
7.76
7.68
7.73
7.66
7.83
7.79
7.80
7.81
7.85
7.87
7.81
7.84
7.90
7.84
7.70
7.73
7.63
7.60
7.57
7.51
7.52
7.49
7.49
7.48
7.49
7.53 7.47
7.677.50
7.48
7.557.567.747.73
7.78
7.74
7.78
7.83
M
7.83
7.63
7.81
7.60
7.79
7.74
7.51
7.57
7.69
6.92
7.68
7.49
7.68
7.48
7.68
7.48
7.517.68
7.537.55
7.98
7.99
7.79
8.05
8.05
7.79
8.06
8.04
7.96
7.966.52
7.77
7.77
信
7.63
7.68
7.67
7.59
7.687.71
7.95
8.338.42
8.07
7.89
8.04
7.84
8.86
8.06
8.24
7.92
7.907.98
8.52
8.48
8.02
8.85
7.78
7.74
7.78
7.91
7.74
7.75
7.74
7.72
7.83
8.588.58
7.83
8.60
8.60
7.848.61
8.62
8.368.65
8.64
8.36
8.60
8.58
8.29
7.71
7.69
8.35
7.58
7.438.58
7.83
7.797.83
7.87
8.07
8.11
8.56
8.58
7.75
7.87
H=7.805
7.70
7.76
7.87
7.39
7.68
7.81
7.81
8.83
8.59
7.89
7.95
8.83
8.50
7.85
7.94
8.83
8.49
8.82
7.96
7.88
7.83
7.887.84
7.92
7.787.71
8.15
7.72
7.67
7.68
8.05
7.73
8.09
7.73
7.73
7.74
8.11
7.79
7.78
8.028.15
7.76
8.15
8.16
8.17
8.20
8.22
7.72
7.69
7.65
7.64
7.677.66
8.09
7.77
8.55
7.937.95
H=7.6957.33
7.42
7.21
7.43
7.39
7.80
7.48
7.80
7.84
7.66
7.42
7.96 7.947.92
7.987.95
7.937.92
8.087.97
8.017.98
7.997.98
7.94
8.01
7.60
7.60
7.64
7.63
7.54
7.66
7.717.66
7.64
8.76
8.77
8.66
8.68
8.68
8.70
8.70
8.71
H=7.571
7.53
7.76
7.59
7.64
7.84
7.85
7.87
7.90
7.88
7.90
7.86
8.70
8.34
8.28
7.79
7.50
7.76
7.687.53
7.78
7.86
7.80
7.79
7.78
7.60
7.74
7.85
7.86
8.00
7.95
7.81
7.93
7.93
8.04
7.52
7.22
H=6.897
M
7.03
6.88
7.39
7.46
12.48
市道加美旭町久宝寺線
B
R=1400 R=600
A=230
R=3000
1
2
3
0
116
118
119
117
+20
+40
+60
A=36
R=50
A=36
3700026000
31500
550 450
500
松原方面→
←吹田方面
7.94
7.677.70
7.78
7.56
主要地方道 大阪中央環状線
久宝寺10
信
信
信
7.39
7.39
7.32
7.46
7.50
7.68
YT-12
YT-13
7.45
7.57 7.34
7.37
7.66
7.207.23
7.50
7.40
7.397.24
6.99
6.94
8.30
6.97
6.95
6.98
6.90
7.31
YT-14
7.19
7.28
7.10
6.99
6.85
6.83
6.78
6.78
7.12
7.25
7.30
7.19
7.18
7.01
(13.04)
(14.01)
(13.70)
図-2 全体平面図
* 橋梁事業部 大阪工場 設計部 設計課
** 橋梁事業部 工事部 計画工務課
(28) 片山技報 No.34
3.本橋の特徴 3.1 久宝寺高架橋Bライン拡幅部
本橋は,久宝寺高架橋Bラインに取付く拡幅桁であり,
既設桁は昭和54年に竣工した鋼連続鈑桁橋である.建設
当初は,将来拡幅を想定した計画がなされておらず,下
記の点に留意して設計を行う必要があった. ①既設橋の当初設計時の設計基準と現行の設計基準を
確認し,条件の相違による影響を照査した. ②既設橋を供用した状態で既設橋および拡幅部となる
新設橋の施工ステップを検討した. ③既設桁と新設桁の取合う横桁(以下,取合い横桁)
について,一体化後の応力伝達が適切に機能する構
造を検討した. ④既設橋と新設橋の床版および伸縮装置の取合い構造
を検討した. 本橋の設計概要については,「4.久宝寺高架橋Bラ
イン拡幅部の設計」で報告する.
3.2 八尾パーキングエリアオフランプ橋
本橋は,久宝寺高架橋拡幅部からパーキングエリアへ
と繋がる橋梁である.P2橋脚からA2橋台間で大阪府道
加美旭町久宝寺線(以下,府道)と約40度の斜角で交差
している.以下に,設計および施工の主な特徴を示す. ①府道交差部の桁下余裕高4.7mを確保するため,桁高
を1.5m程度に制限する必要があり,鋼連続箱桁を採
用した.
②施工時に府道の長期的な通行止めは不可能なため,
府道交差点部を跨ぐ桁は,ヤード内で地組して大型
搬送車よる夜間一括架設により対応した.
③府道交差点部の桁については,将来の塗替塗装に配
慮して金属溶射を採用し,残りは塗装とした.
4.久宝寺高架橋Bライン拡幅部の設計
久宝寺高架橋Bライン拡幅部は,P123-P119橋とP119-P116橋から構成される.本項では,P123-P119橋の既設
桁の耐荷力照査および既設橋と新設橋の取合いの設計に
ついて報告する.
4.1 設計条件 久宝寺高架橋 B ライン拡幅部(P123-P119 橋)の設計
条件を以下に示す.また,構造一般図を図-3に示す. 橋 長: 126.0m(CL 上) 支 間 長: 31.075m+2×31.500m+31.100m(CL 上)
31.950m+31.545m(R-CL 上) 幅 員: 14.450m(P123-P121 間)
22.666m~19.290m(P121-P119 間)
床 版:RC床版 t=230mm(新設),t=220mm(既設)
平面線形:R=1400m 縦断勾配: 0.750%~0.4947% 横断勾配:2.0%片勾配 舗 装:アスファルト舗装 t=75mm 主要鋼材:SS400,SM400A,SM490Y,F8T 塗装仕様:溶融亜鉛めっき
図-3 久宝寺高架橋 B ライン拡幅部(P123-P119 橋)構造一般図
RGE1
J9J8
J7J6RGE2
S1P122 P121 P120
S2
GE1
P123
GE2
P119
CL
GB6GB5GB4GB3GB2GB1 GB7
GB8GB9
R-CL
橋 長 126000(CL上寸法)
桁 長 125875(CL上寸法)75
350 31075 支間長 31500(CL上寸法) 31500 311006x5230.2=31381.4(GB1上寸法) 6x5301.1=31806.5 6x5301.1=31806.5 6x5234.4=31406.4
50
350
RGE2
450
14450
700
13250
500
11005x2400=12000 1350
14450
500
13250
700
22666
1100
3x2738.7=8216
5x2400=120001350
19289.9
3897.2
3x1613.3
=4839.9 5x2400=9202.8
4147.2
オフランプ橋
平 面 図
アスファルト舗装 t=75mm
RC床版 t=220mm
3x2738.7=8216~3x1613.3=4839.9 1100
GB7 GB8 GB9
105013150 7320.8~3943.8
アスファルト舗装 t=75mm
RC床版 t=230mm
30870
RC床版 t=230mm(二次床版)
STC
1.97%~2.00%
GB6 GB5 GB4 GB3 GB2 GB1CL
300 22666~19289.9
700 21520.8~18843.9 445.2~446
P121 P119~
1350 5x2400=12000
120 2.00%
断 面 図
片山技報 No.34 (29)
4.2 施工ステップの検討
本工事の施工ステップは,既設桁への荷重負担の軽減
に配慮して新設桁を先行架設した後に,既設桁と取合う
計画とした.施工ステップを図-4に示す.
STEP1で既設橋梁のモデルを再現し,仮設防護柵の設
置および既設壁高欄を撤去する.
STEP2で新設橋の施工として,桁の架設および新設床
版の打込みを行う.
STEP3で既設桁と新設桁の取合い横桁を接合し,床版
の打込みを行う.その後,新設部の壁高欄および舗装を
施工し,最後に仮設防護柵を撤去して完了することとし
た.
施工ステップごとに格子解析を行い,各解析ステップ
で算出された断面力により,既設桁の耐荷力照査,取合
い横桁の構造,新設桁の設計を実施した.
4.3 既設桁の耐荷力照査
(1)照査方針
既設桁の設計は,昭和55年版の道路橋示方書(以下,
道示)に準拠しており,活荷重条件はTL-20(大型車両
重量20t)となっている.平成6年以降の道示は,大型車
両の重量が見直されており,活荷重条件はB活荷重(大
型車両重量25t)が用いられている.また,拡幅に伴い,
既設桁上の死荷重条件も変わることから,既設桁の主部
材に対して,許容応力度を超過する部材については補強
が必要となる.
そこで,既設桁の補強の必要性を判断するため,格子
解析により既設桁の応力状態を確認することとした.
(2)照査方法および結果
既設桁の補強の必要性については,既設橋梁の耐荷力
照査実施要領(案) 1)の“照査Ⅱ-3”に準じて,既設桁
のモデルを再現した復元設計を行い,レーン載荷活荷重
による応力度より判定する.また,照査対象は主桁のみ
とし,床組は設計応力度と比較して実応力度が小さいこ
と,床版は,昭和53年度以降の設計が現行と同程度の強
度を有するため,それぞれ照査の対象外とした.照査内
容と結果を表-1に示す.
照査は,既設桁を再現した既設形モデルと既設桁に拡
幅を追加した完成形モデルを用いて格子解析を行った.
図-4 施工ステップ図
GB1
CL
既設橋
既設橋14450
鉄筋コンクリート床版t=220mm
GB2GB3GB4GB5GB6
13250 500700
アスファルト舗装t=75mm
GB1
CL
既設橋
既設橋14450
鉄筋コンクリート床版t=220mm
GB2GB3GB4GB5GB6
13150 600700
アスファルト舗装t=75mm
1500
500250
GB1
CL
既設橋
既設橋13850
GB2GB3GB4GB5GB6
13150
1050
700
変化
鉄筋コンクリート床版t=230mm
445変化
新設橋
GB8 GB9STC
GB7
GB1
CL
既設橋
既設橋13850
GB2GB3GB4GB5GB6
13150
1050
700
変化
445変化
新設橋
GB8 GB9STC
GB7
鉄筋コンクリート床版t=230mm
アスファルト舗装t=75mm
STEP1-1:既設現況時
STEP1-2:既設壁高欄撤去
STEP2:新設桁架設
STEP3:完成形(一体化完了)
活荷重条件変更による応力照査用
仮設防護柵設置+既設壁高欄撤去
新設桁架設(一次床版打設)
横部材連結+二次床版接続+壁高欄打設+舗装+仮設防護柵撤去
目隠し板
(二次床版)
主桁 U.FLG L.FLG U.FLG L.FLG U.FLG L.FLG U.FLG L.FLG
GB6 0.907 0.907 0.957 0.957 1.079 1.071 1.064 1.057
GB5 0.900 0.900 0.907 0.907 1.071 1.050 1.079 1.057
GB4 0.934 0.914 0.963 0.936 1 .118 1.057 1 .147 1.086
GB3 0.926 0.914 0.956 0.930 1.100 1.057 1.140 1.071
GB2 0.900 0.900 0.907 0.907 1.050 1.043 1.043 1.036
GB1 0.936 0 .936 0.964 0 .964 1.100 1.086 1.093 1.079
載荷荷重
Case1-1 Case1-2 Case1-3 Case2
既設形モデル 完成形モデル
L20活荷重 レーン載荷活荷重 B活荷重
当初の設計荷重による応力状態を把握
応力状態を確認し,主桁補強の有無を判定
応力状態の把握Case1-3と比較し,拡幅に伴う応力状態を把握
許容応力度超過率
照査結果(許容応力度超過率)
照査内容
照査ケース
モデル
表-1 照査方法および結果
(30) 片山技報 No.34
Case1-1は,既設形モデルにより当初設計荷重による
応力度を算出し,全断面において許容応力度以下である
ことを確認した.
Case1-2は,既設形モデルにレーン載荷荷重を用いて
応力度を確認した.全断面において許容応力度以下とな
り,既設桁の補強は必要ないとの判断をした.
Case1-3およびCase-2より,既設形と完成形のB活荷
重載荷時における既設桁の応力状態を確認した.活荷重
条件がTL-20からB活荷重になるため,許容応力度を超え
る断面が生じた.特にGB3桁およびGB4桁の応力度は,新
設桁に伴う応力分布の影響により許容応力度に対して最
大で14%超過する箇所がみられた.
本設計では,Case1-2で主桁補強の有無を判定してい
るが,文献 2),3)によれば,「許容応力度に対する発生応
力度の超過率が圧縮側で20%,引張側で30%程度までであ
れば補強を行わなくてもよい」ことが記載されている.
したがって,主桁部材については補強しなかった.
4.4 既設橋と新設橋の取合い構造 (1)取合い横桁
本工事では,新設橋の施工を先行した後に,既設橋と
新設橋を接続する.取合い横桁は,架設ヤードの関係か
ら新設橋の施工時に架設した.そのため,新設桁と既設
桁の施工ステップごとのたわみ量を算出し,既設側との
取合いは,既設側の補剛材に長孔を設けて仮ボルトで接
続する方法を採用した.また,既設桁とは,Tフランジ
継手および垂直補剛材を既設桁の腹板に高力ボルトで接
合した.構造詳細図を図-5に示す.なお,断面は以下
の設計方針により決定した.
・垂直補剛材と主桁の上下フランジは接合が不可能な
ため,隙間を設けた.主桁腹板の座屈は,既設側に
垂直補剛材があるため問題ないと判断した.
・横桁の曲げとせん断は,Tフランジ継手の断面のみ
で受け持たせた.
・横桁腹板の接合部は,せん断のみを考慮した.
(2)二次床版
床版の設計は,既設橋の床版を撤去し,新設床版が接
続される.以下に設計上の主な留意点を示す.
・既設橋の張出部の床版において,新設床版と接続す
るため,圧縮領域と引張領域が逆転する.そのため,
既設鉄筋による断面照査を行った.
・二次床版の幅員方向は,既設側の鉄筋をエンクロー
ズド溶接,新設側は機械継手により定着長を確保し,
施工上必要な幅を設定した.
(3)伸縮装置
伸縮装置は,既設伸縮装置のフェイスPLを斜めに切
断し,新設の伸縮装置と取合う構造を採用した.新設と
既設の取合い詳細を図-6に示す.フェースPLは,疲
労の観点から溶接せずに10mmの隙間を設けることとした.
隙間は,シールを施すが,漏水した場合に配慮した受け
桝を設置し,下部工排水へ導水することとした.
5.施工概要
久宝寺高架橋Bライン拡幅部の施工について報告する.
本工事の施工フローを図-7に示す.
図-5 取合い横桁構造詳細図
図-6 伸縮装置取合い詳細
図-7 施工フロー
A
A
新設桁既設桁
GB1 GB7STC
142
9x90=810
130
1185.5
125
10
50
50
18
205
125
横桁側 26.5x76.5長孔
補剛材側 φ26.5
22020204
20220
50120 5050120 50
230
55
55
10
55
55
50
270
40
130
217
.575
132
.5
3x1
00
=300
82.5
3x75
=225
177
.590
90
40
50
1600
35 134 35
15 19015
50
1600
50
435
9x90=810
230
10 144
4040
A - AB
B
B - B
0.73%
100
70
100
50
50
285.4
750
230
290
230
30
690
30
1:5
1:5
10275.4
62.564.6
41.7
新設部既設部
切断ライン
新設桁 高力ボルト本締
ベント解体
付属物設置工
支承モルタル工
新設床版工
壁高欄工
二次床版工
足場解体工
片付け工
取合い横桁 高力ボルト本締
構造物取り壊し工
昇降設備・足周り設備組立
支承設置
ベント組立
P121ーP116 桁架設
足場組立
片山技報 No.34 (31)
5.1 構造物撤去工
本工事では,仮設防護柵を設置後に壁高欄,床版およ
伸縮装置を撤去する施工ステップとした.新設部を施工
する前に壁高欄を撤去するため,安全面の確保が重要と
なる.そのため,既製品ではなく,80km/hの衝突荷重に
耐える仮設防護柵を新規製作し,設置した.
壁高欄および床版の撤去は,橋軸方向に2m間隔でダイ
ヤモンドカッターを用いて切断し,トラッククレーンで
順次撤去した.また,床版断面は既設鉄筋が100mm出る
まで,ウォータージェットによりコンクリートを除去し
た.伸縮装置の撤去は,ダイヤモンドカッターを用いて
切断し,グラインダーにより仕上げをした.また,シー
ルも既設部分を一部撤去して新設した.
5.2 桁架設工
本橋の架設は,トラッククレーンベント工法により
P121橋脚からP116橋脚方向へ順次架設した.トラックク
レーンは60t吊用を使用した.P121-P119間は,ヤード内
からの架設が不可のため,隣接する中央環状線からの夜
間架設とした.また,P121-P120間の上空に高圧線があ
るため,クレーンが接近しないように安全対策を講じた.
P119-P116間はヤード内にクレーンを設置して昼間架設
とした.架設要領図を図-8に示す. 取合い横桁は,架設ヤードの関係から主桁架設時に順
次架設したが,新設床版のコンクリート打込み後に高力
ボルトの本締めを行う必要があった.そのため,既設側
との取合いは,長孔にボルトを仮止めし,新設床版のコ
ンクリート打込み後に現場で孔明けを行い,高力ボルト
の本締めを行った.横桁の仮締め状況を写真-1に示す.
5.3 二次床版の施工
二次床版のコンクリート打込み状況を写真-2に示す.
二次床版の施工は,既設床版と新設床版によって拘束さ
れるため,普通コンクリートに膨張材を添加する配合と
した.なお,既設橋を供用中に施工するため,車両振動
や活荷重たわみの影響も懸念されたが,コンクリート打
込み後から1ヵ月間程度の観察では,床版上面および下
面ともにひび割れは確認されなかった.
写真-1 取合い横桁仮設置状況
写真-2 二次床版コンクリート打込み状況
6.おわりに
本工事では,近畿自動車道上り線の拡幅工事を行った.
既設桁を拡幅する上で既設桁への影響を把握し,設計方
針や施工計画を検討することが重要であった.特に,供
用中の施工となるため,既設部の撤去,取合い方法およ
び既設桁の補強方法については,工程や安全面など設計
当初から現場条件に留意しておくことが必要であった.
最後に,本報告が今後の拡幅工事において,既設桁の
補強方法および施工方法の一参考となれば幸いである.
謝辞:本工事を遂行するにあたりご指導ならびにご協力
を賜った西日本高速道路株式会社関西支社,大阪高速道
路事務所の関係各位に感謝の意を表します.
参考文献 1)(財)道路保全技術センター:既設橋梁の耐荷力照査
実施要領(案),pp.21-28,1996.
2)日本道路協会:鋼道路橋施工便覧,pp.213-214,1972.
3)日本橋梁建設協会:鋼橋Q&A 保全編Q8-20.
図-8 桁架設要領図
J1 J2 J3 J4 J1 J2 J3 J4 J5
本線連結部
1260031500 31500 26000 37000
126000
13200 25000 21100 32900 27400
施工限界線
高圧線(77000V)施工限界線
4m
4m
23.
4m
架設方向
(32) 片山技報 No.34